説明

スムージングプレス装置

【課題】湿紙表面の平滑化を図ると共に、高速での抄紙を可能とするクローズドドロー型抄紙機に適用するのに好適なスムージングプレス装置を提供する。
【解決手段】スムージングプレス装置100は、クローズドドロー型抄紙機のプレスパート11の最終段に配置されており、一対のプレスロール23,25からなるスムージングプレス17と、該スムージングプレス17により湿紙Wと共に挟持されて湿紙表面を平滑化するスムージングベルト27と、湿紙Wを搬送してスムージングベルト27に受け渡す抄紙搬送フェルト21と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スムージングプレス装置に関し、より詳細には、スムージングベルトにより湿紙の一面を保持して搬送すると共に、該湿紙の表面を平滑化するクローズドドロー型抄紙機に適用するのに好適なスムージングプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に抄紙機は、ワイヤーパートと、プレスパートと、ドライヤーパートと、を備える。これらワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートは、この並び順で湿紙の搬送方向に沿って配置される。湿紙は、ワイヤーパート、プレスパート、およびドライヤーパートそれぞれに配設された抄紙搬送用具に次々と受け渡されながら搬送されるとともに水分を搾り出され(即ち、搾水され)、最終的にはドライヤーパートで乾燥させられる。プレスパートに配置されたプレス装置は、湿紙の搬送方向に沿って直列に並設された複数のプレス機構を具備する。各プレス機構は、一対の無端ベルト状の抄紙搬送フェルトと、当該抄紙搬送フェルトそれぞれの一部を間に挟むように上下に対向配置されるプレスとして一対のロール(即ち、ロールプレス)或いはロールおよびシュー(即ち、シュープレス)と、を有しており、略同一速度で同一方向に走行する抄紙搬送フェルトにより搬送されてくる湿紙を該抄紙搬送フェルトと共にロールとロール或いはロールとシューとで加圧することにより、該湿紙を搾水しながら抄紙搬送フェルトにその水分を吸収させる。尚、プレスパートに配置されたプレス装置の最終段に、スムージングベルトによって搬送される湿紙をスムージングベルトと共に押圧して、湿紙の表面を平滑化するスムージングプレス装置が配置されることもある。このような抄紙機には、湿紙を挟持した抄紙搬送フェルトの一部をロールとロールとで挟みながら加圧するプレス装置がプレスパートに設けられたロールプレス型抄紙機、湿紙を挟持した抄紙搬送フェルトの一部をロールとシューとで挟みながら加圧するプレス装置がプレスパートに設けられたシュープレス型抄紙機、等がある。
【0003】
また、抄紙機には、湿紙の両面または片面が常に搬送フェルトや搬送ベルトで保持された状態で湿紙を搬送するクローズドドロー型抄紙機と、湿紙が搬送フェルトや搬送ベルトで保持されることなく、即ち、湿紙単独で搬送される区間を有するオープンドロー型抄紙機とがある。クローズドドロー型抄紙機は、湿紙が搬送フェルトや搬送ベルトで保持されながら搬送されるので、高速での抄紙が可能である反面、少なくとも湿紙の片面が搬送フェルトまたは搬送ベルトに接触しているので、搬送フェルトまたは搬送ベルトに接触する面の平滑性が低下する虞があった。特に、近年、クローズドドロー型抄紙機には、高い搾水性を有し抄紙効率が高いシュープレスが多用されており、このような抄紙機における湿紙表面の平滑性の向上が困難であった。
【0004】
湿紙両面の平滑性を改善して嵩高の紙を抄紙可能とするため、プレスパートの最終段にスムージングプレスを配置し、これにより搾水された湿紙表面の平滑化を図ることが考えられる。しかし、従来のスムージングプレスは、オープンドロー型抄紙機に配設したものが殆どであり、高速で抄紙しながら湿紙表面の平滑性を改善することが困難であった。
【0005】
クローズドドロー型抄紙機にスムージングプレスを配設した従来の抄紙機としては、弾性部材により湿紙の一面を保持しながら搬送し、一対のプレスロールにより弾性部材と共に該湿紙を押圧して湿紙表面を平滑化するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、抄紙搬送フェルトの表面に液体不透過層を形成するようにしたものも知られている(特許文献2参照)。この抄紙搬送フェルトは、熱可塑性繊維または溶融繊維を含む繊維層を備え、繊維層の表面を加熱することにより熱可塑性繊維または溶融繊維を溶融させて、液体不透過層を形成するようにしたものである。
【特許文献1】国際公開 WO 2004/101885 号パンフレット
【特許文献2】独国実用新案出願公開第DE29706427U1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている抄紙機のスムージングプレスは、湿紙の一面を保持しながら一対のプレスロールにより該湿紙と共に押圧される弾性部材として、通気性を有しない通紙ベルト、または通気性を有する表面性改善フェルトが用いられている。通気性を有しない通紙ベルトとしてはゴムベルトなどが例示され、また表面性改善フェルトとしては通気度10cc/(Sec・cm)以下の僅かに通気性を有するフェルトが例示されている。しかし、近年ますます高速での抄紙、ならびに湿紙表面の更なる平滑化の要求が強まっており、それらの要求を満たすためには、必ずしも十分ではなく、改善の余地があった。
【0008】
特許文献2に開示されている抄紙搬送フェルトでは、熱可塑性繊維または溶融繊維を含む繊維層の表面を加熱して、熱可塑性繊維または溶融繊維を溶融させることにより液体不透過層が形成されている。この抄紙搬送フェルトは、繊維層の表面から加える熱量を調整することにより液体不透過層の厚さを或る程度制御することができる特徴を有する。しかし、特許文献2に記載の抄紙搬送フェルトは、熱可塑性繊維または溶融繊維が抄紙搬送フェルトの基体に含まれているので、抄紙搬送フェルトが硬くなって柔軟性に欠ける傾向があり、抄紙搬送フェルトの耐久性や嵩高の湿紙を抄紙し難い問題があった。また、湿紙と直接接触する表面は、熱可塑性繊維または溶融繊維を含まない繊維層となっているので、加圧部において加圧されると繊維が非常に大きな圧力や摩擦を受けて、繊維層の表面の繊維の抜け落ちや切れ落ち(即ち、所謂脱毛)が生じる。抄紙搬送フェルトの湿紙に直接接触する繊維層表面の繊維の脱毛は、印刷物等の紙製品の品質を悪くする。一方、繊維層の表面は、繊維の脱毛により表面が粗くなるため、湿紙の表面平滑度を著しく低くする。
【0009】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、湿紙表面の平滑化を図ると共に、高速での抄紙を可能とするクローズドドロー型抄紙機に適用するのに好適なスムージングプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために、本発明に係るスムージングプレス装置は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)を特徴としている。
【0011】
(1) 滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、少なくとも分割繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有し、
前記スムージングベルトは、基体と、前記湿紙と直接接触するポリウレタン層とからなること。
(2) 上記(1)に記載のスムージングプレス装置において、前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有し、且つJIS A硬度で90°〜98°であること。
(3) 上記(1)に記載のスムージングプレス装置において、前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、JIS A硬度で90°〜95°で、且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有するポリウレタンと、JIS A硬度で95°〜98°で、且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有しないポリウレタンとの混合物であること。
(4) 上記(1)に記載のスムージングプレス装置において、前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、ウレタンポリマーと、硬化剤と、前記ウレタンポリマーと前記硬化剤との合計量に対し0.5〜25質量%の非反応性ポリジメチルシロキサン液状物と、の混合物を硬化させたものであること。
(5) 上記(4)に記載のスムージングプレス装置において、前記硬化剤が、ジメチルチオトルエンジアミン、またはメチレンビスオルソクロロアニリンであること。
(6) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
分割繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(7) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を具備すること。
(8) 上記(7)に記載のスムージングプレス装置において、前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むこと。
(9) 上記(6)〜(8)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなること。
(10) 上記(6)〜(9)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であること。
【0012】
上記(1)の構成のスムージングプレス装置によれば、分割繊維を含み湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有する微透過性の抄紙搬送フェルトにより湿紙を搬送して、基体とポリウレタン層からなる不透過性のスムージングベルトに受け渡し、スムージングベルトと共に湿紙を一対のプレスロールで挟持して湿紙表面を平滑化するようにした。該湿紙を抄紙搬送フェルトとスムージングベルトとで挟み、ニップ圧を加えると、搬送される湿紙は、一般的に表面の滑らかな方に、また硬度の高い方に貼り付く性質がある。従って、抄紙搬送フェルトによって搬送される湿紙は、硬度が高く、表面の滑らかなスムージングベルトに確実に受け渡される。また、湿紙は、スムージングベルトと共に一対のプレスロールで押圧されてスムージングベルトの滑らかな面に接触する表面の平滑化が図られる。
【0013】
上記(2)〜(5)の構成のスムージングプレス装置によれば、スムージングベルトを構成するポリウレタンが特定の配合物を原料に用いて製造されるので、耐クラック性、耐磨耗性、耐屈曲疲労性、耐永久歪などの特性に優れ、抄紙速度の高速化や、プレスパートの高圧化などの過酷な使用環境にも長期間に亘って使用することができる。特に、スムージングベルトの表面の耐磨耗性は著しく改善され、然もクラックの発生は殆どなく、このような長期に亘って滑らかな表面を有するスムージングベルトに接触して押圧される湿紙は、その表面を平滑な面とすることができる。
【0014】
上記(6)〜(10)の構成のスムージングプレス装置によれば、抄紙搬送フェルトが、基体と、基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、少なくとも分割繊維を含み第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、を有するので、分割することにより繊度の極めて低い細繊維となる分割繊維を含む湿紙接触繊維層を形成すれば、湿紙の表面平滑度を向上させることができる。また、このような抄紙搬送フェルトは、基体とポリウレタン層からなり、その表面が湿紙接触繊維層より滑らかに形成されたスムージングベルトと組み合わせて用いるのに好適である。
【0015】
また、該抄紙搬送フェルトの湿紙接触繊維層が、細繊維に分割された複数の分割繊維および細繊維の間に含浸された1重量%〜10重量%の高分子弾性材を含み、その上、該抄紙搬送フェルトは第1バット層と湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層を有するので、適度な透水性と圧縮、回復機能(クッション性)を有し、表面が滑らかであるにも拘らず紙離れ性がよく、確実にスムージングベルトに湿紙を受け渡すことができる。特に該抄紙搬送フェルトでは、第1バット層と湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層が、湿紙への再湿防止機能を有しているので、スムージングベルトに湿紙を受け渡す際に、湿紙を再湿させることがない。
【0016】
尚、平滑な表面を有する湿紙を得るには、湿紙接触繊維層を形成する繊維が、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなることが望ましく、更に、分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることが望ましい。
【0017】
また、本発明に係るスムージングプレス装置は、下記(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)を特徴としている。
【0018】
(11) 滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、基体と、バット層と、2枚の編地および前記2枚の編地を連結する連結糸の一部が筋交い配列を含む立体編物と、を有し、
前記スムージングベルトは、少なくとも分割繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有すること。
(12) 上記(11)に記載のスムージングプレス装置において、前記スムージングベルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
分割繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(13) 上記(11)に記載のスムージングプレス装置において、前記スムージングベルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を具備すること。
(14) 上記(13)に記載のスムージングプレス装置において、前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むこと。
(15) 上記(11)〜(14)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなること。
(16) 上記(11)〜(15)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であること。
【0019】
上記(11)の構成のスムージングプレス装置によれば、基体と、バット層と、2枚の編地および2枚の編地を連結する連結糸の一部が筋交い配列を含む立体編物と、を有する透過性の抄紙搬送フェルトにより湿紙を搬送して、少なくとも分割繊維を含み湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有する微透過性のスムージングベルトに受け渡し、スムージングベルトと共に湿紙を一対のプレスロールで挟持して湿紙表面を平滑化するようにしたので、分割することにより繊度の極めて低い細繊維となる分割繊維を含む湿紙接触繊維層を形成すれば、該湿紙接触繊維層と接触する湿紙の表面平滑度を向上させて、極めて平滑度の高い湿紙が得られる。
【0020】
また、上記(12)〜(16)の構成のスムージングプレス装置によれば、湿紙接触繊維層が細繊維に分割された複数の分割繊維および細繊維の間に含浸された1重量%〜10重量%の高分子弾性材を含むので、高分子弾性材によって細繊維がある程度結合されて、所謂脱毛現象が生じ難く、スムージングベルトからの細繊維の脱落が防止されて表面が極めて滑らかな湿紙が得られる。また、適度な回復機能(クッション性)を有するので、嵩高な湿紙を形成することができる。
【0021】
また、湿紙接触繊維層を形成する繊維が、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるので、分割繊維と非分割繊維との混紡比率を適宜変更することにより、スムージングベルトの特性をある程度任意に設定することができる。尚、平滑な表面を有する湿紙を得るには、分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることが望ましい。
【0022】
また、本発明に係るスムージングプレス装置は、下記(17)、(18)、(19)、(20)、(21)、(22)、および(23)を特徴としている。
【0023】
(17) 滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、少なくとも熱溶融性の繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有し、
前記スムージングベルトは、基体と、前記湿紙と直接接触するポリウレタン層とからなること。
(18) 上記(17)に記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(19) 上記(17)に記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(20) 上記(17)に記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(21) 上記(17)に記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(22) 上記(17)、(18)、または(21)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
熱的な加工で熱溶融された前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記熱溶融性の繊維が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備すること。
(23) 上記(17)〜(22)のいずれかに記載のスムージングプレス装置において、前記熱溶融性の繊維を含む前記第1バット層、前記第2バット層、および前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記熱溶融性の繊維15重量%〜100重量%、残部非熱溶融性の繊維からなること。
【0024】
上記(17)の構成のスムージングプレス装置によれば、熱溶融性の繊維を含み湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有する微透過性の抄紙搬送フェルトにより湿紙を搬送して、基体とポリウレタン層からなる不透過性のスムージングベルトに受け渡し、スムージングベルトと共に湿紙を一対のプレスロールで挟持して湿紙表面を平滑化するようにした。熱溶融性の繊維は、熱加工することにより溶融して互いに結合し、抄紙搬送フェルトの通気性が低下すると共にその表面が平滑化する。従って、熱の掛け方を調整することにより、任意の透水性と圧縮、回復機能(クッション性)を有し、且つ平滑な表面を有する抄紙搬送フェルトが得られ、再湿現象を有効に防止しながら湿紙表面の平滑化が図られる。また、表面が滑らかであるにも拘らず紙離れ性がよく、確実にスムージングベルトに湿紙を受け渡すことができる。
【0025】
上記(18)〜(23)の構成のスムージングプレス装置によれば、抄紙搬送フェルトを構成する第1バット層、第2バット層、および湿紙接触繊維層の任意の単独層、または複数層に熱溶融性の繊維が含まれる抄紙搬送フェルトを形成することができる。これにより、微透過層を任意の層に形成することができるので、抄紙される湿紙の特性に適合した透水性と表面平滑性を備えた抄紙搬送フェルトを容易に得ることができ、紙離れ性がよく、平滑な表面を有する湿紙を効率よく製作することができる。
【0026】
また、湿紙接触繊維層の全てが熱溶融されると、適度の透水性を示さなくなるので、非熱溶融性の繊維と一部の熱溶融性の繊維を溶融させずに残す程度の熱的な加工により、湿紙接触繊維層は一部熱溶融されない繊維と、熱溶融された熱溶融性の繊維とを含むので、適度の透水性と表面平滑性を有する抄紙搬送フェルトが得られ、表面が滑らかであるにも拘らず紙離れ性がよく、確実にスムージングベルトに湿紙を受け渡すことができる。
【0027】
また、熱溶融性の繊維を含む第1バット層、第2バット層、および湿紙接触繊維層を形成する繊維が、熱溶融性の繊維15重量%〜100重量%、残部非熱溶融性の繊維からなるので、熱溶融性の繊維と非熱溶融性の繊維との混紡比率を適宜変更することにより、抄紙搬送フェルトの特性をある程度任意に設定することができる。このような抄紙搬送フェルトは、基体とポリウレタン層からなり、その表面が湿紙接触繊維層より滑らかに形成されたスムージングベルトと組み合わせて用いるのに好適である。
【発明の効果】
【0028】
本発明のスムージングプレス装置によれば、分割繊維を含み湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有する微透過性の抄紙搬送フェルトと、基体とポリウレタン層からなる不透過性のスムージングベルトとの組合せ、或いは、基体と、バット層と、2枚の編地および2枚の編地を連結する連結糸の一部が筋交い配列を含む立体編物と、を有する透過性の抄紙搬送フェルトと、少なくとも分割繊維を含み湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有する微透過性のスムージングベルトとの組合せ、或いはまた、第1バット層、第2バット層、および湿紙接触繊維層の任意の単独層または複数層に、熱溶融性の繊維が含まれる抄紙搬送フェルトと、基体とポリウレタン層からなる不透過性のスムージングベルトとの組合せにおいて、抄紙搬送フェルトにより湿紙を搬送してスムージングベルトに受け渡し、湿紙をスムージングベルトと共に一対のプレスロールで押圧して湿紙表面を平滑化するようにしたので、湿紙を抄紙搬送フェルトからスムージングベルトに確実に受け渡すことができ、且つ表面平滑度の高い湿紙を高速で抄紙することができる。
【0029】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態であるスムージングプレス装置を備えたクローズドドロー型抄紙機の概略構成図、図2はスムージングベルトの縦断面図、図3は抄紙搬送フェルトの縦断面図、図4は湿紙接触繊維層を形成する分割繊維の拡大縦断面図、そして図5は他の抄紙搬送フェルトの縦断面図である。
【0032】
図1に示されるように、クローズドドロー型抄紙機は、プレスパート11と、ドライヤーパート13が、その順序で湿紙Wの搬送方向に直列に配置されている。スムージングプレス装置100を構成するスムージングプレス17は、プレスパート11の最終の搾水プレスロール15A,15Bの下流側に、プレスパート11の最終段のプレスとして配置されている。搾水プレスロール15A,15Bは、湿紙Wの搬送路を挟んで対向して配設されており、湿紙Wを挟持して搬送する搬送フェルト19および抄紙搬送フェルト21を湿紙Wと共に押圧して湿紙Wを搾水する。
【0033】
スムージングプレス17は、搾水された湿紙の表面を平滑化してドライヤーパート13に搬送するためのものであって、湿紙Wの搬送路を挟んで対向して配設された第1プレスロール23と、第2プレスロール25とを有する。第1プレスロール23および第2プレスロール25は、共にその表面硬度は高く、滑らかな表面となっている。第1プレスロール23および第2プレスロール25は、湿紙Wの一面を保持しながら走行するスムージングベルト27を湿紙Wと共に押圧することにより湿紙の表面(両面)を平滑化する。
【0034】
搾水プレスロール15A,15Bとスムージングプレス17との間には、一対のトランスファーロール29A,29Bが配置されており、湿紙Wを抄紙搬送フェルト21とスムージングベルト27で挟んだ状態で押圧してニップ圧を発生し、抄紙搬送フェルト21により搬送されてきた湿紙Wをスムージングベルト27に移送するようになっている。
【0035】
次に、本実施形態のスムージングプレス装置100で用いられるスムージングベルト27について詳述する。図2に示されるように、スムージングベルト27は、基体31の両面にポリウレタン層33が積層されて形成されている。基体31は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、高強度ポリエチレンなどからなるフィルムや編物、狭い幅の帯状体をスパイラルに巻いたものなどが用いられる。尚、基体31は、例えば、MD(Machine Direction)方向(換言すれば、湿紙の走行(流れ)方向)の糸材35と、CMD(Cross Machine Direction)方向(換言すれば、幅方向)の糸材37とで織成された織布の他、両糸材35,37を織成せずに重ね合わせたもの、フィルムや編物、狭い幅の帯状体をスパイラルに巻いたものなどが用いられる。
【0036】
ポリウレタン層33を形成するポリウレタンとしては、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有し、JIS A硬度(以下、「硬度」と言う)で90°〜98°のものが用いられる。或いは、硬度90°〜95°で且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有するポリウレタンと、硬度95°〜98°で且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有しないポリウレタンとの混合物であってもよい。また、ウレタンポリマーと、硬化剤と、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物との混合物を硬化させたものでもよい。
【0037】
このような構成のスムージングベルト27は、ポリウレタン層33の硬化後、その表面を研磨して所定の厚さにすると共に、その表面を滑らかな面とする。また、耐クラック性、耐磨耗性、耐屈曲疲労性、耐永久歪などの特性、特に、湿紙Wと接触して湿紙表面の平滑化を図る上で重要な特性である耐クラック性に優れており、抄紙速度の高速化や、プレスパートの高圧化などの過酷な使用環境にも長期間に亘って使用が可能となる。
【0038】
次に、抄紙搬送フェルト21について説明する。図3に示されるように、本実施形態のスムージングプレス装置100で用いられる抄紙搬送フェルト21は、基体41と、バット層43(第1バット層43Aおよび第2バット層43B)と、湿紙接触繊維層45と、を備える。より詳細には、基体41の湿紙側の表面に第1バット層43Aが形成され、基体41のロール側またはシュー側の表面に第2バット層43Bが形成され、そして湿紙と直接接触するように第1バット層43Aの湿紙側の表面には湿紙接触繊維層45が形成されている。湿紙接触繊維層45およびバット層43は、ステープルファイバの集合体であり、カーディング装置(図示せず)により基体41上にまずステープルファイバを積層してバット層43を形成し、バット層43の上に同様にして湿紙接触繊維層45を形成する。基体41、湿紙接触繊維層45およびバット層43は、絡合一体化するようにニードルパンチングされる。このように基体41、バット層43(第1バット層43Aおよび第2バット層43B)および湿紙接触繊維層45は、ニードリングにより絡合一体化されている。
【0039】
基体41は、抄紙搬送フェルト21に強度を付与するためのものであり、例えば、耐摩耗性、耐疲労性、伸張特性および防汚性、等に優れたナイロン6、ナイロン66、等の合成繊維、羊毛等の天然繊維、等を素材とした織布および糸材を織らずに重ね合わせたもの、或いはフィルム状にしたもの、等を適宜用いることができる。本実施形態では、基体41として、織成されたものを採用している。
【0040】
バット層43(第1バット層43Aおよび第2バット層43B)は、6デシテックス(dtex)以上の繊度(一般的には、17デシテックス程度)のステープルファイバ47により形成された非分割繊維層である。バット層43を形成する素材は、基体41と同様の素材が適宜用いられる。尚、第2バット層43Bは、抄紙搬送フェルト21に要求される特性に応じて省略することもできる。
【0041】
湿紙接触繊維層45は分割繊維45Aからなる(換言すれば、分割繊維45Aが湿紙接触繊維層45の100重量%を占める)。湿紙接触繊維層45を形成する分割繊維45Aは各々、図4に示されるように、抄紙搬送フェルト21の製造工程中に複数の細繊維(後述される花弁部49および茎部51)に分割する構造を持つ複合繊維であり、繊度が3.3デシテックス以下のものが好ましく、本実施形態では繊度が1.9デシテックス、そして長さが51mmの断面円形の繊維が用いられる。分割繊維45Aは、例えば、6つの断面扇形の花弁部49と当該花弁部49のうち隣り合うものの側面同士を結合させる断面略アスタリスク形状の茎部51といった7つの部分から構成され、これらの部分が断面円形に統合され、分割可能に形成されている。
【0042】
分割繊維45Aの素材については、例えばナイロン6(即ち、N6)で形成され、そして茎部51が例えばポリブチレンテレフタレート(即ち、PBT)で形成される。このような分割繊維45Aの具体例としては、商品名「PA31」:東レ株式会社製等が挙げられる。尚、分割繊維45Aの繊度を3.3デシテックス以下としたのは、主に湿紙接触繊維層45の形成を容易にするためであり、具体的には、抄紙搬送フェルト21自体の製造工程であるカーディング工程およびニードリング工程、および/または仕上げ工程における熱的加工やプレス加工で抄紙搬送フェルト21が効果的に分割されるようにするためである。
【0043】
尚、湿紙接触繊維層45は、分割繊維45Aを15重量%〜100重量%含み且つ残部が非分割繊維である混紡からなるものであってもよい。非分割繊維とは、カーディング工程やニードリング工程においても、またプレス装置による加圧によっても、分割されない通常の短繊維である。また、非分割繊維としては、例えば1.9デシテックス(即ち、分割繊維の分割前の繊度と同じ値)〜6デシテックスの繊度を有するステープルファイバが望ましい。
【0044】
抄紙搬送フェルト21は、図5に示されるように、基体41と湿紙接触繊維層45との間の第1バット層43A内に横たわるように配置された親水性不織布層53、および湿紙接触繊維層45に含浸した高分子弾性材55を更に備えたものであってもよい。親水性不織布層53は、バット層43を形成する繊維よりも細い、例えば、繊度4デシテックス以下の非分割繊維を積層することにより高密度に構成された親水性不織布により形成される。親水性不織布層53を形成する親水性不織布の例としては、ナイロン等の樹脂を溶融させ且つ紡糸してなる繊維を積層することにより構成された、例えば、連続したフィラメントを積層してなるスパンボンド不織布、熱風で溶融ポリマーを延伸して微細繊維化しシート状にした不織布、等が挙げられる。
【0045】
高分子弾性材55は、複数の分割繊維45Aの分割により形成された細繊維の間に湿紙接触繊維層45の湿紙表面側から含浸される。具体的に、湿紙接触繊維層45は、1重量%〜10重量%の高分子弾性材55を含む。高分子弾性材55は、抄紙搬送フェルト21自体の製造工程であるカーディング工程およびニードリング工程、および/または仕上げ工程における熱的加工やプレス加工で複数の分割繊維45Aを細繊維に分割した後、常温で水系ウレタン樹脂、水系アクリル樹脂、水系エポキシ樹脂、水系合成ゴム(即ち、水系エマルジョン樹脂)等の合成樹脂を、ロールで塗布、或いはスプレーで吹き付けて細繊維の間に含浸させた後、加熱して硬化させる。このとき、湿紙接触繊維層45の下層(即ち、第1バット層43Aの湿紙側表面)には親水性不織布層53が配置されているので、高分子弾性材55は、親水性不織布層53によりそれ以上の含浸が阻止されて、第1バット層43A、基体41および第2バット層43Bに含浸されることはない。
【0046】
本実施形態の作用を説明する。図1に示されるように、最終の搾水プレスロール15A,15Bより上流側から搬送される湿紙Wは、サクションロール61により吸引されてその一面が搬送フェルト19に保持された後、搬送フェルト19と抄紙搬送フェルト21で挟持されて搾水プレスロール15A,15Bの間に供給されて搾水される。最終搾水された湿紙Wは、サクションロール63により吸引されて抄紙搬送フェルト21に一面が保持されて搬送された後、抄紙搬送フェルト21とスムージングベルト27で挟持された状態で一対のトランスファーロール29A,29Bで押圧される。これにより、湿紙Wは、抄紙搬送フェルト21からスムージングベルト27に移送する。即ち、湿紙Wは、2枚の搬送フェルトまたは搬送ベルトで挟持された状態でニップ圧が加えられると、表面のより滑らかな方に、或いは、硬度のより高い方に貼り付く特性を有するので、細繊維を含んで構成された湿紙接触繊維層45の表面よりも、硬く滑らかなポリウレタン層33の表面を有するスムージングベルト27に確実に移送する。
【0047】
湿紙Wは、その一面がスムージングベルト27に保持された状態でスムージングプレス17に供給され、スムージングベルト27と共に第1プレスロール23および第2プレスロール25で押圧され、これにより湿紙Wの両表面が平滑化する。詳述すると、湿紙Wの一方の面はスムージングベルト27のポリウレタン層33の滑らかな表面に接触し、また他方の面は表面硬度が高く、滑らかな表面の第2プレスロール25に接触して平滑化され、その両面の面粗さが極めて細かい湿紙Wが得られる。尚、湿紙Wの第2プレスロール25に接触する側の表面は、搾水プレスロール15A,15Bを通過するときから、分割繊維45Aが分割された細繊維を含み且つ表面が滑らかな湿紙接触繊維層45に接触しながら抄紙搬送フェルト21により搬送され、ある程度まで平滑化されているので、第2プレスロール25により容易且つ効率的に平滑化される。そして、湿紙Wは、カンバス65を介してドライヤーパート13に搬送され、ドライヤ67により乾燥する。
【0048】
本実施形態のスムージングプレス装置100によれば、湿紙Wを、分割繊維45Aを含む湿紙接触繊維層45が形成された抄紙搬送フェルト21と、ポリウレタンの表面を有するスムージングベルト27とで挟みニップ圧を加えることにより、搬送される湿紙Wは、硬度が高く、表面の滑らかなスムージングベルト27に確実に受け渡される。また、湿紙Wは、滑らかな表面のスムージングベルト27と共に一対のプレスロール23,25で押圧され、これによりスムージングベルト27およびプレスロール25に接触する湿紙Wの両表面の平滑化が図られる。
【0049】
また、スムージングベルト27を構成するポリウレタンとして特定の配合物を原料に用いて製造されるので、耐クラック性、耐磨耗性、耐屈曲疲労性、耐永久歪などの特性に優れ、抄紙速度の高速化や、プレスパート11の高圧化などの過酷な使用環境にも長期間に亘って使用することができる。特に、スムージングベルト27の表面の耐磨耗性は著しく改善され、然もクラックの発生は殆どなく、このような滑らかな表面を有するスムージングベルト27に接触して押圧される湿紙Wは、その表面が平滑な面となる。
【0050】
更に、抄紙搬送フェルト21が、基体41と、基体41の湿紙側の表面に形成された第1バット層43Aと、基体41のロール側の表面に形成された第2バット層43Bと、少なくとも分割繊維45Aを含み第1バット層43Aの湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層45と、を有するので、分割することにより繊度の極めて低い細繊維となる分割繊維45Aを含む湿紙接触繊維層45を形成すれば、湿紙Wの表面平滑度を向上させることができる。
【0051】
また、抄紙搬送フェルト21の湿紙接触繊維層45が、細繊維に分割された複数の分割繊維45Aおよび細繊維の間に含浸された1重量%〜10重量%の高分子弾性材55を含み、その上、抄紙搬送フェルト21は第1バット層43Aと湿紙接触繊維層45との間に配置された親水性不織布層53を有するので、適度な透水性と圧縮、回復機能(クッション性)を有し、紙離れ性がよく、確実にスムージングベルト27に湿紙Wを受け渡すことができる。特に該抄紙搬送フェルト21では、第1バット層43Aと湿紙接触繊維層45との間に配置された親水性不織布層53が、湿紙Wへの再湿防止機能を有しているので、スムージングベルト27に湿紙Wを受け渡す際に、湿紙Wを再湿させることがない。
【0052】
(第2実施形態)
次に、スムージングプレス装置の第2実施形態について図6から図11を参照して説明する。
【0053】
図6は本発明の第2実施形態のスムージングプレス装置を備えたクローズドドロー型抄紙機の概略構成図、図7は立体編物が配置された抄紙搬送フェルトの縦断面図を示し、(a)から(d)は立体編物の配置が変更された各実施形態の縦断面図、図8は立体編物の拡大図であり、(a)は立体編物の斜視図、(b)は図(a)におけるB矢視側面図、(c)は図(a)におけるC矢視側面図、図9は立体編物の側面図、図10は立体編物の編地の平面図、そして図11は立体編物の編地の平面図である。
【0054】
図6に示されるように、第2実施形態のスムージングプレス装置200は、第1実施形態のスムージングプレス装置100と同様に構成されており、一対のトランスファーロール29A,29Bの代わりにサクションローラ123が設けられ、また抄紙搬送フェルト121とスムージングベルト127の材質が異なる。その他の部分については、本発明の第1実施形態のスムージングプレス装置100と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0055】
抄紙搬送フェルト121は、図7に示されるように、基体141と、バット層143と、立体編物151と、を有する。基体141は、抄紙搬送フェルト121の強度を発現させるためのものであり、MD方向糸材とCMD方向糸材とを織成して得られた織布や、MD方向糸材とCMD方向糸材とを織成せずに重ねて得られた構成、有端状の布体を巻回して得られた構成など、種々の構成をとり得る。
【0056】
バット層143は、ステープルファイバの集合体であり、基体141または立体編物151上にステープルファイバを積層し、カーディング装置(図示せず)により基体141上にステープルファイバを積層してバット層143を形成し、絡合一体化するようにニードルパンチングされる。或いは、ステープルファイバの集合体のみをニードルパンチングにより絡合一体化した不織布を、基体141または立体編物151上に載置して不織布と基体141、または不織布と立体編物151、をニードルパンチングにより絡合一体化することもできる。
【0057】
基体141、バット層143、および立体編物151の配置形態は、図7(a)〜(d)に示されるように、様々な構成を適宜選択することができる。図7(a)に示される抄紙搬送フェルト121は、基体141と立体編物151とを接触配置したものであり、図7(b)に示される抄紙搬送フェルト121は、基体141と立体編物151との間にバット層143を介在させたものである。図7(a)、(b)に示される抄紙搬送フェルト121は、いずれも湿紙接触繊維層145が立体編物151側に設けられている。また、図7(c)、(d)に示される抄紙搬送フェルト121は、基体141と立体編物151との配置を逆にしたものであり、湿紙接触繊維層145が基体141側に設けられている。
【0058】
立体編物151は、図8に示されるように、2枚の編地153,155および2枚の編地153,155を連結する連結糸157の一部が筋交い配列を含む構成とからなる。すなわち、立体編物151においては、連結糸157が、第1の編地153と第2の編地155の間で配列されている。ここで、立体編物151を構成する第1の編地153と第2の編地155とは、それぞれ布の長さ方向の編目列(ウェール)と、布の巾方向の編目列(コース)とで編まれている。
【0059】
連結糸157は、2枚の編地153,155の相対する表編目と裏編目を連結する連結糸157Aと、表、裏編地の相対する編目から離れたウェール又はコース列の編目を筋交いに連結する連結糸(筋交い糸)157Bで構成されている。なお、便宜上、図8においては、第1の編地153を連続する黒丸で、第2の編地155を連続する白丸で表現している。
【0060】
立体編物151の構造そのものは、連結糸157の一部が第1の編地153と第2の編地155の間で筋交いに配列されているものであれば、例えば、特開昭61-31241号、特開平2-74648号、特開平2-229247号、特開2001-234456号等に記載されている周知の構成を採用することが可能である。すなわち、第1又は第2の編地153,155としては、図10に示す六角メッシュや、図11に示す菱形メッシュ等を適宜選択することができる。また、筋交いに連結する連結糸の配置等についても適宜選択することができ、図9に示すように、連結糸157を筋交いに連結する連結糸157のみで構成することも可能である。
【0061】
このような構成の立体編物151を、抄紙搬送フェルト121内に設けることにより、圧縮回復性および厚み保持性を向上させることが可能となる。何故なら、立体編物151は、厚み方向に筋交いに配列された連結糸157が第1および第2の編地153,155を支持する構成であって負荷により立体編物151が圧縮された場合であっても、負荷が取り除かれれば、連結糸157が厚み方向の元の形状に復帰するので、圧縮回復性および厚み保持性に優れているからである。
【0062】
特に、連結糸157の一部を第1および第2の編地153,155の間で筋交いに配列することで、連結糸157を筋交いに配列しない場合と比較して、圧縮回復性および厚み保持性が格段に向上する。また、連結糸157の一部を筋交いに配列し、第1および第2の編地153,155を連結することで、圧縮時における連結糸の倒れこみを防止することができ、連結糸を筋交いに配列しない立体編物を配置したフェルトで見られたプレスロールの軸方向へのブレを抑えることができる。
【0063】
スムージングベルト127は、図3から図5において既に説明した第1実施形態のスムージングプレス装置100の抄紙搬送フェルト21と同一構造のものであるので、詳細な説明を省略するが、図3および図4に示されるように、基体41と、バット層43(第1バット層43Aおよび第2バット層43B)と、湿紙接触繊維層45と、を備える。また、図5に示されるように、基体41と湿紙接触繊維層45との間の第1バット層43A内に横たわるように配置された親水性不織布層53を更に備え、湿紙接触繊維層45に高分子弾性材55を含むものであってもよい。
【0064】
本実施形態の作用を説明する。図6に示されるように、サクションロール61により吸引されてその一面が搬送フェルト19に保持された湿紙Wは、搾水プレスロール15A,15Bで搾水された後、サクションロール63により吸引されて抄紙搬送フェルト121によって搬送される。そして、更にサクションロール123で吸引されて抄紙搬送フェルト121からスムージングベルト127に移送する。抄紙搬送フェルト121は、上記したように、立体編物151を含んで構成された透過性のベルトであり、その表面も比較的粗い面となっている。
【0065】
一方、スムージングベルト127は、分割繊維45Aが分割した細繊維を含んで構成された湿紙接触繊維層45を有し、その表面は極めて滑らかである。湿紙Wは、ニップされたとき、より滑らかな面に貼り付く特性に加えて、サクションロール123による吸引も作用して確実にスムージングベルト127に移送する。そして、湿紙Wは、その一面がスムージングベルト127に保持された状態でスムージングプレス17に供給され、スムージングベルト127と共に第1プレスロール23および第2プレスロール25で押圧され、これにより、湿紙Wの両表面が平滑化する。
【0066】
このとき、湿紙Wの一方の面は極めて滑らかな面であるスムージングベルト127の湿紙接触繊維層45の表面に接触し、また他方の面は表面硬度が高く、滑らかな表面の第2プレスロール25に接触して平滑化されるので、極めて面粗さの細かい湿紙Wが得られる。湿紙Wは、更にカンバス65を介してドライヤーパート13に搬送され、ドライヤ67により乾燥する。
【0067】
本実施形態のスムージングプレス装置200によれば、基体141と、バット層143と、2枚の編地153,155および2枚の編地153,155を筋交いに連結する連結糸157とからなる立体編物151と、を有する透過性の抄紙搬送フェルト121により湿紙Wを搬送して、少なくとも分割繊維45Aを含み湿紙Wと直接接触する湿紙接触繊維層45を有する微透過性のスムージングベルト127に受け渡し、スムージングベルト127と共に湿紙Wを一対のプレスロール23,25で押圧して湿紙表面を平滑化するようにしたので、分割することにより繊度の極めて低い細繊維となる分割繊維45Aを含む湿紙接触繊維層45を形成すれば、該湿紙接触繊維層45と接触する湿紙Wの表面平滑度を向上させることができ、極めて平滑度の高い湿紙Wが得られる。
【0068】
また、湿紙接触繊維層45が細繊維に分割された複数の分割繊維45Aおよび細繊維の間に含浸された1重量%〜10重量%の高分子弾性材55を含むので、高分子弾性材55によって細繊維がある程度結合されて、所謂脱毛現象が生じ難く、スムージングベルト127からの細繊維の脱落が防止されて表面が極めて滑らかな湿紙Wが得られる。また、スムージングベルト127は、適度な回復機能(クッション性)を有するので、嵩高な湿紙Wを形成することができる。
【0069】
また、湿紙接触繊維層45を形成する繊維が、分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなるので、分割繊維と非分割繊維との混紡比率を適宜変更することにより、スムージングベルト127の特性をある程度任意に設定することができる。
【0070】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のスムージングプレス装置について図12から図14を参照して説明する。尚、第3実施形態のスムージングプレス装置は、抄紙搬送フェルトが第1実施形態のスムージングプレス装置と異なり、その他の部分については、本発明の第1実施形態のスムージングプレス装置100と同様であるので、同一部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0071】
図12は本発明の第3実施形態のスムージングプレス装置に用いられる抄紙搬送フェルトの縦断面図を示し、(a)から(d)は熱溶融性の繊維が含まれる層の配置が変更された各実施形態の縦断面図、図13は熱溶融性の繊維の拡大断面図、図14は熱溶融性の繊維を含む抄紙搬送フェルトの熱処理装置の概略説明図である。
【0072】
図12(a)〜(d)に示されるように、本実施形態の抄紙搬送フェルト221は、基体241と、バット層243と、湿紙接触繊維層245と、を備える。より詳細には、基体241の湿紙側の表面に第1バット層243Aが形成され、基体241のロール側またはシュー側の表面に第2バット層243Bが形成され、そして湿紙と直接接触するように第1バット層243Aの湿紙側の表面には湿紙接触繊維層245が形成されている。
【0073】
図12(a)に示されるように、基体241は、抄紙搬送フェルト221に強度を付与するためのものであり、例えば、耐摩耗性、耐疲労性、伸張特性および防汚性、等に優れたナイロン6、ナイロン66、等の合成繊維、羊毛等の天然繊維、等を素材とした織布および糸材を織らずに重ね合わせたもの、或いはフィルム状にしたもの、等を適宜用いることができる。本実施形態では、基体241として、織成されたものを採用している。
【0074】
バット層243(第1バット層243Aおよび第2バット層243B)は、6デシテックス(dtex)以上の繊度(一般的には、17デシテックス程度)のステープルファイバにより形成された非分割繊維層である。バット層243を形成する素材は、基体241と同様の素材が適宜用いられる。バット層243は、ステープルファイバの集合体であり、基体241上にステープルファイバを積層し、カーディング装置(図示せず)により基体241上にステープルファイバを積層してバット層243を形成し、絡合一体化するようにニードルパンチングされる。或いは、ステープルファイバの集合体のみをニードルパンチングにより絡合一体化した不織布を、基体241上に載置して不織布と基体241をニードルパンチングにより絡合一体化することもできる。
【0075】
湿紙接触繊維層245は、熱溶融性の繊維249と非熱溶融性の繊維とからなる。具体的には、熱溶融性の繊維249が50重量%、残部(即ち、50重量%)が非熱溶融性の繊維からなる。湿紙接触繊維層245は、第1バット層243A上に熱溶融性の繊維249および非熱溶融性の繊維を積層し、基体241と共にニードルパンチングして絡合一体化する。
【0076】
熱溶融性の繊維249は、融点が200℃以下、好ましくは120℃〜180℃、更に好ましくは140℃前後の繊維であり、例えば、共重合ポリアミドからなる。また、非熱溶融性の繊維は、融点が200℃〜300℃、好ましくは220℃〜260℃の繊維であり、例えば、ナイロン6やナイロン66などからなる。熱溶融性の繊維249と非熱溶融性の繊維の融点の差は、後述する熱処理加工を容易にするため、60℃以上あるのが好ましい。尚、融点は、示差走査熱分析計(Differential Scanning Calorimeter)によって測定される。
【0077】
熱溶融性の繊維249は、図13に示されるように、融点略220℃のナイロン6からなる芯繊維251の外周面が、融点略140℃の共重合ポリアミド253により被覆されて8デシテックスの繊度に形成された芯鞘型の熱溶融性の繊維249である。非熱溶融性の繊維は、繊度11デシテックスのナイロン6からなる。尚、湿紙接触繊維層245は、熱溶融性の繊維249が15重量%〜100重量%であり、残部が非熱溶融性の繊維からなるものであってもよい。また、他の熱溶融性の繊維249としては、独国特許出願公開第DE19803493C1号明細書に記載の2種類の複合繊維からなるものが例示される。
【0078】
熱溶融性の繊維249を含む繊維層の配置形態は、既に説明した図12(a)以外にも、図12(b)〜(d)に示されるように、様々な構成を適宜選択することができる。図12(b)に示される抄紙搬送フェルト221は、熱溶融性の繊維249が第1バット層243Aおよび第2バット層243Bに含まれるものであり、図12(c)に示される抄紙搬送フェルト221は、熱溶融性の繊維249が第2バット層243Bにのみ含まれるものであり、図12(d)は熱溶融性の繊維249が湿紙接触繊維層245、第1バット層243Aおよび第2バット層243Bに含まれるものである。
【0079】
本実施形態の抄紙搬送フェルト221は、基体241上に任意の組成の繊維を積層し、ニードルパンチングして絡合一体化して形成されるので、従来の高分子材料を含浸或いは貼付する方法では製作困難であった内側の繊維層にも熱溶融性の繊維249を配置して、微透過層または不透過層を形成することができる。これにより、抄紙される湿紙Wに最適な特性を有する抄紙搬送フェルト221が容易に得られる。
【0080】
このような抄紙搬送フェルト221は、熱処理加工することにより熱溶融性の繊維249を溶融して、適度の透水性が付与される。即ち、図14に示されるように、加熱装置254により略170℃に熱した熱処理装置の一例である熱プレスロール255を用いて、50kg/cm〜70kg/cmの圧力下にある熱プレスロール255の間を、複数回通過させ(熱プレスロール255に接する加熱時間としては2〜5分間程度とする。)ことにより、熱溶融性の繊維249が溶融して微透過性の抄紙搬送フェルト221となる。熱処理加工の条件(温度、圧力、通過回数や加熱時間など)を適宜変更することにより、熱溶融性の繊維249の溶融度を制御することができ、これにより、抄紙搬送フェルト221に任意の特性を付与することができる。熱処理加工後の抄紙搬送フェルト221は、例えば、つぼ量1400g/m、密度0.480g/cm、通気度8cc/(m・sec)である。
【0081】
熱処理加工された微透過性の抄紙搬送フェルト221は、図2に示されるスムージングベルト27と組み合わされて、図1に示すスムージングプレス装置100に装着されて湿紙Wを抄紙する。即ち、図1を代用して説明すると、搾水プレスロール15A,15Bより搬送される湿紙Wは、サクションロール61により吸引されてその一面が搬送フェルト19に保持された後、搬送フェルト19と抄紙搬送フェルト221(あるいは勿論抄紙搬送フェルト21でもよい。)で挟持されて搾水プレスロール15A,15Bの間に供給されて搾水される。搾水された湿紙Wは、サクションロール63により吸引されて抄紙搬送フェルト221(21)に一面が保持されて搬送された後、抄紙搬送フェルト221(21)とスムージングベルト27で挟持された状態で一対のトランスファーロール29A,29Bで押圧され、抄紙搬送フェルト221(21)からスムージングベルト27に移送する。更に、湿紙Wは、スムージングプレス17に供給され、スムージングベルト27と共に第1プレスロール23および第2プレスロール25で押圧されて湿紙Wの両表面が平滑化した後、カンバス65を介してドライヤーパート13に搬送され、ドライヤ67により乾燥する。
【0082】
本実施形態の抄紙搬送フェルト221によれば、熱溶融性の繊維249を含み湿紙Wと直接接触する湿紙接触繊維層245を有する微透過性の抄紙搬送フェルト221により湿紙Wを搬送して、基体31とポリウレタン層33からなる不透過性のスムージングベルト27に受け渡し、スムージングベルト27と共に湿紙Wを一対のプレスロール23,25で挟持して湿紙W表面を平滑化するようにした。熱溶融性の繊維249は、熱加工することにより溶融して互いに結合し、抄紙搬送フェルト221の通気性が低下すると共にその表面が平滑化する。従って、熱の掛け方を調整することにより、任意の透水性と圧縮、回復機能(クッション性)を有し、且つ平滑な表面を有する抄紙搬送フェルト221が得られ、再湿現象を有効に防止しながら湿紙W表面の平滑化が図られる。また、表面が滑らかであるにも拘らず紙離れ性がよく、確実にスムージングベルト27に湿紙Wが受け渡される。
【0083】
また、抄紙搬送フェルト221を構成する第1バット層243A、第2バット層243B、および湿紙接触繊維層245の任意の単独層、または複数層に熱溶融性の繊維249を含む抄紙搬送フェルト221が形成される。これにより、微透過層を任意の層に形成することができ、抄紙される湿紙Wの特性に適合した透水性と表面平滑性を備え、且つ紙離れ性がよい抄紙搬送フェルト221が容易に得られ、平滑な表面を有する湿紙Wが効率よく抄紙される。
【0084】
更に、湿紙接触繊維層245の全てが熱溶融されると、適度の透水性を示さなくなるので、非熱溶融性の繊維と一部の熱溶融性の繊維249を溶融させずに残す程度の熱的な加工により、湿紙接触繊維層245は一部熱溶融されない繊維249と、熱溶融された熱溶融性の繊維249とを含むので、適度の透水性と表面平滑性を有する抄紙搬送フェルト221が得られ、表面が滑らかであるにも拘らず紙離れ性がよく、確実にスムージングベルト27に湿紙Wが受け渡される。
【0085】
また、熱溶融性の繊維249を含む第1バット層243A、第2バット層243B、および湿紙接触繊維層245を形成する繊維が、熱溶融性の繊維249を15重量%〜100重量%、残部非熱溶融性の繊維からなるので、熱溶融性の繊維249と非熱溶融性の繊維との混紡比率を適宜変更することにより、抄紙搬送フェルト221の特性をある程度任意に設定することができる。このような抄紙搬送フェルト221は、基体31とポリウレタン層33からなり、その表面が湿紙接触繊維層245より滑らかに形成されたスムージングベルト27と組み合わせて用いるのに好適である。尚、第3実施形態の抄紙搬送フェルト221のその他の作用および効果については、第1実施形態の上記説明から容易に類推可能である。
【0086】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の第1実施形態であるスムージングプレス装置を備えたクローズドドロー型抄紙機の概略構成図である。
【図2】スムージングベルトの縦断面図である。
【図3】抄紙搬送フェルトの縦断面図である。
【図4】湿紙接触繊維層を形成する分割繊維の拡大縦断面図である。
【図5】他の抄紙搬送フェルトの縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態のスムージングプレス装置を備えたクローズドドロー型抄紙機の概略構成図である。
【図7】立体編物が配置された抄紙搬送フェルトの縦断面図を示し、(a)から(d)は立体編物の配置が変更された各実施形態の縦断面図である。
【図8】立体編物の拡大図であり、(a)は立体編物の斜視図、(b)は図(a)におけるB矢視側面図、(c)は図(a)におけるC矢視側面図である。
【図9】立体編物の側面図である。
【図10】立体編物の編地の平面図である。
【図11】立体編物の編地の平面図である。
【図12】スムージングプレス装置に用いられる本発明の第3実施形態の抄紙搬送フェルトの縦断面図を示し、(a)から(d)は熱溶融性の繊維を含む繊維層の配置が変更された各実施形態の縦断面図である。
【図13】熱溶融性の繊維の拡大断面図である。
【図14】熱溶融性の繊維を含む抄紙搬送フェルトの熱処理装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0088】
100 スムージングプレス装置
200 スムージングプレス装置
11 プレスパート
17 スムージングプレス
21 抄紙搬送フェルト
23 第1プレスロール
25 第2プレスロール
27 スムージングベルト
31 基体
33 ポリウレタン層
41 基体
43 バット層
43A 第1バット層
43B 第2バット層
45 湿紙接触繊維層
45A 分割繊維
53 親水性不織布層
55 高分子弾性材
121 抄紙搬送フェルト
127 スムージングベルト
141 基体
143 バット層
151 立体編物
153 第1の編地
155 第2の編地
157 連結糸
221 抄紙搬送フェルト
241 基体
243A 第1バット層
243B 第2バット層
245 湿紙接触繊維層
249 熱溶融性の繊維
255 熱プレスロール(熱処理装置)
W 湿紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、少なくとも分割繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有し、
前記スムージングベルトは、基体と、前記湿紙と直接接触するポリウレタン層とからなることを特徴とするスムージングプレス装置。
【請求項2】
前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有し、且つJIS A硬度で90°〜98°であることを特徴とする請求項1に記載のスムージングプレス装置。
【請求項3】
前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、JIS A硬度で90°〜95°で、且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有するポリウレタンと、JIS A硬度で95°〜98°で、且つ非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有しないポリウレタンとの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のスムージングプレス装置。
【請求項4】
前記スムージングベルトのポリウレタン層を形成するポリウレタンが、ウレタンポリマーと、硬化剤と、前記ウレタンポリマーと前記硬化剤との合計量に対し0.5〜25質量%の非反応性ポリジメチルシロキサン液状物と、の混合物を硬化させたものであることを特徴とする請求項1に記載のスムージングプレス装置。
【請求項5】
前記硬化剤が、ジメチルチオトルエンジアミン、またはメチレンビスオルソクロロアニリンであることを特徴とする請求項4に記載のスムージングプレス装置。
【請求項6】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
分割繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項7】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を具備することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項8】
前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むことを特徴とする請求項7に記載のスムージングプレス装置。
【請求項9】
前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項10】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項11】
滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、基体と、バット層と、2枚の編地および前記2枚の編地を連結する連結糸の一部が筋交い配列を含む立体編物と、を有し、
前記スムージングベルトは、少なくとも分割繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有することを特徴とするスムージングプレス装置。
【請求項12】
前記スムージングベルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
分割繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項11に記載のスムージングプレス装置。
【請求項13】
前記スムージングベルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
細繊維に分割された複数の分割繊維および前記細繊維の間に含浸された高分子弾性材を含み且つ、前記細繊維および前記高分子弾性材が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
前記第1バット層と前記湿紙接触繊維層との間に配置された親水性不織布層と、
を具備することを特徴とする請求項11に記載のスムージングプレス装置。
【請求項14】
前記湿紙接触繊維層が、1重量%〜10重量%の前記高分子弾性材を含むことを特徴とする請求項13に記載のスムージングプレス装置。
【請求項15】
前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記分割繊維15重量%〜100重量%、残部非分割繊維からなることを特徴とする請求項11〜請求項14のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項16】
前記分割繊維各々の分割前の繊度が、3.3デシテックス以下であることを特徴とする請求項11〜請求項15のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項17】
滑らかな表面を有する第1プレスロールと、滑らかな表面を有し且つ前記第1プレスロールに対向配置された第2プレスロールと、前記第1プレスロールと第2プレスロールとにより湿紙と共に挟持されて前記湿紙表面を平滑化するスムージングベルトと、前記湿紙を搬送して前記スムージングベルトに受け渡す抄紙搬送フェルトと、を備え、クローズドドロー型抄紙機のプレスパートに設けられたプレス装置に配置されたスムージングプレス装置であって、
前記抄紙搬送フェルトは、少なくとも熱溶融性の繊維を含み前記湿紙と直接接触する湿紙接触繊維層を有し、
前記スムージングベルトは、基体と、前記湿紙と直接接触するポリウレタン層とからなることを特徴とするスムージングプレス装置。
【請求項18】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項17に記載のスムージングプレス装置。
【請求項19】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項17に記載のスムージングプレス装置。
【請求項20】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項17に記載のスムージングプレス装置。
【請求項21】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成され、前記熱溶融性の繊維を含む第2バット層と、
前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項17に記載のスムージングプレス装置。
【請求項22】
前記抄紙搬送フェルトが、基体と、
前記基体の湿紙側の表面に形成された第1バット層と、
前記基体のロール側の表面に形成された第2バット層と、
熱的な加工で熱溶融された前記熱溶融性の繊維を含み且つ、前記熱溶融性の繊維が前記湿紙と直接接触するように前記第1バット層の湿紙側の表面に形成された湿紙接触繊維層と、
を具備することを特徴とする請求項17、請求項18、または請求項21のいずれかに記載のスムージングプレス装置。
【請求項23】
前記熱溶融性の繊維を含む前記第1バット層、前記第2バット層、および前記湿紙接触繊維層を形成する繊維が、前記熱溶融性の繊維15重量%〜100重量%、残部非熱溶融性の繊維からなることを特徴とする請求項17〜請求項22のいずれかに記載のスムージングプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−9389(P2007−9389A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289138(P2005−289138)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】