説明

スライドファスナーの玉縁構造

【課題】衣類、装身具に用いられているスライドファスナーにおいて、スライドファスナーをスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供する。
【解決手段】スライドファスナーの前面に両側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする一対の玉縁を設け、該一対の玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にそれぞれスペーサーを挟持して玉縁とスペーサー並びにファスナーテープを配列し、該玉縁とスペーサー、並びにファスナーテープの三部材を接合固着して、該玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間にそれぞれ間隙を設けることでファスナーテープに対して両側の玉縁をそれぞれ浮かせた形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケットやズボン等の衣類、バックやカバン、リックサック等の装身具に用いられているスライドファスナーの玉縁構造に関するものであり、本発明の目的は、ファスナーをスライドする際に、ファスナーのスライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーは、中央部のファスナーエレメントに装着されたスライダーを引っ張ってスライドさせ、両側に並んだファスナーエレメントを開閉するもので、ジャケットやコート、そしてズボン等の衣類のみならずバックやカバン、リックサック等の装身具の開口部などに数多く用いられている。
【0003】
本発明は、ジャケットの前開き部分を留め合せするファスナーの玉縁構造や、ポケット口の開閉を行うスライドファスナーを覆い隠してカバーする玉縁構造に関するものである。
【0004】
スライドファスナーを覆い隠してカバーする形状のスライドファスナー用玉縁構造を用いることは、高感度なデザイン性のある衣服や装身具を、種々開発しやすくするばかりでなく、実用的には、スライドファスナー部に雪が付着して凍結したり、スライドファスナー部から雨が滲みこまない防寒コートやスキーウェアを容易に得られることでも重要な要件である。
【0005】
本発明の従来例として、スライドファスナーをジャケットのそれぞれの部位に用いた例を図9乃至図11おいて説明する。
【0006】
図9乃至図11において、50はジャケットを示し、該ジャケット50には前開き部を留め合わせるるためのファスナー51からなるファスナー部52とジャケット50に付帯された胸ポケット口53、ポケット口54が設けられている。
【0007】
前記ファスナー部52には、ジャケット50の表面生地55が端部で折り返されて一方の生地に縫い付けられた玉縁56、56を両側に有しており、ファスナースライダー57の引き手58を上げることにより、前記玉縁56、56が両側から完全に前記ファスナー51を覆い隠してカバーするように構成されている。
【0008】
また、前記胸ポケット口53は、玉縁56が上部からファスナー51(図示せず)を覆い隠してカバーしており、胸ポケット53の開閉はファスナースライダー57(図示せず)に連結した引き手58にて操作される。
【0009】
同様にポケット口54は、玉縁56が片側からファスナー51を覆い隠してカバーしており、ポケット口53の開閉はファスナースライダー57に連結した引き手58にて操作されている。
【0010】
而して、本発明が対象とするスライドファスナーの玉縁構造は、玉縁56、56が両側からファスナー51を覆い隠してカバーするもの、並びに、玉縁56が上部、或いは、片側からファスナー51を覆い隠してカバーする胸ポケット口53、ポケット口54のような従来例である。
【0011】
次に、図10は、上記従来例のファスナー部52の拡大断面形状を示しており、図11は、胸ポケット口53、ポケット口54、54の拡大断面形状を示している。
【0012】
図10において、59はジャケット50の前開き部を拡大断面図にて示し、55は、ジャケット50を構成する表面生地であり、該表面生地55は、それぞれ端部で折り返されて構成した玉縁56、56を両側に有した両玉縁仕様になっている。また、玉縁56、56は逢着部59にてファスナーテープ60、60にそれぞれ固着されおり、該ファスナーテープ60、60の先端にはファスナースライダー(図示せず)のスライドにより中央から離間したり、噛合可能なファスナーエレメント61が嵌着されている。
【0013】
また、図11は、胸ポケット口53、ポケット口54の拡大断面形状を示し、55はジャケット50を構成する表面生地であり、該表面生地55は、端部で折り返されて構成した玉縁56を上側(胸ポケット53の場合)、或いは片側(ポケット口54の場合)に設けて片玉縁仕様となっている。前記玉縁56は縫着部59にてファスナーテープ60の片側に固着されていて、該ファスナーテープ60の先端にはファスナースライダー(図示せず)のスライドにより中央から離間したり、噛合可能なファスナーエレメント61が嵌着されている。
尚、62はポケット口の縁部を構成するもので、表面生地55を端部で折り返し、もう一方のファスナーテープ59に縫着等の固着手段で固着されている。
【0014】
従って、胸ポケット口53、ポケット口54における玉縁56は、片側から、大きく張り出した形状を有して、ファスナー51を覆い隠してカバーしているものである。
【0015】
斯くして、図10の従来例では、中央部にファスナーエレメント61を有するファスナーテープ60、60と両側から配置された玉縁56、56が重なりあって、ファスナー部52を構成しており、該ファスナーテープ60、60と玉縁56、56間をファスナーエレメント61に沿ってファスナースライダーをスライドさせることは、前記玉縁56、56が邪魔になり、そして、玉縁56,56自体がファスナースライダー57の抵抗にもなることから、ファスナースライダー57を円滑にスライドできない場合が多かった。
【0016】
また、ジャケット用の表面生地55は、非常に薄手のもので縫製される場合も多くなり、ファスナースライダー57が、ファスナー51を覆い隠してカバーする構成で玉縁56、56とファスナーテープ59,59が接していることから、ファスナースライダー57が玉縁56,56の縁部を噛んでしまいファスナースライダー57が動かなくなるケースがあり、この現象は、特に前記ジャケット50の表面生地55が薄手の場合によく発生する現象で、ジャケット50が雨や雪に曝されて濡れてしまった場合にも多発していた。
【0017】
従って、従来の玉縁構造として、図示はしていないが、玉縁56そのものの縁部中にタコ糸状のものを入れてファスナースライダー57が玉縁56を噛まないように工夫したものもある。しかし、この方法では、玉縁56が厚くなり体裁が悪い、しかも、玉縁56の追加の加工をしなくてはならないために、工程的に面倒な作業となる。
【0018】
更にまた、図11の従来例では、特に片側から、玉縁56が大きく張り出した形状を有して、ファスナー51を覆い隠してカバーしているために、表面生地55の種類によっては、ファスナースライダー57が円滑にスライドできないばかりか、ファスナースライダー57が玉縁56の縁部を噛んでしまうケースが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
而して、本発明が解決しようとする課題は、ジャケットやズボン等の衣類、バックやカバン、リックサック等の装身具に用いられているスライドファスナーにおいて、スライドファスナーをスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、
スライドファスナーの前面に両側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする一対の玉縁を設け、該一対の玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にそれぞれスペーサーを挟持して玉縁とスペーサー並びにファスナーテープを接合固着し、前記玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間にそれぞれ間隙を設けることでファスナーテープに対して両側の玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたことを特徴とするスライドファスナーの玉縁構造である。
【0021】
また、本発明は、表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、スライドファスナーの前面に片側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする玉縁を設け、該玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にスペーサーを挟持して玉縁とスペーサー並びにファスナーテープを接合固着し、前記玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間に間隙を設けることでファスナーテープに対して玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたことを特徴とするスライドファスナーの玉縁構造でもある。
【0022】
そして、本発明において、玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間にスペーサーを挟持して接合固着する手段は、縫着とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明において、玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーは、ウレタン樹脂にて形成されていることが好ましい。
【0024】
次に、本発明において用いられるスペーサーの形状を限定すると本発明において、玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーの形状は、帯厚を有する帯状体であることが好ましい。
【0025】
また、玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーの形状は、帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚よりも大きな円形断面形状や半円形断面形状を有していることが、本発明では、好ましい。
【0026】
更にまた、玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーの形状は帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚よりも大きな楕円形断面形状を有していることが、本発明では、好ましい。
【発明の効果】
【0027】
而して、本発明は、ジャケットやズボン等の衣類、バックやカバン、リックサック等の装身具に用いられているスライドファスナーにおいて、スライドファスナーをスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供することができた。
【0028】
また、本発明は、玉縁に特にタコ糸状の物を入れた従来例に比較して、玉縁そのものには加工する必要がないので、製作工程が簡単でコスト的に安価となり、玉縁そのものがコロッとした厚みになることを防止してデザイン的に優れたものが製作できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
斯くして、本発明は、ジャケットやズボン等の衣類、バックやカバン、リックサック等の装身具に用いられているスライドファスナーの玉縁構造に関するものであり、本発明の目的は、ファスナーをスライドする際に、ファスナーのスライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供するものである。
【0030】
本発明の目的を達成するために、本発明の基本構成は、表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、スライドファスナーの前面に両側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする一対の玉縁を設け、該一対の玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にそれぞれスペーサーを挟持して、玉縁とスペーサー、並びにファスナーテープを配列し、該玉縁とスペーサー、並びにファスナーテープの三部材を接合固着して、該玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間にそれぞれ間隙を設けることでファスナーテープに対して両側の玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたスライドファスナーの玉縁構造である。
【0031】
また、本発明の他の実施例では、表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、スライドファスナーの前面に片側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする玉縁を設け、該玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にスペーサーを挟持して、玉縁とスペーサー、並びにファスナーテープを配列し、該玉縁とスペーサー、並びにファスナーテープの三部材を接合固着して、該玉縁とファスナーテープ間にスペーサーを挟持させることにより、該玉縁とファスナーテープ間に間隙を設けることでファスナーテープに対して玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたスライドファスナーの玉縁構造である。
【0032】
上記基本構成において、本発明が実施される対象製品はジャケットやズボン等に限らずコートやジャンバー、防寒具、雨具、スキー・スケートウェアの衣類全体を含み、また、バックやカバン、リックサック、寝袋等に使用されるスライドファスナーを含むものである。
【0033】
また、上記基本構成において、スライドファスナーとは、所謂、面ファスナーと異なり、中央部のファスナーエレメントに装着されたスライダーを引っ張ってスライドさせ、両側に並んだファスナーエレメントを開閉するもので、チャック、ジッパーとも呼ばれているものである。
【0034】
更に、玉縁とは、表面生地を端部で折り返して構成したり、専用の玉縁布地を用いるもので、スライドファスナーの回り縁を構成するだけのものもあるが、本発明においては、単にスライドファスナーの縁部を構成するだけのものではなく、スライドファスナーの両側に一対の玉縁を設けてスライドファスナーを覆い隠してカバーする両玉縁仕様、並びにポケット口のように片側から玉縁でスライドファスナーを覆い隠してカバーする片側仕様が対象となる。
【0035】
更にまた、本発明におけるスペーサーとは、ファスナーエレメントの縁部を形成すると共に、玉縁とファスナーテープ間にそれぞれ間隙を設けるための部材であり、素材は編み繊維や樹脂製の物が良く、特に選択すればウレタン樹脂が最も好ましい。
【0036】
そして、スペーサーの形状は上記素材を帯状したこと、或いは、帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚よりも大きな円形断面や半円形断面を有している形状、または、帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚よりも大きな楕円形断面を有している形状が好ましい。
【実施例1】
【0037】
本発明の実施例1を図1に基づき説明する。図1は、実施例1のスライドファスナーの玉縁構造を説明する拡大断面図である。
【0038】
図1において、1はジャケット等を構成する表面生地、2はスライドファスナー、3、3は表面生地1の端部をそれぞれ折り返して構成した玉縁、4、4は編み繊維やウレタン樹脂を帯状に成型して構成したスペーサー、5、5はファスナーテープであり、該ファスナーテープ5、5はそれぞれの先端部にファスナーエレメント6が固着されおり、該ファスナーエレメント6をファスナースライダー(従来例図9にて示す)にて嵌着、並びに離間させることでファスナーの機能が生じるものである。
【0039】
而して、実施例1は、ジャケット等を構成する表面生地1の例えば前開き位置に取付けられるスライドファスナー2であって、該スライドファスナー2の前面に両側からスライドファスナー2を覆い隠してカバーする一対の玉縁3、3を設け、該一対の玉縁3、3と前記ファスナーテープ5、5間にそれぞれスペーサー4,4を挟持して玉縁3、3とスペーサー4、4、並びにファスナーテープ5、5を配列し、該それぞれ玉縁3とスペーサー4、並びにファスナーテープ5からなる三部材を接合固着して、該玉縁3、3とファスナーテープ5、5間に挟持したスペーサー4、4により玉縁3、3とファスナーテープ5、5間にそれぞれ間隙7を設けることでファスナーテープ5、5に対して両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状としたスライドファスナーの玉縁構造である。
【0040】
そして、本発明は、前記、スペーサー4、4により玉縁3、3とファスナーテープ5,5間にそれぞれ間隙7を設けることでファスナーテープ5、5に対して両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状となし、スライドファスナー2をスライドする際に、前記ファスナースライダーが、ファスナー2の部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁3、3を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナースライダーが、前記間隙7部を通るために、極めて円滑にスライドできるものである。
【0041】
また、本発明において、玉縁3、3そのものには加工する必要がないので、製作工程が簡単でコスト的に安価となり、玉縁3、3がコロッとした厚みになることを防止してデザイン的にも優れたスライドファスナーの玉縁構造が提供できた。
【0042】
尚、本発明の実施例1において、玉縁3とスペーサー4、並びにファスナーテープ5の三部材を接合固着する手段とは、縫着が好ましく、該縫着部は図1において8、8、8、8にて示している。また、前記スペーサー4の素材は、一定の厚みを有する生地や編み繊維、または樹脂製の物が良く、特に選択すればウレタン樹脂が最も好ましい
【実施例2】
【0043】
本発明の実施例2を図2に基づき説明する。図2は、実施例2のスライドファスナーの玉縁構造を説明する拡大断面図である。
【0044】
図2において、図1と同一符号は同一構成要素を示している。図2おいて1はジャケット等を構成する表面生地、2はスライドファスナー、3は表面生地1の端部を折り返して構成した玉縁、4は編み繊維やウレタン樹脂を帯状に成型して構成したスペーサー、5、5はファスナーテープであり、該ファスナーテープ5、5はそれぞれの先端部にファスナーエレメント6が固着されおり、該ファスナーエレメント6をファスナースライダー(従来例図9にて示す)にて嵌着、並びに離間させることでファスナーの機能が生じるものである。
【0045】
而して、実施例2は、ジャケット等を構成する表面生地1の例えばポケット口に取付けられるスライドファスナー2であって、該スライドファスナー2の前面には上部、または、片側から一枚のスライドファスナー2を覆い隠してカバーするための玉縁3を設けている。
尚、9は端部を示し、該端部9は、もう一方の表面生地1を端部で折り返し、他方のファスナーテープ5に縫着部8の固着手段で固着されている。
【0046】
前記一枚の玉縁3と前記ファスナーテープ5間にはスペーサー4を挟持して玉縁3とスペーサー4、並びにファスナーテープ5を配列し、該玉縁3とペーサー4、並びにファスナーテープ5の三部材を縫着部8、8で接合固着して、該玉縁3とファスナーテープ5間に挟持したスペーサー4により玉縁3とファスナーテープ5間に間隙7を設けることで、ファスナーテープ5に対して片側の玉縁3を浮かせた形状としたスライドファスナーの玉縁構造が提供できた。
【0047】
本発明の実施例2は、主にポケット口等にファスナーの玉縁構造として使用でき、前記スペーサー4により玉縁3とファスナーテープ5、5間にそれぞれ間隙7を設けることが可能で、ファスナーテープ5、5に対して片側の玉縁3を浮かせた形状となし、スライドファスナー2をスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー2の部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁3を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナースライダーが前記間隙7部を通るために、極めて円滑にスライドできるものである。
【実施例3】
【0048】
本発明の実施例3は前記実施例1、2に用使用されるスペーサーの形状、並びに使用例を説明するもので、図3乃至図6の形状説明断面図、及び図7、図8の使用例を示す断面図に基づき説明する。
【0049】
図3は、前記実施例1、2に用使用されるスペーサー4の形状を示し、該スペーサー4は、前記玉縁3とスライドファスナー2を形成するファスナーテープ5間に挟持して接合固着されるもので、該スペーサーの形状は図3の如く帯厚tを有する帯状体である。
【0050】
また、図4は、他のスペーサー4の形状を示し、該スペーサー4の形状は、帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚tよりも大きな円形断面形状10を有していたり、図5に示す如くスペーサー4の形状は帯状体を形成する帯厚tよりも大きな半円形断面形状11を有している。
【0051】
更に、図6は、他のスペーサー4の形状を示し、該スペーサー4の形状は帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚tよりも大きな楕円形断面形状12を有している。
【0052】
斯くして、図7は、前記図4乃至6において説明したそれぞれのスペーサーの内、図4のスペーサーを実際に使用した場合の例を示している。
【0053】
図7において、同一構成要素は、同一符号にて示し、1はジャケット等を構成する表面生地、2はスライドファスナー、3、3は表面生地1の端部をそれぞれ折り返して構成した玉縁、4、4は図4にて示されたスペーサーで、該スペーサー4の形状は帯状体で、且つ先端部に該帯状体を形成する帯厚tよりも大きな円形断面形状10を有している。
【0054】
そして、5、5はファスナーテープであり、該ファスナーテープ5、5はそれぞれの先端部にファスナーエレメント6が固着されおり、該ファスナーエレメント6をファスナースライダー(図9にて示す)にて嵌着、並びに離間させることでファスナーの機能が生じるものである。
【0055】
而して、実施例3は、ジャケット等を構成する表面生地1の例えば前開き位置に取付けられるスライドファスナー2であって、該スライドファスナー2の前面に両側からスライドファスナー2を覆い隠してカバーする一対の玉縁3、3を設け、該一対の玉縁3、3と前記ファスナーテープ5、5間にそれぞれスペーサー4,4を挟持して玉縁3,3とスペーサー4、4、並びにファスナーテープ5、5を配列し、該それぞれ玉縁3とスペーサー4、並びにファスナーテープ5の三部材を縫着部8、8、8、8の部位にて接合固着して、該玉縁3、3とファスナーテープ5、5間に挟持したスペーサー4、4により、該玉縁3、3とファスナーテープ5,5間にそれぞれ間隙7を設けることでファスナーテープ5、5に対して両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状とするスライドファスナーの玉縁構造で、前記スペーサー4の形状は帯厚tよりも大きな円形断面形状10を有していることから無理なく両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状とすることができる。
【0056】
また、図8は、図7の実施例と同様で、図7の円形断面形状8を有するスペーサー4を楕円断面形状11のスペーサー4に変更したもので、該スペーサー4の形状は帯厚tよりも大きな楕円断面形状11を有していることから無理なく両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状とすることができる。
【0057】
斯くして、実施例3においても、本発明は各種形状を有するスペーサー4、4により玉縁3、3とファスナーテープ5,5間にそれぞれ間隙7を設けることでファスナーテープ5、5に対して両側の玉縁3、3をそれぞれ浮かせた形状となし、スライドファスナー2をスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー2部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁3、3を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナースライダーが前記間隙7部を通るために、極めて円滑にスライドできるものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ジャケットやズボン等の衣類、バックやカバン、リックサック等の装身具に用いられているスライドファスナーにおいて、スライドファスナーをスライドする際に、ファスナースライダーが、ファスナー部分を覆い隠してカバーするために設けられた玉縁を噛むことを防止すると共に、通常時においては、ファスナーのスライダーが極めて円滑にスライドできるスライドファスナーの玉縁構造を提供するものであり、本発明は、産業上の利用範囲が頗る大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1を説明する断面図である。
【図2】本発明の実施例2を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施例3の説明図で、スペーサーの形状例説明図である。
【図4】本発明の実施例3の説明図で、スペーサーの他の形状例説明図である。
【図5】本発明の実施例3の説明図で、スペーサーの他の形状例説明図である。
【図6】本発明の実施例3の説明図で、スペーサーの他の形状例説明図である。
【図7】本発明の実施例3を説明する断面図である。
【図8】本発明の実施例3他の応用例を説明する断面図である。
【図9】従来の円縁構造並びに実施部位を説明するジャケットの概観図である。
【図10】従来例を説明する断面図である。
【図11】他の従来例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0060】
1 表面生地
2 スライドファスナー
3 玉縁
4 スペーサー
5 ファスナーテープ
6 ファスナーエレメント
7 間隙
8 縫着部
9 端部
10 円形断面形状
11 半円形断面形状
12 楕円断面形状
t 帯厚
50 ジャケット
51 ファスナー
52 ファスナー部
53 胸ポケット口
54 ポケット口
55 表面生地
56 玉縁
57 ファスナースライダー
58 引き手
59 縫着部
60 ファスナーテープ
61 ファスナーエレメント
62 ポケット口の縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、
スライドファスナーの前面に両側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする一対の玉縁を設け、
該一対の玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にそれぞれスペーサーを挟持して玉縁とスペーサー並びにファスナーテープを接合固着し、
前記玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間にそれぞれ間隙を設けることでファスナーテープに対して両側の玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたこと、
を特徴とするスライドファスナーの玉縁構造。
【請求項2】
表面生地の所定位置に取付けられるスライドファスナーにあって、
スライドファスナーの前面に片側からスライドファスナーを覆い隠してカバーする玉縁を設け、
該玉縁と前記スライドファスナーを形成するファスナーテープ間にスペーサーを挟持して玉縁とスペーサー並びにファスナーテープを接合固着し、
前記玉縁とファスナーテープ間に挟持したスペーサーにより玉縁とファスナーテープ間に間隙を設けることでファスナーテープに対して玉縁をそれぞれ浮かせた形状としたこと、
を特徴とするスライドファスナーの玉縁構造。
【請求項3】
前記玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間にスペーサーを挟持して接合固着する手段は縫着としたこと、
を特徴とする請求項1、または請求項2のいずれかに記載のスライドファスナーの玉縁構造。
【請求項4】
前記玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーはウレタン樹脂にて形成されていること、
を特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスライドファスナーの玉縁構造。
【請求項5】
前記玉縁とスライドファスナーを形成するファスナーテープ間に挟持して接合固着されるスペーサーの形状は帯厚を有する帯状体であること、
を特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスライドファスナーの玉縁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−303474(P2008−303474A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148854(P2007−148854)
【出願日】平成19年6月5日(2007.6.5)
【出願人】(591038820)株式会社デサント (42)
【Fターム(参考)】