スライド式ダブルルーメンカテーテル
【課題】 カテーテル後部部分をカットしても内筒が外筒から抜け出ない構造のスライド式ダブルルーメンカテーテルを提供する。
【解決手段】 外筒2と、外筒2内にスライド可能に挿入されて外筒2内壁との間に流路用間隙Xを画成する内筒3と、内筒3の先端部に設けられて内筒3を外筒2に引き込むことにより流路用間隙Xを塞ぐ拡径部4と、内筒3の外周面に設けられた係止部5と、外筒2の内周面に設けられて係止部5が係止する被係止部6と、を有し、係止部5は、流路用間隙Xの流路を確保するための通路が形成され、且つ、内筒3を外筒2から所定長さ押し出したときに外筒2の被係止部6に係止するように構成されている。
【解決手段】 外筒2と、外筒2内にスライド可能に挿入されて外筒2内壁との間に流路用間隙Xを画成する内筒3と、内筒3の先端部に設けられて内筒3を外筒2に引き込むことにより流路用間隙Xを塞ぐ拡径部4と、内筒3の外周面に設けられた係止部5と、外筒2の内周面に設けられて係止部5が係止する被係止部6と、を有し、係止部5は、流路用間隙Xの流路を確保するための通路が形成され、且つ、内筒3を外筒2から所定長さ押し出したときに外筒2の被係止部6に係止するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルルーメンカテーテルに係り、詳しくは、内管と外管との間に脱血用間隙を形成しつつ内筒を外筒内でスライド可能にしたスライド式ダブルルーメンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
体外循環治療では、血液を導出し、返血するためのルート、いわゆるブラッドアクセス(blood access)が必要である。ブラッドアクセスを確保する手段として最も一般的な手段は、中心静脈へのカテーテル留置であり、脱血腔と送血腔を備えるダブルルーメンカテーテルが知られている。
【0003】
ところで、血液は、適当な血流がない場合や、異物との接触によって凝固機能が働く。カテーテルは、生体にとって異物であるから、血液中に留置すると血栓が生じてしまう。
【0004】
そこで、静脈留置カテーテルの内腔での凝血による血栓を防止するため、体外循環終了後に、カテーテル内に抗凝血剤を注入する、いわゆるヘパリンロックを行う。
【0005】
ところが、従来のダブルルーメンカテーテルの多くは、一つの管の内部に長さ方向に延びる隔壁を形成し、該隔壁によって脱血腔と送血腔の2つの流路を形成した隔壁形のものである(特許文献1の図11参照)。斯かる構造のダブルルーメンカテーテルは、ヘパリン生食液が短時間で血管側に放出されてカテーテル内に血液が流れ込み、血栓を生じることがあった。
【0006】
そこで、内筒の先端部に拡径部を設けて、非使用時には内筒を外筒内に引き込めばこの拡径部が外筒の内壁に当接して外筒と内筒との間の血流路を塞ぐことにより、ヘパリン生食液の放出を阻止し、血栓の発生を防止するように構成されたスライド式ダブルルーメンカテーテルが提案されている(例えば、特許文献1)。スライド式ダブルルーメンカテーテルは、後部部分に位置固定具を備えており、この位置固定具は、拡径部が外筒から突出されて内筒と外筒先端部との間に脱血腔先端開口部を形成する位置と、拡径部が外筒内に収納されて脱血腔先端開口部を閉塞する位置とに、外筒に対して内筒の位置を固定する。
【特許文献1】特開平9−253214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カテーテルの交換が必要になった場合に、スライド式でない従来の隔壁形のダルブルーメンカテーテルでは、例えば図11に示すように、生体Hに留置したカテーテル10のカテーテル後部部分11を仮想線Cで示す箇所でカットし、後部部分11をカットしたカテーテル10の留置部分にガイドワイヤー(不図示)を通して血管を確保しておいて、そのカテーテル10留置部分を抜いた後に、新しいカテーテルをガイドワイヤーに通して差し替えることが行われる。
【0008】
一方、スライド式ダブルルーメンカテーテルでは、上記のようにカテーテル後部部分をカットしてガイドワイヤーを通そうとすると、内筒が外筒に対してフリーとなっているから、内筒が血管内に入ってしまうおそれがある。そのため、スライド式ダブルルーメンカテーテルでは、カット禁止という注意喚起表示を製品に付するとともに、製品の取扱説明を徹底している。しかしながら、カテーテル後部部分をカットしない場合は、カテーテルの後部部分からガイドワイヤーを通すことになるが、その場合には後部部分の滅菌が必要になって手間がかかる。
【0009】
そこで、本発明は、カテーテル後部部分をカットしても内筒が外筒から抜け出ない構造のスライド式ダブルルーメンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルは、外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、該内筒の外周面に設けられた係止部と、前記外筒の内周面に設けられて前記係止部が係止する被係止部と、を有し、前記係止部は、前記流路用間隙の流路を確保するための通路が形成され、且つ、前記内筒を前記外筒から所定長さ押し出したときに前記外筒の被係止部に係止するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記被係止部は、前記外筒の先端部を先窄まり状にして該外筒先端部の内径を縮径することにより形成することが好ましい。
【0012】
前記係止部は、前記内筒の外周面に放射状に突出していることが好ましい。
【0013】
前記係止部が、前記内筒の長さ方向に沿って延びることが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルは、外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、を有し、前記外筒からの前記内筒の押し出し長さを所定長さに制限するように前記外筒と前記拡径部とを糸状部材により連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルによれば、係止部に被係止部が係止することにより、内筒が外筒から抜け出るのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの実施形態について、図1〜10を参照して説明する。
【0017】
図1〜図4は、スライド式ダブルルーメンカテーテルの要部を示す縦断面図である。なお、これらの図において、位置固定を含む後部部分は従来と同様の構成であるので、図示省略している。
【0018】
スライド式ダブルルーメンカテーテル1は、外筒2と、外筒2内にスライド可能に挿入された内筒3とを備えている。外筒2の内周壁と内筒3の外周壁の間には、送血流のための流路用間隙Xが画成されている。外筒2及び内筒3は、可撓性のチューブによって形成されている。
【0019】
内筒3は、その先端部に拡径部4が固定されている。拡径部4は、内筒3を外筒2内へ引き込むことにより、外筒2と内筒3との間の流路用間隙Xを塞ぐようになっている。
【0020】
内筒3の外周面に係止部5が設けられ、係止部5が係止する被係止部6が外筒2の内周面に設けられている。
【0021】
図1〜4に示す例において被係止部6は、外筒2の先端部を先窄まり状にしてその内径を縮径することにより形成されている。被係止部6の内径は、脱血流の流れを妨げないような寸法に設定される。
【0022】
一方、係止部5は、内筒3の外周面に放射状に突出し、内筒3の長さ方向に沿って延びるフィン状部を備えている。斯かる形状の係止部5は、隣り合うフィン状部の間に、流路用間隙Xの流路を確保するための通路が形成される。係止部5は、血流抵抗を少なくするため、できるだけ薄く且つ小さくすることが好ましい。
【0023】
係止部5は、内筒3を外筒2から所定長さ突出させたときに外筒2の被係止部6に係止する位置に設けられている。具体的には、内筒と外筒先端部と間に脱血腔先端開口部を形成する位置まで内筒3を押し出すことができ、且つ、カットされる位置より先端側にあれば良い。なお、内筒と外筒の脱血腔先端開口部(流路用間隙X先端開口部)を形成する内筒押し出し位置は、ダブルルーメンカテーテルにおいての後部部分にある図示しない位置固定具によって決まる。
【0024】
上記構成を有するスライド式ダブルルーメンカテーテルは、体外循環治療を行うときは、後部部分にある図示しない位置固定具を操作して、内筒3を外筒2から所定長さ押し出し、内筒3と外筒先端部との間に脱血腔先端開口部を形成させ、流路用間隙を通じて脱血を行うとともに、内筒3の内腔を通じて送血する(図1)。このとき、係止部5を内筒2外周面に放射状に突出させる等して、係止部5に脱血流の通路を形成するので、脱血流の流れを阻害しない。治療を中断又は中止するときは、前記位置固定具の操作によって、内筒3を外筒に引き込み、拡径部4で外筒2の先端を塞ぎ、脱血流を閉塞する(図3)。そして、必要に応じて、後部部分を所要箇所(図11の仮想線C参照)でカットして切り離しても、係止部5が被係止部6に係止するため、ガイドワイヤーを挿しても、内筒3が外筒2から離れて血管内に入っていくことは無い(図4)。
【0025】
スライド式ダブルルーメンカテーテルは、内腔を半割にして一方側の腔から脱血する従来のスライド式でないダブルルーメンカテーテルに比べ、内筒の全外周囲から脱血を行うことができるため、血管内壁への吸い付きによる脱血腔の閉塞を改善している。係止部5を内筒の長さ方向に沿って延びる形態とすることにより、内筒3及び外筒2の撓みに対して一定の抵抗となり、その結果、血管内壁への吸い付きによる脱血腔の閉塞防止効果を更に高めることができる。
【0026】
また、上記構成のスライド式ダブルルーメンカテーテルは、製造工程を大きく変更せずに製造することが可能である。
【0027】
内筒は、上記例では送血腔がガイドワイヤー通し孔を兼ねる形態を示したが、例えば、図5に示すように、送血腔3aとガイドワイヤー用孔3bとが内筒3内を別個に平行に延びる形態とすることもできる。
【0028】
また、上記例では内筒の送血腔出口を拡径部の先端に設けた例を示しているが、送血腔出口は拡径部の先端に限らず、図5に示すように、拡径部4近傍の内筒3の周面に送血腔3aの出口を開口させることもできる。
【0029】
さらに被係止部6は、例えば、図6に示すように、外筒2の内壁に係止部5がスライド可能に嵌る長手方向溝2aを形成し、この長手方向溝2aの先端の終端部に係止部5が係止する構成とする等して、外筒2の先端から離れた位置(カットされ得る位置より先端側の位置)に設けることもできる。
【0030】
また、係止部5は、フィン状のものに代えて、例えば、鍔状をした金属メッシュ(不図示)を内筒2の外周面に取り付ける等しても良い。
【0031】
さらに、図8や図9に示すように、外筒2の開口端に開口面積を広げるための切り込み部2bを設け、その開口端形状に適合するように拡径部4を形成することができる。それによって、外筒2の先端が先窄まり状であっても、外筒2先端の開口面積が増加し、脱血流の流入量を増すことができる。
【0032】
さらに他の実施形態においては、図10に示すように、外筒2と拡径部4とをナイロンテグス等の糸状部材7により連結している。それによって、外筒2からの内筒3の押し出し長さを所定長さに制限することができるため、必要に応じて後部部分を所要箇所(図11の仮想線C参照)でカットして切り離してガイドワイヤーを挿しても、内筒3が外筒2から離れて血管内に入っていくことは無い。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの実施形態を概念的に示す要部拡大縦断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う横断面図である。
【図3】図1のスライド式ダブルルーメンカテーテルの非使用状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図4】図1のスライド式ダブルルーメンカテーテルを後部部分カットした状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの他の変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う拡大横断面図である。
【図8】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部斜視図である。
【図9】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部斜視図である。
【図10】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図11】従来の非スライド式ダブルルーメンカテーテルの使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 スライド式ダブルルーメンカテーテル
2 外筒
3 内筒
4 拡径部
5 係止部
6 被係止部
X 流路用間隙
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダブルルーメンカテーテルに係り、詳しくは、内管と外管との間に脱血用間隙を形成しつつ内筒を外筒内でスライド可能にしたスライド式ダブルルーメンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
体外循環治療では、血液を導出し、返血するためのルート、いわゆるブラッドアクセス(blood access)が必要である。ブラッドアクセスを確保する手段として最も一般的な手段は、中心静脈へのカテーテル留置であり、脱血腔と送血腔を備えるダブルルーメンカテーテルが知られている。
【0003】
ところで、血液は、適当な血流がない場合や、異物との接触によって凝固機能が働く。カテーテルは、生体にとって異物であるから、血液中に留置すると血栓が生じてしまう。
【0004】
そこで、静脈留置カテーテルの内腔での凝血による血栓を防止するため、体外循環終了後に、カテーテル内に抗凝血剤を注入する、いわゆるヘパリンロックを行う。
【0005】
ところが、従来のダブルルーメンカテーテルの多くは、一つの管の内部に長さ方向に延びる隔壁を形成し、該隔壁によって脱血腔と送血腔の2つの流路を形成した隔壁形のものである(特許文献1の図11参照)。斯かる構造のダブルルーメンカテーテルは、ヘパリン生食液が短時間で血管側に放出されてカテーテル内に血液が流れ込み、血栓を生じることがあった。
【0006】
そこで、内筒の先端部に拡径部を設けて、非使用時には内筒を外筒内に引き込めばこの拡径部が外筒の内壁に当接して外筒と内筒との間の血流路を塞ぐことにより、ヘパリン生食液の放出を阻止し、血栓の発生を防止するように構成されたスライド式ダブルルーメンカテーテルが提案されている(例えば、特許文献1)。スライド式ダブルルーメンカテーテルは、後部部分に位置固定具を備えており、この位置固定具は、拡径部が外筒から突出されて内筒と外筒先端部との間に脱血腔先端開口部を形成する位置と、拡径部が外筒内に収納されて脱血腔先端開口部を閉塞する位置とに、外筒に対して内筒の位置を固定する。
【特許文献1】特開平9−253214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カテーテルの交換が必要になった場合に、スライド式でない従来の隔壁形のダルブルーメンカテーテルでは、例えば図11に示すように、生体Hに留置したカテーテル10のカテーテル後部部分11を仮想線Cで示す箇所でカットし、後部部分11をカットしたカテーテル10の留置部分にガイドワイヤー(不図示)を通して血管を確保しておいて、そのカテーテル10留置部分を抜いた後に、新しいカテーテルをガイドワイヤーに通して差し替えることが行われる。
【0008】
一方、スライド式ダブルルーメンカテーテルでは、上記のようにカテーテル後部部分をカットしてガイドワイヤーを通そうとすると、内筒が外筒に対してフリーとなっているから、内筒が血管内に入ってしまうおそれがある。そのため、スライド式ダブルルーメンカテーテルでは、カット禁止という注意喚起表示を製品に付するとともに、製品の取扱説明を徹底している。しかしながら、カテーテル後部部分をカットしない場合は、カテーテルの後部部分からガイドワイヤーを通すことになるが、その場合には後部部分の滅菌が必要になって手間がかかる。
【0009】
そこで、本発明は、カテーテル後部部分をカットしても内筒が外筒から抜け出ない構造のスライド式ダブルルーメンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルは、外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、該内筒の外周面に設けられた係止部と、前記外筒の内周面に設けられて前記係止部が係止する被係止部と、を有し、前記係止部は、前記流路用間隙の流路を確保するための通路が形成され、且つ、前記内筒を前記外筒から所定長さ押し出したときに前記外筒の被係止部に係止するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記被係止部は、前記外筒の先端部を先窄まり状にして該外筒先端部の内径を縮径することにより形成することが好ましい。
【0012】
前記係止部は、前記内筒の外周面に放射状に突出していることが好ましい。
【0013】
前記係止部が、前記内筒の長さ方向に沿って延びることが好ましい。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルは、外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、を有し、前記外筒からの前記内筒の押し出し長さを所定長さに制限するように前記外筒と前記拡径部とを糸状部材により連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルによれば、係止部に被係止部が係止することにより、内筒が外筒から抜け出るのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの実施形態について、図1〜10を参照して説明する。
【0017】
図1〜図4は、スライド式ダブルルーメンカテーテルの要部を示す縦断面図である。なお、これらの図において、位置固定を含む後部部分は従来と同様の構成であるので、図示省略している。
【0018】
スライド式ダブルルーメンカテーテル1は、外筒2と、外筒2内にスライド可能に挿入された内筒3とを備えている。外筒2の内周壁と内筒3の外周壁の間には、送血流のための流路用間隙Xが画成されている。外筒2及び内筒3は、可撓性のチューブによって形成されている。
【0019】
内筒3は、その先端部に拡径部4が固定されている。拡径部4は、内筒3を外筒2内へ引き込むことにより、外筒2と内筒3との間の流路用間隙Xを塞ぐようになっている。
【0020】
内筒3の外周面に係止部5が設けられ、係止部5が係止する被係止部6が外筒2の内周面に設けられている。
【0021】
図1〜4に示す例において被係止部6は、外筒2の先端部を先窄まり状にしてその内径を縮径することにより形成されている。被係止部6の内径は、脱血流の流れを妨げないような寸法に設定される。
【0022】
一方、係止部5は、内筒3の外周面に放射状に突出し、内筒3の長さ方向に沿って延びるフィン状部を備えている。斯かる形状の係止部5は、隣り合うフィン状部の間に、流路用間隙Xの流路を確保するための通路が形成される。係止部5は、血流抵抗を少なくするため、できるだけ薄く且つ小さくすることが好ましい。
【0023】
係止部5は、内筒3を外筒2から所定長さ突出させたときに外筒2の被係止部6に係止する位置に設けられている。具体的には、内筒と外筒先端部と間に脱血腔先端開口部を形成する位置まで内筒3を押し出すことができ、且つ、カットされる位置より先端側にあれば良い。なお、内筒と外筒の脱血腔先端開口部(流路用間隙X先端開口部)を形成する内筒押し出し位置は、ダブルルーメンカテーテルにおいての後部部分にある図示しない位置固定具によって決まる。
【0024】
上記構成を有するスライド式ダブルルーメンカテーテルは、体外循環治療を行うときは、後部部分にある図示しない位置固定具を操作して、内筒3を外筒2から所定長さ押し出し、内筒3と外筒先端部との間に脱血腔先端開口部を形成させ、流路用間隙を通じて脱血を行うとともに、内筒3の内腔を通じて送血する(図1)。このとき、係止部5を内筒2外周面に放射状に突出させる等して、係止部5に脱血流の通路を形成するので、脱血流の流れを阻害しない。治療を中断又は中止するときは、前記位置固定具の操作によって、内筒3を外筒に引き込み、拡径部4で外筒2の先端を塞ぎ、脱血流を閉塞する(図3)。そして、必要に応じて、後部部分を所要箇所(図11の仮想線C参照)でカットして切り離しても、係止部5が被係止部6に係止するため、ガイドワイヤーを挿しても、内筒3が外筒2から離れて血管内に入っていくことは無い(図4)。
【0025】
スライド式ダブルルーメンカテーテルは、内腔を半割にして一方側の腔から脱血する従来のスライド式でないダブルルーメンカテーテルに比べ、内筒の全外周囲から脱血を行うことができるため、血管内壁への吸い付きによる脱血腔の閉塞を改善している。係止部5を内筒の長さ方向に沿って延びる形態とすることにより、内筒3及び外筒2の撓みに対して一定の抵抗となり、その結果、血管内壁への吸い付きによる脱血腔の閉塞防止効果を更に高めることができる。
【0026】
また、上記構成のスライド式ダブルルーメンカテーテルは、製造工程を大きく変更せずに製造することが可能である。
【0027】
内筒は、上記例では送血腔がガイドワイヤー通し孔を兼ねる形態を示したが、例えば、図5に示すように、送血腔3aとガイドワイヤー用孔3bとが内筒3内を別個に平行に延びる形態とすることもできる。
【0028】
また、上記例では内筒の送血腔出口を拡径部の先端に設けた例を示しているが、送血腔出口は拡径部の先端に限らず、図5に示すように、拡径部4近傍の内筒3の周面に送血腔3aの出口を開口させることもできる。
【0029】
さらに被係止部6は、例えば、図6に示すように、外筒2の内壁に係止部5がスライド可能に嵌る長手方向溝2aを形成し、この長手方向溝2aの先端の終端部に係止部5が係止する構成とする等して、外筒2の先端から離れた位置(カットされ得る位置より先端側の位置)に設けることもできる。
【0030】
また、係止部5は、フィン状のものに代えて、例えば、鍔状をした金属メッシュ(不図示)を内筒2の外周面に取り付ける等しても良い。
【0031】
さらに、図8や図9に示すように、外筒2の開口端に開口面積を広げるための切り込み部2bを設け、その開口端形状に適合するように拡径部4を形成することができる。それによって、外筒2の先端が先窄まり状であっても、外筒2先端の開口面積が増加し、脱血流の流入量を増すことができる。
【0032】
さらに他の実施形態においては、図10に示すように、外筒2と拡径部4とをナイロンテグス等の糸状部材7により連結している。それによって、外筒2からの内筒3の押し出し長さを所定長さに制限することができるため、必要に応じて後部部分を所要箇所(図11の仮想線C参照)でカットして切り離してガイドワイヤーを挿しても、内筒3が外筒2から離れて血管内に入っていくことは無い。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される範囲を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの実施形態を概念的に示す要部拡大縦断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う横断面図である。
【図3】図1のスライド式ダブルルーメンカテーテルの非使用状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図4】図1のスライド式ダブルルーメンカテーテルを後部部分カットした状態を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの他の変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う拡大横断面図である。
【図8】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部斜視図である。
【図9】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部斜視図である。
【図10】本発明に係るスライド式ダブルルーメンカテーテルの更に他の変更態様を示す要部拡大縦断面図である。
【図11】従来の非スライド式ダブルルーメンカテーテルの使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
1 スライド式ダブルルーメンカテーテル
2 外筒
3 内筒
4 拡径部
5 係止部
6 被係止部
X 流路用間隙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、該内筒の外周面に設けられた係止部と、前記外筒の内周面に設けられて前記係止部が係止する被係止部と、を有し、前記係止部は、前記流路用間隙の流路を確保するための通路が形成され、且つ、前記内筒を前記外筒から所定長さ押し出したときに前記外筒の被係止部に係止するように構成されていることを特徴とするスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項2】
前記被係止部は、前記外筒の先端部を先窄まり状にして該外筒先端部の内径を縮径することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項3】
前記係止部は、前記内筒の外周面に放射状に突出していることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項4】
前記係止部が、前記内筒の長さ方向に沿って延びることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項5】
外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、を有し、前記外筒からの前記内筒の押し出し長さを所定長さに制限するように前記外筒と前記拡径部とを糸状部材により連結したことを特徴とするスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項1】
外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、該内筒の外周面に設けられた係止部と、前記外筒の内周面に設けられて前記係止部が係止する被係止部と、を有し、前記係止部は、前記流路用間隙の流路を確保するための通路が形成され、且つ、前記内筒を前記外筒から所定長さ押し出したときに前記外筒の被係止部に係止するように構成されていることを特徴とするスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項2】
前記被係止部は、前記外筒の先端部を先窄まり状にして該外筒先端部の内径を縮径することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項3】
前記係止部は、前記内筒の外周面に放射状に突出していることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項4】
前記係止部が、前記内筒の長さ方向に沿って延びることを特徴とする請求項1記載のスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【請求項5】
外筒と、該外筒内にスライド可能に挿入されて該外筒内壁との間に流路用間隙を画成する内筒と、前記内筒の先端部に設けられて該内筒を前記外筒に引き込むことにより前記流路用間隙を塞ぐ拡径部と、を有し、前記外筒からの前記内筒の押し出し長さを所定長さに制限するように前記外筒と前記拡径部とを糸状部材により連結したことを特徴とするスライド式ダブルルーメンカテーテル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−175120(P2007−175120A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374192(P2005−374192)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
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