説明

スライムコントロール剤の製造装置及び製造方法

【課題】スライムコントロール剤中の各薬液の濃度変動を抑制し、二液系のスライムコントロール剤の品質を安定化できるスライムコントロール剤の製造装置及び製造方法を提供すること。
【解決手段】製造装置10は、アミンドナーが流通する第1流路20と、酸化剤ドナーが流通する第2流路30とを合流部42において合流させ、第1流路20に設けられ、合流部42へとアミンドナーを導出する第1ポンプ23と、第2流路30に設けられ、合流部42へと酸化剤ドナーを導出する第2ポンプ33と、を備え、第1ポンプ23又は第2ポンプ33の少なくとも一方と、合流部42との間に、アミンドナー又は酸化剤ドナーの流通量の振幅を抑制する第1振幅抑制手段24又は第2振幅抑制手段34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライムコントロール剤の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オンサイト型のスライムコントロール剤の製造装置は、希釈水ラインに、薬液であるアミンドナー及び塩素ドナーを連続してダイヤフラムポンプで導出し、その下流後に位置する混合機等でアミンドナー及び塩素ドナーを混合することで、スライムコントロール剤を製造している。
【0003】
例えば、希釈した次亜塩酸ナトリウム水溶液に高濃度の臭素化合物を添加する装置(特許文献1参照)、逆に、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に硫酸アンモニウム水溶液又は塩化アンモニウム水溶液を添加する装置(特許文献2参照)、或いは塩化アンモニウム及び次亜塩素酸ナトリウムを反応槽に同時に添加する装置が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−105579号公報
【特許文献2】特開2008−43836号公報
【特許文献3】特開2003−48804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の製造装置では、スライムコントロール剤中の各薬液の濃度が変動しやすく、製造されるスライムコントロール剤の品質が不安定である等の問題が生じていた。
【0006】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、スライムコントロール剤中の各薬液の濃度変動を抑制し、二液系のスライムコントロール剤の品質を安定化できるスライムコントロール剤の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) アミンドナーが流通する第1流路と、酸化剤ドナーが流通する第2流路とが合流部において合流する二液系のスライムコントロール剤の製造装置であって、
第1流路に設けられ、前記合流部へと前記アミンドナーを導出する第1ポンプと、
第2流路に設けられ、前記合流部へと前記酸化剤ドナーを導出する第2ポンプと、を備え、
前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくとも一方と、前記合流部との間に、前記アミンドナー又は前記酸化剤ドナーの流通量の振幅を抑制する振幅抑制手段が設けられている製造装置。
【0008】
(2) 前記振幅抑制手段は、液体及び気体を収容する略密閉空間を有する貯留槽を備え、
前記第1流路又は前記第2流路は、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプから前記略密閉空間へと延びる導入管と、前記略密閉空間から前記合流部へと延びる導出管と、を備え、
前記導入管から導入された液体は、前記略密閉空間内の気体容積の増減に伴って前記導出管から導出される(1)に記載の製造装置。
【0009】
(3) 前記貯留槽は、前記略密閉空間の容積が略一定となるように構成され、
前記気体容積の増減は、前記略密閉空間内の気圧の減増により生じる(2)に記載の製造装置。
【0010】
(4) 前記貯留槽は、前記略密閉空間の容積が可変となるように伸縮部材で構成され、
前記気体容積の増減は、前記略密閉空間内の容積の増減により生じる(2)に記載の製造装置。
【0011】
(5) 第1ポンプ及び第2ポンプの下流の所定箇所において第1流路又は第2流路と合流し、前記アミンドナー及び前記酸化剤ドナーを希釈する溶媒が流通する第3流路を更に備え、
前記振幅抑制手段は、前記所定箇所よりも上流に設けられている(1)から(4)いずれかに記載の製造装置。
【0012】
(6) 前記アミンドナーは、水溶性アンモニウム塩を含み、前記酸化剤ドナーは次亜ハロゲン酸発生化合物又は或いは過酸化物を含む(1)から(5)いずれかに記載の製造装置。
【0013】
(7) アミンドナーを第1流路に流通し、酸化剤ドナーを第2流路に流通し、合流部において合流させる二液系のスライムコントロール剤の製造方法であって、
第1ポンプにより、前記合流部へと前記アミンドナーを導出し、
第2ポンプにより、前記合流部へと前記酸化剤ドナーを導出し、
第1ポンプ又は第2ポンプの少なくとも一方と、前記合流部との間において、前記アミンドナー又は前記酸化剤ドナーの流通量の振幅を抑制する工程を有する製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポンプから導出されるアミンドナー又は酸化剤ドナーの流通量の振幅が抑制されるので、アミンドナー及び酸化剤ドナーの混合比率の変動幅が低減される。これにより、二液系のスライムコントロール剤の品質を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る製造装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る製造装置を構成する振幅抑制手段を実施した際の実施例を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る製造装置を構成する振幅抑制手段を実施した際の実施例を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る製造装置を構成する振幅抑制手段を実施した際の実施例を示す図である。
【図5】別実施形態に係る製造装置を構成する振幅抑制手段を実施した際の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る製造装置10は、二液系のオンサイト型のスライムコントロール剤(殺菌剤)を製造する製造工程において、各薬液の濃度変動を抑制し、二液系のスライムコントロール剤の品質を安定化できるものであるところ、以下では、本発明の製造方法を実現するために好適な実施形態の製造装置10について図1〜図2を参照しながら説明する。以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに特に限定されるものではない。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る製造装置10のブロック図である。図1に示されるように、製造装置10は、薬液としてアミンドナーを流通するための第1流路20、薬液として酸化剤ドナーを流通するための第2流路30、第1流路20及び第2流路30のポンプを制御するポンプ制御装置41及び第1流路20において流通するアミンドナーと、第2流路30において流通する酸化剤ドナーとを合流させる合流部42を備える。各要素の詳細を以下説明する。
【0018】
[ブロック図]
第1流路20は、第1タンク21、第1ポンプ23、第1振幅抑制手段24、第1ポンプ23から第1振幅抑制手段24に延びて第1タンク21と第1ポンプ23と第1振幅抑制手段24とを接続する第1導入管22、第1振幅抑制手段24から合流部42に延びて第1振幅抑制手段24と合流部42とを接続する第1導出管25を備える。同様に、第2流路30は、第2タンク31、第2ポンプ33、第2振幅抑制手段34、第2ポンプ33から第2振幅抑制手段34に延びて、第2タンク31と第2ポンプ33と第2振幅抑制手段34とを接続する第2導入管32、第2振幅抑制手段34から合流部42に延びて第2振幅抑制手段34と合流部42とを接続する第2導出管35を備える。第1流路20を構成する第1タンク21、第1導入管22、第1ポンプ23、第1振幅抑制手段24及び第1導出管25と、第2流路30を構成する第2タンク31、第2導入管32、第2ポンプ33、第2振幅抑制手段34及び第2導出管35については略同じ構成であるため、第1流路20と異なる構成のみ説明する。
【0019】
第1タンク21及び第2タンク31は、それぞれスライムコントロール剤を製造する薬液としてアミンドナー及び酸化剤ドナーを貯留しうるように構成されている。アミンドナーとしては水溶性アンモニウム塩、臭化アンモニウム、硫酸アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液が挙げられ、酸化剤ドナーとしては次亜ハロゲン酸発生化合物、過酸化物等が挙げられる。この第1タンク21において貯留されているアミンドナー及び第2タンク31において貯留されている酸化剤ドナーの濃度は、0.1〜99%(w/v)溶液が用いられる。
【0020】
なお、本発明における「二液系」とは、二以上の薬液で構成されるものを指す。すなわち、薬液を貯留するタンクは、第1タンク21及び第2タンク31の2つに限られず、第1タンク21や第2タンク31と同様のタンクを3つ以上備え、複数のタンクにおいてそれぞれ異なる成分からなる薬液を貯留してもよい。これにより、複数のタンクに貯留されている各薬液を混ぜ合わせて複数液系のスライムコントロール剤の製造を行うことができる。
【0021】
第1タンク21に貯留されているアミンドナーは、第1ポンプ23により合流部42へ、第2タンク31に貯留されている酸化剤ドナーは、第2ポンプ33により合流部42へと、それぞれ導出される。
【0022】
第1ポンプ23及び第2ポンプ33は、液体の流通を定量的に行うものである限りにおいて限定されないが、一般的にはダイヤフラムポンプ、プランジャポンプ又はベローズポンプであり、脈動により薬液の流通量の振幅を発生する。例えば、ダイヤフラムポンプは、薬液の吐出及び吸入を行うポンプ室の一部がダイヤフラム(膜)等の弾性体で構成され、このダイヤフラムを往復運動させることによって、ポンプ室を拡縮し薬液の吐出及び吸入を行っている。このため、第1ポンプ23の吐出時には薬液が供給され、第1ポンプ23の吸入時には、第1ポンプ23内に設けられている逆止弁(図示せず)の作用により、薬液の吸入は行われずに薬液の供給が停止される。したがって、第1ポンプ23の吐出及び吸入に伴い、ダイヤフラムから脈動が生じ、この脈動に伴い薬液の流通量の振幅が発生することとなる。プランジャポンプ及びベローズポンプについても同様である。そして、このような薬液流通量の振幅の発生が、各薬液の混合比率の変動の原因である。そこで、かかる薬液の混合比率の濃度変動を抑制するための第1振幅抑制手段24及び第2振幅抑制手段34について、後述の図2を参照して詳述する。
【0023】
第1振幅抑制手段24は、第1ポンプ23と合流部42との間に配置され、第1ポンプ23から薬液が供給される際に発生する脈動に伴う薬液の流量の振幅を抑制する。第1振幅抑制手段24は、第1導入管22を介して第1タンク21及び第1ポンプ23と接続されるとともに、第1導出管25を介して合流部42と接続されている。同様に、第2振幅抑制手段34は、第2ポンプ33と合流部42との間に配置され、第2ポンプ33から薬液が供給される際に発生する脈動に伴う薬液の流量の振幅を抑制する。第2振幅抑制手段34は、第2導入管32を介して第2タンク31及び第2ポンプ33と接続されるとともに、第2導出管35を介して合流部42と接続されている。これにより、第1ポンプ23又は第2ポンプ33から供給される薬液の流量の振幅を、合流部42に至る前に抑制することができる。
【0024】
本実施形態では、第1振幅抑制手段24及び第2振幅抑制手段34は、合流部42よりも上流に配置されている。これにより、第1振幅抑制手段24又は第2振幅抑制手段34において、第1ポンプ23又は第2ポンプ33から供給される薬液の流量の振幅を、合流部42に至る前に抑制することができる。
【0025】
また、本実施形態では、第1ポンプ23と合流部42との間に第1振幅抑制手段24を配置し、第2ポンプ33と合流部42との間に第2振幅抑制手段34をそれぞれ配置している。これにより、第1ポンプ23と第2ポンプ33の双方から導出される各薬液の混合比率を一定にすることができるため、二液系のスライムコントロール剤の品質を安定化することができる。ただし、これに限られず、例えば、第1振幅抑制手段24又は第2振幅抑制手段34のいずれか一方のみを配置してもよく、この場合でも、第1流路20又は第2流路30のうち、振幅抑制手段が設けられたいずれかの流路において導出される薬液の流通量の振幅を抑制することができる。
【0026】
合流部42では、第1ポンプ23により導出されたアミンドナー及び第2ポンプ33により導出された酸化剤ドナーが合流し、互いに混じりあう。本実施形態では、合流部42において混じり合った薬液は、図示しない溶媒管等により供給される溶媒に希釈される。これにより、アミンドナーと酸化剤ドナーとの混合比率の変動幅が低減された状態で混じり合った薬液を溶媒に希釈して、スライムコントロール剤の品質を安定化することができる。
【0027】
[振幅抑制手段]
図2を参照して、第1振幅抑制手段24及び第2振幅抑制手段34について説明する。第2振幅抑制手段34については、第1振幅抑制手段24と略同じ構成であるため、第2振幅抑制手段34についての説明は省略し、第1振幅抑制手段24についてのみ説明する。
【0028】
第1振幅抑制手段24は、液体及び気体が収容される略密閉空間65を有する貯留槽61を備える。第1振幅抑制手段24は、エアチャンバ、レシーバタンク又はエアダンパとも呼ばれ、第1ポンプ23の薬液の吐出時には、気層63の空気が圧縮されることで密閉空間65の瞬間的な吐出圧を吸収し、第1ポンプ23の吸入時、すなわち第1ポンプ23からの薬液の吐出が停止された時には、圧縮された気層63の空気が膨張することにより、薬液が導出される。
【0029】
貯留槽61は、密閉空間65の容積が略一定となるように構成され、この密閉空間65は、導入された薬液である液層62と、液層62以外の部分である気層63とで占められる。気層63は、貯留槽61の密閉空間65内において増加した圧力を吸収するための緩衝層として機能する。貯留槽61は、密閉性及び耐圧性を有するプラスティックや金属素材等により構成され、圧力がかけられた液体及び気体を保持する。気層63は、液層62のアミンドナーと反応せず、かつ、第1振幅抑制手段24が使用される環境下において気体の状態を維持する空気等の物質で構成される。
【0030】
貯留槽61の上端にはブロー弁64が設けられており、このブロー弁64は、貯留槽61内にかかる圧力が過剰となった場合に、密閉空間65内の気体を外界に排出する。ブロー弁64は、密閉空間65内にかかる圧力が所定の許容範囲内である場合には閉止され、密閉空間65内の気層63は外界から遮断されている。
【0031】
第1導出管25の開口25aは、液層62内に位置するように密閉空間65の上端から所定距離下方側に配置されている。これにより、開口25aは、常時、液層62内に位置し、液体を導出できる。第1導入管22の開口22aは、気層63内に位置するように密閉空間65の下端から所定距離上方側に配置されている。第1導入管22から導入された液体は、密閉空間65内の気体容積の増減に伴って第1導出管25から導出される。他方、第1導入管22の開口22aの位置は、液層62内であるか気層63内であるかを問わないが、好ましくは気層63内である。
【0032】
図2を参照して、第1振幅抑制手段24の動作について説明する。第2振幅抑制手段34については、第1振幅抑制手段24と略同じ構成であるため、第1振幅抑制手段24の動作のみ説明する。
【0033】
図2(1)に示すように、第1ポンプ23から薬液が吐出される前においては、液層62と気層63との圧力は均衡している。
【0034】
次に、第1ポンプ23から薬液が吐出されると、図2(2)に示すように、吐出された薬液が第1導入管22を介して、第1導入管22の開口22aから吐出される。これにより、液層62の液体の量が増加し、液層62の上端縁62aが上方に押し上がる。すると、気層63の空気は、液層62の増加に伴い圧縮され、液層62の容量の増加分を吸収する。この時、気層63の圧力は増加する。
【0035】
次に、第1ポンプ23が吸入を行うと、第1ポンプ23からの薬液の供給量が減少するため、図2(3)に示すように、気層63の圧力を元に戻すために気層63が膨張を開始し、液層62の上端縁62aを徐々に下方に押し下げる。これにより、液層62の薬液は、第1導出管25の開口25aに入り込み、合流部42側へと排出され、やがて液層62と気層63の圧力が均衡する図2(1)の状態に戻る。
【0036】
気層63の圧縮及び膨張は、液層62の増減に伴う受動的な作用であるため、その速度が液層62の増減速度よりも遅い。このため、薬液の吐出量の振幅に比べ、薬液の排出量の振幅が抑えられる。このような振幅の抑制の有無は、第1導入管22から導入される薬液の吐出量と、第1導出管25から導出される薬液の吐出量とを経時的にモニタリングすることにより、特定することができる。すなわち、第1導入管22から導入される薬液の吐出量及び第1導出管25から導出される薬液の吐出量を経時的にモニタリングし、前者の振幅幅が後者の振幅幅に比べて小さい場合には、振幅が抑制されたと特定できる。
【0037】
このように、第1ポンプ23及び第2ポンプ33の吐出及び吸入に伴い薬液の流量の振幅が発生しても、貯留槽61内の密閉空間65内の気体容積の増減を繰り返すことにより、第1ポンプ23及び第2ポンプ33から薬液が供給される際の流通量の振幅よりも小さい振幅で薬液を供給できる。これにより、脈動により薬液の流通量の振幅が発生するダイヤフラムポンプ、プランジャポンプ又はベローズポンプといった簡単な構成により作成されるポンプを用いた場合であっても、スライムコントロール剤を製造する際のアミノドナーと酸化剤ドナーとの混合比率の変動幅を低減することができる。
【0038】
ここで、図5に示すように、合流部42において合流した薬液を希釈する溶媒を流通する第3流路50を備えてもよい。第3流路50を備えることで、第1タンク21に貯留されているアミンドナー及び第2タンク31に貯留されている酸化剤ドナーは、それぞれ合流部42を介して第3流路50へ導出される。
【0039】
第3流路50は、第1ポンプ23及び第2ポンプ33の下流に配置された合流部42を介して第1流路20及び第2流路30と合流し、アミンドナー及び酸化剤ドナーを希釈する溶媒を流通しうるように構成され、溶媒タンク51、溶媒ポンプ52及び溶媒管53を備える。
【0040】
溶媒タンク51は、合流部42において合流して混合された薬液を希釈するための溶媒(例えば、水)を貯留し、溶媒ポンプ52は、溶媒タンク51に貯留されている溶媒を一定量ずつ吸い上げて溶媒管53に供給する。溶媒管53は、溶媒ポンプ52から供給された溶媒を合流部42から供給された薬液と混じり合わせた後に、パルプ製造ラインや循環冷却水ライン等のスライムコントロールすべき箇所に供給する。ここで、溶媒ポンプ52と合流部42との間には、第1振幅抑制手段24や第2振幅抑制手段34と同様の振幅抑制手段を配置してもよい。これにより、溶媒が平均化して供給されるため、スライムコントロール剤における薬液の濃度を均質化できる。
【0041】
第3流路50を備えた製造装置10’の第1振幅抑制手段24及び第2振幅抑制手段34は、第3流路50よりも上流に配置されている。これにより、第1振幅抑制手段24又は第2振幅抑制手段34において、第1ポンプ23又は第2ポンプ33から供給される薬液の流量の振幅を、第3流路50に至る前に抑制することができる。
【0042】
合流部42が第3流路50の上流に位置する場合には、混じりあった薬液は第3流路50の溶媒管53へと流れ、溶媒に希釈される。これにより、アミンドナーと酸化剤ドナーとの混合比率の変動幅が低減された状態で混じり合った薬液を溶媒に希釈して、スライムコントロール剤の品質を安定化することができる。ただし、これに限られず、例えば、合流部42を第3流路50の溶媒管53に設置し、アミンドナー及び/又は酸化剤ドナーが希釈された後に合流させてもよい。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の別実施形態に係る製造装置について、図3を参照して説明する。第2実施形態に係る製造装置は、エアチャンバ型の振幅抑制手段ではなく、蛇腹(ベローズ)型の振幅抑制手段により脈動を防止する点で、第1実施形態に係る製造装置とは異なる。
【0044】
[振幅抑制手段]
図3を参照して、第2実施形態の第1振幅抑制手段24A及び第2振幅抑制手段34Aについて説明する。第2振幅抑制手段34Aについては、第1振幅抑制手段24Aと略同じ構成であるため、第1振幅抑制手段24Aについてのみ説明する。
【0045】
第1振幅抑制手段24Aは、液体及び気体が収容される略密閉空間65Aを有する貯留槽61Aを備える。貯留槽61Aは、密閉空間65Aの容積が可変となるように一定の弾性力を有する伸縮素材で構成され、気体容積の増減は、密閉空間65A内の容積の増減により生じる。第2の実施形態の第1振幅抑制手段24Aは、第1ポンプ23の吐出時には貯留槽61Aが伸張されることで密閉空間65Aの瞬間的な吐出圧を吸収し、第1ポンプ23の吸入時、すなわち第1ポンプ23からの薬液の吐出が停止された時には、伸張した貯留槽61Aが徐々に収縮することにより薬液が導出される。
【0046】
貯留槽61Aは、密閉空間65Aの容積が可変となるように構成され、この密閉空間65Aは、導入された薬液である液層62と、液層62以外の部分である気層63とで占められる。伸縮素材により形成された貯留槽61Aは、貯留槽61Aの密閉空間65内において増加した圧力を吸収するための緩衝材として機能する。貯留槽61Aは、圧力がかけられた液体及び気体に応じて伸張及び収縮し、かつ、元の形状に復元しようとする復元力のある可撓性を有するプラスティック素材等により形成されている。この貯留槽61Aを略垂直方向に対し伸縮可能な蛇腹状に形成することにより、伸張時の形状変化が一定となり、また製造装置10をコンパクト化できる。気層63は、液層62のアミンドナーと反応せず、かつ、第1振幅抑制手段24が使用される環境下において気体の状態を維持する空気等の物質で構成される。ただし、貯留槽61Aの形状は、略円筒形の蛇腹に限られず、貯留槽61Aを伸張及び収縮可能なゴム等のエラストマーにより形成し、この貯留槽61Aが任意方向に伸張及び収縮することにより、貯留槽61Aの密閉空間65内において増加した圧力を吸収してもよい。
【0047】
第1導出管25の開口25aは、液層62内に位置し、かつ、液層62の上端縁62aに接するように密閉空間65の上端から所定距離下方側に配置され、貯留槽61Aの上端において固定されている。これにより、開口25aは、常時、液層62内に位置し、液体を導出できる。第1導入管22の開口22aは、液層62内に位置するように密閉空間65の下端から所定距離上方側に配置されている。第1導入管22から導入された液体は、密閉空間65内の容積の増減に伴って第1導出管25から導出される。他方、第1導入管22の開口22aの位置は、液層62内であるか気層63内であるかを問わないが、好ましくは液層62内である。第1導出管25の開口25aは、液層62の上端縁62aに接するように配置されているがこれに限られず、液層62内にあればよい。また、第1導出管25は、密閉空間65の上端において必ずしも固定されている必要はなく、密閉状態で接続され、かつ、第1導出管25の開口25aが液層62内にあればよい。
【0048】
図3を参照して、第1振幅抑制手段24Aの動作について説明する。第2振幅抑制手段34Aについては、第1振幅抑制手段24Aと略同じ構成であるため、第1振幅抑制手段24Aの動作のみ説明する。
【0049】
図3(1)に示すように、第1ポンプ23から薬液が吐出される前においては、液層62及び気層63にかかる圧力と貯留槽61Aの元の形に戻ろうとする復元力とは均衡している。
【0050】
次に、第1ポンプ23から薬液が吐出されると、図3(2)に示すように、吐出された薬液が第1導入管22を介して、第1導入管22の開口22aから吐出される。これにより、液層62の液体の量が増加し、液層62の上端縁62aが上方に押し上がる。すると、貯留槽61Aは伸張され、液層62の容量の増加分を吸収する。この時、貯留槽61Aは元の形状に戻ろうとする復元力が働く。
【0051】
次に、第1ポンプ23が吸入を行うと、第1ポンプ23からの薬液の供給量が減少するため、図3(3)に示すように、伸張した貯留槽61Aが復元力により元の形に戻るために貯留槽61Aが変形を開始し、液層62の上端縁62aを徐々に下方に押し下げる。これにより、液層62の薬液は、第1導出管25の開口25aに入り込み、合流部42側へと排出され、やがて液層62及び気層63にかかる圧力と貯留槽61Aの元の形に戻ろうとする復元力とが均衡する図3(1)の状態に戻る。
【0052】
貯留槽61Aの元の形に戻ろうとする復元力は、液層62の増減に伴う受動的な作用であるため、その速度が液層62の増減速度よりも遅い。このため、薬液の吐出量の振幅に比べ、薬液の排出量の振幅が抑えられる。
【0053】
このように、第1ポンプ23及び第2ポンプ33の吐出及び吸入に伴い薬液の流動の振幅が発生しても、貯留槽61Aの伸張及び収縮を繰り返すことにより第1ポンプ23及び第2ポンプ33から薬液が供給される際の流通量の振幅よりも小さい振幅である薬液を供給できる。これにより、脈動により薬液の流通量の振幅が発生するダイヤフラムポンプ、プランジャポンプ又はベローズポンプといった簡単な構成により作成されるポンプを用いた場合であっても、スライムコントロール剤を製造する際のアミノドナーと酸化剤ドナーとの混合比率の変動幅を低減することができる。
【0054】
[第3実施形態]
次に、本発明の別実施形態に係る製造装置について、図4を参照して説明する。第3実施形態に係る製造装置は、エアチャンバ型の振幅抑制手段ではなく、伸縮体を備えた振幅抑制手段により脈動を防止する点で、第1実施形態に係る製造装置とは異なる。
【0055】
[振幅抑制手段]
図4を参照して、第3実施形態の第1振幅抑制手段24B及び第2振幅抑制手段34Bについて説明する。第2振幅抑制手段34Bについては、第1振幅抑制手段24Bと略同じ構成であるため、第1振幅抑制手段24Bについてのみ説明する。
【0056】
第3の実施形態の第1振幅抑制手段24Bは、液体及び気体が収容される略密閉空間65Bを有する貯留槽61Bを備える。略密閉空間65Bは、気体が封入された伸縮体71と、伸縮体71以外の部分である液体貯留部70とで占められ、容積が略一定である。液体貯留部70への液体の侵入及び排出に伴って伸縮体71内の気圧が減増し、これにより略密閉空間65B内の気体容積が増減する。
【0057】
貯留槽61Bは、密閉性及び耐圧性を有するプラスティックや金属素材等により構成され、圧力がかけられた液体及び伸縮体71を保持する。貯留槽61Bは、一端に開口72を有し他端に底部73を有する円筒状に形成され、この開口72を介して貯留槽61B内に液体を導入し又排出する。伸縮体71は、略球状に形成され第1導入管22から供給されるアミンドナーと反応せず、かつ、伸縮体71の容積が可変となるように一定の弾性力を有する伸縮素材で構成される。伸縮体71内に封入される気体は、第1振幅抑制手段24Bが使用される環境下において気体の状態を維持する空気等の物質で構成される。
【0058】
伸縮体71は、液体貯留部70において圧力がかけられた液体に応じて伸張及び収縮し、かつ、元の形状に復元しようとする復元力のある可撓性を有するゴム等のエラストマー等により形成されている。伸縮体71は、密閉空間65B内において増加した圧力を吸収するための緩衝材として機能する。
【0059】
図4に示すように、伸縮体71は、伸張状態及び収縮状態のいずれの場合であっても、貯留槽61Bの内方に配置されている。また、伸縮体71の表面は、貯留槽61Bの側壁に接触しているため、液体貯留部70に薬剤が進入して液体貯留部70内の液体の量が増加したり、液体貯留部70から薬剤が排出され液体貯留部70内の液体の量が減少したりした場合であっても、常に貯留槽61Bの側壁に沿って同一軌道の移動を繰り返す。また、伸縮体71は、貯留槽61Bの側壁と接触するように形成され、液体貯留部70に薬剤が進入して液体貯留部70内の液体の量が増加し、伸縮体71が圧縮され、貯留槽61Bの側壁に沿って移動した場合であっても、伸縮体71の表面が貯留槽61Bの底部73と接触する。このため、底部73の存在により伸縮体71の過度の移動が阻止され、貯留槽61Bの側壁及び底部73により保持された状態で伸縮体71は伸張及び収縮を繰り返す。したがって、伸縮体71内に気体を封入して、この伸縮体71を貯留槽61B内に配置することにより、貯留槽61Bに接続されている第1導入管22や第1導出管25の向きが変わったり、製造装置10自体に振動が加わった場合であっても、安定した状態で貯留槽61B内において増加した圧力を吸収することができる。
【0060】
第1導出管25及び第1導入管22は、それぞれ貯留槽61Bの開口72と接続されている。第1導入管22から導入された液体は、密閉空間65内の容積の増減に伴って第1導出管25から導出される。第1ポンプ23の薬液の吐出時には、貯留槽61B内に収容された伸縮体71が収縮されることで密閉空間65Bの瞬間的な吐出圧を吸収し、第1ポンプ23の吸入時、すなわち第1ポンプ23からの薬液の吐出が停止された時には、収縮された伸縮体71内の空気が徐々に膨張することにより、開口72を介して薬液が導出される。本実施形態における第1導出管25及び第1導入管22は開口72を共有しているが、これに限られず、別々の管として貯留槽61Bに接続されてもよい。
【0061】
図4を参照して、第1振幅抑制手段24Bの動作について説明する。第2振幅抑制手段34Bについては、第1振幅抑制手段24Bと略同じ構成であるため、第1振幅抑制手段24Bの動作のみ説明する。
【0062】
図4(1)に示すように、第1ポンプ23から薬液が吐出される前においては、密閉空間65Bにかかる圧力と伸縮体71の元の形に戻ろうとする復元力とは均衡している。
【0063】
次に、第1ポンプ23から薬液が吐出されると、図4(2)に示すように、吐出された薬液が第1導入管22を介して、貯留槽61Bの開口72から密閉空間65B内に進入する。これにより、伸縮体71を圧縮すると、伸縮体は収縮され、密閉空間65B内の液体が増加する。この時、伸縮体71は元の形状に戻ろうとする復元力が働く。
【0064】
次に、第1ポンプ23が吸入を行うと、第1ポンプ23からの薬液の供給量が減少するため、図4(3)に示すように、収縮した伸縮体71が復元力により元の形に戻るために伸縮体71が変形を開始し、密閉空間65B内の液体を徐々に圧迫する。これにより、密閉空間65B内の薬液は、貯留槽61Bの開口72に入り込み、第1導出管25を介して合流部42側へと排出され、やがて密閉空間65Bにかかる圧力と伸縮体71の元の形に戻ろうとする復元力とが均衡する図4(1)の状態に戻る。
【0065】
伸縮体71の元の形に戻ろうとする復元力は、密閉空間65B内に進入及び密閉空間65B内から排出する液体の増減に伴う受動的な作用であるため、その速度が密閉空間65B内に進入及び密閉空間65B内から排出する液体の増減速度よりも遅い。このため、薬液の進入又は排出量の振幅に比べ、薬液の排出量の振幅が抑えられる。
【0066】
このように、第1ポンプ23及び第2ポンプ33の吐出及び吸入に伴い薬液の流動の振幅が発生しても、伸縮体71の伸張及び収縮を繰り返すことにより第1ポンプ23及び第2ポンプ33から薬液が供給される際の流通量の振幅よりも小さい振幅である薬液を供給できる。これにより、脈動により薬液の流通量の振幅が発生するダイヤフラムポンプ、プランジャポンプ又はベローズポンプといった簡単な構成により作成されるポンプを用いた場合であっても、スライムコントロール剤を製造する際のアミノドナーと酸化剤ドナーとの混合比率の変動幅を低減することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 製造装置
20 第1流路
21 第1タンク
22 第1導入管22
22a 上端
23 第1ポンプ
24 第1振幅抑制手段
25 第1導出管
25a 開口
30 第2流路
31 第2タンク
32 第2導入管32
33 第2ポンプ
34 第2振幅抑制手段
35 第2導出管
41 ポンプ制御装置
42 合流部
50 第3流路
51 溶媒タンク
52 溶媒ポンプ
53 溶媒管
61 貯留槽
61A 貯留槽
62 液層
62a 上端縁
63 気層
64 ブロー弁
65 密閉空間
70 液体貯留部
71 伸縮体
72 開口
73 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンドナーが流通する第1流路と、酸化剤ドナーが流通する第2流路とが合流部において合流する二液系のスライムコントロール剤の製造装置であって、
第1流路に設けられ、前記合流部へと前記アミンドナーを導出する第1ポンプと、
第2流路に設けられ、前記合流部へと前記酸化剤ドナーを導出する第2ポンプと、を備え、
前記第1ポンプ又は前記第2ポンプの少なくとも一方と、前記合流部との間に、前記アミンドナー又は前記酸化剤ドナーの流通量の振幅を抑制する振幅抑制手段が設けられている製造装置。
【請求項2】
前記振幅抑制手段は、液体及び気体が収容される略密閉空間を有する貯留槽を備え、
前記第1流路又は前記第2流路は、前記第1ポンプ又は前記第2ポンプから前記略密閉空間へと延びる導入管と、前記略密閉空間から前記合流部へと延びる導出管と、を備え、
前記導入管から導入された液体は、前記略密閉空間内の気体容積の増減に伴って前記導出管から導出される請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記貯留槽は、前記略密閉空間の容積が略一定となるように構成され、
前記気体容積の増減は、前記略密閉空間内の気圧の減増により生じる請求項2に記載の製造装置。
【請求項4】
前記貯留槽は、前記略密閉空間の容積が可変となるように伸縮部材で構成され、
前記気体容積の増減は、前記略密閉空間内の容積の増減により生じる請求項2に記載の製造装置。
【請求項5】
第1ポンプ及び第2ポンプの下流の所定箇所において第1流路又は第2流路と合流し、前記アミンドナー及び前記酸化剤ドナーを希釈する溶媒が流通する第3流路を更に備え、
前記振幅抑制手段は、前記所定箇所よりも上流に設けられている請求項1から4いずれかに記載の製造装置。
【請求項6】
前記アミンドナーは、水溶性アンモニウム塩を含み、前記酸化剤ドナーは次亜ハロゲン酸発生化合物又は或いは過酸化物を含む請求項1から5いずれかに記載の製造装置。
【請求項7】
アミンドナーを第1流路に流通し、酸化剤ドナーを第2流路に流通し、合流部において合流させる二液系のスライムコントロール剤の製造方法であって、
第1ポンプにより、前記合流部へと前記アミンドナーを導出し、
第2ポンプにより、前記合流部へと前記酸化剤ドナーを導出し、
第1ポンプ又は第2ポンプの少なくとも一方と、前記合流部との間において、前記アミンドナー又は前記酸化剤ドナーの流通量の振幅を抑制する工程を有する製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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