説明

スライムモニター、スライムのモニタリング方法及びコントロール方法

【課題】比較的簡易な構成で精度よくスライムをモニタリングすることができるスライムモニターと、このスライムモニターを用いたスライムのモニタリング方法及びコントロール方法を提供する。
【解決手段】プロトン透過性を有した非導電性の隔膜2と、該隔膜2の一方の面に設けられた、被検液が接触する第1の導電体(負極6)と、該隔膜2の他方の面に設けられた、塩化第2鉄水溶液などの電子受容体含有流体が接触する第2の導電体(正極5)とを備えてなるスライムモニター本体と、該被検液を脱気処理する脱気手段Dとを備えたスライムモニター。このモニターの検出値に基づいてスライムコントロール剤の添加量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ、冷却水系などの水系のスライムをモニタリングするためのスライムモニターに係り、特に微生物発電システムを利用したスライムモニターに関する。また、本発明は、このスライムモニターを用いた水系におけるスライムのモニタリング方法及びコントロール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水系のスライムをモニタリングするスライムモニターとして、特開2009−236715(特許文献1)に、プロトン透過性を有した非導電性の隔膜と、該隔膜の一方の面に設けられた、被検液が接触する第1の導電体と、該隔膜の他方の面に設けられた、酸素含有ガスが接触する第2の導電体とを備えてなるものが記載されている。
【0003】
このスライムモニターにあっては、被検液と接触した第1の導電体にスライムが付着すると、該第1の導電体が微生物発電装置の負極として機能する。また、酸素含有ガスと接触する第2の導電体が正極として機能する。
【0004】
この第1の導電体では、付着した微生物が有機物を以下の式にしたがって分解し、電子(e)とプロトン(H)が生成する。
【0005】
(有機物)+HO→CO+4H+4e
【0006】
第1の導電体と、酸素含有ガスが接触する第2の導電体とを電気配線で接続すると、上記反応で生成した電子はこの電気配線を通って正極へ到達し、非導電性隔膜を通過して第2の導電体に到達したプロトンとともに、酸素を電子受容体とした下記の反応式にしたがって水が生成する。このときの発生電圧は理論的には1.1Vとなる。
【0007】
+4H+4e→2H
【0008】
上記電気配線中に抵抗を挿入すると、抵抗値に応じた電流が流れると共に、抵抗と電流との積に相当する電位差(電圧降下)が抵抗の両端間に生じる。この電流又は電位差は、第1の導電体へのスライム付着量に比例するので、この電流又は電位差から被検液のスライム発生傾向を検知することができる。
【0009】
そこで、上記特開2009−236715では、同号公報の段落[0031]〜[0035]の通り、第1の導電体と第2の導電体との間の電位差又は電流に基づいて薬注量を制御する。
【0010】
なお、負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接する正極を有する正極室とを備えた微生物発電装置の該正極室に空気などの酸素含有ガスを供給して発電を行う微生物発電方法及びその装置は、特開2010−170828号などに見られる通り公知である。
【0011】
また、この正極室内を液で満たし、この液を酸素含有ガスで曝気する微生物発電方法及び装置も公知である(特開2009−231230)。
【0012】
正極室内にフェリシアン化カリウム水溶液を通水し、フェリシアン化カリウムを電子受容体とした還元反応
Fe(CN)3−+e+H→FeH(CN)3−
を行わせてプロトンと電子で消費する微生物発電方法及び装置が特開2009−152091号及び特開2009−152097号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−236715
【特許文献2】特開2010−170828
【特許文献3】特開2009−231230
【特許文献4】特開2009−152091
【特許文献5】特開2009−152097
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
微生物発電装置の負極室に被検液を流通させてスライム傾向をモニタリングするモニター装置では、アノードに付着した生物が有機物を分解し、生成した電子が電線を通じてカソードへ送られる。その際、対象とする被検液中に溶存酸素が存在すると、生物が生成した電子が溶存酸素に消費され、電線に流れる分が減少する。したがって、被検液中に溶存酸素(DO)が存在すると、発電量に誤差が生じる。
【0015】
例えば、DOが8mg/L存在する場合、すべての電子がDOに消費されるとすると、これに相当する量の有機物(この場合、BODとして約15mg/L)が分解される。したがって、BOD15mg/Lに相当する分はスライム増殖ポテンシャルとしては検出できないことになり、スライムモニタリングの精度が低くなる。
【0016】
なお、逆浸透膜分離装置への通水系(RO通水系)では、ごく低濃度のBOD成分の存在でスライムが発生し、長期間経過するうちにこのスライムが原因となってフラックスが低下するので、スライムを精度よくモニタリングすることが望まれる。
【0017】
本発明は、比較的簡易な構成で精度よくスライムをモニタリングすることができるスライムモニターと、このスライムモニターを用いたスライムのモニタリング方法及びコントロール方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明(請求項1)のスライムモニターは、プロトン透過性を有した非導電性の隔膜と、該隔膜の一方の面に設けられた、被検液が接触する第1の導電体と、該隔膜の他方の面に設けられた、電子受容体含有流体が接触する第2の導電体とを備えてなるスライムモニターにおいて、該被検液を脱気処理する脱気手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項2のスライムモニターは、請求項1において、前記第1の導電体と前記第2の導電体との間が、抵抗を含む電気配線によって接続されており、該抵抗の両端間の電位差または配線を流れる電流を測定する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項3のスライムモニターは、請求項1又は2において、前記電子受容体含有流体が塩化第2鉄の水溶液であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明(請求項4)のスライムのモニタリング方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライムモニターの前記脱気手段によって水系の水を脱気処理し、この脱気処理した水を前記第1の導電体と接触させて前記第1の導電体と第2の導電体との間の電位差または電流を測定し、その測定値に基づいて該水系におけるスライムの生育の有無又はスライム付着量をモニタリングするものである。
【0022】
本発明(請求項5)のスライムコントロール方法は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライムモニターの前記脱気手段によって水系の水を脱気処理し、この脱気処理した水を前記第1の導電体と接触させて前記第1の導電体と第2の導電体との間の電位差または電流を測定し、その測定値に基づいて該水系に対するスライムコントロール剤の添加量を制御するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスライムモニターは、上記特許文献1のスライムモニターにおいて、被検液を脱気処理してから第1の導電体と接触させるので、被検液中の溶存酸素の影響が排除され、水系におけるスライムの発生傾向を精度よくモニタリングすることができる。
【0024】
そして、この水系のスライムのモニタリング結果に基づいて、水系に対するスライムコントロール剤の薬注を過不足なく的確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施の形態で用いられるスライムモニター本体の断面図である。
【図2】実施の形態に係るスライムモニターのフロー図である。
【図3】試験結果を示すグラフである。
【図4】別の実施の形態で用いられるスライムモニター本体の断面図である。
【図5】別の実施の形態で用いられるスライムモニター本体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0027】
第1図は本発明の実施の形態で用いられるスライムモニター本体としての微生物発電装置の概略的な構成を示す模式的断面図である。第2図はスライムモニターのフロー図である。
【0028】
槽体1内がプロトン透過性の区隔材2によって正極室3と負極室4とに区画されている。正極室3内にあっては、区隔材2に密着するように、導電性多孔質材料よりなる正極(第2の導電体)5が配置されている。正極5と槽体1の壁面との間のスペースは正極溶液で満たされている。この正極溶液は流入口3aから流入し、正極室上部の流出口3bから流出する。
【0029】
この正極溶液には、酸素、フェリシアン化カリウム又は塩化第2鉄などの電子受容体が溶解している。なお、後述の実施例では電子受容体として塩化第2鉄が溶解している。
【0030】
負極室4内には、導電性多孔質材料よりなる負極(第1の導電体)6が配置されている。この負極6は、区隔材2に密着しており、負極6から区隔材2にプロトン(H)が受け渡し可能となっている。
【0031】
負極室4には流入口4aから被検液(水系の水)を脱気処理してから導入し、流出口4bから廃液を排出させる。なお、負極室4内は嫌気性とされる。
【0032】
正極室3内に正極溶液を通液することにより、
(有機物)+HO→CO+H+e
なる反応が進行する。この電子eが負極6、端子9、外部抵抗8、端子7を経て正極5へ流れる。
【0033】
上記反応で生じたプロトンHは、区隔材2を通って正極5に移動する。正極5では、電子受容体が酸素の場合
+4H+4e→2H
なる反応が進行する。電子受容体がフェリシアン化カリウムの場合
Fe(CN)3−+e+H→FeH(CN)3−
なる反応が進行する。電子受容体が塩化第2鉄の場合
FeCl+H+e→FeCl+HCl
なる反応が進行する。なお、正極溶液中のフェリシアン化カリウム又は塩化第2鉄の濃度は0.01〜4wt%特に0.1〜2wt%程度が好適である。
【0034】
隔膜5としては、プロトン透過性を有した非導電性の合成樹脂膜が好適であり、例えばカチオン交換膜、アニオン交換膜、バイポーラ膜、精密濾過膜、逆浸透膜などが好適であるが、スライムモニターの感度を高めるために、プロトンの移動の容易さからカチオン交換膜が特に好適である。プロトンを透過させ易くするために、隔膜は厚さが10μm〜1mm程度の薄いものが好ましい。
【0035】
負極6は、多くの微生物を保持できるよう、表面積が大きく空隙が多く形成され通水性を有する、且つ生物に対する毒性のない素材よりなる多孔体が好ましい。具体的には、導電体のシートや導電体をフェルト状、クロス状、ペーパー状、ハニカム状、格子状その他の多孔性シートにした多孔性導電体(例えばグラファイトフェルト、発泡チタン、発泡ステンレス等)が挙げられる。
【0036】
負極6は、厚さが0.03〜40mm、特に0.1〜10mm程度であることが好ましい。
【0037】
正極5としては、材料及び厚さ共に負極6と同様のものを用いることができる。なお、高感度とするためには、導電性材料で構成された多孔質基材に触媒を坦持させたものが好ましく、例えばグラファイトフェルトやカーボンペーパーを基材として白金等を坦持させたものが好適である。高感度を必要としない場合には、安価なグラファイトをそのまま(つまり、白金を担持させずに)使用してもよい。また、白金以外の安価な触媒、例えば、コバルト、ニッケル、マンガン等を使用しても良い。
【0038】
第2図のように、本発明では、水系の水(原水)を脱気手段Dで脱気処理した後、負極室4に流通させる。脱気手段としては、窒素脱気装置、膜脱気装置など各種のものを用いることができる。
【0039】
脱気の程度は、溶存酸素(DO)が実質的に0mg/Lであることが最も好ましいが、実用的には、コスト及び手間を勘案して、冷却水系では1mg/L以下、特に0.5mg/L以下程度、逆浸透膜装置への通水系(RO通水系)であれば0.5mg/L以下、特に0.1mg/L以下となる程度が望ましい。
【0040】
このように脱気処理した水を負極室4に通水すると共に、正極室に空気、酸素、酸素含有ガスなどや、電子受容体含有液を流通させることにより、負極6にスライム(微生物を含んだ粘着性物質)が生成、付着し、正極5と負極6との間に電位差が発生するようになる。
【0041】
この電位差は、負極6に付着した微生物の量及び水系の有機物濃度に依存する。
【0042】
水系が有機物を多く含むなどスライムを生成させ易い状況にあるほど、微生物の代謝活動が活発となり、両極間の電位差Vが大きくなる。従って、この電位差Vから水系のスライム増加傾向を検知する(モニタリングする)ことができる。
【0043】
なお、上記電位差が大きいほど、両極間に流れる電流Iも多くなることから、この電流Iを検出することによっても水系のスライム増加傾向を検知することができる。
【0044】
また、有機物濃度が短時間のうちに急激に上昇した場合には、電位差−時間グラフ又は電流−時間グラフの傾き(ΔV/Δt又はΔI/Δt)が大きくなり、有機物濃度が短時間のうちに急激に減少した場合にもこれらのグラフの傾き(ΔV/Δt又はΔV/Δtの絶対値)が大きくなる。従って、かかるΔV/Δt又はΔI/Δtを検知することによっても、水系のスライム傾向を検知することができる。この実施の形態では、水系の水を脱気処理してから負極室4に導入するので、溶存酸素の影響が排除され、水系のスライム傾向を精度良くモニタリングすることができる。
【0045】
この検知データ(電圧又は電流)に基づいて、水系に対するスライムコントロール剤の添加量を制御することにより、過不足なく、的確にスライムコントロール剤の薬注制御を行うことができる。なお、薬注量を制御するには、例えば薬注ポンプの吐出量を制御すればよいが、これに限定されない。
【0046】
スライムコントロール剤を添加することにより、導電体11,12間の電位差が低下するほど、スライムコントロール剤の添加効果が大きいことになる。
【0047】
この水系としては、ボイラ水系、循環冷却水系、紙パルプ水系、純水製造などの用水系、ガス処理のスクラバー用水系などが例示される。スライムコントロール剤は微生物の活動を抑制する作用を有するものであり、例えば、MBT(メチレンビスチオシアネート)、DBNPA(2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド)、DBNE(2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール)、BBAB(ビス−1,4−ブロモアセトキシ−2−ブテン)、MIT(5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン)、ジチオール(4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン)、CFIPN(5−クロロ−2,4,6−トリフルオロイソフタロニトリル)、HBDS(ヘキサブロモジメチルスルホン)、TCS(3,3,4,4−テトラクロロテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)、BNP(2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール)、BIT(ベンゾイソチアゾリン−3−オン)、GA(グルタールアルデヒド)などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の、例えば前記特許文献2〜5の微生物発電装置をスライムモニター本体として用いてもよい。また、本発明では、前記特許文献1のスライムモニターをスライムモニター本体として用いてもよい。第4,5図はこの特許文献1の構成を有したスライムモニター本体を示すものである。
【0049】
このスライムモニター本体11は、それぞれフランジ12a,13aを有した短い円筒形のホルダ12,13を用いてプロトン透過性を有した非導電性の隔膜14を保持し、この隔膜14の一方の面に密着するように負極としての第1の導電体21を配置し、隔膜14の他方の面に密着するように正極としての第2の導電体22を配置したものである。ホルダ12,13は、アクリル等の非導電性合成樹脂よりなるものであり、フランジ12a,13aを対峙させて同軸状に配置され、フランジ12a,13a間で隔膜14を挟持している。
【0050】
導電体11,12,隔膜14の材料は、前記実施の形態の負極、正極、及び隔膜と同様のものを用いることができる。ホルダ12,13の直径は、例えば5〜100mm程度とされるが、これに限定されない。
【0051】
導電体21,22間は、リード線23,25と抵抗24とによって電気的に接続されている。リード線23,25は、導電体21,22中に差し込まれることにより導電体21,22と導通している。
【0052】
リード線23,25及び抵抗24に流れる電流を測定するように電流計26が設けられていると共に、抵抗24の両端間の電位差を測定するように電圧計27が設けられている。なお、電流計26と電圧計27の一方のみが設けられてもよい。
【0053】
このスライムモニター本体11の第2の導電体(負極)22側へ脱気処理した被検液(水系の水)を流通させると共に、第1の導電体(正極)21側へ電子受容体含有流体(例えば塩化第2鉄水溶液、フェリシアン化カリウム水溶液又は空気など)を流通させることにより、水系のスライム傾向をモニタリングすることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例について説明するが、まず比較例について説明する。
【0055】
比較例1
スライムモニター本体として第1図に示す微生物発電装置を作成した。この発電装置の槽体1の全体の容積は60mL、負極室4の容積は37.5mL、正極室3の容積は22.5mLである。
【0056】
区隔材5としてカチオン透過膜(アストム社製,厚さ170μm)を使用した。
【0057】
負極6としては、50mm×150mmで厚さ5mmのグラファイトフェルトを用い、正極5としては、50mm×150mmで厚さ3mmのグラファイトフェルトを用いた。
【0058】
試験に先立って、このスライムモニター本体の正極室5にFeClの3g/L水溶液を5mL/minで循環通水すると共に、負極室4に酢酸ナトリウム10mg/L及び酵母エキス10mg/Lを含む野木町水を5mL/minで2日間通水した。その結果、1kΩの抵抗の両端の電圧は575mVになった。
【0059】
その後、野木町水に酵母エキスを5mg/L添加した被検液を負極室4に5mL/minで通水して測定を開始した。正極室5へは上記水溶液をそのまま循環通水した。
【0060】
通水を開始して12日目、15日目、25日目にそれぞれスライムコントロール剤としてタワクリンNT(栗田工業(株)製:塩素系スライムコントロール剤)を被検液中の薬剤濃度が塩素として20mg/Lとなるように添加し、35日目以降は被検液中の薬剤濃度が5mg/Lとなるように連続的に添加した。電位測定結果を第3図に示す。
【0061】
[実施例1]
比較例1と同じ装置を用い、同じ時期に同じ手順にて通水を開始した。なお、この実施例1では、測定に先立って酢酸ナトリウム10mg/L及び酵母エキス10mg/Lを含む野木町水を5mL/minで2日間通水した。その結果、1kΩの抵抗の両端の電圧は580mVになった。
【0062】
この実施例1では、測定時には被検液を曝気装置で曝気してから通水を行った。この曝気装置は、500mL洗気瓶を3個直列に接続し、窒素ガスを各洗気瓶に100mL/min通気するようにしたものである。
【0063】
比較例1と同様に、通水を開始して12日目、15日目、25日目にそれぞれスライムコントロール剤としてタワクリンNT(栗田工業(株)製:塩素系スライムコントロール剤)を被検液中の薬剤濃度が塩素として20mg/Lとなるように添加し、35日目以降は被検液中の薬剤濃度が5mg/Lとなるように連続的に添加した。電位測定結果を第3図に示す。
【0064】
第3図に示す通り、被検液の脱気処理を行う実施例1では、スライムコントロール剤を添加すると電位が低下し、長期間添加しないと電位が上昇という変化をしたのに対し、脱気しなかった比較例1では、電位の変化とスライムコントロール剤の添加が対応していない。
【符号の説明】
【0065】
1 槽体
2 区隔材
3 正極室
4 負極室
5 正極
6 負極
8 抵抗
11 スライムモニター本体
12,13 ホルダ
12a,13a フランジ
14 隔膜
21 第1の導電体
22 第2の導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトン透過性を有した非導電性の隔膜と、
該隔膜の一方の面に設けられた、被検液が接触する第1の導電体と、
該隔膜の他方の面に設けられた、電子受容体含有流体が接触する第2の導電体と
を備えてなるスライムモニターにおいて、
該被検液を脱気処理する脱気手段を備えたことを特徴とするスライムモニター。
【請求項2】
請求項1において、前記第1の導電体と前記第2の導電体との間が、抵抗を含む電気配線によって接続されており、該抵抗の両端間の電位差または配線を流れる電流を測定する手段を備えたことを特徴とするスライムモニター。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記電子受容体含有流体が塩化第2鉄の水溶液であることを特徴とするスライムモニター。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライムモニターの前記脱気手段によって水系の水を脱気処理し、この脱気処理した水を前記第1の導電体と接触させて前記第1の導電体と第2の導電体との間の電位差または電流を測定し、その測定値に基づいて該水系におけるスライムの生育の有無又はスライム付着量をモニタリングするスライムのモニタリング方法。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のスライムモニターの前記脱気手段によって水系の水を脱気処理し、この脱気処理した水を前記第1の導電体と接触させて前記第1の導電体と第2の導電体との間の電位差または電流を測定し、その測定値に基づいて該水系に対するスライムコントロール剤の添加量を制御するスライムコントロール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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