説明

スラスタユニットおよびスラスタユニットの取り付け方法

船体を備える船舶用のスラスタは、少なくとも1つのトンネル部材と少なくとも1つのスラスタユニットとを備える。船体に装着した際に、トンネル部材は船体の貫通トンネルの少なくとも一部を構成する。少なくとも1つのスラスタユニットと少なくとも1つのトンネル部材には、少なくとも1つのスラスタユニットを少なくとも1つのトンネル部材に取り外し可能に固定するための協働固定装置が設けられており、少なくとも1つのスラスタユニットをトンネルに挿入して少なくとも1つのトンネル部材に装着すること、あるいは少なくとも1つのトンネル部材から取り外してトンネル取り外すことができるように構成されている。船舶の船体に配設されたトンネル部材にスラスタを装着および取り外しする方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船体に設置されるスラスタであって、トンネル部材と少なくとも1つのスラスタユニットとを備え、該スラスタが船体に配置された時に、トンネル部材が船舶の船体を貫通するトンネルの一部を少なくとも構成するスラスタに係る。本発明はまた、スラスタが少なくとも1つのスラスタユニットと少なくとも1つのトンネル部材を備え、船舶がトンネル部材を貫通配設された船体を備える場合の、スラスタの一部としてのスラスタユニットを船舶に装着および取り外しを行うための方法にも係る。
【背景技術】
【0002】
このようなスラスタは、船舶の船体トンネルに配設されたプロペラ装置の形態を取るのが一般的であるが、従来の技術ではプロペラ装置は船舶の建造の際に装着される。これらの公知のプロペラ装置は、油潤滑式軸受と歯車に基づく構成であり、点検修理のための取り外しやプロペラ装置の交換が必要な場合は、船舶をドックに入れない限り不可能であった。このような場合、プロペラ装置を取り外すための主な作業は船舶の船体上で行うのが普通であり、時間とコストのかかる作業となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の目的は、装着および取り外しを簡単に行うことができ、船舶をドックに入れることなくスラスタユニットの装着および取り外しを行うことのできるスラスタユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、添付の独立請求項に定義した本発明により達成される。本発明のその他の実施形態はそれぞれの従属請求項に開示したとおりである。
【0005】
スラスタは船体を備えた船舶において推力を生成するために設けられ、少なくとも1つのトンネル部材と少なくとも1つのスラスタユニットとを備える。トンネル部材、船体に配設された際に、船体の貫通トンネルの少なくとも一部を構成する。また、少なくとも1つのスラスタユニットと少なくとも1つのトンネル部材とは、前記少なくとも1つのスラスタユニットをトンネルに挿通して前記少なくとも1つのトンネル部材に装着することができるように、あるいは前記少なくとも1つのトンネル部材から取り外してトンネルから引き出すことができるように、前記少なくとも1つのスラスタユニットを前記少なくとも1つのトンネル部材の中に、取り外し可能に固定するための協働固定装置を設けられている。
【0006】
トンネルの軸方向の長さは、当然ながら船舶の船体の設計および船体のどこにトンネルを配設するかにより異なる。従って、スラスタユニットの軸方向の長さは、トンネルの軸方向の長さと本質的に同じとすることができ、またスラスタユニットの軸方向の長さがトンネルの軸方向の長さの大部分または一部を構成するようにすることもできる。
【0007】
トンネル部材がトンネルの軸方向の全長の一部を構成する場合、トンネル部材はボルトやねじ等の適当な固定手段を用いてトンネルに取り付けるか、あるいは船体に取り付けることができる。あるいはまた例えば溶接などにより、トンネルまたは船体にトンネル部材をより恒久的に取り付けても良い。
【0008】
1つまたはそれ以上のトンネル部材をトンネルに配設することができる。例えば、トンネル部材をトンネルの各端部に配設しても良い。
【0009】
本発明の一実施形態では、スラスタユニットが第1固定装置を含むと共に、トンネル部材が第2固定装置を含み、第1固定装置と第2固定装置とはスラスタユニットとトンネル部材とを組み立てることができるように相補的な構成とする。
【0010】
スラスタはさらに、第1固定装置をこれと相補的に構成された第2固定装置に装着するための1つまたはそれ以上の固定手段を備えている。この固定手段は、スラスタユニットの装着および取り外しのために比較的容易に固定・解放ができるように構成された、例えば、ねじ、ボルト等の適当な固定手段を含む。
【0011】
本発明の一実施形態では、第1固定装置がスラスタユニットに取り付けられたブラケットを含んでおり、該ブラケットには突出型固定部材が設けられている。第2固定装置はトンネル部材、好ましくはトンネル部材のフランジまたはリングに配設された空洞部を含む。突出型固定部材と空洞部とは、好ましくは相補的な構成、即ち突出型固定部材が空洞部の形状に一致する形状を有する構成となっている。例えば、突出型固定部材と空洞部は、空洞部および突出型固定部材の軸方向の縦軸に対して垂直に断面を取った場合にそれぞれ円形断面を有する円筒状に構成することができる。スラスタユニットとトンネル部材は少なくとも1対の、但し好ましくは複数対の相補形状のブラケットと空洞部を設けられる。
【0012】
言うまでもなく、ブラケットと空洞部の位置を取り替えて、突出型固定部材を有するブラケットと、これと相補的な形状の空洞部とをトンネル部材とスラスタユニットにそれぞれ配設するようにしても良い。
【0013】
本発明の一実施形態では、空洞部に環状支持部材が設けられる。スラスタユニットがトンネルに配設されると、環状支持部材は空洞部の内側と突出型固定部材との間に位置することになる。本発明の別の実施形態では、環状支持部材が環状支持部材の軸方向の長手方向および/または環状支持部材の半径方向に可変の剛性を有して構成される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、第1固定装置が第1固定面を含むと共に、第2固定装置が第2固定面を含み、両固定面は、第1固定面を第2固定面に当接させることができるように相補的な形状となっている。可能な実施形態としては、固定手段の1つがフランジを含むと共に、相補的形状の固定手段がフランジを当接させることができる面を含むようにすることができる。さらに別の実施形態では、両方の固定手段がそれぞれスラスタユニットとトンネル部材とに形成された面を含み、これらの相補的な面を相互に接触させてスラスタユニットとトンネル部材との組立を行うことができる。これらの面は、フランジの面でない場合は、ショルダーなどの形態をとることができる。
【0015】
スラスタユニットをトンネル内に挿通して装着でき、また同じようにトンネルから取り外して取り除くことができるため、船舶をドックに入れる必要なしにスラスタユニットを船舶に装着および取り外しできることになる。
【0016】
本発明の一実施形態では、スラスタユニットはプロペラとこのプロペラを取り囲むプロペラリングを含み、プロペラの回転軸から最も遠くにあるプロペラ羽根の外縁部がプロペラリングに固定されるように構成されるのが好ましい。その場合、第1固定装置は好ましくはプロペラリングの上に配設される。
【0017】
さらに、本発明のこの実施形態では、トンネル部材内に回転可能なトンネルリングを設けても良い。この場合第2固定手段はトンネルリング上に配設するのが好ましい。
【0018】
別の実施形態は、スラスタユニットに内リングと外リングとを含むプロペラリング設け、必要な軸受を用いて内側リングを外リングに関して回転可能に配設する。この場合、スラスタの第1固定手段は外リングに配設し、外リングをトンネル部材に配設できるようにするのが好ましい。軸受は従来の軸受または磁気軸受、あるいは従来の軸受と磁気軸受とを組み合わせたものとすることができる。
【0019】
スラスタユニットのプロペラを回転させるための協働駆動手段は、好ましくはスラスタユニットとトンネル部材に配設される。この駆動手段は例えば電磁手段で構成することができる。
【0020】
より具体的に言うと、プロペラを駆動するための駆動手段は磁石と巻線とを含み、該磁石と巻線とをそれぞれスラスタユニットの回転部とトンネル部材の静止部、あるいはその逆に配設し、スラスタユニットの回転部が電動機の回転子として機能し、トンネル部材の静止部が固定子として機能するように構成する。その他の代替案も可能であり、例えば歯車伝動システムを用いて駆動力を回転子に伝えるようにしても良い。
【0021】
スラスタの回転部分は、当業者に周知の標準的な軸受により支持しても良い。また、スラスタの回転部分は、電磁軸受により支持することも可能である。その場合、電磁軸受を同ユニット内の駆動手段と結合することもできる。
【0022】
本発明によると、船舶の船体内に配設されたトンネル部材用のトンネル入り口も提供される。このトンネル入り口は、トンネル入り口の長手方向の中心軸に面する内側と、トンネル入り口の中心軸と反対方向を向く外側とを含み、さらに船体と反対方向を向く外縁部と、船舶の船体の方を向く内縁部とを含む。トンネル入り口はトンネル部材に取り外し可能に装着されるか、あるいはトンネル部材に設けられたスラスタユニット上に直接装着される。トンネル入り口はその外縁部における内径dと内縁部における内径dとを有し、dはdより大きい。
【0023】
さらに、本発明によると、船舶の船体にトンネル用のトンネル入り口が設けられる。このトンネル入り口は、トンネル入り口の長手方向中心軸に面する内壁と、トンネル入り口の中心軸と反対方向を向く外壁とを備えると共に、さらに船体の外側を向く外縁部と船舶の船体の方を向く内縁部とを備えており、該トンネル入り口は、トンネルに装着した際に少なくともトンネルの一部を構成するトンネル部材に取り外し可能に取り付けることができるように、またはトンネル部材に取り外し可能に装着されているスラスタユニットに取り外し可能に装着できるように構成されている。トンネル入り口はまた、その外縁部における内径dと内縁部における内径dとを有し、dをdより大きくすることにより、トンネルに出入りする水に対して最適なフローパターンを獲得することができる。
【0024】
トンネル入り口を通る最適なフローパターンを獲得するために、外縁部と内縁部との間のトンネル入り口の内壁には、トンネル入り口を通ってトンネル部材に入る流れ、また同様にトンネル部材から出てトンネル入り口に入る反対方向の流れに最適な水力学的条件を生むような構成が与えられている。このように、外縁部と内縁部との間のトンネル入り口の内壁を湾曲形状とすることにより、トンネルに出入りする水に対する最適なフローパターンを獲得することができる。一定のトンネル入り口を通水に対して最適なフロー条件を提供するトンネル入り口の内壁の形状は、当業者であれば適当なコンピュータプログラムを用いることにより個々のケースに応じて容易に算出することができよう。このような計算を行うコンピュータプログラムは市販されており、自由に入手可能である。
【0025】
トンネル入り口の一実施形態においては、強化材がトンネル入り口に設けられ、トンネル入り口の外周全体を取り囲んでいる。この強化材は、半径方向におけるトンネル入り口の材料の厚さが最大となる山部を有する波形とするのが好ましいが、その他の構成の補強材としても良いことは言うまでもない。別の可能性としては、例えばトンネル入り口の外周全体に中実の強化材を設けても良い。
【0026】
トンネル入り口に波形補強材を設けた場合、トンネル入り口の補強材の山部の稜線を、トンネル入り口の長手方向の中心軸と本質的に平行になるように構成することができる。ただし、言うまでもなく、例えば構造的な条件によりそのような構成が必要な場合など、必要に応じて、補強材の稜線がトンネル入り口の長手方向の中心軸に対して角度を成すように構成することも可能である。
【0027】
好ましくは、波形補強材の波の山部に固定手段用の貫通穴を設け、トンネル入り口をトンネル部材およびスラスタユニットに装着できるように、あるいは選択的に船舶の船体に直接装着できるようにする。これらの穴は、トンネル入り口の中心軸に本質的に平行となるように配設するのが好ましいが、例えば構造的な条件によりそのような構成が必要な場合など、必要に応じてトンネル入り口の中心軸と角度を成すように配設しても良いことは言うまでもない。
【0028】
別個のトンネル入り口を使用する代替手段として、実際のスラスタユニットのトンネルと反対方向を向く側に、スラスタおよびトンネルを出入りする水に対して最適な水力学的条件を提供する構造を形成することが挙げられる。従ってスラスタユニットのこの側が、スラスタユニットが配設されるトンネルへの入り口を形成することになる。
【0029】
また、少なくとも1つのスラスタユニットと少なくとも1つのトンネル部材を含むスラスタの一部であるスラスタユニットを船舶に装着および取り外しするための方法も提供される。船舶はさらに、貫通トンネルを有する船体を含み、トンネル部材を船体に配設した際にトンネル部材は少なくともトンネルの一部を構成する。スラスタユニットをトンネル部材に装着する場合には、
スラスタユニットを装着するトンネル部材に到達するまで該スラスタユニットをトンネル内に実質的に軸方向に挿通するステップと、
スラスタユニットを協働固定装置を介してトンネル部材に装着するステップと、を実行する。トンネル部材に装着されているスラスタユニットを取り外す際には、
スラスタユニットをトンネル部材に固定する協働固定装置を取り外すことにより、スラスタユニットをトンネル部材から取り外すステップと、
スラスタユニットをトンネル部材の開口部の何れかを通ってトンネルから実質的に軸方向に引き出すステップと、を実行する。
【0030】
本発明の一実施形態では、スラスタユニットに少なくとも1つの第1固定装置が設けられ、トンネル部材に少なくとも1つの第2固定装置が設けられる。少なくとも1つの第1固定装置と少なくとも1つの第2固定装置は相補的な形状の固定装置である。
【0031】
あるいは、上記のように、第1固定装置に突出型固定部材を有するブラケットを設ける一方、第2固定装置に内壁を有する空洞部を設け、突出型固定部材と空洞部との形状を補完的なものにしても良い。スラスタユニットをトンネル部材に装着する際、突出型固定部材を環状支持部材内に配設する前に環状支持部材を空洞部内に設けるのが望ましい。次いでスラスタユニットを、ブラケット、好ましくはトンネル部材の対応する空洞部内にそれぞれ配設された複数のブラケットに達するまでトンネル内に挿通する。次に、ボルト、ねじ等の適当な固定手段を用いて、スラスタユニットをブラケットに取り外し可能に固定する。
【0032】
このために、ブラケットには、トンネル部材のねじ切り穴に螺合できる1つまたはそれ以上のボルト用の貫通穴を形成しても良い。
【0033】
ブラケットのトンネル部材への固定は、例えば、突出型固定部材を取り囲み、かつ空洞部の直径より大きい半径方向の長さを有する、あるいは空洞部の断面が円形でない場合は 空洞部の断面積より大きい半径方向の長さを有するシート部材を用いることもできる。このシート部材にはさらに、トンネル部材のねじ切り穴に螺合可能なボルト、ねじ等を通すための穴を形成しても良い。シート部材をトンネル部材に螺合する場合は、突出型固定部材を空洞部の内部にクランプ締めするように配設し、その位置に保持する。
【0034】
本発明の一実施形態では、スラスタユニットを導入してトンネルユニットの固定手段の固定装着した後にトンネル入り口をスラスタユニットまたはトンネル部材に装着する。トンネル入り口は船体内のトンネルの入り口または出口において最適な流れの形態が生成されるように構成するのが望ましい。
【0035】
このようにして、スラスタユニットを船舶の船体内のトンネルに容易に挿通してトンネル部材に装着することができ、また後になってその必要が生じた時にトンネル部材から容易に取り外して船舶の船体内のトンネル内から引き出すことができる。
【0036】
同様に、スラスタユニットまたはトンネル部材に任意に装着されるトンネル入り口についても、スラスタユニットをトンネル部材から取り外してトンネル部材から引き出す前に取り外すことになる。
【0037】
以下、本発明の非限定的実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明によるスラスタユニットの斜視図である。
【図2】本発明によるトンネル部材の斜視図である。
【図3】図4のA−A断面を示す。
【図4】トンネル部材の正面図である。
【図5】トンネル入り口の斜視図である。
【図6】トンネル入り口の背面図である。
【図7】図6のB−B断面を示す。
【図8】トンネル入り口の正面図である。
【図9】トンネル部材の固定装置の一実施形態を示す図である。
【図10】スラスタユニットをトンネル部材に装着する場合の固定装置の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は本発明によるスラスタユニットを示している。
【0040】
以下の説明では、本発明の実施形態一つを示すが、これを以て本発明を限定するものとみなされるべきではない。
【0041】
図1〜図4は、船舶の船体に使用されるスラスタの一部を成すスラスタユニット30を示している。具体的には、このスラスタは船舶の船体内の貫通トンネルに配設されるように構成されている。また、スラスタが船舶の船体内の貫通トンネル全体を構成するようにしても良い。
【0042】
スラスタは、スラスタユニット12とトンネル部材14とから成る。トンネル部材14は、貫通トンネルの一部を構成するように、あるいは貫通トンネルが短い場合はトンネル部材14がトンネル全体を構成するように、船舶の船体に固定的に配設される。
【0043】
スラスタユニット12は、プロペラハブ32に取り付けられたプロペラ羽根34を有するプロペラと、プロペラ羽根の外縁部35の内側プロペラリング40とを備える。外側プロペラリング41が内側プロペラリング40を取り囲む。内側プロペラリング40は外側プロペラリング41に関して回転自在に設けられる。回転自在なリングを有するトンネル部材14を構成する他の方法として、スラスタユニットが備えるリングを1つのみとする方法がある。この1つのリングに第1固定装置16を設け、プロペラ羽根の外縁部35をリングの内側に固定する。
【0044】
内側プロペラリング40と外側プロペラリング41の何れかに、第1固定面26を有する第1固定装置16を設ける。トンネル部材14に第2固定面27を有する対応固定装置17を設ける。第1固定面26と第2固定面27とは、相互に接触した状態で共に装着することができるように構成される。
【0045】
このために、すなわち第1固定面と第2固定面とを共に装着するために、第1固定装置に穴36が設けられると共に、第2固定装置17に対応する穴37が設けられている。こうして、ボルト、ねじ等の固定手段を用いてスラスタユニット12をトンネル部材14に装着することができる。こうすることで、スラスタユニットは容易に装着することができ、また後に必要があればトンネル部材14から容易に取り外すことができる。
【0046】
スラスタユニット12をトンネル部材14に導入する側の貫通トンネルの端部にトンネル入り口45を設けても良い。このようなトンネル入り口の一例を図5〜図8に示す。
【0047】
トンネル入り口45は、部分的にトンネル入り口の中心軸に面する内壁47と、外壁48と、装着時にトンネル部材14、スラスタユニット12または船舶の船体に当接する内縁部50とで構成されている。
【0048】
内壁47は、船舶の船体内の貫通トンネルに流入する水に最適なフローパターンが与えられるように構成される。好ましくは、図7を見ると明らかなように、トンネル入り口45でトンネル入り口の中心軸に対して直角に取った断面において内壁が湾曲した形状を呈するようにする。
【0049】
外壁48は、補強材52をトンネル入り口45の全周に亘って設けて構成される。図示の実施形態では、これらの補強材52がトンネル部材の外周に波形補強材を構成する。波形補強材52は波の稜線55を形成する波の山部53を有しており、その個所でトンネル部材の半径方向の厚さが最大になる。
【0050】
補強材52には穴56を設け、ボルト、ねじ等の固定手段を用いてトンネル入り口14またはスラスタユニット12、あるいは船舶の船体にトンネル入り口45を装着できるように(また後に必要に応じて取り外せるように)するのが好ましい。
【0051】
本発明によると、トンネル部材14とスラスタユニット12とは、スラスタユニットをトンネル部材14内に軸方向に導入できるように構成され、トンネル部材14とスラスタユニット12とはそれぞれ対応する固定装置16,17を形成されているため、スラスタユニット12はトンネル部材14に容易に装着できると共に、後に必要に応じて取り外すことができる。また、トンネル入り口45は個々のスラスタに適合させたものであり、船舶の船体内の貫通トンネルに出入りする水の流れに対して最適な条件を生み出せるように、スラスタまたは船舶の船体に装着すること、および後に必要に応じて取り外すことができる。
【0052】
図9と図10は、スラスタユニット12をトンネル部材14に固定する別の方法を示している。図9に示すように、トンネル部材14は該トンネル部材14の空洞部に装着されたブラケット60を有している。ブラケット60は、好ましくはボルト、ねじ等の固定手段を介してスラスタユニット12に着脱自在に固定される。なお、図9ではスラスタユニット12の、ブラケット60を装着した部分のみを示している。
【0053】
図10はブラケット60をより詳細に示しており、スラスタユニット12がどのようにトンネル部材14に固定されるかを示している。空洞部58がトンネル部材14の中に設けられている。好ましくは、剛性可変の環状支持部材63が空洞部58内に設置される。環状支持部材63と空洞部58との間に環状の鋳物65を配置しても良い。ブラケット60には突出型固定部材61が設けられており、これが環状支持部材63内に配置される。ブラケット60はさらにボルト67によりスラスタユニット12に固定される。スラスタユニット12は、トンネル部材14に配置されたブラケット60に達するまで該スラスタユニットを通過し、次いでボルトを用いてブラケットに固定するだけで容易にトンネル部材14に装着することができる。後に、点検や交換のためにスラスタユニットを取り外す必要が生じた場合、ボルト67を外してスラスタユニット12をトンネル部材およびトンネルかから引き抜くだけで良い。従って、ドックに入れてそのような作業をする必要はなく、スラスタユニットが動力部と一体になっており、スラスタユニットを取り外すには構造体に対して大がかりな作業を行う必要のある従来技術に比較すると、非常に簡略化された構造となっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体を備える船舶用のスラスタであって、該スラスタが、少なくとも1つのトンネル部材と、少なくとも1つのスラスタユニットとを備え、前記トンネル部材は船体に配設された際に船体内貫通トンネルの少なくとも一部を構成し、前記少なくとも1つのスラスタユニットと前記少なくとも1つのトンネル部材とは、前記少なくとも1つのスラスタユニットがトンネルに挿通されて前記少なくとも1つのトンネル部材に装着されるか、あるいは前記少なくとも1つのトンネル部材から取り外されてトンネルから引き出されるように、前記少なくとも1つのスラスタユニットを前記少なくとも1つのトンネル部材の中に、取り外し可能に固定するための協働固定装置を設けられているスラスタにおいて、
前記協働固定装置が前記トンネル部材に設けられた少なくとも1つの空洞部と、前記空洞部と補完的な形状を有する突出型固定部材を含む少なくとも1つのブラケットとから成り、ブラケットはさらに1つまたはそれ以上の固定手段を用いて前記スラスタユニットに取り外し可能なように固定されるように構成されていることを特徴とするスラスタ。
【請求項2】
前記空洞部と前記突出型固定部材とは補完的な円筒形状に形成されており、前記空洞部の断面および前記突出型固定部材の断面が円形、楕円形または多角形であることを特徴とする、請求項1に記載のスラスタ。
【請求項3】
前記空洞部内に環状支持部材が設けられており、前記突出型固定部材が空洞部内に配置された際に、該環状支持部材は空洞部と突出型固定部材との間に位置することを特徴とする、請求項1または2に記載のスラスタ。
【請求項4】
前記環状支持部材が、前記支持部材の軸方向および/または半径方向に可変の剛性を有するように構成されていることを特徴とする、請求項3に記載のスラスタ。
【請求項5】
前記空洞部が、前記トンネル部材の中または上に配設されるフランジまたはリングを備えることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のスラスタ。
【請求項6】
前記スラスタが前記トンネルのトンネル入り口を備えており、該トンネル入り口は、トンネル入り口の長手方向の中心軸に相対する内壁と、トンネル入り口の中心軸と反対方向を向く外壁とを有しており、また前記船体から外を向く外縁部と、前記船舶の船体に向かって中を向く内縁部とを有しており、該トンネル入り口は、前記トンネルに装着されたときにトンネルの少なくとも一部を構成するトンネル部材またはトンネル部材に取り外し可能に配置されるスラスタユニットの何れかに取り外し可能に装着できるように構成されていることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のスラスタ。
【請求項7】
前記トンネル入り口がその外縁部における内径dとその内縁部における内径dとを有しており、dをdより大きくすることによって、前記トンネルを出入りする水のフローパターンを最適にできるトンネル入り口を構成することができることを特徴とする、請求項6に記載のスラスタ。
【請求項8】
前記トンネル入り口の外縁部と内縁部との間の内壁が湾曲状であることを特徴とする、請求項6または7に記載のスラスタ。
【請求項9】
前記トンネル入り口の外壁の上に、トンネル入り口の外周全体を囲んで強化材が配設されており、該強化材が波形であることを特徴とする、請求項6〜8の何れか一項に記載のスラスタ。
【請求項10】
前記波形強化材の波の山部に、トンネル入り口の長手方向中心軸と本質的に平行する稜線が形成されていることを特徴とする、請求項9に記載のスラスタ。
【請求項11】
前記波形強化材の波の山部に、固定手段用の穴が配設されており、前記トンネル入り口を前記トンネル部材または前記スラスタユニットに取り外し可能に装着できるように構成されていることを特徴とする、請求項9または10に記載のスラスタ。
【請求項12】
スラスタの一部であるスラスタユニットを船舶に装着および取り外しする方法であって、該スラスタが少なくとも1つのスラスタユニットと少なくとも1つのトンネル部材とを備え、船舶は貫通トンネルを有する船体を備え、トンネル部材は船体に配置された際に前記トンネルを少なくとも部分的に構成するものであり、スラスタユニットをトンネル部材に装着する際には、
スラスタユニットを装着するトンネル部材に達するまで該スラスタユニットをトンネル内に実質的に軸方向に挿入するステップと、
スラスタユニットを協働固定装置を介してトンネル部材に装着するステップと、を実行し、
トンネル部材に装着されているスラスタユニットを取り外す際には、
スラスタユニットをトンネル部材から取り外すステップと、
スラスタユニットをトンネルから実質的に軸方向に引き出し、トンネル部材の開口部の何れかから引き出すステップと、を実行する方法において、
該方法はさらに、スラスタをトンネル部材の装着地点まで挿入する前に、トンネル部材の対応する空洞部に突出型固定部材を有する少なくとも1つのブラケットを配置することを含み、前記突出型固定部材と対応する空洞部が相補的な形状を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブラケットを1つまたはそれ以上の固定装置を介してスラスタに取り外し可能に固定するステップを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
スラスタユニットをトンネル部材に装着する前に、スラスタユニットをトンネル内に装着した際に環状支持部材が突出型固定部材と空洞部の内壁との間に位置するように、環状支持部材を空洞部内に配設することを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記空洞部をトンネルのフランジ部材またはリング部材に配設することを特徴とする、請求項12〜14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
スラスタユニットをトンネルユニットの固定手段に導入して固定的に装着した後に、トンネル入り口をスラスタユニットまたはトンネル部材に装着することを特徴とする、請求項12〜15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
スラスタユニットをトンネル部材から取り外してトンネル部材から引き出す前に、スラスタユニットまたはトンネル部材に任意に装着されているトンネル入り口を取り外すことを特徴とする、請求項12〜15の何れか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−512144(P2013−512144A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541046(P2012−541046)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/NO2010/000435
【国際公開番号】WO2011/074971
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(506399295)ロールスロイス マリン アクティーゼルスカブ (4)