説明

スラリー状体の固液分離装置

【課題】 固体成分が細かなものや、絡み難い形状のものであっても、加工部の隙間から流出することなく、確実な固液分離が行え、また固液分離用のフィルタの装填工程を含めて、簡単な構成で効率良く固液分離が行えるスラリー状体の固液分離装置を提供する。
【解決手段】 内径面が円筒面状に形成された金型1と、この金型1の一端開口を開閉可能に閉じるゲート2と、金型1内に摺動自在に嵌合し、金型1内のスラリー状体Sをゲート2側に押し付けて圧搾する加圧ロッド3とを備える。金型1を所定の経路で移動させて複数の割出位置P1〜P3で位置決め可能な金型位置決め装置11を設ける。各割出位置に、フィルタ装填装置12と、スラリー状体供給装置13と、前記加圧ロッド3を金型1に挿入して圧搾を行う加圧装置14とを分配して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホーニング加工、スーパー加工、ラッピング加工、研削加工等により生じる加工液と粉状の加工屑等の混ざり合ったスラリー状体から、あるいは木材加工等により生じたスラリー状体から、固体成分と液体成分とを分離し、固体成分については可能な場合は固形化するスラリー状体の固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削加工や研磨加工では、研削屑等の粉状の加工屑が発生する。この粉状の加工屑は、クーラント等の加工液と混ざり合ったスラリー状体、つまりスラッジの状態で機外に排出する。排出されたスラッジは、ろ過や低圧フィルタプレス等によって固液分離し、加工液は回収して再利用する。
ろ過や、低圧フィルタプスレス等による固液分離法では、分離後の状態でも含液率が高く、十分な加工液の回収ができないばかりか、固液分離で濃縮された濃縮スラッジの再資源化ができず、従来は産業廃棄物として埋め立て処理していた。
【0003】
このような課題を解消するものとして、研削スラッジについては、図8に概略を示すように、濃縮スラッジS′をシリンダ状の金型51内に投入し、加圧ロッド53で圧搾してブリケット状に固形化するものが種々提案され(例えば特許文献1)、既に実用化されている。金型51の他端はゲート52で閉じ、固形化物はゲート52を開いて加圧ロッド53により押し出す。
【特許文献1】特開2001−300597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリンダ状の金型51と加圧ロッド53とを用いる研削スラッジの固形化装置は、加工屑が糸屑状で比較的に粗く絡み易い研削スラッジには使用可能であるが、次のようなスラッジには使用できない。例えばホーニング加工のスラッジ、スーパー加工のスラッジ、ラッピング加工のスラッジ、軸受転動体(ころ,鋼球)の仕上げ研削加工スラッジ等には使用できない。
【0005】
これは、加工屑が細かいことや、丸くて絡み難いことにより、金型51と加圧ロッド53やゲート52間等の加工部の機械的隙間δ1,δ2から加工屑が液体成分と共に流出してしまうためである。すなわち、一般的な研削屑は、比較的大きくて、また糸屑状となっているため、絡み易くて固形化が容易であり、また加工部の機械的隙間δ1,δ2から流出することが生じ難い。しかし、ホーニング加工のスラッジでは、加工屑が丸くて絡み合わず、またスーパー加工やラッピング加工のスラッジは加工屑が非常に細かい。軸受転動体の仕上げ研削加工スラッジも加工屑が細かい。そのため、上記の研削スラッジ用の固形化装置を使用することができない。
【0006】
加工部の機械的隙間δ1,δ2から加工屑が流出することは、固形化を困難にするばかりでなく、回収された液体成分に加工屑が混じることから、加工液の再利用の妨げとなり、回収した加工液を再度ろ過する処理が必要となる。
【0007】
なお、研削スラッジの固形化装置をホーニングスラッジの固形化等に利用する場合に、金属製のフィルタ等を固定して用い、加工部の機械的隙間から加工屑が流出することを防止することも試みられている。しかし、目詰まりにより安定したろ過ができなくなるため、フィルタを定期的に交換する必要が生じ、保守作業に手間がかかる。
【0008】
この他のホーニング加工等のスラッジの処理方法としては、ベルト状のフィルタを用いて密閉室内のエアー圧によりフィルタを通過させる低圧フィルタプレスや、沈殿装置等を用いる方法がある。しかし、いずれもスラッジの含液率を十分に低下させることができず、沈殿装置では50〜80%程度にまでしか含液率を低下させることができない。そのため、加工液の回収効率が悪いうえ、残った濃縮状態のスラッジの再資源化が困難にある。
【0009】
この発明の目的は、固体成分が細かなものや、絡み難い形状のものであっても、加工部の隙間から流出することなく、確実な固液分離が行え、また固液分離のためのフィルタの装填工程を含めて、簡単な構成で効率良く固液分離が行えるスラリー状体の固液分離装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のスラリー状体の固液分離装置は、内径面が円筒面状に形成されてスラリー状体が投入される立向きの金型と、この金型の下端開口を開閉可能に閉じるゲートと、前記金型内に上端開口から挿脱自在に嵌合し、前記金型内のスラリー状体を前記ゲート側に押し付けて圧搾する加圧ロッドとを備え、スラリー状体を前記圧搾により固体成分と液体成分とに分離する装置であって、
前記金型を所定の経路で移動させて複数の割出位置で位置決め可能な金型位置決め装置と、この金型位置決め装置による一つの割出位置で金型内の下側に固液分離用の繊維状のフィルタを装填するフィルタ装填装置と、下側のフィルタの装填された金型内に他の割出位置で前記スラリー状体を供給するスラリー状体供給装置と、前記フィルタ装填装置と兼用してまたは別に設けられて、前記スラリー状体の供給された金型内に固液分離用の上側のフィルタを装填する装置と、さらに他の割出位置に設けられ前記加圧ロッドを前記金型に挿入して前記圧搾を行う加圧装置とを備えることを特徴とする。
なお、この明細書で言うスラリー状体は、微細な固体と液体とが混ざったものを言い、スラッジを含む意味である。
【0011】
この構成によると、加圧ロッド側およびゲート側にフィルタを配置した状態で、金型内のスラリー状体を圧搾するため、スラリー状体における固体成分が細かなものであったり、絡み難い形状のものであっても、金型と加圧ロッドやゲート間の隙間から固体成分が流出することが前記フィルタで阻止される。また、シリンダ状の金型と加圧ロッドとを用いるため、金型内に充填したスラリー状体を、強い圧力で圧搾できる。そのため、スラリー状体から液体成分を高度に絞り出すことができる。例えば、固液分離後の圧搾体は、液体成分が10wt%以下のものとできる。このように、高度に固液分離が行えるため、分離後の圧搾体の再利用のための取扱いが容易であり、また液体成分の回収率を高めることができて、資源を経済的に利用でき、自然環境への負荷も軽減できる。
【0012】
フィルタの装填工程が増えるが、金型を移動させて各割出位置で、フィルタの装填、スラリー状体の供給、およびスラリー状体の圧搾の各工程を行うようにしたため、位置固定の金型に対してこれら各工程を行う場合と異なり、各工程の装置の干渉の問題が生じず、これらフィルタの装填、スラリー状体の投入、スラリー状体の圧搾の各処理を行う装置が、簡単な構成のもので済む。また金型を移動させるようにしたため、他の割出位置で圧搾を行っている間などにフィルタの装填のための準備が行え、フィルタ装填から、スラリー状体の投入、圧搾,排出までを効率良く行うことができ、生産性に優れたものとなる。
【0013】
また、上記フィルタは、圧搾により金型内に残った圧搾体と共に前記加圧ロッド等で押し出すことなり、毎回新品のフィルタを使用するため、安定したろ過が可能となり、フィルタを機械側に固定した場合のようなフィルタの目詰まりに対する定期的な交換が不要となる。そのため保守の手間が省け、作業環境の改善となる。
フィルタは、圧搾体に付着した状態となるが、フィルタの材質を適宜選定することで、固体成分の再利用における異成分混入等の問題とならず、フィルタが付いたままで圧搾体を例えば製鋼原料等として再利用することができる。また、圧搾毎に新たなフィルタが必要であるが、従来では利用できなかったスラリー状体の固体成分の再利用が可能になることや、液体成分の回収率が向上することや、回収された加工液のろ過が不要なことを考慮すると、フィルタの消費は環境面からもコスト面からも問題とはならない。前記フィルタはペーパー状のフィルタであってもよい。ペーパー状であると取扱性が向上する。
【0014】
この発明において、前記金型と前記ゲートとが共通のトラバース台に設置され、前記金型位置決め装置が、前記トラバース台を直線経路で進退させる案内レールおよび進退装置からなり、前記フィルタ装填装置は、上下のフィルタの装填を両方とも行いかつ同じ割出位置で行うものとし、このフィルタの装填を行う割出位置のトラバース台進退方向の両側に振り分けて、スラリー状体供給装装置による供給用の割出位置、および加圧装置による圧搾用の割出位置を配置しても良い。
この構成の場合、金型およびゲートを搭載したトラバース台を移動させるようにしたため、ゲートをフィルタ装填用の割出位置およびスラリー状体の投入用割出位置においても金型と共に使用でき、装置全体をより一層簡易なものとできる。トラバース台の移動経路が直線経路であるため、金型位置決め装置も簡易な構成のもので済む。
【0015】
上記のようにトラバース台に金型およびゲートを搭載する構成の場合に、前記トラバース台に、このトラバース台の進退方向に進退自在なインデックスベースを搭載し、前記金型の下端開口から固形化物を排出するシュートと前記ゲートとを、前記インデックスベースの移動によって互いに入れ替わって前記金型と整合する位置に配置可能なように前記インデックスベースに設置し、前記トラバース台の移動経路の両端に、トラバース台の移動で前記インデックスベースに当たってインデックスベースの移動を止め、トラバース台の移動を許容することで、金型に対する前記シュートと前記ゲートの配置の入れ替えを行うストッパを設けても良い。
この構成の場合、トラバース台を移動させてストッパにインデックスベースを押し当てることで、金型に対するゲートの開閉、およびゲートとシュートの入れ替えが行える。そのため、ゲートの開閉や、ゲートとシュートの入れ替えのために駆動源を別に設けることが不要で、装置全体がより一層簡素なものとできる。
【発明の効果】
【0016】
この発明のスラリー状体の固液分離装置は、内径面が円筒面状に形成されてスラリー状体が投入される立向きの金型と、この金型の下端開口を開閉可能に閉じるゲートと、前記金型内に上端開口から挿脱自在に嵌合し、前記金型内のスラリー状体を前記ゲート側に押し付けて圧搾する加圧ロッドとを備え、スラリー状体を前記圧搾により固体成分と液体成分とに分離する装置であって、前記金型を所定の経路で移動させて複数の割出位置で位置決め可能な金型位置決め装置と、この金型位置決め装置による一つの割出位置で金型内の下側に固液分離用の繊維状のフィルタを装填するフィルタ装填装置と、下側のフィルタの装填された金型内に他の割出位置で前記スラリー状体を供給するスラリー状体供給装置と、前記フィルタ装填装置と兼用してまたは別に設けられて、前記スラリー状体の供給された金型内に固液分離用の上側のフィルタを装填する装置と、さらに他の割出位置に設けられ前記加圧ロッドを前記金型に挿入して前記圧搾を行う加圧装置とを備えるため、スラリー状体の固体成分が細かなものや、絡み難い形状のものであっても、加工部の隙間から流出することなく、確実な固液分離が行え、また固液分離のためのフィルタの装填工程を含めて、簡単な構成で効率良く固液分離を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図7と共に説明する。まず、図1,図2と共に、スラリー状体の圧搾の工程、およびその固形化物につき説明する。このスラリー状体の固液分離装置は、内径面が円筒面状の金型1と、この金型1の一端開口を開閉可能に閉じるゲート2と、金型1内に摺動自在に嵌合し、金型1内に投入されたスラリー状体Sをゲート2側に押し付けて圧搾する加圧ロッド3とを備える。
【0018】
この固液分離装置は、加圧ロッド3の先端面3aおよびゲート2の内面2aに、これら加圧ロッド3の先端外周と金型1の内径面間の隙間d1、およびゲート2と金型1との接触面間の隙間d2を閉じる固液分離用の繊維状のフィルタ4,5を配置した状態で、金型1内のスラリー状体Sを加圧ロッド3により圧搾し、この圧搾により金型1内に残った固体成分を前記フィルタ4,5と共に、加圧ロッド3で押し出すようにしたものである。なお、金型1、ゲート2、および加圧ロッド3は、フィルタ4,5を上記のように使用可能なものであれば良く、フィルタ4,5の使用のために寸法,形状等の工夫を特に施したものでなくても良い。上記隙間d1は、図では強調して示しているが、例えば0.1mm以下である。
【0019】
金型1は立姿勢と横姿勢のいずれのものであっても良いが、この実施形態では立姿勢のものとされている。ゲート2は、金型1の下端の端面に沿って金型直径方向に摺動することで、金型1の下端開口を開閉するものとされている。ゲート2は、金型1の一端に挿脱自在にするプランジャ型のもの(例えば図8のゲート52)であっても良い。
【0020】
加圧ロッド3は、後述の加圧装置によって進退駆動され、金型1の上端から金型1内に挿脱可能で、かつゲート2が開いた状態で内部のスラリー状体Sの圧搾体を押し出し可能なストロークを有するものとされる。上記加圧装置は、サーボモータを駆動源とするものであっても、また油圧シリンダ等の油圧式のものであっても良い。
【0021】
処理対象となるスラリー状体Sとしては、鋼材におけるホーニング加工のスラッジ、スーパー加工のスラッジ、ラッピング加工のスラッジ、軸受のころ,鋼球等の転動体の仕上げ研削加工スラッジ、その他一般の研削加工のスラッジ等が使用できる。ホーニング加工のスラッジでは、その加工屑の粒径が1〜50μm程度であり、スーパー加工ではサブミクロン単位である。上記各加工を行う鋼材は、例えば焼入等の熱処理が施されたものであっても良い。処理対象となるスラリー状体Sは、上記の他に、おからや小豆かす等の食品かすや、パルプかす、脱水汚泥等であっても良い。また、スラリー状体Sは、固体成分が超鋼やガラス粉からなるものであっても良い。
【0022】
上下のフィルタ4,5は、紙フィルタまたは布製フィルタ等のペーパー状のものが使用される。フィルタ4,5は、この他に綿状やスポンジ状のものであってもよい。フィルタ4,5の材質は、化学繊維製のものであってもよいが植物繊維製のものが好ましい。フィルタ4,5の形状は、例えば円形のものとされ、金型1内に装填した状態で金型1の内径面に沿って立ち上がり部分4a,5aが生じる程度に、金型1の内径よりも大径ものが使用される。フィルタ4,5の粗さは、処理対象となるスラリー状体Sに応じて選定される。スラリー状体Sが鋼材のホーニング加工によるものである場合、通気量V(cm3/cm2 s)が、10〜300程度のものが選定される。
【0023】
上記構成の固液分離装置を用いた固液分離方法を説明する。金型1の下端開口がゲート2で閉じられ、加圧ロッド3が金型1から上方に抜け出した状態で、金型1内の底部に下側のフィルタ5を装填する。この後、スラリー状体Sを金型1内に上端開口から投入し、投入されたスラリー状体Sの上に被さるように、上側のフィルタ4を装填する。
このようにスラリー状体Sの投入、および上下のフィルタ4,5の装填が行われた状態で、加圧ロッド3を金型1内に進入させ、加圧ロッド3で金型1内のスラリー状体Sを圧搾する。圧搾が完了すると、ゲート2を開き、加圧ロッド3をさらに押し込んでスラリー状体Sの圧搾体を下端開口から排出する。
【0024】
この圧搾によりスラリー状体Sから絞り出された油,水,その他の加工液等の液体成分は、金型1と加圧ロッド3間の隙間d1、および金型1とゲート2の接触面間の隙間d2から排出される。このとき、各隙間d1,d2はフィルタ4,5で閉じられているため、スラリー状体Sから絞り出された液体成分は、各隙間d1,d2から直接に排出されることはなく、フィルタ4,5を透過して排出されることになる。
このため、スラリー状体Sの固体成分がホーニング加工による加工屑やスーパー加工,ラッピング加工の加工屑等のように微細のものであっても、固体成分が金型1と加圧ロッド3やゲート2との隙間d1,d2から流出することがなく、フィルタ4,5で補足される。したがって、従来の研削スラッジ固形化装置では固液分離が困難であったスラリー状体であっても、固液分離が可能になる。これにより、スラリー状体Sの圧搾による固形化が容易になると共に、ホーニング液等の液体成分が清浄化された状態で排出され、後にろ過することなく、再利用可能な状態の液体成分が回収できる。
【0025】
金型1内のスラリー状体Sは、圧搾により円柱形状のブリケット状の固形化物SB(図2)に固形化される。この固形化物SBは、固形化物本体SBaに両側のフィルタ4,5が付着したものとなる。また、円筒状の金型1と加圧ロッド3とを用いるため、圧力を高くして高度に固液分離することができる。スラリー状体Sがホーニング加工のスラッジである場合、スラッジ発生状態では含油率が例えば50wt%程度であり、この状態で金型1に投入されるが、上記圧搾により10%以下の含油率となる。
このように固形化物SBに固形化されることにより、運搬や保管等の取扱いが容易となるばかりでなく再資源化が可能となる。固体成分が鋼材のスラリー状体Sの場合、得られた固形化物SBは、製鋼原料として用いられ、炉内に投入される。また、含油率が例えば10%以下となる程度に、高度に固液分離が行えるため、液体成分である加工液の回収が高い効率で行える。これにより、資源を経済的に利用でき、自然環境への負荷も軽減できる。
【0026】
なお、固形化が困難なスラリー状体Sの場合、必ずしも固形化しなくても良い。固形化されていなくても、圧搾により含液率が低くなっていることにより、製鋼原料等としての利用が可能である。また、固形化されなくても、高度に固液分離が行えて、加工油等の回収効率が高められ、かつ清浄化された加工油が回収できるため、この加工油の回収面のみに着目しても経済的なものとなる。
【0027】
上記フィルタ4,5は、圧搾により金型1内に残った固形化物SBまたは未固形化の圧搾体と共に加圧ロッド3で押し出し、1回の圧搾毎に新たなフィルタ4,5を使用する。そのため、フィルタ交換の保守の手間が省ける。上記フィルタ4,5は、圧搾処理毎に圧搾体と共に排出するため、単に金型1内に入れるだけで良く、取付作業のような複雑な作業が不要であり、金型1内への装填が容易に行える。
【0028】
フィルタ4,5は、固形化物SBに付着した状態となるが、フィルタ4,5の材質を適宜選定することで、異成分混入等の問題とならず、フィルタ4,5が付いたままで、固形化物SBを例えば製鋼原料等として再利用することができる。フィルタ4,5が植物繊維製のものである場合、炉に入れると燃焼してしまうため、鋼材の材質に影響せず、また燃えたときに発生するガスや燃えかすが公害の原因となることもない。フィルタ4,5が固形化物SBに付着することで、使用済みフィルタ4,5の廃棄を別個に行う必要がなくて、これによっても作業性が向上する。
フィルタ4,5は、圧搾毎に新たなものが必要であるが、従来では利用できなかったスラリー状体の固体成分の再利用が可能になることや、液体成分の回収率が向上することと考慮すると、フィルタの消費は環境面からもコスト面からも問題とはならない。
【0029】
図3ないし図8は、この固液分離装置の具体的構成例を示す。この固液分離装置は、前記金型1を所定の経路で移動させて複数の割出位置P1〜P3で位置決め可能な金型位置決め装置11と、この金型位置決め装置11による一つの割出位置P2に設けられたフィルタ装填装置12と、他の割出位置P1に設けられたスラリー状体供給装置13と、さらに他の割出位置P3に設けられた加圧装置14とを備える。
【0030】
金型位置決め装置11は、金型1およびゲート2が搭載されたトラバースユニット30を直線経路で案内する案内レール16と、進退装置17とでなる。トラバースユニット30は、トラバース台15に、上記金型1、ゲート2、およびシュート31を搭載したものである。案内レール16は上下に2本平行に固定基台41に設けられたバー状の部材であり、トラバース台15に設けられた被案内部18(図7)が摺動自在に嵌合する。進退装置17は、案内レール16と平行に設けられたボールねじ等の送りねじ機構19と、この送りねじ機構19のねじ軸19aを回転させるACサーボモータ等のモータ20とでなる。送りねじ機構19のねじ軸19aは固定基台41に回転自在に設置され、ボールナット19b(図7)はトラバース台15に固定されている。
【0031】
図3おいて上記割出位置P1〜P3のうち、割出位置P2はフィルタ装填位置であり、そのトラバース台進退方向の両側に振り分けて、スラリー状体の供給用の割出位置P1、および加圧装置14による圧搾用の割出位置P3を配置されている。
【0032】
フィルタ装填装置12は、下端に真空チャックからなる吸着パッド21を設けた昇降ロッド22を、エアシリンダ等の昇降装置23で昇降させるものであり、下側のフィルタ5の金型1内への装填、および上側のフィルタ4の金型1内への装填を行うものとされる。下側のフィルタ5の装填は、平らな状態で金型1の上面置くようにし、後に加圧ロッド3で金型1内にフィルタ1を押し込むようにしても良い。なお、昇降装置23は、割出位置P2とその近傍のフィルタ供給台(図示せず)の上との間を往復移動可能に設けられ、フィルタ供給台上に準備されたフィルタを吸着して金型1内への装填を行う。
【0033】
スラリー状体供給装置13は、スラリー状体Sを貯留して定量ずつ金型1に供給するホッパからなる。スラリー状体供給装置13は、パイプ等からなるものであっても良い。
【0034】
加圧装置14は、加圧ロッド3を昇降させる機構であり、加圧ロッド3が下方に延びるように設けられた昇降体25を支持台26に昇降自在に設置し、加圧ロッド3を昇降体25と共にサーボモータ28および回転・直進変換機構27により昇降させるものである。サーボモータ28は、ACサーボモータからなり、減速機29を介して回転・直進変換機構27に伝達される。回転・直進変換機構27はボールねじ等の送りねじ機構からなり、昇降体25に固定されたナット27bと、昇降体25に回転自在に設置されたねじ軸27aとを備える。サーボモータ28は、加圧制御装置33により制御される。
【0035】
トラバースユニット30につき説明する。金型1の下端開口から固形化物SBを排出するシュート31とゲート2とが共通のインデックスベース36に設置され、インデックスベース36は、トラバース台15に対して案内部材37(図7参照)を介してトラバース台移動方向に移動自在に支持されている。案内部材37は、図7の他の図では図示を省略している。案内部材37は、ゲート2が金型1内のスラリー状体Sの加圧時に、その加圧力を受けることが可能なように、インデックスベース36を支持可能なものとされる。インデックスベース36は、トラバース台15に対する移動で、ゲート2とシュート31とが互いに入れ替わって金型1と整合可能とされ、ゲート2またはシュート31が金型1と整合する位置ではその位置が保持され、強制力により位置保持の解除が可能なように、ボールプランジャ等の節度機構(図示せず)が案内部材37に設けられている。
【0036】
トラバース台15の移動経路における両端には、トラバース台15上のインデックスベース36を当接させるストッパ38,39が固定基台41に設けてある。このストッパ38,39は、次の動作を行わせるものである。すなわち、金型位置決め装置11によるトラバース台15の移動により、図の左のストッパ38にインデックスベース36が当たると、インデックスベース36が停止するが、トラバース台15は移動を続けることができる。この移動により、トラバース台15上の金型1に対するゲート2とシュート31の位置が入れ替わる。これにより、図6(B)のようにゲート2が開き、金型1とシュート31とが整合する。
この状態から、トラバース台15を図3の右側へ移動させ、右端のストッパ39にインデックスベース36を押し当てると、上記とは逆方向にインデックスベース36がトラバース台15に対して移動し、ゲート2とシュート31とが元の状態に入れ替わって再度ゲート2が金型1を閉じる。
【0037】
この構成の固液分離装置の動作を説明する。最初に、図4に示すように、トラバースユニット30を割出位置P2に位置させ、フィルタ装填装置12により金型1内へ下方のフィルタ5を装填する。なお、ゲート2は金型1の下端開口を閉じる位置にある。
この後、トラバースユニット30を割出位置P1に移動させ(図5)、スラリー状体供給装置13から金型1内に所定量のスラリー状体Sを投入する。
トラバースユニット30を割出位置P2に再度位置させ、上記フィルタ装填装置12により上側のフィルタ4を、金型1に装填する。
【0038】
このフィルタ4,5の装填、スラリー状体Sの投入が行われたトラバースユニット30を、割出位置P3に移動させ(図3)、加圧装置14により、加圧ロッド3を金型1内に進入させて内部のスラリー状体Sを圧搾する。この圧搾により、スラリー状体Sは、図1と共に前述したように固形化物SBに固形化される。
【0039】
この後、トラバースユニット30を左側へ移動させる。トラバースユニット30のインデックスベース36がストッパ38に当たった後もトラバースユニット30の移動を続けることで、図6(B)と共に前述したように、ゲート2が開いてシュート31が金型1と整合する位置となる。
この状態で、トラバースユニット30を圧搾用の割出位置P3に戻し、ここで加圧装置14の加圧ロッド3で金型1内の固形化物SBを下方へ押し出すことにより、固形化物SBは金型1から抜け落ちてシュート31上を滑り落ち、排出される。
この排出後、トラバースユニット30を図の右端へ移動させ、インデックスベース36をストッパ39に押し当てて、ゲート2が金型1を閉じるようにゲート2とシュート31の位置を入れ替えてから、次の固液分離のためにトラバースユニット30をフィルタ装填用の割出位置P2へ移動させる。
【0040】
このように、金型1を搭載したトラバースユニット30を設け、金型1を移動させて各割出位置P1〜P3に移動させるようにしたため、上下のフィルタ4,5を装填する工程がありながら、上下のフィルタ4,5の装填、スラリー状体Sの投入、スラリー状体Sの圧搾、および固形化物SBの排出の各処理を行う装置が簡単な構成のもので済む。また、金型1を移動させるようにしたため、フィルタ装填装置12は、圧搾やスラリー状体Sの投入等を行っている間に、フィルタ4,5の供給台(図示せず)から新たなフィルタ4,5を吸着して準備しておくことができ、フィルタ装填から圧搾,排出までを効率良く行うことができ、生産性に優れたものとなる。
【0041】
なお、上記実施形態では、一つのフィルタ装填装置12で下側のフィルタ5および上側のフィルタ4の装填を行うようにしたが、下側のフィルタ5を装填するフィルタ装填装置と上側のフィルタ4を装填するフィルタ装填装置とを別々に設けて良い。その場合に、金型位置決め装置11による割出位置を増やし、両フィルタ装填装置を別の割出位置に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の一実施形態に係るスラリー状体の固液分離装置の要部を示す断面図である。
【図2】(A),(B)はそれぞれスラリー状体の固形化物の断面図および斜視図である。
【図3】同スラリー状体の固液分離装置の全体を示す破断正面図である。
【図4】同固液分離装置の動作状態の説明図である。
【図5】同固液分離装置の他の動作状態の説明図である。
【図6】(A),(B)はそれぞれ同固液分離装置におけるトラバースユニットの圧搾時および排出時の動作状態を示す破断正面図である。
【図7】(A),(B)はそれぞれ同固液分離装置におけるトラバースユニットの圧搾時および排出時の動作状態を示す破断側面図である。
【図8】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…金型
2…ゲート
3…加圧ロッド
4,5…フィルタ
11…金型位置決め装置
12…フィルタ装填装置
13…スラリー状体供給装置
14…加圧装置
15…トラバース台
16…案内レール
17…進退装置
27…回転・直進変換機構
28…サーボモータ
30…トラバースユニット
31…シュート
33…加圧制御装置
36…インデックスベース
P1〜P4…割出位置
S…スラリー状体
SB…固形化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内径面が円筒面状に形成されてスラリー状体が投入される立向きの金型と、この金型の下端開口を開閉可能に閉じるゲートと、前記金型内に上端開口から挿脱自在に嵌合し、前記金型内のスラリー状体を前記ゲート側に押し付けて圧搾する加圧ロッドとを備え、スラリー状体を前記圧搾により固体成分と液体成分とに分離する装置であって、
前記金型を所定の経路で移動させて複数の割出位置で位置決め可能な金型位置決め装置と、この金型位置決め装置による一つの割出位置で金型内の下側に固液分離用の繊維状のフィルタを装填するフィルタ装填装置と、下側のフィルタの装填された金型内に他の割出位置で前記スラリー状体を供給するスラリー状体供給装置と、前記フィルタ装填装置と兼用してまたは別に設けられて、前記スラリー状体の供給された金型内に固液分離用の上側のフィルタを装填する装置と、さらに他の割出位置に設けられ前記加圧ロッドを前記金型に挿入して前記圧搾を行う加圧装置とを備えることを特徴とする、
スラリー状体の固液分離装置。
【請求項2】
請求項1において、前記フィルタがペーパー状のフィルタであるスラリー状体の固液分離装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記金型と前記ゲートとが共通のトラバース台に設置され、前記金型位置決め装置が、前記トラバース台を直線経路で進退させる案内レールおよび進退装置からなり、前記フィルタ装填装置は、上下のフィルタの装填を両方とも行いかつ同じ割出位置で行うものとし、このフィルタの装填を行う割出位置のトラバース台進退方向の両側に振り分けて、スラリー状体供給装装置による供給用の割出位置、および加圧装置による圧搾用の割出位置を配置したスラリー状体の固液分離装置。
【請求項4】
請求項3において、前記トラバース台に、このトラバース台の進退方向に進退自在なインデックスベースを搭載し、前記金型の下端開口から固形化物を排出するシュートと前記ゲートとを、前記インデックスベースの移動によって互いに入れ替わって前記金型と整合する位置に配置可能なように前記インデックスベースに設置し、前記トラバース台の移動経路の両端に、トラバース台の移動で前記インデックスベースに当たってインデックスベースの移動を止め、トラバース台の移動を許容することで、金型に対する前記シュートと前記ゲートの配置の入れ替えを行うストッパを設けたスラリー状体の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−29856(P2007−29856A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216802(P2005−216802)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】