説明

スルフィン酸塩化合物の製造方法

【課題】医農薬中間体として有用なスルフィン酸塩化合物の製造法を提供する。
【解決手段】式(A)で表されるスルフィン酸塩化合物を、1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン1,1-ジオキシド化合物とアミン化合物から製造する。


(式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルフィン酸塩化合物の効率的な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スルフィン酸塩化合物は、工業的に還元剤や遊離基発生剤として使用されているだけでなく、スルホニル基導入試剤として有用であり、医薬品中間体の重要原料として用いられる。また、スルフィン酸塩自体も皮膚外用剤としての働き(特許文献1)や放射線防御作用(非特許文献2)が報告されている重要な化合物である。したがって、スルフィン酸塩を効率的に合成することは工業的に重要な事である。
【0003】
従来から知られているスルフィン酸塩化合物を製造する方法として、塩化スルホニル化合物を還元する方法、二酸化硫黄とGrignard試薬あるいはジアゾニウム塩と反応させる方法などが一般的である(非特許文献2)。これらのうち、塩化スルホニル化合物の還元法が最も良く用いられている。また、1,2-オキサチオラン-4-オン 2-オキシド類とアミン類の反応によっても製造されている(非特許文献1)。
【0004】
しかし、塩化スルホニル化合物の還元によりスルフィン酸化合物を得る場合においては、反応温度の管理が重要である上に、得られるスルフィン酸を塩基で中和する際、不均化反応によりスルホン酸を与えてしまう問題がある。また、1,2-オキサチオラン-4-オン 2-オキシド類を出発原料として用いる場合においては、その原料合成に困難さがある。このようなことから、簡便な方法で目的のスルフィン酸塩化合物を製造する方法が望まれてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-329621号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T. P. Vasil’eva, N. I. Lisina, and V.V. Znamenskii, Pharm. Chem. J., 31, 258 (1997).
【非特許文献2】W. E. Truce and A. M. Murphy, Chem. Rev., 48, 69 (1951).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の事情を解決するためになされたものであり、生理活性物質の原料となるスルフィン酸塩化合物を高収率かつ簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に対してアミン化合物を反応させることにより、開環反応が効果的に進行して、生理活性物質の原料となり極めて有用な、スルフィン酸塩化合物が得られることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0009】
この出願は、以下の発明を提供するものである。
下記一般式(A)で表されるスルフィン酸塩化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に対して、下記一般式(C)で表されるアミン化合物を反応させることを特徴とするスルフィン酸化合物の製造方法。
【化1】

(式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)
【化2】

(式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、フェニル基から選ばれる基又は原子を表す。)
【化3】

(式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)
【発明の効果】
【0010】
本発明で得られる前記一般式(A)で示されるスルフィン酸塩化合物は、生理活性物質の原料として極めて有用なものである。本発明の前記一般式(A)で示されるスルフィン酸塩化合物の製造方法は、前記一般式(B)で示されるベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に前記一般式(C)で示されるアミン化合物を反応させることによるものであるから、簡便にしかも収率よく合成することができる。また、出発原料である前記一般式(B)で示されるベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物は容易に入手できる化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の目的化合物は、以下の一般式(A)により示されるスルフィン酸塩化合物である。
【化4】

前記式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。
また、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。
【0012】
前記R、Rの鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
前記R、Rの環状のアルキル基の具体例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル基等が挙げられる。
前記R、Rのフェニル基の置換基の具体例としては、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基としてメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等、炭素数1〜8のアルコキシル基としてメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基としてメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチロキシカルボニル、ヘキシロキシカルボニル、シクロヘキシロキシルカルボニル基等が、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
前記Rのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
前記Rのアルコキシル基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペンチロキシ、ヘキシロキシ、シクロヘキシロキシル基等が挙げられる。
前記Rのアルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、シクロプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、ペンチロキシカルボニル、ヘキシロキシカルボニル、シクロヘキシロキシルカルボニル基等が挙げられる。
前記Rのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0013】
前記一般式(A)で表されるスルフィン酸塩化合物を製造する方法は、以下の通りである。
下記一般式(B)で表される1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に対し、下記一般式(C)で表されるアミン化合物を反応させる。
【化5】

前記式中、Rは、前記一般式(A)により示されるスルフィン酸塩化合物のRの場合と同じである。
前記式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、フェニル基から選ばれる基又は原子を表す。
前記R、Rの鎖状のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、オクチル基等が挙げられる。
【化6】

前記式中、R、Rは、前記一般式(A)により示されるスルフィン酸塩化合物のR、Rの場合と同じである。
【0014】
この新規反応を2,2-ジメチル-1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド(b)(一般式(B):R=H、R、R=メチル基)と、ベンジルアミン(c)(一般式(C):R=H、R=ベンジル基)を反応させてスルフィン酸塩化合物(a)(一般式(A):R=H、R=ベンジル基、R=H)を合成する場合を例にとり説明する。
この反応は、下記の反応機構により進行する。
【化7】

すなわち、ベンジルアミンのアミノ基が、1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシドの4位のカルボニル基を攻撃して開環する際に、アセトンが脱離してスルフィン酸が生成する。これが過剰量のベンジルアミンと反応して、目的のスルフィン酸塩化合物を与えるものである。したがって、この反応機構からみて、一般式(B)で示される化合物として、RがH、R、Rがメチル基である化合物(b)だけでなく、置換基Rが、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子であり、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数であって、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、フェニル基から選ばれる基又は原子を表す化合物であっても同様な反応が進行することは明らかである。また、一般式(C)で示される化合物として、RがH、Rがベンジル基である化合物(c)だけでなく、置換基R、Rが、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表し、フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有している化合物であっても同様な反応が進行することは明らかである。
【0015】
ここで、化合物(C)として用いるアミン化合物の加える量として1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に対して2倍モル量でよいが、反応が塩基性条件下で進行することより、2.2〜3.0倍モル等量加えるのがよい。
【0016】
この反応は、反応溶媒中で行われる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、トルエン、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム等の非水性溶媒が挙げられ、これらの混合溶媒の形で使用してもかまわない。
【0017】
反応温度は、0℃〜120℃の範囲の温度で行う事ができる。この温度範囲以下の低温の場合には反応速度が遅くなり、この範囲を超えて高すぎる場合には、異常な分解反応や副反応が多い結果となる。このようなことから、前記温度範囲は20〜100℃の範囲であることが好ましい。
反応時間は、反応温度に左右され、一般に定めることができないが、通常は0.2〜5時間である。
【0018】
前記反応の原料物質である(B)の一部は既知化合物であり、(B)の製法の一例を挙げれば、チオサリチル酸とカルボニル化合物を酸存在下加熱をして得られる1,3-ベンゾオキサチイン-4-オンを過酸を用いて酸化する製造方法を挙げることができる(例えば、B. Krische and W. Walter, Chem. Ber., 116, 1708 (1983).等参照)。また、化合物(C)は、市販の化合物を用いることができる。
【0019】
本反応で得られるスルフィン酸塩化合物の具体例について例示すると、以下の化学式(1)〜(8)で示される化合物である。しかしながら、これらの化合物は代表例であって、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【化8】

【0020】
本発明で得られる前記一般式(A)で示されるスルフィン酸塩化合物は、生理活性物質の原料として極めて有用なものである。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。
以下に述べる実施例は本発明の理解を容易にするために代表的な化合物の一例をあげたものであり、本発明はこれに限定されるものではない。また、製造された化合物(1)〜(8)は、前記で示した化合物(1)〜(8)に対応するものである。
【0022】
実施例1
内容積30mLのガラス製容器中に2,2-ジメチル-1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド(226.3mg,1.0mmol)とベンジルアミン(322.0mg、3.0mmol)をテトラヒドロフラン(5ml)中に溶かし、加熱還流下1時間反応させた。生じた結晶をろ過し、テトラヒドロフランで洗浄した後、減圧乾燥した。これにより化学式(1)のスルフィン酸塩を得た(収率:96%)。当該スルフィン酸塩はエタノール−アセトンで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.188.3-189.0℃(EtOH/Acetone).
1H-NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 4.06 (2H, s), 4.61 (2H, s), 7.21-7.25 (1H, m), 7.30-7.34 (2H, m), 7.37-7.45 (8H, m), 7.56 (2H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.95 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 100 MHz): δ 44.4, 44.8, 124.2, 128.2, 128.7, 129.5, 130.0, 130.2, 130.2, 130.5, 131.8, 134.7, 135.3, 139.9, 155.6, 170.8.
IR (KBr): nmax 3285, 3066, 3033, 2817, 2750, 1634, 1538, 1006, 953, 730, 689 cm-1.
元素分析:計算値C21H22N2O3S: C, 65.95; H, 5.80; N, 7.32.
実測値C, 65.82; H, 5.74; N, 7.20.
【0023】
実施例2
実施例1においてベンジルアミンの代わりに2-フェネチルアミンを用いて2時間反応させることにより、化学式(2)のスルフィン酸塩を得た(収率:98%)。当該スルフィン酸塩はエタノールで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.139.8-145.0℃(EtOH).
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz): δ 2.90 (2H, t, J = 7.3 Hz), 2.92 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.08 (2H, t, J = 7.3 Hz), 3.60 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.17-7.33 (10H, m), 7.40 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.45 (2H, d, J = 7.3 Hz), 7.53 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.94 (2H, d, J = 7.3 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 125 MHz): δ 34.7, 36.5, 41.9, 42.8, 48.5, 48.7, 48.9, 49.0, 49.2, 49.3, 49.5, 124.1, 127.3, 128.2, 129.3, 129.5, 129.8, 129.9, 130.0, 130.5, 131.6, 135.5, 138.0, 140.6, 155.4, 170.8
IR (KBr): nmax 3524, 3500-2500, 1645, 1547, 1455, 1322, 1011, 950, 749, 700, 580, 500, 475 cm-1.
【0024】
実施例3
実施例1においてベンジルアミンの代わりに1-フェニルエチルアミンを用いて5時間反応させることにより、化学式(3)のスルフィン酸塩を得た(収率:85%)。
1H-NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 1.56 (3H, d, J = 6.9 Hz), 1.58 (3H, d, J = 6.9 Hz), 4.36 (1H, q, J = 6.9 Hz), 5.21 (1H, q, J = 6.9 Hz), 7.30-7.46 (11H, m), 7.55 (2H, dt, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.96 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 100 MHz): δ 21.1, 23.0, 51.4, 52.3, 124.0, 127.3, 127.6, 128.0, 129.5, 129.7, 130.0, 130.3, 130.5, 131.8, 135.3, 140.4, 145.3, 155.4, 169.7.
IR (KBr): nmax 3352, 3200-2360, 1634, 1549, 1511, 1455, 1321, 1022, 1001, 750, 698 cm-1.
【0025】
実施例4
実施例1においてベンジルアミンの代わりに1-アダマンチルアミンを用いて5時間反応させることにより、化学式(4)のスルフィン酸塩を得た(収率:89%)。当該スルフィン酸塩はエタノール−酢酸エチル−ヘキサンで再結晶することでさらに精製できた。
m.p. 179.0 - 184.8 ℃(EtOH-AcOEt-Hexane).
13C-NMR (CD3OD, 100 MHz): δ 30.8, 31.1, 36.9, 37.7, 42.4, 43.4, 51.0, 54.2, 123.4, 129.4, 130.5, 131.4, 136.6, 154.7, 169.8.
【0026】
実施例5
実施例1においてベンジルアミンの代わりにシクロヘキシルアミンを用いて5時間反応させることにより、化学式(5)のスルフィン酸塩を得た(収率:96%)。当該スルフィン酸塩はエタノール−酢酸エチル−ヘキサンで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.160.0-170.9℃(EtOH-AcOEt-Hexane).
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz): δ 1.14-1.22 (1H, m), 1.25-1.32 (4H, m), 1.37-1.43 (5H, m), 1.66 (2H, t, J = 11.0 Hz), 1.77-1.81 (4H, m), 1.95 (2H, dt, J = 25.6, 4.9 Hz), 2.00 (2H, dt, J = 25.6, 4.9 Hz), 2.97-2.99 (1H, m), 3.86-3.90 (1H, m), 7.43 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.52 (1H, d, J = 7.3 Hz), 7.55 (1H, d, J = 7.3 Hz), 7.94 (1H, d, J = 7.3 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 125 MHz): δ 25.4, 25.9, 26.1, 26.7, 32.0, 33.6, 48.5, 48.7, 48.8, 49.0, 49.2, 49.3, 49.5, 50.7, 51.4, 123.7, 129.4, 130.5, 131.6, 135.6, 155.2, 169.6.
IR (KBr): nmax 3700-2300, 1639, 1541, 1450, 1335, 1004, 962, 943, 752, 576 cm-1.
【0027】
実施例6
実施例1においてベンジルアミンの代わりにシクロプロピルアミンを用いて室温で30分反応させることにより、化学式(6)のスルフィン酸塩を得た(収率:82%)。当該スルフィン酸塩はエタノールで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.118.5-119.6℃(EtOH).
1H-NMR (CD3OD, 500 MHz): δ 0.23-0.24 (2H, m), 0.26-0.29 (2H, m), 0.31-0.36 (4H, m), 2.10-2.14 (1H, m), 2.39-2.43 (1H, m), 6.96 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.06 (1H, d, J = 7.3 Hz), 7.09 (1H, d, J = 7.3 Hz), 7.44 (1H, d, J = 7.3 Hz).
13C-NMR (CD3OD, 125 MHz): δ 4.2, 6.6, 23.7, 24.0, 48.5, 48.7, 48.8, 49.0, 49.2, 49.3, 49.5, 124.2, 129.5, 130.4, 131.7, 135.1, 155.4, 172.3.
IR (KBr) nmax 3308, 3300-2200, 1634, 1529, 1306, 1018, 932, 753, 579 cm-1.
元素分析:計算値C13H18N2O3S: C, 55.30; H, 6.43; N, 9.92.
実測値C, 55.31; H, 6.42; N, 9.92.
【0028】
実施例7
実施例1においてベンジルアミンの代わりにp-トルイジンを用いて5時間反応させることにより、化学式(7)のスルフィン酸塩を得た(収率:60%)。当該スルフィン酸塩はエタノールで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.111.6-112.6℃(EtOH).
1H-NMR (CD3OD, 400 MHz): δ 2.32 (3H, s), 2.33(3H, s), 7.12-7.14 (4H, m), 7.22 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.50 (1H, td, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.58-7.60 (3H, m), 7.68 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz), 7.96 (1H, dd, J = 7.8, 1.4 Hz).
元素分析:計算値C21H22N2O3S: C, 65.95; H, 5.80; N, 7.32.
実測値C, 65.71; H, 5.77; N, 7.22.
【0029】
実施例8
実施例1においてベンジルアミンの代わりにアニリンを用いて5時間反応させることにより、化学式(8)のスルフィン酸塩を得た(収率:32%)。当該スルフィン酸塩はエタノールで再結晶することでさらに精製できた。
m.p.110.0-111.8℃(EtOH).
元素分析:計算値 C19H18N2O3S: C, 64.39; H, 5.12; N, 7.90.
実測値C, 64.16; H, 5.07; N, 7.78.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)で表されるスルフィン酸塩化合物を製造する方法において、下記一般式(B)で表される1,3-ベンゾオキサチイン-4-オン 1,1-ジオキシド化合物に対して下記一般式(C)で表されるアミン化合物を反応させることを特徴とするスルフィン酸塩化合物の製造方法。
【化1】

(式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。)
【化2】

(式中、置換基Rは、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、フェニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を表す。Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、nは0または1〜4の整数である。置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、フェニル基から選ばれる基又は原子を表す。)
【化3】

(式中、置換基R、Rは、水素原子、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数3〜10の環状のアルキル基、フェニル基を表す。フェニル基は、炭素数1〜8の鎖状のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子から選ばれる基又は原子を置換基として有していてもよい。)

【公開番号】特開2011−162464(P2011−162464A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25206(P2010−25206)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】