スロツトルポジシヨンセンサ
【目的】 耐久性が高く、しかも個別に出力ドリフトの補償を行なうことなく検出精度を確保することのできるスロットルポジションセンサを提供する。
【構成】 スロットルバルブの回転軸に連動して回転するシャフト5の先端に、シャフトの回転軸Zを挟んで一対の永久磁石15,16を対向配設すると共に、シャフトの回転軸Zを中心とする円弧上に、円弧状に形成された一対の永久磁石17,18を並設する。永久磁石15,16は一方の対向面から他方の対向面方向に磁路を形成しており、その磁路にスロットル開度検出用のホール素子28を設ける。また永久磁石17,18は回転軸Zと直交する面に平行な側面間で磁路を形成しており、その磁路には、両磁石の境界位置からスロットルバルブが全閉となるアイドル状態を検出するホール素子22を設ける。
【構成】 スロットルバルブの回転軸に連動して回転するシャフト5の先端に、シャフトの回転軸Zを挟んで一対の永久磁石15,16を対向配設すると共に、シャフトの回転軸Zを中心とする円弧上に、円弧状に形成された一対の永久磁石17,18を並設する。永久磁石15,16は一方の対向面から他方の対向面方向に磁路を形成しており、その磁路にスロットル開度検出用のホール素子28を設ける。また永久磁石17,18は回転軸Zと直交する面に平行な側面間で磁路を形成しており、その磁路には、両磁石の境界位置からスロットルバルブが全閉となるアイドル状態を検出するホール素子22を設ける。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関のスロットルバルブの回転軸に取り付けられ、スロットル開度及びスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を各々検出するスロットルポジションセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、内燃機関のスロットルバルブの開度とスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転とを個々に検出するスロットルポジションセンサとして、例えば、実開昭59−41708号公報に開示されている導電樹脂抵抗体の接点摺動による可変抵抗器型のスロットルポジションセンサや、特開平2−298802号公報に開示されている磁気検知方式による非接触型のスロットルポジションセンサが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記可変抵抗器型のスロットルポジションセンサは、導電樹脂抵抗体上にて接点を摺動させるものであるため、使用に伴いその摺動部分で劣化が生じ、耐久寿命に限界があるといった問題があった。
【0004】一方、上記磁気検知方式によるスロットルポジションセンサは、非接触型であるため、耐久性が非常に高く、上記問題は解決できるのであるが、従来のものでは、磁気抵抗素子を用いているため、各センサ毎に検出特性の温度補償等を行わなければならず、生産性が悪いといった問題があった。
【0005】即ち、まず磁気抵抗素子は、検出感度が低いため、検出信号を増幅する増幅回路が使用されるが、この検出信号の増幅により、温度等の要因による検出特性のドリフトも増幅されてしまい、スロットルポジションセンサの出力ドリフトが大きくなる。一方磁気抵抗素子は、Ni−Co強磁性合金薄膜等により互いに直交する方向に形成した一対のパターンにより磁界の方向を検出するものであるが、各パターンを全く同じ条件で形成することは困難であるため、そのドリフトが各素子毎に異なる。このため上記のように磁気抵抗素子を用いた従来の非接触型スロットルポジションセンサにおいて、検出精度を確保するためには、各センサ毎に出力ドリフトの温度補償等を行わなければならず、その生産性が低下する。
【0006】本発明はこうした問題に鑑みなされたもので、耐久性が高く、しかも個別に出力ドリフトの補償を行なうことなく検出精度を確保することのできるスロットルポジションセンサを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、上記目的を達成するためになされた本発明は、内燃機関のスロットルバルブの開度及び該スロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を検出するスロットルポジションセンサであって、上記スロットルバルブに連動して回転するシャフトを備え、該シャフトの先端に、上記シャフトの回転軸を挟んで対向配設された一対の永久磁石からなり、一方の磁石の対向面から他方の磁石の対向面へと磁路を形成する開度検出用磁石と、上記シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、一方の磁石の上記シャフトの回転軸と直交する面に平行な側面から他方の磁石の同側面へと磁路を形成するアイドル検出用磁石と、を設けると共に、上記開度検出用磁石を構成する上記一対の永久磁石間、及び上記アイドル検出用磁石の上記側面から上記シャフトの軸方向に所定距離離れた位置に、夫々、上記各磁石にて形成された磁路での磁界の方向を検出するホール素子を設けたことを特徴とするスロットルポジションセンサを要旨としている。
【0008】
【作用】このように構成された本発明のスロットルポジションセンサにおいては、開度検出用磁石が、シャフトの回転軸を挟んで磁路を形成するため、その形成された磁路での磁界方向はシャフトの回転角度に応じて変化する。このため開度検出用磁石が形成する磁路に設けられたホール素子により、シャフトの回転角度,延いてはスロットルバルブの開度を検出できる。
【0009】一方アイドル検出用磁石は、シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、各磁石のシャフトの回転軸と直交する面に平行な側面間で磁路を形成するため、その側面上部では、両磁石の境界部分で磁界の方向が反転する。このためその側面上部に設けられたホール素子にて、両磁石の境界部分,延いてはシャフトの所定の回転位置を検出でき、この位置をスロットルバルブの全閉位置に対応させることにより、内燃機関のアイドル運転を検出できる。
【0010】またこのように本発明では、2個のホール素子にてスロットルバルブの開度及び内燃機関のアイドル運転を検出するため、従来のように各センサ毎に温度補償等の検出特性の補正を行なう必要がない。即ち、まずホール素子は検出感度が高いため検出信号を大きく増幅する必要がなく、また各素子毎の検出特性のばらつきが少なく、その出力ドリフトは磁界強度に影響されないため、その出力信号レベルが大きくなるほど出力ドリフトによる検出誤差は小さくなる。このためホール素子に印加する磁界の強度を高くすることにより、ホール素子の出力信号レベルを大きくすれば、出力ドリフトによる検出誤差を小さくすることが可能となり、従来のような各センサ毎の検出特性の補正を行なう必要がなくなるのである。
【0011】そしてこのためには、請求項2及び請求項3に夫々記載の如く、開度検出用磁石が形成する磁路のホール素子位置での最大磁界強度を、0.15テスラー以上にすることが好ましく、またアイドル検出用磁石が形成する磁路のホール素子位置での最大磁界強度を、0.12テスラー以上にすることが好ましい。
【0012】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。まず図1は本実施例のスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図、図2は図1におけるA−A線に沿った断面図、図3は図1におけるB−B−A線に沿った断面図、図4はスロットルポジションセンサの底面図である。
【0013】図1〜図4に示す如く、本実施例のスロットルポジションセンサは、中心部に円筒状の軸受取付部1aが形成された中空のハウジング1を備えている。そしてその軸受取付部1aには、同心円状で径の異なるベアリング3が圧入固定されており、ベアリング3には、シャフト5が回転自在に収容されている。またシャフト5の図1に示す下端部には、スロットルバルブの回転を受けるレバー7が固設されており、このレバー7とハウジング1との間にはコイルバネ9が設けられている。図4R>4に示す如く、このコイルバネ9の両端9a、9bは、夫々、ハウジング1に形成された突起部1b及びレバー7に形成された突起部7aに係止されており、コイルバネ9は、スロットルバルブに連動して回動するレバー7とシャフト5とをスロットルバルブの閉方向(矢印C方向)に付勢する。
【0014】一方、ベアリング3の図1における上端とシャフト5の間には、ウェーブ状の弾性のあるワッシャ11が設けられ、図1に示すZ方向のガタが発生しないようにされている。またシャフト5の図1における上端の中心には段付穴5aが形成され、その外側には鍔部5bが形成されている。そして図3に示す如く、その段付穴5aには、Nd−Fe−B系等の希土類からなる一対の永久磁石15,16が対向配設され、鍔部5bには、同じくNd−Fe−B系等の希土類からなる円弧状の永久磁石17,18が、シャフト5の回転軸を中心とする円弧上に並設されている。
【0015】永久磁石15,16は、前述の開度検出用磁石を構成するものであり、一方の磁石面から対向する磁石面方向に磁路を形成するように着磁されている。またこの永久磁石15,16は、段付穴5aの段部に磁力及び接着により固定することにより、段付穴5aの底から一定距離浮かせて取り付けられている。
【0016】一方永久磁石17,18は、前述のアイドル検出用磁石を構成するものであり、両磁石のシャフト5の回転軸(図1に示すZ軸)と直交する面に平行な側面間で磁路を形成するために、図3に示す如く、各磁石17,18はその側面方向に着磁され、各々異なる磁極面S,Nを同側にして、鍔部5bに磁力及び接着により固定されている。
【0017】次に永久磁石15〜18の図1における上方では、中央に突起部20aが形成され周囲にハウジング1への取付穴20b(図2に示す)が形成された非磁性の導電材からなるケース20が、取付穴20bをハウジング1の突起1cにはめて熱かしめすることにより、ハウジング1に固定されている。そしてケース20内には、ホール素子22,回路素子23,24,ターミナル26が実装され、且つホール素子28を収納している樹脂製のカラー29が熱かしめ等により固定されたプリント基板30が、接着等により固定されている。
【0018】ここでカラー29は、ホール素子28のプリント基板30への固定及び位置決めを行うためのもので、内側形状がホール素子28の樹脂モールド外形と同形状で、外側形状がケース20の突起部20aの内側形状と同形状で、且つプリント基板30への取付用突起を有している。
【0019】またホール素子22は、プリント基板30の裏面(シャフト5側の面)の上記磁石17,18との対向位置に設けられており、その中心より0〜2mm上方には、直径1〜5mmの鋼球32が設けられている。尚この鋼球32は、磁石17,18にて形成される磁界をホール素子22に誘導するためのもので、例えば直径1〜10mm,高さ1〜10mm程度の円錐状の磁性片を使用してもよい。
【0020】また更にホール素子22,28の位置は、ハウジング1,ケース20,プリント基板30,カラー29の各寸法精度により決まるが、中央のホール素子28は、シャフト5の回転軸上で、永久磁石15,16の中心がホール素子チップ中心となり、且つ図2に示すX,Y成分の磁界に対して、感磁する位置にあるように設計され、他方のホール素子22は、永久磁石17,18の図1における上方に一定距離おいた位置で、スロットルバルブが全閉位置から開かれるアイドル境界の位置にあるとき、一対の永久磁石17,18の境界上にホール素子チップ中心があり、且つ図1に示すZ成分の磁界に対して、感磁する位置にあるように設計されている。
【0021】また上記各ホール素子22,28には、出力1150mV(1T,5mA印加時),出力ドリフト4mVの東芝社製のホール素子(THS106A,THS112)が使用されており、永久磁石15,16は、ホール素子28位置でのシャフト5の回転に応じたX,Y成分の最大磁界強度が0.20テスラー(以下、単にTと記載する。)となるように着磁され、永久磁石17,18は、ホール素子22位置のシャフト5の回転に応じたZ成分の最大磁界強度が0.15Tとなるように着磁されている。
【0022】次に上記ケース20には、4個の貫通コンデンサ34が半田等により電気的に接続固定されている。この貫通コンデンサ34は、プリント基板30に実装された4個のターミナル26と、ハウジング1のコネクタ部35に埋没された4個のコネクタターミナル36とを夫々接続するためのもので、これにより、プリント基板30に実装された回路素子23,24に外部から電源供給を行ない、回路素子23,24を動作させると共に、この動作によって得られる検出信号を外部に取り出すことが可能となる。
【0023】また上記ケース20の図1における上方のハウジング開口部1dには、ゴムパッキン38が設けられ、更にその上に磁性材のカバー39を設けて、ハウジング開口部1dの周縁を熱かしめすることにより、これら各部が固定されている。またプリント基板30の図1における上方には、低応力ゲルやヒューミシールのような防湿剤40が充てん又は塗布され、ゴムパッキン38により密閉されたケース20内部を湿気から保護するようにされている。また図3に示す如く、ハウジング1の外側の、シャフト5の回転軸を中心として対称な2ヶ所には、ブッシュ41が埋没された相手取付部1eが形成されている。
【0024】このように構成された本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、レバー7がスロットルバルブの回転軸に連結され、その回転に伴いシャフト5が回転する。するとこの回転に伴い一対の永久磁石15,16が、ホール素子28の周りを回転するため、ホール素子28の感磁面に対する磁界方向が図5(a)に示すように変化する。
【0025】この結果、ホール素子28からの出力VH は、次式(1)の如く変化し、VH =VA ・sinθ …(1)図5(b)に示す如く、シャフト5が−90°から+90°へ回転する間に、−VA から+VA へと正弦波上を連続的に変化する。
【0026】また本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、シャフト5の回転に伴ない、永久磁石17,18が図6(a)に示す如く回転し、永久磁石17,18の境界面においてホール素子22の感磁面に対する磁界方向が反転する。このためホール素子22からの出力VH は、次式(2) の如く変化し、VH =θ・VB/θA …(2)図6(b)に示す如く、シャフト5が−θA°から+θA°へ回転する間に、−VB から+VB へと一定の傾きにて連続的に変化する。
【0027】次にこうした出力特性の得られる各ホール素子22,28を動作させて、検出信号を取り出すための検出回路は、上記回路素子23,24及びプリント基板30に形成された回路パターン等により、図7に示す如く構成されている。即ち、本実施例のスロットルポジションセンサの検出回路は、正の温度特性を有する感温抵抗器R1と抵抗器R2〜R6とからなり,ホール素子22,28駆動のための基準電圧V1を発生する温度補償回路50、演算増幅器OP1と抵抗器R7とからなり,温度補償回路50からの基準電圧V1に基づきホール素子28を定電流駆動する駆動回路52、演算増幅器OP2,OP3と抵抗器R9〜R11とからなり,ホール素子28の各出力端子電圧を通過させるバッファ回路54、演算増幅器OP4とトランジスタTR1と抵抗器R12〜R18とからなり,バッファ回路54を通過してきた各出力端子電圧を差動増幅する差動増幅回路56、演算増幅器OP5と抵抗器R19,R20とからなり,抵抗器R19,R20により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V2により差動増幅回路56の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路58、コンデンサC1及び抵抗器R21,R22からなり,差動増幅回路56からの増幅出力をスロットルバルブの開度を表すスロットル開度信号VLとして外部に出力するフィルタ回路60、演算増幅器OP6と抵抗器R23とからなり,温度補償回路50からの基準電圧V1に基づきホール素子22を定電流駆動する駆動回路62、演算増幅器OP7と抵抗器R24〜R27とからなり,ホール素子22の各出力端子電圧を差動増幅する差動増幅回路64、演算増幅器OP8と抵抗器R28,R29とからなり,抵抗器R28,R29により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V3により差動増幅回路64の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路66、演算増幅器OP9と抵抗器R30〜R34とからなり,差動増幅回路64からの増幅出力と抵抗器R30,R31により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V4とを大小比較するコンパレータ68、及び、スイッチングトランジスタTR2と抵抗器R35,R36とからなり,コンパレータ68による比較結果をスロットルバルブが全閉状態(即ちアイドル運転)か否かを表すアイドル信号VIとして外部に出力する出力回路70により構成されている。
【0028】このため当該検出回路からは、図8に示す如く、スロットルバルブの開度に応じて変化するスロットル開度信号VLとスロットルバルブの開度が0となる境界で反転するアイドル信号VIが出力されることとなる。尚図7において、コンデンサC2,C3は、ノイズ除去用のコンデンサである。
【0029】ここで本実施例の温度補償回路50は、感温抵抗器R1と抵抗器R2,R3,R4とによりブリッジ回路を構成し、その一端に電源電圧VCCを印加し、他端を接地(Gnd)して、抵抗器R5,R6によりその回路分圧を検出することにより、基準電圧V1を生成するようにされている。これは、基準電圧V1の温度に対する傾きを、ホール素子22,28の温度特性に対応して自由に設定できるようにするためである。
【0030】即ち、従来用いられている温度補償回路は、図9(a)に示す如く、感温抵抗器r1と抵抗器r2,r3とを単に直列に接続したものであるため、その抵抗器r2と抵抗器r3の抵抗値により温度に対する基準電圧V1の傾きを設定することはできるものの、抵抗器r2,r3の設定が有限であるため、傾きの設定に自由度がなく、その傾きをホール素子の温度特性にマッチさせることは困難であった。そこで本実施例では、温度補償回路を上記のようにブリッジ回路にて構成することにより、各抵抗器の抵抗値を選択して、例えば図9(b)に示す範囲D内で温度に対する基準電圧V1の傾きを無限に設定することができるようにし、これによって基準電圧V1をホール素子22,28の温度特性に対応して自由に設定できるようにしたのである。
【0031】また本実施例では、ホール素子22の各出力端子の電圧差を差動増幅回路64にて増幅した後、コンパレータ68にて基準電圧V4と比較することによりアイドル信号VIを得るようにしているが、これはアイドル運転の判定精度を向上するためである。
【0032】即ち、ホール素子を用いた近接スイッチ等の従来の判定回路をアイドル判定に適用すると、図10(a)に示す如く、ホール素子22の出力端子電圧を、演算増幅器OP11と抵抗器r4,r5とからなるコンパレータに入力することとなるが、この構成では、図10R>0(b)に示す如く、ホール素子22の出力{図に示す直線A}を直接比較するため、電圧変動等によって図に一点鎖線で示すスレッシュレベルが変動すると、コンパレータ出力が反転する角度位置も△θA 変動する。そこで本実施例では、差動増幅回路64を用いてホール素子出力を増幅することにより、コンパレータ68への入力信号の傾きを図に示す直線Bに示す如く大くし、これによりスレッシュレベルの変動に伴う検出誤差を、△θA から△θB に改善して、アイドル運転の判定精度を確保しているのである。
【0033】以上説明したように本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、スロットルバルブの開度及びスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を2個のホール素子22,28により検出するよう構成されている。そしてホール素子28位置でのシャフト5の回転に応じた最大磁界強度が0.20Tに設定されているため、図5に示したホール素子出力VA に対する出力ドリフトの比率が低減され、ホール素子28の出力ドリフト△VH (本実施例では4mV)による回転角度の検出誤差△θ1 は、次式(3) のように1.0°となり、組み付け誤差等を見込んでも角度精度1.5°以内を実現できる。
【0034】
△θ1=sin-1(△VH/VA)=sin-1{△VH/(VH・B1)}
=sin-1{4/(1150・0.20)}=1.0° …(3)但し、この(3)式は、前記(1)式を変形して得られる式であり、VH はホール素子定格出力(1T,5mA印加時)、B1 はホール素子28位置での最大磁界強度を夫々表している。
【0035】またホール素子22位置でのシャフト5の回転に応じた最大磁界強度が0.15Tに設定されているため、図6に示したホール素子出力VB に対する出力ドリフトの比率も低減され、ホール素子22の出力ドリフト△VH (本実施例では4mV)によるアイドル運転の検出誤差△θ2 は、次式(4) のように0.23°となり、組み付け誤差等を見込んでも角度精度0.3°以内を実現できる。
【0036】
△θ2=(△VH・θA)/VB=(△VH・θA)/(VH・B2)
={(4・10)/(1150・0.20)}=0.23° …(4)但し、この(4)式は、前記(2)式を変形して得られる式であり、B2 はホール素子22位置での最大磁界強度、θA は図6(b)の実験データから得られた値を夫々表している。
【0037】このため、本実施例のスロットルポジションセンサによれば、従来のように検出精度を確保するために各センサ毎に温度補償等の検出特性の補正を行なう必要がなく、その生産性を向上することができる。尚本実施例では、スロットル開度の検出に用いるホール素子28位置での最大磁界強度を0.20Tとし、アイドル運転の検出に用いるホール素子22位置での最大磁界強度を0.15Tとしたが、各ホール素子位置での最大磁界強度を更に大きくすれば、ホール素子の出力ドリフトの影響を少なくして、検出精度をより向上することができる。またこの値としては必ずしも本実施例のようにする必要はなく、使用するホール素子の特性にもよるが、各種ホール素子を用いた実験の結果、ホール素子28位置での最大磁界強度を0.15T以上、ホール素子22位置での最大磁界強度を0.12T以上とすれば、スロットルポジションセンサとしての角度精度を確保できることがわかった。
【0038】また次に本実施例では、各ホール素子22,28位置にて磁路を形成するための永久磁石15〜18に、Nd−Fe−B系等の希土類からなる永久磁石を使用しているが、これは希土類からなる永久磁石が大きな磁界強度を得ることができるためであり、これにより、使用する永久磁石を小型化して、スロットルポジションセンサの小型・軽量化を図ることができる。
【0039】また本実施例では、ホール素子22の近傍に磁界誘導用の鋼球32を設けているため、鋼球32を設けない場合に比べて永久磁石17,18によるホール素子22位置での最大磁界強度を高くすることができ、これによっても使用する永久磁石を小型化して、スロットルポジションセンサの小型・軽量化を図ることができる。尚実験の結果、本実施例のように直径1.5mmの鋼球32を使用した場合には、ホール素子22位置での最大磁界強度が30%高くなり、直径6mm,高さ6mmの円錐形磁性片を使用すれば、ホール素子22位置での最大磁界強度が55%高くなることがわかった。
【0040】また更に本実施例では、ホール素子22,28や回路素子23,24等を実装したプリント基板30を、非磁性の導電材からなるケース20に収納し、更にこのケース20を磁性材からなカバー39にてハウジング1内に収納して、プリント基板30のターミナル26とコネクタターミナル36とを貫通コンデンサ34にて接続しているため、ケース20とカバー39にて外部からの電磁波を遮へいし、貫通コンデンサ34によりコネクタターミナル36からの電磁波の侵入を防ぐことができ、外部からの電磁波の影響を受けることなくスロットルバルブの開度及びアイドル運転を検出することができ、これによっても検出精度を向上できる。
【0041】また本実施例では、ホール素子28をカラー29に収納してプリント基板30に固定しているため、ホール素子28の位置決めが容易である。また、カラー29により、長時間の使用に伴う温度・振動ストレスによるホール素子28のリードのシャフト回転方向へのねじれを防止することができるため、スロットルポジションセンサの耐久性も確保できる。
【0042】また更に本実施例では、シャフト5をベアリング3を介してハウジング1に固定しているため、シャフト5の回転方向への組み付けガタをベアリング3により低減でき、レバー7に何らかの外力が加わることにより生ずるシャフト5のかたぎによるホール素子出力変動を低減できる。
【0043】ここで上記実施例では、ホール素子28のプリント基板30への組付けに、樹脂製のカラー29を用いたが、図11〜図13に示す如く、カラー29の代わりに、非磁性の導電材からなるホルダ71にてホール素子28を収納し、ホルダ71をプリント基板30に固定するようにしてもよい。尚図11はホルダ71を使用したスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図、図12は図11におけるE−E線に沿った断面図、図3は図12におけるF−F線に沿った断面図である。
【0044】そしてこの場合、電磁波の侵入をホルダ71にて防止することができるため、ケースには、上記実施例のケース20の突起部20aにホルダ71挿通用の穴73を設けた、偏平な(即ち突起のない)ケース75を使用することができ、ケース75の製造及び取扱を簡単に行なうことができるようになる。また図13に示す如く、ホルダ71にラッチ71aを形成して、ホール素子28をホルダ71の壁に押し付けて固定するようにすれば、ホール素子28のプリント基板30への組み付けを簡単にすることができる他、ホール素子28の長時間の使用に伴う温度・振動ストレスによるリード線ねじれ防止効果を、上記実施例のカラー29以上とすることができる。
【0045】尚図11〜13に示した本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、上記説明部分と、ケース75とプリント基板30とがスクリュボルト77にてハウジング1に固定されている点とが、上記実施例と異なるだけであり、それ以外は上記実施例のスロットルポジションセンサと同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のスロットルポジションセンサによれば、非接触型のセンサであるため、耐久性を確保することができると共に、従来の非接触型センサのように、検出精度を確保するために各センサ毎に出力ドリフトの温度補償等を行なう必要がないため、その生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図である。
【図2】 図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】 図1におけるB−B−A線に沿った断面図である。
【図4】 スロットルポジションセンサの底面図である。
【図5】 ホール素子28によるスロットル開度の検出動作を説明する動作説明図である。
【図6】 ホール素子22によるアイドル検出動作を説明する動作説明図である。
【図7】 検出回路の構成を表す電気回路図である。
【図8】 図7の検出回路により得られる検出信号特性を表す説明図である。
【図9】 図7における温度補償回路の動作説明図である。
【図10】 図7におけるアイドル判定用の回路の動作説明図である。
【図11】 ホルダ71を使用したスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図である。
【図12】 図11におけるE−E線に沿った断面図である。
【図13】 図12におけるF−F線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1…ハウジング 3…ベアリング 5…シャフト 7…レバー
15,16,17,18…永久磁石 20…ケース
22,28…ホール素子 26…ターミナル 29…カラー
30…プリント基板 32…鋼球 34…貫通コンデンサ
36…コネクタターミナル 38…ゴムパッキン 39…カバー
50…温度補償回路 52,62…駆動回路 54…バッファ回路
56,64…差動増幅回路 58,66…基準電圧生成回路
60…フィルタ回路 68…コンパレータ 70…出力回路
71…ホルダ 75…ケース
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関のスロットルバルブの回転軸に取り付けられ、スロットル開度及びスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を各々検出するスロットルポジションセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、内燃機関のスロットルバルブの開度とスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転とを個々に検出するスロットルポジションセンサとして、例えば、実開昭59−41708号公報に開示されている導電樹脂抵抗体の接点摺動による可変抵抗器型のスロットルポジションセンサや、特開平2−298802号公報に開示されている磁気検知方式による非接触型のスロットルポジションセンサが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記可変抵抗器型のスロットルポジションセンサは、導電樹脂抵抗体上にて接点を摺動させるものであるため、使用に伴いその摺動部分で劣化が生じ、耐久寿命に限界があるといった問題があった。
【0004】一方、上記磁気検知方式によるスロットルポジションセンサは、非接触型であるため、耐久性が非常に高く、上記問題は解決できるのであるが、従来のものでは、磁気抵抗素子を用いているため、各センサ毎に検出特性の温度補償等を行わなければならず、生産性が悪いといった問題があった。
【0005】即ち、まず磁気抵抗素子は、検出感度が低いため、検出信号を増幅する増幅回路が使用されるが、この検出信号の増幅により、温度等の要因による検出特性のドリフトも増幅されてしまい、スロットルポジションセンサの出力ドリフトが大きくなる。一方磁気抵抗素子は、Ni−Co強磁性合金薄膜等により互いに直交する方向に形成した一対のパターンにより磁界の方向を検出するものであるが、各パターンを全く同じ条件で形成することは困難であるため、そのドリフトが各素子毎に異なる。このため上記のように磁気抵抗素子を用いた従来の非接触型スロットルポジションセンサにおいて、検出精度を確保するためには、各センサ毎に出力ドリフトの温度補償等を行わなければならず、その生産性が低下する。
【0006】本発明はこうした問題に鑑みなされたもので、耐久性が高く、しかも個別に出力ドリフトの補償を行なうことなく検出精度を確保することのできるスロットルポジションセンサを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、上記目的を達成するためになされた本発明は、内燃機関のスロットルバルブの開度及び該スロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を検出するスロットルポジションセンサであって、上記スロットルバルブに連動して回転するシャフトを備え、該シャフトの先端に、上記シャフトの回転軸を挟んで対向配設された一対の永久磁石からなり、一方の磁石の対向面から他方の磁石の対向面へと磁路を形成する開度検出用磁石と、上記シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、一方の磁石の上記シャフトの回転軸と直交する面に平行な側面から他方の磁石の同側面へと磁路を形成するアイドル検出用磁石と、を設けると共に、上記開度検出用磁石を構成する上記一対の永久磁石間、及び上記アイドル検出用磁石の上記側面から上記シャフトの軸方向に所定距離離れた位置に、夫々、上記各磁石にて形成された磁路での磁界の方向を検出するホール素子を設けたことを特徴とするスロットルポジションセンサを要旨としている。
【0008】
【作用】このように構成された本発明のスロットルポジションセンサにおいては、開度検出用磁石が、シャフトの回転軸を挟んで磁路を形成するため、その形成された磁路での磁界方向はシャフトの回転角度に応じて変化する。このため開度検出用磁石が形成する磁路に設けられたホール素子により、シャフトの回転角度,延いてはスロットルバルブの開度を検出できる。
【0009】一方アイドル検出用磁石は、シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、各磁石のシャフトの回転軸と直交する面に平行な側面間で磁路を形成するため、その側面上部では、両磁石の境界部分で磁界の方向が反転する。このためその側面上部に設けられたホール素子にて、両磁石の境界部分,延いてはシャフトの所定の回転位置を検出でき、この位置をスロットルバルブの全閉位置に対応させることにより、内燃機関のアイドル運転を検出できる。
【0010】またこのように本発明では、2個のホール素子にてスロットルバルブの開度及び内燃機関のアイドル運転を検出するため、従来のように各センサ毎に温度補償等の検出特性の補正を行なう必要がない。即ち、まずホール素子は検出感度が高いため検出信号を大きく増幅する必要がなく、また各素子毎の検出特性のばらつきが少なく、その出力ドリフトは磁界強度に影響されないため、その出力信号レベルが大きくなるほど出力ドリフトによる検出誤差は小さくなる。このためホール素子に印加する磁界の強度を高くすることにより、ホール素子の出力信号レベルを大きくすれば、出力ドリフトによる検出誤差を小さくすることが可能となり、従来のような各センサ毎の検出特性の補正を行なう必要がなくなるのである。
【0011】そしてこのためには、請求項2及び請求項3に夫々記載の如く、開度検出用磁石が形成する磁路のホール素子位置での最大磁界強度を、0.15テスラー以上にすることが好ましく、またアイドル検出用磁石が形成する磁路のホール素子位置での最大磁界強度を、0.12テスラー以上にすることが好ましい。
【0012】
【実施例】以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。まず図1は本実施例のスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図、図2は図1におけるA−A線に沿った断面図、図3は図1におけるB−B−A線に沿った断面図、図4はスロットルポジションセンサの底面図である。
【0013】図1〜図4に示す如く、本実施例のスロットルポジションセンサは、中心部に円筒状の軸受取付部1aが形成された中空のハウジング1を備えている。そしてその軸受取付部1aには、同心円状で径の異なるベアリング3が圧入固定されており、ベアリング3には、シャフト5が回転自在に収容されている。またシャフト5の図1に示す下端部には、スロットルバルブの回転を受けるレバー7が固設されており、このレバー7とハウジング1との間にはコイルバネ9が設けられている。図4R>4に示す如く、このコイルバネ9の両端9a、9bは、夫々、ハウジング1に形成された突起部1b及びレバー7に形成された突起部7aに係止されており、コイルバネ9は、スロットルバルブに連動して回動するレバー7とシャフト5とをスロットルバルブの閉方向(矢印C方向)に付勢する。
【0014】一方、ベアリング3の図1における上端とシャフト5の間には、ウェーブ状の弾性のあるワッシャ11が設けられ、図1に示すZ方向のガタが発生しないようにされている。またシャフト5の図1における上端の中心には段付穴5aが形成され、その外側には鍔部5bが形成されている。そして図3に示す如く、その段付穴5aには、Nd−Fe−B系等の希土類からなる一対の永久磁石15,16が対向配設され、鍔部5bには、同じくNd−Fe−B系等の希土類からなる円弧状の永久磁石17,18が、シャフト5の回転軸を中心とする円弧上に並設されている。
【0015】永久磁石15,16は、前述の開度検出用磁石を構成するものであり、一方の磁石面から対向する磁石面方向に磁路を形成するように着磁されている。またこの永久磁石15,16は、段付穴5aの段部に磁力及び接着により固定することにより、段付穴5aの底から一定距離浮かせて取り付けられている。
【0016】一方永久磁石17,18は、前述のアイドル検出用磁石を構成するものであり、両磁石のシャフト5の回転軸(図1に示すZ軸)と直交する面に平行な側面間で磁路を形成するために、図3に示す如く、各磁石17,18はその側面方向に着磁され、各々異なる磁極面S,Nを同側にして、鍔部5bに磁力及び接着により固定されている。
【0017】次に永久磁石15〜18の図1における上方では、中央に突起部20aが形成され周囲にハウジング1への取付穴20b(図2に示す)が形成された非磁性の導電材からなるケース20が、取付穴20bをハウジング1の突起1cにはめて熱かしめすることにより、ハウジング1に固定されている。そしてケース20内には、ホール素子22,回路素子23,24,ターミナル26が実装され、且つホール素子28を収納している樹脂製のカラー29が熱かしめ等により固定されたプリント基板30が、接着等により固定されている。
【0018】ここでカラー29は、ホール素子28のプリント基板30への固定及び位置決めを行うためのもので、内側形状がホール素子28の樹脂モールド外形と同形状で、外側形状がケース20の突起部20aの内側形状と同形状で、且つプリント基板30への取付用突起を有している。
【0019】またホール素子22は、プリント基板30の裏面(シャフト5側の面)の上記磁石17,18との対向位置に設けられており、その中心より0〜2mm上方には、直径1〜5mmの鋼球32が設けられている。尚この鋼球32は、磁石17,18にて形成される磁界をホール素子22に誘導するためのもので、例えば直径1〜10mm,高さ1〜10mm程度の円錐状の磁性片を使用してもよい。
【0020】また更にホール素子22,28の位置は、ハウジング1,ケース20,プリント基板30,カラー29の各寸法精度により決まるが、中央のホール素子28は、シャフト5の回転軸上で、永久磁石15,16の中心がホール素子チップ中心となり、且つ図2に示すX,Y成分の磁界に対して、感磁する位置にあるように設計され、他方のホール素子22は、永久磁石17,18の図1における上方に一定距離おいた位置で、スロットルバルブが全閉位置から開かれるアイドル境界の位置にあるとき、一対の永久磁石17,18の境界上にホール素子チップ中心があり、且つ図1に示すZ成分の磁界に対して、感磁する位置にあるように設計されている。
【0021】また上記各ホール素子22,28には、出力1150mV(1T,5mA印加時),出力ドリフト4mVの東芝社製のホール素子(THS106A,THS112)が使用されており、永久磁石15,16は、ホール素子28位置でのシャフト5の回転に応じたX,Y成分の最大磁界強度が0.20テスラー(以下、単にTと記載する。)となるように着磁され、永久磁石17,18は、ホール素子22位置のシャフト5の回転に応じたZ成分の最大磁界強度が0.15Tとなるように着磁されている。
【0022】次に上記ケース20には、4個の貫通コンデンサ34が半田等により電気的に接続固定されている。この貫通コンデンサ34は、プリント基板30に実装された4個のターミナル26と、ハウジング1のコネクタ部35に埋没された4個のコネクタターミナル36とを夫々接続するためのもので、これにより、プリント基板30に実装された回路素子23,24に外部から電源供給を行ない、回路素子23,24を動作させると共に、この動作によって得られる検出信号を外部に取り出すことが可能となる。
【0023】また上記ケース20の図1における上方のハウジング開口部1dには、ゴムパッキン38が設けられ、更にその上に磁性材のカバー39を設けて、ハウジング開口部1dの周縁を熱かしめすることにより、これら各部が固定されている。またプリント基板30の図1における上方には、低応力ゲルやヒューミシールのような防湿剤40が充てん又は塗布され、ゴムパッキン38により密閉されたケース20内部を湿気から保護するようにされている。また図3に示す如く、ハウジング1の外側の、シャフト5の回転軸を中心として対称な2ヶ所には、ブッシュ41が埋没された相手取付部1eが形成されている。
【0024】このように構成された本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、レバー7がスロットルバルブの回転軸に連結され、その回転に伴いシャフト5が回転する。するとこの回転に伴い一対の永久磁石15,16が、ホール素子28の周りを回転するため、ホール素子28の感磁面に対する磁界方向が図5(a)に示すように変化する。
【0025】この結果、ホール素子28からの出力VH は、次式(1)の如く変化し、VH =VA ・sinθ …(1)図5(b)に示す如く、シャフト5が−90°から+90°へ回転する間に、−VA から+VA へと正弦波上を連続的に変化する。
【0026】また本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、シャフト5の回転に伴ない、永久磁石17,18が図6(a)に示す如く回転し、永久磁石17,18の境界面においてホール素子22の感磁面に対する磁界方向が反転する。このためホール素子22からの出力VH は、次式(2) の如く変化し、VH =θ・VB/θA …(2)図6(b)に示す如く、シャフト5が−θA°から+θA°へ回転する間に、−VB から+VB へと一定の傾きにて連続的に変化する。
【0027】次にこうした出力特性の得られる各ホール素子22,28を動作させて、検出信号を取り出すための検出回路は、上記回路素子23,24及びプリント基板30に形成された回路パターン等により、図7に示す如く構成されている。即ち、本実施例のスロットルポジションセンサの検出回路は、正の温度特性を有する感温抵抗器R1と抵抗器R2〜R6とからなり,ホール素子22,28駆動のための基準電圧V1を発生する温度補償回路50、演算増幅器OP1と抵抗器R7とからなり,温度補償回路50からの基準電圧V1に基づきホール素子28を定電流駆動する駆動回路52、演算増幅器OP2,OP3と抵抗器R9〜R11とからなり,ホール素子28の各出力端子電圧を通過させるバッファ回路54、演算増幅器OP4とトランジスタTR1と抵抗器R12〜R18とからなり,バッファ回路54を通過してきた各出力端子電圧を差動増幅する差動増幅回路56、演算増幅器OP5と抵抗器R19,R20とからなり,抵抗器R19,R20により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V2により差動増幅回路56の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路58、コンデンサC1及び抵抗器R21,R22からなり,差動増幅回路56からの増幅出力をスロットルバルブの開度を表すスロットル開度信号VLとして外部に出力するフィルタ回路60、演算増幅器OP6と抵抗器R23とからなり,温度補償回路50からの基準電圧V1に基づきホール素子22を定電流駆動する駆動回路62、演算増幅器OP7と抵抗器R24〜R27とからなり,ホール素子22の各出力端子電圧を差動増幅する差動増幅回路64、演算増幅器OP8と抵抗器R28,R29とからなり,抵抗器R28,R29により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V3により差動増幅回路64の増幅出力電位を増加させる基準電圧生成回路66、演算増幅器OP9と抵抗器R30〜R34とからなり,差動増幅回路64からの増幅出力と抵抗器R30,R31により電源電圧VCCを分圧した基準電圧V4とを大小比較するコンパレータ68、及び、スイッチングトランジスタTR2と抵抗器R35,R36とからなり,コンパレータ68による比較結果をスロットルバルブが全閉状態(即ちアイドル運転)か否かを表すアイドル信号VIとして外部に出力する出力回路70により構成されている。
【0028】このため当該検出回路からは、図8に示す如く、スロットルバルブの開度に応じて変化するスロットル開度信号VLとスロットルバルブの開度が0となる境界で反転するアイドル信号VIが出力されることとなる。尚図7において、コンデンサC2,C3は、ノイズ除去用のコンデンサである。
【0029】ここで本実施例の温度補償回路50は、感温抵抗器R1と抵抗器R2,R3,R4とによりブリッジ回路を構成し、その一端に電源電圧VCCを印加し、他端を接地(Gnd)して、抵抗器R5,R6によりその回路分圧を検出することにより、基準電圧V1を生成するようにされている。これは、基準電圧V1の温度に対する傾きを、ホール素子22,28の温度特性に対応して自由に設定できるようにするためである。
【0030】即ち、従来用いられている温度補償回路は、図9(a)に示す如く、感温抵抗器r1と抵抗器r2,r3とを単に直列に接続したものであるため、その抵抗器r2と抵抗器r3の抵抗値により温度に対する基準電圧V1の傾きを設定することはできるものの、抵抗器r2,r3の設定が有限であるため、傾きの設定に自由度がなく、その傾きをホール素子の温度特性にマッチさせることは困難であった。そこで本実施例では、温度補償回路を上記のようにブリッジ回路にて構成することにより、各抵抗器の抵抗値を選択して、例えば図9(b)に示す範囲D内で温度に対する基準電圧V1の傾きを無限に設定することができるようにし、これによって基準電圧V1をホール素子22,28の温度特性に対応して自由に設定できるようにしたのである。
【0031】また本実施例では、ホール素子22の各出力端子の電圧差を差動増幅回路64にて増幅した後、コンパレータ68にて基準電圧V4と比較することによりアイドル信号VIを得るようにしているが、これはアイドル運転の判定精度を向上するためである。
【0032】即ち、ホール素子を用いた近接スイッチ等の従来の判定回路をアイドル判定に適用すると、図10(a)に示す如く、ホール素子22の出力端子電圧を、演算増幅器OP11と抵抗器r4,r5とからなるコンパレータに入力することとなるが、この構成では、図10R>0(b)に示す如く、ホール素子22の出力{図に示す直線A}を直接比較するため、電圧変動等によって図に一点鎖線で示すスレッシュレベルが変動すると、コンパレータ出力が反転する角度位置も△θA 変動する。そこで本実施例では、差動増幅回路64を用いてホール素子出力を増幅することにより、コンパレータ68への入力信号の傾きを図に示す直線Bに示す如く大くし、これによりスレッシュレベルの変動に伴う検出誤差を、△θA から△θB に改善して、アイドル運転の判定精度を確保しているのである。
【0033】以上説明したように本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、スロットルバルブの開度及びスロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を2個のホール素子22,28により検出するよう構成されている。そしてホール素子28位置でのシャフト5の回転に応じた最大磁界強度が0.20Tに設定されているため、図5に示したホール素子出力VA に対する出力ドリフトの比率が低減され、ホール素子28の出力ドリフト△VH (本実施例では4mV)による回転角度の検出誤差△θ1 は、次式(3) のように1.0°となり、組み付け誤差等を見込んでも角度精度1.5°以内を実現できる。
【0034】
△θ1=sin-1(△VH/VA)=sin-1{△VH/(VH・B1)}
=sin-1{4/(1150・0.20)}=1.0° …(3)但し、この(3)式は、前記(1)式を変形して得られる式であり、VH はホール素子定格出力(1T,5mA印加時)、B1 はホール素子28位置での最大磁界強度を夫々表している。
【0035】またホール素子22位置でのシャフト5の回転に応じた最大磁界強度が0.15Tに設定されているため、図6に示したホール素子出力VB に対する出力ドリフトの比率も低減され、ホール素子22の出力ドリフト△VH (本実施例では4mV)によるアイドル運転の検出誤差△θ2 は、次式(4) のように0.23°となり、組み付け誤差等を見込んでも角度精度0.3°以内を実現できる。
【0036】
△θ2=(△VH・θA)/VB=(△VH・θA)/(VH・B2)
={(4・10)/(1150・0.20)}=0.23° …(4)但し、この(4)式は、前記(2)式を変形して得られる式であり、B2 はホール素子22位置での最大磁界強度、θA は図6(b)の実験データから得られた値を夫々表している。
【0037】このため、本実施例のスロットルポジションセンサによれば、従来のように検出精度を確保するために各センサ毎に温度補償等の検出特性の補正を行なう必要がなく、その生産性を向上することができる。尚本実施例では、スロットル開度の検出に用いるホール素子28位置での最大磁界強度を0.20Tとし、アイドル運転の検出に用いるホール素子22位置での最大磁界強度を0.15Tとしたが、各ホール素子位置での最大磁界強度を更に大きくすれば、ホール素子の出力ドリフトの影響を少なくして、検出精度をより向上することができる。またこの値としては必ずしも本実施例のようにする必要はなく、使用するホール素子の特性にもよるが、各種ホール素子を用いた実験の結果、ホール素子28位置での最大磁界強度を0.15T以上、ホール素子22位置での最大磁界強度を0.12T以上とすれば、スロットルポジションセンサとしての角度精度を確保できることがわかった。
【0038】また次に本実施例では、各ホール素子22,28位置にて磁路を形成するための永久磁石15〜18に、Nd−Fe−B系等の希土類からなる永久磁石を使用しているが、これは希土類からなる永久磁石が大きな磁界強度を得ることができるためであり、これにより、使用する永久磁石を小型化して、スロットルポジションセンサの小型・軽量化を図ることができる。
【0039】また本実施例では、ホール素子22の近傍に磁界誘導用の鋼球32を設けているため、鋼球32を設けない場合に比べて永久磁石17,18によるホール素子22位置での最大磁界強度を高くすることができ、これによっても使用する永久磁石を小型化して、スロットルポジションセンサの小型・軽量化を図ることができる。尚実験の結果、本実施例のように直径1.5mmの鋼球32を使用した場合には、ホール素子22位置での最大磁界強度が30%高くなり、直径6mm,高さ6mmの円錐形磁性片を使用すれば、ホール素子22位置での最大磁界強度が55%高くなることがわかった。
【0040】また更に本実施例では、ホール素子22,28や回路素子23,24等を実装したプリント基板30を、非磁性の導電材からなるケース20に収納し、更にこのケース20を磁性材からなカバー39にてハウジング1内に収納して、プリント基板30のターミナル26とコネクタターミナル36とを貫通コンデンサ34にて接続しているため、ケース20とカバー39にて外部からの電磁波を遮へいし、貫通コンデンサ34によりコネクタターミナル36からの電磁波の侵入を防ぐことができ、外部からの電磁波の影響を受けることなくスロットルバルブの開度及びアイドル運転を検出することができ、これによっても検出精度を向上できる。
【0041】また本実施例では、ホール素子28をカラー29に収納してプリント基板30に固定しているため、ホール素子28の位置決めが容易である。また、カラー29により、長時間の使用に伴う温度・振動ストレスによるホール素子28のリードのシャフト回転方向へのねじれを防止することができるため、スロットルポジションセンサの耐久性も確保できる。
【0042】また更に本実施例では、シャフト5をベアリング3を介してハウジング1に固定しているため、シャフト5の回転方向への組み付けガタをベアリング3により低減でき、レバー7に何らかの外力が加わることにより生ずるシャフト5のかたぎによるホール素子出力変動を低減できる。
【0043】ここで上記実施例では、ホール素子28のプリント基板30への組付けに、樹脂製のカラー29を用いたが、図11〜図13に示す如く、カラー29の代わりに、非磁性の導電材からなるホルダ71にてホール素子28を収納し、ホルダ71をプリント基板30に固定するようにしてもよい。尚図11はホルダ71を使用したスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図、図12は図11におけるE−E線に沿った断面図、図3は図12におけるF−F線に沿った断面図である。
【0044】そしてこの場合、電磁波の侵入をホルダ71にて防止することができるため、ケースには、上記実施例のケース20の突起部20aにホルダ71挿通用の穴73を設けた、偏平な(即ち突起のない)ケース75を使用することができ、ケース75の製造及び取扱を簡単に行なうことができるようになる。また図13に示す如く、ホルダ71にラッチ71aを形成して、ホール素子28をホルダ71の壁に押し付けて固定するようにすれば、ホール素子28のプリント基板30への組み付けを簡単にすることができる他、ホール素子28の長時間の使用に伴う温度・振動ストレスによるリード線ねじれ防止効果を、上記実施例のカラー29以上とすることができる。
【0045】尚図11〜13に示した本実施例のスロットルポジションセンサにおいては、上記説明部分と、ケース75とプリント基板30とがスクリュボルト77にてハウジング1に固定されている点とが、上記実施例と異なるだけであり、それ以外は上記実施例のスロットルポジションセンサと同様であるので、これ以上の説明は省略する。
【0046】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のスロットルポジションセンサによれば、非接触型のセンサであるため、耐久性を確保することができると共に、従来の非接触型センサのように、検出精度を確保するために各センサ毎に出力ドリフトの温度補償等を行なう必要がないため、その生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例のスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図である。
【図2】 図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】 図1におけるB−B−A線に沿った断面図である。
【図4】 スロットルポジションセンサの底面図である。
【図5】 ホール素子28によるスロットル開度の検出動作を説明する動作説明図である。
【図6】 ホール素子22によるアイドル検出動作を説明する動作説明図である。
【図7】 検出回路の構成を表す電気回路図である。
【図8】 図7の検出回路により得られる検出信号特性を表す説明図である。
【図9】 図7における温度補償回路の動作説明図である。
【図10】 図7におけるアイドル判定用の回路の動作説明図である。
【図11】 ホルダ71を使用したスロットルポジションセンサの内部構成を表す断面図である。
【図12】 図11におけるE−E線に沿った断面図である。
【図13】 図12におけるF−F線に沿った断面図である。
【符号の説明】
1…ハウジング 3…ベアリング 5…シャフト 7…レバー
15,16,17,18…永久磁石 20…ケース
22,28…ホール素子 26…ターミナル 29…カラー
30…プリント基板 32…鋼球 34…貫通コンデンサ
36…コネクタターミナル 38…ゴムパッキン 39…カバー
50…温度補償回路 52,62…駆動回路 54…バッファ回路
56,64…差動増幅回路 58,66…基準電圧生成回路
60…フィルタ回路 68…コンパレータ 70…出力回路
71…ホルダ 75…ケース
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内燃機関のスロットルバルブの開度及び該スロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を検出するスロットルポジションセンサであって、上記スロットルバルブに連動して回転するシャフトを備え、該シャフトの先端に、上記シャフトの回転軸を挟んで対向配設された一対の永久磁石からなり、一方の磁石の対向面から他方の磁石の対向面へと磁路を形成する開度検出用磁石と、上記シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、一方の磁石の上記シャフトの回転軸と直交する面に平行な側面から他方の磁石の同側面へと磁路を形成するアイドル検出用磁石と、を設けると共に、上記開度検出用磁石を構成する上記一対の永久磁石間、及び上記アイドル検出用磁石の上記側面から上記シャフトの軸方向に所定距離離れた位置に、夫々、上記各磁石にて形成された磁路での磁界の方向を検出するホール素子を設けたことを特徴とするスロットルポジションセンサ。
【請求項2】 上記開度検出用磁石が形成する磁路の、上記ホール素子位置での最大磁界強度が、0.15テスラー以上であることを特徴とする請求項1に記載のスロットルポジションセンサ。
【請求項3】 上記アイドル検出用磁石が形成する磁路の、上記ホール素子位置での最大磁界強度が、0.12テスラー以上であることと特徴とする請求項1に記載のスロットルポジションセンサ。
【請求項1】 内燃機関のスロットルバルブの開度及び該スロットルバルブが全閉状態となる内燃機関のアイドル運転を検出するスロットルポジションセンサであって、上記スロットルバルブに連動して回転するシャフトを備え、該シャフトの先端に、上記シャフトの回転軸を挟んで対向配設された一対の永久磁石からなり、一方の磁石の対向面から他方の磁石の対向面へと磁路を形成する開度検出用磁石と、上記シャフトの回転軸を中心とする円弧に沿って並設された一対の円弧状の永久磁石からなり、一方の磁石の上記シャフトの回転軸と直交する面に平行な側面から他方の磁石の同側面へと磁路を形成するアイドル検出用磁石と、を設けると共に、上記開度検出用磁石を構成する上記一対の永久磁石間、及び上記アイドル検出用磁石の上記側面から上記シャフトの軸方向に所定距離離れた位置に、夫々、上記各磁石にて形成された磁路での磁界の方向を検出するホール素子を設けたことを特徴とするスロットルポジションセンサ。
【請求項2】 上記開度検出用磁石が形成する磁路の、上記ホール素子位置での最大磁界強度が、0.15テスラー以上であることを特徴とする請求項1に記載のスロットルポジションセンサ。
【請求項3】 上記アイドル検出用磁石が形成する磁路の、上記ホール素子位置での最大磁界強度が、0.12テスラー以上であることと特徴とする請求項1に記載のスロットルポジションセンサ。
【図1】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開平5−26610
【公開日】平成5年(1993)2月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−184750
【出願日】平成3年(1991)7月24日
【出願人】(000004260)日本電装株式会社 (27,639)
【公開日】平成5年(1993)2月2日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)7月24日
【出願人】(000004260)日本電装株式会社 (27,639)
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