説明

スワブとしてのゼラチンベースの材料

ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブが、極めて高い微生物の回収率を有することが見出された。更に、試料、例えば微生物、胞子、ヌクレオチドおよびその他の生物学的または生化学的関連化合物を、このコラーゲンまたはゼラチン含有スワブから完全に回収できる。したがって本発明は、試料からのターゲットの高い回収率、そして更に分析のためスワブから媒体へと移行させた時のターゲットの高い二次回収率を有する方法およびスワブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
微生物細胞、哺乳動物細胞、ヌクレオチドならびにその他の化学的および生物学的分子といったターゲットを、採取媒体のアレイから採取するのに、ゼラチンまたはコラーゲンベースの材料が使用される。
【背景技術】
【0002】
ゼラチンベースのスポンジが、外科的操作の際の止血剤として使用されてきた。
【0003】
Dean Jr.(US4997753;US4863856およびUS4861714)は、生物活性材料を固定化するための加重(weighted)コラーゲンマイクロスポンジの使用を開示している。
【0004】
EP0702081は、2種類のスポンジを含む組織培養用マトリックスを開示している。
【0005】
US5462860は、微生物の迅速な増殖と検出のための培養基を開示している。
【0006】
ターゲット領域を求めて或る領域をサンプリングする常法は、綿製スワブの使用を含む。表面からの試料の回収率は、表面領域からスワブへの回収率の低さ、そしてその後このスワブから培養基への移行の低さの故に、限定されている。USP/NF指針およびEU−GMP指針に従う場合、表面からの微生物の回収レベルが重要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこの問題を扱うものであり、或る領域をサンプリングするための劇的に改善された手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
種々の材料、例えば微生物および哺乳動物細胞のみならず哺乳動物組織ならびにヌクレオチドを包含する種々の分子を、採取媒体のアレイから採取する際に、ゼラチンベースのスポンジが有用であることが判明した。このスポンジは、例えばサンプリングおよび培養目的に利用できる。驚くべき事に本発明者等は、このスポンジは、サンプリングされる材料の回収レベルが常法よりもずっと高いことを発見した。更に、このスポンジに結合したターゲット材料は、一連の方法により、スポンジから別の媒体に移行させる事ができる。
【0009】
本発明の第一の目的は、i)ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブ;およびii)該スワブに固定された支持体を含む、サンプリングまたは採取のための手段を含む器具に関するものである。
【0010】
該器具またはゼラチンベースのスポンジは、該スポンジからのターゲットの高い回収率に関連する、一連の適用のために使用できる。したがって、本発明の更なる目的は、このゼラチンベースのスポンジと該媒体を接触させることを含む、ターゲットを採取媒体から採取するためのゼラチンベースのスポンジの使用に関するものである。更に、本発明の目的は、ターゲットがスポンジに付着するように、ゼラチンベースのスポンジと該試料領域の少なくとも一部を接触させることを含む、試料領域中のターゲットの量を低下させる方法に関するものである。該スポンジの驚くべき性質の、重要且つ更なる利用は、ターゲットの含有量を求めて或る領域を定性的または定量的にサンプリングする方法に関するものであり、それは、ゼラチンベースのスポンジの使用、ならびに、i)ゼラチンベースのスポンジを用いる湿式サンプリング;および/またはii)ゼラチンベースのスポンジを用いる乾式サンプリングの工程を含む。本発明の、同様に重要な側面は、該細胞をゼラチンベースのスポンジに付着させ、その細胞を培養培地で培養することを含む、微生物または哺乳動物細胞の培養方法に関するものである。
【0011】
本発明は、試料からのターゲットの回収率が高く、そして更に、該スワブから分析用培地に移行させた時の二次回収率が高いスワブを提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書の文脈では、ターゲットとは、本発明に係るゼラチンベースのスポンジに結合する任意の種を指す。採取媒体とは、該ターゲットがそこから採取される任意の媒体を指す。「移行媒体」という語は、採取されたターゲットがそこへと移行される媒体を意味することを意図している。
【0013】
本明細書の文脈では、「回収率」という語は、採取媒体から移行媒体へのターゲットの通算回収率を意味することを意図している。したがって、回収率とは、i)本発明に係るコラーゲンベースのスポンジへのターゲットの採取率、およびii)そのコラーゲンベースのスポンジから移行媒体への移行収率を含む。
【0014】
本明細書の文脈において第一の移行媒体は、該スポンジからのターゲットの採取において使用する媒体であると考える。第一移行媒体の適当な例は、ターゲットをスポンジから媒体、例えば液体媒体へと機械的または化学的に移動させる、酵素溶液または適当な洗浄剤を包含する。第二移行媒体は、第一媒体または第一媒体由来の試料(採取されたターゲットを含む)をそこへと移行させる第二の媒体を表すと考える。
【0015】
本明細書の文脈では、微生物とは、細菌、細菌の胞子、古細菌、酵母および真菌からなる群から選ばれる任意の生物であると考える。
【0016】
本明細書の文脈中、分散剤とは、採取後のターゲットを分散させることのできる任意の液体物質であると考える。
【0017】
中性希釈剤とは、アッセイプロセスの状況で中性である、即ち実施される診断アッセイを妨害しない液体であると考える。故にこの状況では、中性希釈剤は必ずしも中性pHの希釈剤である必要はないが、そうであってもよい。水、水性緩衝溶液が好適な中性希釈剤の例である。
【0018】
リンゲル液とは、蒸留水および塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウムを体液中とほぼ同じ濃度で含む水性溶液を指す。
【0019】
「半固体表面」とは、性質が厳密には固体でない表面、例えば哺乳動物の組織またはその他の天然および/または合成組織である。半固体表面の好適な例は、哺乳動物の皮膚、または結合組織で覆われたその他の表面、例えば哺乳動物の臓器表面である。
【0020】
本明細書の文脈では、「洗浄剤」とは、表面からの不純物または汚染物質の除去といった清拭目的で使用される、任意の天然または合成の、有機または無機の、化合物または化合物の混合物であってよい。
【0021】
本明細書の文脈における「ハンドル」という語は、把握に使用できる任意の器具に関連すると考え、特にハンドルとして作用するよう設計された器具に限定されると解してはならない。一例として、本発明に係るゼラチンベースのスポンジに取り付けた棒は、該スポンジのそのような取り扱いのために使用でき、故にハンドルであると考えられる。更に、該スポンジと一時的につながるに過ぎないピンセットまたはトングもハンドルであると考えられる。
【0022】
本明細書の文脈中、スワブとは、或る領域または表面から材料を適用または除去するために使用する任意の材料であると考えられる。拭き取るとは、該スワブを用いて或る領域または表面から材料を適用または除去する方法を指す。
【0023】
本発明は、ゼラチンベースのスポンジ、ならびに、ターゲット、例えば微生物および哺乳動物細胞、および該ゼラチンベースのスポンジと結合するのに好適なヌクレオチドのような分子種の結合に関するそれらの性質に関するものである。前記ターゲットの結合性質は、該ターゲットを種々の媒体から採取するのに有用である。ターゲットを採取したならば、所望によりこれを機械的、酵素的、または化学的プロセスにより該スポンジから解放することができる。
【0024】
ターゲットは典型的には、ウイルス、微生物、哺乳動物細胞および有機分子からなる群から選ばれる。有機分子は、ヌクレオチド、核酸、蛋白または洗浄剤からなる群から選ばれる。ヌクレオチドはプリンまたはピリミジン含有ヌクレオチド、好ましくはATPである。微生物は、細菌、古細菌、細菌の胞子、酵母および真菌からなる群から選ばれる。
【0025】
哺乳動物細胞は、血漿、白血球、赤血球、血小板由来の細胞のみならず、皮膚細胞のようなその他の哺乳動物細胞、または種々の診断および/または清拭目的のために採取することが有用となり得る他の種類の哺乳動物細胞からなる群から選択できる。
【0026】
本発明によれば、本発明に係るスワブへのターゲットの高い採取率がもたらす高い回収率、および/または該スワブから移行媒体へのその後の高い移行収率は、i)ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブを必要とする。該スワブは、典型的にはハンドルまたは支持体上に固定されている。
【0027】
本発明の特に興味深い態様では、スワブを、ゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ、微小繊維ゼラチンまたは微小繊維コラーゲンからなる群から選択できる。好ましくはこのスワブは、ゼラチンベースのスポンジまたはコラーゲンベースのスポンジ、より好ましくはゼラチンベースのスポンジである。ゼラチンベースのスポンジまたはコラーゲンベースのスポンジ材料は、このスポンジの乾燥重量を基準として、それぞれ専ら少なくとも50%のゼラチンまたはコラーゲン、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、典型的には少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、例えば少なくとも90%、適切には少なくとも95%、最も好ましくは少なくともそれぞれ96%、97%、98%、99%から選ばれるゼラチンまたはコラーゲンを含む。
【0028】
最も好ましい態様では、スワブはゼラチンスポンジまたはコラーゲンスポンジ、より好ましくはゼラチンスポンジである。即ち、このスワブ自体は、スポンジの乾燥重量を基準として、典型的には少なくとも95%、最も好ましくはそれぞれ少なくとも96%、97%、98%、99%から選ばれるゼラチンまたはコラーゲンを含むスポンジである。
【0029】
ゼラチンベースのスポンジまたはコラーゲンベースのスポンジは、特にこのゼラチンまたはコラーゲンの組成、孔径、復元速度、吸水性ならびにスポンジの消化性によって表すことのできるそれらの物理的性質によって特徴付けられる。
【0030】
特定の理論に拘束される訳ではないが、このスポンジの孔径は、本発明に係るターゲットを採取し移行させる該スポンジの能力に、少なくとも部分的に影響を及ぼすと考えられる。加えて、孔径はスポンジの密度に影響し、また、復元速度および吸水性といった物理特性にも影響を及ぼす。
【0031】
特定の理論に拘束される訳ではないが、高い回収性は、部分的には、スワブ表面が付与する適度の凹凸によるものであり、これが本発明に係るスワブの表面に試料を採取させる。更に、特定の理論に拘束される訳ではないが、スワブに含まれるコラーゲンまたはゼラチンの化学的性質が付与する物理特性もまた、付着メカニズムにより、部分的に高回収率に寄与する。
【0032】
特定の理論に拘束される訳ではないが、適当な孔径は、部分的に、高い初期回収性への改善を付与すると考えられる。ゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ中のゼラチンまたはコラーゲン、微小繊維ゼラチンおよび微小繊維コラーゲンは、平均孔径約10nmないし約2mmの小孔を形成し、またはこれを有する。1つの理論に拘束される訳ではないが、特に非無水環境では、スワブへの毛管作用の一形態により、採取媒体からの高い回収性が付与される。ウイルスの採取またはサンプリングのためには、少なくとも10%の小孔が1000nm未満、例えば800nm未満、例えば500nm未満、例えば400nm未満の孔径を有する。細菌の採取またはサンプリングのためには、少なくとも10%の小孔が100μm未満、例えば80μm未満、例えば50μm未満、例えば10μm未満の孔径を有する。真菌または赤血球の採取またはサンプリングのためには、少なくとも10%の小孔が1000μm未満、例えば800μm未満、例えば500μm未満、例えば100μm未満、例えば50μm未満の孔径を有する。ゼラチンまたはコラーゲンを所望の孔径に調整する事、およびターゲットに従って孔径を選択する事は、当業者の技術の範囲内にある。
【0033】
本発明の典型的な態様では、ゼラチンベースのまたはコラーゲンベースのスポンジ中のゼラチンまたはコラーゲンはブタ由来のものである。本発明は、他の由来のゼラチン、例えばウシ、または、海洋哺乳動物を包含する他の哺乳動物、魚またはザリガニまたは野菜由来のゼラチン、ならびにその他の由来のゼラチン、例えば有機由来、もしくは合成もしくは半合成由来のゼラチンを含むよう適合させ得るという事が考えられる。
【0034】
復元速度は、ゼラチンベースのまたはコラーゲンベースのスポンジの弾性尺度を表す。本発明の或る態様では、ゼラチンベースのスポンジの復元速度は10秒以下、典型的には5秒以下である。しかしながら、種々の原料由来のゼラチンでできたスポンジは、より幅広い範囲の復元性を有すると考えられる。復元速度は典型的には、実施例1に記載のように、そのスポンジが元の大きさと形態に復帰する速度に基づく方法によって決定する。
【0035】
本発明に係るゼラチンベースのスポンジは、典型的には実施例3で測定したように、少なくとも30g/g、より典型的には少なくとも40g/gの範囲の吸水能力を有する。しかしながら、種々の原料由来のゼラチンでできたスポンジの吸水能力は、少なくとも5g/g、例えば少なくとも10g/g、または少なくとも20g/gといった、より広い範囲となり得る。吸水性の測定は典型的にはUSP標準に従って実施する。
【0036】
本発明の更なる態様では、このスワブは、天然または合成材料、例えばゼラチン粒子またはコラーゲン粒子を含んでいる吸収性材料、好ましくはゼラチン粒子である。この天然または合成吸収性材料は、本質的に、その内部またはその表面に、緩く結合または固定されたゼラチンまたは軟骨粒子を含有することができる任意の材料である。このゼラチンまたはコラーゲン粒子は、該材料の緩いまたは細かい編み目またはマトリックスに捕捉され、または接着性物質に捕捉され得る。この態様の中では、該粒子は約1μmないし約2mm、典型的には約5μmないし約1mm、例えば約5μmないし約0.5mm、より典型的には約5μmないし約0.25mm、好ましくは約10μmないし約0.25mm、例えば約10μmないし約0.1mmの範囲の粒子径を有することができる。
【0037】
このスワブは、スワブと粒子の合計乾燥重量を基準として、1−95% wt/wt、例えば2−90%、典型的には5−90%のゼラチン粒子またはコラーゲン粒子、好ましくはゼラチン粒子含有量を有する。当業者には理解できるであろうが、この重量含有量はその天然または合成材料の性質に依存する。
【0038】
このスワブは、表面およびその他の採取媒体のアレイでの使用を意図している。それが、常套的もしくは微小規模の実験室にある装置で使用するための工業機械であれ、壁、テーブル表面、通気孔であれ、その使用および採取媒体に応じてスワブのサイズは変わる。典型的には、スワブは約1cm×1cmないし約15cm×15cmの範囲の大きさである。これはその使用に応じて任意の形状であってよい。コラーゲンベースのスポンジまたはゼラチンベースのスポンジは極めて圧縮し易く、いかなる裂け目や穴にも押し入れたり詰め込んだりできるため、これらの使用は特に興味深い。
【0039】
本発明の更なる態様は、i)ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブ;およびii)中性希釈剤、抗菌性物質および分散剤からなる群から選ばれる物質を含むキットを目的とする。このスワブは上に記載の通りであってよい。中性希釈剤、抗菌性物質および分散剤からなる群から選ばれる物質は、ターゲットの採取またはサンプリングを助けるために存在させる。
【0040】
本発明の更なる態様は、スワブとターゲットを接触させることを含む、採取媒体からターゲットを採取するための本明細書に記載の器具またはキットの使用に関するものである。
【0041】
本発明者等は、ゼラチンベースのスポンジが微生物に強固且つ可逆的に結合することを発見した。したがって、該スワブは、試料、例えば表面由来の微生物の存在を求めてサンプリングするために利用できる。このような態様では、本発明方法によって微生物をスワブから移行させる事ができる。そのようにして採取した微生物は所望により更に培養できるが、これには、該微生物の詳細な特性決定といった特定の目的のための使用がある。或いは、試料、例えば表面から微生物を定量的に取り除くために該スワブを利用する事もできる。係る態様では、所望により抗菌性物質または消毒剤を適宜このスワブに配合できる。
【0042】
スワブを、微生物に加えて他の種類の細胞、例えば哺乳動物細胞の採取に利用できるように適合させる事が、更に企図される。係る態様は、例えば哺乳動物表面、例えば哺乳動物の皮膚または任意の哺乳動物由来の表面からの採取によって実現できる。更に、該スワブは、例えば哺乳動物の外科手術の際の体内使用に適合させる事ができ、係る態様では、哺乳動物の創傷または内臓からターゲットを採取し、そして、診療所または病院、例えば手術室、または外科手術を遂行もしくは実施するために使用するその他任意の施設の外科手術用器具および特殊備品、壁または床からターゲットを採取するのに利用できる。
【0043】
更に本発明者等は、ゼラチンベースのスポンジが或る種の分子、例えばプリンまたはピリミジン型ヌクレオチドまたは核酸、好ましくはATPと、可逆的に結合することを見出した。この発見は、細菌のアデノシン三燐酸(ATP)の量を測定する事により食品中の細菌数を推定する事に有用な適応を見出せる。該スワブは、より一般的に種々の分子種の採取に適合させることができ、したがってこのスワブは或る種の分子の採取に一般的使用が見出せる。
【0044】
或る態様では、そのような分子はプリンまたはピリミジン型ヌクレオチド、例えばATPである。別の態様では、そのような分子は核酸である。更に別の態様では、該分子は洗浄剤であり、これは試料、例えば表面から簡便に採取できる。この状況において洗浄剤とは、清拭目的、例えば不純物または汚染物質を表面から除去するために使用する任意の天然もしくは合成の、有機もしくは無機化合物または化合物の混合物であってよい。
【0045】
更に、該スワブは、微生物、哺乳動物細胞および/または分子の混合物を試料から同時に採取できるよう適合させる事ができる。或る態様では、或る1つの特定種類のターゲットを採取するようにゼラチンベースのスポンジを形作る事が有用であるかも知れない。
【0046】
スワブが、ターゲット、例えば微生物または哺乳動物細胞ならびに分子種、特にヌクレオチドのような有機分子を付着させ得るという点で望ましい、このスワブの性質が、多岐にわたる有用な適用を可能にしている。
【0047】
本発明の好適な態様では、スワブを、支持体に接触または付着するよう適合させる。支持体の目的は、スポンジ材料自体に触れることなくスワブを取り扱う手段を提供し、そのようにして汚染を回避する事である。この事は、スポンジが理想的に前滅菌されている態様、即ち、微生物または哺乳動物細胞の採取または分析のための態様では特に有用となり得る。支持体は更に、スワブの使用を容易にし、種々の試料からターゲットの簡便な採取を可能にする。支持体は更に、到達困難な試料からのターゲットの採取、またはスワブが支持体無しには操作困難であるその他の適用に対して貴重となり得る。
【0048】
支持体は、特定使用のための任意の適当な材料、例えば木材、天然もしくは合成ポリマー材料(プラスチックおよびゴム材料を包含する)、または特定の態様のために好適なその他任意の有機もしくは無機材料、でできていてよい。
【0049】
支持体は、極めて多様なものであってよく、例えばハンドルの形態が好都合である。このハンドルは短いものであってよく、例えば約1cmないし約30cm、例えば約3cmないし約20cm、好ましくは約5cmないし約15cmの範囲とする事ができる。或る適用のためには、ハンドルはかなり長くするのが好適であり、例えば約30cmないし数メートルの長さの範囲とする事ができる。ハンドルは個々の態様にとって好都合な任意の形状とすることができるが、典型的には、細長く、所望により屈曲しており、ハンドルの一端にゼラチンベースのスポンジが取り付けられ、ハンドルの他端はこのゼラチンベースのスポンジを把握およびその他の態様でこれを適用するために使用する。
【0050】
スワブがハンドル形態の支持体に取り付けられている一つの好適な態様では、該ゼラチンベースのスポンジは、ハンドルの機能を果たす棒の末端に位置させた楕円形またはその他の細長い形状のスポンジを持っている。別の態様では、該スポンジは、固体支持体、例えば円形または長方形の支持体に取り付けられており、その支持体がハンドルまたは棒の末端に位置している。しかしながら該スワブは、このゼラチンベースのスポンジの与えられた使用にうまく適合させた、数多くの異なった態様の棒またはハンドルの形態の支持体に取り付けられるよう適合させることができるということを理解すべきである。
【0051】
別の態様では、支持体は所望により被覆の形態であってもよい。この被覆は任意の適当な材料、例えばポリマー材料またはプラスチック材料、または被覆の提供に好適に使用できるその他任意の材料を含む事ができる。適当な態様では、被覆を、平坦な形状となるように適合させた本発明に係るスワブの片面に適用する。
【0052】
更に別の態様では、支持体は、円板、立方体、球体またはブロックといった適当に適合させた形状を有する固体材料である。係る態様では、ゼラチンベースのスポンジは好ましくは該支持体の片面に取り付けるが、好ましい態様では支持体の幾つかまたは全ての表面に取り付けることもできる。
【0053】
スワブが立方体の形状である態様は、液体試料の採取または液体被覆を含む表面からの採取のための態様において特に有用となり得る。係る態様では、スワブは、所望によりハンドル形状であってもよい支持体に取り付けるのが、または棒もしくはハンドルに取り付けるのが適当である。
【0054】
スワブ材料の性質により、これはその形状をいかなる個別的使用にも適合させ得るということを理解すべきである。したがって、スワブを支持体上に載せる事により本発明を実現する態様の寸法および形状は、それらの使用に申し分なく合致するよう調節できる。
【0055】
スワブは当業者が知悉する任意の常套的方法により支持体に取り付けることができる。係る態様の性質は、該態様の個別的形状およびその意図する使用に依存する。
【0056】
支持体が、多孔性容器の形態、例えばるつぼ、または、スワブを取り囲み、液体およびターゲットがその取り囲んでいる材料を通過するような形状の、その他の適当な材料であってもよいという事もまた企図される。係る態様では、包まれたゼラチンベースのスポンジを使用して、液体から試料を採取できる。このような採取は、包まれたスポンジを液体媒体に浸漬し、そうして媒体中のターゲットが該ゼラチンベースのスポンジと接触し結合するに至らせることによって好適に実施できる。
【0057】
気体ターゲットの採取に適合させたスワブの態様では、これを、スポンジの表面積および/または孔径が最大となるように適合させるのが好ましい。気体ターゲットの結合の性質は液体媒体中のターゲットの結合性質と同じ原理に従うことから、係る態様は、上に開示した態様のいずれかに従って実現できる。気体ターゲットは、採取時に適用される温度において気体であるか、または、ターゲットを採取できる程に充分高い蒸気圧を有する液体または固体化合物である、任意の分子種であってよい。この分脈において気体ターゲットとは、微生物および哺乳動物細胞を包含する固体の性質であるが、液体小滴または微小滴の中に捕捉され、または気体、例えば周囲圧により運搬され得る粒子を形成するターゲットを包含すると考えられる。
【0058】
本発明の更なる態様では、例えば試料が液体または流体である場合、または液体もしくは流体中に見出される場合、ゼラチン粉末またはコラーゲン粉末を、ターゲット採取のための試料に直接適用できる。係る態様では、このゼラチン粉末は、濾過、遠心分離または当分野で既知のその他の手段によって回収できる。
【0059】
このゼラチン粉末は更に、るつぼ、または、該粉末を取り囲み、液体およびターゲットがその取り囲んでいる材料を通過するような形状のその他適当な材料によって取り囲まれていてよい。係る態様は特に、液体媒体からの採取に有用である。更に別の態様では、取り囲んでいる材料は気体ターゲットに対する透過性があり、包まれた粉末ゼラチン材料を、その気体ターゲットを含む環境に位置させることにより、該ターゲットの採取を実施する。
【0060】
本発明に係るスワブを用いて表面からターゲットを採取するために利用する方法は、スワブ法およびカウントタクト法といった技術を包含する。スワブ法は原則として、ターゲット、例えば表面を機械的に拭き取ったり撫でたりすることを含み、これは当業者には周知である。カウントタクト法は、実施例6に開示するように、特別に設計された機器の使用を含む。
【0061】
本発明の1つの態様では、所望により支持体に取り付けてあってもよいゼラチンベースのスポンジを使用して、試料からターゲットを採取する。ターゲットは、微生物、哺乳動物細胞を含む群から選択できるが、哺乳動物組織、或いは分子種、例えば核酸もしくはプリンもしくはピリミジン型ヌクレオチド、好ましくはATPであってもよい。微生物は、細菌、古細菌、細菌胞子、酵母、または真菌からなる群から選択できる。哺乳動物細胞は任意の哺乳動物細胞型であってよいが、特に、血漿、白血球、赤血球、血小板、上皮細胞、皮膚細胞または種々の診断および/または清拭目的のために採取することが有用となり得る他の任意の哺乳動物細胞型からなる群から選択できる。
【0062】
好ましい態様では、湿式サンプリングおよび乾式サンプリングの組み合わせを用いてターゲットを表面から採取する。この文脈では、湿式サンプリングは、本発明に係るゼラチンベースのスポンジを含むと考えられ、このスポンジは所望により支持体に取り付けられ、そして適当な中性希釈剤もしくは分散剤で前もって湿らせてある。このような希釈剤または分散剤は、アッセイを妨害することなく、表面からのターゲットの回収を容易にする目的にかなう。希釈剤および分散剤は任意の適当な水溶液であってよく、所望により、塩類、または採取するターゲットに対して毒性または化学的もしくは生物学的に有害でないその他の物質、例えば生理食塩水、生理食塩水ペプトン、緩衝化生理食塩水ペプトン、リンゲル液ならびに有機もしくは無機緩衝液を包含していてよく、所望により無機塩類を含有していてもよい。希釈剤または分散剤は更に、係るターゲットに対するアッセイのため、採取する微生物または哺乳動物細胞型にとって好適な培養培地を含有していてもよい。該スポンジはまた、所望により前滅菌する事もできる。ターゲットの採取は、少なくとも1個のこのような前もって湿らせたスポンジで表面をひと撫でし、その後この表面を少なくとも1個の乾燥ゼラチンベースのスポンジでひと撫でする事により実現する。乾燥スポンジで撫でる目的は、できるだけ多くの残留液体およびターゲットを該表面から回収することにある。
【0063】
別の態様ではターゲットの採取を、湿式サンプリングまたは乾式サンプリング単独によって実現できる。利用方法の選択は、アッセイしようとする試料の種類および採取しようとするターゲットの種類によって変わる。
【0064】
スワブに採取される微生物、哺乳動物細胞および/または分子を包含するターゲットは、典型的にはスワブから移行させる。このような採取したターゲットの移行は、係るターゲットをスポンジから適当な媒体へと動かすまたははずすことを含む。好ましい態様では、これは、ゼラチンベースのスポンジを、このゼラチンベースのスポンジを消化できる溶液を含む媒体中に入れることによって達成する。スポンジの消化は、好ましくはプロテアーゼのような酵素を用いて、より好ましくはアルカラーゼまたはペプシンのようなプロテアーゼを用いて、化学的および/または酵素的方法により実現できる。化学的手段による消化は、鉱酸もしくはカルボン酸または塩基を、ターゲットが変性しない適当濃度で使用することを含む。一つの態様では、消化は、少なくとも一つの酵素を含む混合物の使用を含み、所望により鉱酸または塩基、そして所望により無機塩ならびに有機または無機緩衝化剤を含んでいてもよい。ターゲットをスポンジから回収するのに好適な温度は、使用方法に極めて依存する。酵素を用いて移行を実現する態様では、実験温度を、使用する消化媒体の組成の状況において特定の酵素による消化効率が最大となるように調節する。
【0065】
一般に、本発明に係るゼラチンベースのスポンジからのターゲットの移行は、該ターゲットをスポンジから解放する、当分野で既知の任意の技術によって実現できる。即ちこれは、pHもしくは温度のような条件の変化、または塩、カオトロピック剤もしくは有機溶媒の添加によって起こり得る。スポンジからの移行はまた、所望により、例えばスポンジを擦ったり振ったりする事によって、またはスポンジからターゲットを外し易くするその他の機械的手段によってもたらされる、機械的作用を包含していてもよい。スポンジからの移行は更に、ターゲットをゼラチンベースのスポンジから洗浄することにより実現できる。
【0066】
微生物および哺乳動物細胞は一般に条件の変化に鋭敏であるため、本発明の好ましい態様は、微生物および/または哺乳動物細胞をスポンジから解放するための消化方法を包含することを企図している。しかしながら、これには例外があり、特に或る適用については、或る種の微生物または哺乳動物細胞、特に好極限性細菌(これは、pH、塩、温度および/または有機溶媒の過酷な条件に耐えるよう適応した生物である)の回収のために実験条件を変化させることが有用であると考えられる。スポンジに結合した分子の回収は、本発明に係る与えられた態様および結合した分子の種類に応じて、前記技術のいずれかによって達成できる。
【0067】
ゼラチンベースのスポンジから回収される微生物または哺乳動物細胞を、所望により、膜濾過を利用して更に単離することもできるが、この場合、メンブレンフィルターは、溶媒および小分子はこのフィルターを通過させ、全細胞および微生物は通過させない性質を有する。典型的な態様では、このようなフィルターは1μm未満、例えば0.8μm未満、例えば0.6μm未満、より典型的には0.45μm未満、例えば0.2μm未満の孔径を有する。
【0068】
本発明のもう一つの態様では、ゼラチンベースのスポンジを、試料、例えば表面の滅菌に利用する。このような態様では、ターゲット、この場合微生物および/または哺乳動物細胞を試料から除去するよう作用する該スポンジの合同作用、および、所望により抗菌性物質または消毒剤が、この微生物または哺乳動物細胞を試料から効果的に除去することを容易にし、そのようにしてこれを無菌とする。係る態様では、該スポンジは好ましくは当分野で既知の方法、例えば熱および/または照射によって滅菌し、所望により抗菌性物質または消毒剤で前処理してもよい。このような物質は、好ましくは液体、例えばアルコール、アルコールを含む水性溶液または微生物もしくは哺乳動物細胞を殺滅するその他の液体物質であるが、滅菌操作を容易にする任意の化合物であってよい。試料の滅菌のための態様は、所望により支持体に取り付け、そして所望により殺菌剤で前処理してあってもよい個々のゼラチンベースのスポンジを、理想的には単回使用を意図した密封包装中に個別包装することによって実現できる。
【0069】
本発明の別の態様では、ゼラチンベースのスポンジ上に捕捉された生きている微生物または哺乳動物細胞を培養することができる。一般に培養は、微生物または哺乳動物細胞と適当な培養培地を接触させることを要する。培養培地は液体の形態であってよいが、或いはこれは固体寒天の形態である。この培養培地は当業者に周知の成分からなる。この培養の実現は、
1.所望により支持体に取り付けてあってもよいゼラチンベースのスポンジと液体または固体培養培地を接触させる。1つのこのような態様では、適当に成型し棒の末端に位置させたゼラチンベースのスポンジを使用して表面からターゲットを採取し、続いて、これを培養培地と接触させて、該スポンジによって採取された微生物または哺乳動物細胞が培養培地に移行するようにする;
2.所望により寒天を含有していてもよい液体培養培地をゼラチンスポンジ中に注入し、そうすることにより、結合した微生物または哺乳動物細胞がゼラチンベースのスポンジ中でin situ増殖するための条件を提供する;
3.液体培養培地を入れた容器に該ゼラチンベースのスポンジを移行させ、そうすることにより、結合した微生物または哺乳動物細胞の全集団の、該培養培地中での培養を可能にすることを包含する常套的技術によって達成できる。
【0070】
採取された微生物または哺乳動物細胞の培養の前に、結合した細胞をはずし、またはその他の手段で媒体中に放出する工程が先立つということを理解せねばならない。係る態様では、該媒体は第一移行媒体であると考える。この媒体は該適用に好適な任意の液体、例えば中性希釈剤、分散剤、または培養培地とすることができる。結合した微生物または哺乳動物細胞の解放は、ゼラチンベースのスポンジの酵素的および/または化学的消化を包含する本明細書に記載の任意の方法によって実現でき、前記の第一移行媒体への機械的移行を包含できる。このようにして解放された微生物または哺乳動物細胞を、続いて、理想的には液体または固体培養培地からなる第二移行媒体に移行させる。第二移行媒体への移行は部分的であってもよく、即ち、前記第一培養培地由来の試料が第二移行媒体に移行されてもよい。或いは、移行は完全、即ち第一移行媒体の全容量が第二移行媒体へと移行される。
【0071】
本発明に係るゼラチンベースのスポンジにより採取された微生物または哺乳動物細胞の培養は、特に、採取された微生物または哺乳動物細胞の更なる特性解明または産生に有用である。ゼラチンベースのスポンジの好ましい態様は、例えば、試料から採取されたターゲット集団の微生物および/または哺乳動物細胞の組成の定性分析に利用できる。係る態様では、試料は、例えば食品生産ライン、例えば食肉または魚加工ライン中の表面であってよく、または、床、壁、もしくはそのような加工ラインに使用する設備由来のものであってよい。或いは、試料は、設備の表面、特殊家具または診療所もしくは病院、例えば手術室の壁もしくは床であってよい。試料はまた、開放創から、または内臓表面から採取でき、または、これは任意の哺乳動物組織からなる。しかしながら原則として、このゼラチンベースのスポンジは、微生物および/または哺乳動物細胞含有量の測定が有用である任意の試料から得たターゲットの採取および培養に適合させる事ができる。
【0072】
或る態様では、採取媒体は、そこからターゲットを採取できる固体表面である。第二の態様では、該媒体は、そこからやはりターゲットを採取できる液体である。このような態様では、ゼラチンベースのスポンジの高い吸水能力が有用な性質であるが、それは大量の水を採取できるためである。液体媒体は、表面、例えば表面上の腔に存在しているかも知れない。故にこのスポンジは、多岐にわたる供給源、例えば食品製造業の製造機器、食肉および/または魚製品の加工プラント、医療機器、ならびに創傷、例えば外科的創傷の管理および清拭、から得られるターゲットの採取に有用となるよう適合させる事ができる。
【0073】
該ゼラチンベースのスポンジを、液体および/または気体の性質を有する他の型の試料由来のターゲットの採取に使用できるよう適合させ得るという事も、更に企図される。
【0074】
原則として、天然もしくは合成表面、または有機もしくは無機材料であるといった該表面の成り立っている材料に関わりなく、固体表面から採取を行う。更に、ターゲットは、半固体表面、例えば哺乳動物皮膚および哺乳動物臓器表面を包含する哺乳動物表面および哺乳動物組織から採取できる。
【実施例】
【0075】
以下の方法および実施例は、本発明に係るゼラチンベースのスポンジを、具体的使用のために、ステンレススチール表面からの細菌胞子の採取および回収のために適合させる方法を説明するものである。回収率、即ち該表面からスポンジへの移行およびスポンジから媒体へのその後の移行についての通算収率は極めて高く、これは、試料、例えばステンレススチール表面からのターゲットの採取および移行のための、このゼラチンベースのスポンジの有用性を説明するものである。
【0076】
しかしながら、これらの方法および実施例は、本発明の有用な態様の例として理解すべきであり、これを他の使用に適合させることを制限するものと解してはならない。
【0077】
実施例1 ゼラチンベースのスポンジの復元時間の測定
この方法の目的は、ゼラチンベースのスポンジの復元速度を測定することである。この方法は、該スポンジを浸漬し、次いでこれを絞ることを含む。スポンジの元の形状の外観を時間の関数として監視し、スポンジが元の形状に到達するまでにかかった時間を復元時間と呼ぶ。
【0078】
この方法は以下の工程を含む:
1.吸収性ゼラチンベースのスポンジを約1×1cmの適当な断片に切り取り、室温でこれを完全に水に浸漬する。
2.試料を水から取り出し、これが平らになり気泡または水滴が押し出されなくなるまで水を絞る。
3.室温で水を満たしたビーカーに試料を入れ、この試料が元の大きさと形状を獲得するまでの時間(秒)を測定する。
4.実験を2回反復し、結果を3回の測定の平均値として記録する。
【0079】
実施例2 ペプシンを用いたゼラチンベースのスポンジの消化性の測定
目的:酵素的手段によるゼラチンベースのスポンジの消化時間をペプシンを用いて測定。
本方法で使用する試薬:
Milli−Q−water
ペプシン(1:3000)
希塩酸、Ph.Eur.
ペプシン溶液1%:
ペプシン20.0gを精密に秤量し、2000mlメスフラスコを用いて希塩酸100mlに溶解する。水を加えて容量調節し、混合する。
【0080】
器具:
金属フィラメントのバスケット、直径6cm、隙間1mm。
サーモスタット付き水浴
【0081】
方法:
1.ペプシン溶液(1%)100mlを250mlビーカーに移す。マグネットを入れ、マグネチックスターラー上で37℃に予熱した水浴にこのビーカーを入れる。
2.吸収性ゼラチンスポンジを重量50±5mgの断片に切り取り、これを水の入ったビーカーに入れる。組織を損壊しないよう留意しながら、ゼラチンスポンジが完全に濡れ、空気が全て抜けるまで指で穏やかにこれを揉む。
3.水から挙げ、静かに絞って過剰の水を取り除く。
4.この湿らせた試料をビーカー中の金属フィラメントバスケットに入れ、タイマーを始動させる。
5.吸収性ゼラチンスポンジ断片が完全に溶解するまで監視し、タイマーを止め、消費時間を記録する。
6.実験を2回反復し(合計3回)、平均値を算出する。
【0082】
ゼラチン粉末のための別法
1.ペプシン溶液(1%)100mlを250mlビーカーに移す。マグネットを入れ、マグネチックスターラー上で37℃に予熱した水浴にこのビーカーを入れる。
2.約50mg±5mgに秤量した試料を調製する。
3.この試料を直接ビーカーに入れる。
4.吸収性ゼラチン粉末が完全に溶解するまで監視し、タイマーを止め、消費時間を記録する。
5.実験を2回反復し(合計3回)、3回の測定の平均値を算出する。
【0083】
実施例3 ゼラチンベースのスポンジの吸水性の測定
目的:ゼラチンベースのスポンジが吸収できる水の量の測定。このスポンジは、重量対重量ベースで自身の重量の数倍の水を吸収すると予想される。
【0084】
方法:USPの “Absorable Gelatine Sponge: Water absorption” の方法に従う。6個の異なるゼラチンスポンジ断片について合計6回の測定を実施する。
【0085】
実施例4 ゼラチンベースのスポンジのサイズ測定
目的:ゼラチンスポンジの重量、高さ、長さ、幅、中心孔および直径を6個の試料について測定する;6個の試料それぞれについて一連の測定を実施する。6回の測定の平均値を記録する。密度を算出する。
【0086】
器具:カリパス、Mitutoyo 500−Seriesまたは類似器具
吸収性ゼラチンスポンジフィルムの長さおよび幅の測定用に特別に製造された定規。
天秤、Mettler AK 160または同等の正確さの天秤。
【0087】
方法および計算:求める測定をカリパスまたは定規で行う。6個の試料について実施した6回の測定の平均値を記録する(mmで)。
【0088】
スポンジの重量を測定する。6個の試料について実施した6回の測定の平均値を記録する(0.001gで)。吸収性ゼラチンスポンジの密度、分析値(anal)を以下のように算出する:
【0089】
【数1】

【0090】
[式中、D=スポンジの直径、d=スポンジの孔の直径である]
【0091】
実施例5 湿式サンプリングと乾式サンプリングを利用するステンレススチール表面からのサンプリングプロトコル
目的:湿式サンプリングと乾式サンプリングの組み合わせを利用してステンレススチール表面をサンプリング。
【0092】
材料:
ゼラチンベースのスポンジ
塩水−ペプトン溶液
アルカラーゼ溶液
接触面積24cmのステンレススチール表面
ストマッカーバッグ
【0093】
方法:
1.塩水−ペプトン溶液で湿らせたゼラチンスポンジスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に左から右へと拭き取る。
2.塩水−ペプトン溶液で湿らせたゼラチンスポンジスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を垂直に上から下へと拭き取る。
3.乾燥ゼラチンスポンジスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に左から右へと拭き取る。
4.乾燥ゼラチンスポンジスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を垂直に上から下へと拭き取る。
5.そのスワブをストマッカーバッグに入れる。
6.各ストマッカーバッグに消化液を加える。
7.ストマッカーバッグをストマッカーを用いてホモジナイズする。
8.ストマッカーバッグをスワブが溶解してしまうまで36℃でインキュベートする。
9.膜濾過を利用して胞子の抽出を行う。
【0094】
実施例6 カウントタクトアプリケーターによる拭き取り
緒言。 カウントタクトアプリケーターは、均等な圧力500±50gを10±1秒間適用することにより、表面の試験を標準化する(European Standard草案:CEN/TC243)。
【0095】
説明。 このアプリケーターは2個のプラスチック要素で構成されている:
− 基部。これはカウントタクトプレートを所定位置に保持しており、アッセイ済みバネの上に取り付けた押しボタン装置からなる;
− 基部に留められたユニット。これは電動タイマー、可聴音発信機および電池を含む。
【0096】
この方法は以下の工程を含む:
1.基部の底に固定した2個の透明クリップの下の所定位置にカウントタクトプレートをスライドさせる(蓋を外側に向ける)。
2.カウントタクトプレートの蓋を取る。
3.試料を採取しようとする表面に対して所定位置に、動かさないようにアプリケーターを保持する(該表面が濡れていないことを確認する)。
4.該表面と10秒間接触させた後、可聴発信音が鳴る。該表面からアプリケーターを除去する。蓋をプレートに戻し、このプレートをアプリケーターから取り除く(残った寒天を除去するため、試料を採取した表面の清拭を忘れないようにされたい)。
5.プレートのインキュベーションについては、カウントタクトテクニカルシートおよびカウントタクト照射シートを参照されたい。
【0097】
実施例7 磨きステンレススチールからの確認プロトコル
緒言。 このプロトコルは、70%イソプロパノールで清拭した磨きステンレススチールからの微生物サンプリングに利用する方法の確認を説明するものである。
【0098】
本方法の正確さと精密度を明確にするために、そしてこの試験に使用した種類の材料からの微生物回収率を明確にするために、記載のサンプリング方法を用いて確認プロトコルを実施する。
【0099】
本明細書に記載のサンプリング方法に従って、イソプロパノールで清拭した磨きステンレススチールからの微生物サンプリングを実施する際には、常にこの試験を適用する。
【0100】
確認パラメータ
選択性
ステンレススチール上での微生物活性のマーカーとしてバチルス属の胞子を使用する。この胞子は55℃でインキュベートするため、微生物による汚染がこの確認試験の結果に影響を及ぼすことはないであろうと考えられる。したがって、選択性はこの試験については無関係である。
【0101】
精密度(反復可能性)および正確さ(回収率)
2種類の濃度レベル(5および25個の胞子);1種類の表面材料;各表面材料で2回の拭き取り(分析のため1つの試料にプールする);合計6回の反復(n=6);
を使用し、同一分析者、同一装置および同一試薬を使用し同日内にスワブの反復抽出および分析により評価し、故に合計12の試料を分析する。
【0102】
直線性
5ないし50胞子の範囲をカバーする三点検量線を用いて確立する。3種類の濃度レベル(5、25および50個の胞子)と各表面材料で2回の拭き取りを用いて試験を6回反復して行い、分析用にプールする。
【0103】
中間精密度
同一試薬バッチ、同一装置、異なる分析者を用いて異なる日に反復分析することにより確立する。2種類の濃度レベル、5および25個の胞子、1種類の表面材料および2回の拭き取り(分析のためプールする)、および3日間、3名の分析者により6回の反復で明示する。故に、合計108の試料である。
【0104】
装置
インキュベーター、オートクレーブ、滅菌Drigalski spate、滅菌手袋、ゼラチンスワブ、攪拌機、膜濾過装置、コロニー計数器、滅菌ストマッカーバッグ。
【0105】
材料
Bacillus stearothermophilus胞子の40%エタノール懸濁液(1*10胞子/0.1mLエタノール)。表面材料(磨きステンレススチール)の被験試料。拭き取り領域のための鋳型(6×4cm=24cm)。
【0106】
トリプティックソイ寒天
滅菌フィルター
滅菌50mL注射筒
使い捨て滅菌ピペットチップ
TSA、Tweenおよびレシチンを含む接触プレートを有するカウントタクトアプリケーター
【0107】
化学物質
塩水−ペプトン溶液
96%エタノール
Elga水
アルカラーゼ溶液
【0108】
被験確認溶液の調製
正の対照
クラスA:正の対照として5胞子/313μLを含む胞子懸濁液を使用する。0,100mlの胞子懸濁液(1,6*10胞子/0,1ml)を40%エタノール9,90ml中に3回希釈して1,6胞子/0,1mlの最終懸濁液を得るが、これは、各接触シート(24cm)に対して5胞子/1,6胞子=3,125×0,1ml=0,3125mlの胞子懸濁液に相当する。
【0109】
クラスB:正の対照として25胞子/63μLを含む胞子懸濁液を使用する。0,100mlの胞子懸濁液(1,6*10胞子/0,1ml)を40%エタノール19,90ml中に2回希釈して40胞子/0,1mlの最終懸濁液を得るが、これは、各接触シート(24cm)に対して25胞子/40胞子=0,625×0,1ml=0,0625mlの胞子懸濁液に相当する。
【0110】
負の対照
負の対照として滅菌エタノールを使用する。
直線性
a)5個の胞子を含む、b)25個の胞子を含む、そしてc)50個の胞子を含む胞子懸濁液を直線性の検討に使用する。
【0111】
a)0,100mlの胞子懸濁液(1,6*10胞子/0,1ml)を40%エタノール9,90ml中に3回希釈して1,6胞子/0,1mlの最終懸濁液を得るが、これは、各接触シート(24cm)に対して5胞子/1,6胞子=3,125×0,1ml=0,3125mlの胞子懸濁液に相当する。
【0112】
b)0,100mlの胞子懸濁液(1,6*10胞子/0,1ml)を40%エタノール19,90ml中に2回希釈して40胞子/0,1mlの最終懸濁液を得るが、これは、各接触シート(24cm)に対して25胞子/40胞子=0,625×0,1ml=0,0625mlの胞子懸濁液に相当する。
【0113】
c)0,100mlの胞子懸濁液(1,6*10胞子/0,1ml)を40%エタノール19,90ml中に2回希釈して40胞子/0,1mlの最終懸濁液を得るが、これは、各接触シート(24cm)に対して50胞子/40胞子=1,25×0,1ml=0,125mlの胞子懸濁液に相当する。
【0114】
試料の調製
スワブ法を用いるサンプリング。
− 各ステンレススチールシートに胞子懸濁液を適用する。
− ステンレススチールシート上の胞子懸濁液からエタノールを蒸発させる。
− アルカラーゼ溶液1,0mlを塩水ペプトン溶液90mlに希釈する。
− ストマッカーバッグをぴったり合ったストマッカーバッグクリップに付ける。
− 塩水−ペプトン溶液で湿らせたスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に左から右へと拭き取る。
【0115】
− 塩水−ペプトン溶液で湿らせたスワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に上から下へと拭き取る。
【0116】
− 乾燥スワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に左から右へと拭き取る。
【0117】
− 乾燥スワブを用いて、ステンレススチールシートの24cmの接触面積全体を水平に上から下へと拭き取る。
【0118】
− そのスワブをストマッカーバッグに入れる。
− 各ストマッカーバッグに希釈したアルカラーゼ溶液を加える。
− ストマッカーを用いてストマッカーバッグをホモジナイズする。
− ストマッカーバッグをスワブが溶解してしまうまで36℃でインキュベートする(少なくとも1時間、且つ最長2,5時間)。
【0119】
− 膜濾過を利用して胞子の抽出を行う。
カウントタクトアプリケーターを用いるサンプリング。
− 手袋を使用する。
− 各ステンレススチールシートに胞子懸濁液を適用する。
− ステンレススチールシート上の胞子懸濁液からエタノールを蒸発させる。
− ステンレススチールプレートにカウントタクトアプリケーターを使用する。
このステンレススチールシートには負の対照をも加える。正の対照試料はステンレススチールシートに加えないが、カウントタクト適用プレートには直接加える。
【0120】
インキュベーション。
試料は全て55℃±2℃で少なくとも1日ないし最長7日間インキュベートする。
表面材料および鋳型の清拭。
表面材料および鋳型は各々の使用および再使用の後に清拭せねばならない。
− エタノールに浸した実験用紙で表面を拭う事によりすすぐ。
− 121℃のオートクレーブで20分以上滅菌する。
【0121】
計算
回収%=試料(CFU)* 100/添加した胞子
[式中、
試料=正確さ試験溶液由来の胞子の数、であり、
添加した=正確さ対照試料中の胞子の数、
である]
【0122】
確認方法
回収率/精密度/正確さ
回収率/精密度および正確さをステンレススチールを用いて調査し、上に概説した方法に従って実施する。この試験を、被験試料からの微生物回収率の算出のために使用する。試薬のバッチおよび装置は、これらのパラメータの変更が最終試験結果に殆どまたは全く影響を及ぼさないと予想できることから、変更しない。
【0123】
方法
一人の分析者は、各々約5および25個のバチルス胞子で6枚のステンレススチールプレートを汚染させる。
【0124】
各ステンレススチールシートを4回スワブで拭い、またはカウントタクトアプリケーターを用いてサンプリングする。この試料を55±2℃で少なくとも1日ないし最長7日間インキュベートし、計数する。この試験は上記の方法に従って実施する。
【0125】
回収率/正確さ
回収率は正の対照に比して20%高くならねばならない。
最低回収率には限界を設ける(与えられた任意の胞子濃度における最低平均回収率 − 5ないし25胞子/24cm)。
【0126】
精密度
− 反復分析に関する平均および%RSDを算出する。
− %RSDは10%未満でなければならない。
直線性
方法
上記定義による胞子懸濁液a)、b)およびc)を用いて6個の同一試料を作製する。この試料を、これらの胞子レベルについての回収効率の樹立に使用し、そしてその後の線形回帰に使用する。
【0127】
評価
− 各胞子レベルについて回収率を算出し、5ないし50胞子からの回帰を求める。
− 標準曲線の回帰パラメータを算出し、各曲線の傾き、切片および相関係数を記録する。
− 相関係数はr>0,940の判定基準に合致せねばならない。
【0128】
中間精密度
方法
3名の異なる分析者を利用し、後の3日間に関する上記の精密度と同様とする。
評価
− 胞子の回収率を算出する。
− 各日についての反復分析に関する平均および%RSDを算出する。
− 全ての日(中間精密度測定日1、2、および3日目)を使用して、平均および%RSDを算出する。
− %RSDは15%未満でなければならない。
【0129】
実施例8 磨きステンレススチールからのサンプリングの確認
目的
実施例7の確認プロトコルを参考にして、70%イソプロパノールで清拭した磨きステンレススチールからの微生物サンプリングに使用した方法を確認する。
【0130】
緒言
記載のサンプリング方法を利用して、表面からの微生物サンプリングに利用する方法の精密度、的確性および直線性を明確にするために、そして、本試験で使用する種類の材料からの微生物回収効率を推定するために、確認試験を実施する。この試験では、70%イソプロパノールで清拭した磨きステンレススチールからサンプリングを行った。サンプリングの根本理由は、これが装置産生に用いられる一般的材料である事である。試験方法は、スワブ法によるサンプリングおよびカウントタクト法によるサンプリングであった。このサンプリングは、クラス10000産生装置のUSP、NF指針、およびクラス10000産生装置の微生物純度のためのEU−GMP指針と等しい細菌胞子の適用数を有する表面について実施した。
【0131】
結果
回収率
スワブ法を用いた回収率の算出(表1)は、5個の胞子を適用した時の分析者間の変動(40%ないし175%)および25個の胞子を適用した時の変動(73%ないし105%)を示した。スワブ法を利用した全分析者についての平均回収率は、5個の胞子を適用した時には80%、そして25個の胞子を適用した時には91%と算出された。
【0132】
カウントタクト法を用いた回収率の算出(表2)は、5個の胞子を適用した時の分析者間の変動(54%ないし88%)および25個の胞子を適用した時の変動(36%ないし57%)を示した。カウントタクト法を利用した全分析者についての平均回収率は、5個の胞子を適用した時には74%、そして25個の胞子を適用した時には45%と算出された。
【0133】
精密度
スワブ法を使用した時(表1)の%で表した相対標準偏差(RSD%)の計算は、5個の胞子を適用した時の分析者間の変動(34%ないし70%)および25個の胞子を適用した時の変動(30%ないし57%)を示した。カウントタクト法を利用すると(表2)、5個の胞子を適用した時のRSD%は41%と90%の間であり、25個の胞子を適用した時には20%と65%の間であった。
【0134】
中間精密度
スワブ法を使用した時の中間精密度(表1)は、5個の胞子を適用した時には64%、そして25個の胞子を適用した時には43%であった。カウントタクト法を使用した時の中間精密度(表2)は、5個の胞子を適用した時には77%、そして25個の胞子を適用した時には54%であった。
【0135】
スワブ法を使用した時のサンプリング結果
【表1】

【0136】
1)適用した胞子の数は5、25または50と算出した。適用した胞子の実際の量は回収率の計算に利用した。
2)一名の分析者は、直線性を検討する唯一の目的で、50個の適用胞子を有する表面からのサンプリングのみを行った。
3)各分析者はサンプリングと分析を6回ずつ行った。
5ないし50胞子からの直線性:
【0137】
相関係数(R)=0,9995;R=0,9990;切片=−2,3;傾き=1,0
【0138】
直線性
一名の分析者による5、25および50個の適用胞子濃度の間の回帰により、直線性を算出した。規定の許容レベルはR>0,9400であった。算出されたRは、スワブ法を使用した時は0,9990であり、カウントタクト法を使用した時は0,9989であった。
【0139】
カウントタクト法を使用した時のサンプリング結果
【表2】

【0140】
1)適用した胞子の数は5、25または50と算出した。適用した胞子の実際の量は回収率の計算に利用した。
2)一名の分析者は、直線性を検討する唯一の目的で、50個の適用胞子を有する表面からのサンプリングのみを行った。
3)各分析者はサンプリングと分析を6回ずつ行った。
5ないし50胞子からの直線性:
【0141】
相関係数(R)=0,9989;R=0,9979;切片=−2,4;傾き=0,4
【0142】
考察
回収率
USP/NF指針およびEU−GMP指針に従う時、表面からの微生物の回収率レベルは重要である。このプロトコルに記載のようなスワブ法およびカウントタクト法の両者を利用した細菌の回収率は、USP/NF指針およびEU−GMP指針と同等条件で既知の微生物汚染のある試料から微生物を回収した場合に予想されたものよりも良好であった。平均(全分析者について)の最低回収率は、スワブ法では80%、カウントタクト法では45%であった。ステンレススチール上で利用した、選ばれたサンプリング法について、該表面上の実際の微生物量の推定にはこの回収率を使用すべきである。
【0143】
精密度
反復分析(一名の分析者について)に関する相対標準偏差(%RSD)は最初の予想よりも大であった。しかしながら正の対照とこのアッセイについての%RSDの比較は、この高い%RSDは主としてその試料の分析によって引き起こされたものであって、カウントタクトまたはスワブ法の使用によるものではないことを示した。%RSDは化学分析よりも微生物分析についてずっと大きくなるという事が一般に知られていることから、化学分析に相当する%RSDは達成できないと予想すべきだったのである。
【0144】
中間精密度
反復分析(分析者間)についての相対標準偏差(%RSD)は最初の予想よりも大であった。しかしながら正の対照とこのアッセイについての%RSDの比較は、この高い%RSDは主としてその試料の分析によって引き起こされたものであって、利用したカウントタクトまたはスワブ法によるものではないことを示した。%RSDは化学分析よりも微生物分析についてずっと大きくなるという事が一般に知られていることから、化学分析に相当する%RSDは達成できないと予想すべきだったのである。
【0145】
上で得られた最低回収率について算出された平均%RSDは、スワブ法で64%、カウントタクト法で54%であった。この分析に関する大きな変異を補正するため、表面上の実際の微生物数を推定する際には、%RSDを考慮に入れるべきである。
【0146】
結論
この結果は、上記の方法は磨きステンレススチールからの微生物のサンプリングに全体としてうまく利用でき、この方法を全ての表面に適用できると予想し得ない理由は無い。USP/NF指針およびEU−GMP指針に従う場合、表面からの微生物の回収率レベルは重要である。このプロトコルに記載のようなスワブ法およびカウントタクト法の両者を利用した細菌の回収率は、USP/NF指針およびEU−GMP指針と同等条件で既知の微生物汚染のある試料から微生物を回収した場合に予想されたものよりも良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブ(swab);および、
ii)該スワブに固定された支持体を含む、サンプリングまたは採取(collecting)のための器具(device)。
【請求項2】
スワブが、ゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ、微小繊維(microfibrillar)ゼラチンまたは微小繊維(microfibrallar)コラーゲンからなる群から選ばれる請求項1に記載の器具。
【請求項3】
スワブがゼラチンベースのスポンジである請求項2に記載の器具。
【請求項4】
スワブがゼラチンスポンジまたはコラーゲンスポンジ、好ましくはゼラチンスポンジである請求項2に記載の器具。
【請求項5】
スワブがゼラチン粒子またはコラーゲン粒子、好ましくはゼラチン粒子を含む天然または合成吸収性材料である請求項1に記載の器具。
【請求項6】
ゼラチンまたはコラーゲンが天然または合成由来、例えば哺乳動物、例えば海洋哺乳動物、ブタ、ウシ由来、または魚、ザリガニもしくは野菜由来のものである、前記請求項のいずれかに記載の器具。
【請求項7】
ゼラチンまたはコラーゲンがブタ由来のものである請求項6に記載の器具。
【請求項8】
ゼラチンベースのまたはコラーゲンベースのスポンジが、実施例1の方法で測定した場合、10秒以下、典型的には5秒以下の復元性を有する請求項2に記載の器具。
【請求項9】
ゼラチンベースのスポンジが、実施例3の方法で測定した場合、少なくとも30g/g、典型的には少なくとも40g/gの吸水性を有する請求項2に記載の器具。
【請求項10】
ゼラチンベースのスポンジが、このスポンジの乾燥重量を基準として、少なくとも50%のゼラチン、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、典型的には少なくとも75%のゼラチン、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%のゼラチン、例えば少なくとも90%のゼラチン、適切には少なくとも95%のゼラチン、最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%、99%より選ばれるゼラチンからなる請求項2に記載の器具。
【請求項11】
ゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ、微小繊維ゼラチンおよび微小繊維コラーゲンが、約 の平均孔径を有する小孔を有する請求項2に記載の器具。
【請求項12】
該粒子が、約1μmないし約1mm、典型的には約5μmないし約0.5mm、より典型的には約5μmないし約0.25mm、好ましくは約10μmないし約0.25mm、例えば約10μmないし約0.1mmの範囲の粒子径を有する請求項5に記載の器具。
【請求項13】
該スワブが、スワブと粒子の合計乾燥重量を基準として、1−95% wt/wt、例えば2−90%、典型的には5−90%のゼラチン粒子またはコラーゲン粒子、好ましくはゼラチン粒子の含有量を有する請求項5に記載の器具。
【請求項14】
該スワブが約1cm×1cmないし約15cm×15cmの範囲の大きさである請求項1に記載の器具。
【請求項15】
i)i)ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブ;および、
ii)中性希釈剤、抗菌性物質および分散剤からなる群から選ばれる物質を含むキット。
【請求項16】
中性希釈剤が生理食塩水、生理食塩水ペプトン、緩衝化生理食塩水ペプトン、リンゲル溶液および有機または無機緩衝液からなる群から選ばれる請求項15に記載のキット。
【請求項17】
該スワブに固定された支持体を更に含む請求項に記載のキット。
【請求項18】
該スワブがゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ、微小繊維ゼラチンまたは微小繊維コラーゲンからなる群から選ばれる請求項15に記載のキット。
【請求項19】
該スワブがゼラチンベースのスポンジである請求項18に記載のキット。
【請求項20】
該スワブがゼラチンスポンジまたはコラーゲンスポンジ、好ましくはゼラチンスポンジである請求項18に記載のキット。
【請求項21】
該スワブがゼラチン粒子またはコラーゲン粒子、好ましくはゼラチン粒子を含む天然または合成吸収性材料である請求項15に記載のキット。
【請求項22】
ゼラチンまたはコラーゲンが天然または合成由来、例えば哺乳動物、例えば海洋哺乳動物、ブタ、ウシ由来、または魚、ザリガニもしくは野菜由来のものである請求項15ないし21のいずれか1項に記載のキット。
【請求項23】
ゼラチンまたはコラーゲンがブタ由来のものである請求項22に記載のキット。
【請求項24】
ゼラチンベースのまたはコラーゲンベースのスポンジが、実施例1の方法で測定した場合、10秒以下、典型的には5秒以下の復元性を有する請求項18に記載のキット。
【請求項25】
ゼラチンベースのスポンジが、実施例3の方法で測定した場合、少なくとも30g/g、典型的には少なくとも40g/gの吸水性を有する請求項18に記載のキット。
【請求項26】
ゼラチンベースのスポンジが、このスポンジの乾燥重量を基準として、少なくとも50%のゼラチン、例えば少なくとも60%、例えば少なくとも70%、典型的には少なくとも75%のゼラチン、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%のゼラチン、例えば少なくとも90%のゼラチン、適切には少なくとも95%のゼラチン、最も好ましくは少なくとも96%、97%、98%、99%より選ばれるゼラチンからなる請求項18に記載のキット。
【請求項27】
ゼラチンベースのスポンジ、コラーゲンベースのスポンジ、微小繊維ゼラチンおよび微小繊維コラーゲンが、約10nmないし約2mmの平均孔径を有する小孔を有する請求項18に記載のキット。
【請求項28】
該粒子が、約1μmないし約1mm、典型的には約5μmないし約0.5mm、より典型的には約5μmないし約0.25mm、好ましくは約10μmないし約0.25mm、例えば約10μmないし約0.1mmの範囲の粒子径を有する請求項21に記載のキット。
【請求項29】
該スワブが、スワブと粒子の合計乾燥重量を基準として、1−95% wt/wt、例えば2−90%、典型的には5−90%のゼラチン粒子またはコラーゲン粒子、好ましくはゼラチン粒子の含有量を有する請求項21に記載のキット。
【請求項30】
スワブとターゲットを接触させることを含む、採取媒体からターゲットを採取するための請求項1−14のいずれか1項に定義の器具の使用。
【請求項31】
スワブとターゲットを接触させることを含む、採取媒体からターゲットを採取するための請求項15−29のいずれか1項に定義のキットの使用。
【請求項32】
採取が、固体または半固体表面、液体、気体およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる採取媒体からのものである請求項30ないし31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項33】
ターゲットが、ウイルス、微生物、哺乳動物細胞および有機分子からなる群から選ばれる請求項30ないし31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
有機分子が、ヌクレオチド、核酸、蛋白または洗浄剤からなる群から選ばれる請求項30ないし31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
ヌクレオチドが、プリンまたはピリミジン含有ヌクレオチド、好ましくはATPである請求項30ないし31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項36】
微生物が、細菌、古細菌、細菌胞子、酵母および真菌からなる群から選ばれる請求項30ないし31のいずれか1項に記載の使用。
【請求項37】
スワブから第一移行(transfer)媒体へのターゲットの移行工程を更に含む請求項30−36のいずれか1項に記載の使用。
【請求項38】
移行がゼラチンまたはコラーゲンの消化を含む請求項37に記載の使用。
【請求項39】
移行がゼラチンまたはコラーゲンから第二移行媒体へのターゲットの機械的移行を含む請求項37に記載の使用。
【請求項40】
移行がゼラチンまたはコラーゲンからのターゲットの洗浄を含む請求項37に記載の使用。
【請求項41】
消化が、酵素、鉱酸、カルボン酸、塩基およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質の使用を含む請求項38に記載の使用。
【請求項42】
酵素がプロテアーゼ、例えばアルカラーゼまたはペプシンである請求項41に記載の使用。
【請求項43】
膜濾過によるターゲットの抽出工程を更に含む請求項37−42のいずれか1項に記載の使用。
【請求項44】
ゼラチンまたはコラーゲンを含むスワブと、試料領域の少なくとも一部を、ターゲットがスワブに付着するまで接触させることを含む、試料領域におけるターゲットの量を低下させる方法。
【請求項45】
採取媒体が、固体または半固体表面、液体、気体およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項44に記載の方法。
【請求項46】
ターゲットが、ウイルス、微生物、哺乳動物細胞および有機分子からなる群から選ばれる請求項44に記載の方法。
【請求項47】
分子ターゲットが、ヌクレオチド、核酸、蛋白または洗浄剤である請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヌクレオチドが、プリンまたはピリミジン含有ヌクレオチド、好ましくはATPである請求項47に記載の方法。
【請求項49】
微生物が、細菌、古細菌、細菌胞子、酵母および真菌からなる群から選ばれる請求項46に記載の方法。
【請求項50】
スポンジから第一移行媒体へのターゲットの移行工程を更に含む請求項44ないし49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
移行がゼラチンまたはコラーゲンの消化を含む請求項50に記載の方法。
【請求項52】
移行が、ゼラチンまたはコラーゲンから第二移行媒体へのターゲットの機械的移行を含む請求項50に記載の方法。
【請求項53】
移行がゼラチンまたはコラーゲンからのターゲットの洗浄を含む請求項50に記載の方法。
【請求項54】
スワブが請求項1ないし14のいずれか1項に定義の通りである請求項44に記載の方法。
【請求項55】
中性希釈剤、抗菌性物質、消毒剤および分散剤からなる群から選ばれる物質の使用を更に含む請求項44ないし54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
抗菌性物質または消毒剤がアルコールである請求項55に記載の方法。
【請求項57】
ゼラチンベースのスポンジの使用、ならびに
i)請求項1−14のいずれか1項に定義のスワブを用いる湿式サンプリング;および/または、
ii)請求項1−14のいずれか1項に定義のスワブを用いる乾式サンプリング、
の工程を含む、ターゲットの含有量を求めるために或る領域を定性的または定量的にサンプリングする方法。
【請求項58】
該領域が、固体または半固体表面、液体、気体およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる請求項57に記載の方法。
【請求項59】
ターゲットが、ウイルス、微生物、哺乳動物細胞および有機分子からなる群から選ばれる請求項57に記載の方法。
【請求項60】
分子ターゲットが、ヌクレオチド、核酸、蛋白または洗浄剤である請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ヌクレオチドが、プリンまたはピリミジン含有ヌクレオチド、好ましくはATPである請求項60に記載の方法。
【請求項62】
微生物が、細菌、古細菌、細菌胞子、酵母および真菌からなる群から選ばれる請求項59に記載の方法。
【請求項63】
スポンジから第一移行媒体へのターゲットの移行工程を更に含む請求項57ないし62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
移行がゼラチンまたはコラーゲンの消化を含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
移行が、ゼラチンまたはコラーゲンから第二移行媒体へのターゲットの機械的移行を含む請求項63に記載の方法。
【請求項66】
移行がゼラチンまたはコラーゲンからのターゲットの洗浄を含む請求項63に記載の方法。
【請求項67】
スワブが請求項1ないし14のいずれか1項に定義の通りである請求項57に記載の方法。
【請求項68】
細胞をゼラチンベースのスポンジに付着させ、この細胞を培養培地(growth medium)で培養することを含む、微生物または哺乳動物細胞を培養するための方法。
【請求項69】
培養培地を該ゼラチンベースのスポンジに添加する請求項68に記載の方法。
【請求項70】
ゼラチンベースのスポンジを液体培養培地中でインキュベートする請求項68に記載の方法。
【請求項71】
ゼラチンベースのスポンジを消化する工程を更に含む請求項68に記載の方法。
【請求項72】
消化が、酵素、鉱酸、カルボン酸、塩基およびそれらの組み合わせからなる群から選ばれる物質の使用を含む請求項68に記載の方法。
【請求項73】
酵素がプロテアーゼである請求項72に記載の方法。
【請求項74】
プロテアーゼがアルカラーゼまたはペプシンである請求項73に記載の方法。

【公表番号】特表2006−509502(P2006−509502A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557825(P2004−557825)
【出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【国際出願番号】PCT/DK2003/000855
【国際公開番号】WO2004/053051
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505222277)フェローサン アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】