説明

スーツケース

【課題】
スーツケースの表面に付く擦り傷の原因のひとつである、横に並べ置かれたスーツケースの表面同士の接触によって生じる擦り傷を低減できるようにするとともに、同擦り傷低減のための手段がケースの装飾としても機能するようにして、デザイン的にも優れるスーツケースを提供できるようにする。
【解決手段】
外側を硬質素材で形成したスーツケース1表面の少なくとも1個所に形成した凹部2の内底に、凹部2の上部開口面よりも突出でき、曲面に形成した上方部分を有する装飾用部材1(3a)、および凹部2の上部開口面よりも低く形成した装飾用部材2(3b)によって所定の模様をプレート上面に形成したプレート部材4からなる装飾部材3を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行等の際に使用するスーツケースに関し、より詳しくは、ハードスーツケースにおける本体や蓋体の外表面に対する傷付きを低減できる同低減機能を有する装飾部材を配設したスーツケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本体をアルミ素材や合成樹脂素材から形成したハードスーツケースを持って旅行をする際、例えば、団体旅行で大勢が同じ目的地に行く場合等は、ハードスーツケース(以下、スーツケースと呼ぶ。)に備えるキャスタにより同ケースを曳いて運んでいる時、自分のスーツケースの横にケース表面を対向させた状態で並べ置かれた他人のスーツケースが何らかの原因で接触する場合があり、これによって一方乃至両方のスーツケースの表面に擦り傷等が付いてしまうことがあった。
【0003】
しかしながら、スーツケースは実用品であることから使用を重ねれば傷が付くのは当たり前であって、前述するケース表面に付く擦り傷等は、ある程度付いてしまうのは仕方ないものと考えられていたため、擦り傷を低減するためのスーツケース上における対策は特に取られていなかった。
【0004】
また、使用によるケース表面への傷付きを防止したい場合は、スーツケースにカバーを被せて使用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−308217号公報(第1〜4頁、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、スーツケースの表面に付く擦り傷の原因のひとつである、横に並べ置かれたスーツケースの表面同士の接触によって生じる擦り傷を低減できるようにするとともに、同擦り傷低減のための手段がケースの装飾としても機能するようにして、デザイン的にも優れるスーツケースを提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係るスーツケースは、外側を硬質素材で形成したスーツケース表面の少なくとも1個所に形成する凹部の内底に、同上部開口面よりも突出できる上方部分を有する装飾用部材を少なくとも1つ取り付けてあり、また、前記装飾用部材の少なくとも上方部分を、曲面で形成したものとしてある。
【0008】
また、前記装飾用部材を、プレート部材を介して取り付けてあり、さらに、前記プレート部材のプレート上面を、プレート部材に取り付ける前記装飾用部材の底面よりも広くして、同装飾用部材たる装飾用部材1を取り付けた後に空いたプレート上面のスペースに、前記凹部の上部開口面よりも低く形成する装飾用部材2を適数取り付け、装飾用部材1と装飾用部材2によって所望の模様を形成したものとしてある。
【0009】
また、前記装飾用部材を取り付けた後の凹部内を、透光性を有する充填剤で充填したものとしてある。
【0010】
また、前記装飾用部材の少なくとも上方部分を、弾性を有する素材で形成したものとしてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスーツケースによれば、横に並べ置かれたスーツケースの表面同士が接触しようとすると、装飾用部材の上方部分が、被接触スーツケースの表面に当接してスーツケースにおける表面同士の接触を阻止するので、スーツケースの表面に付く擦り傷の原因のひとつである、横に並べ置かれたスーツケースの表面同士の接触により生じる擦り傷を低減することができる。
【0012】
また、スーツケースの表面同士の接触以外にも、壁面等にスーツケースの表面が接触しようとした場合でも、壁面に装飾用部材の上方部分が当接するので、スーツケース表面に生じる擦り傷は防止できる。
【0013】
また、屋内外においてスーツケース内から収容物を取り出す際に、スーツケースを床や路上に平置きする場合も、床面や路面に装飾用部材の上方部分が当接してスーツケースの表面と床面や路面との間に空間を作るので、これにより、同ケースの表面が床面や路面に接触することがなく、スーツケースの表面に生じる擦り傷を防止できる。
【0014】
そして、装飾用部材を、同装飾用部材の底面よりも広くしてなるプレート部材を介して取り付けている場合は、装飾用部材が受けた衝撃力をプレート部材におけるプレート面全体で受けて同衝撃力を分散できるので、これにより、スーツケースの表面に掛かる衝撃力を緩和することができる。
【0015】
さらに、プレート上に所定の模様を形成するものは、スーツケースの表面を保護するための単なる保護部材ではなく、ケースの装飾としても機能するので、これにより、スーツケースが特徴あるものになって置き引き等の盗難を低減できる効果を有し、さらには、同様な形態のスーツケースが多数あっても自分のスーツケースを一目で見分けることができて、他人のケースと間違えることもなく探し出すことができる。
【0016】
また、装飾用部材を、プレート部材を介して取り付けることにより、装飾用部材が傷付き、同装飾用部材を交換しなければならない場合でも、装飾用部材をプレート部材ごと交換できるようにすることで交換を容易に行うことができる。
【0017】
そして、ユーザーが、自分の好みの装飾用部材を取り付けたプレート部材をスーツケースに取り付けできるよう構成することにより、スーツケースの装飾を自分オリジナルのものとして楽しむことができる。
【0018】
また、前記装飾用部材はスーツケース表面に形成する凹部の内底に取り付けているので、装飾用部材の基部すなわち取り付け部分が凹部内に位置され、これにより、装飾用部材の基部が外部の部材と直接接触することはなく、装飾用部材の剥離を防止できる。
【0019】
さらに、装飾用部材を多数配設して所定の模様を形成するようにしているものでも、スーツケース表面より突出する装飾用部材は1つ乃至数個であり、他の装飾用部材はスーツケース表面に形成した凹部内にあるので、スーツケースを持ち運んでいる際に、同装飾用部材が自分や他人の衣服に引っ掛かったり、傷つける恐れがない。
【0020】
また、スーツケース表面より突出する装飾用部材のみが外部の部材と接触するので、スーツケース表面に形成した凹部内にある前記他の装飾用部材は、前記スーツケース表面より突出する装飾用部材によって保護される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るスーツケースの実施例を示す正面図。
【図2】スーツケースの側面図。
【図3】接触を防止する装飾部材を示す正面図。
【図4】図1中のA−A線断面図。
【図5】プレート部材を示す側面図。
【図6】プレート部材を示す正面図。
【図7】プレート部材を示す正面図。
【図8】凹部内を透光樹脂で充填したものを示す断面図。
【図9】装飾部材によって接触が防止された状態を示す図。
【図10】本発明に係るスーツケースの実施例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るスーツケースの実施例を、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
本発明のスーツケース1は、図1に示すように、例えばアルミや合成樹脂等の硬質素材よりなる蓋体1aと本体1b(図2参照)をヒンジ6で開閉可能に接続して形成したものとしてあって、少なくとも蓋体1aの外表面に装飾部材3を設けてある。
【0024】
前記装飾部材3は、図3に示すように、外部の部材、例えば他人のスーツケース表面との接触を防ぐための接触防止機能をも兼ねる装飾用部材1(3a)と、装飾用部材1(3a)よりも高さの低い、スーツケースの装飾として機能する装飾用部材2(3b)とより構成してある。
【0025】
また装飾部材3は、図4に示すように、スーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の内底に取り付けていて、装飾部材3における装飾用部材1(3a)の上方部分を、凹部2の上部開口面すなわちスーツケース1における蓋体1aの外表面よりも外方に突出させている。
また、装飾用部材2(3b)の上方部分は、同蓋体1aの外表面よりも内方に位置するものを使用している。
【0026】
そして、装飾用部材1(3a)と装飾用部材2(3b)は、接着手段(図示は省略)によってプレート部材4の上面に取り付けられていて、また、これら装飾用部材1(3a)と装飾用部材2(3b)が取り付けられたプレート部材4を、スーツケース1における蓋体1a部材に形成した貫通孔に通したボルト脚4aにナット4bを螺着することによって、スーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の内底に固定している。
【0027】
またプレート部材4の全体形状は、図5に示すように、本体たるプレート体の背面にボルト脚4aを設けたものとしている。
【0028】
したがって、上述のようにスーツケース1を構成することにより、図9に示したように、装飾部材3を設けたスーツケース1の横に並べ置かれた他人のスーツケース12が、スーツケース1方向に移動して衝突した場合でも、スーツケース1の装飾部材3における装飾用部材1(3a)の上方部分が移動(衝突)してきたスーツケース12の表面に当接して、スーツケース1とスーツケース12における表面同士の接触を防止する。
【0029】
また、前記プレート部材4は、本体たるプレート体の背面にボルト脚4aを設けて、スーツケース1における蓋体1a部材に形成した貫通孔に通したボルト脚4aにナット4bを螺着して、スーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の内底に固定するようにしているが、同方法すなわちボルト脚4aおよびナット4bによるプレート部材4の固定ではなく、プレート体の背面に塗布する接着剤によってプレート部材4をスーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の内底に接着固定する場合もある。
【0030】
そして、プレート部材4をスーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の内底に固定する場合、前述する接着剤に代えて、プレート体の背面に配設する両面テープによって同凹部2の内底に接着固定する場合もある。
【0031】
さらに、前記プレート部材4は、図6に示すように、装飾用部材1(3a)や装飾用部材2(3b)を取り付けていないスペースとして空く部分をくり貫いて開口4cにする場合や、図7に示すように、前記スペースとして空く部分をそのまま残す場合もある。
【0032】
また、実施例における装飾用部材1(3a)の上方部分は曲面にしているが、少なくともスーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の開口面よりも突出する上方部分が弾性を有していれば、同上方部分を曲面にする必要はなく、角形等でもよい。
【0033】
そして、装飾用部材1(3a)における凹部2の開口面よりも内方に位置する部分、また装飾用部材2(3b)の全体形状は、実施例に示した曲面に限定されるものではなく、装飾品に好んで用いられる表面カットで形成してもよい。
また、装飾用部材1(3a)乃至装飾用部材2(3b)を、文字や記号、模様、さらに動物や植物また乗り物等の形状を模して形成する場合もある。
【0034】
また、装飾用部材2(3b)は、スーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の開口面よりも内方に位置するものを使用しているが、装飾用部材1(3a)よりも高さの低いものであればよく、例えばスーツケース同士の衝突があっても、装飾用部材1(3a) によって装飾用部材2(3b)への直接の接触が妨げられる。
【0035】
そして、装飾部材3を取り付けるスーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2内に、透光性を有する樹脂等からなる充填材5を充填し(図8参照)、凹部2内にごみ等が堆積しないようにして、手入れを容易にできるようにする場合がある。
【0036】
また前記充填材5は、スーツケース1における蓋体1aの外表面に形成した凹部2の開口上辺に沿うまで充填されているが、装飾用部材1(3a)や装飾用部材2(3b)の基部すなわち取り付け部分を覆っていればよい。
【0037】
また充填する充填材5は、凹部2内周壁から容易に剥離できるように成分調整する場合がある。
さらに充填する充填材5は、透光性を有さないものを使用する場合もある。
【0038】
さらに、図10に示すように、装飾部材3をスーツケース1の蓋体1aにおける四隅および中央に設けたり、また、実施例では示していないが、装飾部材3をスーツケース1の本体1b側における所望の部位に配設して、スーツケース1を床や路上に平置きした場合でも、床面や路面に装飾用部材1(3a)の上方部分が当接してスーツケース1の本体1b面と床面や路面との間に空間を作り、同本体1b面に生じる擦り傷を低減できるようにする場合がある。
【0039】
実施例における図中の符号7は、スーツケース1を持ち運ぶ際に使用する把手、符号8は、スーツケース1を曳いて運ぶ際に使用する曳き手、符号9は、スーツケース1を曳く際のキャスタ、符号10は、蓋体1aの開閉用のヒンジ、符号11は、スーツケース1に設けた内張りである。
【符号の説明】
【0040】
1 スーツケース
1a 蓋体
1b 本体
2 凹部
3 装飾部材
3a 装飾用部材1
3b 装飾用部材2
4 プレート部材
4a ボルト脚
4b ナット
4c 開口
5 充填材
6 ヒンジ
7 把手
8 曳き手
9 キャスタ
10 開閉具
11 内張り
12 スーツケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側を硬質素材で形成したスーツケース表面の少なくとも1個所に形成する凹部の内底に、同上部開口面よりも突出できる上方部分を有する装飾用部材を少なくとも1つ取り付けてなるスーツケース。
【請求項2】
前記装飾用部材の少なくとも上方部分を、曲面で形成してなる請求項1に記載のスーツケース。
【請求項3】
前記装飾用部材を、プレート部材を介して取り付けてなる請求項1に記載のスーツケース。
【請求項4】
前記プレート部材のプレート上面を、プレート部材に取り付ける前記装飾用部材の底面よりも広くして、同装飾用部材たる装飾用部材1を取り付けた後に空いたプレート上面のスペースに、前記凹部の上部開口面よりも低く形成する装飾用部材2を適数取り付け、装飾用部材1と装飾用部材2によって所望の模様を形成してなる請求項3に記載のスーツケース。
【請求項5】
前記装飾用部材を取り付けた後の凹部内を、透光性を有する充填剤で充填してなる請求項1に記載のスーツケース。
【請求項6】
前記装飾用部材の少なくとも上方部分を、弾性を有する素材で形成してなる請求項1に記載のスーツケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−15775(P2011−15775A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161477(P2009−161477)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(504134531)株式会社シフレ (2)
【Fターム(参考)】