説明

スープ

【課題】 乾燥臭が抑制され、風味良好で継続的に、簡便に摂取することができるスープを提供する。
【解決手段】 乾燥野菜、及びモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含有するスープ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥野菜およびモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含有するスープに関する。
【背景技術】
【0002】
野菜類は、栄養的見地から毎日の食生活に欠かせない必須の食物である。また、乾燥野菜を含有したスープは、その簡便性から野菜類を摂取できるものとして有用であり、その需要も高い。
【0003】
乾燥野菜は、一般に野菜を裁断又はおろしなどの工程を経て粉砕した後、噴霧乾燥や凍結乾燥等の工程により乾燥される。このため、野菜の細胞組織が破壊され、細胞内の成分と空気とが接触し、野菜中の成分が内在酵素による反応や酸化反応により変性することにより、生臭みや土臭いような異臭といった乾燥臭が発生し、その風味は生の野菜や冷凍野菜に比べ劣る。このことから、乾燥野菜を含むスープも乾燥臭を有するという問題点を有している。
【0004】
野菜の乾燥工程での風味劣化を抑制する手段として、野菜類を水性媒体の存在下で粉砕処理した後固液分離処理して得られた沈殿を凍結乾燥する方法が知られている(特許文献1)。また、グルタチオン等の含硫黄化合物を添加した野菜類を含有する乾燥即席スープ・ソース類の製造方法が知られている(特許文献2)。
【0005】
その他、野菜飲料における野菜の青臭みを抑え、風味改善するために、ヘスペリジン配糖体又はヘスペリジン配糖体とヘスペリジンの混合物を野菜飲料に添加することが知られている(特許文献3)。ヘスペリジンについてはその生理機能について関心が高まっており、ヘスペリジン1分子に対し糖1〜20分子を付加して水溶性を向上させたヘスペリジン配糖体が注目されている。
【0006】
ヘスペリジン配糖体の生理機能としては、血流改善(特許文献4)、高血圧、アレルギー、ガン、高コレステロール、高脂血症予防または治療が知られている(特許文献5)。また、もろみ酢との併用による冷え性改善、コレステロール低下、体力増強、睡眠改善、胃腸や肌状態の改善作用が知られている(特許文献6)。
【特許文献1】特開平07−298849号公報
【特許文献2】国際公開99/56566号パンフレット
【特許文献3】特開平11−318379号公報
【特許文献4】特開平11−171778号公報
【特許文献5】特開2000−078956号公報
【特許文献6】特開2007−186495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の乾燥野菜の乾燥臭を改善又は抑制する従来の方法のうち、野菜類を水性媒体の存在下で粉砕処理した後固液分離処理しで得られた沈殿を凍結乾燥する方法では、工程が煩雑で大量に野菜を処理する場合には装置が大掛かりとなって高コストとなる、また空気との接触も避けられない結果、効果が必ずしも十分ではないという課題を有する。また、グルタチオン等の含硫黄化合物を使用する方法では、含硫黄化合物特有の硫黄臭がすることにより、スープ本来の風味に影響が生じ易いという課題を有する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、乾燥臭が抑制され、風味良好で継続的に摂取することが容易であり、簡便に摂取できるスープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、乾燥野菜の乾燥臭抑制について検討を行った結果、特定比率のモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を配合することにより、乾燥臭が抑制され、風味良好で継続的に摂取することが容易であり、簡便に摂取できるスープが得られることを見出した。また、本発明者らは、本スープが、LDH(乳酸脱水素酵素)の低下作用を有することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、乾燥野菜、及びモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含有するスープを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、乾燥臭が抑制され、風味良好で継続的に、簡便に摂取することができるスープを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明における乾燥野菜とは、野菜を加熱や減圧等の処理により水分含量を10質量%(以下、単に「%」で示す)以下にしたものを指す。好ましい野菜としては、ホウレン草、レタス、モロヘイヤ、パセリ、セロリ、ゴボウ、ニンジン、ダイコン、ピーマン、キャベツ、カボチャ、チンゲン菜、トマト、キュウリ、グリンピース、そら豆、枝豆、ネギ、ジャガイモ、玉ネギ、ニンニク、フキ、春菊、もやし、カンピョウ、コーンフリー等の食用野菜が挙げられる。乾燥野菜は、吸水後に体積で2〜5倍程度に膨潤(復元)するので、吸水前の平均粒径が0.1mm程度以上であることが好ましく、更に具材感を出す点から1mm以上であることが好ましい。また、乾燥野菜の形態は、野菜を裁断した状態のもの、粒状、パウダー状、顆粒状、フレーク状、ミンスト状、ダイス状のものなどを使うことが出来るが、具材感をだすために、野菜を裁断した状態のもの、粒状、フレーク状、ミンスト状、ダイス状のものが好ましい。
【0013】
本発明においては、モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を使用する。モノグルコシルヘスペリジンは、ヘスペリジンのグルコースの4位の位置にグルコース1分子がα−1,4結合したものである。モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物中には、グルコースが2分子以上結合したポリグルコシルヘスペリジンを含有していても良い。この場合、ポリグルコシルヘスペリジンの存在比は、ポリグルコシルヘスペリジン、モノグルコシルヘスペリジンおよびヘスペリジンの全体中20モル%以下、更に10モル%以下、特に5モル%以下であることが、乾燥野菜の乾燥臭の抑制の点から好ましい。また、モノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1、更に70/30〜90/10、特に72/28〜85/15であることが、水溶性および乾燥野菜の乾燥臭の抑制の点から好ましい。ポリグルコシルヘスペリジンが10モル%以下のモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物としては、αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖)、林原ヘスペリジンS(林原商事)等が挙げられる。
【0014】
ポリグルコシルヘスペリジンの含有量、およびモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比は、第8版食品添加物公定書(酵素処理へスペリジン)に記載のHPLC法およびそれに準ずるHPLC法により、各々の面積比より算出することができる。
【0015】
また、モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとの混合物は、乾燥野菜100質量部(以下、単に「部」で示す)に対して0.1〜50部、更に1〜30部、特に2〜20部含有することが、生理作用、乾燥野菜の乾燥臭の抑制およびコストの点から好ましい。
【0016】
本発明においては、ナトリウム及び/又はカリウムを含有することが好ましい。非濃縮タイプのスープの場合、ナトリウムはスープ中0.01〜1.5%、更に0.05〜1%とすることが、カリウムはスープ中0.01〜1.5%、更に0.05〜1%とすることが、風味、乾燥野菜の乾燥臭の抑制の点で好ましい。濃縮タイプのスープの場合は、湯を加えて150mlとした際に上記濃度となる量であることが風味、乾燥野菜の乾燥臭の抑制の点で好ましい。ナトリウム及びカリウムを含有する場合、ナトリウム/カリウムの質量比は1/1〜10/1、更に2/1〜4/1であることが、生理効果を発現する点で好ましい。ナトリウム及び/又はカリウムは、無機塩、有機酸塩、アミノ酸塩、核酸塩等の形態で用いることができる。また、ナトリウム及び/又はカリウムの濃度は、原子吸光光度計(日立偏光ゼーマン原子吸光光度計Z−6100)により測定することができる。
【0017】
本発明においては、喫食時におけるスープのpHが4.5〜7であることが、乾燥臭の抑制の点で好ましい。
【0018】
乾燥野菜の乾燥臭を抑制するメカニズムは明らかではないが、モノグルコシルヘスペリジンは水溶液中で単分子の状態で存在せず、数分子が集合した会合体の状態で溶解していることが知られており(非特許文献:Biosci.Biotechnol.Biochem.,Vol.63 No.12 p.2183−2188(1999))、ポリグルコシルヘスペリジンの存在やモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとのモル比、塩濃度、pHが影響することから、特定範囲の分子数の会合体が存在することが重要だと考えられる。
【0019】
本発明においては、上記成分以外に、一般的にスープの原料として使用されるものについてはいずれも使用することができる。以下に、配合可能な成分を例示するが、これらの成分は代表例であり、これらを単独で若しくは二種以上組み合わせて使用することができる。香味形成成分・発酵調味料としては、味噌(赤、白、西京、金山寺、もろみ等)、醤油(濃口、薄口、丸大豆、等)、中華系発酵調味料(豆板醤、コチジャン、オイスターソース、トウチジャン、XO醤、テンメンジャン等)、魚醤(ナンプラ、ニョクマム等)、ゴマ(ホウル、スリゴマ、ペースト等)、乳及び乳成分等が挙げられる。甘味料としては、砂糖、果糖、ブドウ糖、麦芽糖、液糖、水飴、糖蜜、異性化糖、オリゴ糖、還元糖、トレハロース、アスパルテーム、ステビア、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等が挙げられる。酒類としては、酒、ワイン、ブランデー、リキュール、老酒等が挙げられる。食酢類としては、米酢、穀物酢、ワインビネガー、高酸度酢(酢酸含量15〜30%)、バルサミコ酢等が挙げられる。調味料としては、アミノ酸、蛋白加水分解物、酵母エキス、核酸、コハク酸2Na等が挙げられる。酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸、及びこれらのNa塩類等が挙げられる。香料としては、食品添加物リスト記載品であれば特に制約はない。香辛料としては、ハーブも含めて特に制約はない。増粘剤としては、増粘多糖類(キサンタンガム、カラギナン(κ,ι,λタイプ)、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、タマリンドガム、アルギン酸Na、ペクチン(LM,HM))が挙げられる。その他、各種ビタミン類が挙げられる。
【0020】
本発明におけるスープは、乾燥野菜及び、モノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含むものであればいかなる形態でもよいが、モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとの混合物の含有量が担保できる個食タイプが好ましく、乾燥野菜を別添しそれ以外の液体部分のスープを包装し殺菌した形態や、湯を加えて食べることのできる濃縮スープ(いわゆるスープの素)の形態が挙げられる。保存性、簡便性の点から濃縮スープの形態が好ましい。また、濃縮スープの場合、乾燥野菜は液体濃縮スープ中での香味の変化を防止する点から、乾燥状態にあることが好ましく、具体的には、(1)乾燥野菜と他の調味成分とが乾燥状態で一緒に包装された乾燥濃縮スープの形態、(2)乾燥野菜と液体濃縮スープとが別々に包装された形態、(3)乾燥野菜と一部の調味料成分とが乾燥状態で包装された乾燥具材と液体濃縮スープとが別々に包装された形態等が挙げられる。モノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンとの混合物は乾燥野菜と共に乾燥状態で包装されていてもよく、また液体濃縮スープ中に溶解されていてもかまわない。また、ここでいう乾燥状態とは包装された内容物の水分量が10%以下の状態をいう。
【0021】
本発明におけるスープ又は濃縮スープの種類としては、乾燥野菜、及びモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含むものであればいかなる種類でもよいが、味噌汁、ラーメンスープ、野菜スープ、アスパラガスクリームスープ、ブロッコリークリームスープ、豆スープ、コンソメスープ、ポタージュスープ、チキンスープ、トムヤムクンスープが例示される。
【0022】
本発明におけるスープ又の製造方法はスープに含まれる野菜の一部又は全部を乾燥野菜に置き換える以外は通常のスープの製造方法が採用され、殺菌後容器に封入する方法や包装後殺菌する方法等の任意の殺菌方法が採用される。
本発明において濃縮スープとする場合は、乾燥野菜の製造方法としては加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、凍結真空乾燥等の任意の製造方法が採用される。また、乾燥濃縮スープ及び乾燥具材の製造方法としては、、乾燥野菜と乾燥原料の混合、野菜および/又は乾燥野菜と調味液体との混合物をスプレードライ等の加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥、凍結真空乾燥、造粒法等任意の製造方法が採用される。また、液体濃縮スープは、殺菌後容器に封入する方法や包装後殺菌する方法等の任意の製造方法が採用される。
【実施例】
【0023】
〔モノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの混合物の調製〕
混合物A
αG−ヘスペリジンPA−T(東洋精糖)1gとヘスペリジン(ハマリ薬品)0.4gを1NのNaOHで溶解させた後、1NのHClで中和し、中和溶液を透析膜で脱塩した後、凍結乾燥し、モル比でポリグルコシルヘスペリジン0.8%、モノグルコシルヘスペリジン58.1%、ヘスペリジン41.1%の混合物Aを得た。
【0024】
混合物B
ヘスペリジンを0.3gとした以外は混合物Aと同じ方法により調製し、モル比でポリグルコシルヘスペリジン0.9%、モノグルコシルヘスペリジン62.6%、ヘスペリジン36.5%の混合物Bを得た。
【0025】
混合物C
ヘスペリジンを0.1gとした以外は混合物Aと同じ方法により調製し、モル比でポリグルコシルヘスペリジン1.0%、モノグルコシルヘスペリジン74.0%、ヘスペリジン25.0%の混合物Cを得た。
【0026】
混合物D
αG−ヘスペリジンPA−Tを用いた。混合物の組成はモル比でポリグルコシルヘスペリジン1.1%、モノグルコシルヘスペリジン81.4%、ヘスペリジン17.5%であった。
【0027】
混合物E
αG−ヘスペリジンPA−T 30gを水200mlに溶解させ、200mlの水飽和ブタノール溶液を加えて振とうし、水層を分離した。更に、分離しした水層に水飽和ブタノール200mlを加えて振とうし、水層を分離する操作を4回繰り返した後、分離した水層を凍結乾燥し、モル比でポリグルコシルヘスペリジン0.8%、モノグルコシルヘスペリジン97.3%、ヘスペリジン1.9%の混合物Eを得た。
【0028】
混合物F
混合物E1gとαG−ヘスペリジンH(東洋精糖)1gとを水に溶解し、その溶液を凍結乾燥し、モル比でポリグルコシルヘスペリジン22.7%、モノグルコシルヘスペリジン56.8%、ヘスペリジン20.5%の混合物Fを得た。
【0029】
混合物G
αG−ヘスペリジンHを用いた。混合物の組成はモル比でポリグルコシルヘスペリジン44.2%、モノグルコシルヘスペリジン32.2%、ヘスペリジン23.6%であった。
【0030】
試験例1
食塩1.5g及び乾燥ネギ(水分3%)1.5gに、モノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンのA〜Gの各混合物50mg(乾燥ネギに対し3.3%)を加え、それぞれ60℃の湯150mlを加えた試験品7種、及び混合物を加えない無添加品を調製した。これらの溶液の乾燥臭を生臭み、異臭(土臭み)および乾燥野菜の風味を総合評価として10名の専門パネラーによって下記の評価基準を用い、評点法によって評価し、その平均値により評価した。
【0031】
〔評価基準〕
<青臭み>
4:生臭みがかなり強い
3:生臭みが強い
2:不快ではないが生臭みを感じる
1:生臭みがわずかに感じられる
0:生臭みが感じられない
【0032】
<土臭み>
4:異臭(土臭み)がかなり強い
3:異臭(土臭み)が強い
2:不快ではないが異臭(土臭み)を感じる
1:異臭(土臭み)がわずかに感じられる
0:異臭(土臭み)が感じられない
【0033】
<総合評価>
4:乾燥臭が全く気にならず、風味に優れている
3:乾燥臭がわずかに気になるが、風味が良好である
2:不快ではないが乾燥臭が気になるが、風味は良好である
1:乾燥臭が気になり、風味の調和に若干欠ける
0:乾燥臭がかなり気になり、風味の調和欠ける
【0034】
それぞれの評価結果を表1に示す。混合物B〜Fは乾燥野菜の乾燥臭の抑制に効果が認められた。中でも、ポリグルコシルヘスペリジン含有量が20%以下である混合物B〜Eは、異臭(土臭み)に対する抑制効果が強く、総合評価も優れたものであった。
【0035】
【表1】

【0036】
試験例2
乾燥ネギ(水分3%)1.5gにモノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの混合物Dを50mg(乾燥ネギに対し3.3%)、100mg(乾燥ネギに対し6.7%)及び200mg(乾燥ネギに対し13.3%)添加したものに、それぞれ食塩を1、2及び3g加え、60℃の湯150mlを加えた試験品9種類、及び混合物を加えず、食塩のみを1、2及び3g加えた3種の無添品を調製した。これらの溶液の乾燥臭を10名の専門パネラーによって試験例1の総合評価と同じ評価基準を用い、評点法によって評価し、その平均値により評価した。
【0037】
それぞれの評価結果を表2に示す。全ての試験品において乾燥野菜の乾燥臭の抑制に効果が認められた。中でも、食塩添加量1g(ナトリウム濃度0.26%)、食塩添加量2g(ナトリウム濃度0.52%)の場合、試験品の無添加品に対する乾燥臭の抑制効果が高いものであった。
【0038】
【表2】

【0039】
試験例3(ネギ入りわかめスープ)
表3に示す配合比(質量比)でモノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの混合物を含有した液体濃縮スープX、Yおよび混合物を含有しない液体濃縮スープZを調製した。乾燥ネギ(水分3%)0.5g、乾燥わかめ(水分3.2%)1.5g、グルタミン酸ソーダ0.7gを混合し、乾燥具材a2.7gを調製した。X〜Zの各液体濃縮スープ10g、及び乾燥具材a2.7gに湯140mlを入れ、ネギ入りわかめスープx、y及びzを作った。スープx〜zの乾燥臭を10の専門パネラーによって試験例2記載の評価基準に従い、評点法によって評価し、その平均値により評価した結果を表4に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
試験例4(乾燥野菜入りスープの長期摂取試験)
試験濃縮スープとして、試験例3記載の液体濃縮スープX、Yを用い、プラセボとして液体濃縮スープZを用いた。乾燥野菜入り乾燥具材として、試験例3記載の乾燥具材aと、乾燥ネギ(水分3%)0.5g、乾燥わかめ(水分3.2%)1g、乾燥油揚げ(水分2.5%)0.5g、グルタミン酸ソーダ0.5gを混合した乾燥具材b、乾燥ネギ(同上)0.5g、乾燥わかめ(同上)1g、乾燥とうふ(水分2.8%)0.5g、グルタミン酸ソーダ、0.5gを混合した乾燥具材cを用いた。
【0043】
〔リードイン試験〕
官能評価試験は全て2重盲検法で行った。軽症高血圧者118名に飽きがこないように3種の乾燥具材a〜cの中から1つを毎日任意で選択してもらい、選択された乾燥具材と液体濃縮スープZ10gに湯140mlを加えたスープを4週間摂取してもらい、開始時、2週間後、4週間後に血圧、血液検査を行い、検査値の平均値、バラツキがほぼ等しくなるように3群に振り分けた。
【0044】
〔長期摂取試験〕
振り分けられた3群の内1群は引き続き3種の乾燥具材a〜cの内1つを毎日選択してもらい、選択された乾燥具材と液体濃縮スープZ10gに湯140mlを加えたスープを12週間摂取してもらった。他の2群は液体濃縮スープZの替わりに、液体濃縮スープをそれぞれ液体濃縮スープX又はYに替えた以外は同様の摂取方法で12週間摂取してもらった。2週間後、4週間後、8週間後、12週間後に血圧、血液検査を行った。
【0045】
長期摂取試験の結果を表5に示す。液体濃縮スープX、Y摂取群では、LDH(乳酸脱水素酵素)の低下および収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)の低下作用が認められた。LDHは、臓器が損傷を受けるとその組織から溶出し、血清中濃度が上昇する。LDHが高値を示す疾患として、溶血性貧血、悪性貧血、心筋梗塞、白血病、悪性腫瘍、急性肝炎、感染症などが知られている。
【0046】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥野菜、及びモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含有するスープ。
【請求項2】
ナトリウム0.01〜1.5質量%及び/又はカリウムを0.01〜1.5質量%含有する請求項1記載のスープ。
【請求項3】
乾燥野菜100質量部に対し、モノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの混合物を0.1〜50質量部含有する請求項1又は2記載のスープ。
【請求項4】
乾燥野菜、及びモノグルコシルヘスペリジン/ヘスペリジンのモル比が60/40〜99/1であるモノグルコシルヘスペリジンとヘスペリジンの混合物を含有する濃縮スープ。
【請求項5】
ナトリウム及び/又はカリウムを含有する請求項4記載の濃縮スープ。
【請求項6】
濃縮スープに湯を加え全量150mlとした時に、ナトリウム0.01〜1.5質量%及び/又はカリウムの含有量が0.01〜1.5質量%となるように配合された請求項5記載の濃縮スープ。
【請求項7】
乾燥野菜100質量部に対し、モノグルコシルヘスペリジンとグルコシルヘスペリジンの混合物を0.1〜50質量部含有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の濃縮スープ。

【公開番号】特開2009−142244(P2009−142244A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325611(P2007−325611)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】