説明

ズボンのずり落ち防止具

【課題】着脱が容易で、具全体が表に現われず、具全体の装身状態を安定よく確実に保てるズボンのずり落ち防止具を構成する。
【解決手段】略下向きコ字状の軸曲げ形状を呈する基体枠1と、基体枠1の縦軸間にスライド可能に掛け渡す挟み桟2と、基体枠1の縦軸端より延長上の半円弧状に亘ってズボンの内側で上着衣の前身頃との間に介在する定置枠3とを備え、更に、上面部4aが扁平で基体枠1の横軸前後に亘る幅を持って横軸上に嵌込み固定し、上着衣の前身頃を挟み桟2と相対する下面部4bとで部分的に挟込み保持し、且つ、上面部4aをズボンの内側で腰裏の下辺縁相当部位にあてがう係止片4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上着衣の前身頃をズボンの内側で部分的に挟込み保持し、具全体を腰裏の下辺縁相当部位より上着衣の前身頃との間に介装するズボンのずり落ち防止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ズボンの胴回り縁を鰐口クリップでくわえ込んでズボンを肩掛けバンドで両肩に吊下げ支持するサスペンダーに代え、肩凝りの誘発を防げるよう肩に掛ける部材を備えず、二個を腹部両脇に分けて装身することから、上着衣のめくれ出しと共に、ズボンのずり落ちを防止可能な器具は既に提案されている。
【0003】
一例を挙げれば、横長な冠金具と、冠金具の両端寄りから相平行の直角方向に伸びる左右の支柱軸と、支柱軸の軸間にスライド可能に掛け渡す挟み桟と、支柱軸の各軸端をU字状に折り曲げたフックとからなり、上着衣の前身頃をズボンの腰回り付近で冠金具と挟み桟とで部分的に挟込み保持すると共に、フックをベルトの背側から下辺縁に掛け止めてズボンを吊止め可能に構成したものが提案されている(特許文献1)。
【0004】
そのズボンのずり落ち防止具では、上着衣の前身頃を冠金具と挟み桟とで単に挟み込むだけであると、当該部位がベルトの下縁辺に掛け止めるフックよりも高位で上着側の外部に露出するため、冠金具と挟み桟を前身頃の内側に巻き込むよう上着衣の前身頃を冠金具と挟み桟とで挟み込む必要がある。
【0005】
それに加えて、装身者が体を回転する等により、具全体が上着衣で斜めに引き摺られると、片側のフックがベルトの下辺縁より下方に外れ、装身者が体を元に戻したときにはベルトの下辺縁より外れたままでベルトより外に潜り出てしてしまう傾向がある。
【特許文献1】特開2005−307361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肩に掛ける部材を備えずに肩凝りの誘発を防げることは勿論、着脱が容易で、具全体が表に現われず、具全体の装身状態を安定よく確実に保てるズボンのずり落ち防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、左右の縦軸部,縦軸部の上端間に亘る横軸部から略下向きコ字状の軸曲げ形状を呈する基体枠と、両端の輪曲げ部を基体枠の各縦軸部に嵌め合わせて該縦軸部の軸間にスライド可能に掛け渡す挟み桟と、基体枠の縦軸端より延長上の半円弧状に亘ってズボンの内側で上着衣の前身頃との間に介在する定置枠とを備え、更に、上面部が扁平で基体枠の横軸部の前後に亘る幅を持って横軸部の軸線上に嵌込み固定し、上着衣の前身頃を挟み桟と相対する下面部とで部分的に挟込み保持し、且つ、上面部をズボンの内側で腰裏の下辺縁相当部位にあてがう係止片を備え付けてなることを特徴とする。
【0008】
本願の請求項2に係る発明は、中央の挟み辺部が基体枠の縦軸背側で直線状に渡る挟み桟を備えてなることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項3に係る発明は、挟み桟を受け入れる凹溝を下面部の長手方向に設けた係止片を備えてなることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項4に係る発明は、撓み変形可能な定置枠を備えてなることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項5に係る発明は、基体枠の縦軸方向に亘るローレット溝を周側面に有する定置枠を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願の請求項1に係るズボンのずり落ち防止具によると、上面部が扁平で基体枠の横軸部の前後に亘る幅を持って横軸部の軸線上に嵌込み固定し、上着衣の前身頃を挟み桟と相対する下面部とで部分的に挟込み保持し、且つ、上面部をズボンの内側で腰裏の下辺縁相当部位にあてがう係止片を備え付けることにより、基体枠の縦軸端より延長上の半円弧状に亘ってズボンの内側で上着衣の前身頃との間に介在する定置枠とから、具全体をズボンの内側に収容できて体裁を良好に保てると共に、係止片の扁平な上面部がズボンの内側で腰裏の下辺縁相当部位にあてがわれることから、具全体の外れ出しが生ずるのを確実に防げて装身状態をズボンの内側で安定よく保てる。
【0013】
本願の請求項2に係るズボンのずり落ち防止具によると、中央の挟み辺部が輪曲げ部より基体枠の縦軸背側で直線状に渡る挟み桟を備えるため、上着衣の前身頃を中央の挟み辺部と突起の傾斜面とで部分的に挟み込むだけでも、緩みが生ずることなく確実に挟み込め、また、着脱も容易に行える。
【0014】
本願の請求項3に係るズボンのずり落ち防止具によると、挟み桟を受け入れる凹溝を下面部の長手方向に設けた係止片を備えるため、上着衣の前身頃を確実に挟込み保持できる。
【0015】
本願の請求項4に係るズボンのずり落ち防止具によると、撓み変形可能な定置枠を備えることから、装身者が前屈みに動いても、定置枠が基体枠より折曲り変形できて装身上の違和感を抑えられる。
【0016】
本願の請求項5に係るズボンのずり落ち防止具によると、基体枠の縦軸方向に亘るローレット溝を周側面に有する定置枠を備えることから、具全体の装身状態をズボンの内側でより安定よく保てる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図示の実施形態は、図1で示すように基体枠1をベースに、挟み桟2,定置枠3に加え、係止片4を備えて構成されている。この各部により、上着衣の前身頃を挟み桟2と係止片4の下面部とで挟込み保持し、係止片4の上面部をズボンの内側でベルトの下辺縁相当部位にあてがい、具全体を腰裏の下辺縁相当部位より上着衣の前身頃との間に介装するよう二個を腹部両脇に分けて装身することから、ズボンのずり落ちと共に、上着衣のめくれ出しも防げる器具として構成されている。
【0018】
基体枠1は、左右の縦軸部1a,1bと縦軸部1a,1bの上端間に橋絡する横軸部1cから略下向きコ字状の軸曲げ形状を呈するよう金属製の軸線部材を折り曲げて形成されている。
【0019】
挟み桟2は、金属製の狭幅な短冊板から形成されている。この挟み桟2は、両端の輪曲げ部2a,2bを基体枠1の縦軸部1a,1bに各々嵌め合わせることから、縦軸部1a,1bの軸間でスライド可能に掛渡し装着されている。また、図2で示すように中央の挟み辺部2cが縦軸部1a,1bの背側で直線状に渡るよう配置されている。
【0020】
定置枠3は、基体枠1の縦軸部1a,1bより連続方向の下方に伸びてズボンの内側で下腹付近に据え付けるものとして備え付けられている。この定置枠3は、撓み変形可能なゴム質管を基体枠1の縦軸端に嵌め合わせて略半円状に掛け渡すよう取り付けられている。また、基体枠1の縦軸方向に亘るローレット溝を周側面に有するものが取り付けられている。
【0021】
係止片4は、図3で示すように上面部4aが扁平で基体枠1の横軸部1cの前後に亘る幅Wを持って横軸部1cの長手方向に亘る軸線上に嵌込み固定するプラスチック製のもので形成されている。この係止片4は、下面部4bが半円弧形を呈し、挟み桟2の挟み辺部2cを受け入れる凹溝4cが下面部4bの後寄りで長手方向に向って設けられている。
【0022】
このように構成するズボンのずり落ち防止具を装身するには、図4で示すように挟み桟2を係止片4より下方にスライドさせて両者の間隔を保ってから、上着衣Sの前身頃Eを部分的に摘んで挟み桟2の挟み辺部2cと係止片4の下面部4bとの間隔内に入れ込む。その入込みの際には、挟み桟2の挟み辺部2cが基体枠1の縦軸背側より直線状に渡っているため、上着衣Sの前身頃Eを部分的に摘んで挟み桟2の挟み辺部2cに沿わせることから容易に差し込むことができる。
【0023】
上着衣Sの前身頃Eを挟み桟2の挟み辺部2cと係止片4の下面部4bとの間に入れたならば、図5で示すように挟み桟2を係止片4の下面部4bに向けてスライドさせ、挟み桟2の挟み辺部2cが係止片4の凹溝4cに嵌り合うまで移動させることから、前身頃Eを挟み桟2の挟み辺部2cと係止片4の下面部4bとで挟み込む。これにより、上着衣Sの前身頃Eを挟み桟2と係止片4とから単に挟み込むだけでも、緩みが生ずることなく挟み込め、着脱も容易に行える。
【0024】
上述した手順により装身したならば、図6で示すように具全体をズボンPの内側に入れ込んで係止片4の上面部4aを腰裏の下辺縁相当部位にあてがうことから、二個組に腹部両脇に装身すればよい。なお、ベルトを装身する場合はズボンの内側からベルトBの下辺縁相当部位にあてがえばよい。
【0025】
これにより、係止片4の下面部4bを形成する前側の膨出幅を含む上面部4aが支えとなって挟み桟2と係止片4による上着衣の挟込み部位を含む具全体をズボンPの内側に収容することから、具全体の外れ出しを確実に防げ、また、何も外部に露出しないことから体裁も良好に保てる。それと共に、基体枠1の縦軸部1a,1bより連続方向下方に伸びて縦軸間に亘る定置枠3により、具全体の装身状態をズボンPの内側で安定よく確実に保てる。
【0026】
定置枠3としては、撓み変形可能なものを基体枠1の縦軸端間に備え付けることから、装身者が前屈みに動いても基体枠1より折曲り変形するため、腰骨辺りに与える装身上の違和感を抑えられる。また、基体枠1の縦軸方向に亘るローレット溝を周側面に設けたものを備え付けることから、具全体の装身状態をズボンの内側でより安定よく確実に保てる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係るズボンのずり落ち防止具を示す正面図である。
【図2】図1の防止具を示す斜視図である。
【図3】図1の防止具を示す側断面図である。
【図4】図1の防止具を上着衣に組み付ける初期状態の手順を示す説明図である。
【図5】図4に引き続いて上着衣の裾付近を挟み込んだ状態を示す説明図である。
【図6】図1の防止具を装身状態で示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基体枠
1a,1b 基体枠の縦軸部
1c 基体枠の横軸部
2 挟み桟
2a,2b 挟み桟の輪曲げ部
2c 挟み桟の挟み辺部
3 定置枠
4 係止片
4a 係止片の上面部
4b 係止片の下面部
4c 係止片の凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上着衣の前身頃をズボンの内側で部分的に挟込み保持し、具全体を腰裏の下辺縁相当部位より上着衣の前身頃との間に介装するズボンのずり落ち防止具であって、左右の縦軸部,縦軸部の上端間に亘る横軸部から略下向きコ字状の軸曲げ形状を呈する基体枠と、両端の輪曲げ部を基体枠の各縦軸部に嵌め合わせて該縦軸部の軸間にスライド可能に掛け渡す挟み桟と、基体枠の縦軸端より延長上の半円弧状に亘ってズボンの内側で上着衣の前身頃との間に介在する定置枠を備え、更に、上面部が扁平で基体枠の横軸部の前後に亘る幅を持って横軸部の軸線上に嵌込み固定し、上着衣の前身頃を挟み桟と相対する下面部とで部分的に挟込み保持し、且つ、上面部をズボンの内側で腰裏の下辺縁相当部位にあてがう係止片を備え付けてなることを特徴とするズボンのずり落ち防止具。
【請求項2】
中央の挟み辺部が基体枠の縦軸背側で直線状に渡る挟み桟を備えてなることを特徴とする請求項1に記載のズボンのずり落ち防止具。
【請求項3】
挟み桟を受け入れる凹溝を下面部の長手方向に設けた係止片を備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載のズボンのずり落ち防止具。
【請求項4】
撓み変形可能な定置枠を設けてなることを特徴とする請求項1に記載のズボンのずり落ち防止具。
【請求項5】
基体枠の縦軸方向に亘るローレット溝を周側面に設けた定置枠を備えてなることを特徴とする請求項1または4に記載のズボンのずり落ち防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−179893(P2009−179893A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18091(P2008−18091)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(391042379)株式会社太田興産 (28)