説明

セイヨウミツバチ保護用オオスズメバチ防止装置

【課題】セイヨウミツバチをオオスズメバチの襲撃から護るためにオオスズメバチを巣門に近づけないようにすると同時にセイヨウミツバチをオオスズメバチに立ち向かわせないようにする装置を提供する。
【解決手段】オオスズメバチが巣箱に飛んでも歩いても近づけないように、2枚の金属格子2を25〜30ミリの間隔で前後に立てて装着し、それぞれを電池4の正負につなぎ通電する。また、セイヨウミツバチが装置の外に出てきてオオスズメバチに立ち向かわないように、通電柵と巣箱の両方を一定の高さに上げ、一定の距離を置く。側面からオオスズメバチが入れないように網6で覆う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセイヨウミツバチをオオスズメバチの襲撃から護るための装置に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の装置としては、襲撃のためにミツバチの巣箱にやって来たオオスズメバチを巣門に取り付けた捕獲器で捕獲し、餓死させるというものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−160339
【特許文献2】特開2010−158228
【特許文献3】登実3095222
【特許文献4】特開2004−261095
【特許文献5】特許3760320
【特許文献6】特開2003−023908
【特許文献7】登実3049747
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
養蜂を行う者はオオスズメバチ対策に頭を悩ませてきた。セイヨウミツバチはオオスズメバチのいないアフリカで進化したために、オオスズメバチと戦う術を知らず、人が対策を講じないと全群が死滅させられる。
【0005】
ミツバチとスズメバチは身体の大きさが違うので、ミツバチは通れてもスズメバチは通れない網かスリットでミツバチの巣箱を覆えばスズメバチの侵入は阻止できる。しかし、セイヨウミツバチは襲われると巣から前進して阻止装置の外側に出撃し、スズメバチに捕まってしまう。
【0006】
現在のところ、対策として、ミツバチ巣箱の巣門にスズメバチ捕獲器を取り付け、襲ってくるスズメバチを捕えて数を減らす以外手立てはない。
【0007】
しかしこの捕獲器には2つの欠点がある。一つはスズメバチを殺すので、生態系を乱すことにもつながっていることであり、もう一つは、その効果が完全なものではないことである。ミツバチを襲ったスズメバチがすべて捕獲器に捉まるわけではなく、襲撃から引き上げるとき上方へ飛び上がったのだけが捉まる。それにスズメバチには学習能力があり、やがて捕獲されない術を身に付ける。
【0008】
完全な効果を発揮する防止装置がないために、結局、人が蜂場に張り付いて、飛来してくるスズメバチをバドミントンラケットなどを使って叩き落す他に方法はなく、終日蜂場に拘束されることになっていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
スズメバチには数種類があるが、問題なのはオオスズメバチである。他のスズメバチはミツバチを1匹ずつ捕らえて自分の巣に運ぶので被害はたいしたことではない。それに、後から現れたオオスズメバチに追い払われて蜂場から姿を消してしまう。
【0010】
しかしオオスズメバチはミツバチを集団で襲って、次々に噛み殺し、短時間で1つの群を全滅させる。それで、スズメバチ対策はオオスズメバチ対策だけを考えたらよく、本発明はオオスズメバチ防止を目的にしたものである。しかし他のスズメバチに対しても有効である。
【0011】
日本にいるミツバチはセイヨウミツバチとニホンミツバチの2種類であるが、ニホンミツバチはスズメバチとの戦い方を知っており、勢力が強いとスズメバチを逆に捕らえて殺すことができる。それでオオスズメバチはニホンミツバチを襲うときは、弱小群を見分けてから襲う。これは弱小群を淘汰していることでもあり、そのことによってニホンミツバチは自然界で適切な数を保っているとも言える。
【0012】
セイヨウミツバチは戦い方を知らないので、オオスズメバチは安心して襲うことが出来、襲うのに効率のよい強勢群から襲う。セイヨウミツバチは襲われると立ち向かうが、捕獲器を取り付けていても放置するとすべて噛み殺され、高価な群れが消滅する。
【0013】
本発明は、セイヨウミツバチとオオスズメバチを接触させないための3つの機能を持っている。この中の一つでも欠けるとオオスズメバチを防止することは出来ない。
【0014】
しかしこの3つの機能のうち2つは私の先行発明によって公知である。残り1つが、新しい発明の要素である。
【0015】
オオスズメバチはミツバチを襲うときは、飛行か歩行のどちらかで巣門に近づくが、本発明はこの両方を阻止しながら、ミツバチは通れるようにしている。
【0016】
必要とされる機能の第1は、オオスズメバチの飛行侵入阻止であり、それは広げた翼がつかえるので進入できないようにすればよい。これは、金属線を約45ミリ間隔で縦横に格子状に張った柵2枚(2)を約25センチ間隔で前後に立てることで達成される。
【0017】
ミツバチは45ミリ間隔の針金の間を自由に飛行できるが、オオスズメバチは翼の先端から先端まで平均65ミリあるので、飛んで通り抜けることが出来ない。
【0018】
しかしこの機能は、前述の特開2005−160339の請求項1で公知である。
【0019】
必要とされる第2の機能は、オオスズメバチが歩いてミツバチの巣箱に近づけないようにすることである。そのためには、それぞれの金属柵に電池の正負を接続し、通電すればよい。これはオオスズメバチが巣門に近づこうと、一旦、柵の横線に止まって、隣の柵に足を掛けたとき感電させるためである。通電は、9ボルト電池5個を直列につなぐと十分に効果を発揮する。
【0020】
しかし、この機能も前述の特開2005−160339の請求項1で公知である。
【0021】
この防止器の最後の機能は、セイヨウミツバチがオオスズメバチに立ち向かうために、歩いては防止器の外に出て来られないようにすることである。この部分が今回の発明の主要部分である。
【0022】
ミツバチはスズメバチに立ち向かうとき、決して飛んで立ち向かうことはなく、必ず這って立ち向かう。だからミツバチが這って防止器の外に出られないようにすればよいのであり、特開2005−160339請求項1,2,3では、目隠しを兼ねた歩行阻止板を取り付けて、その目的に供した。
【0023】
しかしセイヨウミツバチは、巣箱に防止器を取り付けたあと、日時の経過とともに学習し、その阻止板を突破する方法を案出し、防止器の外に出て行ってオオスズメバチに反撃し、逆に捕食される事態が起こった。即ち、特開2005−160339の装置では役に立たなくなったのである。
【0024】
このことは先行発明のすべてに言えることである。すべて役に立たない。
【0025】
私の先行発明の防止板を突破するためにどのような方法をセイヨウミツバチが案出したかを説明すると、阻止板の傍の1か所に100匹以上のミツバチが集まり、自分たちの身体で山を築き、その頂上から阻止板の上端に次々に乗り移り、オオスズメバチに立ち向かったのである。
【0026】
本発明では、阻止板を置く代わりに、巨大な溝を置くことにしたのである。即ち、巣箱と金属格子の電気柵を引き離すと同時に、この両方を地面より高い場所に設置することにした。
【0027】
どの程度両者を引き離したら十分かと言うと、約40センチである。高さは30センチ程度である。この距離と高さがあれば、ミツバチはオオスズメバチの襲撃の深刻さを感じなくなるらしく出撃を試みようとしなくなる。
【0028】
また、少々感じたとしても、30センチの高さを一旦降りてから40センチ歩き、再び歩き難い網を30センチ登る労を取ろうとはしない。
【0029】
人を攻撃する時は飛びかかって刺すのに、スズメバチに立ち向かう時は決して飛ばず、歩いて出撃するのは不思議である。
【0030】
金属格子以外にミツバチの出入りできるところがないように、目の細かい網(7)で金属格子柵と巣箱(8)の間を、側面と上面、および金属柵の下部(6)を覆わなければならない(図3)。また、網は巣箱全体を包み込むように被せてもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明によって、オオスズメバチは巣門に近づくことが出来なくなり、ミツバチは捕食されないばかりか、脅しを受けることもなくなり、反撃の気分にもならず、集蜜活動に専念する。
【0032】
また、これまでは蜂場に人が付いていてバトミントンラケットなどでオオスズメバチを叩き落していたが、その危険と労力と時間を省くことができる。
【0033】
9ボルト電池5本程度では、オオスズメバチが感電死することはほとんどなく、生物多様性に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】スズメバチの飛行及び歩行による通過を2重の電柵で防ぐ本発明の正面図である。
【図2】図1のA-A横断面図である。
【図3】網を金属格子柵と巣箱の間に取り付けた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
柵の線材はステンレスで、太さは2.5ミリ乃至3ミリである。あまり細くすると飛び出してゆくミツバチが、逆光のときには見え難いのかよく衝突をする。それに、オオスズメバチが触れたとき、細いと接触面積が小さくなり、感電の衝撃が小さくなる。太すぎると重くなり、製作費が嵩む。
【0036】
線材としてステンレスは高価なので、鉄線を亜鉛メッキしてもよい。クロムメッキは、雨ざらしでは錆びる。
【0037】
縦線の間隔は広いほどミツバチにとっては出入りが楽であるが、オオスズメバチにとっても楽になる。50ミリ以上だと、小さな個体は横向きに飛んで入る。
【0038】
網の代わりに布でもよいが、熱をこもらせず、通気を良くするためには網が良い。
【0039】
図3は側面図なので天井部分は見えないが、ここも網で覆ったほうがよい。透明なプラスティックの板でもよい。不透明な板にすると、ミツバチは、空が見えないかららしく、そこを巣箱の一部と考え、その天井の下面を這って、スズメバチの方に行こうとするミツバチも現れる。
【0040】
天井が透明あるいは網目だと、巣門から空が見えるので、ミツバチはこの装置が自分たちの巣箱の一部ではなく、外にあるものだと認識するので、防衛線を本来あるべき巣門のところに置き、装置の外で待ち構えるオオスズメバチから、その分、遠くなり、ストレスから解放される。
【符号の説明】
【0041】
1 金属格子を保持する枠
2 金属格子
3 格子支持フック
4 電池(9ボルト5本)
5 金属格子と電池をつなぐ導線
6 金属格子の下に張った網
7 金属格子と巣箱の間に張られた網
8 巣箱
9 土台のコンテナー
10 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非電導性の材質でできた枠(1)の中に、電導性の線材を縦と横に張った格子(2)2枚を、25から30ミリ間隔で入れ、それぞれの格子には正負の電圧をかけ、その格子枠の底辺が地面より30センチほどになるように支え、その底辺と地面との間にオオスズメバチの通れない目の網(6)を張り、その枠との間に40センチほどの距離を置いた、地面より30センチほどの高さに置かれたミツバチ巣箱(8)との間にも、オオスズメバチが通れない網(7)を、天井部分および両側面に張り巡らしたセイヨウミツバチ保護用オオスズメバチ防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−175935(P2012−175935A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41283(P2011−41283)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(396021715)
【Fターム(参考)】