説明

セキュリティードアシステム

【課題】建物内に設定するセキュリティーゾーンの範囲を容易に変更可能とする。
【解決手段】ドア枠11に対して施錠可能なドア本体12を装着したドアユニット10を用い、該ドアユニットを通路1の所望位置に着脱可能に保持して設置するとともに、該ドアユニットを通路の長さ方向に移動させるための移設手段30を具備する。移設手段を通路の天井面に設けたレール31とドアユニットを吊り支持してレールに沿って走行するランナー32とにより構成する。あるいは、移設手段をドアユニットの下部に設けたキャスターとする。ドアユニットを設置するべき予定位置を予め設定しておき、そこにドア枠を着脱自在に保持する取付枠25を予め設置しておく。設置予定位置の近傍にはドアユニットに付随して設置されるセキュリティー関連機器を設置するための予備設備を予め設置しておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物におけるセキュリティーシステムに係わり、特に建物内に設定されるセキュリティーゾーンの範囲の変更に対応して移設可能に設置されるセキュリティードアシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、各種の建物においてはその用途や運用形態に応じて自由な出入りを制限するためのセキュリティーゾーンを設定することがある。その場合、セキュリティーゾーンへの出入口やそれに通じる通路にはセキュリティードアを設置して常時施錠しておき、許可された特定の者だけがICカードや暗証番号によるキーシステムによりセキュリティードアを解錠してセキュリティーゾーン内に入れるようにしておくことが一般的である。
【0003】
そのようなセキュリティーゾーンを設定した建物の一例を図4に示す。これは独身寮を用途とする建物であって、通路1に沿って多数の寮室(図示例では全9室)が設置されたものであるが、同一階に男性用の寮室2A(図示例では階段の右側の4室)と女性用の寮室2B(同、左側の5室)とが設置されていることから、女性用の寮室2Bが設置されている領域をセキュリティーゾーンとしての女性専用ゾーンとして設定してそこに通じる出入口にセキュリティードア3を設置するとともに、女性入寮者及び予め許可された者のみがセキュリティードア3を解錠し得るようなキーシステムを採用して、男性や部外者がセキュリティーゾーン内に進入できないようにしたものである。
【0004】
このような独身寮の場合、各寮室2A、2Bの配置計画とそれに伴うセキュリティーゾーン(この場合は女性専用ゾーン)の範囲の設定は、計画段階において想定される入寮者の男女比に基づいて行うのであるが、実際の運用段階では諸般の事情により男女比が想定と異なる場合がままあり、その場合には双方の寮室2A、2Bに無駄な過不足が生じてしまって効率的な運用ができないという問題を生じる。そのため、男女比が変動した場合にはそれに応じて男性用の寮室2Aを女性用の寮室2Bに変更したり、あるいは逆に女性用の寮室2Bを男性用の寮室2Aに変更することにより、寮室2A、2Bの配分比を変更したいという要請がある。
【0005】
そのような要請に応じて寮室2A、2Bの配分比を変更すること自体は、双方の寮室2A、2Bが基本的に同一仕様であればさして困難ではないものの、その場合には女性用の寮室2Bの増減に伴ってセキュリティーゾーン(女性専用ゾーン)の範囲も変更する必要が生じる。そして、セキュリティーゾーンを変更するためにはセキュリティードア3の位置を変更しなければならず、そのためには既存のセキュリティードア3を撤去して別の位置に新たにセキュリティードア3を設置し直すための改修工事が必要となるから、そのために少なからぬ工費と工期を要することが不可避である。
このようにこの種の独身寮において寮室の配分比を変更することはセキュリティーゾーンの範囲の変更を伴う場合には必ずしも安易に行い得ることではなく、したがってそのようなことは現実的には殆ど実施されることなく非効率的な運用を余儀なくされることが実状である。
【0006】
なお、セキュリティーゾーンの変更を想定してセキュリティードアを移設可能に設置しておくことも考えられ、そのためにはたとえば特許文献1に示されるようなレイアウト可変型のシステムを利用してセキュリティードアを設置することも考えらる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−349074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようにセキュリティーゾーンの範囲を変更することは必ずしも容易ではないし、また特許文献1に示されるようなレイアウト可変型のシステムにおける単なるスライディングウォールや家具ユニットの類を上記のようなセキュリティードアとしてそのまま用いることもできないから、セキュリティーゾーンを容易に変更することが可能な有効適切なシステムの開発が望まれているのが実状である。
【0009】
なお、以上のことは上記のような独身寮における女性専用ゾーンとしてのセキュリティーゾーンを変更する場合に限ったことではなく、様々な用途の建物においてその用途や運用形態に応じてセキュリティーゾーンをある程度頻繁に変更するような場合全般に共通する課題でもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記事情に鑑み、本発明は建物内の所定領域をセキュリティーゾーンとして設定して他のゾーンから区画するとともに該セキュリティーゾーンの設定範囲を変更可能とした建物に適用され、当該建物の通路の所定位置にセキュリティーゾーンと他のゾーンとを区画して自由な通行を制限するためのドアユニットを設置するためのセキュリティードアシステムであって、前記ドアユニットをドア枠に対して施錠可能なドア本体を装着した構成として、該ドアユニットを前記通路の所望位置に着脱可能に保持して設置するとともに、該ドアユニットを前記通路の長さ方向に移動させるための移設手段を具備して、該移設手段により前記ドアユニットをセキュリティーゾーンの設定範囲の変更に応じて移動させることにより該ドアユニットを移設可能としたことを特徴とする。
【0011】
本発明では、前記移設手段を、前記通路の天井面に設けたレールと、前記ドアユニットを吊り支持して前記レールに沿って走行するランナーとにより構成すると良い。
あるいは、前記移設手段を、前記ドアユニットの下部に設けられて前記通路の床面上を転動するキャスターとすることも考えられる。
【0012】
本発明では、前記ドアユニットを設置するべき予定位置を予め設定しておき、該予定位置には前記ドア枠を着脱自在に保持する取付枠を予め設置しておくと良い。
また、前記予定位置の近傍には該ドアユニットに付随して設置されるセキュリティー関連機器を設置するための予備設備を予め設置しておくことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、セキュリティーゾーンを設定するべき通路にセキュリティードアとして設置するべきドアユニットを移設手段により移設可能に設置しておくので、セキュリティーゾーンの設定範囲を変更する必要が生じた際には改修工事を必要とすることなくドアユニットを所望位置に自由にかつ容易に移設することが可能であり、したがってそのドアユニットを移設することのみでセキュリティーゾーンの範囲を容易に変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のセキュリティードアシステムを独身寮に適用した場合の実施形態を示す図である。
【図2】同、ドアユニットの平断面および立断面を示す図(一部を省略して示した拡大図)である。
【図3】同、ドアユニットの移設手順を説明するための図である。
【図4】セキュリティーゾーンを設定した独身寮の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図1〜図3を参照して説明する。本実施形態は図4に示した独身寮を対象としてそのセキュリティーゾーン(女性専用ゾーン)の範囲を容易に変更することを可能とするべく、セキュリティーゾーンへの出入口に設置するセキュリティードア3として移設可能なドアユニット10を設置するようにしたものである。
【0016】
本実施形態では、この階の全9室の寮室のうち、女性用の寮室2Bを5室から4室、2室へと3パターンで変更し、同時に男性用の寮室を4室から5室、7室へと変更することを想定して、ドアユニット10を設置するべき予定位置を図1(a)に示すように現時点での設置位置を含めて3個所に設定しており、各予定位置の壁面および天井面には(c)に示すように予め取付枠25を設置しておき、いずれかの位置において(b)に示すように取付枠25の内側にドアユニット10を嵌め込むようにして設置するようになっている。
【0017】
本実施形態におけるドアユニット10は、三方枠状のドア枠11の内側にドア本体12が装着された構成とされており、ドア枠11の上縁部および両側縁部がそれぞれ通路1の天井面および壁面に取り付けられている上記の取付枠25に対して押圧せしめられてそれに密着した状態で着脱自在に(すなわち移設可能に)保持されるようになっている。
【0018】
ドアユニット10の詳細を図2に示す。図2(a)に示すようにドア枠11の側部には出没自在なスライド部材13が組み込まれている。また、同図(b)に示すようにドアユニット10の全体は後述する移送手段30により吊り支持されているが、その全体は昇降操作ハンドル14の操作により床面上に若干持ち上げることができるようになっている。
したがってこのドアユニット10は、スライド部材13をドア枠11の外側に押し出してその先端を取付枠25に押し当て、かつドアユニット10の全体を押し下げて床面に対して押圧することにより、ドアユニット10の全体が通路1に対して強固に保持されてその位置に安定に設置し得るものとなっているが、スライド部材13をドア枠11の内側に引き込み、かつドアユニット10の全体を床面上に持ち上げた状態では、ドアユニット10は通路1に対してフリーな状態となっているのでそれを移動させることが可能となっている。
【0019】
なお、ドア枠11の周縁部およびスライド部材13の先端面には弾性シール部材15が取り付けられていて、それらによりドア枠11と取付枠25との間(つまり天井面や壁面との間)に隙間が生じないようになっている。
また、ドア本体12は、図4に示したような従来のセキュリティードアと同様に、適宜のキーシステムにより女性入寮者および予め許可された者のみが解錠可能とされているが、このセキュリティードアを操作するためのキーとその時点での女性用の寮室2Bのキーとは兼用することが好ましい。
なお、ドア本体12には防犯性を考慮してガラスによるのぞき窓16(図1(b)参照)が設けられている。また、図2における符号17はドア本体12のヒンジ、18は取っ手、19はドア枠11とドア本体12との間に垂れ壁として組み込まれた壁パネル、20は沓摺である。
【0020】
上記のドアユニット10は移設手段30により通路1の長さ方向に沿って移動可能とされていて、その移設手段30によりドアユニット10を各予定位置に導くことで容易に移設できるようになっている。本実施形態における移設手段30は、通路1の天井面に設置されたレール31と、ドアユニット10を吊り支持してレール31に沿って走行する2つのランナー32(図2(b)3参照)により構成されている。
【0021】
図3(a)に示すように、レール31は通路1の長さ方向に沿うメインレール31aと、各予定位置においてメインレール31aに直交して通路1の幅方向に沿う3本のサブレール31bとにより構成されていて、図3(b)に示すようにドアユニット10を常に2つのランナー32を介してレール31により吊り支持した状態でレール31の範囲内で自由に移動させることができるものとなっている。
【0022】
すなわち、ドアユニット10がいずれかの位置に設置されている状態では、図1(b)に示したようにドアユニット10は2つのランナー32を介してサブレール31bから吊り支持された位置に設置されているが、その状態では一方のランナー32はメインレール31aとサブレール31bの交点の位置に配置されたものとなっている。
その状態からドアユニット10を移設する場合、たとえば図3(b)に示すように3個所の予定位置のうちの最も右側に設置されている状態からドアユニット10を図示左側に移動させる場合には、スライド部材13を引き込むとともにドアユニット10全体を若干持ち上げたうえで、メインレール31aとサブレール31bの交点の位置にあるランナー32をメインレール31aに引き込んで図示右方に後退させてドアユニット10を通路1に平行(つまりメインレール31aに平行)な方向に方向転換させ、その状態で2つのランナー32によりドアユニット10をメインレール31aにより吊り支持しつつ走行させてドアユニット10を前方(図示左方)に移動させる。
そして、新たに設置するべき位置に達したらそこで前方のランナー32をサブレール31bに引き込んでドアユニット10を通路1の幅方向に沿うように方向転換させ、その位置でドアユニット10を床面上に降ろすとともにスライド部材13を引き出してそこに設置すれば良い。
勿論、同様の操作により逆方向に移動させて元の状態に支障なく戻すこともできる。
【0023】
本実施形態のセキュリティードアシステムによれば、セキュリティードア3を設置するべき通路1にドアユニット10を移設手段30により移設可能に設置したので、セキュリティーゾーンを変更する必要が生じた際にはドアユニット10を移動させて所望位置に移設することのみでセキュリティーゾーンの範囲を容易に変更することが可能である。
したがって本発明によれば従来のようにセキュリティードア3を付け替えるための改修工事を必要とすることなく、したがってそのための工費や工期を必要とすることなく、セキュリティーゾーンをいつでも自由にかつ何度でも容易に変更することが可能であり、その結果、入寮者の男女比が変動した場合には速やかに寮室の配分比とセキュリティーゾーンの範囲を変更し得て効率的な運用が可能となる。
【0024】
以上で本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで独身寮に適用した場合の一例であって本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、たとえば以下に列挙するような様々な応用や変形が可能である。
【0025】
上記実施形態ではドアユニット10を移設するための移設手段30をレール31とランナー32とにより構成したが、移設手段はドアユニット10を容易に移設できるものであれば良く、たとえば他の移送手段としてドアユニット10の下部にキャスターを設置しておき、ドアユニット10を立てた状態のままで移設位置まで床面上を移動させるように構成することも考えられる。
【0026】
上記実施形態のようにドアユニット10の設置予定位置を予め何カ所か設定してそこには取付枠25を予めを設置しておくことが現実的ではあるが、移送手段の構成によって可能であれば予定位置を特に限定せずに任意の位置に移設するようにしても良い。その場合には、移設する時点で移設位置を決定してそこに取付枠25を設置すれば良いが、あるいは可能であれば取付枠25を省略してドア枠を天井面や壁面に直接保持することでも良い。
【0027】
セキュリティードア3に付随してその近傍に防犯用の監視カメラや警報設備等の関連機器を設置する場合、ドアユニット10を移設した場合にはそれら関連機器も同時に移設する必要が生じるから、ドアユニット10の設置予定位置の近傍にはそれら関連設備の移設を考慮して、たとえば図3(a)に示すような配管や配線、ボックス類などの所望の予備設備40を所要個所に予め設置しておくと良い。
【0028】
本発明は独身寮に限らずセキュリティーゾーンが設定される各種用途の建物に広く適用できることは当然であるし、特にセキュリティーゾーンをある程度頻繁に変更するような運用がなされる建物に適用して最適である。
【符号の説明】
【0029】
1 通路
2A 寮室(男性用)
2B 寮室(女性用)
3 セキュリティードア
10 ドアユニット
11 ドア枠
12 ドア本体
13 スライド部材
14 昇降操作ハンドル
15 弾性シール部材
16 のぞき窓
17 ヒンジ
18 取っ手
19 壁パネル
20 沓摺
25 取付枠
30 移設手段
31 レール
31a メインレール
31b サブレール
32 ランナー
40 予備設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の所定領域をセキュリティーゾーンとして設定して他のゾーンから区画するとともに該セキュリティーゾーンの設定範囲を変更可能とした建物に適用され、当該建物の通路の所定位置にセキュリティーゾーンと他のゾーンとを区画して自由な通行を制限するためのドアユニットを設置するためのセキュリティードアシステムであって、
前記ドアユニットをドア枠に対して施錠可能なドア本体を装着した構成として、該ドアユニットを前記通路の所望位置に着脱可能に保持して設置するとともに、該ドアユニットを前記通路の長さ方向に移動させるための移設手段を具備して、該移設手段により前記ドアユニットをセキュリティーゾーンの設定範囲の変更に応じて移動させることにより該ドアユニットを移設可能としたことを特徴とするセキュリティードアシステム。
【請求項2】
請求項1記載のセキュリティードアシステムであって、
前記移設手段を、前記通路の天井面に設けたレールと、前記ドアユニットを吊り支持して前記レールに沿って走行するランナーとにより構成したことを特徴とするセキュリティードアシステム。
【請求項3】
請求項1記載のセキュリティードアシステムであって、
前記移設手段を、前記ドアユニットの下部に設けられて前記通路の床面上を転動するキャスターとしたことを特徴とするセキュリティードアシステム。
【請求項4】
請求項1,2または3記載のセキュリティードアシステムであって、
前記ドアユニットを設置するべき予定位置を予め設定しておき、該予定位置には前記ドア枠を着脱自在に保持する取付枠を予め設置しておくことを特徴とするセキュリティードアシステム。
【請求項5】
請求項1,2,3または4記載のセキュリティードアシステムであって、
前記ドアユニットを設置するべき予定位置を予め設定しておき、該予定位置の近傍には該ドアユニットに付随して設置されるセキュリティー関連機器を設置するための予備設備を予め設置しておくことを特徴とするセキュリティードアシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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