説明

セグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置

【考案の詳細な説明】
「産業上の利用分野」
この考案は、シールドトンネル等の覆工セグメントリングにおけるK形セグネントの落下防止装置に関するものである。
「従来の技術、考案が解決せんとする問題点」
シールドトンネル等のセグメントリングにおいては、一般に下部をA形セグメント、上部をB形セグメント及びK形セグメントを用いて、各継手面間において相互に相対する継手金物同士をボルト接合することにより組立てられている。
そして従来、第1図に示すように、リングを併合するために左右のB形セグメント間に最後に組込まれるK形セグメントは、その左右の継手面がハ字状に所要の継手角度をもって、リング内周側から径方向に、或いは前方から軸方向に押し込んで組込み、ボルト接合しているのが一般的である。
そのため、このようなセグメントリングの外周に土圧や裏込注入圧などの強力な圧力が作用すると、K形セグメントは継手角度を有する故に他のセグメントに比べて径方向に抜け出し易く、しばしば目開きを生じ、最悪の場合には脱落する危険があった。
「問題点を解決するための手段」
この考案は前記従来の課題を解決するために、K形セグメントとの継手面に、下部からその上方の中間部にかけて上向のガイド凹溝を、かつこのガイド凹溝に連続してその上端から前方に横向きの係止凹溝を設けたB形セグメントと、ハ字型状をなす左右の継手面に、前記左右のB形セグメント間に組込んだ状態において前記係止凹溝に対応する位置にこの係止凹溝に係合可能な突起を設けたK形セグメントとからなるセグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置を提案するものである。
「作用」
K形セグメントを左右のB形セグメント間の間隙に若干手前において下方から押し込み、K形セグメントの突起をB形セグメントのガイド凹溝に係合しながらその上端まで押し上げた後、K形セグメントを水平前方に押込み、その突起をB形セグメントの係止凹溝内に係合させることにより、相互の継手面は係止凹溝に係合した突起により結合されるため、セグメントリングの外周に圧力が作用しても、K形セグメントの径方向の抜け出しを確実に錠止し、目開き及び落下を防止することができる。
「実施例」
以下この考案を図面に示す実施例について説明すると、K形セグメント1の左右の継手面に接合するB形セグメント2の継手面には、所要箇所に上下方向(厚さ方向)のガイド凹溝3が形成され、かつこのガイド凹溝3に連続してその上端から前方に横向きの係止凹溝4が設けられている。
K形セグメント1のハ字型状をなす左右の継手面には、B形セグメント2,2間に組込んだ状態において係止凹溝4に対応した位置にこれに係合する突起5が突設されている。
第3〜8図に示す第一実施例においては、ガイド凹溝3及び係止凹溝4をアングル状の溝金物6により一体に成形し、これをB形セグメント2の成形時においてセグメント成形型枠の内側面に保持しておき、溝金物6の底面側に固着したアンカー筋7を介してコンクリートと一体化することにより形成した例を示す。
また、突起5は、K形セグメント1の成形時においてコンクリートに埋設した埋込みボルト5′の頭部を継手面から突出することにより形成した例を示す。
第9〜12図に示す第二実施例においては、B形セグメント2の係止凹溝4、およびK形セグメント1の突起5を、それぞれ継手金物8,9に一体に形成した例を示す。
この場合の継手金物8,9として相互を断面H形のコッター10により締結するようにした継手金物を示したが、その他の継手金物、例えば従来公知のボルト接合による継手金物を用いることができる。
継手金物8に設けた係止凹溝4に対してこれに連続するガイド凹溝3は、継手金物8に隣接するB形セグメント2のコンクリート継手面にセグメント成形と同時に形成することが望ましいが、成形時に設けずにB形セグメント2の組込み前に予めタガネなどでコンクリート継手面をハツって形成するようにしてもよい。
以上の構成において、K形セグメント1の組込みに際しては、K形セグメント1を左右のB形セグメント2,2間の間隙に対して若干手前において下方から押込み、K形セグメント1の突起5をB形セグメント2のガイド凹溝3に係合しながらその上端まで押し上げ、この状態でK形セグメント1を水平前方に押込み、その突起5をB形セグメント2の係止凹溝4内に係合させる。
このようにK形セグメント1を組込んだ後、継手金物8,9同士をコッター又はボルトにより接合する。
これによって、K形セグメント1とB形セグメント2,2相互の継手面は係止凹溝4に係合した突起5により、セグメントリングの径方向にずれないように結合されるため、セグメントリングの外周に圧力が作用しても、K形セグメントの径方向の抜け出しを確実に錠止し、目開き及び落下を防止することができる。
「考案の効果」
以上の通りこの考案によれば、K形セグメントを左右のB形セグメント間の間隙に対して若干手前において下方から押込み、さらに水平前方に押込むことにより、K形セグメントの突起をB形セグメントの係止凹溝に係合させ、セグメントリングの径方向にずれないように結合することができ、これによってセグメントリングの外周に圧力が作用しても、K形セグメントの径方向の抜け出しを確実に錠止して目開き及び落下を防止し、セグメントリングの安定性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの考案の装置により組立てたセグメントリングの正面図、第2図はこの考案に係るK形セグメントとB形セグメントの組立状態を示す平面図、第3図はこの考案の第1実施例におけるB形セグメントの継手部の斜視図、第4図は同K形セグメントの斜視図、第5図は同B形セグメントの継手面の部分正面図、第6図は同K形セグメントとB形セグメントの継手部の結合状態を示す部分縦断正面図、第7図及び第8図は同K形セグメントをB形セグメントに組込む工程を示す継手面における正面図、第9図はこの考案の第2実施例におけるB形セグメントの継手面の部分正面図、第10図は同K形セグメントの継手面の部分正面図、第11図は同K形セグメントとB形セグメントの継手部の結合状態を示す部分縦断正面図、第12図は同底面図である。
1……K形セグメント、2……B形セグメント、3……ガイド凹溝、4……係止凹溝、5……突起、6……溝金物、7……アンカー筋、8,9……継手金物、10……コッター。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】K形セグメントの継手面に接合する継手面に、上下方向にガイド凹溝を、かつこのガイド凹溝に連続してその上端から前方に横向きの係止凹溝を設けたB形セグメントと、ハ字形状をなす左右の継手面に、前記左右のB形セグメント間に組込んだ状態において前記係止凹溝に対応する位置にこの係止凹溝に係合可能な突起を設けたK形セグメントとからなることを特徴とするセグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第8図】
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【第9図】
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【第10図】
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【第11図】
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【第12図】
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【登録番号】第2516850号
【登録日】平成8年(1996)8月20日
【発行日】平成8年(1996)11月13日
【考案の名称】セグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平2−19248
【出願日】平成2年(1990)2月27日
【公開番号】実開平3−111697
【公開日】平成3年(1991)11月15日
【出願人】(999999999)前田建設工業株式会社