説明

セグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置

【考案の詳細な説明】
「産業上の利用分野」
この考案は、シールドトンネル等の覆工セグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置に関するものである。
「従来の技術、考案が解決せんとする問題点」
シールドトンネル等のセグメントリングにおいては、一般に下部をA形セグメント、上部をB形セグメント及びK形セグメントを用いて、各継手面間をボルト接合することにより組立てられている。
そして従来、第11,12図に示すように、リングを併合するために左右のB形セグメント間に最後に組込まれるK形セグメントは、その左右の継手面がハ字状又は逆ハ字状に所要の継手角度をもって、リング内周側から径方向に、或いは前方から軸方向に押し込んで組込み、ボルト接合しているのが一般的である。
そのため、このようなセグメントリングの外周に土圧や裏込注入圧などの強力な圧力が作用すると、K形セグメントは継手角度を有する故に他のセグメントに比べて径方向に抜け出し易く、しばしば目開きを生じ、最悪の場合には脱落する危険があった。
「問題点を解決するための手段」
この考案は前記従来の課題を解決するために、K形セグメントとその左右に隣設されたB形セグメントの相互の継手面の前後端部に、K形セグメントの嵌入時に互いに嵌合し合う凹溝とキー、および互いに相対して穴状空間を形成する凹溝を設け、この相対する凹溝間の穴状空間にキーを嵌合すると共に、K形セグメントの嵌入時に互いに嵌合し合った凹溝とキーとにより、K形セグメントとB形セグメントを結合するようにしたK形セグメントの落下防止装置、ならびにK形セグメントとその左右に隣設されたB形セグメントの相互の継手面の前後端部に、それぞれK形セグメントの嵌入時に互いに嵌合し合う凹溝とキーを設け、この互いに嵌合し合った凹溝とキーとにより、K形セグメントとB形セグメントを結合するようにしたK形セグメントの落下防止装置提案するものである。
「作用」
K形セグメントとその左右に隣設されたB形セグメントとの相互の継手面は、凹溝内に嵌合したキーにより結合されるため、セグメントリングの外周に圧力が作用しても、K形セグメントの径方向の抜け出しを確実に錠止し、目開き及び落下を防止することができる。
「実施例」
以下この考案を図面に示す実施例について説明すると、第1〜8図に示す第1実施例において、第2図に示すように、K形セグメント1とその左右に隣設するB形セグメント2の相互の継手面の前後端部には、各セグメント1,2の前後端から軸方向に沿って凹溝3,3′及び4,4′が、それぞれ接合時に互いに相対して合体するように形成されている。
凹溝3,3′及び4,4′は第3図に示すように、セグメントの成形時において、断面円弧形、矩形、鉤形等、所要の凹型断面形状に成形した溝型の金物5をセグメント成形型枠の内側面に保持しておき、金物5の底面側に固着したアンカー筋6を介してコンクリートと一体化することにより形成する。
K形セグメント1は従来と同様に、その左右の継手面が所要の継手角度をもった横断面逆ハ字状(ハ字状でもよい)に形成され、第5図に示すように、左右のBセグメント2,2間の間隙内にリング前方から軸方向に押し込んで組込む。
このようにして組込まれたK形セグメント1とB形セグメント2の継手面において、相対した凹溝3,4及び3′,4′間にはその凹部が互いに合体した穴状空間が形成され、この空間にそれに倣った形状の丸棒あるいは型鋼等からなるキー7を密に嵌合すると共に、相互の接合面間に対接する継手金物8,8′相互をボルト接合する。
この場合、K形セグメント1の嵌入方向先端側にある凹溝3′,4′に対して、K形セグメント1の嵌入後においてキー7を嵌合できないため、第4図及び第6図に示すように、予め左右のB形セグメント2,2の先端側の凹溝4,4′内にキー7の一側部を溶接、接着剤等により固定しておき、K形セグメント1を嵌入しながらその凹溝3′をB形セグメント2の継手面に半分突出しているキー7に嵌め合わせる。
また、セグメントリングの手前側にある凹溝3,4は、K形セグメント1の嵌入後においてセグメントリングの手前側に穴状空間の開口部が表出しているので、これにキー7を事後的に嵌合する(第6図(b)参照)。
このようにして、凹溝3,4及び3′,4′間にキー7が嵌合されることにより、K形セグメント1はB形セグメント2に対してセグメントリングの径方向への抜け出しが錠止され、セグメントリングの外周に圧力が作用しても目開きや脱落を確実に防止することができる。
なお、第7,8図に示すように、各凹溝3,3′,4,4′を断面アングル形、T型等、凹部の底部の屈曲部を有する断面形に形成することにより、互いに合体した凹溝3,4及び3′,4′間の穴状空間の断面形を溝形状あるいはH形状とし、これに倣って断面溝形、H形状に形成したキー7を嵌合することにより、K形セグメント1とB形セグメント2とをリング方向にも一体的に結合することができる。
次に第9,10図に示す第2実施例において、K形セグメント1の嵌入方向先端部の継手面には凹溝3が、かつ後端部の継手面に突起状のキー7が突設され、またB形セグメント2の継手面にはその先端部にK形セグメント1の嵌入時にその凹溝3に嵌合可能な突起状のキー7′が突設され、かつ後端部にK形セグメント1のキー7が嵌合可能な凹溝4が形成されている。
そして第10図に示すように、K形セグメント1をB形セグメント2,2間に嵌入すると、凹溝3にキー7′が、また凹溝4にキー7が自動的に挿嵌される。
この場合のキー7,7′は、上記第1実施例の場合と同様に凹溝に溶接または接着剤により固着した各種断面形のものを用いることができるが、セグメントの成形と同時にコンクリートにより一体に成形したもの、あるいはコンクリートに基部を埋設一体化した金物であってもよい。
「考案の効果」
以上の通りこの考案によれば、K形セグメントとその左右に隣設されたB形セグメントとの相互の継手面は、凹溝とこれに嵌合したキーにより結合されるため、セグメントリングの外周に圧力が作用しても、K形セグメントの径方向の抜け出しを確実に錠止して、目開き及び落下を防止し、セグメントリングの安定性を向上することができる。
また、K形セグメントとその左右に隣設されたB形セグメントの相互の継手面の前端部あるいは前後両端部に、それぞれK形セグメントの嵌入時に互いに嵌合し合う凹溝とキーが設けられているので、この凹溝とキーとをK形セグメントの嵌入と同時に簡単に嵌合することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの考案の装置により組立てたセグメントリング上部の正面図、第2図はこの考案の第1実施例におけるK形セグメントとB形セグメントの継手部とその結合関係を示す斜視図、第3図は同K形セグメントとB形セグメントの継手部の接合状態を示す部分縦断正面図、第4図4図は同K形セグメントとB形セグメントの継手部の結合状態を示す部分縦断正面図、第5図は同K形セグメントの嵌入状態を示す底面図、第6図(a),(b)は同K形セグメントの嵌入工程を示す横断面図、第7図及び第8図は同K形セグメントとB形セグメントの継手部の結合状態の他の態様を示す部分正面図、第9図はこの考案の第2実施例おけるK形セグメントとB形セグメントの継手部とその結合関係を示す斜視図、第10図は同K形セグメントの嵌入状態を示す横断面図、第11図及び第12図は従来のセグメントリングの正面図である。
1……K形セグメント、2……B形セグメント、3,3′,4,4′……凹溝、5……金物、6……アンカー筋、7,7′……キー、8……継手金物。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】左右の継手面のセグメント嵌入方向の先端部及び後端部の継手面にその嵌入方向に沿って凹溝を形成したK形セグメントと、前記K形セグメントとの継手面の先端部に、K形セグメントの嵌入時にその継手面先端部の前記凹溝に嵌合可能な突起状のキーを突設し、かつ継手面の後端部に前記K形セグメントの嵌入時にその継手面後端部の前記凹溝と相対する凹溝を形成したB形セグメントと、前記K形セグメントをその左右に隣設されたB形セグメント間に嵌入時に、前記K形セグメントとB形セグメントの継手面の後端部に互いに相対した前記凹溝間の穴状空間に嵌挿可能なキーとからなることを特徴とするセグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置。
【請求項2】左右の継手面のセグメント嵌入方向の先端部にその嵌入方向に沿って凹溝を形成し、かつこの継手面の後端部に突起状のキーを突設したK形セグメントと、前記K形セグメントとの継手面の先端部に、K形セグメントの嵌入時にその先端部の前記凹溝に嵌合可能な突起状のキーを突設し、かつ継手面の後端部に前記K形セグメントの嵌入時にその継手面後端部の前記キーを嵌合可能な凹溝を形成してなるB形セグメントとからなることを特徴とするセグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【第8図】
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【第9図】
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【第10図】
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【第11図】
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【第12図】
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【登録番号】第2523995号
【登録日】平成8年(1996)10月22日
【発行日】平成9年(1997)1月29日
【考案の名称】セグメントリングにおけるK形セグメントの落下防止装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平2−8677
【出願日】平成2年(1990)1月31日
【公開番号】実開平3−99098
【公開日】平成3年(1991)10月16日
【出願人】(999999999)前田建設工業株式会社