説明

セミカルバゾンの製造方法

本発明は、式(I)で表されるセミカルバゾン化合物の製造方法に関する[式中、R1およびR2は独立に水素、ハロゲン、CN、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシを表し、R3はC1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシを表す]。本方法では、一般式(II)で表されるヒドラゾン化合物[式中、RはC1〜C4-アルコキシ、アミノ、C1〜C4-アルキルアミノまたはジ-(C1〜C4-アルキル)アミノを表し、R1、R2は上記したと同じである]と一般式(III)で表されるアニリン化合物[式中、R3は上記したとおりである]を反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は次の式Iで表されるセミカルバゾン化合物の調製方法に関する。
【化1】

【0002】
[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、CN、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシであり、R3はC1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシである]。
【背景技術】
【0003】
EP-A 462 456には式Iの化合物が殺虫剤として開示されている。該化合物は、式IVで表されるベンジルフェニルケトンから出発して図式1および2に示されている方法によって調製される。
【0004】
図式 1
【化2】

【0005】
図式 2
【化3】

【0006】
図式1および2においては、R1、R2およびR3はそれぞれ上記で定義したとおりである。
【0007】
しかしながら、図式1に示されているフェニルベンジルケトンIVとN-フェニルセミカルバジドVIの反応では化合物Iの収率が低い。加えて、このセミカルバジドVIは、対応するアニリンから別の反応工程で調製しなければならない。
【0008】
図式2に示されている方法の1つの欠点は第1の反応工程でヒドラジンを使用することで、このヒドラジンは副生成物の生成を避けるために過剰量で使用しなければならない。よく知られているように、ヒドラジンは発癌性があるとみなされている物質で、これに加えて金属性の物質と接触すると自然分解してガスを発生する傾向がある。したがって、安全上の理由から、非常に高いレベルの技術的複雑によってはじめて製造規模でのヒドラジンの取り扱いが可能となる。加えて、高濃度のヒドラジン溶液の化学分解は大きな発熱を伴って進行し、相当な量のガスを放出するので、この反応で得られる工業規模でのヒドラジン廃棄物の処理には高いレベルの複雑さが伴う。つまり、ヒドラジンを使用することは、この方法にとってはかなりのコスト要因を構成することになる。図式2に示されている方法のさらなる欠点はフェニルイソシアネートVIIIを使用していることである。これは、第一には、その毒性の結果として、その取り扱いには特別の安全対策を必要とし、さらには、対応するアニリンから別の反応で調製しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、一般式Iで表されるセミカルバゾン化合物を高い収率と良好な純度で得ることができ、且つ先ずは上記でまとめた先行技術の欠点を克服する化合物Iの調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、次の一般式II
【化4】

【0011】
[式中、RはC1〜C4-アルコキシ、アミノ、C1〜C4-アルキルアミノまたはジ(C1〜C4-アルキル)アミノであり、R1、R2はそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるヒドラゾン化合物と、一般式III
【化5】

【0012】
[R3は上記で定義したとおりである]で表されるアニリン化合物とを反応させると、一般式Iで表されるセミカルバゾン化合物が高収率且つ高純度で得られることを見出した。
【0013】
本発明はしたがって一般式Iで表されるセミカルバゾン化合物の調製方法を提供するものであり、その方法は、一般式IIで表されるヒドラゾン化合物と式IIIで表される置換アニリンとを反応させることを含んでなる。
【0014】
また、一般式IIで表されるヒドラゾン化合物は、既知の先行技術の方法と同様にして、次の式IV
【化6】

【0015】
[式中、R1、R2はそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるベンジルフェニルケトンから、このIVと次の式V
【化7】

【0016】
[式中Rは上記で定義したとおりである]で表されるヒドラジドとを反応させることで調製することができる。したがって、本発明による方法はまた、この経路によるヒドラゾン化合物IIの調製も含むものである。
【0017】
R2 = CNである式IIで表されるヒドラゾン化合物は新規であり、同様に本発明による方法における出発物質または中間体として本発明の主題の一部を形成する。
【0018】
上記式において特定された可変部R、R1、R2およびR3の定義で、集合的な用語が使用されている。これらは一般に特定の置換基を表すものである。用語Cn〜Cmは、その特定の置換基もしくは置換基部分におけるそれぞれの場合のあり得る炭素原子の数を特定するものである。その他の定義は以下のとおりである。
【0019】
ハロゲン:フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素;
アルキルならびにアルコキシ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノにおけるすべてのアルキル部分:1〜4個の炭素原子を有する飽和直鎖または分枝炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピルおよび1,1-ジメチルエチル(t-ブチル);
ハロアルキルおよびハロアルコキシにおけるハロアルキル部分:(上記で特定した)1〜4個好ましくは1または2個の炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基であってその基中の水素原子の一部または全部が上記で特定したハロゲン原子好ましくはフッ素で置換されていてもよいアルキル基(フルオロアルキル)、例えばクロロメチル、ブロモメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、ジクロロフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-フルオロエチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-クロロ-2-フルオロエチル、2-クロロ-2,2-ジフルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、ペンタフルオロエチル、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピルおよび1,1,1-トリフルオロプロパ-2-イル。好ましいハロアルキルはC1〜C2-フルオロアルキルで例えば2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、トリフルオロメチルおよびジフルオロメチルである。
【0020】
本発明による方法に対しては、式IIにおけるRが[したがって式VにおけるRも]C1〜C4-アルコキシ特にメトキシである場合は特に有利であることを見出した。
【0021】
本発明のもう1つの実施形態では、Rは、NH2、C1〜C4-アルキルアミノまたはジ(C1〜C4-アルキル)アミノである。したがってRは、好ましくはアミノ(NH2)、メチルアミノ、エチルアミノまたはジメチルアミノ、特にNH2である。
【0022】
本発明による方法の利点は、式IのR1、R2およびR3がそれぞれ独立に以下のとおり定義される化合物の調製、より好ましくは組み合せでの化合物の調製において特に明らかとなる。
【0023】
R1が、C1〜C4-ハロアルキル好ましくはトリフルオロメチル特にフェニル環のメタ位(3-位)に配置されているトリフルオロメチルである;
R2が、シアノ好ましくはパラ位(4-位)に配置されているシアノである;
R3が、C1〜C4-ハロアルコキシ好ましくはトリフルオロメトキシ特にパラ位に配置されているトリフルオロメトキシである。
【0024】
アニリン化合物IIIとヒドラゾン誘導体IIを反応させるには、これら化合物は好ましくはIII:IIのモル比が1:1.5〜1.5:1、好ましくは1:1〜1.3:1、より好ましくは1.02:1〜1.2:1で用いるとよい。
【0025】
アニリン化合物IIIとヒドラゾン化合物IIは室温より高い温度、例えば30〜200℃、好ましくは50〜180℃、より好ましくは70〜150℃で有利に反応する。本発明による方法が成功するためには反応圧力は重要でなく、例えば500ミリバール〜10バールであってよい。好ましくは反応は大気圧の範囲内すなわち0.9〜1.2バールで行う。反応に必要とされる反応時間は、通常1時間〜24時間好ましくは3時間〜12時間である。
【0026】
反応は基本的には物質で行ってもよい。しかしながら、好ましくはアニリン化合物IIIとヒドラゾン化合物IIは有機溶媒中で反応させる。好適な溶媒は基本的には反応条件下で化合物IIおよびIIIを少なくとも一部好ましくは全部溶解することができるものであればなんでもよい。好ましい溶媒は非プロトン性である。溶媒は、好ましくは、大気圧における沸点が60〜200℃好ましくは80〜150℃であるものにする。特に好ましい溶媒は芳香族溶媒特にアルキルベンゼン[例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン(2-プロピルベンゼン)、シメン(イソプロピルトルエン)およびメシチレン]およびクロロベンゼン[例えばクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼンおよび1,4-ジクロロベンゼン]および脂肪族ニトリル[例えばアセトニトリルおよびプロピオニトリル]ならびにこれら溶媒の混合物である。
【0027】
アニリン化合物IIIとヒドラゾン化合物IIの反応は酸の存在下で行ってもよい。但し、酸の使用は必須でない。原理的に適している酸の例は、硫酸、有機スルホン酸好ましくは芳香族スルホン酸[例えばp-トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸]および脂肪族スルホン酸[例えばメタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸]、芳香族カルボン酸[例えば安息香酸および4-トリフルオロメチル安息香酸]および好ましくは1〜3個の炭素原子を有している脂肪族カルボン酸[例えば酢酸およびプロピオン酸]である。通常、酸は触媒量で、すなわち化合物IIまたはIII 1モル当り1モル未満の量で、好ましくは化合物IIまたはIII 1モル当り0.5モル未満の量で、特には化合物IIまたはIII 1モル当り0.2モル以下の量で用いるとよい。本発明による方法の1つの好ましい変形態では、酸の不存在下にIIとIIIを反応させる。
【0028】
アニリンIIとヒドラゾンIIIの反応で生成した化合物R-Hの少なくとも一部、好ましくは少なくとも50%、特には少なくとも80%は、好ましくは反応混合物から反応の間に除去されるのがよく、化合物R-HがC1〜C4-アルカノール例えばメタノールまたはエタノールである場合は特にそうである。この目的のためには、化合物R-Hが、反応中、反応混合物から適切であれば溶媒との共沸物として留去される温度および圧で行うとよい。適切であれば、反応には埋め合わせのための新たな溶媒を導入するか、あるいは化合物R-Hと共に留去された溶媒を、適切であれば化合物R-Hを蒸留によりなくしてから反応にリサイクルするのがよい。このようなことから、用いる溶媒の沸点が、反応で生成した化合物R-Hの沸点(それぞれの場合大気圧における)よりも少なくとも10K好ましくは少なくとも30K高いのが有利である。適切には、化合物IIと化合物IIIの反応は、少なくとも1つの蒸留・精留装置が備え付けられている装置、例えば先ず化合物R-Hを適切であれば溶媒と一緒に留去することができ同時に化合物R-Hと共に留去された溶媒を除去・回収することができる蒸留塔で行う。
【0029】
反応させるには、化合物IIとIIIはどのような方式で一緒に接触させてもよい。例えば、化合物IIとIIIを先ず反応容器の中に適切であれば所望の溶媒と一緒に仕込み、そのあと所望の反応条件を確立してもよい。しかしながら、適切であれば、溶媒中の化合物IIおよびIIIの大半または全部を、反応条件下にある反応容器の中に導入することもできる。本発明の好ましい実施形態では、適切であれば、所望溶媒中のヒドラゾン化合物IIの大半、特には少なくとも80%、より好ましくは全部または実質的に全部(> 95%)を先ず仕込み、アニリン化合物の大半、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは全部または実質的に全部(> 95%)を反応条件下で反応過程中例えば0.5〜20時間好ましくは1〜10時間の期間に亘ってそれに加える。この目的のためには、アニリン化合物IIIは好ましくは溶媒中に溶解させておくとよい。適切であれば、アニリン化合物IIIの添加後、一定時間例えば10分〜10時間好ましくは20分〜5時間反応を継続させる。
【0030】
化合物Iは反応混合物からそれ自体公知の方法により単離することができる。反応が溶媒中で行われた場合は、反応混合物は通常濃縮および/または冷却され、および/または沈殿剤が加えられることになる。好適な沈殿剤は、化合物Iが少なくとも25℃より低い温度においてまったくでなくとも少ししか溶解しない溶媒である。このような溶媒としては特に脂肪族および脂環式炭化水素例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテルなどが挙げられる。この沈殿/結晶化のあとさらなる精製処理を加えてもよい。
【0031】
本発明の方法により、煩雑な結晶化あるいは他の精製処理を必要とすることなく、化合物IIを基準にして通常少なくとも80%そして多くの場合少なくとも90%の高収率で、さらに通常最低90%の粗生成物においてさえ良好な純度で化合物Iが得られる。さらなる精製処理例えば結晶化を、それ自体公知の方法により行ってもよいことは理解されると思われる。驚くべきことに、本発明の方法により、E:Z > 4 の高E/Z異性体比の化合物Iが得られ、これは化合物Iを殺虫剤として使用する場合有利である。E/Z比のさらなる増大は、ヨウ素を用いての異性化による公知の方法で達成することができる。ヨウ素の存在下における化合物IのZ異性体からE異性体への異性化は、2004年11月12日出願のPCT/EP2004/012872に記載されている[この開示内容は参照により本明細書に組み込む]。
【0032】
本発明の方法で用いられる一般式IIで表わされるヒドラゾン化合物は、先行技術のセミカルバゾン調製方法と同様にして、例えばJ. Am. Chem. Soc. 75, 1953, p. 2259-2261、J. Org. Chem. 55, 1990, p. 1070-1076 および Synthesis, 1985, p. 1048-1051に記載されている方法と同様にして、式IVで表されるフェニルベンジルケトンと式Vで表されるヒドラジドを反応させることにより調製することができる。
【0033】
この目的のためには、ベンジルフェニルケトンIVとヒドラジドVの反応を酸の存在下で行うと有利であることを見出した。原理的に好適である酸の例は、硫酸、有機スルホン酸特に芳香族スルホン酸例えばp-トルエンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸、脂肪族スルホン酸例えばメタンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸、芳香族カルボン酸例えば安息香酸および置換安息香酸例えば4-トリフルオロメチル安息香酸、ならびに好ましくは1〜4個の炭素原子を有している脂肪族カルボン酸例えば酢酸およびプロピオン酸である。好ましい酸はカルボン酸、特には好ましくは1〜4個の炭素原子を有している脂肪族カルボン酸特に酢酸である。通常、酸は、化合物IV 1モル当り0.01〜2モルの量で、好ましくは化合物IV 1モル当り0.05〜1.5モルの量で用いる。スルホン酸の場合は、好ましくは触媒量、すなわち化合物IV 1モル当り1モル未満、好ましくは化合物IV 1モル当り0.01〜0.5モル、特には化合物IV 1モル当り0.05〜0.2モルの量で用いる。カルボン酸の場合は、もっと多い量の酸、例えば化合物IV 1モル当り0.1モル〜2モル、特には0.5〜1.5モルの酸を用いてもよい。
【0034】
ケトンIVとヒドラジドVを反応させるには、これら化合物は、好ましくはIV:Vのモル比が1:2〜1.1:1、好ましくは1:1.5〜1:1、より好ましくは1:1.3〜1:1.05で用いるのがよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態では、式VのRがC1〜C4-アルコキシ、特にメトキシであるヒドラジドが用いられる。そのようなヒドラジドVは、以下の明細書中ではカルバゼート[carbazate]Vとも呼ばれる。
【0036】
ケトンIVとヒドラジドVは、有利には温度10〜100℃、特に20〜80℃で反応させる。反応圧は反応を成功させる上では重要でなく、圧は、例えば500ミリバール〜10バールでよい。反応は、好ましくは大気圧の範囲内、例えば0.9〜1.2バールで行う。反応に必要な反応時間は、通常4時間〜72時間、好ましくは8時間〜60時間である。
【0037】
反応は原理的には物質で行ってもよい。しかしながら、好ましくは式VのヒドラジドとケトンIVは有機溶媒中で反応させる。好ましい有機溶媒はC1〜C4-アルカノール特にメタノールおよびエタノール;芳香族溶媒特にアルキルベンゼン例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン(2-プロピルベンゼン)、シメン(イソプロピルトルエン)およびメシチレン、およびクロロベンゼン例えば1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼンおよび1,4-ジクロロベンゼン;ならびにこれら溶媒の混合物である。
【0038】
ケトンIVとヒドラジドVの反応で生成した水は、それ自体公知の方法、例えば反応に使用された溶媒と共沸させて分離する方法により、反応の間に、反応混合物から除去することもできる。しかしながら、反応水は反応混合物中にそのまま残っていてもよい。
【0039】
反応させるためには、ケトンIVとヒドラジドVは、それ自体任意の方法により、一緒に接触させる。通常、ケトンIVとヒドラジドVを、先ず、適切であれば所望の溶媒と一緒に反応容器の中に仕込み、次に所望の反応条件を確立するとよい。しかしながら、適切であれば溶媒中のケトンIVとヒドラジドVの大半または全部を、反応条件下にある反応容器の中に導入してもよいし、あるいは構成成分のIVかVの一方を先ず仕込み、もう一方の構成成分の大半を反応の過程で加える。
【0040】
化合物IIは反応混合物からそれ自体公知の方法により単離することができる。反応が溶媒中で行われた場合は、反応混合物は通常濃縮および/または冷却され、および/または沈殿剤が加えられることになる。好適な沈殿剤は、化合物IIが少なくとも25℃より低い温度においてまったくでなくとも少ししか溶解しない溶媒である。このような溶媒としては特に脂肪族および脂環式炭化水素例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、メタノール、エタノール、アルキルベンゼンなどが挙げられる。この沈殿/結晶化のあとさらなる精製処理を加えてもよい。反応を、好ましいとされているアルコール中、特にメタノールまたはエタノール中またはアルキルベンゼン中で行う場合は、通常、沈殿剤を加える必要はない。
【0041】
ここで述べたケトンIVとヒドラジドVの反応により、化合物IIを基準にして通常少なくとも80%そして多くの場合少なくとも95%の高収率且つ多くの場合少なくとも90%そして特には少なくとも95%の非常に高い純度で化合物IIが得られ、煩雑な結晶化あるいは他の精製処理は必要ない。したがって、反応混合物から化合物IIを単離することをなしで済ませることも可能である。
【0042】
本発明の好ましい実施形態は、したがって、第1の段階で式IIで表されるヒドラゾン誘導体をケトンIVとヒドラジドVを反応させることで調製し、次の段階で化合物IIをアニリン化合物IIIと、単離することなく反応させる方法に関わる。この目的のためには、ヒドラゾンIIを調製するのに使用した溶媒の一部または全部を除去して他の溶媒で置換するのが有利であると考えられる。しかしながら、ヒドラゾンIIとアニリンIIIの反応は、好ましくは、ヒドラゾンIIを調製するのに使用した溶媒中で行うのがよい。
【0043】
ヒドラゾンIIを調製するのに使用したケトンIVおよびその調製方法は、先行技術例えばWO 00/18714、JP 4168826およびWO 03/091203に開示されている。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は単に本発明を説明するためのものであって、本発明を限定するものと解釈すべきでない。
【0045】
記載されている純度および異性体比は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC[high-pressure liquid chromatography])による特定ピークの面積比から決定した。
【0046】
NMRスペクトルの関連では、s は一重項、d は二重項、t は三重項である。MSは質量スペクトル分析[mass spectrum]を意味し、IRはIRスペクトル分析[IR spectrum]を意味する。
【0047】
実施例 1:式IIのRがメトキシであり、R1が3-CF3であり、R2が4-CNであるヒドラゾンの調製
実施形態 A
メチルカルバゼート(HN-NH-C(O)-OCH3)18.8g(0.21モル)および3-トリフルオロメチルフェニル4-シアノベンジルケトン(式IVのR1 = 3-CF3、R2 = 4-CNである化合物)57.8g(0.20モル)を20℃のメタノール700mL中に溶解させた。次に、濃硫酸2mLを加え、この混合物を20℃で2日間撹拌し、沈殿した固形物を単離した。これをメタノール100mLで洗い、50℃/10ミリバールの乾燥キャビネット中で乾燥させた。このようにして、ヒドラゾンII[R1 = 3-CF3、R2 = 4-CN]62.6g(理論収率の86.7%に相当する)を純度(HPLC)99.6%で得た。
【0048】
融点:171℃
MS (EI): m/e = 361 (M+ イオン)
IR: 2245 cm-1 (CN); 1704 cm-1 (C=O)
1H NMR (DMSO): δ/ppm = 3.8 (s, 3H); 4.5 (s, 2H); 7.4 (d, 2H); 7.64 (t, 1H); 7.7 (d, 1H), 7.8 (d, 2H); 8.0 (d, 1H); 8.15 (s, 1H); 10.95 (s, 1H)
13C NMR (DMSO): δ/ppm = 31.77 (t); 52.19 (q); 109.30 (s); 118.64 (s); 122.51 (d); 124.01(s; C/F 結合定数: 272.3 Hz); 125.30 (d); 129.16 (d, 2C); 129.24 (s); 129.61 (d); 130.25 (d); 132.51 (d, 2C); 138.07 (s); 142.11 (s); 146.45 (s); 154.58 (s)。
【0049】
実施形態 B
3-トリフルオロメチルフェニル4-シアノベンジルケトン7.3g(0.025モル)とメチルカルバゼート(97%)2.4g(0.025モル)を酢酸2.0gの存在下50℃のキシレン50g中で24時間反応させた。20℃まで冷却してから、沈殿した固形物を取り出し、キシレン10gで洗い、50℃/10ミリバールの乾燥キャビネットの中で乾燥させた。このようにして、ヒドラゾンII[R1 = 3-CF3、R2 = 4-CN]8.0g(理論収率の88.1%に相当)を純度(HPLC)99.9%で得た。
【0050】
実施例 2:式IのR1が3-CF3であり、R2が4-CNであり、R3が4-OCF3である化合物Iの調製
実施形態 A
蒸留塔を有している反応容器の中で実施例1からのヒドラゾン7.2g(0.02モル)および4-トリフルオロメトキシアニリン3.9g(0.022モル)をキシレン100gの中に合わせ、その混合物を加熱還流した。7時間内でメタノールとキシレンの混合物80gを高還流比で留去した。反応混合物をゆっくりと60℃まで冷却させ、シクロヘキサン5gをこの温度で加えた。次に、混合物をさらに10℃まで冷却させた。沈殿した固形物を取り出し、シクロヘキサン10gで洗い、80℃/10ミリバールの乾燥キャビネットの中で乾燥させた。このようにして、表題化合物9.4g(理論収率の92.2%に相当)を、純度が98.1%(E異性体81.2%およびZ異性体16.9%)の異性体混合物の形態で得た。
【0051】
実施形態 B
蒸留塔を有している反応容器の中で、実施例1からのヒドラゾン21.6g(0.06モル)と4-トリフルオロメトキシアニリン11.7g(0.066モル)をキシレン300gの中に合わせ、この混合物を加熱還流した。7時間内でメタノールとキシレンの混合物12gを高還流比で留去した。生成物を結晶化させるためさらなるキシレン234gを留去した。混合物をゆっくりと60℃まで冷却させ、シクロヘキサン75gをこの温度で加え、その混合物を次にさらに10℃まで冷却させた。沈殿した固形物を取り出し、シクロヘキサン30gで洗い、100℃/10ミリバールの乾燥キャビネットの中で乾燥させた。このようにして表題化合物28.0g(理論収率の84.6%に相当)を、純度が91.5%(E異性体77.4%およびZ異性体14.1%)の異性体混合物の形態で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の式I
【化1】

[式中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、CN、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシであり、R3はC1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシである]で表されるフェニルセミカルバゾン化合物の調製方法であって、
次の一般式II[式中、RはC1〜C4-アルコキシ、アミノ、C1〜C4-アルキルアミノまたはジ(C1〜C4-アルキル)アミノであり、R1、R2はそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるヒドラゾン化合物と一般式III[式中、R3は上記で定義したとおりである]で表されるアニリン化合物
【化2】

を反応させることを含む方法。
【請求項2】
RがC1〜C4-アルコキシである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rがメトキシである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Rがアミノ、メチルアミノ、エチルアミノまたはジメチルアミノである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アニリン化合物IIIと一般式IIのヒドラゾン化合物を、1:1.5〜1.5:1のII:IIIのモル比で用いる請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記式IIのヒドラゾン化合物を、次の式IV
【化3】

[式中、R1、R2はそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるベンジルフェニルケトンと、次の式V
【化4】

[式中Rは上記で定義したとおりである]で表されるヒドラジドを反応させることで製造する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式V中のRがC1〜C4-アルコキシである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベンジルフェニルケトンIVとヒドラジドVの反応を酸の存在下に行う請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記一般式IIのヒドラゾン化合物を単離することなくアニリン化合物IIIと反応させる請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記式I、IIおよびIV中のR1がメタ-トリフルオロメチルであり、式I、IIおよびIV中のR2がパラ-CNであり、式IおよびII中のR3がパラ-トリフルオロメトキシである請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
次の一般式II
【化5】

[式中、R1は水素、ハロゲン、CN、C1〜C4-アルキル、C1〜C4-アルコキシ、C1〜C4-ハロアルキルまたはC1〜C4-ハロアルコキシであり、R2はCNであり、RはC1〜C4-アルコキシ、アミノまたはC1〜C4-アルキルアミノもしくはジ(C1〜C4-アルキル)アミノである]で表されるヒドラゾン化合物。
【請求項12】
RがC1〜C4-アルコキシである請求項11に記載の一般式IIで表されるヒドラゾン化合物。
【請求項13】
Rがメトキシである請求項12に記載の一般式IIで表されるヒドラゾン化合物。
【請求項14】
R1がメタ-トリフルオロメチルであり、R2がパラ-CNである請求項11〜13のいずれか一項に記載の一般式IIで表されるヒドラゾン化合物。

【公表番号】特表2007−529457(P2007−529457A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503282(P2007−503282)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002802
【国際公開番号】WO2005/090293
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】