説明

セメントの可溶性クロム酸塩含有物用還元剤およびその製造方法

本発明は、セメントの可溶性クロム酸塩含有物用の還元剤、ならびに硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を濃縮する工程、および得られた硫酸鉄(II)含有沈殿物から硫酸を分離する工程を含む、該還元剤の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント中の可溶性クロム酸塩含有物用還元剤、およびその製造方法に関するものである。
【0002】
セメントのクロム含量は、使用する原材料に依存して、通常20〜100ppmである。セメント中に含有されるクロムは、水と混合した場合、クロム(VI)として溶解する可能性があり、そして頻繁に接触すると、皮膚を敏感にし、れんが職人が患うクロムアレルギー、いわゆる接触皮膚炎を起こすおそれがある。クロムアレルギーから保護するために、クロム(VI)をクロム(III)に化学的に還元し、したがって溶解性を著しく低減することが考慮に入れられている。クロム(VI)含量2ppm未満にするために、硫酸鉄(II)(七水和物または一水和物として)が、還元剤としてセメント工業で主に使用される(Locher, Friedrich Wilhelm: Zement: Grundlagen der Herstellung und Verwendung [Cement: Basics of Production and Use], Verlag Bau + Technik GmbH, Dusseldorf 2000を参照)。
【0003】
概要を、W. Manns, C. Laskowski: Beton [concrete] 2/1999, 78 to 85に見ることができる。
【0004】
硫酸鉄を乾燥した形態でセメント貯蔵サイロより前に添加する、硫酸鉄の粉砕セメントへの添加が、EP 54314、160746、および160747 A1に記載されている。EP 160 747 A1によれば、耐酸化性を高めるために硫酸鉄はコーティングされている。
【0005】
硫酸鉄(II)は主に、硫酸塩法を用いて二酸化チタンを製造するプロセスから生じ、副生物として蓄積する。これにより、硫酸鉄(II)は、チタンおよび鉄を含有する鉱石または合成原料(黒液)を温浸して得られるチタンおよび鉄を含有する硫酸溶液からの結晶化により得ることができる。しかし、これによって溶液から取り出されるのは、鉄の一部であり全てではない。これによる硫酸鉄(II)の結晶化は、たとえば真空冷却によって温い溶液を冷却することにより、場合により蒸発によるさらなる濃縮により行う。
【0006】
硫酸鉄(II)の分離の次に、残存する溶液を加水分解する。これにより得られた酸化チタン水和物を残留するいわゆる希酸から、ろ過によって分離する。酸化チタン水和物をさらに二酸化チタンに処理する一方で、希酸は別の使用に利用可能にするかまたは適切な方法で無害の化合物に転化しなければならない。
【0007】
硫酸鉄(II)七水和物は、いわゆる黒液から硫酸鉄(II)七水和物を得るための上述した方法に類似の方法で、希酸からの結晶化によって得ることもできる。濃縮前に希酸から硫酸鉄(II)七水和物を分離する可能性が、EP 132820に記載されている。しかし、その中に欠点として、このような硫酸鉄(II)七水和物の分離の場合は、他の金属硫酸塩が希酸中に残存すること、および緑塩(green salt)を使用する十分な可能性がないことが挙げられている。
【0008】
したがって、EP 132820は、蒸発により希酸を濃縮し、場合により金属硫酸塩を分離し、そして残存する金属硫酸塩とCaO、Ca(OH)2および/またはCaCO3とを反応させて石膏および可溶性の乏しい金属化合物を形成することを提案している。この方法で得られた固体は色が淡褐色であり、これは水酸化鉄(II)が水酸化鉄(III)へ酸化したためである。この固体の混合物を、セメントを仮焼する場合の鉄含有添加剤として使用することが、特に記載されている。
【0009】
EP 160 747 A1には、セメントに混合された硫酸鉄(II)のクロム酸塩還元効果が、貯蔵の間、経時的に減少することが記載されている。したがって、添加する硫酸鉄(II)の量は、特定の時にセメント配合物中のクロム酸塩を完全に還元することを確実にするために、貯蔵時間に応じて決定しなければならない。
【0010】
したがって、デンマークセメント工業は、2ヶ月間、可溶性クロムの制限値2ppmに従うことを保証するだけである(Report by the Verein deutscher Zementwerke e.V.(VDZ) Forschungsinstitut der Zementindustrie [Association of German Cement Works (VDZ) Research Institute of the Cement Industry} "Chromatarmer Zement fur einen verbesserten Arbeitsschutz" [Low-Chromium Cement for Improved Occupational Safety] from January 16, 2002を参照)。VDZ のワーキンググループ “Analytical Chemistry”は、問題のない貯蔵期間3〜6ヶ月を示した。しかし、これによる長期間にわたる安定性は、セメントの貯蔵条件、たとえば湿気および温度に高く依存する(Progress report regarding the significance of chromate in cements and cement-containing preparations, dated January 05, 1999; Verein deutscher Zementwerke e. V. (VDZ) Forschungsinstitut der Zementindustrieを参照)。
【0011】
本発明の目的は、セメント中の可溶性クロム酸塩含有物用の硫酸鉄(II)含有還元剤、ならびにこれを製造する適切な方法を提供することである。
【0012】
この目的は、本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤の製造方法によって解決し、この方法は、硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を濃縮する工程、および得られた硫酸鉄(II)含有沈殿物から硫酸を分離する工程を含む。セメント中のクロム酸塩のための効果的な還元剤がこの方法で得られた。得られた硫酸鉄(II)含有沈殿物からの硫酸の分離の次に、続いて分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、この硫酸のさらなる分離、部分中和、または中和によって行うのが好ましい。驚くべきことには、特に、さらなる分離、部分中和、または中和によって、分離した沈殿物に付着する硫酸の量を低減した結果、セメント中のクロム酸塩用の還元剤として別の添加剤の使用および未使用の両方で用いることができる、セメント中の可溶性クロム酸塩含有物のための適切な還元剤を得ることが可能であることを見出した。
【0013】
鉄(II)含有使用済み硫酸は、種々の異なる工業プロセスで蓄積する。たとえば、二酸化チタンを硫酸塩法により製造する場合、約25%の硫酸水溶液(希酸)が副生物として形成する。本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤は、この希酸から、濃縮、硫酸鉄(II)含有塩混合物の沈殿、および得られた沈殿物からの硫酸の分離の後に得ることができる。その後の分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、得られた沈殿物から硫酸の分離の次に、そこで行うのが好ましい。
【0014】
しかし、二酸化チタンの製造からの希酸のほかに、他の硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸も使用することができる。たとえば、金属酸洗プラントからの硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸は、この点から適切である。
【0015】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸の混合物を用いることもできる。最後に、さらに硫酸鉄(III)含有使用済み硫酸を用いることができ、ただしこれらは金属鉄または他の還元剤で前もって還元する。
【0016】
用いる使用済み硫酸は、好ましくはチタン含量1.5重量%未満、特に好ましくは0.8重量%未満である。
【0017】
本発明によれば、鉄(II)含有使用済み硫酸を、硫酸含量50%より濃く、好ましくは60〜80%に濃縮し、その中に溶解した塩(大部分は硫酸鉄(II)一水和物)は、大きな規模で微細な結晶性沈殿物として析出する。濃縮は、蒸発システム中、常圧または真空下での、水の蒸発または揮発により、連続的にまたは非連続的に行うことができる。真空下で、連続作動強制循環形蒸発システムを使用するのが好ましい。それに続く結晶化は、蒸発システム中で、後続の塩熟成(冷却)で行うことができる。これにより本発明の金属硫酸塩は、硫酸塩、硫酸水素塩、オキシ硫酸塩として、またはこれらの錯体混合物として析出することができる。これにより鉄は、硫酸鉄(II)一水和物として結晶化するのが好ましい。たとえばろ過、沈降または遠心処理によって沈殿物を分離した後に、残存するあらかじめ濃縮した硫酸は、さらに濃縮してプロセスに戻すか、または別の方法で使用する。分離した沈殿物(使用済み硫酸を二酸化チタン製造から得たなら、ろ過塩(filter salt)とも言う)は、フィルター集成装置、たとえばチャンバフィルタープレス、プレスベルトフィルター、ロータリーフィルター、キャンドル圧力フィルターで、温めて(約70℃で)分離するのが好ましい。分離を、たとえばキャンドル圧力フィルターまたはチャンバフィルタープレスを用いるろ過によって行うのが特に好ましい。
【0018】
分離した沈殿物(たとえばろ過塩)は、好ましくは、硫酸鉄(II)一水和物40〜60%、別の金属硫酸塩3〜10%、遊離硫酸15〜30%、および水約10〜13%を含有する。
【0019】
分離の次に、分離した沈殿物に付着する硫酸の量を、たとえば圧縮空気を用いてまたはスチームで洗浄することで硫酸を置換することにより、洗浄媒体、たとえば希酸、FeSO4飽和溶液、希FeSO4含有水溶液、または水で洗浄することにより、鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物および水との反応により、あるいは粉末状アルカリ化合物、特にCaCO3、CaO、Ca(OH)2、MgOおよび/またはMg(OH)2またはこれらのエラトリエーション(elutriation)、たとえば石灰水を添加することにより、さらに低減するのが好ましい。
【0020】
分離した沈殿物の洗浄媒体での洗浄は、好ましくは、分離した沈殿物(たとえばろ過塩)に基づいて洗浄媒体40〜500重量%用いて行う。
【0021】
洗浄は、好ましくは55〜100℃の温度で行う。温度55〜75℃が特に好ましい。
【0022】
希酸は、特に洗浄を高温で行う場合、理想的な洗浄媒体であることが分かっている。分離した沈殿物を、この温度範囲で、希酸で洗浄する場合、
−希酸はすでに塩を溶解した形態で含有し、硫酸鉄(II)のこの媒体への溶解性は負の温度係数を有する(すなわち、温度が上がるにつれて溶解性が低下する)ので、塩は分離した沈殿物からほとんど溶解せず、
−チキソトロープ性を全く示さない、安定な、流動性の沈殿物が得られる。
【0023】
温かい希酸での洗浄は、合間に沈殿物(ろ過ケーク)を取り除く必要がなく、同じろ過装置中で行うことができる。ろ過方法は、好ましくは、所定の順番で次の工程を含む:ろ過装置への装填、押し出し、場合により吹き込みまたは吹き出し、希酸での洗浄、吹き込みまたは吹き出し、および廃棄。分離した沈殿物を、受け器の温かい希酸中で懸濁し、再びろ別することもできる。
【0024】
分離した沈殿物が二酸化チタン製造からのろ過塩であるなら、希酸での洗浄は特に有利であり、それは
−リサイクルシステムに蒸発させる水の量の増加を負担させるか、さもなければ処分しなければならない追加の洗浄液体が生じない;
−ろ過塩洗浄のためのプロセスで十分な量の温い希酸が利用できる;
−あらかじめ濃縮した硫酸からろ過塩の分離を行ったのと同じ装置中で、また洗浄を行うことができる。したがって、追加の装置は必要ない;
−洗浄媒体(希酸)およびろ過塩分離の母液(あらかじめ濃縮した酸)の二次汚染は、技術的に考えられない;
−蒸発により希酸が達する濃度は洗浄により高まり、したがって同じ量の水を蒸発させる場合、より多くの酸が希酸の再処理の間に濃縮され、および特に必要なエネルギーの対応する量を節約する;
−分離した硫酸をさらに再処理する場合に用いるシステム(たとえばろ過塩クラッキングシステム、硫酸接触システムおよび/または三酸化硫黄吸収システム)は、ろ過塩から洗浄した硫酸の割合を減少させ、したがってより高い量のろ過塩を分解することができる;
−そしてろ過塩に付着する硫酸を、製造サイクルにフィードバックすることができるからである。
【0025】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量を減らすための洗浄媒体として、希酸に加えて水、FeSO4飽和溶液、または希FeSO4含有水溶液も使用することができる。
【0026】
本発明によれば、使用済み硫酸の濃縮および濃縮した使用済み硫酸からの沈殿物の分離の後に、分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、好ましくは100℃より高い温度で、スチームで洗浄することによって行うこともできる。なお、これにより、追加して使用した液体または凝縮液は全て、エネルギーを用いて、蒸留によって、蓄積する酸から後で再び除去しなければならない。
【0027】
スチームでの洗浄は、酸はまずスチームにより希釈され、これが同時に付着した酸を吹き飛ばすので、スチームの形態でほんの少しだけの水を使用する利点を有する。本発明により用いる、スチームのさらなる凝縮が起こらない高温で、分離した沈殿物からの硫酸の分離の後に、この方法で行う。したがって硫酸の吸水性を利用した;すなわち、高度に濃縮された硫酸がまだ存在する間は、スチームは分離した沈殿物中で凝縮するだけである。一方、硫酸鉄(II)一水和物は高温で希硫酸への可溶性が乏しく、および溶解平衡に達することができないようにその場でさらに吹きとばす。したがって、分離した沈殿物に含有される少しの割合の硫酸鉄だけが、スチームで洗浄することによって洗い出される。
【0028】
分離した沈殿物をスチームで洗浄することに対して、次の利点が通常生じる。
−ごく少量の水だけをシステムに導入する。
−洗い出された硫酸が高い濃度で蓄積する。
−スチームは溶剤効果を持たないため、分離した沈殿物から溶解する硫酸鉄(II)一水和物はほんの少しだけである。
【0029】
分離した沈殿物が二酸化チタン製造からのろ過塩であるならば、スチームでの洗浄は技術の適用に対して特に有利であり、それは
−蒸発により希酸が達する濃度は洗浄する酸で高めることができ、したがって、希酸を再処理する場合、揮発させなければならない水は特に少なく、対応するエネルギー量を節約し;
−ろ過塩クラッキングシステム、硫酸接触システム、および三酸化硫黄吸収システムは、ろ過塩の洗い出される割合を減少させ、したがって硫酸のさらなる生産設備に利用でき;
−ろ過塩に含有される硫酸のほとんどを、循環システムにフィードバックするからである。
【0030】
洗浄凝縮液中の硫酸を高濃度に、そして硫酸鉄を低濃度にするために、高いスチーム温度が有利であるが、これらは使用する装置に大きな材料要求を課す。残存するろ過塩ケーク中の硫酸を低濃度にするために、低いスチーム温度が有利である。
【0031】
スチームでの洗浄は、温度105〜130℃で行うのが特に好ましい。
【0032】
本発明によれば、使用済み硫酸の濃縮および濃縮した使用済み硫酸からの沈殿物の分離の後に、分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、水および金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との反応により、60℃を超える温度で行うこともできる。
【0033】
分離した沈殿物中の硫酸濃度が高く、付着する酸に溶解した金属硫酸塩(硫酸を結晶格子に組み込ませることができる)のために、分離した沈殿物は金属鉄と反応せず、アルカリ性鉄(II)化合物とごくわずかだけ反応する。したがって、付着する酸中の硫酸の部分は、技術的に、鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との直接反応によって、部分的に中和するかまたは中和することがかろうじてできるだけである。水を添加すると、硫酸鉄(II)一水和物は、通常の周囲温度で、硫酸鉄(II)七水和物に転化する。鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との反応が起こるほどまでに硫酸を希釈するためには、したがって、七水和物の形成がおよばず、鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との反応の時に、水性相がいつも存在するように十分な水を添加しなければならない。反応をより低い温度で行うならば、後続の工程で、たとえば乾燥によって、過剰な水を除去しなければならない。
【0034】
約60℃より高い温度で、硫酸鉄(II)七水和物は水が開裂して、硫酸鉄(II)一水和物を形成する。分離した沈殿物を、この温度より高温でほとんど水なし使用すると、一水和物が保持される。流動性のペーストが得られ、ここで鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物と反応するほどまでに硫酸を希釈し、さらなる硫酸鉄(II)一水和物を形成することが可能である。
【0035】
分離した沈殿物と、金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との間の反応は、60〜110℃の温度で行うのが好ましく、75〜85℃の温度で行うのが特に好ましい。
【0036】
反応したペースト状だがポンプで汲み上げ可能で攪拌可能な混合物を冷却した時、残存する水は完全に結合して硫酸鉄(II)七水和物を形成し、乾燥した、硬い固体を形成する。
【0037】
分離した沈殿物に、分離した沈殿物(たとえばろ過塩)に付着する硫酸の量に基づいて80〜98mol%の金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物、たとえば炭酸鉄(II)または水酸化鉄(II)または酸化鉄(II)を、硫酸鉄に対する水のモル比が6.5〜7である水とともに添加して、反応させるのが好ましい。
【0038】
分離した沈殿物とアルカリ性鉄(II)化合物とを反応させる場合、この化合物は天然鉱石、たとえばシデライトの形態で反応させることもできる。しかし、工業副生物の成分である鉄(II)化合物もこの目的に使用することができる。
【0039】
分離した沈殿物との反応で金属鉄を使用するなら、平均粒子サイズ5mm以下である金属鉄を使用するのが好ましく、特に好ましい鉄(粉末)は、平均粒子サイズ100μm以下である。
【0040】
反応の開始は、たとえば(直接)スチームを用いる加熱により加速することができる。反応自体は発熱を伴う。大きめの鉄を使用する場合、反応はより長くかかる。この場合、蒸発の結果として水損失、および熱損失を、必要な場合には、スチームの供給により補わなければならない。シデライトとの反応はより遅く、そして明らかな反応熱を伴わない。これに関しては、熱および水の損失を、熱の供給により、たとえば直接スチームにより補うことも必要である。
【0041】
スチームおよび/または水供給の調節は、温度および/または粘度(たとえば攪拌装置の電流消費量の測定による)によって制御することができる。用いる鉄またはシデライトの粒子サイズに依存して、反応時間は、数分(10μmの鉄粉末を使用)から数時間(3mmの鉄顆粒、または<1mmのシデライト破片を使用)まで変動する可能性がある。
【0042】
反応は通常、常圧で行う。
【0043】
分離した沈殿物と、水および金属鉄、またはアルカリ性鉄(II)化合物および水との反応は、分離した沈殿物、鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物、および水の成分を連続的にまたは非連続的に投入する混合容器中で工業的に行うことができる。ペースト状塊が生じ、凝固させるために、これをたとえばペレットとして冷却部に置くことができる。別の可能性は、冷気吹き込みである。中和剤の反応性によって、反応および凝固のために混練機(ダブルアーム混練機など)も使用することができる。
【0044】
分離した沈殿物と、金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との間の反応を、連続的に行うなら、鉄またはアルカリ性鉄化合物の未反応部分をオーバーフローから取り出して戻すことができる。これによって金属鉄を反応に使用する場合は、鉄を磁力選鉱機によって取り出すことができる。
【0045】
本発明によれば、分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、使用済み硫酸の濃縮および濃縮した使用済み硫酸からの沈殿物の分離の後に、圧縮空気で硫酸を置換することにより行うこともできる。
【0046】
本発明によれば、分離した沈殿物に付着する硫酸の量を低減するために、使用済み硫酸の濃縮および濃縮した使用済み硫酸からの沈殿物の分離の後に、部分中和または中和を、粉末状アルカリ化合物、特にCaCO3、CaO、Ca(OH)2、MgOおよび/またはMg(OH)2またはこれらのエラトリエーション、たとえば石灰水を添加することにより行うこともできる。
【0047】
分離した沈殿物中の残留酸を部分的に中和するかまたは中和するために、これらの粉末状アルカリ化合物の添加を、分離した沈殿物に付着する硫酸の量を低減するための上述した工程の一つ、たとえば洗浄媒体、たとえば希酸、FeSO4飽和溶液、希FeSO4含有水溶液、または水での洗浄、あるいは硫酸の圧縮空気での置換、あるいはスチームでの洗浄、あるいは鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物および水との反応により行うこともできる。
【0048】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減の次に、あるいは粉末状アルカリ化合物の添加による分離した沈殿物中の残留酸の部分中和または中和の次に、造粒を行うことができるように、所定量の水、塩水溶液、または希硫酸を添加するのが好ましい。この添加は、フィルター集成装置中で、希酸を水で置換洗浄することにより特に有利に行うことができ、さらにこれは蒸発させる水の量を著しく増やさず取り戻す酸の量をさらに増やす。水の必要量は、場合により湿った緑塩の添加から得ることもできる。この変法は、次に、エネルギーの必要または化学物質の消費を伴わずに緑塩の乾燥が起こり、顆粒状または粉末状生成物が得られる利点を有する。
【0049】
これにより添加する水の量は、分離した沈殿物に含有される硫酸鉄(II)一水和物に基づいて100〜550mol%とすることができる。特に好ましい態様では、添加する水の量は、分離した沈殿物に含有される硫酸鉄(II)一水和物に基づいて250〜350mol%である。
【0050】
造粒および顆粒寸法の調節は、好ましくは、機械的形成によって、または空気の吹き込みにより、またはノズルもしくはロータリーディスクを用いる噴霧により、または冷却により、たとえば冷却ローラーもしくは冷却コンベヤーによって、もしくは冷気中を落下させるか渦巻かせることより行う。これにより、一連のプロセスパラメータに応じて、固体のブロック、大きめもしくは微細な顆粒または粉末バルク材料が得られる。
【0051】
上記方法により得られ、そして産業的に特に高価でなく、エネルギーを節約し、そして一定の品質である、硫酸鉄(II)含有還元剤を使用して、セメント中のクロム酸塩を減少することができる。
【0052】
本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤は、平均結晶子寸法2μm未満、好ましくは0.1〜1.0μmである。いくつかの特定の態様では、平均結晶子寸法は、0.2および0.5μmの範囲にある。
【0053】
平均結晶子寸法を次の通り測定する:サンプルをKapton箔の下(湿気を入れないため)、Philips PW 1800回折計で測定する。結晶子寸法の算出を、測定したスペクトルの100%反射から、Philips Fitプログラムによって行う。
【0054】
硫酸鉄(II)含有還元剤(硫酸鉄(II)一水和物)に対する、2θ=25.879°(2θ測定範囲25〜28°)での、hkl(200)100%反射を用いて、結晶子寸法を算出した。
【0055】
従来技術による還元剤、すなわちfirm KRONOSの緑塩(硫酸鉄(II)七水和物)に対する、2θ=18.088°(2θ測定範囲17.5〜18.75°)での、hkl(111)100%反射を用いて、結晶子寸法を測定した。
【0056】
これによる結晶子寸法は、電子顕微鏡写真から認識できる一次粒子の寸法と同じではない。しかし、明らかな違いが電子顕微鏡写真からも分かる。本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤に対する平均一次粒子サイズは約5μmであり、従来技術による還元剤(すなわちfirm KRONOSの緑塩)の平均一次粒子サイズは約50μmである。
【0057】
通常得られる硫酸鉄(II)七水和物(緑塩)に比べて、これらの硫酸鉄(II)含有金属硫酸塩の結晶子寸法は明らかに小さく(0.3、従来の緑塩>>3μmに比べて)、そして鉄の他の金属の含量が緑塩中よりも多い。
【0058】
本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤は、好ましくは、チタンを鉄に基づいて5〜15重量%、特に好ましくは7〜13重量%、および/または好ましくは、マンガンを鉄に基づいて1.5〜4.0重量%、特に好ましくは2.0〜3.5重量%を含有する。
【0059】
本発明による方法の利点は、硫酸鉄に加えて、濃縮した硫酸から結晶化する全ての金属硫酸塩、たとえば硫酸マンガン(II)をリサイクルすることができることである。本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤中に少量含有される別の金属硫酸塩は、不利な影響を全く示さず、硬化の後にセメントマトリックス中に永久に結合する。したがって、たとえば、本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤によって、セメント中にクロムをさらに導入するにもかかわらず、望ましくない可溶性クロムの含量を十分な程度まで効果的に低減することができる。
【0060】
セメントの加工の時にセメントと水の混合物に添加する場合、本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤の効果は、通常使用する緑塩(実施例2を参照)の効果と同等である。本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤を0.01〜5.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.5重量%使用する。これにより、硫酸鉄(II)含有還元剤の添加は溶液または懸濁液として行うこともできる。
【0061】
本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤を使用する場合、低添加量に対する短い貯蔵期間の後(実施例3を参照:0.3重量%または0.6重量%の添加)、従来技術に比べて低い効果が測定される。しかし、本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤は、驚くべきことには、通常公知の貯蔵時間の増加に伴う還元効果の連続的な低下を示さず、逆に再び高くなる還元効果を示す。したがって、本発明による還元剤は、従来技術の還元剤に比べて、貯蔵時間の増加に伴う、還元効果の著しい低下を示ず、特に1ヶ月後は低下を示さない。
【0062】
硫酸鉄(II)含有還元剤と他の還元剤との、たとえば従来の緑塩との混合物が、有利でもある。湿った緑塩との混合物が、特に好都合である。
【0063】
さらに、目的の方法に好都合な輸送および/または貯蔵特性に設定するように、硫酸鉄(II)含有還元剤または硫酸鉄(II)含有還元剤および緑塩の混合物と、さらなる不活性な無機および/または有機化合物とを混合することが可能である。
【0064】
本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤は、
−サイロまたは袋に充填する時に、粉砕セメントと混合するか、
−微粉砕直後、およびサイロに供給する前に、粉砕セメントと混合するか、
−サイロローリに積込む直前に混合するか、
あるいはまず、セメントと水とを調製する直前、その間、またはその後に混合することができる。
【0065】
本発明は、セメントおよび本発明による還元剤の混合物を含む配合物も提供し、この配合物は、硫酸鉄(II)含有還元剤を0.01〜5.0重量%、特に好ましくは0.2〜1.5重量%含有する。
【0066】
本発明による別の配合物は、セメント、水および本発明による硫酸鉄(II)含有還元剤を含有し、この配合物は、硫酸鉄(II)含有還元剤を、セメントに基づいて0.01〜5.0重量%、好ましくは0.2〜1.5重量%含有する。
【0067】
実施例
実施例1
硫酸鉄(II)含有還元剤の製造および特性決定
硫酸塩法による二酸化チタンの製造時に得られた希酸(硫酸含量23.5%および鉄含量3.8%)を、3段階強制循環形蒸発システム中で、徐々に真空度を高めて蒸発させることにより、硫酸含量48%(液相中の硫酸濃度70%に相当する)に達するまで濃縮した。蒸発による濃縮時に、硫酸鉄の大部分が一水和物として析出した。蒸発による濃縮の次に、得られたスラリーを熟成に付し、これにより、攪拌カスケード中でその温度を約90℃〜60℃に下げた。次にスラリーを、加圧下、キャンドルフィルターシステムでろ過し、ろ過ケークを、圧縮空気を用いて付着する硫酸を部分的に除去した。硫酸鉄(II)含有還元剤として用いることができる、脆く、乾燥した、取り扱いが容易なろ過ケーク(ろ過塩)を得た。
【0068】
結晶子寸法をラジオグラフィーによって測定した。従来の緑塩(KRONOS)の結晶子寸法は、>>3μmである(この技術を用いて緑塩に対する結晶子寸法の決定を明白に確かめることができなかったが、いずれにせよ3μmよりはるかに大きい)。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例2a)
いずれの場合も、予熱した吸引ろ過器上で、遊離硫酸含量が25.3%であるろ過塩200gと、温い希酸とを60℃で混合することによりスラリーを形成し、温い懸濁液を急速に吸引した。全ての場合において、冷たい希硫酸での洗浄と異なって、非チキソトロープの、流動性ろ過塩を得た。
【0071】
【表2】

【0072】
実施例2b)
実施例2a)、試験3と同じ方法で洗浄を行った。次に、CaCO310重量%中で混合することにより、ろ過塩中の残留酸の中和を行った。
【0073】
実施例3a)
硫酸塩法による二酸化チタンの製造時に得られた希酸(硫酸含量23.5%および鉄含量3.8%)を、3段階強制循環形蒸発システム中で、徐々に真空度を高めて蒸発させることにより、硫酸含量48%(液相中の硫酸濃度70%に相当する)に達するまで濃縮した。蒸発による濃縮時に、硫酸鉄の大部分が一水和物として析出した。蒸発による濃縮の次に、得られたスラリーを熟成に付し、これにより、攪拌カスケード中でその温度を約90℃〜60℃に下げた。フィルタープレスを用いるスラリーのろ過の後に、遊離硫酸含量23%を有するろ過塩2kgを得た。ろ過工程の直後に、プレスを空にすることなく、プレスのチャンバ容積を、60℃の温水で3回洗浄を行い、再び加圧を行い、次にブロー乾燥を行った。pH値1.8を有する流動性の硫酸鉄(II)含有還元剤を得た。
【0074】
粉末Ca(OH)2を6重量%加えることにより、pH値2.2を有する材料を得た。
【0075】
得られた硫酸鉄(II)含有還元剤は、良好な流動学的性質を有し、そのpH値>2のために有害な物質ではない。
【0076】
pH値の測定は、H2O1000g中の塩10gの溶出液において、pH計(firm Knick, type 765 Calimatic)で、Ag/AgCl参照システムを有する1本の棒のpH測定素子(firm Schott, type H6580)によって行った。
【0077】
実施例3b)
実施例3a)で得られた遊離硫酸含量23%を有するろ過塩を、フィルタープレスを用いるスラリーのろ過の後、次にフィルタープレスを空にすることなく即座に圧縮空気で吹き込み乾燥し、加圧し、次に再び吹き込み乾燥した。
【0078】
pH値1.5を有する流動性の硫酸鉄(II)含有還元剤を得た。
【0079】
粉末Ca(OH)2を15重量%加えることにより、pH値2.6を有する材料を得た。
【0080】
得られた硫酸鉄(II)含有還元剤は、良好な流動学的性質を有し、そのpH値>2のために有害な物質ではない。
【0081】
実施例3a)と同じ方法でpH値を測定した。
【0082】
実施例4
実施例2と同じ方法で洗浄を行った。実施例2、試験3により得られた洗浄されたろ過塩1部を、硫酸鉄(II)七水和物2部と混合し、数時間動かし続けた。チキソトロープ性を持たない粉末を得た。あるいはまた、上述した比での混合を80℃で行うことができる。粘稠な溶融物が得られ、これは冷却する間に凝固して、硬いケークを形成した。
【0083】
実施例5
遊離硫酸含量25.3%を有するろ過塩500gを、スチームを用いて加熱することができる圧力吸引ろ過器中で予熱し、わずかに過圧で、硫酸凝縮液の量が明らかに少なくなるまで、過熱スチームをろ過ケークを通して導いた。
【0084】
【表3】

【0085】
実施例6
実施例5と同じ方法で洗浄を120℃で行った。次に、CaCO35重量%を加えることにより、ろ過ケーク中の残留酸の中和を行った。
【0086】
実施例7
いずれの場合も、鉄含量16.2%および遊離硫酸含量20.3%を有するろ過塩30gと、水7.5gとを、60℃より高い温度で糊状にして、種々の量の金属鉄と反応させた。そのために、平均粒子サイズ10μmを有する鉄粉末と粒子サイズ1〜2mmを有する鉄顆粒の両方を用いた。粒子サイズが大きくなるにつれて、鉄が完全に溶解するまでに必要な時間も増えた。
【0087】
表4は概要を示す。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例8
実施例7と同じ方法で反応を行った。残留酸含量4.09%を有する生成物を、微粉砕し、ろ過塩中の残留酸を、CaCO35重量%を加えることにより中和した。この方法で得られた粉末の水抽出物は、酸性の特性を全く示さなかった。
【0090】
実施例9
実施例1により製造した硫酸鉄(II)含有還元剤の、水と混合直後のセメントへの添加
セメントと水との混合は、TRGS 613(Technical Rules for Hazardous Substances) に記載されているサンプル調製の方法にしたがって行った。水とセメントとの混合に次いで、硫酸鉄(II)含有還元剤を加え、次に15分間攪拌した。
【0091】
可溶性クロムを測定するために、TRGS 613から外れて、5倍の量(しかし、セメント対水の比は同じ)を溶出し、溶解したクロムをICP-OESによって測定した。
【0092】
硫酸鉄(II)含有還元剤を0.10重量%以上の量加えた場合は、可溶性クロムの含量は検出限度を下回ることが分かる。
【0093】
【表5】

【0094】
比較として、従来の緑塩(=firm KRONOSの硫酸鉄(II)七水和物)を用いて試験を行った。
【0095】
【表6】

【0096】
従来の緑塩を0.10重量%以上の量加えた場合は、可溶性クロムの含量は検出限度であるかそれを下回ることが分かる。
【0097】
実施例10
実施例1により製造した硫酸鉄(II)含有還元剤の、水と混合直後のセメントへの添加
偏心タンブラー中で、添加剤として、種々の量(表7を参照)の硫酸鉄(II)含有還元剤を、粉砕セメントに加え、1時間混合した。次に、硫酸鉄(II)含有還元剤を入れたセメントサンプルを、気密法でシールした容器中で、室温で種々の長さの時間保管した。還元効果の試験を、TRGS 613にしたがって、セメントを水と混合することにより行った。しかし、TRGS 613から外れて、5倍の量(しかし、セメント対水の比は同じ)を溶出し、溶解したクロムをICP-OESによって測定した。
【0098】
【表7】

【0099】
従来の緑塩(KRONOS)0.30重量%を加えた場合、または硫酸鉄(II)含有還元剤0.60重量%以上を加えた場合、溶出液中のクロム制限値0.5mg/Lを超えなかった。さらに、硫酸鉄(II)含有還元剤0.60重量%を加えた場合、中間時間では高い含量が検出されたが、4週間の貯蔵の後で、可溶性クロムの含量は検出限度を下回ることが分かった。
【0100】
実施例11
実施例1により製造した硫酸鉄(II)含有還元剤(ろ過塩)のサンプルを、CaCO310重量%と混合した。
【0101】
セメント中のクロム酸塩還元に関する効果の測定
この方法で得られた硫酸鉄(II)含有還元剤の効果を測定するために、硫酸鉄(II)含有還元剤0.3、0.5、0.7、および1.0M%を、まず水溶性クロム酸塩含量14.31μgCr(VI)/gセメント[=14.31ppmCr(VI)]である試験セメントに加えた。次に、これらのクロム含量をTRGS 613の付録中の分析手引きにしたがって測定した。硫酸鉄(II)含有還元剤0.3%(Germanセメント中の硫酸Fe(II)配合物添加の平均添加量)の適用量で、還元の達成はわずかに低かった。適用量0.7%で、水溶性クロム酸塩の含量は、TRGS 613で挙げられた制限値2ppmをわずかに下回った。硫酸鉄(II)含有還元剤1.0%の適用量を試験セメントに加えた場合、水溶性クロム酸塩の含量は、検出限度を下回った。
【0102】
DIN EN 196-1による標準セメント圧縮強さの測定
DIN EN 196-1による4cm×4cm×16cm標準モルタル角柱を用いて、1、2、7、および28日の材齢で、標準セメント圧縮強さの測定を行った(1試験材齢当り6測定行った)。硫酸鉄(II)含有還元剤1.0%を、上述した試験セメントに加えた。硫酸鉄(II)含有還元剤を用いない試験セメントは、これにより参照として使用した。通常の圧縮強さ試験の結果は、両方のセメント(硫酸鉄(II)含有還元剤を使用および未使用)について、かなりの程度まで一致した。
【0103】
DIN EN196-3による凝固時間の測定
凝固の開始を測定するために、上述した試験セメントを、硫酸鉄(II)含有還元剤を使用および未使用で、再び用いた。硫酸鉄(II)含有還元剤1.0%の添加のために、凝固の開始および凝固の終わるための時間は、それぞれ3分の1だけ減る。この理由は、すでに硫酸塩キャリヤのために最適化されたセメント中の硫酸塩含量の著しい増加である。
【0104】
DIN EN196-3による水必要量の測定
上述したセメントは、硫酸鉄(II)含有還元剤の使用および未使用の両方で、DIN EN 196-3による通常のモルタル剛性を得るために同じ水必要量を有する。
【0105】
十分なクロム酸塩還元に必要な硫酸鉄(II)含有還元剤1.0%の極めて高い適用量で、使用する試験セメントの通常の圧縮強さおよび水必要量の技術的に関連する特性も影響を受けない。しかし、試験セメントの凝固時間は、硫酸鉄(II)含有還元剤のためにそれぞれ3分の1だけ減る。この迅速な凝固は、硫酸鉄(II)含有還元剤の適用量が高いせいで硫酸の電荷が増加するためである。
【0106】
実施例12
実施例11と同様に、CaCO310重量%をろ過塩に加えた。部分的に中和されたろ過塩と緑塩とを、1:1および2:1の比で混合し、これらの混合物0.5および0.7%を、実施例11で述べたように試験セメントに加えた。
【0107】
得られた混合物は、良好な流動学的性質を示した。水溶性クロム酸塩の含量は、両方の適用量(0.5%および0.7%)について、TRGS 613に明示されている制限値2ppmを下回った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を濃縮する工程、および得られた沈殿物から硫酸を分離する工程を含む、硫酸鉄(II)含有還元剤の製造方法。
【請求項2】
得られた沈殿物からの濃硫酸の分離を、ろ過によって行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
得られた沈殿物からの濃硫酸の分離を、沈降または遠心処理によって行うことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を、硫酸塩法による二酸化チタンの製造から得ることを特徴とする、請求項1〜3の1項記載の方法。
【請求項5】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を、金属酸洗法から得ることを特徴とする、請求項1〜3の1項記載の方法。
【請求項6】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸が、チタン含量1.5重量%未満、好ましくは0.8重量%未満であることを特徴とする、請求項1〜5の1項記載の方法。
【請求項7】
分離した沈殿物が、硫酸鉄(II)一水和物40〜60重量%、別の金属塩3〜10重量%、硫酸15〜30重量%、および水10〜13重量%を含有することを特徴とする、請求項1〜6の1項記載の方法。
【請求項8】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を、硫酸濃度50%を超えて濃縮することを特徴とする、請求項1〜7の1項記載の方法。
【請求項9】
硫酸鉄(II)含有使用済み硫酸を、硫酸濃度60〜80%に濃縮することを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
硫酸の分離の次に、分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、さらなる分離、部分中和、または中和によって行うことを特徴とする、請求項1〜9の1項記載の方法。
【請求項11】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、水、希酸、FeSO4飽和溶液、または希FeSO4含有水溶液での洗浄により行うことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項12】
洗浄を、分離した沈殿物に基づいて40〜500重量%の洗浄媒体で行うことを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
洗浄を55〜100℃の温度で行うことを特徴とする、請求項11または12の1項記載の方法。
【請求項14】
洗浄を55〜75℃の温度で行うことを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、圧縮空気で置換することにより、またはスチームで洗浄することにより行うことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項16】
洗浄を100℃より高い温度で行うことを特徴とする、請求項15記載の方法。
【請求項17】
洗浄を105〜130℃の温度で行うことを特徴とする、請求項16記載の方法。
【請求項18】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、分離した沈殿物と、水および金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物とを60℃より高い温度で反応させることにより行うことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項19】
反応を60〜110℃の温度で行うことを特徴とする、請求項18記載の方法。
【請求項20】
反応を75〜85℃の温度で行うことを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
分離した沈殿物中に含有される硫酸に基づいて、金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物、たとえば炭酸鉄(II)または水酸化鉄(II)または酸化鉄(II)の80〜98mol%を反応させ、硫酸鉄(II)に対する水のモル比が6.5〜7であるだけの水を添加することを特徴とする、請求項18〜20の1項記載の方法。
【請求項22】
平均粒子サイズ5mm以下である金属鉄を使用することを特徴とする、請求項18〜21の1項記載の方法。
【請求項23】
平均粒子サイズ100μm以下である金属鉄を使用することを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
分離した沈殿物と、金属鉄またはアルカリ性鉄(II)化合物との反応を、連続的に行い、鉄またはアルカリ性鉄化合物の未反応部分をオーバーフローから取り出して戻すことを特徴とする、請求項18〜23の1項記載の方法。
【請求項25】
鉄の取り出しを磁力選鉱機によって行うことを特徴とする、請求項24記載の方法。
【請求項26】
アルカリ性鉄(II)化合物を、天然鉱石、たとえばシデライトの形態で反応させることを特徴とする、請求項18〜21および24の1項記載の方法。
【請求項27】
アルカリ性鉄(II)化合物が、工業副生物の成分であることを特徴とする、請求項18〜21および24の1項記載の方法。
【請求項28】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減を、粉末状アルカリ化合物、特にCaCO3、CaO、Ca(OH)2、MgOおよび/またはMg(OH)2またはこれらのエラトリエーション(elutriation)、たとえば石灰水の添加による部分中和または中和によって行うことを特徴とする、請求項10記載の方法。
【請求項29】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減の次に、粉末状アルカリ化合物、特にCaCO3、CaO、Ca(OH)2、MgOおよび/またはMg(OH)2またはこれらのエラトリエーション、たとえば石灰水の添加により、分離した沈殿物中の残留酸の部分中和または中和を行うことを特徴とする、請求項10〜27の1項記載の方法。
【請求項30】
分離した沈殿物に付着する硫酸の量の低減の次に、または分離した沈殿物中の残留酸の部分中和もしくは中和の次に、所定量の水、塩水溶液、または希硫酸を添加し、そして造粒を行うことを特徴とする、請求項10〜29の1項記載の方法。
【請求項31】
添加する水の量が、分離した沈殿物中に含有される硫酸鉄(II)一水和物に基づいて100〜550mol%、好ましくは250〜350mol%であることを特徴とする、請求項30記載の方法。
【請求項32】
水の必要量を、湿った緑塩の添加から得ることを特徴とする、請求項31記載の方法。
【請求項33】
造粒および顆粒寸法の調節を、機械的形成によって、または空気の吹き込みにより、またはノズルもしくはロータリーディスクを用いる噴霧により、または冷却により行うことを特徴とする、請求項30〜32の1項記載の方法。
【請求項34】
請求項1〜33の1項記載の方法により製造できる、硫酸鉄(II)含有還元剤。
【請求項35】
平均結晶子寸法が2μm未満、好ましくは0.1〜1.0μm、特に好ましくは0.2〜0.5μmであることを特徴とする、請求項34記載の硫酸鉄(II)含有還元剤。
【請求項36】
チタン含量が鉄に基づいて5〜15重量%、および/またはマンガン含量が鉄に基づいて1.5〜4重量%であることを特徴とする、請求項34または35の1項記載の硫酸鉄(II)含有還元剤。
【請求項37】
セメント中の可溶性クロム酸塩含量を減らすための、請求項34〜36の1項記載の硫酸鉄(II)含有還元剤の使用。
【請求項38】
硫酸鉄(II)含有還元剤0.01〜5.0重量%、好ましくは0.2〜1.5重量%を、セメントに添加することを特徴とする、請求項37記載の使用。
【請求項39】
硫酸鉄(II)含有還元剤を、粉末セメントに、微粉砕の後、およびパッケージまたはばら荷容器または輸送容器に充填する前または充填する時に、添加することを特徴とする、請求項37または38の1項記載の使用。
【請求項40】
粉末セメントとの混合後、貯蔵時間が増えるにつれて、硫酸鉄(II)含有還元剤の還元効果が、少なくとも一時的に高くなることを特徴とする、請求項37〜39の1項記載の使用。
【請求項41】
硫酸鉄(II)含有還元剤を、水と混合する時、またはその直前、またはその直後にセメントに添加する、使用する時に硫酸鉄(II)含有還元剤をまずセメントに添加することを特徴とする、請求項37〜40の1項記載の使用。
【請求項42】
硫酸鉄(II)含有還元剤を、懸濁液または溶液の形態で添加することを特徴とする、請求項41記載の使用。
【請求項43】
硫酸鉄(II)含有還元剤を、緑塩と共にまたは緑塩との混合物で使用することを特徴とする、請求項37〜42の1項記載の使用。
【請求項44】
請求項34〜36の1項以上によって定義された硫酸鉄(II)含有還元剤を、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.2〜1.5重量%含有することを特徴とする、セメントおよび水溶性金属硫酸塩の配合物。
【請求項45】
請求項34〜36の1項以上によって定義された硫酸鉄(II)含有還元剤を、セメントに基づいて、0.01〜5.0重量%、好ましくは0.2〜1.5重量%含有することを特徴とする、セメント、水、および水溶性金属硫酸塩の配合物。

【公表番号】特表2009−500268(P2009−500268A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519890(P2006−519890)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007940
【国際公開番号】WO2005/009917
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(506018329)カー−マックギー・ピグメンツ・ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】KERR−MCGEE PIGMENTS GMBH
【Fターム(参考)】