セメントベースの材料を内部硬化する方法
【課題】セメントまたはコンクリート構造体の内部収縮又は自己収縮を低減する方法を提供する。
【解決手段】セメント質材料に0.01〜0.45の置換度を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースを添加する。このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セルロース繊維100gあたり10〜150ミリ当量の置換基含量を有する。このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である。
【解決手段】セメント質材料に0.01〜0.45の置換度を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースを添加する。このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セルロース繊維100gあたり10〜150ミリ当量の置換基含量を有する。このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、セメントベースの材料を内部硬化する方法および材料、ならびにそれにより得られる生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の建築物は、従来のコンクリートから高性能コンクリートに至る様々な形態のコンクリートを使用している。用いられるコンクリートのタイプは、その用途と必要とされる強度に依存すると考えられる。従来のコンクリートは、30〜50メガパスカル(MPa)の範囲の強度を有し、高性能コンクリートは、200〜400MPaの範囲の強度を有する。また、コンクリートにおける水の取り扱いも様々である。従来のコンクリートにおいて、水セメント比(w/cm)は0.4〜0.6であるが、高性能コンクリートにおいて、水セメント比は0.2〜0.3である。これは、高性能コンクリート中の添加剤のためである。水セメント比を低くすることによって、コンクリートの強度が大きくなる。
【0003】
しかし、水セメント比が低いと自己収縮の懸念が生じる。自己収縮は、内部収縮である。セメントまたはコンクリート構造体は、元の水分およびセメント材料エレメントの体積よりも体積が小さくなる。それらは硬化すると収縮する。セメントまたはコンクリート構造体の初期硬化の段階ではセメントまたはコンクリートは流体であるため、収縮する可能性がある。セメントまたはコンクリートが施工されて凝固するにつれて、その収縮する能力は小さくなる。セメントまたはコンクリートの構造体内部に水分が不足することにより、内部または自己収縮が起こるが、全体の構造体は小さくならない。これにより、ひび割れが起こったり硬化または強度の成長が不十分になったりする。このような構造体が凝固する際に、外側から内部部分に水分を供給する方法はない。
【発明の概要】
【0004】
内部収縮または自己収縮を回避するために、セメントまたはコンクリート構造体内部に水分を提供する必要性がある。
また、セメントと水との混合物の初期の粘稠度を維持し、仕様書の範囲内の初期硬化時間を維持し、さらに一般的な範囲内の最終硬化時間を維持しながら水分を提供する必要性もある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率100倍)。
【図2】図2は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率1000倍)。
【図3】図3は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図4】図4は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率100倍)。
【図5】図5は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率1000倍)。
【図6】図6は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図7】図7は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよびコントロールに関して、セメントペーストの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図8】図8は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよびコントロールに関して、セメントペーストの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図9】図9は、1%のフィブリル化カルボキシメチルセルロース添加レベルにおけるセメントペーストおよびモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図10】図10は、1%のフィブリル化カルボキシメチルセルロース添加レベルにおけるセメントペーストおよびモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図11】図11は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよび3種のコントロールに関するモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図12】図12は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよび3種のコントロールに関するモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図13】図13は、多数のセメント質混合物の圧縮強度と経過時間との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図15】図15は、カルボキシメチルセルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図16】図16は、カルボキシエチルセルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図17】図17は、リン酸化セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図18】図18は、硫酸化セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図19】図19は、セルロースエチルスルホン酸分子の1つの単位の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、セメント質材料構造体、セメント、コンクリートまたは高性能コンクリート中に含水性材料を置いて、それを硬化プロセス中に必要に応じて戻すことを提唱している。含水性材料は、セメント質材料から過量の水を吸収し、さらに、硬化サイクル中にセメントまたはコンクリートに水を戻すものと考えられる。
【0007】
含水性材料は、低い置換度(DS)0.01〜0.45を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースである(以降、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、フィブリル化低DSアルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化低DSリン酸化セルロース、または、フィブリル化低DS硫酸化セルロースという)。置換度は、セルロース誘導体由来のセルロースポリマーにおける、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の平均モル数である。このセルロース繊維は、漂白されていてもよいし、または、部分的に漂白されていてもよい。部分的に漂白された繊維は、約8のカッパー価を有するか、または、未漂白の白色度が55〜65のGE白色度を有すると思われる。
【0008】
低DSカルボキシアルキルセルロースは、低DSカルボキシメチルセルロースまたは低DSカルボキシエチルセルロースのどちらであってもよい。低DSアルキルスルホン酸セルロースは、低DSセルロースエチルスルホン酸または低DSプロピルスルホン酸のどちらであってもよい。
【0009】
図14にセルロースの1つの単位の構造を示し、図15および16にカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースの1つの単位の構造を示す。これらの図に記載された1〜6という数は炭素原子の位置である。またカルボキシアルキルセルロースは、6位に加えて、または、6位の代わりに、2位および/または3位に結合した酸素に結合していてもよい。カルボキシアルキルセルロースはよく知られており、その製造方法もよく知られている。
【0010】
使用し得る他の材料は、フィブリル化アルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化リン酸化セルロースまたはフィブリル化硫酸化セルロースである。これらも0.01〜0.45のDSを有すると考えられる。これらはよく知られた反応によって作製することができる。リン酸化は、リン酸と、適切な触媒、例えば尿素とを用いて行うことができる。硫酸化は、硫酸および酢酸を用いて達成することができる。これらはいずれもエステルであり、エステルを作製する標準的な反応によって製造してもよい。図17および18にこれらの化学構造を示す。ここでもリン酸基および硫酸基が、6位に加えて、または、6位の代わりに、2位および/または3位に結合した酸素に結合していてもよい。図19は、無水グルコース単位の6位におけるセルロースエチルスルホン酸エーテル官能基の構造を示す。これは、標準的なエーテル反応を用いて製造することができる。これもまた、上述したように2位および/または3位に結合していてもよい。
【0011】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロースが、セメント質混合物におけるこれらの材料およびそれらの使用の実施例として使用される。
このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、0.01〜0.45のDSを有する未フィブリル化繊維に水中で高い剪断力をかけて、未フィブリル化繊維を解繊して以下のフィブリル化材料にすることによって製造される。適用されたエネルギーおよびフィブリル化の方法によってフィブリル化のレベルが決まる。低DSの未フィブリル化繊維を低エネルギーでフィブリル化すると、まずナノおよびマイクロフィブリルのシート状断片またはその他の集合体が形成される。高エネルギーのフィブリル化により、単体化されたナノおよびマイクロフィブリルが形成される。単体化されたナノもしくはマイクロフィブリルまたは絡み合ったナノまたはマイクロフィブリルのシート状断片またはその他の集合体(以下、エレメントともいう)は、セメントから水を除去して、硬化サイクル中にセメントまたはコンクリートに水を戻すのに適している。このような0.01〜0.45のDSを有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースはこれらのエレメントを1またはそれより多く有していてもよい。またこのようなエレメントは互いに付着していてもよい。カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはカルボキシエチルセルロースのどちらであってもよい。ナノおよびマイクロというサイズは、フィブリルの幅を意味する。ナノフィブリルは、定義によれば幅が100nm未満である。マイクロフィブリルは、幅が100nm〜4000nmの範囲である。カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、長さに対する幅の比(アスペクト比)が大きいフィブリルに剪断されるか、または、引き離される。このようなフィブリルが互いに繋がってクモの巣状の材料を形成してもよい。図1〜6に典型的なフィブリル化カルボキシメチルセルロースを示す。リン酸化セルロース、スルホアルキルセルロースおよび硫酸化セルロースは似たような外観を有すると思われる。
【0012】
約0.45未満のDSを有するカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースは水溶性ではないため、水と高剪断で混合することによってフィブリル化することができる。
【0013】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、フィブリル化アルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化リン酸化セルロースまたはフィブリル化硫酸化セルロースの目的は、セメント質材料中でカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース繊維をよりよく分配し、フィブリル化されていない化学修飾セルロース繊維と混合されたときによくみられる湿ったコンクリートの流動性を阻害する作用を抑えることである。
【0014】
漂白セルロース含有木材パルプ繊維は、典型的には、セルロース繊維100gあたり5ミリ当量(ミリ当量/100g)またはそれ未満のカルボキシル含量を有する。酸化されたセルロース繊維は、セルロース繊維中に、約150ミリ当量/100gのカルボキシル基を有する可能性がある。しかしながらこれは、難しく費用がかかるプロセスである。繊維100gあたり100〜150ミリ当量またはそれより多くの上記官能基を得るためには、カルボキシアルキル基、または、アルキルスルホン酸基、または、リン酸基、または、硫酸基を付加するほうが、より簡単で効率的である。
【0015】
フィブリル化低DSカルボキシメチルセルロース、フィブリル化低DSアルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化低DSリン酸化セルロース、および、フィブリル化硫酸化セルロースは、セメント質のマトリックス中で、未フィブリル化繊維よりも良好に分散させることができ、さらに、それほど多くの流動化剤を用いなくてもよいより実用的な混合物を提供することができる。
【0016】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、漂白セルロースまたは部分的に漂白したセルロース含有木材パルプ繊維と混合されてもよく、このようなセルロースは、規則的なサイズを有していてもよいし、または、ナノまたはマイクロサイズのフィブリルにフィブリル化されていてもよい。このようなセルロース繊維とカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースとの混合物は、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースとセルロース繊維とを剪断しながら混合することによって形成される。
【0017】
セルロース繊維とフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースの混合物を用いる場合、セルロース繊維は、分散液からある程度のフィブリル化カルボキシアルキルセルロースを吸収する。一実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、10〜100ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、10〜50ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、20〜40ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、25〜30ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、50〜150ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが用いられる場合、これらと同じ量がアルキルスルホン酸基、リン酸基および硫酸基にも適応されると考えられる。
【0018】
セルロースは、全て1−4位を介してβ結合したグルコース単位の長鎖からなる炭水化物ポリマーである。図4にセルロースの構造を示す。天然の植物セルロース分子は、図4に示される無水グルコース単位を2200個よりも多く有する場合がある。単位の数は、一般的には重合度と称され、または単にDPとも称される。セルロース精製中にある程度は重合度が低下する。例えば、木材をパルプにしてセルロースを得て、それを木材中のリグニンやある種のヘミセルロースから分離するためのケミカルパルプ化プロセスを用いたような場合に、重合度が低下する。最終的なパルプのDPは、用いられるパルプ化プロセスによって決まると考えられる。
【0019】
セルロースの無水グルコース単位中の2位および3位における二次的なヒドロキシル基、および、6位における一次的なヒドロキシル基のそれぞれの水素原子を除去して、カルボキシメチル基、アルキルスルホン酸、リン酸基または硫酸基で置き換えることもできる。このようなプロセスおよび変換を行う反応は、置換として知られている。繊維の形態のセルロースがアルコール/水の混合物中で水酸化ナトリウムのような塩基を用いてカルボキシアルキル化される場合、カルボキシアルキル化は主に6位で起こる。
【0020】
全てのセルロース分子鎖の無水グルコース単位が、カルボキシアルキル化されるとは限らない。誘導体化セルロース分子のカルボキシアルキル含量の存在量は、カルボキシアルキルセルロース繊維のカルボキシアルキル含量によって決定されると考えられる。置換度は、セルロースポリマー中の、反応してセルロース誘導体を形成することができるヒドロキシル基のモルの平均数である。これは、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロースエチルスルホン酸、セルロースプロピルスルホン酸、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの場合についても同様である。
【0021】
カルボキシアルキル化、アルキルスルホン化、リン酸化または硫酸化セルロース含有木材パルプ繊維は、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基を介してセルロース分子に結合した側鎖を有さない。これらの低DSセルロース誘導体のナトリウム、カリウム、アンモニウム塩は、本願にとって最も適している。
【0022】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、それらのナトリウム、カリウム、または、アンモニウム塩として、セメント質材料に包含される。一実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.1〜5質量%を構成する。セメント質材料の質量は、セメントの乾燥基準に基づく質量であり、またシリカフュームが用いられる混合物中のシリカフュームの乾燥基準に基づく質量でもある。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.5〜3質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の1〜2質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.1〜1質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.25〜0.75質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.4〜0.6質量%を構成する。
【0023】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースのみを用いる場合、同じフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維とを含む同じ性能を有する混合物と比較してより少ない量で十分であると考えられる。セメントおよびコンクリートにおいて、低DSカルボキシアルキルセルロースそのものを用いるほうが、低DSカルボキシアルキルセルロースおよびセルロース繊維を用いるよりも実用的である。これは、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化および硫酸化セルロースについても同様である。
【0024】
木材パルプ繊維用の木材はあらゆる針葉樹または広葉樹であってもよく、例えばマツ、トウヒ、カラマツ、ベイマツ、モミ、ベイツガ、ヒマラヤスギ、アメリカスギ、アスペン、シナノキ、ブナノキ、カバノキ、ハコヤナギ、ゴムの木、カエデ、トネリコ、クリの木、ニレ、または、ユーカリが挙げられる。これらは例えばクラフト法または亜硫酸塩を用いた方法などのあらゆる標準的なパルプ化プロセスでパルプ化することができる。木材パルプ繊維は、あらゆる標準的な漂白プロセスによって漂白される。
【0025】
セメント硬化にとって有害となる可能性があるヘミセルロースおよびリグニンを除去するために、上記繊維はパルプ化され、漂白されるかまたは部分的に漂白される。
このようなフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、水およびセメント質混合物に添加される。
【0026】
使用することができるセメントベースの材料の具体的な例としては、アルミナセメント、高炉セメント、アルミン酸カルシウムセメント、タイプIポルトランドセメント、タイプIAポルトランドセメント、タイプIIポルトランドセメント、タイプIIAポルトランドセメント、タイプIIIポルトランドセメント、タイプIIIA、タイプIVポルトランドセメント、タイプVポルトランドセメント、水硬性セメント、例えば白色セメント、グレイセメント、混合水硬性セメント、タイプIS−ポルトランド高炉スラグセメント、タイプIPおよびタイプP−ポルトランド−ポゾランセメント、タイプS−スラグセメント、タイプI(PMYポゾラン改質ポルトランドセメント、および、タイプI(SM)−スラグ改質ポルトランドセメント、タイプGU−混合水硬性セメント、タイプHE−混合、タイプMS−中耐硫酸塩セメント、タイプHS−高耐硫酸塩セメント、タイプMH−中庸熱水和セメント、タイプLH−低熱水和セメント、タイプK膨張セメント、タイプO膨張セメント、タイプM膨張セメント、タイプS膨張セメント、硬化時間が調節されたセメント、超早強セメント、鉄高含有セメント(high iron cement)および油井用セメント、さらにコンクリート繊維セメントを堆積させたもの(concrete fiber cement deposit)、ならびに上記で列挙したセメントのいずれかを含むあらゆる複合材が挙げられる。
【0027】
様々なタイプのセメントを米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)のC−150規格によって特徴付けることができる。例えばタイプIポルトランドセメントは、あらゆる用途に適した汎用セメントである。これは、例えば建物、橋梁、路面、舗道およびその他のプレキャストコンクリート製品などの一般的な建築計画で用いられる。タイプIAポルトランドセメントはタイプIに類似しているが、さらに空気連行特性を有する。タイプIIポルトランドセメントは、比較的遅い速度で少ない熱しか生じず、さらに硫酸塩による攻撃に対して適度な耐性を有する。タイプIIAポルトランドセメントはタイプIIと同じであるが、さらに空気連行特性を有する。タイプIIIポルトランドセメントは高性能または早強セメントであり、コンクリートを硬化させ迅速に強度を増す。タイプIIIは、タイプIと化学的および物理的に類似しているが、その粒子がさらに細かくすりつぶされている。タイプIIIAは、空気連行型の早強セメントである。タイプIVポルトランドセメントは、低い水和熱を有し、その他のセメントタイプと比較してゆっくり強度を高めることから、熱が逃げる機会がほとんどないダムやその他の大きなコンクリート構造体での使用に好ましい。タイプVポルトランドセメントは、過酷な硫酸塩の作用に晒されると予想されるコンクリート構造体にのみ用いられ、主に、硫酸塩含量が高い土壌や地下水にコンクリートが晒されるような場合に用いられる。
【0028】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロースパルプ繊維は、セメント質混合物または標準的なコンクリート混合物と比較して含水量が少ない高性能コンクリートにおいて有用である。
【0029】
このようなセメントベースの材料は、本発明の開示に関連する分野の当業者によく知られているようなその他の構成要素または充填剤を含んでいてもよく、例えば、様々な種類のコンクリートを形成するために使用されるものを含んでいてもよい。例えば上記セメントベースの材料は、骨材、空気連行剤、緩染剤、促進剤、例えば触媒、可塑剤、腐食抑制剤、アルカリとシリカとの反応性を減少させる物質、結合剤、着色剤などを含んでいてもよい。本明細書で用いられる「骨材」は、特に他の指定がない限り、砂、砂利、砕石またはシリカフュームのような顆粒状の物質を意味する。骨材は、細骨材と粗骨材に分けることができる。細骨材の例としては、天然の砂、砕石またはシリカフュームなどであって、ほとんどの粒子が8分の3インチ(9.5mm)の篩を通過するものが挙げられる。粗骨材の例としては、約0.19インチ(4.75mm)よりも大きい粒子が挙げられるが、一般的には直径が約8分の3インチ〜約1.5インチ(9.5mm〜37.5mm)の範囲であり、例えば砂利である。天然の砂利や砂のような骨材は、採鉱、河川、湖または海底から採掘または浚渫することができる。粉砕された骨材は、採石場の岩、巨礫、大礫または大型の砂利を粉砕することによって製造することができる。その他の骨材原料の例としては、再生コンクリート、粉砕されたスラグ、粉砕された鉄鉱、または、膨張(すなわち熱処理した)粘土、頁岩、または、粘板岩が挙げられる。
【0030】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロースリン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、以下の手順でセメント質材料に添加することができる。
(a) フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロースリン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維を水中で混合して分散させる。
(b) 分散させた後、水中の分散液に超可塑剤(SP)を添加してもよい。
(c) このセメント質材料に、水、フィブリル化材料、SP、および場合によってはセルロース繊維の混合物を添加してそこに浸漬させる。時間は、30秒である。
(d) これらの成分を低速で混合する。時間はバッチの体積によって決定される。時間は最短で1分であり、1分〜5分であってもよい。
(e) 作業性を改善するために、この混合物に必要に応じて追加の量の流動化剤をゆっくり添加する。
(f) このバッチを高速で混合する。ここでも時間は混合物の体積によって決定される。時間は最短で1分であり、1分〜5分であってもよい。
(g) 作業性をさらに改善するために、この混合物に必要に応じてさらに追加の流動化剤をゆっくり添加する。
(h) この混合物を30秒静置する(この工程は任意である)。
(i) この混合物をさらに高速で混合する(最短で1分であり、1分〜5分であってもよい)。
(j) 作業性をさらに改善するために、この混合物に必要に応じてさらに追加の流動化剤をゆっくり添加する。
【0031】
フィブリル化材料またはフィブリル化材料と混合されたセルロース繊維の量を多くすると、必要となる流動化剤の量も多くなる可能性がある。繊維はセメント質混合物の流動性を減少させるために添加され、流動化剤は流動性を高めるために添加される。添加される繊維が多ければ、流動性の減少率もより大きくなり、さらに流動性を通常に戻すのに必要とされる流動化剤も多くなる。繊維は、セメント質混合物の質量の約0.5%、セメント質混合物の0.35〜0.65%で添加すれば、必要とされる流動化剤の量を最小に出来ると考えられる。フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースだけを使用すれば、流動化剤の必要性は低くなるものと考えられる。
【0032】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、または、フィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維によって、セメント質混合物にカルボキシアルキルが含まれるようになる。カルボキシアルキル基のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩は、セメント中で水を保持し、制御された方法でそれを放出する。これは、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロース、および、硫酸化セルロースについても同様である。またアルキルスルホン酸セルロース、リン酸および硫酸基のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩も水を保持して放出することができる。
【0033】
一実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜600ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜60ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜500ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜50ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜400ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜40ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜1500ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜150ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。
【0034】
セルローススルホン酸材料、リン酸化材料および硫酸化材料に同様のミリ当量のアルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基が含まれるとも考えられる。
より少量のフィブリル化カルボキシアルキルセルロースまたはフィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維だけでも、繊維100gあたり同じミリ当量数のカルボキシアルキル基を含む繊維を提供できる場合もある。カルボキシアルキル含量が20ミリ当量/100gのフィブリル化カルボキシアルキルセルロースサンプルは、カルボキシアルキル含量が40ミリ当量/100gのフィブリル化カルボキシアルキルセルロースサンプルのカルボキシアルキル基の半分を含み、すなわちセメント質混合物に同じカルボキシアルキル含量を提供するのに2倍多くの材料が必要となる。これも、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースおよび硫酸化セルロースについても同様である。
【0035】
セメントまたはコンクリート硬化中の重要な期間は、初期の7日である。また、初期の2日が重要な期間であることも見出されている。初期硬化期間中に起こるひび割れは、セメントまたはコンクリートの長期耐久性にとって有害である
フィブリル化カルボキシアルキルセルロースまたはフィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維の添加は、圧縮強度に影響を与えない。圧縮強度の傾向は変化しない。
【実施例】
【0036】
実験1
漂白セルロース繊維を用いて製造した低DSカルボキシメチルセルロース繊維(OD:オーブンで乾燥、置換度0.45)45gを、脱イオン水2500ml中で、Waringブレンダーを用いて5000RPMで30分間、フィブリル化した。この手順を10回繰り返し、水25リットル中に低DSのCMCフィブリル(OD)450.0gを得た。低DSのCMC450.0gを含む水性分散液25リットルを大型のHobartミキサー中に入れた。この分散液に漂白セルロース繊維(OD)2050gを添加し、2時間十分に混合した。この混合物のカルボキシアルキルレベルは、36ミリ当量/100gと測定された。
【0037】
実験2
漂白セルロース繊維を用いて製造した低DSカルボキシメチルセルロース繊維(OD、置換度0.45)65.0gを、脱イオン水3500ml中で、Waringブレンダーを用いて5000RPMで30分間、フィブリル化した。この手順を5回繰り返し、水17.5リットル中にOD低DSのCMCフィブリル325.0gを得た。低DSのCMC325.0gを含む水性分散液17.5リットルを大型のHobartミキサー中に入れた。この分散液にOD漂白セルロース繊維925.0gを添加し、2時間十分に混合した。この混合物のカルボキシアルキルレベルは、48ミリ当量/100gと測定された。
【0038】
2種の異なるフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルを試験した。サンプル4は、36.93ミリ当量/100gのカルボキシアルキルレベルを有し、サンプル12は、48.34ミリ当量/100gのカルボキシアルキルレベルを有するものであった。いずれのサンプルも置換度は0.45であった。それぞれ、セメント質混合物の質量の0.25%、0.5%および1%の割合で添加して試験した。
【0039】
サンプル4およびサンプル12の両方について、表1にペースト状混合物を示す。サンプル4およびサンプル12の両方について、表2にモルタル状混合物を示す。
以下の試験において、混合の作業性を維持するために流動化剤を添加した。セメントは、タイプ1のポルトランドセメントであった。モルタル状混合物には砂も含まれる。以下の表において、MCは繊維の含水量であり、kはセメントの内部硬化に利用可能な繊維中の水分量であり、SFはシリカフュームであり、SPは流動化剤であり、w/cmは水のセメント質材料に対する比率であり、we/cm*はセメント質材料に対する持ち込まれた水の比率である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
混合手順は以下の通りである。
(a)試験される繊維を水中で混合して分散させた。
(b)繊維を水中に分散させた後に、超可塑剤を添加した。
(c)このセメント質材料に、水、繊維および流動化剤の混合物を添加して、そのまま30秒間浸漬させた。
(d)このバッチを低速で1分間混合した。混合しながらモルタル用の砂を添加した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
(e)このバッチを中程度の速度で少なくとも1分間混合した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
(f)流動性を測定した。
(g)このバッチを中程度の速度で1分間さらに混合した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
【0043】
この混合物を振盪し、ASTM−C109の立方体圧縮試験に関する条件に従って自己収縮サンプル用の鋳型に充填しながら軽くたたいて鋳型に詰めた。
表3で、この実験内容を記載する。
【0044】
【表3】
【0045】
自己収縮試験
自己の歪みは、O.M. Jensen and P.F. Hansen “A dilatometer for measuring autogenous shrinkage deformation in hardening cement paste”, Materials and Structures, 1995, 28(181):406-409に記載されているようにして測定した。試料の質量を量り、波形のポリエチレンチューブ中に密封し、周囲温度で保存した。自己の直線状の歪みの測定を連続的にモニターし、14日間記録した。初期の測定は、混合物ごとにASTM−C191で測定された最終硬化期間になされた。混合物ごとに3つの試料を試験した。表5に結果を示す。
【0046】
ペーストおよびモルタル双方に関する異なる混合物の自己収縮を長期にわたり測定し、コントロールと比較した。
図7および8にペーストの結果を示す。図7はサンプル4の結果を示し、図8はサンプル12の結果を示す。双方をコントロールと比較した。サンプル4に関する自己収縮はいずれの添加率においても初期の2日間はほぼ同じであったが、その後に多少の差がみられたことが記録された。全ての添加率でコントロールよりも優れていた。サンプル12については差がみられた。1%添加は、その他2つの添加率よりも優れた性能を示した。いずれの添加率もコントロールよりも優れた性能を示した。
【0047】
図9は、長期にわたる実施例5(モルタル)および実施例6(ペースト)の自己収縮の比較である。いずれもサンプル4であり、添加率は1%である。
図10は、実施例9(モルタル)および実施例10(ペースト)の自己収縮の長期にわたる比較である。いずれもサンプル12であり、添加率は1%である。
【0048】
図11および12にモルタルの結果を示す。
自己収縮に対する様々なGP5添加率の効果も試験した。図2に添加率に関する結果を示す。GP5を2%添加した場合の効果は、図1に記載したPLWA添加と類似していた。繊維2%添加は、大量の流動化剤が必要となる。従って、繊維0.5%添加でも、繊維2%添加の場合と同量のカルボキシアルキル基を提供できるようにすることが目標である。これは40ミリ当量/100gのカルボキシアルキル含量またはそれより多くのカルボキシアルキル基を有する繊維を用いることになる。
【0049】
40ミリ当量/100gまたはそれより高いカルボキシアルキル含量を有する繊維を作製することができる。40ミリ当量/100gまたはそれより高いカルボキシアルキル含量を有する繊維の自己収縮が、GP5の2%添加と類似した自己収縮を示すと考えられる。
【0050】
また、繊維を添加した場合の圧縮強度も測定した。図13に結果を示す。繊維の添加は、圧縮強度に強い影響を与えなかった。
具体的な言葉で本発明の好ましい実施態様を説明したが、このような記述は単に説明のためである。用いられた言葉は、限定するためではなく、説明のための言葉である。当然のことながら、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の本質または範囲から逸脱しない限り、当業者によって変更ないし変動されてもよい。添付の特許請求の範囲に記載の本質および範囲は、本明細書に記載された好ましい態様の説明に限定されない。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、セメントベースの材料を内部硬化する方法および材料、ならびにそれにより得られる生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の建築物は、従来のコンクリートから高性能コンクリートに至る様々な形態のコンクリートを使用している。用いられるコンクリートのタイプは、その用途と必要とされる強度に依存すると考えられる。従来のコンクリートは、30〜50メガパスカル(MPa)の範囲の強度を有し、高性能コンクリートは、200〜400MPaの範囲の強度を有する。また、コンクリートにおける水の取り扱いも様々である。従来のコンクリートにおいて、水セメント比(w/cm)は0.4〜0.6であるが、高性能コンクリートにおいて、水セメント比は0.2〜0.3である。これは、高性能コンクリート中の添加剤のためである。水セメント比を低くすることによって、コンクリートの強度が大きくなる。
【0003】
しかし、水セメント比が低いと自己収縮の懸念が生じる。自己収縮は、内部収縮である。セメントまたはコンクリート構造体は、元の水分およびセメント材料エレメントの体積よりも体積が小さくなる。それらは硬化すると収縮する。セメントまたはコンクリート構造体の初期硬化の段階ではセメントまたはコンクリートは流体であるため、収縮する可能性がある。セメントまたはコンクリートが施工されて凝固するにつれて、その収縮する能力は小さくなる。セメントまたはコンクリートの構造体内部に水分が不足することにより、内部または自己収縮が起こるが、全体の構造体は小さくならない。これにより、ひび割れが起こったり硬化または強度の成長が不十分になったりする。このような構造体が凝固する際に、外側から内部部分に水分を供給する方法はない。
【発明の概要】
【0004】
内部収縮または自己収縮を回避するために、セメントまたはコンクリート構造体内部に水分を提供する必要性がある。
また、セメントと水との混合物の初期の粘稠度を維持し、仕様書の範囲内の初期硬化時間を維持し、さらに一般的な範囲内の最終硬化時間を維持しながら水分を提供する必要性もある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率100倍)。
【図2】図2は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率1000倍)。
【図3】図3は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図4】図4は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率100倍)。
【図5】図5は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率1000倍)。
【図6】図6は、その他のフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルの顕微鏡写真である(倍率10000倍)。
【図7】図7は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよびコントロールに関して、セメントペーストの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図8】図8は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよびコントロールに関して、セメントペーストの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図9】図9は、1%のフィブリル化カルボキシメチルセルロース添加レベルにおけるセメントペーストおよびモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図10】図10は、1%のフィブリル化カルボキシメチルセルロース添加レベルにおけるセメントペーストおよびモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図11】図11は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよび3種のコントロールに関するモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図12】図12は、フィブリル化カルボキシメチルセルロースの3種の添加レベルおよび3種のコントロールに関するモルタルの長さの変化と経過時間との関係を示すグラフである。それぞれの図は、異なるカルボキシメチルレベル(ミリ当量/100g)で示される。
【図13】図13は、多数のセメント質混合物の圧縮強度と経過時間との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図15】図15は、カルボキシメチルセルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図16】図16は、カルボキシエチルセルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図17】図17は、リン酸化セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図18】図18は、硫酸化セルロース分子の1つの単位の模式図である。
【図19】図19は、セルロースエチルスルホン酸分子の1つの単位の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、セメント質材料構造体、セメント、コンクリートまたは高性能コンクリート中に含水性材料を置いて、それを硬化プロセス中に必要に応じて戻すことを提唱している。含水性材料は、セメント質材料から過量の水を吸収し、さらに、硬化サイクル中にセメントまたはコンクリートに水を戻すものと考えられる。
【0007】
含水性材料は、低い置換度(DS)0.01〜0.45を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースである(以降、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、フィブリル化低DSアルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化低DSリン酸化セルロース、または、フィブリル化低DS硫酸化セルロースという)。置換度は、セルロース誘導体由来のセルロースポリマーにおける、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の平均モル数である。このセルロース繊維は、漂白されていてもよいし、または、部分的に漂白されていてもよい。部分的に漂白された繊維は、約8のカッパー価を有するか、または、未漂白の白色度が55〜65のGE白色度を有すると思われる。
【0008】
低DSカルボキシアルキルセルロースは、低DSカルボキシメチルセルロースまたは低DSカルボキシエチルセルロースのどちらであってもよい。低DSアルキルスルホン酸セルロースは、低DSセルロースエチルスルホン酸または低DSプロピルスルホン酸のどちらであってもよい。
【0009】
図14にセルロースの1つの単位の構造を示し、図15および16にカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースの1つの単位の構造を示す。これらの図に記載された1〜6という数は炭素原子の位置である。またカルボキシアルキルセルロースは、6位に加えて、または、6位の代わりに、2位および/または3位に結合した酸素に結合していてもよい。カルボキシアルキルセルロースはよく知られており、その製造方法もよく知られている。
【0010】
使用し得る他の材料は、フィブリル化アルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化リン酸化セルロースまたはフィブリル化硫酸化セルロースである。これらも0.01〜0.45のDSを有すると考えられる。これらはよく知られた反応によって作製することができる。リン酸化は、リン酸と、適切な触媒、例えば尿素とを用いて行うことができる。硫酸化は、硫酸および酢酸を用いて達成することができる。これらはいずれもエステルであり、エステルを作製する標準的な反応によって製造してもよい。図17および18にこれらの化学構造を示す。ここでもリン酸基および硫酸基が、6位に加えて、または、6位の代わりに、2位および/または3位に結合した酸素に結合していてもよい。図19は、無水グルコース単位の6位におけるセルロースエチルスルホン酸エーテル官能基の構造を示す。これは、標準的なエーテル反応を用いて製造することができる。これもまた、上述したように2位および/または3位に結合していてもよい。
【0011】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロースが、セメント質混合物におけるこれらの材料およびそれらの使用の実施例として使用される。
このようなフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、0.01〜0.45のDSを有する未フィブリル化繊維に水中で高い剪断力をかけて、未フィブリル化繊維を解繊して以下のフィブリル化材料にすることによって製造される。適用されたエネルギーおよびフィブリル化の方法によってフィブリル化のレベルが決まる。低DSの未フィブリル化繊維を低エネルギーでフィブリル化すると、まずナノおよびマイクロフィブリルのシート状断片またはその他の集合体が形成される。高エネルギーのフィブリル化により、単体化されたナノおよびマイクロフィブリルが形成される。単体化されたナノもしくはマイクロフィブリルまたは絡み合ったナノまたはマイクロフィブリルのシート状断片またはその他の集合体(以下、エレメントともいう)は、セメントから水を除去して、硬化サイクル中にセメントまたはコンクリートに水を戻すのに適している。このような0.01〜0.45のDSを有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースはこれらのエレメントを1またはそれより多く有していてもよい。またこのようなエレメントは互いに付着していてもよい。カルボキシアルキルセルロースは、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはカルボキシエチルセルロースのどちらであってもよい。ナノおよびマイクロというサイズは、フィブリルの幅を意味する。ナノフィブリルは、定義によれば幅が100nm未満である。マイクロフィブリルは、幅が100nm〜4000nmの範囲である。カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、長さに対する幅の比(アスペクト比)が大きいフィブリルに剪断されるか、または、引き離される。このようなフィブリルが互いに繋がってクモの巣状の材料を形成してもよい。図1〜6に典型的なフィブリル化カルボキシメチルセルロースを示す。リン酸化セルロース、スルホアルキルセルロースおよび硫酸化セルロースは似たような外観を有すると思われる。
【0012】
約0.45未満のDSを有するカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシエチルセルロースは水溶性ではないため、水と高剪断で混合することによってフィブリル化することができる。
【0013】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、フィブリル化アルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化リン酸化セルロースまたはフィブリル化硫酸化セルロースの目的は、セメント質材料中でカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース繊維をよりよく分配し、フィブリル化されていない化学修飾セルロース繊維と混合されたときによくみられる湿ったコンクリートの流動性を阻害する作用を抑えることである。
【0014】
漂白セルロース含有木材パルプ繊維は、典型的には、セルロース繊維100gあたり5ミリ当量(ミリ当量/100g)またはそれ未満のカルボキシル含量を有する。酸化されたセルロース繊維は、セルロース繊維中に、約150ミリ当量/100gのカルボキシル基を有する可能性がある。しかしながらこれは、難しく費用がかかるプロセスである。繊維100gあたり100〜150ミリ当量またはそれより多くの上記官能基を得るためには、カルボキシアルキル基、または、アルキルスルホン酸基、または、リン酸基、または、硫酸基を付加するほうが、より簡単で効率的である。
【0015】
フィブリル化低DSカルボキシメチルセルロース、フィブリル化低DSアルキルスルホン酸セルロース、フィブリル化低DSリン酸化セルロース、および、フィブリル化硫酸化セルロースは、セメント質のマトリックス中で、未フィブリル化繊維よりも良好に分散させることができ、さらに、それほど多くの流動化剤を用いなくてもよいより実用的な混合物を提供することができる。
【0016】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、漂白セルロースまたは部分的に漂白したセルロース含有木材パルプ繊維と混合されてもよく、このようなセルロースは、規則的なサイズを有していてもよいし、または、ナノまたはマイクロサイズのフィブリルにフィブリル化されていてもよい。このようなセルロース繊維とカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースとの混合物は、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースとセルロース繊維とを剪断しながら混合することによって形成される。
【0017】
セルロース繊維とフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースの混合物を用いる場合、セルロース繊維は、分散液からある程度のフィブリル化カルボキシアルキルセルロースを吸収する。一実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、10〜100ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、10〜50ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、20〜40ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、25〜30ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維との混合物は、50〜150ミリ当量/100gの総カルボキシアルキル含量を有する。アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが用いられる場合、これらと同じ量がアルキルスルホン酸基、リン酸基および硫酸基にも適応されると考えられる。
【0018】
セルロースは、全て1−4位を介してβ結合したグルコース単位の長鎖からなる炭水化物ポリマーである。図4にセルロースの構造を示す。天然の植物セルロース分子は、図4に示される無水グルコース単位を2200個よりも多く有する場合がある。単位の数は、一般的には重合度と称され、または単にDPとも称される。セルロース精製中にある程度は重合度が低下する。例えば、木材をパルプにしてセルロースを得て、それを木材中のリグニンやある種のヘミセルロースから分離するためのケミカルパルプ化プロセスを用いたような場合に、重合度が低下する。最終的なパルプのDPは、用いられるパルプ化プロセスによって決まると考えられる。
【0019】
セルロースの無水グルコース単位中の2位および3位における二次的なヒドロキシル基、および、6位における一次的なヒドロキシル基のそれぞれの水素原子を除去して、カルボキシメチル基、アルキルスルホン酸、リン酸基または硫酸基で置き換えることもできる。このようなプロセスおよび変換を行う反応は、置換として知られている。繊維の形態のセルロースがアルコール/水の混合物中で水酸化ナトリウムのような塩基を用いてカルボキシアルキル化される場合、カルボキシアルキル化は主に6位で起こる。
【0020】
全てのセルロース分子鎖の無水グルコース単位が、カルボキシアルキル化されるとは限らない。誘導体化セルロース分子のカルボキシアルキル含量の存在量は、カルボキシアルキルセルロース繊維のカルボキシアルキル含量によって決定されると考えられる。置換度は、セルロースポリマー中の、反応してセルロース誘導体を形成することができるヒドロキシル基のモルの平均数である。これは、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロースエチルスルホン酸、セルロースプロピルスルホン酸、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの場合についても同様である。
【0021】
カルボキシアルキル化、アルキルスルホン化、リン酸化または硫酸化セルロース含有木材パルプ繊維は、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基を介してセルロース分子に結合した側鎖を有さない。これらの低DSセルロース誘導体のナトリウム、カリウム、アンモニウム塩は、本願にとって最も適している。
【0022】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、それらのナトリウム、カリウム、または、アンモニウム塩として、セメント質材料に包含される。一実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.1〜5質量%を構成する。セメント質材料の質量は、セメントの乾燥基準に基づく質量であり、またシリカフュームが用いられる混合物中のシリカフュームの乾燥基準に基づく質量でもある。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.5〜3質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の1〜2質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.1〜1質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.25〜0.75質量%を構成する。その他の実施態様において、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、セメント質材料の質量の0.4〜0.6質量%を構成する。
【0023】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースのみを用いる場合、同じフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロースとセルロース繊維とを含む同じ性能を有する混合物と比較してより少ない量で十分であると考えられる。セメントおよびコンクリートにおいて、低DSカルボキシアルキルセルロースそのものを用いるほうが、低DSカルボキシアルキルセルロースおよびセルロース繊維を用いるよりも実用的である。これは、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化および硫酸化セルロースについても同様である。
【0024】
木材パルプ繊維用の木材はあらゆる針葉樹または広葉樹であってもよく、例えばマツ、トウヒ、カラマツ、ベイマツ、モミ、ベイツガ、ヒマラヤスギ、アメリカスギ、アスペン、シナノキ、ブナノキ、カバノキ、ハコヤナギ、ゴムの木、カエデ、トネリコ、クリの木、ニレ、または、ユーカリが挙げられる。これらは例えばクラフト法または亜硫酸塩を用いた方法などのあらゆる標準的なパルプ化プロセスでパルプ化することができる。木材パルプ繊維は、あらゆる標準的な漂白プロセスによって漂白される。
【0025】
セメント硬化にとって有害となる可能性があるヘミセルロースおよびリグニンを除去するために、上記繊維はパルプ化され、漂白されるかまたは部分的に漂白される。
このようなフィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、水およびセメント質混合物に添加される。
【0026】
使用することができるセメントベースの材料の具体的な例としては、アルミナセメント、高炉セメント、アルミン酸カルシウムセメント、タイプIポルトランドセメント、タイプIAポルトランドセメント、タイプIIポルトランドセメント、タイプIIAポルトランドセメント、タイプIIIポルトランドセメント、タイプIIIA、タイプIVポルトランドセメント、タイプVポルトランドセメント、水硬性セメント、例えば白色セメント、グレイセメント、混合水硬性セメント、タイプIS−ポルトランド高炉スラグセメント、タイプIPおよびタイプP−ポルトランド−ポゾランセメント、タイプS−スラグセメント、タイプI(PMYポゾラン改質ポルトランドセメント、および、タイプI(SM)−スラグ改質ポルトランドセメント、タイプGU−混合水硬性セメント、タイプHE−混合、タイプMS−中耐硫酸塩セメント、タイプHS−高耐硫酸塩セメント、タイプMH−中庸熱水和セメント、タイプLH−低熱水和セメント、タイプK膨張セメント、タイプO膨張セメント、タイプM膨張セメント、タイプS膨張セメント、硬化時間が調節されたセメント、超早強セメント、鉄高含有セメント(high iron cement)および油井用セメント、さらにコンクリート繊維セメントを堆積させたもの(concrete fiber cement deposit)、ならびに上記で列挙したセメントのいずれかを含むあらゆる複合材が挙げられる。
【0027】
様々なタイプのセメントを米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials:ASTM)のC−150規格によって特徴付けることができる。例えばタイプIポルトランドセメントは、あらゆる用途に適した汎用セメントである。これは、例えば建物、橋梁、路面、舗道およびその他のプレキャストコンクリート製品などの一般的な建築計画で用いられる。タイプIAポルトランドセメントはタイプIに類似しているが、さらに空気連行特性を有する。タイプIIポルトランドセメントは、比較的遅い速度で少ない熱しか生じず、さらに硫酸塩による攻撃に対して適度な耐性を有する。タイプIIAポルトランドセメントはタイプIIと同じであるが、さらに空気連行特性を有する。タイプIIIポルトランドセメントは高性能または早強セメントであり、コンクリートを硬化させ迅速に強度を増す。タイプIIIは、タイプIと化学的および物理的に類似しているが、その粒子がさらに細かくすりつぶされている。タイプIIIAは、空気連行型の早強セメントである。タイプIVポルトランドセメントは、低い水和熱を有し、その他のセメントタイプと比較してゆっくり強度を高めることから、熱が逃げる機会がほとんどないダムやその他の大きなコンクリート構造体での使用に好ましい。タイプVポルトランドセメントは、過酷な硫酸塩の作用に晒されると予想されるコンクリート構造体にのみ用いられ、主に、硫酸塩含量が高い土壌や地下水にコンクリートが晒されるような場合に用いられる。
【0028】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロースパルプ繊維は、セメント質混合物または標準的なコンクリート混合物と比較して含水量が少ない高性能コンクリートにおいて有用である。
【0029】
このようなセメントベースの材料は、本発明の開示に関連する分野の当業者によく知られているようなその他の構成要素または充填剤を含んでいてもよく、例えば、様々な種類のコンクリートを形成するために使用されるものを含んでいてもよい。例えば上記セメントベースの材料は、骨材、空気連行剤、緩染剤、促進剤、例えば触媒、可塑剤、腐食抑制剤、アルカリとシリカとの反応性を減少させる物質、結合剤、着色剤などを含んでいてもよい。本明細書で用いられる「骨材」は、特に他の指定がない限り、砂、砂利、砕石またはシリカフュームのような顆粒状の物質を意味する。骨材は、細骨材と粗骨材に分けることができる。細骨材の例としては、天然の砂、砕石またはシリカフュームなどであって、ほとんどの粒子が8分の3インチ(9.5mm)の篩を通過するものが挙げられる。粗骨材の例としては、約0.19インチ(4.75mm)よりも大きい粒子が挙げられるが、一般的には直径が約8分の3インチ〜約1.5インチ(9.5mm〜37.5mm)の範囲であり、例えば砂利である。天然の砂利や砂のような骨材は、採鉱、河川、湖または海底から採掘または浚渫することができる。粉砕された骨材は、採石場の岩、巨礫、大礫または大型の砂利を粉砕することによって製造することができる。その他の骨材原料の例としては、再生コンクリート、粉砕されたスラグ、粉砕された鉄鉱、または、膨張(すなわち熱処理した)粘土、頁岩、または、粘板岩が挙げられる。
【0030】
フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロースリン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維は、以下の手順でセメント質材料に添加することができる。
(a) フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロースリン酸化セルロースまたは硫酸化セルロース、または、フィブリル化低DSカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースもしくは硫酸化セルロースと混合されたセルロース繊維を水中で混合して分散させる。
(b) 分散させた後、水中の分散液に超可塑剤(SP)を添加してもよい。
(c) このセメント質材料に、水、フィブリル化材料、SP、および場合によってはセルロース繊維の混合物を添加してそこに浸漬させる。時間は、30秒である。
(d) これらの成分を低速で混合する。時間はバッチの体積によって決定される。時間は最短で1分であり、1分〜5分であってもよい。
(e) 作業性を改善するために、この混合物に必要に応じて追加の量の流動化剤をゆっくり添加する。
(f) このバッチを高速で混合する。ここでも時間は混合物の体積によって決定される。時間は最短で1分であり、1分〜5分であってもよい。
(g) 作業性をさらに改善するために、この混合物に必要に応じてさらに追加の流動化剤をゆっくり添加する。
(h) この混合物を30秒静置する(この工程は任意である)。
(i) この混合物をさらに高速で混合する(最短で1分であり、1分〜5分であってもよい)。
(j) 作業性をさらに改善するために、この混合物に必要に応じてさらに追加の流動化剤をゆっくり添加する。
【0031】
フィブリル化材料またはフィブリル化材料と混合されたセルロース繊維の量を多くすると、必要となる流動化剤の量も多くなる可能性がある。繊維はセメント質混合物の流動性を減少させるために添加され、流動化剤は流動性を高めるために添加される。添加される繊維が多ければ、流動性の減少率もより大きくなり、さらに流動性を通常に戻すのに必要とされる流動化剤も多くなる。繊維は、セメント質混合物の質量の約0.5%、セメント質混合物の0.35〜0.65%で添加すれば、必要とされる流動化剤の量を最小に出来ると考えられる。フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースだけを使用すれば、流動化剤の必要性は低くなるものと考えられる。
【0032】
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、または、フィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維によって、セメント質混合物にカルボキシアルキルが含まれるようになる。カルボキシアルキル基のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩は、セメント中で水を保持し、制御された方法でそれを放出する。これは、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロース、および、硫酸化セルロースについても同様である。またアルキルスルホン酸セルロース、リン酸および硫酸基のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩も水を保持して放出することができる。
【0033】
一実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜600ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜60ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜500ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜50ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜400ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜40ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。その他の実施態様において、用いられるカルボキシアルキル含量は、セメント質材料100キログラムあたり20〜1500ミリ当量である(カルボキシアルキル含量はカルボキシアルキル化材料100gあたり20〜150ミリ当量であるため、セメント中に0.1〜1%のカルボキシアルキル化材料が存在すればよい)。
【0034】
セルローススルホン酸材料、リン酸化材料および硫酸化材料に同様のミリ当量のアルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基が含まれるとも考えられる。
より少量のフィブリル化カルボキシアルキルセルロースまたはフィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維だけでも、繊維100gあたり同じミリ当量数のカルボキシアルキル基を含む繊維を提供できる場合もある。カルボキシアルキル含量が20ミリ当量/100gのフィブリル化カルボキシアルキルセルロースサンプルは、カルボキシアルキル含量が40ミリ当量/100gのフィブリル化カルボキシアルキルセルロースサンプルのカルボキシアルキル基の半分を含み、すなわちセメント質混合物に同じカルボキシアルキル含量を提供するのに2倍多くの材料が必要となる。これも、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースおよび硫酸化セルロースについても同様である。
【0035】
セメントまたはコンクリート硬化中の重要な期間は、初期の7日である。また、初期の2日が重要な期間であることも見出されている。初期硬化期間中に起こるひび割れは、セメントまたはコンクリートの長期耐久性にとって有害である
フィブリル化カルボキシアルキルセルロースまたはフィブリル化カルボキシアルキルセルロースと混合されたセルロース繊維の添加は、圧縮強度に影響を与えない。圧縮強度の傾向は変化しない。
【実施例】
【0036】
実験1
漂白セルロース繊維を用いて製造した低DSカルボキシメチルセルロース繊維(OD:オーブンで乾燥、置換度0.45)45gを、脱イオン水2500ml中で、Waringブレンダーを用いて5000RPMで30分間、フィブリル化した。この手順を10回繰り返し、水25リットル中に低DSのCMCフィブリル(OD)450.0gを得た。低DSのCMC450.0gを含む水性分散液25リットルを大型のHobartミキサー中に入れた。この分散液に漂白セルロース繊維(OD)2050gを添加し、2時間十分に混合した。この混合物のカルボキシアルキルレベルは、36ミリ当量/100gと測定された。
【0037】
実験2
漂白セルロース繊維を用いて製造した低DSカルボキシメチルセルロース繊維(OD、置換度0.45)65.0gを、脱イオン水3500ml中で、Waringブレンダーを用いて5000RPMで30分間、フィブリル化した。この手順を5回繰り返し、水17.5リットル中にOD低DSのCMCフィブリル325.0gを得た。低DSのCMC325.0gを含む水性分散液17.5リットルを大型のHobartミキサー中に入れた。この分散液にOD漂白セルロース繊維925.0gを添加し、2時間十分に混合した。この混合物のカルボキシアルキルレベルは、48ミリ当量/100gと測定された。
【0038】
2種の異なるフィブリル化カルボキシメチルセルロースサンプルを試験した。サンプル4は、36.93ミリ当量/100gのカルボキシアルキルレベルを有し、サンプル12は、48.34ミリ当量/100gのカルボキシアルキルレベルを有するものであった。いずれのサンプルも置換度は0.45であった。それぞれ、セメント質混合物の質量の0.25%、0.5%および1%の割合で添加して試験した。
【0039】
サンプル4およびサンプル12の両方について、表1にペースト状混合物を示す。サンプル4およびサンプル12の両方について、表2にモルタル状混合物を示す。
以下の試験において、混合の作業性を維持するために流動化剤を添加した。セメントは、タイプ1のポルトランドセメントであった。モルタル状混合物には砂も含まれる。以下の表において、MCは繊維の含水量であり、kはセメントの内部硬化に利用可能な繊維中の水分量であり、SFはシリカフュームであり、SPは流動化剤であり、w/cmは水のセメント質材料に対する比率であり、we/cm*はセメント質材料に対する持ち込まれた水の比率である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
混合手順は以下の通りである。
(a)試験される繊維を水中で混合して分散させた。
(b)繊維を水中に分散させた後に、超可塑剤を添加した。
(c)このセメント質材料に、水、繊維および流動化剤の混合物を添加して、そのまま30秒間浸漬させた。
(d)このバッチを低速で1分間混合した。混合しながらモルタル用の砂を添加した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
(e)このバッチを中程度の速度で少なくとも1分間混合した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
(f)流動性を測定した。
(g)このバッチを中程度の速度で1分間さらに混合した。作業性を改善するために、必要に応じて追加の流動化剤を添加した。
【0043】
この混合物を振盪し、ASTM−C109の立方体圧縮試験に関する条件に従って自己収縮サンプル用の鋳型に充填しながら軽くたたいて鋳型に詰めた。
表3で、この実験内容を記載する。
【0044】
【表3】
【0045】
自己収縮試験
自己の歪みは、O.M. Jensen and P.F. Hansen “A dilatometer for measuring autogenous shrinkage deformation in hardening cement paste”, Materials and Structures, 1995, 28(181):406-409に記載されているようにして測定した。試料の質量を量り、波形のポリエチレンチューブ中に密封し、周囲温度で保存した。自己の直線状の歪みの測定を連続的にモニターし、14日間記録した。初期の測定は、混合物ごとにASTM−C191で測定された最終硬化期間になされた。混合物ごとに3つの試料を試験した。表5に結果を示す。
【0046】
ペーストおよびモルタル双方に関する異なる混合物の自己収縮を長期にわたり測定し、コントロールと比較した。
図7および8にペーストの結果を示す。図7はサンプル4の結果を示し、図8はサンプル12の結果を示す。双方をコントロールと比較した。サンプル4に関する自己収縮はいずれの添加率においても初期の2日間はほぼ同じであったが、その後に多少の差がみられたことが記録された。全ての添加率でコントロールよりも優れていた。サンプル12については差がみられた。1%添加は、その他2つの添加率よりも優れた性能を示した。いずれの添加率もコントロールよりも優れた性能を示した。
【0047】
図9は、長期にわたる実施例5(モルタル)および実施例6(ペースト)の自己収縮の比較である。いずれもサンプル4であり、添加率は1%である。
図10は、実施例9(モルタル)および実施例10(ペースト)の自己収縮の長期にわたる比較である。いずれもサンプル12であり、添加率は1%である。
【0048】
図11および12にモルタルの結果を示す。
自己収縮に対する様々なGP5添加率の効果も試験した。図2に添加率に関する結果を示す。GP5を2%添加した場合の効果は、図1に記載したPLWA添加と類似していた。繊維2%添加は、大量の流動化剤が必要となる。従って、繊維0.5%添加でも、繊維2%添加の場合と同量のカルボキシアルキル基を提供できるようにすることが目標である。これは40ミリ当量/100gのカルボキシアルキル含量またはそれより多くのカルボキシアルキル基を有する繊維を用いることになる。
【0049】
40ミリ当量/100gまたはそれより高いカルボキシアルキル含量を有する繊維を作製することができる。40ミリ当量/100gまたはそれより高いカルボキシアルキル含量を有する繊維の自己収縮が、GP5の2%添加と類似した自己収縮を示すと考えられる。
【0050】
また、繊維を添加した場合の圧縮強度も測定した。図13に結果を示す。繊維の添加は、圧縮強度に強い影響を与えなかった。
具体的な言葉で本発明の好ましい実施態様を説明したが、このような記述は単に説明のためである。用いられた言葉は、限定するためではなく、説明のための言葉である。当然のことながら、以下の特許請求の範囲に記載されている本発明の本質または範囲から逸脱しない限り、当業者によって変更ないし変動されてもよい。添付の特許請求の範囲に記載の本質および範囲は、本明細書に記載された好ましい態様の説明に限定されない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースと、セメントであるセメント質材料と、を含む、硬化されたセメント構造体であって、
該セルロースが、0.01〜0.45の置換度を有し、ナノまたはマイクロフィブリル化されており、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの10〜150ミリ当量/100gであり、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である、上記構造体。
【請求項2】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項1に記載の硬化されたセメント構造体。
【請求項3】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項4】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項5】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項6】
前記セメント質材料が、骨材をさらに含む、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項7】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項6に記載の硬化されたセメント構造体。
【請求項8】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項9】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項10】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項11】
セメント質材料、水、および、0.01〜0.45の置換度を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースを含む混合物を提供すること、
該混合物を硬化させること、
を含む、セメントの硬化方法であって、
該セメント質材料がセメントを含み、
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースに含まれるカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基それぞれの含量が、それぞれカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの10〜150ミリ当量/100gであり、
カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である、上記方法。
【請求項12】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記セメント質材料が、骨材をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースと、セメントであるセメント質材料と、を含む、硬化されたセメント構造体であって、
該セルロースが、0.01〜0.45の置換度を有し、ナノまたはマイクロフィブリル化されており、カルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの10〜150ミリ当量/100gであり、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースは、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である、上記構造体。
【請求項2】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項1に記載の硬化されたセメント構造体。
【請求項3】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項4】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項5】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項6】
前記セメント質材料が、骨材をさらに含む、請求項1に記載のセメント構造体。
【請求項7】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項6に記載の硬化されたセメント構造体。
【請求項8】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項9】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項10】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項6に記載のセメント構造体。
【請求項11】
セメント質材料、水、および、0.01〜0.45の置換度を有するフィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースを含む混合物を提供すること、
該混合物を硬化させること、
を含む、セメントの硬化方法であって、
該セメント質材料がセメントを含み、
フィブリル化カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースに含まれるカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基それぞれの含量が、それぞれカルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの10〜150ミリ当量/100gであり、
カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.1〜5質量%である、上記方法。
【請求項12】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記セメント質材料が、骨材をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記カルボキシアルキルセルロースが、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシエチルセルロースである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの20〜100ミリ当量/100gである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記繊維のカルボキシアルキル基、アルキルスルホン酸基、リン酸基または硫酸基の含量が、それぞれ、カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースの30〜60ミリ当量/100gである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記カルボキシアルキルセルロース、アルキルスルホン酸セルロース、リン酸化セルロースまたは硫酸化セルロースが、セメント質材料の乾燥質量の0.25〜0.75質量%である、請求項16に記載の方法。
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図13】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図13】
【公開番号】特開2013−14503(P2013−14503A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145724(P2012−145724)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(510146193)ウェヤーハウザー・エヌアール・カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(510146193)ウェヤーハウザー・エヌアール・カンパニー (5)
【Fターム(参考)】
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