説明

セメント混和剤

【課題】種々の用途に好適に用いることができ、セメント組成物に対する分散性能を高めることができ、コンクリート等の早期強度を向上することができるセメント混和剤を提供する。
【解決手段】不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とする共重合体を含有するセメント混和剤であって、該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):
〔化1〕


(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、110〜140の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであるセメント混和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント混和剤に関する。より詳しくは、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に好適に用いることのできるセメント混和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカルボン酸系共重合体は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物等に対して減水性能を発揮し、セメント混和剤又はコンクリート混和剤等として広く用いられており、セメント組成物から土木・建築構造物等を構築するために欠かすことのできないものとなっている。セメント混和剤は、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有することになる。このような減水剤の中でもポリカルボン酸系重合体を含むポリカルボン酸系セメント混和剤又はコンクリート混和剤は、従来のナフタレン系等の減水剤に比べて高い減水性能を発揮するため、高性能AE減水剤として多くの実績がある。
【0003】
このようなセメント混和剤に好適なポリカルボン酸系重合体としては、アルケニルエーテルアルキレンオキサイド付加物と、不飽和カルボン酸との共重合体が検討されてきた。具体的には、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコールアルケニルエーテルと不飽和カルボン酸を必須構成単位とする2元共重合体(例えば、特許文献1、2参照。)、(1)ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(2)ポリアルキレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(3)(メタ)アクリル酸と、(4)スルホン酸基含有モノマーとの4元共重合体(例えば、特許文献3参照。)、(1)ポリエチレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(2)ポリプロピレングリコール(メタ)アリルエーテルと、(3)不飽和カルボン酸との3元共重合体(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。
【0004】
また炭素数2〜4のアルケニルエーテルのアルキレンオキシド(AO)付加物とメタクリル酸との共重合体(例えば、特許文献5参照。)、メタリルエーテルAO付加物とアクリル酸との共重合体(例えば、特許文献6参照。)、(1)炭素数2〜4のアルケニルエーテルAO付加物(付加モル数n=1〜100)と、(2)炭素数2〜4のアルケニルエーテルAO付加物(付加モル数n=11〜300)と、(3)不飽和モノカルボン酸との3元共重合体、(1)と(3)の共重合体と(2)と(3)の共重合体のブレンド(例えば、特許文献7参照。)、炭素数2〜4アルケニルエーテルAO付加物とマレイン酸との共重合体(A)と、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル単量体と、アルケニル基を有しない非重合性のポリアルキレングリコールと、共重合体(A)とは異なる重合体との4成分を含むセメント混和剤(例えば、特許文献8参照。)が開示されている。
しかしながら、セメント組成物等に用いる場合、種々の性能に優れるとともに、低コストで汎用性のあるものとすることが求められていた。また、分散性能や減水性を向上し、製造現場においてコンクリート等の流動性の保持性を向上させ、コンクリート等の状態がより作業しやすい状態となるようにすることにより、土木・建築構造物等の構築現場における作業効率等をさらに改善したり、コンクリート等の特性を向上したりするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開平10−194808号公報
【特許文献2】特開平11−106247号公報
【特許文献3】特開2000−034151号公報
【特許文献4】特開2001−220194号公報
【特許文献5】特開2002−348161号公報
【特許文献6】特開2002−121055号公報
【特許文献7】特開2003−221266号公報
【特許文献8】特表2006−522734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、種々の用途に好適に用いることができ、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリート等の早期強度を向上することができるセメント混和剤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、セメント混和剤について種々検討したところ、セメント混和剤に含まれる共重合体に着目し、この共重合体の構成成分である不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位が、特定の長さのポリアルキレン鎖を有する場合に、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリートの早期強度を高めることができることを見いだし、分散性能と流動性保持性能が共に優れる等の種々の特性を発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。また、特定の単量体由来の構成単位を有することにより、用途に応じて好適なポリアルキレン鎖長とすることができることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とする共重合体を含有するセメント混和剤であって、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、110〜140の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであるセメント混和剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明のセメント混和剤は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とする共重合体を含有するものである。本発明のセメント混和剤は、このような構成単位を含むことにより、コンクリートの早期強度(具体的には、24時間強度)を向上することができるだけでなく、分散性能、スランプ保持性能等の優れた効果を奏することができる。また、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物は、粘性(作業性、例えば、モルタルを練る際の練りやすさやコンクリートの現場でのスコップワーク)と、流動性(流し込んだときの流れやすさ)との両方を発揮することができる。なお、セメント組成物の物性を示す「フロー値」(流動性)と「コンクリートの状態」(粘性)との間の技術的な相関関係は、現時点では少なくとも明らかではないが、例えば、これらの現象を例えて言うと、水あめとヨーグルトとを比較すると、水あめは粘りけがあるためスプーンでかき混ぜようとした場合、相当の力が必要となるが(粘性が高く作業性がわるい)、平らな面に置いた場合は流動して薄く広がる。一方、ヨーグルトをスプーンでかき混ぜようとした場合、容易にかき混ぜることはできるが(粘性が低く作業性がよい)、平らな面に置いても流動して広がっていくことはない。
上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、上記一般式(1)由来のものである。このように、メタリル基を有する単量体は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテルのアルキレングリコール鎖長を従来より容易に長くすることができ、後述する種々の用途に用いることができる。
【0011】
上記ROは、炭素数2〜18のオキシアルキレン基であり、炭素数2〜8のオキシアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のオキシアルキレン基であることがより好ましい。具体的には、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基等の1種又は2種以上が好適であり、中でも、オキシエチレン基が好ましい。2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、オキシエチレン基が80モル%以上であることが好ましい。これにより、親水性と疎水性とのバランスを保ち、優れた分散性能を発揮する不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位となる。80モル%未満であると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いる場合、充分な分散性を発揮しないおそれがある。より好ましくは、85モル%以上であり、更に好ましくは、90モル%以上であり、特に好ましくは、95モル%以上であり、最も好ましくは、100モル%ある。
上記2種以上のオキシアルキレン基を有する場合の組み合わせとしては、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)、(オキシエチレン基、オキシブチレン基)、(オキシエチレン基、オキシスチレン基)が好ましい。中でも、(オキシエチレン基、オキシプロピレン基)がより好ましい。
上記2種以上のオキシアルキレン基が存在する場合は、ブロック状、ランダム状、交互状等のいずれの存在形態でもよい。
【0012】
上記nは、110〜140の数であり、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。平均付加モル数が上記範囲であると、本発明のセメント混和剤は、セメント組成物の分散性能を高めることができ、早期強度を充分に高めることができる。上記平均付加モル数nとして好ましくは、110〜135であり、より好ましくは、115〜130であり、更に好ましくは、115〜125であり、特に好ましくは、120付近である。この平均付加モル数が小さいほど、得られる不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の親水性が低下して分散性能が低下するおそれがあり、一方、300を超えると、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の共重合反応性が低下し、種々の用途に好適に用いることができないおそれがある。ROは、同一又は異なっていてもよい。
【0013】
上記Rとしては、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には水素原子、炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基、炭素敷2〜20のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数6〜20のフェニル基、アルキル置換フェニル基等が好ましい。より好ましくは水素原子、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基又はアルキニル基、炭素数6〜10のフェニル基、アルキル置換フェニル基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基又はアルキニル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基であり、特に好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基である。
上記Rが、炭素数2〜6のアルケニル基である形態も好ましい。この場合、上記不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体は、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系ジエーテル単量体となる。
上記アルケニル基としてより好ましくは、炭素数3〜5のアルケニル基であり、更に好ましくは、炭素数3〜4のアルケニル基であり、特に好ましくは、炭素数4のアルケニル基である。アルケニル基の具体例としては、3−メチル−3−ブテニル基、4−ペンテニル基、3−ペンテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基等の炭素数5のアルケニル基;メタリル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基等の炭素数4のアルケニル基:アリル基等の炭素数3のアルケニル基が好適である。これらの中でもメタリル基、アリル基が特に好ましい。
【0014】
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の具体的としては、(ポリ)アルキレングリコールメタリルエーテル類等が好適である。例えば、メタリルアルコールにアルキレンオキシドを110〜140モル付加した化合物を挙げることができ、具体的には、メタリルアルコールポリエチレンオキシド付加物が好ましい。
【0015】
上記不飽和カルボン酸系単量体(単量体(ii)とも言う。)由来の構成単位としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、及び、これらの一価金属塩、二価金属塩、第4級アンモニウム塩、有機アミン塩等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;これらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩類等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上に由来するものであることが好ましい。より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸であり、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。すなわち、不飽和カルボン酸としては、少なくともアクリル酸、メタクリル酸又はその塩を含むことが好ましい。アクリル酸、メタクリル酸又はその塩由来の構造を含むことにより、得られる共重合体(ポリカルボン酸系共重合体とも言う。)は、少量で優れた分散性を発揮することができる。このように、上記不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を必須とするセメント混和剤もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0016】
本発明の共重合体は、上記単量体(i)及び(ii)由来の構成単位の他に、その他の単量体(単量体(iii)とも言う。)由来の構成単位が含まれていてもよく、具体的には、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体(単量体(i))及び/又は不飽和カルボン酸(単量体(ii))と共重合可能な単量体(共重合性単量体)を含むものでもよい。上記共重合性単量体としては、例えば、上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類及びこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミドのように不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。特に、共重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルクロトネート、エチルクロトネート、プロピルクロトネート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸類へ炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加した、アルキレンオキシド1〜500モル付加物類等が好適である。
【0017】
上記単量体(i)〜(iii)由来の構成単位の含有割合としては、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体(単量体(i))由来の構成単位、不飽和カルボン酸(単量体(ii))由来の構成単位及び必要に応じて添加されるその他の単量体(単量体(iii))由来の構成単位の合計100質量%に対して、以下の範囲であることが好ましい。
上記単量体(i)由来の構成単位の含有割合としては、1質量%以上であることが好ましい。含有割合が1質量%未満であると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いた場合に、セメントに対する分散性能が低下する傾向がある。より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上、最も好ましくは45質量%以上である。
【0018】
上記単量体(ii)由来の構成単位の含有割合の上限としては、ナトリウム塩換算で60質量%以下であることが適当である。60質量%を超えると、得られるポリカルボン酸系共重合体をセメント混和剤として用いる場合に分散性能の経時的な低下(スランプロス)が著しくなり、充分な分散性能が発揮できないおそれがある。好ましくは、50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下である。また、次の順で特定値以下であることが好ましい(数値が小さい方が好ましい)。20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下であることがこの順により好ましい。また、単量体(ii)の含有割合の下限としては、1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは2質量%以上であり、更に好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。
【0019】
上記単量体(iii)由来の構成単位の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば特に制限されないが、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは30質量%以下である。また、次の順で特定値以下であることが好ましい(数値が小さい方が好ましい)、20質量%以下、10質量%以下であることがこの順により好ましい。
【0020】
上記共重合体(ポリカルボン酸系共重合体)における各成分由来の構成単位の含有比率は、例えば、単量体(i)/単量体(ii)/単量体(iii)=1〜99/1〜60/0〜70(質量%)の範囲が好ましい。より好ましくは、単量体(i)/単量体(ii)/単量体(iii)=5〜99/1〜50/0〜60(質量%)であり、更に好ましくは、10〜99/1〜40/0〜50(質量%)であり、特に好ましくは、25〜98/2〜35/0〜40(質量%)でり、最も好ましくは、40〜97/3〜30/0〜30(質量%)であり、最も好ましくは、45〜97/3〜25/0〜30ある。(但し、単量体(i)、単量体(ii)及び単量体(iii)の合計は100質量%である。)。
【0021】
本発明のセメント混和剤に含まれる共重合体(ポリカルボン酸系共重合体)は、不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とするものであれば特に限定されず、任意の製造方法を用いることができるが、例えば、3つの工程を経て共重合体を製造することが好ましい。上記3つの工程としては、工程1:メタリル基を有するハロゲン化物と(ポリ)アルキレングリコールを反応させて不飽和アルコールを得る工程、工程2:工程1で得られた不飽和アルコールにアルキレンオキシドを付加して不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を得る工程、及び、工程3:工程2で得られた不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸を重合して得られるポリカルボン酸ポリマー(ポリカルボン酸系共重合体)を得る工程である。その他の形態として、次の2つの工程を経て共重合体を製造することが好ましい。工程1:メタリルアルコールにアルキレンオキシドを付加してメタリルアルコールポリアルキレンオキシド付加物を得る工程、工程1で得られたメタリルアルコールポリアルキレンオキシド付加物と不飽和カルボン酸を重合してポリカルボン酸ポリマーを得る工程である。
【0022】
すなわち、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸とを必須とする単量体成分を共重合してポリカルボン酸系共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、不飽和結合を有するハロゲン化物と(ポリ)オキシアルキレングリコールとを反応させて不飽和アルコールを生成する工程1と、不飽和アルコールにアルキレンオキシドを付加して不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を生成する工程2と、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸とを共重合する工程3とを含むポリカルボン酸系共重合体の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。その他の形態として、次の2つの工程を経て共重合体を製造することが好ましい。工程1:メタリルアルコールにアルキレンオキシドを付加してメタリルアルコールポリアルキレンオキシド付加物を得る工程、工程1で得られたメタリルアルコールポリアルキレンオキシド付加物と不飽和カルボン酸を重合してポリカルボン酸ポリマーを得る工程である。
【0023】
上記3つの工程を含むことにより、安価な不飽和結合を有するハロゲン化物を原料とすることができ、原料コストを充分に低くすることができ、ポリカルボン酸系共重合体を生産するうえでコストダウンが図れる。また、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体のアルキレン鎖長を用途に応じて好適な長さとすることができる。更に、上記製造方法で得られるポリカルボン酸系共重合体は、従来の不飽和アルコールを出発原料として製造されるポリカルボン酸ポリマーよりもセメント粒子を分散させる効果に優れ、アルキレングリコール鎖長を調整することにより、コンクリートの早期強度を向上させることができるといった効果を奏することができ、種々の用途に好適に用いることができることとなる。なお、明細書中、「不飽和ポリオキシアルキレン」又は「(ポリ)アルキレンオキシド鎖を有する」とは、アルキレンオキシドが1つしか付かない場合も含めるものとする。すなわち、ポリアルキレンオキシド鎖はアルキレンオキシドが1つしか付かない場合も含めるものとする。また、(ポリ)オキシアルキレングリコールにおいても同様に、アルキレンオキシドが1つしか付かない場合も含めるものとする。
【0024】
上記工程1としては、メタリル基を有するハロゲン化物と(ポリ)オキシアルキレングリコールとを反応させて不飽和アルコールを生成する工程であり、上記工程1における反応温度は、反応に用いる不飽和基含有ハロゲン化物及びアルキレングリコールによって若干異なり、特にこれを限定するもので止ないが、40℃〜150℃が好ましく、より好ましくは50℃〜100℃であり、さらに好ましくは55℃〜75℃である。反応時の圧力は、減圧下、常圧、加圧下のいずれでも構わないが、常圧での反応で充分である。反応に用いるアルカリ化合物の量は、不飽和基含有ハロゲン化物に対して0.5当量〜2.0当量が好ましく、より好ましくは0.9当量〜1.5当量であり、さらに好ましくは1.0当量〜1.2当量である。また、反応に用いるアルキレングリコールの量は、不飽和基含有ハロゲン化物に対して1.5当量〜10当量が好ましく、より好ましくは3当量〜7当量であり、さらに好ましくは4当量〜6当量である。アルキレングリコールの量が少な過ぎるとジエーテル体の生成量が増加してしまい、多過ぎると生産性を低下させることとなる。反応器への原料の供給方法としては、初期に一括して仕込んでもよく、逐次投入してもよい。アルキレングリコールとアルカリ化合物をまず反応させて中間体を生成させ、その後不飽和基含有ハロゲン化物をフィードし、反応させる方法はその一例である。工程1について、ハロゲン捕捉剤としてアルカリ化合物を用いることが必要であり、例示として当該反応ではハロゲン捕捉剤として塩基を必要とし、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水酸化カルシウムのようなアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムのようなアルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。
【0025】
上記工程1において、メタリル基に結合するハロゲン原子としては、特に限定されないが、塩素原子、臭素原子が好ましい。中でも、生成物の着色防止重合工程での重合性の低下抑制のため、塩素原子がより好ましい。
上記不飽和結合を有するハロゲン化物の具体例としては、メタリルクロライド、メタリルブロマイド、メタリルヨーダイドである。
【0026】
上記工程1において、(ポリ)アルキレングリコールとしては、アルキレンオキシドが、1〜4回繰り返されたものであることが好ましい。(ポリ)アルキレングリコールのアルキレンオキシド鎖が長い(アルキレンオキシドが5回以上繰り返されたものである)と、工程1で生成する不飽和アルコールの沸点が高くなる。この場合、高沸点となることから、減圧蒸留等によっても工業的に蒸留精製することが困難となり、純度の高い不飽和アルコールを得ることができなくなるおそれがある。(ポリ)オキシアルキレングリコールとしてより好ましくは、アルキレンオキシドが1〜2回繰り返されたものである。
【0027】
上記(ポリ)アルキレングリコールとしては一般式HO−(AO)n2−Hで表すことができる。上記式中、AOは炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表し、n2が2以上の場合はAOはそれぞれ同一もしくは異なってもよく、n2はオキシアルキレン基の平均付加モル数であり1〜300である。(ポリ)アルキレングリコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソブチレングリコール、ブチレングリコール、スチレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ブチレングリコール、ポリスチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)スチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール等の異なるアルキレングリコール共重合体類が好適である。
【0028】
上記(ポリ)アルキレングリコールの中でも好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソブチレングリコール、ブチレングリコール、スチレングリコール等のグリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソブチレングリコール、ブチレングリコール、ポリスチレングリコール等のアルキレングリコール付加モル数4以下のポリアルキレングリコール類、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)スチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール(ポリ)ブチレングリコール等のアルキレングリコール付加モル数4以下の異なるアルキレングリコール共重合体類である。
【0029】
更に好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソブチレングリコール、ブチレングリコール、スチレングリコール等のグリコール類、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジイソブチレングリコール、ジブチレングリコール、ジスチレングリコール等のジアルキレングリコール類、エチレングリコールプロピレングリコール、エチレングリコールブチレングリコール、エチレングリコールスチレングリコール、プロピレングリコールブチレングリコール等の異なるアルキレングリコールのジアルキレングリコール共重合体類である。
最も好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールである。
【0030】
上記工程1においては、メタリル基を有するハロゲン化物と(ポリ)アルキレングリコールとを反応させればよく、上述のいずれの化合物も好適に用いることができるが、好ましい組み合わせを(不飽和結合を有するハロゲン化物、(ポリ)オキシアルキレングリコール)として表すと、(メタリルクロライド、エチレングリコール)、(メタリルクロライド、ジエチレングリコール)が好ましい。
このように、メタリル基を有するハロゲン化物と(ポリ)オキシアルキレングリコールとを反応させて不飽和アルコールを生成する工程を含む製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0031】
上記工程1で得られる不飽和アルコールとしては、上述したメタリル基を有するハロゲン化物と(ポリ)オキシアルキレングリコールとを反応させて得られるものである限り特に限定されないが、具体例としては、メタリルアルコール、メタリルアルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。メタリルアルコールのアルキレンオキシド付加物としては、アルキレンオキシド付加モル数の比較的少ないメタリルアルコールのアルキレンオキシド付加物が好ましい。不飽和アルコールとしてより好ましくは、メタリルアルコール、メタリルアルコール−1EO(メタリルアルコールにエチレンオキサイドが1モル付加したもの)、メタリルアルコール−2EO(メタリルアルコールにエチレンオキサイドが2モル付加したもの)である。
【0032】
上記工程1により得られた不飽和アルコールを、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の製造に用いる場合は、工程1で得られた生成物を精製して得られた不飽和アルコールであることが好ましい。このように、工程1で得られた生成物を精製することにより、不飽和アルコールの純度を高くすることができ、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を製造する場合に、収率を向上させることができる。この精製工程は工程1の後、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の製造の前に行うことが好適であり、その結果得られた精製物を不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の製造に用いることが好ましい。すなわち、上記製造方法は、工程1で得られた生成物を精製する工程を含む製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0033】
上記精製工程において、工程1で得られた生成物を精製する方法としては特に限定するものではないが、蒸留や晶析、抽出などの方法又はこれらを組み合わせた方法で精製することが好ましい。また、生成物に含まれる水分を除去する方法としては、脱水剤や吸着剤を用いてもよく、例えば硫酸マグネシウムやモレキュラーシーブスなどが挙げられる。
【0034】
上記精製工程は、精製物の水分含有量が2質量%以下であることが好ましい。すなわち、上記工程1と後述するアルキレンオキサイド付加反応工程(工程2)の間で、精製工程を行うことにより、工程1で得られる不飽和アルコールの水分含有量を2質量%以下とし、精製後の生成物100質量%中、水分が2質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.25質量%以下であり、最も好ましくは0.1質量%以下である。水分含有量が多いと、工程2でアルキレンオキサイド付加反応を行った際に、副生物である(ポリ)アルキレングリコール量が多くなるため、好ましくない。
【0035】
上記精製工程は、上述したように、種々の方法で精製することができ、精製物の水分含有量が2質量%以下となるような方法であれば特に限定されないが、工程1で得られた生成物を蒸留する方法であることが好ましい。工程1で得られた生成物を蒸留することにより、他の方法に比べ工業的に有利に、不飽和アルコールの純度を容易に高くすることができ、不飽和アルコールを原料として用いる場合に、その後の工程において収率よく製造することができる。このように、上記精製工程は、工程1で得られた生成物を蒸留するポリカルボン酸系共重合体の製造方法もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0036】
上記蒸留工程では、一段階で蒸留操作を行ってもよく、系内の水を除去するための粗蒸留の工程と精留工程のように二段階以上に分けて行ってもよい。また、アルキレングリコールとアルカリ化合物をまず反応させた段階で水を除去するための粗蒸留を行い、その後不飽和基含有ハロゲン化物を反応させて蒸留精製する方法を用いても構わない。水を除去する粗蒸留工程では、油水分離槽を伴う装置を用いることが好ましく、蒸留の留出液を油水分離し、油層は系内に戻し、水層のみを抜き出すことで目的化合物のロスを軽減することができる。この工程では単蒸留でも蒸留段数を設けても構わない。また、より効率よく水を除去するために、例えばシクロヘキサンやトルエンのような共沸剤を用いてもよい。蒸留装置としては充填塔又は段塔を用い、還流をかけながら蒸留を行うことが好ましい。蒸留時の温度としては、充填塔又は段塔のボトムの温度が180℃以下であることが好ましく、より好ましくは150℃以下である。温度が高すぎると、不飽和基部分の重合や、目的化合物の分解などが起こるおそれがあるためである。蒸留の際の最適な操作圧力は製造する不飽和アルコールによって異なるが、前記温度範囲に収まるように設定すればよい。
【0037】
上記工程2としては、不飽和アルコールにアルキレンオキシドを付加して不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を生成する工程であり、不飽和アルコールとしては、上述したものが好適である。不飽和アルコールに付加させるアルキレンオキシドとしては、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドが好ましい。より好ましくは、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドであり、更に好ましくは、炭素数2〜4のアルキレンオキサイドである。具体的には、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の1種又は2種以上が好適であり、中でも、エチレンオキサイドが好ましい。2種以上のアルキレンオキサイドを付加させる場合は、エチレンオキサイドが80モル%以上であることが好ましい。これにより、親水性と疎水性とのバランスを保ち、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体を重合して得られる(ポリ)アルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系共重合体に、優れたセメント粒子分散性やコンクリートの粘性を低下させる効果などを与えることができる。80モル%未満であると、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の疎水性が強くなり、得られる重合体の疎水性も強くなることから、セメント粒子の分散性の低下・硬化遅延などをおこす原因となる。より好ましくは、85モル%以上であり、更に好ましくは、90モル%以上であり、特に好ましくは、95モル%以上であり、最も好ましくは、100モル%ある。
上記2種以上のアルキレンオキサイドを付加させる場合の組み合わせとしては、(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)、(エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド)、(エチレンオキサイド、スチレンオキサイド)が好ましい。中でも、(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)がより好ましい。
上記2種以上のアルキレンオキサイドを付加させる場合は、それぞれの付加方法としては、ブロック状付加、ランダム状付加、交互状付加等のいずれの付加形態でもよい。
【0038】
上記付加反応においては、付加温度が80〜170℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは90〜160℃の範囲であり、更に好ましくは100〜150℃の範囲である。付加反応温度が高すぎると、副反応物が増える傾向があり、例えば得られた反応生成物を用いてセメント分散剤用ポリマーを得た場合、減水性能等の性能が低下する傾向がある。一方、低すぎると付加速度が遅くなり生産性が低下するので好ましくない。上記工程2において、反応時間としては、50時間以内が好ましく、より好ましくは40時間以内であり、更に好ましくは30時間以内である。反応時間が長すぎると副生成物が増える傾向がある。上記付加反応においては、加圧下が行うことが好ましい。付加反応開始時の圧力としては、0.01〜0.5MPaが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.3MPaであり、更に好ましくは、0.1〜0.2MPaである。付加反応時の圧力としては、0.9MPa以下が好ましい。
【0039】
上記付加反応においては、触媒を用いることが好適である。触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物、ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機金属化合物、三フッ化ホウ素、四塩化チタン等のルイス酸、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等の金属アルコキシドが好ましい。より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、三フッ化ホウ素であり、更に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。上記触媒濃度としては、仕込み原料から算出されるアルキレンオキサイド付加物理論量に対する触媒の重量比が10000ppm以下であることが好ましい。より好ましくは8000ppm以下であり、更に好ましくは5000ppm以下であり、最も好ましくは3000ppm以下である。触媒濃度が高すぎると、副生成物が多量に発生する傾向がある。
上記工程2において、付加反応は、回分式でも連続式でも行うことができ、反応条件等により適宜選択することができる。
【0040】
上記工程2において、例えば、2段階でアルキレンオキサイドの付加反応を行う場合に、1段階目を工程2−1とし、2段階目を工程2−2とすると、上記工程2−1と工程2−2において、アルキレンオキサイド付加反応の反応温度及び反応時間としては、工程2−1及び工程2−2のいずれかで1回以上反応温度を変える場合、(1)150℃以上の反応温度を全反応時間の50%以下にする、及び/又は、(2)反応温度の平均値を150℃以下にすることが好ましい。なお、温度変化は工程2−1と工程2−2のいずれで行ってもよく、温度変化の回数も特に限定されない。具体的には、工程2−1と工程2−2とで反応温度を変更する場合、
(1)150℃以上の反応時間を50%以下にすることが好ましい。
(2)反応温度の平均値を150℃以下にすることが好ましい。
(3)反応時間の長い工程を150℃以下にすることが好ましい。
(4)オキシアルキレン基の長い不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体の方が転位し易い傾向にあるので、工程2−1よりも工程2−2の方が反応温度を低くすることが好ましい。
上記工程2−1と工程2−2の各工程の途中で反応温度を変更する場合、(1)150℃以上の反応時間を50%以下にすることが好ましい、(2)反応温度の平均値を150℃以下にすることが好ましい。上記工程2−1と工程2−2の少なくとも一方の段階を2段階以上で行う場合も同様であり、(1)150℃以上の反応温度を全反応時間の50%以下にする、及び/又は、(2)反応温度の平均値を150℃以下にすることが好ましい。中でも、工程2−1と工程2−2を構成する2段階以上の反応温度は150℃以下であることが最も好ましい。各段階で反応温度が異なる場合、150℃以下の反応温度が主反応温度であることが好ましい。例えば、(1)各段階の反応温度の平均値が150℃以下、(2)アルキレンオキサイド付加反応全工程の反応温度の平均値が150℃以下、(3)各段階の反応時間の合計に対して、150℃以上の反応時間が50%以下であることが好ましい。
【0041】
上記工程3としては、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸とを共重合する工程であり、目的とする重合体に応じて重合させる単量体や単量体の割合を選択し、その単量体に応じた反応条件等を適宜設定して重合を行うことが好適である。例えば、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸とを重合させてポリカルボン酸系共重合体を得る工程について、以下に説明する。
【0042】
上記工程3は、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体と不飽和カルボン酸とを共重合するものである。
上記不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体(単量体(i)とも言う。)としては、上記工程2を含む製造方法で得られるものであることが好ましく、1種又は2種以上を用いてもよい。2種以上用いる場合としては、オキシアルキレン基の平均付加モル数nが110〜140の範囲のものが必須として含まれるものであればよく、例えば、オキシアルキレン基の平均付加モル数が110〜140の範囲において異なる2種以上の組み合わせであってもよく、オキシアルキレン基の平均付加モル数が110〜140の範囲のものと、1〜300の範囲のものとを組み合わせて用いてもよい。このとき、オキシアルキレン基の平均付加モル数nの差は10以上であるのが好ましく、20以上であるのがより好ましい。例えば、平均付加モル数nが110〜140であるものと、平均付加モル数nが1〜110であるものとの組み合わせ等が好適である。この場合、nの差としては、10以上が好ましく、より好ましくは20以上である。また、こられの割合としては、平均付加モル数nが1〜110であるものよりも平均付加モル数nが110〜140であるものの割合(重量比)の方が多いことが好ましい。異なる3種以上の単量体(i)を用いる場合も、平均付加モル数nの差は、10以上であるのが好ましく、20以上であるのがより好ましい。
【0043】
本発明においては、上記工程1〜3を含むポリカルボン酸系共重合体の製造方法が好適な形態の一つであり、以下に、工程1〜3の特に好ましい形態について下記化学反応式に沿って説明する。
上記工程1においては、メタリルクロライドとエチレングリコールを反応させてエチレングリコールモノメタリルエーテル(メタリルアルコール1EO)を得ることが好ましい。
【0044】
【化2】

【0045】
上記工程1においては、上記反応式に示すように、副生成物として、エチレングリコールジメタリルエーテル(X)、メタリルアルコール(W)及び水が生成することとなる。
上記工程1において得られたメタリルアルコール1EOを含む生成物は、蒸留により精製し、純度の高いメタリルアルコール1EOを得ることが好ましい。蒸留としては、減圧蒸留して水分を除去することが好ましい。
上記蒸留工程においては、エチレングリコール、塩化ナトリウムがボトム層に分離され、その他の副生成物(X)、メタリルアルコール(W)及びメタリルアルコール1EOは、沸点がいずれも近いため、メタリルアルコール1EOと同様に回収されることとなる。なお、メタリルアルコール1EOの沸点は、メタリルアルコール(W)の沸点(113〜115℃)より高いことから、蒸留しやすく、純度をより高くすることができる。
【0046】
上記工程2においては、工程1の蒸留精製混合物にエチレンオキサイド(EO)を付加することが好ましい。ここでは、メタリルアルコールn−EO付加物が生成することとなる。工程2においては、工程1での副生成物以外に、ポリエチレングリコール(Y)、メタリルアルコールn−EO付加物の二重結合が熱転位した内部オレフィン(Z)が生成する。
【0047】
【化3】

【0048】
上記工程3においては、下記反応式で表すように、工程2で得られたメタリルアルコール−n−EOを含む生成物とアクリル酸とを共重合させることが好ましい。具体的には、工程1、2の副生成物を含んだメタリルアルコールn−EO付加物をアクリル酸と共重合してポリカルボン酸系共重合体(ポリカルボン酸ポリマー)を得ることが好ましい。このようなポリカルボン酸系共重合体は、例えば、セメント混和剤用ポリカルボン酸として好適に用いることができる。
【0049】
【化4】

【0050】
本発明のポリカルボン酸系共重合体の製造方法においては、上述したように、メタリルアルコール−n−EO付加物を経て製造することが好ましい。
本発明における不飽和結合を有するハロゲン化合物としては、メタリルクロライドが特に好適である。また長鎖のアルキレンオキサイドを有するモノマーを生成して、長鎖のアルキレンオキサイドを有するポリカルボン酸系共重合体を得る場合は、メタリルクロライドを用いることが必要である。以下に3−メチル−3−ブテニルアルコールをエチレンオキサイド付加する場合の反応式を示し、メタリルクロライドを用いることがより好ましい理由について説明する。
【0051】
【化5】

【0052】
上記式に示すように、3−メチル−3−ブテニル系単量体(MBN系モノマー)では、エチレンオキサイドを付加反応させる過程で、MBN系モノマーが共役し、イソプレンとポリエチレングリコール(PEG)への分解反応がおこることがあり、長鎖化がメタリル系より困難である。また、EO付加後にMBN系モノマーを蒸留して精製する際や、加熱保存する際、MBN系モノマーをアクリル酸と共重合させるために溶媒に溶解する際に、場合により加温する必要があり、加温により分解反応がおこるおそれがある。このように高温長時間(例えば、130℃以上、40時間以上)さらされると、イソプレンとPEGに分解される。例えば、n=150程度までエチレンオキシドを付加して、長鎖化すると、エチレンオキシド付加中に分解物であるPEGが生成物全体のおよそ20〜50質量%程度生成するため、アクリル酸等と共重合する際に、MBN系モノマーの添加量が2倍程度必要となり、経済的に不利となるおそれがある。そのため、実質的には、EO鎖長が75mol程度までのMBN系モノマーが好適に用いられている。
【0053】
本発明の最も好ましい形態の一つであるメタリル系モノマーは、MBN系モノマーのような共役がおこらず、分解しないことから長鎖化をより容易に行うことができる。具体的には、EO鎖長は150mol以上も可能であり、本発明の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の最適なEO鎖長である110〜140mol、特に120mol程度のものを容易に調整することができる。このような長鎖PEGを有するポリカルボン酸系共重合体(ポリカルボン酸ポリマー)は、セメント混和剤として用いた場合に、セメント組成物の分散性能を高めることができ、コンクリートの早期強度(具体的には、24時間強度)を上げることができるという利点がある。メタリル系モノマーの好ましい反応の一例として、メタリルアルコールをエチレンオキサイド付加する場合の反応式を示す。
【0054】
【化6】

【0055】
本発明の最も好ましい形態の一つであるメタリル系モノマーについて、合成経路をまとめたものを以下に示す。なお、工程1においてメタリルクロライドとエチレングリコールとを反応させた結果、副生成物としてエチレングリコールジメタリルエーテル(X)、メタリルアルコール(W)及び水が生じるが、(W)のメタリルアルコールは、工程2におけるEO付加により、メタリルアルコール−n−EOとなる。
【0056】
【化7】

【0057】
上記工程2について、付加反応の一例を下記に示す。下記のように、EO付加させた場合は、副生成物として、ポリエチレングリコール(Y)が生成することがある。
【0058】
【化8】

【0059】
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、上述した単量体(i)〜(iii)等を共重合して得ることができ、その際の共重合は、上述の工程3により行うことが好適である。この工程3について、更に詳述する。
上記工程3は、溶液重合や塊状重合等の公知の方法で行うことができる。溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられるが、原料単量体及び得られる共重合体の溶解性から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましく、その中でも水を溶媒に用いるのが、脱溶剤工程を省略できる点でさらに好ましい。
【0060】
水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、たとえば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2, 2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2, 2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。
【0061】
また低級アルコール、芳香族又は脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0062】
塊状重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が用いられる。
【0063】
共重合の際の反応温度は、特に制限はないが、例えば、過硫酸塩を開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が適当であり、40〜95℃の範囲が好ましく、45〜90℃の範囲がさらに好ましい。また、過酸化水素と促進剤としてL−アスコルビン酸(塩)とを組み合わせて開始剤とした場合、反応温度は30〜100℃の範囲が適当であり、40〜95℃の範囲が好ましく、40〜90℃の範囲がさらに好ましい。
共重合の際の重合時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜10時間の範囲が適当であり、好ましくは0.5〜8時間、更に好ましくは1〜6時間の範囲がよい。重合時間が、この範囲より、長すぎたり短すぎたりすると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
共重合の際の全単量体成分の使用量は、他の原料及び重合溶媒を含む全原料に対して10〜99質量%の範囲が適当であるが、20〜98質量%の範囲が好ましく、25〜95質量%の範囲がより好ましく、30〜90質量%の範囲がさらに好ましく、30〜80質量%の範囲がとりわけ好ましく、40〜70質量%の範囲が最も好ましい。特に、全単量体成分の使用量がこの範囲より低すぎると、重合率の低下や生産性の低下をもたらし好ましくない。
【0064】
各単量体の反応容器への投入方法は特に限定されず、初期に全量を反応容器に一括投入する方法、全量を反応容器に分割もしくは連続投入する方法、初期に一部を反応容器に投入し、残りを反応容器に分割もしくは連続投入する方法のいずれでもよい。具体的には、単量体(i)の全量と単量体(ii)の全量を反応容器に連続投入する方法、初期に単量体(i)の一部を反応容器に投入し、単量体(i)の残りと単量体(ii)の全量を反応容器に連続投入する方法、又は、初期に単量体(i)の一部と単量体(ii)の一部を反応容器に投入し、単量体(i)の残りと単量体(ii)の残りをそれぞれ反応容器に連続投入、又は、数回に分けて分割投入、若しくは、数回に分けて交互に投入する方法、初期に単量体(i)の全量を反応容器に投入し、単量体(ii)の全量を反応容器に連続又は分割投入する方法、初期に単量体(i)の全量と単量体(ii)の一部を反応容器に投入し、残りの単量体(ii)を反応容器に連続又は分割投入する方法が挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入重量比を連続的又は段階的に変化させることにより、単量体(i)由来の構成単位(I)と単量体(ii)由来の構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0065】
共重合の際には、得られる共重合体の分子量調整のため、連鎖移動剤を用いることができる。特に、全単量体成分の使用量が、重合時に使用する原料の全量に対して30質量%以上となる高濃度で重合反応を行う場合には、連鎖移動剤を用いるのが好ましい。連鎖移動剤としては、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤を用いることができ、2種類以上の連鎖移動剤の併用も可能である。さらに、共重合体の分子量調整のためには、単量体(iii)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0066】
所定の分子量の共重合体を再現性よく得るには、共重合反応を安定に進行させることが重要であることから、溶液重合を行う場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度を5ppm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.01〜4ppm、更に好ましくは0.01〜2ppm、最も好ましくは0.01〜1ppmの範囲がよい。なお、溶媒に単量体を添加後、窒素置換等を行う場合には、単量体をも含んだ系の溶存酸素濃度を上記範囲とすればよい。
なお、溶媒の溶存酸素濃度の調整は、重合反応槽で行ってもよく、あらかじめ溶存酸素量を調整した溶媒を用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
【0067】
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることにより、溶媒中の酸素分圧を低くする。窒素気流下で密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま、液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に、窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
【0068】
上記共重合反応において、溶媒を用いる場合、重合をpH5以上で行なってもよいが、その場合、重合率の低下が起こると同時に、共重合性が悪くなりセメント混和剤として性能が低下するので、pH5未満で共重合反応を行うことが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質、又は、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類を用いて行うことができる。
【0069】
上記ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量は、3000〜300000の範囲が適当であるが、5000〜200000の範囲が好ましく、10000〜150000の範囲がより好ましく、10000〜100000の範囲がさらに好ましく、20000〜80000が最も好ましい。このような重量平均分子量の範囲を選ぶことで、より高い分散性能を発揮するセメント混和剤が得られる。
なお、重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミーエーションクロマトグラフィー(以下「GPC」という)によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量であり、後述するGPC測定条件により測定することが好ましい。
【0070】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、共重合体が有するカルボキシル基を全て未中和型に換算したときのカルボキシル基ミリ当量数が、共重合体1g当たり5.50meq以下であることが好ましく、より好ましくは0.10〜5.50meq/g、更に好ましくは0.15〜4.00meq/g、特に好ましくは0.20〜3.50meq/g、最も好ましくは0.30〜3.30meq/gの範囲がよい。
なお、上記ポリカルボン酸系共重合体におけるカルボキシル基を全て未中和型に換算したときのカルボキシル基ミリ当量数は、以下のようにして計算することができる。例えば、不飽和カルボン酸としてアクリル酸を用い、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体(単量体(i))/不飽和カルボン酸(単量体(ii))=90/10(質量%)の組成比で共重合した場合、アクリル酸の分子量は72であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.1/72)×1000=1.39(meq/g)となる(計算例1)。また、例えば、単量体(ii)としてアクリル酸ナトリウムを用い、単量体(i)/単量体(ii)=90/10(質量%)の組成比で共重合した場合、アクリル酸ナトリウムの分子量は94であり、アクリル酸の分子量は72であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.1/94)/(0.9+0.1×72/94)×1000=1.09(meq/g)となる(計算例2)。なお、重合時にはアクリル酸を用い、重合後にアクリル酸に由来するカルボキシル基を水酸化ナトリウムで中和した場合にも、計算例2と同様に計算できる。また、例えば、単量体(ii)としてメタクリル酸ナトリウム及びアクリル酸ナトリウムを用い、単量体(i)/メタクリル酸ナトリウム/アクリル酸ナトリウム=90/5/5(質量%)の組成比で共重合した場合、メタクリル酸の分子量は86、メタクリル酸ナトリウムの分子量は108、アクリル酸の分子量は72、アクリル酸ナトリウムの分子量は94であるので、共重合体1g当たりのカルボキシル基ミリ当量数は、(0.05/108+0.05/94)/(0.9+0.05×86/108+0.05×72/94)×1000=1.02(meq/g)となる(計算例3)。
【0071】
上記ポリカルボン酸系共重合体は、そのままでもセメント混和剤の主成分として用いることもできるが、取り扱い性の観点からは、pHを5以上に調整しておくことが好ましい。上述したように、pH5未満で共重合反応を行うことが好ましく、共重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。また、反応終了後、必要ならば濃度調整を行うこともできる。また、上記ポリカルボン酸系共重合体は、水溶液の形態でそのままセメント混和剤の主成分として使用してもよいし、又は、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用してもよい。
【0072】
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体を必須とするものである。上記セメント混和剤における上記ポリカルボン酸系共重合体の含有量は、特に制限されないが、セメント混和剤中の固形分、すなわち不揮発分の20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
本発明において、セメント混和剤の固形分測定方法としては、以下の方法が好適である。
(固形分測定方法)
1.アルミ皿を精秤する。
2.1で精秤したアルミ皿に固形分測定物を精秤する。
3.窒素雰囲気下130℃に調温した乾燥機に2で精秤した固形分測定物を1時間入れる。
4.1時間後、乾燥機から取り出し、室温のデシケーター内で15分間放冷する。
5.15分後、デシケーターから取り出し、アルミ皿+測定物を精秤する。
6.5で得られた質量から1で得られたアルミ皿の質量を差し引き、2で得られた固定分の質量を除することで固形分を測定する。
上記セメント混和剤は、2種以上の共重合体が組み合わせされたものであってもよい。例えば、単量体(i)由来の構成単位(I)と単量体(ii)由来の構成単位(II)との比率が異なる2種以上の共重合体の組み合わせや、上記単量体(i)により導入された構成単位(I)のオキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2種以上の共重合体の組み合わせ等が可能である。
【0073】
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体以外に、ポリアルキレングリコールを該共重合体に対して1〜50質量%含有するのが好ましい。より好ましくは2〜50質量%、更に好ましくは2〜40質量%、特に好ましくは3〜30質量%含有するのがよい。ポリアルキレングリコールをも含有することにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる分散剤となる。ポリアルキレングリコールの含有割合が1質量%未満であると、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分となり、一方、50質量%を超えると、セメントに対する分散性が低下することとなり好ましくない。
【0074】
上記ポリアルキレングリコールとしては、オキシアルキレン基の炭素数が2〜18の範囲であるものが適当であり、好ましくはオキシアルキレン基の炭素数が2〜8の範囲、より好ましくは2〜4の範囲がよい。さらに、上記ポリアルキレングリコールは水溶性であることが必要であることから、親水性が高い炭素数2のオキシアルキレン基、すなわちオキシエチレン基を少なくとも必須とすることが好ましく、90モル%以上のオキシエチレン基を含むことがより好ましい。また、オキシアルキレン基の繰り返し単位は同一であってもよく又は異なっていてもよく、オキシアルキレン基が2種以上の混合物の形態である場合には、ブロック状付加、ランダム状付加、交互状付加等のいずれの付加形態でもよい。また、ポリアルキレングリコールの末端基は、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基又は(アルキル)フェニル基が適当であるが、水素原子が好ましい。また、ポリアルキレングリコールの平均分子量としては、500〜200000の範囲が好ましいが、1000〜100000の範囲がより好ましく、2000〜50000の範囲がさらに好ましい。
【0075】
上記ポリアルキレングリコールとして、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられるが、該ポリアルキレングリコールは水溶性であることが必要であることから、親水性の高いオキシエチレン基を必須成分として含むポリエチレングリコール又はポリエチレンポリプロピレングリコールが好ましく、ポリエチレングリコールが最も好ましい。
【0076】
上記ポリアルキレングリコールを含有するセメント混和剤は、例えば、工程2において不純物として生成するポリアルキレングリコールを除去せず、不飽和(ポリ)アルキレングリコール系エーテル単量体(単量体(i))とともに工程3に用いることにより得ることが好ましい。このように、不純物としてポリアルキレングリコールを含む不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル(単量体(i))を単量体成分として用いることによって、上記ポリアルキレングリコールを含有するセメント混和剤を容易に得ることができる。上記単量体(i)は、また、工程1で反応させる(ポリ)アルキレングリコールと、工程2で付加させるアルキレンオキシドとが同じアルキレン基である場合、不飽和結合を有するハロゲン化物のハロゲンが水酸基に置換された不飽和結合を有するアルコールに、アルキレンオキシドを付加させて得ることもできる。例えば、メタリルアルコール、3−ブテン−1−オール、アリルアルコール等の不飽和結合を有するアルコール(不飽和アルコール類)に、アルキレンオキシドを付加することによっても得ることができる。このような付加反応において、反応系に上記不飽和結合を有するアルコール(不飽和アルコール類)以外の飽和脂肪族アルコール類(メタノール、エタノール等)や水等の活性水素を有する化合物が存在していると、目的とする不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体以外にポリアルキレングリコールを副生することがある。この副生したポリアルキレングリコールを除去することなく、付加反応で得られた生成物をそのまま原料として用いることによって、精製工程等の簡略化が図れると同時に、得られるセメント混和剤は、共重合体とポリアルキレングリコールとを含有することとなり、硬化前のモルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる。
【0077】
不純物として含有するポリアルキレングリコールの含有量は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体に対して0.5〜50質量%が適当であるが、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。ポリアルキレングリコールの割合が50質量%を超えると、ポリアルキレングリコール自身のセメント粒子分散性能が低いことから、セメント混和剤としての使用量が増えることとなり好ましくない。
【0078】
上記セメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体以外に、上記ポリアルキレンオキシド鎖を有する不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル(単量体(i))を該共重合体に対して1〜100質量%含有するのが好ましい。より好ましくは2〜100質量%、更に好ましくは3〜90質量%、特に好ましくは5〜80質量%含有するのがよい。単量体(i)をも含有することにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティをより向上させることができる分散剤となる。単量体(i)の含有割合が1質量%未満であると、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分となり、一方、100質量%を超えると、セメントに対する分散性が低下することとなり好ましくない。
【0079】
このような上記単量体(i)をも含有するセメント混和剤は、上記ポリカルボン酸系共重合体を得る際の共重合時に、未反応の単量体(i)が生成した重合体に対して1〜100質量%となる時点で重合反応を停止することによって、容易に得ることができる。これにより、得られた生成物は共重合体以外に、単量体(i)を含有することとなり、優れた分散性能を発揮することができる。重合反応を停止する時点は、好ましくは、単量体(i)が重合体に対して2〜80質量%残留している時点、より好ましくは3〜70質量%残留している時点、更に好ましくは5〜60質量%残留している時点とするのがよい。未反応の単量体(i)が生成した重合体に対して1質量%未満となる時点で重合反応を停止すると、得られるセメント混和剤が、モルタルやコンクリートのワーカビリティの向上効果が不十分なものとなり、一方、100質量%を超える時点で重合反応を停止すると、セメントに対する分散性が低下することとなる。
【0080】
上記セメント混和剤の最も好ましい形態は、上記ポリアルキレングリコールと上記単量体(i)とをともに上記割合で含有するものである。これら両成分を含むことにより、モルタルやコンクリートのワーカビリティに極めて優れた分散剤となる。
【0081】
上記セメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と上記セメント混和剤とを含有し、さらに必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0082】
上記例示の水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的であり、上記セメント混和剤、セメント及び水を必須成分として含んでなるセメント組成物もまた、本発明の好ましい形態の一つである。
【0083】
上記セメント組成物において使用されるセメントとしては、特に限定はない。たとえば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。又、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0084】
上記セメント組成物においては、その1m3 あたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比にはとりたてて制限はなく、単位水量100〜185kg/m3 、使用セメント量250〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7、好ましくは単位水量120〜175kg/m3 、使用セメント量270〜800kg/m3 、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.65が推奨される。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3 以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0085】
本発明のセメント組成物における上記セメント混和剤の配合割合については、特に限定はないが、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント重量の0.01〜10質量%、好ましくは0.02〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01質量%未満では性能的に不十分であり、逆に10質量%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となる。
【0086】
上記セメント組成物は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、さらに、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0087】
上記セメント組成物は、公知のセメント混和剤を含有していてもよい。使用可能な公知のセメント混和剤としては、特に限定はなく、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系等が挙げられる。又、ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(又はビニルスルホン酸(塩)又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で2〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体にさらに(メタ)アクリルアミド及び/又は2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合した共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で5〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とエチレンオキシドを平均付加モル数で1〜30付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(又はp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の4種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸のポリアルキレングリコールエステル系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;等が挙げられる。尚、上記公知のセメント混和剤は、複数の併用も可能である。
【0088】
なお、上記公知のセメント分散剤を用いる場合、上記セメント混和剤と公知のセメント混和剤との配合重量比は、使用する公知のセメント混和剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10の範囲内である。
さらに、上記セメント組成物は、以下の(1)〜(20)に例示するような他の公知のセメント添加剤(材)を含有することができる。
【0089】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1. 3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでもよく、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物等。
【0090】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ( メチレンホスホン酸) 、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ( メチレンホスホン酸) 、ジエチレントリアミンペンタ( メチレンホスホン酸) 及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体等。
【0091】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0092】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0093】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0094】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0095】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS (アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS (直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0096】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有してもよい、スルホン基を有する2 個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0097】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0098】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、たとえば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。なお、上記公知のセメント添加剤(材)は、複数の併用も可能である。
【0099】
上記セメント組成物において、セメント及び水以外の成分についての特に好適な実施形態としては、次の1)〜7)が挙げられる。
【0100】
1)(i)上記セメント混和剤、(ii)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(ii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤に対して0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0101】
2)(i)上記セメント混和剤、(ii)炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等参照)、(iii)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の共重合体との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。(iii)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(i)のセメント混和剤と(ii)の共重合体との合計量に対して0.01〜10質量%の範囲が好ましい。
【0102】
3)(i)上記セメント混和剤、(ii)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0103】
4)(i)上記セメント混和剤、(ii)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、5:95〜95:5の範囲が好ましく、10:90〜90:10の範囲がより好ましい。
【0104】
5)(i)上記セメント混和剤、(ii)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の材料分離低減剤との配合重量比としては、10:90〜99.99:0.01の範囲が好ましく、50:50〜99.9:0.1の範囲がより好ましい。この組み合わせからなるセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材として好適である。
【0105】
6)(i)上記セメント混和剤、(ii)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ( メチレンホスホン酸) 等のホスホン酸類等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の遅延剤との配合重量比としては、50:50〜99.9:0.1の範囲が好ましく、70:30〜99:1の範囲がより好ましい。
【0106】
7)(i)上記セメント混和剤、(ii)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。なお、(i)のセメント混和剤と(ii)の促進剤との配合重量比としては、10:90〜99.9:0.1の範囲が好ましく、20:80〜99:1の範囲がより好ましい。
【発明の効果】
【0107】
本発明のセメント混和剤は、上述の構成よりなり、種々の用途に好適に用いることができ、セメント組成物に対して高い分散性能を発現することができ、コンクリート等の早期強度を向上することができるセメント混和剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
以下に実施例を掲げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、下記の製造例では、特に断らない限り、収率を除いて、「%」は「質量%」を意味する。
【0109】
GPC測定条件は以下の通りである。
使用カラム:東ソー株式会社製
TSK guard column SWXL
TSKgel G4000SWXL
TSKgel G3000SWXL
TSKgel G2000SWXLをこの順で連結させたもの。
溶離液:アセトニトリル6001g、水10999gの溶液に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整したものを使用した。
サンプル:重合体水溶液を上記溶離液にて重合体濃度が0.5質量%となるように溶解させたもの。
サンプル打ち込み量:100μL
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出器:Waters 2414 RI検出器
System:Waters alliance 2695
解析ソフト:Waters Empoer2(標準パッケージ/GPCオプション)
検量線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)272500、219300、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470〕
検量線:上記のポリエチレングリコールのMp値と溶出時間を基にして3次式で作成した。
【0110】
製造例1
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102.2g、メタリルアルコールに平均120モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198.3g、アクリル酸0.14gを仕込み、撹拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液12.6gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸7.9gとイオン交換水16.5gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.4gにL−アスコルビン酸0.65g及び3−メルカプトプロピオン酸0.47gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量48000の重合体水溶液から成るセメント分散剤1を得た。
【0111】
製造例2
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水137g、メタリルアルコールに平均135モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル265g、アクリル酸0.48gを仕込み、撹拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熟した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液15.32gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸9.3gとイオン交換水22.82gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水48.62gにL−アスコルビン酸0.793g及び3−メルカプトプロピオン酸0.583gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量50600の重合体水溶液から成るセメント分散剤2を得た。
【0112】
製造例3
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102.3g、メタリルアルコールに平均50モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198.3g、アクリル酸0.35gを仕込み、撹拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液16.8gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸7.6gとイオン交換水12.1gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.36gにL−アスコルビン酸0.87g及び3−メルカプトプロピオン酸0.27gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量48000の重合体水溶液から成る比較セメント分散剤1を得た。
【0113】
製造例4
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102.3g、メタリルアルコールに平均100モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198.3g、アクリル酸0.36gを仕込み、撹拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熱した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶液13.2gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸7.6gとイオン交換水15.7gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.60gにL−アスコルビン酸0.68g及び3−メルカプトプロピオン酸0.21gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量50000の重合体水溶液から成る比較セメント分散剤2を得た。
【0114】
製造例5
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却装置を備えたガラス製反応装置内に、イオン交換水102.3g、メタリルアルコールに平均150モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル198.3g、アクリル酸0.36gを仕込み、撹拌下に反応装置内を窒素置換し、窒素雰囲気下で58℃まで加熟した。反応容器内を58℃に保った状態で、2%過酸化水素水溶演12.0gを添加した。反応容器内を58℃に維持した状態で、アクリル酸7.6gとイオン交換水17.0gからなるアクリル酸水溶液を3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水36.51gにL−アスコルビン酸0.62g及び3−メルカプトプロピオン酸0.37gを溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、2時間引き続いて58℃に温度を維持した後、重合反応を終了した。その後、酸性の反応溶液を重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH6に中和し、重量平均分子量49000の重合体水溶液から成る比較セメント分散剤3を得た。
【0115】
<コンクリート試験>
以上のようにして得られた本発明のセメント分散剤1、2及び比較セメント分敢剤1、2、3を用いてコンクリート組成物を調整し、下記の方法でスランプフロー値、スランプフロー値の経時変化、空気量、圧縮強度を測定した。なお、コンクリート組成物の温度が20℃の試験温度になるように、試験に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類をこの試験温度雰囲気下で調温し、混練及び各測定もこの試験温度雰囲気下で行った。結果を表1に示す。
【0116】
<コンクリート試験配合>
単位セメント量:573.3Kg/m
単位水量:172.0Kg/m(ポリマー、消泡剤などの混和剤を含む)
単位細骨剤量:737.2Kg/m
単位粗骨剤量:866.0Kg/m
水/セメント比(W/C):30.0%
骨材量比(s/a):47.0%
セメント:太平洋セメント社製 普通ポルトランドセメント
細骨剤:君津産山砂と掛川水系産睦砂を3/7で混合したもの
粗骨剤:青梅産砕石
【0117】
<コンクリート組成物の調整>
上記コンクリート原料、配合により、練り混ぜ量が30Lとなるようにそれぞれの材料を計量し、パン型ミキサーを使用して下記に記載の方法によって材料の温練を実施した。
まず細骨材を10秒間混練した後、セメントを加えて10秒間混練した。その後セメント混和剤を含む所定量の水道水を加えて30−90秒間混練した。その後更に粗骨材を加えて90秒間混練して、コンクリート組成物を得た。また評価試験においては、セメント混和剤を含む水道水を加えた後の混練開始時間をゼロ分とした。
【0118】
<セメント混和剤の調整>
セメント分散剤と消泡剤を用いて調整した。セメント分散剤は、本発明のセメント分散剤1、2及び比較セメント分散剤1、2、3のいずれかを用いた。セメント分散剤の必要量は、下記の方法で測定したセメント分散剤中の不揮発分の量を用いて算出した。消泡剤には市販のオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が1.5±0.5vol%となるように調整した。
【0119】
<不揮発分の測定>
アルミカップに重合体水溶液を約0.5g測り採り、イオン交換水約1gを加えて均一に広げた。これを窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥し、乾燥前後の重量差から不揮発分を計算した。
<評価試験項目と測定方法>
スランプフロー値:JIS−A−1101
圧縮強度:JIS−A−1108(供試体作製:JIS−A−1132)
空気量:JIS−A−1128
【0120】
【表1】

【0121】
上記結果を表2にまとめた。表2中、
MLA−nは、メタリルアルコールにエチレンオキサイドをnモル付加した単量体を表し、SAは、アクリル酸ナトリウムを表す。
【0122】
【表2】

【0123】
表1及び2より、本発明のセメント分散剤1及び2は、比較セメント分散剤1、2、3に比べて所定のスランプフロー値を得るための添加量が少なく、スランプフロー値の経時変化が少なく、24時間における圧縮強度が大きいことが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位と不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位とを必須構成単位とする共重合体を含有するセメント混和剤であって、
該不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位は、下記一般式(1):
【化1】

(式中、ROは、同一又は異なって、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、110〜140の数である。Rは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。)で表される単量体由来のものであることを特徴とするセメント混和剤。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位は、(メタ)アクリル酸(塩)に由来する構造を必須とすることを特徴とする請求項1に記載のセメント混和剤。

【公開番号】特開2008−273820(P2008−273820A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−93433(P2008−93433)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】