説明

セラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス乾燥体の製造方法、ならびにセラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス焼成体の製造方法

【課題】セラミックス原料から作製した成形体を乾燥したときの収縮の度合いを予測可能にする技術を提供する。
【解決手段】坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間と、この坏土から作製した成形体および乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)との相関関係を求めておき、前記坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土から乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて坏土AについてのH−NMRのT緩和時間または乾燥体Cについての乾燥割り掛けを予測するセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス乾燥体の製造方法、ならびにセラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス焼成体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日においては、種々の形状や大きさのセラミックス製品が広く用いられている。セラミックス製品は、無機粉末や水などを混ぜ合わせたセラミックス原料を混練することにより坏土を作製し、この坏土を所望の形状に成形して成形体を作製し、次いで、この成形体を乾燥、さらに焼成するという工程を経ることにより製造することができる。そして、坏土については、柔らかくかつ粘りがあるので、簡便に成形することができ、また、複雑な形状であっても容易に成形することができるという特徴がある。このような坏土の特徴から、成形体を作製する時点で、成形体を完成品の形状に同じにしておくことが簡便にできる。そこで、成形体を完成品と同じ形状にして作製した場合には、この成形体を乾燥、焼成するだけで直ちにセラミックス製品を製造することができるという長所がある。その一方で、成形体を乾燥したり、さらには焼成したりするときに寸法が縮んでしまうので、セラミックス製品を予め定めた寸法どおりに製造することが困難であるという短所がある。また、乾燥時の収縮の度合いや焼成時の収縮の度合いについては、セラミックス原料の組成が影響を及ぼすことが知られている(例えば、特許文献1を参照)。そのため、過去において乾燥体や焼成体を目的の寸法で作製したことがある場合には、この時と同じ製造方法を繰り返すことにより、セラミックス製品を目的の寸法どおりに製造しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−51459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、同じ方法でセラミックス製品を製造する場合でも、乾燥時の収縮の度合いや焼成時の収縮の度合いが製造するたびに変動してしまうことがあるので、セラミックス製品を目的の寸法どおりに製造することができないことがある。そこで、乾燥時の収縮の度合いや焼成時の収縮の度合いを予測することが望まれるが、乾燥時の収縮の度合いや焼成時の収縮の度合いを予測する方法は知られていない。
【0005】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、セラミックス原料から作製した成形体を乾燥したときの収縮の度合いや、セラミックス原料から作製した乾燥体を焼成したときの収縮の度合いを予測可能にする技術を提供することにある。
【0006】
また、別の本発明の目的は、セラミックス原料から乾燥体を目的の寸法どおりに製造することを可能にする技術を提供することや、セラミックス原料から焼成体を目的の寸法どおりに製造することを可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した目的を達成するものである。具体的には、本発明は、以下に示す、セラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、セラミックス乾燥体の製造方法、セラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびセラミックス焼成体の製造方法である。
【0008】
[1] 無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、前記複数の坏土についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の乾燥体についての前記乾燥割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて該坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間または該乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを予測するセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【0009】
[2] 前記相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]にて近似して求める前記[1]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【0010】
[3] 前記[1]または[2]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法から前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを算出し、前記相関関係において前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように、前記坏土Aを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【0011】
[4] 前記[1]または[2]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、前記相関関係において前記坏土AについてのH−NMRのT緩和時間の値に対応する前記乾燥割り掛けの値として求められる乾燥割り掛けの予測値を算出し、前記成形体Bの寸法については前記乾燥体Cの寸法に前記乾燥割り掛けの予測値を乗じた値となるように、前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【0012】
[5] 無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、前記複数の成形体についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の乾燥体についての前記乾燥割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間または該乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを予測するセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【0013】
[6] 前記相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A成形体−乾燥×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数B成形体−乾燥]にて近似して求める前記[5]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【0014】
[7] 前記[5]または[6]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法から前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを算出し、前記相関関係において前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように、前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【0015】
[8] 前記[5]または[6]に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、前記相関関係において前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記乾燥割り掛けの値として求められる乾燥割り掛けの予測値を算出し、前記成形体Bの寸法については前記乾燥体Cの寸法に前記乾燥割り掛けの予測値を乗じた値となるように、前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【0016】
[9] 無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、前記複数の焼成体についての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、前記複数の坏土についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の焼成体についての前記焼成割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間または該焼成体Dについての前記焼成割り掛けを予測するセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【0017】
[10] 前記相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]にて近似して求める前記[9]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【0018】
[11] 前記[9]または[10]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法から前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けを算出し、前記相関関係において前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように、前記坏土Aを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【0019】
[12] 前記[9]または[10]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、前記相関関係において前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記焼成割り掛けの値として求められる焼成割り掛けの予測値を算出し、前記乾燥体Cの寸法については前記焼成体Dの寸法に前記焼成割り掛けの予測値を乗じた値となるように、前記乾燥体Cを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【0020】
[13] 無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、前記複数の焼成体についての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、前記複数の成形体についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の焼成体についての前記焼成割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間または該焼成体Dについての前記焼成割り掛けを予測するセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【0021】
[14] 前記相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C成形体−焼成×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数D成形体−焼成]にて近似して求める前記[13]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【0022】
[15] 前記[13]または[14]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法から前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けを算出し、前記相関関係において前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように、前記成形体Bを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【0023】
[16] 前記[13]または[14]に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、前記相関関係において前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記焼成割り掛けの値として求められる焼成割り掛けの予測値を算出し、前記乾燥体Cの寸法については前記焼成体Dの寸法に前記焼成割り掛けの予測値を乗じた値となるように、前記乾燥体Cを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法は、セラミックス原料から作製した成形体を乾燥したときの収縮の度合いを予測することを可能にする。また、本発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法は、セラミックス原料から作製した乾燥体を焼成したときの収縮の度合いを予測することを可能にする。
【0025】
また、本発明のセラミックス乾燥体の製造方法は、セラミックス原料から乾燥体を目的の寸法どおりに製造することを可能にする。本発明のセラミックス焼成体の製造方法は、セラミックス原料から焼成体を目的の寸法どおりに製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。
【図2】坏土についてのH−NMRのT緩和時間と乾燥体の乾燥割り掛けとの相関関係を表す図である。
【図3】第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分、および、これを用いるセラミックス乾燥体の製造方法の一実施形態の概要を表すフロー図である。
【図4】第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。
【図5】第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分、および、これを用いるセラミックス乾燥体の製造方法の一実施形態の概要を表すフロー図である。
【図6】第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。
【図7】坏土についてのH−NMRのT緩和時間と焼成体の焼成割り掛けとの相関関係を表す図である。
【図8】第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分、および、これを用いるセラミックス焼成体の製造方法の一実施形態の概要を表すフロー図である。
【図9】第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。
【図10】第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分、および、これを用いるセラミックス焼成体の製造方法の一実施形態の概要を表すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0028】
1.第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、およびこれを用いたセラミックス乾燥体の製造方法:
本願の第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法は、無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、複数の坏土のそれぞれについてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、複数の坏土のそれぞれを成形して複数の成形体を作製し、さらに複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、複数の乾燥体のそれぞれについての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、複数の坏土のそれぞれについてのH−NMRのT緩和時間と、複数の坏土のそれぞれから作製した乾燥体についての乾燥割り掛けとの関係に基づいて、H−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、上述した複数の坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて該坏土AについてのH−NMRのT緩和時間または該乾燥体Cについての乾燥割り掛けを予測する。
【0029】
図1は、第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、本第一発明では、まず、坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間(以下、「坏土のH−NMRのT緩和時間」という)と、この坏土から作製した乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)(以下、単に「乾燥割り掛け」という)との相関関係を求める。
【0030】
はじめに、セラミックス乾燥体の作製について説明する。図1の破線で囲まれた部分に示されるように、セラミックス乾燥体を作製する際には、まず、セラミックス原料から坏土を作製する。ここで、本明細書にいうセラミックス原料とは、坏土を作製するための原料のことであり、少なくとも無機粉末と水とを含み、その他の材料としてはバインダや界面活性剤などを適宜含むことがある。また、本第一発明に使用できる無機粉末としては、ガラス、アルミナ、シリカ、タルク、カオリン、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミナ、ジルコニア、サイアロンなどのセラミックス粉末を挙げることができる。なお、本第一発明に使用できるセラミックス原料には、上述したセラミックス粉末を1種のみ含んでもよいし、または2種以上を含んでいてもよい。また、本明細書にいう坏土とは、上述したセラミックス原料を混練することにより作製できるもののことであり、また、焼成することによりセラミックス製品を作製できるもののことをいう。
【0031】
次に、坏土を所望の形状に成形して成形体を作製する。坏土を成形する方法については、特に限定されないが、例えば、押出成形、射出成形、プレス成形などを用いることができる。
【0032】
続いて、成形体を乾燥して乾燥体を作製する。成形体を乾燥する方法については、特に限定されないが、例えば、室温で自然乾燥する方法(自然乾燥)、熱風を当てて乾燥する方法(熱風乾燥)、高周波エネルギーを利用して乾燥する方法(誘電乾燥)、マイクロ波を利用して乾燥する方法(マイクロ波乾燥)などを用いることができる。
【0033】
本第一発明では、略同一組成のセラミックス原料から坏土を作製するのであれば、複数の坏土の作製や、複数の乾燥体の作製は、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。また、坏土のH−NMRのT緩和時間の測定や乾燥割り掛けの測定についても、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。
【0034】
本第一発明にいう坏土のH−NMRのT緩和時間は、坏土に含まれる物質中のプロトン(H)から発せられたNMR信号から測定されるものである。一般に、H−NMRのT緩和時間は、観察核となったプロトン(H)を含む分子の運動性と相関を示す。具体的には、観察核となったプロトン(H)を含んだ分子の集まりの中で、運動性の高い分子の数の割合が多くなるにつれて、T緩和時間がより長くなる傾向がある。この原理を利用すると、H−NMRのT緩和時間を測定することにより、観察核となったプロトン(H)を含む分子がどのような状態で坏土中に存在しているのかを把握することが可能になり、ひいては坏土中における無機粉末や水などの各種材料の混じり合いの度合いを把握することが可能になる。そして、坏土中における各種材料の混じり合いの度合いは、この坏土から作製した成形体を乾燥したときの収縮の度合い、すなわち乾燥割り掛けに影響を与えている。そのため、坏土中における各種材料の混じり合いの度合いと乾燥割り掛けとの間には相関関係が存在する。ここで、本第一発明では、坏土中における各種材料の混じり合いの度合いを坏土のH−NMRのT緩和時間に置き換えて、坏土のH−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの間の相関関係を求めている。
【0035】
坏土のH−NMRのT緩和時間は、坏土の一部または全てを乾燥防止の処置を施した後に簡便に測定することができる。よって、本第一発明では、坏土のH−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの相関関係については坏土を簡便に取り扱うだけで求めることが可能になる。
【0036】
また、本第一発明では、坏土のH−NMRのT緩和時間については、坏土のH−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの相関関係がより明確になるという観点からは、坏土に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核として測定することが好ましい。ここで、水分子(HO)のプロトン(H)を観察核としてH−NMRのT緩和時間を測定する場合には、水分子に含まれるプロトン(H)の共鳴周波数に一致する周波数を持つ高周波を坏土に照射すると、NMR信号は水分子(HO)中のプロトン(H)から発生したものが主となり、水分子(HO)のプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間をより適切に測定することが可能になる。
【0037】
そして、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定することにより、坏土中での無機粉末や水などの混じり合いの状態を把握することが可能になる。具体的には、無機粉末の粒子同士の間に水が割り込んでいる状態になっているのか、あるいは、坏土中で無機粉末の粒子同士が接触して塊の状態になっているのか、を把握することが可能になる。
【0038】
坏土中で無機粉末の粒子同士の間に水が割り込んでいる状態になっている場合には、多くの水分子が無機粉末の粒子の表面に結合して運動性を失うので、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が短くなる傾向がある。そして、坏土中で無機粉末の粒子同士の間に水が割り込んでいる状態になっている場合には、この坏土から作製した成形体を乾燥すると、無機粉末の粒子同士の間にある水が抜けていくので、無機粉末の粒子同士の間の距離が縮まり、その結果、乾燥によって収縮する幅が大きくなる傾向がある。よって、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が短い場合には、この坏土から作製した乾燥体の乾燥割り掛けが大きくなる傾向がある。
【0039】
また、坏土中で無機粉末の粒子同士が接触して塊の状態になっている場合には、坏土中で水も塊の状態で存在し、水の塊の中では水分子の運動性が高いので、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長くなる傾向がある。そして、坏土中で無機粉末の粒子同士が接触して塊の状態になっている場合には、坏土の時点で無機粉末の粒子同士が既に接触しているので、この坏土から作製した成形体を乾燥しても、乾燥によって収縮する幅が小さくなる傾向がある。よって、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長い場合には、この坏土から作製した乾燥体の乾燥割り掛けが小さくなる傾向がある。
【0040】
図2は、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間と、乾燥割り掛けとの関係を示す図である。図中に散在する複数の点のぞれぞれは、個別の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間の値、および当該坏土から作製した乾燥体の乾燥割り掛けの値を示す。また、この図に示したデータは、同一組成のセラミックス原料から作製した複数の坏土についてのものである。図2に示されたデータからは、上述したように、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長くなるにつれて、その坏土から作製した乾燥体の乾燥割り掛けが小さくなる傾向があることが確認できる。
【0041】
本第一発明では、図2に示されたように、この相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]にて近似して求めることができる。図2に示した一次関数は、最小二乗法を用いて係数A坏土−乾燥および係数B坏土−乾燥を導き出している。
【0042】
さらに、本第一発明では、この相関関係を利用することにより、略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、この坏土Aから乾燥体Cを作製した際の、坏土のH−NMRのT緩和時間または乾燥体割り掛けを予測する。
【0043】
図3は、本第一発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、坏土のH−NMRのT緩和時間と、その坏土から作製した乾燥体の乾燥割り掛けとの相関関係が求められていると、これから作製しようとする別の乾燥体Cの乾燥割り掛けの値が予め決まっている場合には、この乾燥割り掛けの値から、相関関係に基づいて、坏土のH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。例えば、図2に示したデータのものと同一組成のセラミックス原料を使用する場合であれば、図2中の一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]に、予め決まっている乾燥割り掛けの値を当てはめることにより、坏土のH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。
【0044】
また、図3は、本第一発明を用いたセラミックス乾燥体の製造方法の一実施形態の概要を表す。図示されるように、これから作製しようとする別の乾燥体Cの乾燥割り掛けの値が予め決まっている場合には、坏土Aの作製については、坏土AのH−NMRのT緩和時間が本第一発明を用いて予測した適正値になるように行い、この坏土Aから適当な寸法(=乾燥体の寸法×乾燥割り掛け)の成形体Bを作製すれば、目的の寸法どおりの乾燥体Cを作製することができる。
【0045】
また、これから作製しようとする別の坏土AのH−NMRのT緩和時間の値およびこの坏土Aから作製した乾燥体Cの寸法の値が予め決まっている場合には、まず、予め決まっている坏土AのH−NMRのT緩和時間の値から相関関係に基づいて乾燥体の乾燥割り掛けの予測値を求め、次いで、この乾燥割り掛けの予測値から成形体の寸法の適正値を予測することができる。例えば、図2に示したデータのものと同一組成のセラミックス原料を使用する場合であれば、図2中の一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]に、予め決まっている坏土AのH−NMRのT緩和時間の値を当てはめることにより、乾燥割り掛けの予測値を求めることができる。そして、この乾燥割り掛けの予測値に予め決まっている乾燥体Cの寸法を掛けることにより、成形体の寸法の適切値を予測することができる(成形体の寸法の適切値=乾燥割り掛けの予想値×予め決まっている乾燥体の寸法の値)。そして、寸法をこの適正値になるように成形体Bを作製すれば、目的の寸法どおりの乾燥体Cを作製することが可能になる。
【0046】
また、本第一発明では、セラミックス原料については、略同一組成のものを使用するが、予測する坏土のH−NMRのT緩和時間の許容される誤差の大きさ、または乾燥割り掛けについての許容される誤差の大きさに応じて、組成についての略同一として認める幅(例えば、無機粉末の含有量についての略同一であるとして許容される範囲)を適宜変更することができる。例えば、乾燥体Cの寸法についての誤差の幅を小さくしたい場合には、セラミックス原料の組成についての略同一として認める幅を小さくすることが好ましく、さらに、この誤差の幅をより小さくしたい場合には、セラミックス原料中の無機粉体の平均粒度が揃ったものを使用することがより好ましい。
【0047】
2.第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、およびこれを用いたセラミックス乾燥体の製造方法:
本願の第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法は、無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、複数の坏土のそれぞれを成形して複数の成形体を作製し、複数の成形体のそれぞれについてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、これらの複数の乾燥体のそれぞれについての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、複数の成形体のそれぞれについてのH−NMRのT緩和時間と、複数の成形体のそれぞれから作製した乾燥体についての乾燥割り掛けとの関係に基づいて、H−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、上述した複数の坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、成形体BについてのH−NMRのT緩和時間または乾燥体Cについての乾燥割り掛けを予測する。
【0048】
図4は、第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、本第二発明では、まず、成形体についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間(以下、「成形体のH−NMRのT緩和時間」という)と、この成形体から作製した乾燥体についての乾燥割り掛けとの相関関係を求める。
【0049】
上述した坏土のH−NMRのT緩和時間と同様に、成形体のH−NMRのT緩和時間を測定することにより、成形体中における無機粉末や水などの各種材料の混じり合いの度合いを把握することが可能になる。そして、成形体中における各種材料の混じり合いの度合いは、この成形体を乾燥したときの収縮の度合い、すなわち乾燥割り掛けに影響を与えている。そのため、成形体中における各種材料の混じり合いの度合いと乾燥割り掛けとの間には相関関係が存在する。ここで、本第二発明では、成形体中における各種材料の混じり合いの度合いを成形体のH−NMRのT緩和時間に置き換えて、成形体のH−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの間の相関関係を求めている。
【0050】
本第二発明では、セラミックス乾燥体を作製する方法ついては、上述した第一発明と同様である。
【0051】
本第二発明では、略同一組成のセラミックス原料から坏土を作製するのであれば、複数の成形体の作製や、複数の乾燥体の作製は、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。また、成形体のH−NMRのT緩和時間の測定や乾燥割り掛けの測定についても、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。
【0052】
本第二発明にいう成形体のH−NMRのT緩和時間は、成形体に含まれる物質中のプロトン(H)から発せられたNMR信号から測定されるものである。また、成形体のH−NMRのT緩和時間は、成形体の一部または全てを乾燥防止の処置を施した後に簡便に測定することができる。よって、本第二発明では、セラミックスの乾燥割り掛けを評価する際に、成形体を簡便に取り扱うだけでよく、また、成形体の形状を損ねにくい点において優れている。
【0053】
本第二発明では、成形体のH−NMRのT緩和時間については、成形体のH−NMRのT緩和時間と乾燥割り掛けとの相関関係がより明確になるという観点からは、成形体に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核として測定することが好ましい。
【0054】
坏土を成形する際に混練に近い状態が生じると、坏土と成形体との間では、無機粒子と水との混じり合いの度合いが大きく異なることがある。このような場合には、坏土中の無機粉末や水の混じり度合いと乾燥割り掛けとの関係ではなく、成形体中の無機粉末や水の混じり合いの度合いと乾燥割り掛けとの関係に着目した方がより適切になることがある。よって、坏土を成形する際に混練に近い状態が生じる場合には、坏土に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を用いるのではなく、成形体に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を用いる方が好ましい。成形体中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長くなるにつれて、その成形体から作製した乾燥体の乾燥割り掛けが小さくなる傾向がある。
【0055】
また、本第二発明では、この相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A成形体−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B成形体−乾燥]にて近似して求めることができる。この一次関数は、最小二乗法を用いて係数A成形体−乾燥および係数B成形体−乾燥を導き出すことが可能である。
【0056】
さらに、本第二発明では、この相関関係を利用することにより、略同一組成のセラミックス原料から別の成形体Bを作製し、この成形体Bから乾燥体Cを作製した際の、成形体のH−NMRのT緩和時間または乾燥体割り掛けを予測する。
【0057】
図5は、本第二発明のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、成形体のH−NMRのT緩和時間と、その成形体から作製した乾燥体の乾燥割り掛けとの相関関係が求められていると、これから作製しようとする別の乾燥体Cの乾燥割り掛けの値が予め決まっている場合には、この乾燥割り掛けの値から、相関関係に基づいて、成形体のH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。例えば、上述した一次関数[乾燥割り掛け=係数A成形体−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B成形体−乾燥]に、予め決まっている乾燥割り掛けの値を当てはめることにより、成形体のH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。
【0058】
また、図5は、本第二発明を用いたセラミックス乾燥体の製造方法の一実施形態の概要を表す。図示されるように、これから作製しようとする別の乾燥体Cの乾燥割り掛けの値が予め決まっている場合には、成形体Bの作製については、成形体BのH−NMRのT緩和時間が本第二発明を用いて予測した適正値になるように行い、このときに乾燥割り掛けに基づいて算出した適切な寸法(=乾燥体Cの寸法×乾燥割り掛け)の成形体Bを作製すれば、目的の寸法どおりの乾燥体Cを作製することが可能になる。
【0059】
また、これから作製しようとする別の成形体BのH−NMRのT緩和時間の値およびこの成形体Bから作製した乾燥体Cの寸法の値が予め決まっている場合には、まず、予め決まっている成形体BのH−NMRのT緩和時間の値から相関関係に基づいて乾燥体の乾燥割り掛けの予測値を求め、次いで、この乾燥割り掛けの予測値から成形体の寸法の適正値を予測することができる。例えば、上述した一次関数[乾燥割り掛け=係数A成形体−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B成形体−乾燥]に、予め決まっている成形体BのH−NMRのT緩和時間の値を当てはめることにより、乾燥割り掛けの予測値を求めることができる。そして、この乾燥割り掛けの予測値に予め決まっている乾燥体Cの寸法を掛けることにより、成形体Bの寸法の適切値を予測することができる(成形体Bの寸法の適切値=乾燥割り掛けの予想値×予め決まっている乾燥体Cの寸法の値)。そして、寸法がこの適正値になるように成形体Bを作製すれば、目的の寸法どおりの乾燥体Cを作製することが可能になる。
【0060】
また、本第二発明では、セラミックス原料については、略同一組成のものを使用するが、予測する成形体のH−NMRのT緩和時間の許容される誤差の大きさ、または乾燥割り掛けについての許容される誤差の大きさに応じて、組成についての略同一として認める幅(例えば、無機粉末の含有量についての略同一であるとして許容される範囲)を適宜変更することができる。例えば、乾燥体Cの寸法についての誤差の幅を小さくしたい場合には、セラミックス原料の組成についての略同一として認める幅を小さくすることが好ましく、さらに、この誤差の幅をより小さくしたい場合には、セラミックス原料中の無機粉体の平均粒度が揃ったものを使用することがより好ましい。
【0061】
3.第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびこれを用いたセラミックス焼成体の製造方法:
本願の第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法は、無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、複数の坏土のそれぞれについてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、複数の坏土のそれぞれを成形して複数の成形体を作製し、さらに複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、これらの複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、複数の焼成体のそれぞれについての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、複数の坏土のそれぞれについてのH−NMRのT緩和時間と、複数の坏土のそれぞれから作製した焼成体についての焼成割り掛けとの関係に基づいて、H−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、上述した複数の坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、坏土AについてのH−NMRのT緩和時間または焼成体Dについての焼成割り掛けを予測する。
【0062】
図6は、第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、本第三発明では、まず、坏土のH−NMRのT緩和時間と、この坏土から作製した焼成体についての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)(以下、単に「焼成割り掛け」という)との相関関係を求める。
【0063】
はじめに、セラミックス焼成体の作製について説明する。図6の破線で囲まれた部分に示されるように、セラミックス焼成体を作製する際には、セラミックス乾燥体を作製するまでの方法は上述した第一発明と同様であり、続いて乾燥体を焼成して焼成体を作製する。
【0064】
本第三発明では、乾燥体を焼成する方法については、特に限定されないが、単窯やトンネル炉などの連続炉を使用する方法がある。
【0065】
本第三発明では、略同一組成のセラミックス原料から坏土を作製するのであれば、複数の坏土の作製や、複数の焼成体の作製は、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。また、坏土のH−NMRのT緩和時間の測定や焼成割り掛けの測定についても、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。
【0066】
本第三発明にいう坏土のH−NMRのT緩和時間については、上述した第一発明での坏土のH−NMRのT緩和時間と同じである。また、上述した第一発明と同様、坏土のH−NMRのT緩和時間は、坏土の一部または全てを乾燥防止の処置を施した後に簡便に測定することができる。よって、本第三発明では、坏土のH−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの相関関係については坏土を簡便に取り扱うだけで求めることが可能になる。
【0067】
坏土中における各種材料の混じり合いの度合いは、この坏土から作製した乾燥体を焼成したときの収縮の度合い、すなわち焼成割り掛けに影響を与えている。そのため、坏土中における各種材料の混じり合いの度合いと焼成割り掛けとの間には相関関係が存在する。ここで、本第三発明では、坏土中における各種材料の混じり合いの度合いを坏土のH−NMRのT緩和時間に置き換えて、坏土のH−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの間の相関関係を求めている。
【0068】
本第三発明では、坏土のH−NMRのT緩和時間については、坏土のH−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの相関関係がより明確になるという観点からは、坏土に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核として測定することが好ましい。
【0069】
先に第一発明についての説明で述べたように、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長い場合には、坏土中で無機粉末の粒子同士が接触して塊の状態になっている傾向がある。そのため、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長い場合には、焼成するときに、既に接触している無機粉末の粒子同士が焼結するにすぎない傾向にあるので、焼成によって収縮する幅が小さくなる傾向がある。
【0070】
また、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が短い場合には、坏土中で無機粉末の粒子同士の間に水が割り込んでいる状態になっている傾向がある。そして、この坏土から成形体、次いで乾燥を作製したき、無機粉末の粒子同士の間にある水が抜けていくものの、無機粉末の粒子同士の間には依然として隙間が開いている傾向がある。そのため、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が短い場合には、焼成するときに、無機粉末の粒子同士の間の隙間が縮まって焼結していくので、焼成によって収縮する幅が大きくなる傾向がある。
【0071】
図7は、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間と、焼成割り掛けとの関係を示す図である。図中の散々する複数の点のぞれぞれは、個別の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間の値、および当該坏土から作製した焼成体の焼成割り掛けの値を示す。また、この図に示したデータは、同一組成のセラミックス原料から作製した坏土についてのものである。図7に示されたデータからは、上述したように、坏土中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長くなるにつれて、その坏土から作製した焼成体の焼成割り掛けが小さくなる傾向があることが確認できる。
【0072】
本第三発明では、図7に示されたように、この相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]にて近似して求めることができる。図7に示した一次関数は、最小二乗法を用いて係数C坏土−焼成および係数D坏土−焼成を導き出している。
【0073】
さらに、本第三発明では、この相関関係を利用することにより、略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、この坏土Aから焼成体Dを作製した際の、坏土のH−NMRのT緩和時間または焼成割り掛けを予測する。
【0074】
図8は、本第三発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、坏土のH−NMRのT緩和時間と、その坏土から作製した焼成体の焼成割り掛けとの相関関係が求められていると、これから作製しようとする別の焼成体Dの焼成割り掛けの値が予め決まっている場合には、この焼成割り掛けの値から、相関関係に基づいて、坏土AのH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。例えば、図7に示したデータのものと同一組成のセラミックス原料を使用する場合であれば、図7中の一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]に、予め決まっている焼成割り掛けの値を当てはめることにより、坏土AのH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。
【0075】
また、図8は、本第三発明を用いたセラミックス焼成体の製造方法の一実施形態の概要を表す。図示されるように、これから作製しようとする別の焼成体Dの焼成割り掛けの値が予め決まっている場合には、坏土Aの作製については、坏土AのH−NMRのT緩和時間が本第三発明を用いて予測した適正値になるように行い、この坏土Aから適切な寸法(=焼成体Dの寸法×焼成割り掛け)の乾燥体Cを作製すれば、目的の寸法どおりの焼成体Dを作製することが可能になる。ここで、乾燥体Cを適切な寸法どおりに作製する際には、上述した第一発明または第二発明を用いるセラミックス乾燥体の製造方法を適用してもよい。
【0076】
また、これから作製しようとする別の坏土AのH−NMRのT緩和時間の値およびこの坏土Aから作製した焼成体Dの寸法の値が予め決まっている場合には、まず、予め決まっている坏土AのH−NMRのT緩和時間の値から相関関係に基づいて焼成体Dの焼成割り掛けの予測値を求め、次いで、この焼成割り掛けの予測値から乾燥体Cの寸法の適正値を予測することができる。例えば、図7に示したデータのものと同一組成のセラミックス原料を使用する場合であれば、図7中の一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]に、予め決まっている坏土AのH−NMRのT緩和時間の値を当てはめることにより、焼成割り掛けの予測値を求めることができる。そして、この焼成割り掛けの予測値に予め決まっている焼成体Dの寸法を掛けることにより、乾燥体Cの寸法の適正値を予測することができる(乾燥体Cの寸法の適正値=焼成割り掛けの予想値×予め決まっている焼成体Dの寸法の値)。そして、寸法についてはこの適正値になるように乾燥体Cを作製すれば、目的の寸法どおりの焼成体Dを作製することが可能になる。ここでも、乾燥体Cを適切な寸法のどおりに作製する際には、上述した第一発明または第二発明を用いるセラミックス乾燥体の製造方法を適用してもよい。
【0077】
また、本第三発明では、セラミックス原料については、略同一組成のものを使用するが、予測する坏土のH−NMRのT緩和時間の許容される誤差の大きさ、または焼成割り掛けについての許容される誤差の大きさに応じて、組成についての略同一として認める幅(例えば、無機粉末の含有量についての略同一であるとして許容される範囲)を適宜変更することができる。例えば、焼成体Dの寸法についての誤差の幅を小さくしたい場合には、セラミックス原料の組成についての略同一として認める幅を小さくすることが好ましく、さらに、この誤差の幅をより小さくしたい場合には、セラミックス原料中の無機粉体の平均粒度が揃ったものを使用することがより好ましい。
【0078】
4.第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびこれを用いたセラミックス焼成体の製造方法:
本願の第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法は、無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、複数の坏土のそれぞれを成形して複数の成形体を作製し、複数の成形体のそれぞれについてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、次いで複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、複数の焼成体のそれぞれについての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、複数の成形体のそれぞれについてのH−NMRのT緩和時間と、複数の成形体のそれぞれから作製した焼成体についての焼成割り掛けとの関係に基づいて、H−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、上述した複数の坏土の作製に用いたセラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、成形体BについてのH−NMRのT緩和時間または焼成体Dについての焼成割り掛けを予測する。
【0079】
図9は、第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の前半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、本第四発明では、まず、成形体のH−NMRのT緩和時間と、この成形体から作製した焼成体についての焼成割り掛けとの相関関係を求める。
【0080】
本第四発明では、セラミックス焼成体を作製する方法ついては、上述した第三発明と同様である。
【0081】
本第四発明では、略同一組成のセラミックス原料から坏土を作製するのであれば、複数の成形体の作製や、複数の焼成体の作製は、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。また、成形体のH−NMRのT緩和時間の測定や焼成割り掛けの測定についても、同時に行っても、異なる時に行ってもよい。
【0082】
本第四発明にいう成形体のH−NMRのT緩和時間については、上述した第二発明での成形体のH−NMRのT緩和時間と同じである。また、成形体のH−NMRのT緩和時間は、成形体の一部または全てを乾燥防止の処置を施した後に簡便に測定することができる。よって、本第四発明では、セラミックスの焼成割り掛けを評価する際に、成形体を簡便に取り扱うだけでよく、また、成形体の形状を損ねにくい点において優れている。
【0083】
本第四発明では、成形体のH−NMRのT緩和時間については、成形体のH−NMRのT緩和時間と焼成割り掛けとの相関関係がより明確になるという観点からは、成形体に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核として測定することが好ましい。
【0084】
坏土を成形する際に混練に近い状態が生じると、坏土と成形体との間では、無機粉末と水との混じり合いの度合いが大きく異なることがある。このような場合には、坏土中の無機粉末や水の混じり度合いと焼成割り掛けとの関係ではなく、成形体中の無機粉末や水の混じり合いの度合いと焼成割り掛けとの関係に着目した方がより適切になることがある。よって、坏土を成形する際に混練に近い状態が生じる場合には、坏土に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を用いるのではなく、成形体に含まれる水分子(HO)のプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を用いる方が好ましい。成形体中の水分子に含まれるプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間が長くなるにつれて、その成形体から作製した焼成体の焼成割り掛けが小さくなる傾向がある。
【0085】
本第四発明では、この相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C成形体−焼成×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数D成形体−焼成]にて近似して求めることができる。一次関数は、最小二乗法を用いて係数C成形体−焼成および係数D成形体−焼成を導き出すことが可能である。
【0086】
さらに、本第四発明では、この相関関係を利用することにより、略同一組成のセラミックス原料から別の成形体Bを作製し、この成形体Bから焼成体Dを作製した際の、成形体のH−NMRのT緩和時間または焼成体割り掛けを予測する。
【0087】
図10は、本第四発明のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法の一実施形態の後半部分の概要を表すフロー図である。図示されたように、成形体のH−NMRのT緩和時間と、その成形体から作製した焼成体の焼成割り掛けとの相関関係が求められていると、これから作製しようとする別の焼成体Dの焼成割り掛けの値が予め決まっている場合には、この焼成割り掛けの値から、相関関係に基づいて、成形体BのH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。例えば、上述した一次関数[焼成割り掛け=係数C成形体−焼成×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数D成形体−焼成]に、予め決まっている焼成割り掛けの値を当てはめることにより、成形体BのH−NMRのT緩和時間の適正値を予測することができる。
【0088】
また、図10は、本第四発明を用いるセラミックス焼成体の製造方法の一実施形態の概要を表す。図示されるように、これから作製しようとする別の焼成体Dの焼成割り掛けの値が予め決まっている場合には、成形体Bの作製については、成形体BのH−NMRのT緩和時間が本第四発明を用いて予測した適正値になるように行い、続いて、焼成割り掛けに基づいて算出した適切な寸法(=焼成体Dの寸法×焼成割り掛け)の乾燥体Cを作製すれば、目的の寸法どおりの焼成体Dを作製することが可能になる。ここで、乾燥体Cを適切な寸法どおりに作製する際には、上述した第一発明または第二発明を用いるセラミックス乾燥体の製造方法を適用してもよい。
【0089】
また、これから作製しようとする別の成形体BのH−NMRのT緩和時間の値およびこの成形体Bから作製した焼成体Dの寸法の値が予め決まっている場合には、まず、予め決まっている成形体BのH−NMRのT緩和時間の値から相関関係に基づいて焼成体Dの焼成割り掛けの予測値を求め、次いで、この焼成割り掛けの予測値から乾燥体Cの寸法の適正値を予測することができる。例えば、上述した一次関数[焼成割り掛け=係数C成形体−焼成×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数D成形体−焼成]に、予め決まっている成形体BのH−NMRのT緩和時間の値を当てはめることにより、焼成割り掛けの予測値を求めることができる。そして、この焼成割り掛けの予測値に予め決まっている焼成体Dの寸法を掛けることにより、乾燥体Cの寸法の適正値を予測することができる(乾燥体Cの寸法の適正値=焼成割り掛けの予想値×予め決まっている焼成体Dの寸法の値)。寸法をこの適正値になるように乾燥体Cを作製すれば、目的の寸法どおりの焼成体Dを作製することが可能になる。ここでも、乾燥体Cを適切な寸法どおりに作製する際には、上述した第一発明または第二発明を用いるセラミックス乾燥体の製造方法を適用してもよい。
【0090】
また、本第四発明では、セラミックス原料については、略同一組成のものを使用するが、予測する成形体のH−NMRのT緩和時間の許容される誤差の大きさ、または焼成割り掛けについての許容される誤差の大きさに応じて、組成についての略同一として認める幅(例えば、無機粉末の含有量についての略同一であるとして許容される範囲)を適宜変更することができる。例えば、焼成体Dの寸法についての誤差の幅を小さくしたい場合には、セラミックス原料の組成についての略同一として認める幅を小さくすることが好ましく、さらに、この誤差の幅をより小さくしたい場合には、セラミックス原料中の無機粉体の平均粒度が揃ったものを使用することがより好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
焼成後にコーディエライト組成となる組成にてアルミナ、カオリン、タルク、およびシリカを配合した無機粉末[平均粒度(算術平均径)4.12μm]100質量部に対し、有機バインダを6.0質量部、界面活性剤2.0質量部、水を32.0質量部ずつ混ぜ合わせ、さらに加圧ニーダー(トーシン社製、商品名:TD1−3M型加圧式ニーダー)を用いて混練し、坏土を作製した。このとき、混練時間が10分間、20分間、30分間、40分間、50分間の5種類の坏土を作製した。
【0093】
これらの5種類の坏土のそれぞれをおよそ20×20×40mmの大きさにし、乾燥防止のために樹脂フィルムなどで包装する処置をした後、これらの5種類の坏土についてはH−NMRのT緩和時間の測定を行った。T緩和時間の測定は、静磁場強度0.3T(テスラー)のMRI装置(MRテクノロジー社製 compacTscan)を使用し、周波数12.8MHz(静磁場強度0.3Tのときの水分子に含まれるHの共鳴周波数)の高周波を照射することにより行った。
【0094】
続いて、坏土を真空脱気後に口金を通して押出成形し、外径100.0mm、長さ100mmのハニカム成形体を作製し、さらにハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製し、次いでハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製した。このとき、ハニカム成形体、ハニカム乾燥体およびハニカム焼成体についての中央部(一方の端部から全長の2分の1の位置)の外径寸法を測定した。ここで、外径寸法とは、ハニカム成形体、ハニカム乾燥体およびハニカム焼成体の中央部分における4方向の外径についての算術平均値である。外径の測定は、ハニカム成形体などの中央部分の外周を45度ずつずらしながら合計4方向(0度−180度、45度−225度、90度−270度、135度−315度)の外径について行った。乾燥割り掛けは、ハニカム成形体の外径寸法をハニカム乾燥体の外径寸法で割った値として算出した。外形寸法は口金の出口側に取り付けてある押え板の外形寸法と同じである。焼成割り掛けは、ハニカム乾燥体の外径寸法をハニカム焼成体の外径寸法で割った値として算出した。上述の5種類の坏土についてのH−NMRのT緩和時間、5種類の坏土のそれぞれから作製したハニカム成形体、ハニカム乾燥体、ハニカム焼成体についての外径寸法、乾燥割り掛け、焼成割り掛けを表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
(実施例2)
無機粉末の平均粒度(算術平均径)を5.55μmとした以外は実施例1と同じ実験を行った。結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
(実施例3)
無機粉末の平均粒度(算術平均径)を7.35μmとした以外は実施例1と同じ実験を行った。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
実施例1〜3のそれぞれについて、H−NMRのT緩和時間と、ハニカム乾燥体の乾燥割り掛けとの相関関係については最小二乗法を用いて一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]に近似し、また、坏土についてのH−NMRのT緩和時間と、ハニカム焼成体の焼成割り掛けとの相関関係については最小二乗法を用いて一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]に近似した。係数A坏土−乾燥、係数B坏土−乾燥、係数C坏土−焼成、および係数D坏土−焼成を表4に示す。
【0101】
【表4】

【0102】
無機粉末の平均粒度を変化させると、係数A坏土−乾燥、係数B坏土−乾燥、係数C坏土−焼成、係数D坏土−焼成、が変化していくことが判明した。したがって、ハニカム乾燥体やハニカム焼成体についての寸法の誤差をより小さくするためには、セラミックス原料に含まれる無機粉末の平均粒度ごとに、坏土のH−NMRのT緩和時間と、乾燥割り掛けまたは焼成割り掛けとの相関関係を導き出しておくことが好ましいことが判明した。
【0103】
(実施例4)
セラミックス原料については実施例2のときのセラミックス原料と同じ組成[無機粉末については平均粒度(算術平均径)5.55μm]ものを用いて坏土を作製し、この坏土から外径寸法100.0mmのハニカム成形体を作製し、さらにこのハニカム成形体を乾燥することにより、外径寸法96.12mmのハニカム乾燥体を作製する実験計画を立てた。このとき、坏土のH−NMRのT緩和時間の適正値を予測し、坏土のH−NMRのT緩和時間がこの適正値になるように坏土を作製することにより、ハニカム乾燥体が予め定めた外径寸法96.12mmにて作製できるのか検討を行った。
【0104】
この実験計画では、乾燥割り掛けが1.0404(=100.0/96.12)になる。まず、一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]に、乾燥割り掛けの値1.0404、実施例2の係数A坏土−乾燥の値−0.0013(表4を参照)、係数B坏土−乾燥、の値1.0870(表4を参照)を当てはめることにより、坏土のH−NMRのT緩和時間の適正値が36.1msecになることを予測した。そこで、混練機で混練しながら随時坏土のH−NMRのT緩和時間を測定した。実施例2では混練時間40分間のときに坏土のH−NMRのT緩和時間が36.1msecであったので(表2を参照)、本実施例でも40分間混練を行ったときに坏土のH−NMRのT緩和時間を測定したところ37.0msecであった。そこで、さらに10分間混練を行った後、坏土のH−NMRのT緩和時間を測定したところ適正値と同じ36.1msecになった。この坏土から外径寸法100.0mmのハニカム成形体を作製し、次いで乾燥した。ハニカム乾燥体の外径寸法を測定したところ96.12mmであった。以上から、実験計画通りに、目的の寸法のハニカム乾燥体を作製することができることが判明した。
【0105】
(比較例1)
上述した実施例2の実験には、セラミックス原料を40分間混練して坏土を作製し、この坏土から外径寸法100.0mmのハニカム成形体を作製し、さらにこのハニカム成形体を乾燥することにより、外径寸法96.12mmのハニカム乾燥体を作製したものがあった。そこで、再び、セラミックス原料については実施例2のときのセラミックス原料と同じ組成[無機粉末については平均粒度(算術平均径)5.55μm]ものを用い、さらに先と同じ混練時間40分間で坏土を作製した。続いて、この坏土から外径寸法100.0mmのハニカム成形体を作製し、さらにこのハニカム成形体を乾燥して、ハニカム乾燥体を作製した。ハニカム乾燥体の外径寸法は、96.41mmになっており、目的とする外径寸法96.12mmにはならなかった。よって、先に目的の寸法のハニカム乾燥体を作製することができた方法と全く同じ方法を踏襲した場合であっても、試験時の温度や気温、設備の状態によって目的の寸法のハニカム乾燥体を作製できない場合があることが判明した。
【0106】
(実施例5)
セラミックス原料については実施例2のときのセラミックス原料と同じ組成[無機粉末については平均粒度(算術平均径)5.55μm]のものを用いて、坏土のH−NMRのT緩和時間を37.0msecにて坏土を作製し、この坏土から、最終的に外径寸法96.12mmのハニカム乾燥体を作製する実験計画を立てた。このとき、ハニカム成形体の寸法の適正値を予測し、この適正値の寸法にてハニカム成形体を作製することにより、ハニカム乾燥体が予め定めた外径寸法96.12mmにて作製できるのか検討を行った。
【0107】
まず、一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]に、坏土のH−NMRのT緩和時間の値37.0msec、実施例2の係数A坏土−乾燥の値−0.0013(表4を参照)、係数B坏土−乾燥、の値1.0870(表4を参照)を当てはめることにより、乾燥割り掛けの値が1.0382になると予測した。乾燥割り掛けが1.0382、ハニカム乾燥体の外径寸法が96.12mmである場合、ハニカム成形体の外径寸法の適正値は99.79mm(=96.12mm×1.0382)になる。そこで、ハニカム成形体を外径寸法99.79mmにて作製し、これを乾燥してハニカム乾燥体を作製した。ハニカム乾燥体の外径寸法を測定したところ96.12mmであった。以上から、実験計画通りに、ハニカム乾燥体を作製可能であることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、セラミックスの乾燥割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス乾燥体の製造方法、並びにセラミックスの焼成割り掛けの評価方法、およびこれを用いるセラミックス焼成体の製造方法として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、
前記複数の坏土についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の乾燥体についての前記乾燥割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、
前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて該坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間または該乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを予測するセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【請求項2】
前記相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A坏土−乾燥×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数B坏土−乾燥]にて近似して求める請求項1に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、
前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、
前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法から前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを算出し、前記相関関係において前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、
前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように前記坏土Aを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、
前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、
前記相関関係において前記坏土AについてのH−NMRのT緩和時間の値に対応する前記乾燥割り掛けの値として求められる乾燥割り掛けの予測値を算出し、
前記成形体Bの寸法については前記乾燥体Cの寸法に前記乾燥割り掛けの予測値を乗じた値となるように前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【請求項5】
無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体についての乾燥割り掛け(=成形体の寸法/乾燥体の寸法)を算出して、
前記複数の成形体についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の乾燥体についての前記乾燥割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記乾燥割り掛けとの相関関係を求めておき、
前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、さらに該成形体Bを乾燥して乾燥体Cを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間または該乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを予測するセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【請求項6】
前記相関関係を一次関数[乾燥割り掛け=係数A成形体−乾燥×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数B成形体−乾燥]にて近似して求める請求項5に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、
前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、
前記成形体Bの寸法および前記乾燥体Cの寸法から前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けを算出し、前記相関関係において前記乾燥体Cについての前記乾燥割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、
前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載のセラミックスの乾燥割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記乾燥体Cを作製するセラミックス乾燥体の製造方法であって、
前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間および前記乾燥体Cの寸法が予め定まっている場合に、
前記相関関係において前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記乾燥割り掛けの値として求められる乾燥割り掛けの予測値を算出し、
前記成形体Bの寸法については前記乾燥体Cの寸法に前記乾燥割り掛けの予測値を乗じた値となるように前記成形体Bを作製するセラミックス乾燥体の製造方法。
【請求項9】
無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、前記複数の焼成体についての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、
前記複数の坏土についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の焼成体についての前記焼成割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、
前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から別の坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間または該焼成体Dについての前記焼成割り掛けを予測するセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【請求項10】
前記相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C坏土−焼成×(坏土のH−NMRのT緩和時間)+係数D坏土−焼成]にて近似して求める請求項9に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、
前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、
前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法から前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けを算出し、前記相関関係において前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、
前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように前記坏土Aを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項12】
請求項9または10に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、
前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、
前記相関関係において前記坏土Aについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記焼成割り掛けの値として求められる焼成割り掛けの予測値を算出し、
前記乾燥体Cの寸法については前記焼成体Dの寸法に前記焼成割り掛けの予測値を乗じた値となるように前記乾燥体Cを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項13】
無機粉末と水とを含む略同一組成のセラミックス原料から複数の坏土を作製し、前記複数の坏土を成形して複数の成形体を作製し、前記複数の成形体についてのプロトン(H)を観察核とするH−NMRのT緩和時間を測定し、さらに、前記複数の成形体を乾燥して複数の乾燥体を作製し、前記複数の乾燥体を焼成して複数の焼成体を作製し、前記複数の焼成体についての焼成割り掛け(=乾燥体の寸法/焼成体の寸法)を算出して、
前記複数の成形体についての前記H−NMRのT緩和時間と、前記複数の焼成体についての前記焼成割り掛けとの関係に基づいて、前記H−NMRのT緩和時間と前記焼成割り掛けとの相関関係を求めておき、
前記複数の坏土の作製に用いた前記セラミックス原料と略同一組成のセラミックス原料から坏土Aを作製し、該坏土Aを成形して成形体Bを作製し、該成形体Bを乾燥して乾燥体C、さらに該乾燥体Cを焼成して焼成体Dを作製する場合に、前記相関関係に基づいて、該成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間または該焼成体Dについての前記焼成割り掛けを予測するセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【請求項14】
前記相関関係を一次関数[焼成割り掛け=係数C成形体−焼成×(成形体のH−NMRのT緩和時間)+係数D成形体−焼成]にて近似して求める請求項13に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、
前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、
前記乾燥体Cの寸法および前記焼成体Dの寸法から前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けを算出し、前記相関関係において前記焼成体Dについての前記焼成割り掛けの値に対応する前記H−NMRのT緩和時間の値として求められるH−NMRのT緩和時間の適正値を算出し、
前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値については前記H−NMRのT緩和時間の適正値と略同一になるように前記成形体Bを作製するセラミックス焼成体の製造方法。
【請求項16】
請求項13または14に記載のセラミックスの焼成割り掛けの評価方法を用いて、前記坏土Aから前記焼成体Dを作製するセラミックス焼成体の製造方法であって、
前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間および前記焼成体Dの寸法が予め定まっている場合に、
前記相関関係において前記成形体Bについての前記H−NMRのT緩和時間の値に対応する前記焼成割り掛けの値として求められる焼成割り掛けの予測値を算出し、
前記乾燥体Cの寸法については前記焼成体Dの寸法に前記焼成割り掛けの予測値を乗じた値となるように前記乾燥体Cを作製するセラミックス焼成体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−184149(P2012−184149A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50020(P2011−50020)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】