説明

セラミックス濾過膜モジュール、濾過システム、およびセラミックス濾過膜モジュールの製造方法

【課題】セラミックス中空糸を支持する部分の膨張収縮に起因する割れの少ないセラミックス濾過膜モジュール、濾過システム、およびセラミックス濾過膜モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】このセラミックス濾過膜モジュールは、濾過対象物を濾過する複数本のセラミックス中空糸80およびこれらセラミックス中空糸80を支持する支持部90を含むセラミックス中空糸束と、このセラミックス中空糸束を収容するモジュール外筒部とを備えている。支持部90は熱可塑性樹脂により形成されている。支持部90において、セラミックス中空糸80が設けられた領域でこれらセラミックス中空糸80の全てを包含する最も小さい円の内側部分を実装部分94として、この実装部分94の面積に対するセラミックス中空糸80の断面積の総和の割合を断面積比として、この断面積比が基準値以上に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過対象物を濾過する複数本のセラミックス中空糸およびこれらセラミックス中空糸を支持する支持部を含むセラミックス中空糸束と、このセラミックス中空糸束を収容するモジュール容器とを備えるセラミックス濾過膜モジュール、濾過システム、およびセラミックス濾過膜モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス濾過膜モジュールは、精密濾過膜(MF膜)、逆浸透膜(RO膜)、浸透気化膜(PV膜)、蒸気濾過膜(VP膜)として用いられる。例えば、特許文献1には、アルコール水溶液からアルコールを選択的に濾過する浸透気化膜の例が挙げられている。特許文献2には、珪酸ナトリウム、水酸化アルミニウムおよび水酸化ナトリウムを溶解した水溶液から水を濾過する逆浸透膜の例が挙げられている。特許文献3には、水素と窒素の混合ガスから水素ガスを選択濾過する濾過膜の例が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−99044号公報
【特許文献2】特開平10−57784号公報
【特許文献3】特開2006−263566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、セラミックス濾過膜モジュールの処理能力の向上が求められている。濾過能力の向上を図るには濾過面積を大きくする必要があるが、上記文献に挙げた濾過膜はいずれも基板状のものであるため、セラミックス濾過膜モジュール自体が大きくなってしまう。そこで、単位体積あたりの濾過面積を大きくために、セラミックス中空糸を複数本並列する構造が採用される。
【0005】
セラミックス濾過膜モジュールにセラミックス中空糸を複数本並列させるには、複数のセラミックス中空糸を束ねて一つにする必要があるが、この役割を担うのが支持部である。なお、本発明では以降、この支持部によって一体となった複数本のセラミックス中空糸および支持部を「セラミックス中空糸束」と称する。
【0006】
支持部は、通常、(1)セラミックス中空糸同士の隙間、(2)モジュール外筒に挿入された際のモジュール外筒とセラミックス中空糸束の隙間、この2つの隙間を埋めることで、モジュール外筒の内側とセラミックス中空糸外側で形成される空間(図1の内部空間57)と、セラミックス中空糸の内腔の空間とを隔てて、セラミックス中空糸の壁によって分離される濾過前後の物質が再度混合してしまうことを防止する。
【0007】
セラミックス中空糸束を作製する方法としては、例えば、セラミックス中空糸を配列した状態とし、配列されたセラミックス中空糸の束の端末部に樹脂を充填することにより支持部を形成する。しかし、このような構造では、支持部形成時における樹脂の硬化収縮または温度変化による支持部の膨張収縮によりセラミックス中空糸が割れることがあった。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セラミックス中空糸を支持する部分の膨張収縮に起因する割れの少ないセラミックス濾過膜モジュール、濾過システム、およびセラミックス濾過膜モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、濾過対象物を濾過する複数本のセラミックス中空糸およびこれらセラミックス中空糸を支持する支持部を含むセラミックス中空糸束と、このセラミックス中空糸束を収容するモジュール容器とを備えるセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記支持部は熱可塑性樹脂により形成され、前記支持部において前記セラミックス中空糸が設けられた領域でこれらセラミックス中空糸の全てを包含する最も小さい円の内側部分の面積に対する前記セラミックス中空糸の断面積の総和の割合を断面積比として、この断面積比が基準値以上に設定されていることを要旨とする。
【0010】
セラミックス中空糸の断面積に対してこのセラミックス中空糸の囲う熱可塑性樹脂の量が多いとき、熱可塑性樹脂の硬化収縮または温度変化に基づく膨張収縮により、セラミックス中空糸に対して力が加わる。一方、セラミックス中空糸の外力に対する耐性は断面積が大きい程大きい。
【0011】
本発明によれば、この点を考慮し、上記断面積比に基づいて、セラミックス中空糸を囲う熱可塑性樹脂の量が所定値を超えないように制限する。すなわち、断面積比を基準値以上とすることにより、断面積比が基準値未満のものと比較して、セラミックス中空糸の割れを抑制することができる。
【0012】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記基準値は5%であることを要旨とする。
支持部にセラミックス中空糸が設けるとき、支持部を一旦溶融してセラミックス中空糸を固定する。支持部の溶融後、冷却して支持部を硬化するが、このとき硬化収縮する。このため、セラミックス中空糸にはその径方向に力が加えられる。この力は、セラミックス中空糸の周囲の樹脂量が大きくなる程大きくなる。断面積比が5%未満のとき、熱可塑性樹脂の硬化収縮によるセラミックス中空糸の損傷の割合が大きい。この点、本発明では、断面積比を5%以上とすることにより、セラミックス中空糸の損傷の割合を低減することができる。
【0013】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記断面積比は40%以下に設定されていることを要旨とする。
断面積比を大きくすると隣接するセラミックス中空糸の間隔が狭くなるため、セラミックス中空糸の間を流通する流体の流れが阻害される。本発明では、断面積比を40%以下に設定するため、断面積比が40%を超えるものと比較して、流体の流れの阻害を抑制することができる。
【0014】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記断面積比は15%以上40%以下に設定されていることを要旨とする。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記支持部を保持する外形部をさらに備え、前記支持部と前記外形部とは機械的に接続されていることを要旨とする。
【0015】
支持部と外形部とが接着構造にて接続されているとき、温度変化による支持部の膨張収縮による体積変化が外形部によって制限されるため、支持部の内部圧力が増大する。このため、セラミックス中空糸に対して圧力が増大し、セラミックス中空糸が損傷するおそれが高くなる。この点、本発明によれば、支持部と外形部とが機械的に接続されているため、支持部の外側部分に膨張収縮する余地があり、温度変化による支持部の内部圧力の増大を抑制する。これにより、温度変化によるセラミックス中空糸の損傷を抑制することができる。
【0016】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記セラミックス中空糸の基端部が前記支持部に固定され、他端部が非固定であることを要旨とする。
【0017】
セラミックス中空糸の基端部および他端部すなわち両端が支持部により固定されている場合、セラミックス中空糸に圧縮力、引っ張り力、または捩れの力が加わるため、セラミックス中空糸が損傷する頻度が高くなる。この点、本発明によれば、他端部が非固定となっているため、圧縮力、引っ張り力、または捩れの力が作用しないため、両端の固定により起因する損傷を抑制することができる。
【0018】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記セラミックス中空糸はαアルミナ多孔質体であり、前記支持部はフッ素系樹脂により形成されていることを要旨とする。
【0019】
フッ素系樹脂はαアルミナ多孔質体に接着するため、セラミックス中空糸の外周と支持部とが接するところに隙間が形成される頻度を小さくすることができる。すなわち、セラミックス濾過膜モジュールとして使用することのできない当該隙間のあるものを低減することができる。
【0020】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、前記セラミックス中空糸の外表面にはゼオライト層が形成されていることを要旨とする。
【0021】
本発明によれば、アルコールと水とを効率的に濾過するゼオライト層がセラミックス中空糸の外表面に設けられているため、アルコールと水との混合物から水を効率的に濾過することができる。
【0022】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項のセラミックス濾過膜モジュールを含む濾過システムである。
本発明によれば、セラミックス中空糸の損傷を抑制する構造のセラミックス濾過膜モジュールを含むため、温度変化により生じるセラミックス中空糸の割れを抑制することができる。
【0023】
(10)請求項10に記載の発明は、セラミックス中空糸を支持する支持部を備えたセラミックス濾過膜モジュールの製造方法において、熱可塑性樹脂製の支持中間体に前記セラミックス中空糸を挿入する複数の挿入孔を形成し、これら挿入孔に前記セラミックス中空糸を挿入した後、前記支持中間体を溶融して、その後硬化することにより前記支持部を形成するとともに前記支持部に前記セラミックス中空糸を固定する工程を含むことを要旨とする。
【0024】
成形金型にセラミックス中空糸を配列した状態で熱可塑性樹脂を充填するとき、セラミックス中空糸が障害物となって未充填部分が形成されることがある。本発明によれば、支持中間体の挿入孔にセラミックス中空糸を挿入した後に、支持中間体を溶融しているため、未充填部分を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、セラミックス中空糸を支持する部分の膨張収縮に起因する割れの少ないセラミックス濾過膜モジュール、濾過システム、およびセラミックス濾過膜モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の濾過システムの一実施形態について、その全体構成を示す全体図。
【図2】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、その断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールの端末部について、その斜視構造を示す斜視図。
【図4】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、その端末部の正面構造を示す正面図。
【図5】同実施形態のセラミックス中空糸束について、その製造方法を示す斜視図。
【図6】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、実施例2の充填態様を示す正面図。
【図7】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、比較例の充填態様を示す正面図。
【図8】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、同モジュールの製造過程におけるセラミックス中空糸の割れの割合を示すテーブル。
【図9】同実施形態のセラミックス濾過膜モジュールについて、セラミックス中空糸1本あたりの樹脂量と断面積比との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1を参照して、本発明の濾過システムの一実施形態について説明する。
濾過システム1は、水とエタノールの混合液(濾過対象物)を加熱する混合タンク10と、混合液の蒸気(以下、「混合蒸気」)から水を分離するセラミックス濾過膜モジュール40と、同モジュール40により分離された水を貯留する水タンク20と、同モジュール40により分離されたエタノールを貯留するエタノールタンク30とを含む。なお、水タンク20には、水タンク20およびこのタンクとセラミックス濾過膜モジュール40との間を接続する経路の気圧を下げる真空ポンプ21が設けられている。また、エタノールタンク30には、エタノールタンク30およびこのタンクとセラミックス濾過膜モジュール40とを間を接続する経路を流れる混合蒸気の流量を調整する流量ポンプ31が設けられている。
【0028】
図2を参照して、セラミックス濾過膜モジュール40について説明する。
セラミックス濾過膜モジュール40は、混合蒸気を一時的に貯留するモジュール外筒部(モジュール容器)50と、このモジュール外筒部50の開口部55に接続されて混合蒸気を濾過するセラミックス中空糸束60と、セラミックス中空糸束60とモジュール外筒部50とを密封するヘルールクランプ70とを含む。
【0029】
モジュール外筒部50は、混合蒸気を保持する内部空間57を有した円筒状の濾過タンク50Aと、濾過タンク50Aを支持する土台50Bを含む。濾過タンク50Aの底部には、混合蒸気を吸入するための吸入口51が設けられる。吸入口51には継手52が設けられ、この継手52には、混合タンク10から導入される配管53が接続されている。濾過タンク50Aの側面上部には、混合蒸気を排出する排出口54が設けられている。また、濾過タンク50Aの上部は開口している。濾過タンク50Aの開口部55に、セラミックス中空糸束60が蓋として接続される。また、開口部55の外周にはフランジ56が設けられる。このフランジ56と、セラミックス中空糸束60においてこの開口部55に接するフランジ106とが重ねられて、ヘルールクランプ70により両フランジ56,106が互いに係合される。これにより、内部空間57が密封される。
【0030】
セラミックス濾過膜モジュール40内の内部空間57は、セラミックス中空糸束60により、透過した濾過物質が存在する濾過空間58と、濾過対象物である混合蒸気が存在する混合空間59とに区分される。濾過空間58は、真空ポンプ21により大気圧よりも低圧に維持されている。セラミックス濾過膜モジュール40に流入する混合蒸気がセラミックス中空糸束60を通過するとき、水分子だけが選択的に濾過空間58に透過する。エタノール分子は混合空間59に残る。このため、濾過空間58と通ずる水タンク20には水が蓄えられる。
【0031】
図2および図3を参照して、セラミックス中空糸束60について説明する。
セラミックス中空糸束60は、混合蒸気を濾過する複数本のセラミックス中空糸80と、これらセラミックス中空糸80を支持する支持部90と、支持部90を収容するとともにモジュール外筒部50に接続される外形部100とを含む。
【0032】
外形部100はステンレスにより形成されている。支持部90は、熱可塑性樹脂であるポリフルオロエチレンポリフルオロアリキルエーテル重合体(以下、PFA)により形成されている。セラミックス中空糸80は、α−アルミナにより形成されている。
【0033】
外形部100には、支持部90が収容する収容部101が設けられている。図2に示されるように、収容部101の内周には、雌ねじ104が形成されている。外形部100の上部には貫通孔102が設けられている。上部の内側面には、支持部90の当接部93が押し当てられる押当部105が貫通孔102の周りに設けられている。押当部105には、その内周部分に沿って突起103が設けられている。外形部100の下部には、モジュール外筒部50と接続するためのフランジ106が設けられている。
【0034】
支持部90は円柱状に形成されている。支持部90の外周には雄ねじ92が形成されている。支持部90の上面には、外形部100の押当部105と当接する当接部93が設けられている。支持部90において、当接部93よりも内側の部分に、セラミックス中空糸80が挿入される挿入孔91が設けられている。
【0035】
セラミックス中空糸80は、直径が2.0mm、肉厚が0.2mmの中空のセラミックス多孔体として形成されている。セラミックス多孔体は、α−アルミナにより形成され、直径が0.01μm〜10μmの細孔、および直径が10μm以上の細長い孔路を含む。孔路は、セラミックス中空糸80の径方向に向って形成されている。
【0036】
セラミックス中空糸80の基端部81は、支持部90の挿入孔91に挿入される。セラミックス中空糸80の他端部82には、PFAの収縮チューブ83が設けられている。収縮チューブ83の内部には充填材84としてのPFAが入れられている。また、セラミックス中空糸80の側面には、CHA型ゼオライト層85が形成されている。CHA型ゼオライト層85は、0.41nm程度の細孔を有し、水分子を選択的に透過し、エタノール分子を透過しない。
【0037】
図4を参照して、支持部90に設けられるセラミックス中空糸80の本数について説明する。図4(A)に示すように、セラミックス中空糸80の断面積SCは、中空部分を含めた部分の面積とする。図4(B)に示すように、セラミックス中空糸80が実装される実装部分94は、支持部90に設けられているセラミックス中空糸80の全てを含む最も小さい円内の領域とする。実装部分94の面積(以下、「実装面積SA」)に対するセラミックス中空糸80の断面積SCの総和(以下、「総断面積SB」)の比を、断面積比RSとする。
【0038】
セラミックス中空糸80の本数は、断面積比RSは5%〜40%とされている。以下この理由について説明する。セラミックス中空糸80と支持部90とを接着するため、支持部90を加熱してPFAを溶解した後、PFAを硬化する。この硬化により、PFAは硬化収縮により支持部90の直径が縮小する一方、セラミックス中空糸80が挿入されている部分は拡張する。このため、セラミックス中空糸80の基端部81の側壁はPFAにより引っ張られる。セラミックス中空糸80の周囲のPFAの樹脂量が過大であるとき、この引っ張り力が大きくなるため、支持部90の硬化のときにセラミックス中空糸80がわれる。特に、断面積比RSが5%よりも小さいとき、セラミックス中空糸80が割れる頻度が高い。このため、断面積比RSは5%以上に設定される。
【0039】
一方、断面積比RSが40%を超えるとき、隣接するセラミックス中空糸80の間の空間が狭くなるため、混合蒸気の流通が阻害される。断面積比RSを40%とするとき、隣接するセラミックス中空糸80の間隔は、セラミックス中空糸80の半径と同等となる。すなわち、断面積比RSを40%とすれば、実装部分94において混合蒸気が通る空間が60%は確保されるとともに、セラミックス中空糸80が最も密に並べられている断面D−D(図4参照)において少なくとも33%の断面積が混合蒸気の流通のために確保される。
【0040】
また、断面積比RSが40%を超えるとき、セラミックス中空糸80の周囲のPFAの樹脂量が少なくなるため、セラミックス中空糸束60に対する衝撃または振動のPFAによる吸収効果が低減する。このため、衝撃または振動に対する耐性が低下する。このため、断面積比RSは40%以下に設定される。
【0041】
図4の例では、直径2.0mmかつ肉厚0.2mmのセラミックス中空糸80が12本配列され、実装部分94の半径が17.6mmに設定されている。これにより、断面積比RSが15.5%に設定されている。このようなセラミックス濾過膜モジュール40についてPV性能評価を以下の方法により行った。
【0042】
このセラミックス濾過膜モジュール40の濾過タンク50Aに、水とエタノールの質量比が1対9の混合溶液を満たして、温度75℃に保持する。そして、外形部100の貫通孔102を通じてセラミックス中空糸80の内部を0.01MPa程度の真空にする。このとき、透過流束は1mにおいて1時間当たり2kgとなり、分離性能α(水/エタノール)が100となった。なお、分離性能αは次式(1)で示される。
【0043】

分離性能α=(BH/BE)/(AH/AE) … (1)

AH:濾過前の水の濃度(質量%)
AE:濾過前のエタノールの濃度(質量%)
BH:濾過後の水の濃度(質量%)
BE:濾過後のエタノールの濃度(質量%)

<セラミックス中空糸の製造方法>
セラミックス中空糸80の製造方法について説明する。
【0044】
中間形成物のセラミックス混成物を100質量%として、60質量%のα−アルミナ(大明化学工業株式会社製、グレードTM−5D)を、35質量%のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、これをボールミルにより6〜12時間程度撹拌する。これにより、N,N−ジメチルホルムアミド中にα−アルミナを分散させる。次に、これに5.0質量%のポリスチレンおよび0.2質量%のラウリルベンゼンスルホン酸を加えて攪拌し、セラミックス混成物を作成する。
【0045】
次に、セラミックス混成物を水中に押し出して、中空糸を成形する。このとき中空糸の管内に流速40m/分で水を流す。この流水作用により、内周面からのN,N−ジメチルホルムアミドの溶出が促進するともに、中空糸の押し出しが円滑になる。
【0046】
そして、中空糸を水中に1〜24時間以上放置する。これにより、N,N−ジメチルホルムアミドを十分に溶出させるとともに、α−アルミナを分散させた状態でポリスチレン等の樹脂材料を中空糸の表面に析出させる。
【0047】
この後、中空糸をオーブンに入れ、4時間かけて徐々に昇温し、1480℃に達した後、更に1時間焼成する。これにより、ポリスチレンを蒸散あるいは分解するとともに、粒子状のα−アルミナを焼結する。これにより、外径2.0mm、厚さ0.2mm、気孔率40%のセラミックス中空糸80が形成される。
【0048】
続いて、セラミックス中空糸80の外表面にCHA型ゼオライト層85(チャバサイト型ゼオライト層)形成する。以下、CHA型ゼオライト層85の形成について説明する。
セラミックス中空糸80の外表面において、一方端から5cmまでの部分および他方端から1cmまでの部分を残す中間部分に種結晶となるCHA型ゼオライト結晶を均等に擦り付ける。なお、一方端から5cmまでの部分は支持部90の挿入孔91に挿入する部分であり、他方端から1cmの部分は収縮チューブ83を挿入する部分である。CHA型ゼオライトとPFAとは接着しないため、一方端から5cmの部分および他方端から1cmの部分にCHA型ゼオライト層85を形成しない。
【0049】
次に、以下に示す溶解液Aと溶解液Bとを調整し、両液を混合して混合液を形成する。なお、A液とB液の各組成は、混合液を100質量%としたときの質量%で示している。
「A液」
(1)水酸化カリウム 5.0質量%
(2)50質量%の硝酸アルミニウム水溶液 9.0質量%
(3)純水 59質量%
「B液」
(1)10質量%の硝酸ストロンチウム水溶液 13質量%
(2)シリカ粒子分散液
(型番:カタロイド(登録商標)SI−30、触媒化成工業株式会社製) 14質量%
CHA型ゼオライト結晶が擦りつけられたセラミックス中空糸80をA液とB液の混合液に浸漬する。そして、これを密閉した状態で温度140℃、21時間加熱する。この工程により、CHA型ゼオライト結晶が核となってセラミックス中空糸80の外表面にCHA型ゼオライトの結晶が晶析する。その後、セラミックス多孔体を冷却し、これを乾燥する。この工程により、VP膜として機能するCHA型ゼオライト層85がセラミックス中空糸80の外表面に形成される。
【0050】
<セラミックス中空糸束の製造方法>
図5を参照して、セラミックス中空糸束60の製造方法について説明する。
図5(A)に示すように、PFAを溶融して金型に充填することにより、直径10cmかつ厚さ5cmの円筒状の支持中間体90Aを形成する。PFAが常温になったところで、支持中間体90Aの軸方向に沿ってドリルにより挿入孔91を形成する。挿入孔91の直径は、セラミックス中空糸80の直径よりも0.2mm程度大きくする。
【0051】
図5(B)に示すように、挿入孔91にセラミックス中空糸80を挿入する。そして、この支持中間体90Aをステンレス容器200に収容し、これを熱風循環炉内に入れ、温度330℃で3時間加熱し、さらに温度337℃により2時間加熱する。その後、これを室温まで自然冷却して、支持中間体90Aを硬化する(以下、「再硬化工程」)。このように支持中間体90Aを溶融することにより、挿入孔91とセラミックス中空糸80との間の隙間はなくなり、PFAとセラミックス中空糸80とが接着する。なお、自然冷却により支持中間体90Aは全体として硬化収縮してPFAとステンレス容器200との間に隙間が形成される。このため、支持部90はステンレス容器200から容易に取り出すことができる。
【0052】
図5(C)に示すように、セラミックス中空糸80の他方端から1cmのところまでPFAの収縮チューブ83を被せるとともに、収縮チューブ83の中空部分にPFAの充填材84を挿入し、これをオーブンにより温度330℃下で10分間加熱する。これにより、収縮チューブ83の表面および充填材84が溶融して互いに密着するとともに、収縮チューブ83がセラミックス中空糸80に接着して、他方端の開口部分を封止する。これを自然冷却した後、支持部90に雄ねじ92を形成する。
【0053】
図5(D)に示すように、雌ねじ104が設けられたステンレス製の外形部100に、支持部90をねじ入れる。そして、図2に示すように、支持部90の当接部93が外形部100の突起103にあたったとき、更に支持部90をねじ入れて、突起103を当接部93にねじ込むとともに、当接部93を外形部100の押当部105に押し当てる。これにより、当接部93と押当部105との間の隙間をなくす。
【0054】
セラミックス濾過膜モジュール40は次のように組み立てられる。
セラミックス中空糸束60をモジュール外筒部50の蓋にし、セラミックス中空糸束60とモジュール外筒部50とを接続する。このとき、外形部100のフランジ106とモジュール外筒部50のフランジ56とを互いに押し当て、支持部90には力が加わらないようにされる。そして、ヘルールクランプ70により、セラミックス中空糸束60とモジュール外筒部50とが互いに押し合うように固定される。
【0055】
図6〜図9を参照して、断面積比RSが5%〜40%の範囲内となるように設定している点について、実施例および比較例を挙げて、セラミックス中空糸80の割れ数を比較する。
【0056】
<実施例1>
(構造)
・セラミックス中空糸80 直径2.0mm、肉厚0.2mmのαアルミナにより形成(CHA型ゼオライト形成なし)
・支持部90 直径10cm、厚さ5cm
・セラミックス中空糸80の本数 180本
・実装部分94の半径 65.5mm
・断面積比RS 16.8%
・最も近い位置にあり互いに隣接する3つのセラミックス中空糸80は、正三角形の頂点に配置される(図6参照)。
(形成方法)
・セラミックス中空糸80およびセラミックス中空糸束60の製造方法は、上記実施形態と同じ。
(評価内容)
・評価方法は、PFAの再硬化工程後、セラミックス中空糸80の割れ数を確認する。
(結果)
・PFAの硬化後、セラミックス中空糸80の割れ数はなし。
【0057】
<実施例2>
・セラミックス中空糸80および支持部90は実施例1と同じ。
・セラミックス中空糸80およびセラミックス中空糸束60の製造方法および評価方法も実施例1と同じ。
・セラミックス中空糸80の本数 12本
・実装部分94の半径 17.6mm
・断面積比RS 15.5%
・最も近い位置にあり互いに隣接する3つのセラミックス中空糸80は、正三角形の頂点に配置される(図4参照)。
(結果)
・PFAの硬化後、セラミックス中空糸80の割れ数はなし。
【0058】
<比較例>
・セラミックス中空糸80および支持部90は実施例1と同じ。
・セラミックス中空糸80およびセラミックス中空糸束60の製造方法および評価方法も実施例1と同じ。
・セラミックス中空糸80の本数 12本
・実装部分94の半径 65.5mm
・断面積比RS 1.12%
・第1正六角形HAの各頂点にセラミックス中空糸80が6本配置され、第1正六角形HAよりも小さい第2正六角形HBの各頂点にセラミックス中空糸80が6本配置される(図7参照)。
(結果)
・PFAの硬化後、セラミックス中空糸80は全て割れる。
【0059】
<実施例と比較例との対比>
図8に、セラミックス中空糸80の半径、セラミックス中空糸80の本数、セラミックス中空糸80の実装面積SA、セラミックス中空糸80の総断面積SBと実装面積SAの比である断面積比RS、再硬化工程後のセラミックス中空糸80の割れ数を示す。また、同図には、参考値として、セラミックス中空糸80のうち支持部90に埋まっている部分の表面積の総和と、実装部分94に対応する部分の体積との比(「表面積/体積比」)が示されている。同図の「r」はセラミックス中空糸80の半径を示す。「R」は実装部分94の半径を示す。「n」はセラミックス中空糸80の本数を示す。「La」はセラミックス中空糸80において支持部90に埋まっている部分の長さを示す。「Lb」は支持部90の厚さを示す。支持部90の厚さLbと、セラミックス中空糸80において支持部90に埋まっている部分の長さLaは等しい。
【0060】
実施例1および実施例2は断面積比RSを15%以上に設定している。いずれの場合においても、PFAの再硬化工程後においてセラミックス中空糸80の割れはない。これに対して、比較例は、断面積比RSを2%未満に設定している。この場合、PFAの再硬化工程後においてセラミックス中空糸80は全部割れている。
【0061】
図9に、実装部分94の半径を65.5mmとした支持部90にセラミックス中空糸80を均等に配置したセラミックス濾過膜モジュール40について、断面積比RSと、セラミックス中空糸80の周囲のPFAの樹脂量との関係を示す。同図に示されるように、断面積比RSが5%未満の領域でPFAの量が急増する。このグラフによれば、断面積比RSが5%未満のとき、セラミックス中空糸80に対して加わるPFAの膨張収縮の影響が増大すると推定される。図8に示す実施例の結果および図9のグラフに基づいて、PFAの膨張収縮によるセラミックス中空糸80の割れを抑制するための条件は、断面積比RSを5%以上とすることとして定められる。
【0062】
ところで、実施例1および実施例2を比較すると、断面積比RSは略同じであるが、セラミックス中空糸80の本数が大きく異なる。すなわち、実施例1の実装面積SAが実施例2の実装面積SAの14倍となるが、両実施例ともに、セラミックス中空糸80の割れ数は「0」である。このことから、セラミックス中空糸80の割れ数は、実装面積SAの大きさによる影響は殆どないと推定される。
【0063】
本実施形態によれば以下の作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、支持部90は熱可塑性樹脂により形成され、支持部90においてセラミックス中空糸80が設けられた領域で、断面積比RSが基準値以上に設定されている。
【0064】
セラミックス中空糸80の断面積SCに対してこのセラミックス中空糸80の囲う熱可塑性樹脂の量が多いとき、熱可塑性樹脂の硬化収縮または温度変化に基づく膨張収縮により、セラミックス中空糸80に対して力が加わる。一方、セラミックス中空糸80の外力に対する耐性は断面積SCが大きい程大きい。
【0065】
上記構成によれば、この点を考慮し、上記の断面積比RSに基づいて、セラミックス中空糸80を囲う熱可塑性樹脂の量を制限する。すなわち、断面積比RSを基準値以上とすることにより、断面積比RSが基準値未満のものと比較して、セラミックス中空糸80の割れを抑制することができる。
【0066】
(2)本実施形態では、上記基準値は5%としている。
支持部90にセラミックス中空糸80が設けるとき、支持部90を一旦溶融してセラミックス中空糸80を固定する。支持部90の溶融後、冷却して支持部90を硬化するが、このとき硬化収縮する。このため、セラミックス中空糸80にはその径方向に力が加えられる。この力は、セラミックス中空糸80の周囲の樹脂量が大きくなる程大きくなる。断面積比RSが5%未満のとき、熱可塑性樹脂の硬化収縮によるセラミックス中空糸80の損傷の割合が大きい。この点、上記構成では、断面積比RSを5%以上とすることにより、セラミックス中空糸80の損傷の割合を低減することができる。
【0067】
(3)本実施形態では、断面積比RSは40%以下に設定されている。
断面積比RSを大きくすると隣接するセラミックス中空糸80の間隔が狭くなるため、セラミックス中空糸80の間を流通する流体の流れが阻害される。上記構成では、断面積比RSを40%以下に設定するため、断面積比RSが40%を超えるものと比較して、流体の流れの阻害を抑制することができる。
【0068】
(4)本実施形態では、支持部90を保持する外形部100をさらに備え、支持部90と外形部100とは機械的に接続されている。
支持部90と外形部100とが接着構造にて接続されているとき、温度変化による支持部90の膨張収縮による体積変化が外形部100によって制限されるため、支持部90の内部圧力が増大する。このため、セラミックス中空糸80に対して圧力が増大し、セラミックス中空糸80が損傷するおそれが高くなる。この点、本発明によれば、支持部90と外形部100とが機械的に接続されているため、支持部90の外側部分に膨張収縮する余地があり、温度変化による支持部90の内部圧力の増大を抑制する。これにより、温度変化によるセラミックス中空糸80の損傷を抑制することができる。
【0069】
(5)本実施形態では、セラミックス中空糸80の基端部81が支持部90に固定され、他端部82が非固定である。
セラミックス中空糸80の基端部81および他端部82すなわち両端が支持部90により固定されている場合、セラミックス中空糸80に圧縮力、引っ張り力、または捩れの力が加わるため、セラミックス中空糸80が損傷する頻度が高くなる。この点、本発明によれば、他端部82が非固定となっているため、圧縮力、引っ張り力、または捩れの力が作用しないため、両端の固定により起因する損傷を抑制することができる。
【0070】
(6)本実施形態では、セラミックス中空糸80はαアルミナ多孔質体であり、支持部90はフッ素系樹脂により形成されている。
フッ素系樹脂はαアルミナ多孔質体に接着するため、セラミックス中空糸80の外周と支持部90とが接するところに隙間が形成される頻度を小さくすることができる。すなわち、セラミックス濾過膜モジュール40として使用することのできない当該隙間のあるものを低減することができる。
【0071】
(7)本実施形態では、セラミックス中空糸80の外表面にはCHA型ゼオライト層が形成されている。
上記構成によれば、アルコールと水とを効率的に濾過するCHA型ゼオライト層がセラミックス中空糸80の外表面に設けられているため、アルコールと水との混合物から水を効率的に濾過することができる。
【0072】
(8)本実施形態では、上記のセラミックス濾過膜モジュール40を含めて濾過システム1が構成されている。
この構成によれば、セラミックス中空糸80の損傷を抑制する構造のセラミックス濾過膜モジュール40を含むため、温度変化により生じるセラミックス中空糸80の割れを抑制することができる。
【0073】
(9)本実施形態では、セラミックス濾過膜モジュール40の製造方法において、熱可塑性樹脂製の支持中間体90Aにセラミックス中空糸80を挿入する複数の挿入孔91を形成し、これら挿入孔91にセラミックス中空糸80を挿入した後、支持中間体90Aを溶融して、その後硬化する工程を含む。
【0074】
成形金型にセラミックス中空糸80を配列した状態で熱可塑性樹脂を充填するとき、セラミックス中空糸80が障害物となって未充填部分が形成されることがある。本発明によれば、支持中間体90Aの挿入孔91にセラミックス中空糸80を挿入した後に、支持中間体90Aを溶融しているため、未充填部分を少なくすることができる。
【0075】
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記各実施例にて示した態様に限られるものではなく、これを例えば以下に示すように変更して実施することもできる。また以下の各変形例は、上記各実施例についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0076】
・上記実施形態では、セラミックス中空糸80の外表面にCHA型ゼオライト層を形成しているが、これ以外の構造のゼオライトを形成してもよい。例えば、エタノール混合液からの水分離膜として、8員環程度の親水性ゼオライトであれば効率よく水分離が可能であり、LTA型(4.1Å×4.1Å)、MER型(3.1Å×3.5Å)、またはPHI型(3.8Å×3.8Å)のゼオライト層が挙げられる。なお、括弧内の値は、ゼオライト層の孔の大きさを示す。
【0077】
・上記実施形態では、支持部90をPFAにより形成しているが、混合蒸気による熱に耐える熱可塑性樹脂であれば、支持部90を形成する材料として用いることができる。
・上記実施形態では、実際に濾過膜として使用するセラミックス中空糸80を支持部90に挿入する構造としているが、濾過膜として機能しないダミーのセラミックス体を支持部90に挿入してもよい。例えば、ダミーのセラミックス体をセラミックス中空糸80の実装部分94の周囲に挿入する。これにより、実装部分94よりも外側にあるPFAの膨張収縮による力がダミーのセラミックス体により遮られるため、これらダミーのセラミックス体よりも内側にあるセラミックス中空糸80に与える力の大きさを小さくすることができる。ダミーのセラミックス体をプラスチックにより形成することもできる。なお、このような構造の場合、断面積比RSを求めるときは、ダミーのセラミックス体をセラミックス中空糸80とみなして、セラミックス中空糸80の断面積SCの総和が求められる。
【0078】
・上記実施形態では、断面積比RSを5%以上40%以下に設定しているが、断面積比RSを15%以上40以下に設定することが好ましい。断面積比RSを15%以上とするとき、断面積比RSを5%以上15%未満とするときと比較して、セラミックス中空糸80の周囲のPFAの樹脂量を少なくなり、再硬化工程後のPFAの硬化収縮および温度変化における支持部90の膨張収縮が小さくなるため、セラックス中空糸の割れ頻度を低減することができる。
【0079】
・上記実施形態では、支持部90と外形部100とはねじにより互いに接続されているが、これに代えて、次の構成により、支持部90と外形部100とを接続することもできる。すなわち、支持部90と外形部100との接続構造として、支持部90が外形部100に挿入する方向に沿って形成された支持部90の突起103と、この突起103に係合するように設けられた外形部100の溝部との係合による接続構造を採用することもできる。
【0080】
・上記実施形態では、外形部100の押当部105と支持部90の当接部93とが互いに押圧する構造としているが、押当部105と当接部93との間にゴムパッキンを挿入する構造とすることもできる。これにより、押当部105と当接部93との間の隙間をより小さくすることができる。
【0081】
・上記実施形態では、支持部90を覆うように外形部100が設けられているが、外形部100を省略することもできる。この場合、支持部90の下部に、支持部90とモジュール外筒部50とをヘルールクランプ70により接続するためのフランジを設ける。
【0082】
・上記実施形態では、セラミックス中空糸束60が蓋としてモジュール外筒部50に接続される構造としているが、モジュール外筒部50の中間部に設ける構造とすることもできる。すなわち、この場合、セラミックス中空糸束60は、蓋としての機能を有さず、濾過機能だけを有することになる。
【符号の説明】
【0083】
1…濾過システム、10…混合タンク、20…水タンク、21…真空ポンプ、30…エタノールタンク、31…流量ポンプ、40…セラミックス濾過膜モジュール、50…モジュール外筒部(モジュール容器)、50A…濾過タンク、50B…土台、51…吸入口、52…継手、53…配管、54…排出口、55…開口部、56…フランジ、57…内部空間、58…濾過空間、59…混合空間、60…セラミックス中空糸束、70…ヘルールクランプ、80…セラミックス中空糸、81…基端部、82…他端部、83…収縮チューブ、84…充填材、85…CHA型ゼオライト層、90…支持部、90A…支持中間体、91…挿入孔、92…雄ねじ、93…当接部、94…実装部分、100…外形部、101…収容部、102…貫通孔、103…突起、104…雌ねじ、105…押当部、106…フランジ、200…ステンレス容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過対象物を濾過する複数本のセラミックス中空糸およびこれらセラミックス中空糸を支持する支持部を含むセラミックス中空糸束と、このセラミックス中空糸束を収容するモジュール容器とを備えるセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記支持部は熱可塑性樹脂により形成され、
前記支持部において前記セラミックス中空糸が設けられた領域でこれらセラミックス中空糸の全てを包含する最も小さい円の内側部分の面積に対する前記セラミックス中空糸の断面積の総和の割合を断面積比として、この断面積比が基準値以上に設定されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記基準値は5%である
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記断面積比は40%以下に設定されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記断面積比は15%以上40%以下に設定されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記支持部を保持する外形部をさらに備え、
前記支持部と前記外形部とは機械的に接続されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記セラミックス中空糸の基端部が前記支持部に固定され、他端部が非固定である
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記セラミックス中空糸はαアルミナ多孔質体であり、
前記支持部はフッ素系樹脂により形成されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のセラミックス濾過膜モジュールにおいて、
前記セラミックス中空糸の外表面にはゼオライト層が形成されている
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュール。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項のセラミックス濾過膜モジュールを含む濾過システム。
【請求項10】
セラミックス中空糸を支持する支持部を備えたセラミックス濾過膜モジュールの製造方法において、
熱可塑性樹脂製の支持中間体に前記セラミックス中空糸を挿入する複数の挿入孔を形成し、これら挿入孔に前記セラミックス中空糸を挿入した後、前記支持中間体を溶融して、その後硬化することにより、前記支持部を形成するとともに前記支持部に前記セラミックス中空糸を固定する工程を含む
ことを特徴とするセラミックス濾過膜モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−91119(P2012−91119A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240845(P2010−240845)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】