説明

セラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体の製造方法

【課題】 セラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 テルペンペプチド結合体は、フェニルアラニンとグルタミン酸からなるジペプチド、フェニルエチル基、ゲラニオールから構成される。この製造方法は黄色の薔薇の花びら、金の粉末及び大豆粉末に納豆菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程からなる。得られるテルペンペプチド結合体はEGFより優れた効果を呈し、化粧料、食品製剤、医薬品として応用される。特に、化粧料に利用した場合、セラミドにより皮膚バリアの増強、皮膚の水分保持力、弾力に優れた化粧料が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はセラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セラミドは細胞膜を形成する成分であり、ほぼすべての細胞に存在し、細胞膜を安定化する重要な働きを担っている。このセラミドの構成成分の主体は脂質と糖質である。
【0003】
また、セラミドは細胞内情報伝達系の伝達物資としても働き、種々の情報を伝達している。特に、アポトーシスとの関係が注目され、癌の抑制にも利用される可能性がある。
【0004】
さらに、肌においては皮膚細胞の細胞バリアを形成し、外部から異物の侵入を防ぎ、一方、内部から水分の蒸散を防ぐ大切に働きを有している。化粧料としてセラミドを供給する試みもなされ、また、セラミドの産生を促進させるエキスも研究されている。
【0005】
しかし、セラミドを増加させる天然物にはその働きが弱いという問題点があり、セラミド産生が十分でない場合がある。
【0006】
セラミドを増加させる発明としては、セラミド産生促進剤としてユーカリ、タンニンとしてハマメリス、オトギリソウ、サルビア、ローズマリー及びボタンから選ばれた少なくとも1種を含有する皮膚化粧料がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
さらに、線維芽細胞コラゲナーゼ産生促進物質と表皮細胞セラミド合成促進物質とを含有することを特徴とする皮膚化粧料の発明がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
また、ユーカリ、ホップ、ショウガ、ガンビールノキ、ノイバラ、セイヨウトチノキ、ユリ、ハトムギ、ガマ、ビワ、クチナシ、オタネニンジン、サボンソウ、シラカバ、アマチャ、チョウジ、ベニバナ、ワレモコウ、イリス及びクララから選ばれる植物又はその抽出物、水蒸気蒸留物若しくは圧搾物を有効成分とするセラミド産生促進剤の発明がある(例えば、特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4139545号
【特許文献2】特許第3928746号
【特許文献3】特許第3813515号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記したように既存の天然物によるセラミド産生作用は軽度であり、産業上への利用が限定されるという課題があり、また、化学合成された物質では安全性に問題があり、利用が限られている。
【0011】
そこで、副作用が弱く優れたセラミド産生作用を呈する天然物を効率良く製造する製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、セラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体の製造方法に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0014】
請求項1に記載の製造方法によれば、効率良くセラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0016】
黄色の薔薇の花びら、金の粉末及び大豆粉末に納豆菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程からなる下記の式(1)に示されるセラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体の製造方法について説明する。
【0017】
【化2】

【0018】
ここでいうテルペンペプチド結合体とはテルペンとペプチドの結合体であり、構成されるテルペンとしては1分子のフェニルエタノールと2分子のゲラニオールである。
【0019】
フェニルエタノールとゲラニオールはいずれも天然の植物に含有されており、その安全性も確認されている。
【0020】
ペプチドとしてはフェニルアラニンとグルタミン酸のジペプチドであり、N末端がフェニルアラニンでC末端がグルタミン酸である。
【0021】
これらのアミノ酸はいずれもL型である。これらのアミノ酸はいずれも体内に存在する成分であり、その安全性は確認されている。
【0022】
ゲラニオールの1分子はその水酸基がフェニルアラニンのN末端のアミノ酸と結合している。
【0023】
さらに1分子のゲラニオールがグルタミン酸のアルファ位のカルボキシル基とエステル結合している。
【0024】
フェニルエタノールはグルタミン酸のガンマ位のカルボキシル基とエステル結合している。
【0025】
このテルペンペプチド結合体は水溶性と油溶性の両性を持つことから、水、油、エタノールなどに溶解性を示すことから利用しやすい。
【0026】
このテルペンペプチド結合体はセラミド合成酵素に活性中心の近傍にある疎水性部位に電子を供給することによりセラミド生成を促進する働きがある。この働きはこのテルペンペプチド結合体の濃度に依存して活性化される。
【0027】
また、生成されたセラミドの分解を行うセラミド分解酵素を阻害する働きもあることから、セラミドを維持する。
【0028】
一方、このテルペンペプチド結合体は細胞内に局在する脂溶性エステラーゼにより分解されてペプチドとテルペンに分解されることから残留性もなく、安全性は高い。
【0029】
得られたテルペンペプチド結合体を医薬品素材として利用する場合、目的とするテルペンペプチド結合体を分離精製することは、目的とするテルペンペプチド結合体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0030】
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0031】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0032】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
【0033】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0034】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0035】
食品製剤として美容を目的とした美容食品、癌の予防を目的とした食品、肝臓細胞の維持を目的とした滋養強壮剤などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0036】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、皮膚の健康を維持する目的として、飼料やサプリメントとして利用される。
【0037】
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
【0038】
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0039】
得られた化粧料は、セラミドを生成する働きにより皮膚のバリア機能を維持し、炎症を抑制する。
【0040】
また、細菌、刺激物、炎症物質、酸化物の進入を抑制する働きを利用してアトピー患者の角質改善と皮膚再生を促進する。また、美白作用を呈することから、美白用化粧料や医薬部外品としても利用される。
【0041】
この製造方法とは黄色の薔薇の花びら、金の粉末及び大豆粉末に納豆菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程からなる。
【0042】
原料となる物質は黄色の薔薇の花びら、金の粉末、大豆粉末、納豆菌である。
【0043】
黄色の薔薇の花びらにはテルペノイドが多く含有され、また、黄色の薔薇の花びらは食用としても利用されることから好ましい。薔薇は属名がRosaであり、種として多種類の薔薇が存在するが黄色を呈する薔薇は特にテルペン類が多く、黄色色素が抗酸化作用を呈する特徴を有する。
【0044】
また、薔薇の花びらに特にテルペンが豊富であることから花びらが利用される。
【0045】
黄色の薔薇の花びらの原産地は日本、ダマスクス地方、フランス、アメリカなどいずれの国でも良い。また、低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。
【0046】
黄色の薔薇の花びらは乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うことから好ましい。
【0047】
ここで原料として用いる金の粉末は、純金の塊、金地金や砂金、金箔などを粉砕して得られる。特に、純度99%以上の純金は、不純物が少ないことから原料として好ましい。金塊は粗く削られた後に、石臼や粉砕機により粉末とされる。
【0048】
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。米常商事株式会社より購入した三菱マテリアルや住友金属鉱山製の金地金は純度が高く、反応性が高いことから、好ましい。
【0049】
原料となる大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
【0050】
このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆は有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
【0051】
大豆は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行しやすい。
【0052】
さらに、金の粉末、大豆と黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0053】
用いる納豆菌は学名バチルス サブチリスで日本では納豆の製造に汎用され、食経験が豊富で有用な食用菌である。沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。このうち、納豆本舗製の納豆菌は高い発酵性を呈することから好ましい。
【0054】
この納豆菌は、黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末と大豆からなるテルペンとペプチド成分を同時に発酵させ、金原子はこのエステルを結合させる抱合酵素とエステル結合酵素を誘導し、反応を触媒する。
【0055】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末1重量に対し、金の粉末は0.0002〜0.003重量、大豆粉末は0.3〜5重量及び納豆菌は0.001〜0.03重量が好ましい。納豆菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0056】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0057】
また、この発酵は、30〜45℃に加温され、発酵は、2日間から14日間行われる。目的とするテルペンペプチド結合体をHPLCやTLCにより定量すること、ならびに、菌体の増殖性を確認することにより、発酵の工程管理を実施する。
【0058】
この発酵の工程によって、金の粉末の存在下でテルペンがペプチドに結合するものの、その結合は不安定で分解されやすいため、以下の示すアルカリ還元を実施することが必要である。
【0059】
前記の発酵により生成された発酵物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0060】
この発酵物はアルカリ還元される。アルカリ還元は、アルカリ還元装置やアルカリ還元整水器により実施されることが好ましい。例えば、ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」、エヌアイシー製のアルカリ還元水製造装置「テクノスーパー502」、マルタカ製「ミネリア・CE−212」、クレッセント製「アキュラブルー」、株式会社日本鉱泉研究所製「ミネラル還元整水器」などの装置を用いることがさらに好ましい。
【0061】
アルカリ還元を実施する際の溶媒としては、アルカリ還元を効率的に実施させることから、20%から80%濃度のエタノールを含有する含水エタノール溶液が好ましい。この還元の工程により、目的とするテルペンペプチド結合体のエステル結合に電子が付与され、その結合体が安定化される。
【0062】
前記の還元反応物から、目的とするテルペンペプチド結合体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0063】
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするテルペンペプチド結合体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0064】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0065】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0066】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0067】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0068】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
【0069】
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0070】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜35倍量が好ましく、4〜25倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0071】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0072】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0073】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0074】
テルペンペプチド結合体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするテルペンペプチド結合体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0075】
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるテルペンペプチド結合体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
【0076】
また、このテルペンペプチド結合体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
【0077】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
【実施例1】
【0078】
米常商事株式会社より購入した金地金100gを粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕して、粒子サイズが3〜4マイクロメーターの金の粉砕物80gを得た。
【0079】
愛知県の渥美地方で減農薬栽培された黄色の薔薇の花びらを用いた。葉部分を採取した後、水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末粉砕物を1.1kg得た。
【0080】
北海道産の大豆をミキサー(クイジナート)に供し、大豆の粉砕物1.1kgを得た。前記の黄色の薔薇の花びらと大豆の粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
【0081】
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水8kgを添加し、攪拌した。
【0082】
これとは別に、粉末納豆菌(納豆本舗製)9gを小型発酵タンクに供し、滅菌した大豆粉末と前培養させた培養液を用意した。
【0083】
前記の前培養した納豆菌の溶液を前記の金の粉砕物、黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末と大豆を入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、41〜43℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
【0084】
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行い、目的とするテルペンペプチド結合体の生成を測定した。
【0085】
その方法は、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)に発酵液を供して分析し、目的とする物質の生成を確認した。
【0086】
その結果、発酵5日後に、目的とするテルペンペプチド結合体が十分量生成されたため、発酵を終了させた。発酵を停止後、発酵液にエタノール2kgを添加した。
【0087】
この発酵液を珪藻土を敷いたろ過器に供し、ろ過した。得られたろ過液をセルラキッス(株式会社ゼノン製)に供した。
【0088】
得られたろ液をアルカリ還元装置(ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」)に供してアルカリ還元化させた。
【0089】
こうして得られたアルカリ還元物を日本エフディ製の凍結乾燥機に供し、目的とするテルペンペプチド結合体を粉末として89g得た。これを検体1として以下の試験に供した。
【0090】
以下に、テルペンペプチド結合体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0091】
上記のように得られた検体1をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
【0092】
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。構造解析の結果、検体1からフェニルエタノール、ゲラニオール、フェニルアラニン、グルタミン酸が結合した結合体が検出された。
【0093】
以下に、ヒト皮膚細胞を用いたセラミド生成の確認試験について述べる。
(試験例2)
【0094】
クラボウ株式会社より購入したヒト皮膚上皮細胞を用いた。培養液としては、5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに、前記の実施例1で得られた検体1及び対照として表皮成長因子(EGF)を0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
【0095】
EGFは皮膚細胞を増殖させる物質として利用され、セラミドを増加させることから、化粧料としても汎用されている。
【0096】
細胞を剥離後、細胞数を計数し、細胞懸濁液を調製した。この細胞懸濁液中のセラミド含量をHPLC法(島津製作所)により定量した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
【0097】
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により、皮膚細胞数が対照群に比して平均値として189%に増加した。
【0098】
また、対照としたEGFでは細胞数が対照群に比して144%となり、検体1の方が上皮細胞の増殖性に優れていた。
【0099】
セラミド含有量については細胞1000個あたりのセラミド量で比較した結果、対照群の値に比して、検体1では260%となり、一方、EGFでは130%となったことから、検体1が2倍程度、セラミド産生に優れていた。
【0100】
以下に、テルペンペプチド結合体からなる化粧料の実施例について説明する。
【実施例2】
【0101】
化粧料用混合機にモノステアリン酸ポリエチレングリコール1g、親油型モノステアリン酸グリセリン1g、馬油エステル2g及びオレイン酸2gを加熱し、溶解した。
【0102】
得られた溶液に、実施例1で得られた検体1の20g、α−トコフェロール0.1g及び精製水60gを添加した。これらを溶解した後、冷却して化粧料として乳液を得た。これを実施例2の検体2とした。対照の化粧料として実施例1で得られた検体1の粉末のみを除外した乳液を調製した。
【0103】
以下に、化粧料の効果及び副作用について評価した試験例を示す。
(試験例3)
【0104】
18〜60才の健常女性の20人に、実施例2で得られた乳液10mLを顔面右半分に、14日間塗布した。顔面左半分には検体1を除外した乳液を塗布した。
【0105】
塗布前及び塗布14日に、顔面左右それぞれの水分保持力(インテグラル製、CM825)及び皮膚弾性力(インテグラル製、衝撃波測定装置、RVM600)を測定した。
【0106】
試験の結果、顔面左半分に比し、実施例2の乳液を塗布した顔面右半分の水分保持力及び皮膚弾性力は、それぞれ134%及び144%といずれの値も改善された。
【0107】
一方、検体1を除いた対照とした乳液について乳液を塗布した顔面右半分の水分保持力及び皮膚弾性力は、それぞれ99%及び100%といずれの値も改善されなかった。
【0108】
これらの結果から実施例2の乳液は水分保持力と弾性力が向上されることが確認された。また、この化粧料の塗布による違和感や副作用は認められず、安全性が確認された。
【0109】
この結果、皮膚弾性力は皮膚の角質剥離と皮膚の再生に依存しているため、テルペンペプチド結合体を含む化粧料がセラミド生成を解して美容に効果的であると考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明で得られるテルペンペプチド結合体はセラミド生成を促進し、かつ、副作用が少ないことから、国民のQOLを改善し、健康な労働人口を増加させ、かつ、医療費を削減できる。
【0111】
本発明で得られるテルペンペプチド結合体はセラミド生成に基づく肌細胞を改善する作用を有することから、化粧料としてアトピーや肌トラブルに悩む方の改善に貢献し、化粧品業界の発展に寄与する。
【0112】
本発明で得られるテルペンペプチド結合体は食品としても利用できることから、食品業界の発展に寄与する。
【0113】
本発明で得られるテルペンペプチド結合体は癌治療や癌予防のための医薬品製剤として用いられ、医薬品業界の発展に寄与する。
【0114】
黄色の薔薇の花びらの乾燥粉末を利用することによって廃棄物の有効利用と農業資源の有効活用ができ、農業及びその二次加工産業を発展させる。
【0115】
本製造方法は、高度な発酵技術を利用するものであり、新しい発酵技術の向上と発酵産業の進展に貢献する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黄色の薔薇の花びら、金の粉末及び大豆粉末に納豆菌を添加して発酵させた発酵液をアルカリ還元する工程からなる下記の式(1)に示されるセラミド生成作用を呈するテルペンペプチド結合体の製造方法。
【化1】


【公開番号】特開2011−250766(P2011−250766A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128425(P2010−128425)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(504447198)
【Fターム(参考)】