説明

セルフロックナット

【課題】 確実にナットの弛止めを行うことができ、又ロック片を寝かせることのできる専用の治具を使用すれば、必要に応じて弛めることができ、再度締結に使用できるようにしたセルフロックナットを提供する。
【解決手段】 ナット座面(11)のねじ穴(12)周縁には凹部(13)が形成され、該凹部の締付け方向(A)側にはロック片(14)が起立しかつその先端を凹部より突出させた姿勢で収納されるとともに、凹部内にはロック片を締付け方向に向けて押圧する弾性部材(15)が内蔵されており、ナットの締付け時にロック片が弾性部材を弾性変形させながら後端部を中心にして締付け方向とは反対の方向(B)に揺動され、締付け完了時にロック片が弾性部材の復元力によって揺動復帰されてロック片の先端が被締結面と競り合うことによってナットが弛み止めされるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセルフロックナットに関し、特に確実にナットの弛止めを行うことができ、又ロック片を寝かせることのできる専用の治具を使用すれば、必要に応じて弛めることができ、再度締結に使用できるようにしたナットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボルト・ナットで機械部品を締結した場合、その締結が振動などによって次第に緩んでくることがあることから、弛止めの方法が種々提案されている。例えば、ロックナットを、締結ナットに重ねてボルトに締め付け、ロックナットと締結ナットとを競り合わせることによって締結ナットを弛み止めするダブルナット方式が採用されていた。
【0003】
しかし、ダブルナット方式ではロックナットの確実な締付けを確認する作業が煩わしく、特に大量のナット締めを行う必要がある場合に作業が大幅に遅れるおそれがある。
【0004】
また、ロックナット座面のねじ穴周縁に突起を形成し、ロックナットを締結ナットに競り合わせたときに突起が変形し、螺合されたロックナットと締結ナットのねじ山の間に入り込ませて締結ナットの弛止めを行うようにした弛止め方式が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−69254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1記載の弛止め方式では座面の突起が一旦変形し始めると、ロックナットを弛める必要が生じた場合に、変形した突起が邪魔になってロックナットを弛めて締付け直すことができない。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、確実にナットの弛止めを行うことができ、ロック片を寝かせることのできる専用の治具を使用すれば、必要に応じて弛めることができ、再度締結に使用できるようにしたセルフロックナットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係るセルフロックナットは、ナットが締付けられて被締結面に押付けられることによって弛み止めされるセルフロックナットにおいて、ナット座面のねじ穴周縁には凹部が形成され、該凹部の締付け方向側にはロック片が起立しかつその先端を凹部より突出させた姿勢で収納されるとともに、上記凹部内には上記ロック片を上記締付け方向に向けて押圧する弾性部材が内蔵されており、ナットの締付け時に上記ロック片が上記弾性部材を弾性変形させながら後端部を中心にして締付け方向とは反対の方向に揺動され、締付け完了時に上記ロック片が上記弾性部材の復元力によって揺動復帰されて上記ロック片の先端が被締結面と競り合うことによってナットが弛み止めされるようになっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴はナット座面の凹部からロック片の先端を突出させ、ナットの締付け時にロック片を弾性部材を弾性変形させながら締付け方向とは反対の方向に揺動させ、締付け完了時にロック片を揺動復帰させて先端を被締結面に競り合わせて弛み止めするようにした点にある。
【0010】
これにより、ナットは締付けるだけで自分自身をロックすることになるので、確実に弛止めを行うことができ、弛止めの確認を行う煩わしさを解消できる。
【0011】
凹部の深さや幅及びロック片の突出寸法はねじの呼び径及びピッチによるリード角によって決定されるが、ロック片の揺動角度はリード角よりも大きく、具体的には1.5倍〜3倍程度の大きさにするのがよい。ロック片の倒れた角度がねじのリード角よりも大きいときにロック片を揺動復帰するとロック片の先端が被締結面に引っ掛かって弛み止めすることとなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るセルフロックナットの好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記実施形態の締付け前の状態を示す図である。
【図3】上記実施形態の締付け完了時の状態を示す図である。
【図4】上記実施形態におけるロック片及び弾性部材の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係るセルフロックナットの好ましい実施形態を示す。図において、本例のセルフロックナット10はねじ穴12が中心軸線に沿って形成され、セルフロックナット10の座面11にはねじ穴12周縁に3つの凹部13が相互に120°の角度間隔をあけて形成されている。セルフロックナット10の確実なロック機能を確保する上で、凹部13は3つ以上が望ましい。
【0014】
3つの凹部13内の締付け方向側には金属製、例えばばね鋼製のロック片14が起立しかつ先端が凹部13よりも突き出た姿勢に収納されるとともに、締付け方向に対して反対側には比較的硬質のゴム部材(弾性部材)15が凹部13内にピッタリと嵌まり込むように挿入されてロック片14を締付け方向に向けて押圧するようになっている。
【0015】
凹部13の幅W、深さD及びロック片14の突出量dはセルフロックナット10の雌ねじの呼び径及びピッチに応じて決定されており、ロック片14の揺動角αは雌ねじのリード角の約2倍の角度に設定されている。
【0016】
被締結部材30の挿通穴にボルト20を挿通した後、ボルト20に本例のセルフロックナット10を螺合させて締付け方向Aに回転させる。セルフロックナット10の座面11が被締結部材30の表面に接近すると、まずロック片14の先端が被締結面にあたり、セルフロックナット10が更に締付け方向Aに回転されると、ロック片14は図4の(a)に示されるようにゴム部材15を弾性変形させながら締付け方向Aに対して反対の方向に倒れていく。
【0017】
セルフロックナット10の締付けが完了し、セルフロックナット10の座面11が被締結部材30の表面にピッタリと接すると、図4の(b)に示されるように、ロック片14はゴム部材15を圧縮した状態でその先端がゴム部材15の弾性復元力を受けて被締結部材30の表面にピッタリと押し付けられることとなる。
【0018】
この状態でセルフロックナット10が振動などに起因して弛み方向Bに回転しようとすると、ロック片14の先端が被締結部材30の表面に引っ掛かり、ロック片14は凹部13の内底面と被締結部材30の表面との間で突っ張ってセルフロックナット10の弛み方向Bへの回転を阻止するので、セルフロックナット10が弛むおそれはない。
【0019】
また、セルフロックナット10の締付けが完了する以前の、セルフロックナット10の座面11と被締結部材30の表面との間に十分な隙間がある状態ではセルフロックナット10を弛み方向Bに回転させてもロック片14は起立した姿勢に戻ることができるので、セルフロックナット10を弛めて締め直すことができる。
【符号の説明】
【0020】
10 セルフロックナット
11 座面
13 凹部
14 ロック片
15 ゴム部材(弾性部材)
30 被締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットが締め付けられて被締結面に押し付けられることによって弛み止めされるセルフロックナットにおいて、
ナット座面(11)のねじ穴(12)周縁には凹部(13)が形成され、該凹部(13)の締付け方向(A)側にはロック片(14)が起立しかつその先端を凹部(13)より突出させた姿勢で収納されるとともに、上記凹部(13)内には上記ロック片(14)を上記締付け方向に向けて押圧する弾性部材(15)が内蔵されており、
ナットの締付け時に上記ロック片(14)が上記弾性部材(15)を弾性変形させながら後端部を中心にして締付け方向(A)とは反対の方向(B)に揺動され、締付け完了時に上記ロック片(14)が上記弾性部材(15)の復元力によって揺動復帰されて上記ロック片(14)の先端が被締結面と競り合うことによってナットが弛み止めされるようになっていることを特徴とするセルフロックナット。
【請求項2】
上記ロック片(14)の揺動角度(α)がナット雌ねじのリード角よりも大きくなっている請求項1記載のセルフロックナット。
【請求項3】
上記ロック片(14)の揺動角度(α)がナット雌ねじのリード角の1.5倍〜3倍の範囲内の角度となっている請求項2記載のセルフロックナット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96521(P2013−96521A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241057(P2011−241057)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(591209246)濱中ナット株式会社 (38)