説明

センサシステム

【課題】電波を送受信して人の存在を検知する複数のアクティブセンサにより点灯制御するセンサシステムにおいて、センサの誤検知による点灯誤りを低減して省エネルギー効果を高めると共に、小型化、省スペース化を図る。
【解決手段】本システム1は、電波を送受信して人の存在を検知するアクティブセンサ部3a、3bと、センサ部3a、3bの検知出力に基いてそれぞれ点灯制御される照明部4a、4bとを備える。センサ部3a、3bは、互いに隣接する照明部4a、4bのそれぞれに配設され、各センサ部3a、3bの送受信アンテナ51a、51bから送信される各電波の偏波面が、互いに直交するように形成される。これにより、互いの電波の反射波を受信時にセンサによる検知誤りを低減して、人が不在時の点灯誤りを無くして省エネルギー効果を高めると共に、照明部4a、4bを接近して配設できることにより、小型化、省スペース化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いたアクティブセンサの検知出力に基いて点灯制御される照明器具を備えたセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アクティブセンサを用いて照明器具を点灯制御するセンサシステムとして、検知エリア内に人の存否を検知する複数の人感センサと複数の照明器具とを備え、人感センサにより検知された人数に基いて照明器具の点灯状態を変化させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような装置の人感センサは、焦電型のPIR(Passive Infrad)センサ(受動型赤外線センサ)が使用されており、このようなPIRセンサは、安価でかつ容易に使用することが可能であるが、検知距離が短く、遠方の人の検知は困難であった。
【0003】
ところで、このPIRセンサ以外のアクティブセンサとして、電波を利用して移動物体を検知する車輌監視システムなどに隣接して使用される電波センサが知られている(例えば、特許文献2参照)。電波センサは、電波を送受信し、ドップラ効果によって送受信電波間で生じた周波数差を検出することにより移動物体を検知するセンサであり、電波の伝搬特性から赤外線等に比べ、検知物体との長距離の検知が可能である。
【0004】
しかしながら、このような電波センサを隣接して使用する場合、周囲の電波反射物体や移動物体による送信電波の反射の状況により、隣接する電波センサ間で互いの反射波を受信して、各電波センサの送信周波数のずれに伴う周波数差を検出し、擬似的なドップラ信号を検知することがある。従って、このような電波センサの検知信号により制御される電気機器が誤動作することがあった。
【0005】
このため、例えば、省エネルギーのために、アクティブセンサとして電波センサを複数配設し、電波センサの検知出力を基に照明器具を点灯制御しようとした場合、または電波センサを有する照明器具を複数配置して点灯制御しようとした場合には、隣接する他方の電波センサから送信された電波の反射波により、電波センサが誤検知を起こし、人が不在のときに点灯するなど、省エネルギー効果が低下する。また、複数の電波センサを照明器具に設ける場合は、相互の電波干渉を避けるため、それらを近接して配置することができず、小型化が困難であり、広い取り付けスペースを必要としていた。
【特許文献1】特開平11−67469号公報
【特許文献2】特開2004−317360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、電波を送受信して人の存在を検知する複数のアクティブセンサの検知出力に基いて点灯制御されるセンサシステムにおいて、アクティブセンサの誤検知を低減して、照明の省エネルギー効果を高め、小型化、省スペース化を図ることができるセンサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、電波を送受信して人の存在を検知するアクティブセンサと、該センサが設けられ、該センサの検知出力に基いて点灯制御される照明器具と、を備えたセンサシステムにおいて、複数の前記照明器具を互いに隣接して設置する際に、各照明器具に設けられた隣接するアクティブセンサの偏波面が互いに非平行となるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、隣接して配設されたアクティブセンサのそれぞれから送信される電波の偏波面が、互いに非平行となっているので、各センサが互いの送信電波の反射波を受信しても、受信レベルを低くできることにより、検知誤差を低減でき、人が不在時に点灯するなどの点灯誤りを防止して省エネルギー効果を高めることができると共に、複数の照明器具を互いに隣接して設置することができるので、小型化、省スペース化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の第1の実施形態に係るセンサシステムについて、図1乃至図5を参照して説明する。図1は、本実施形態のセンサシステム1が建物等の天上部100に取り付けられた状態の平面視を示し、図2(a)(b)は、本センサシステム(以下、本システムという)1における第1及び第2のセンサ付き照明器具2a、2bの構成を示す。本システム1は、電波を送受信して人を検知するアクティブセンサの出力を基に、移動する人の存在を検知して照明器具2a、2bを点灯させると共に、人が不在のときは、点灯しないようにして照明の省エネルギー化を図るものである。
【0010】
本システム1は、電波を送受信して人の存在を検知する複数のアクティブセンサ部(以下、センサ部という)(アクティブセンサ)3a、3bと、センサ部3a、3bの検知出力に基いて点灯制御される照明部4a、4bとをそれぞれ有する第1及び第2のセンサ付き照明器具2a、2bを備える。照明器具2a、2bにおいては、センサ部3a、3bは、送信電波の偏波面が互いに非平行(ここでは、直交)となる送受信アンテナ(以下、アンテナという)51a、51bを有し、照明部4a、4bは、光源8をそれぞれ有する。センサ部3a、3bは、天上部100の壁面の照明部4a、4bの近傍に取り付けられ、照明部4a、4bは、天上部100の取り付け穴21に装着されて固定され、センサ部3a、3bと各照明部4a、4bとは、互いに接続ケーブル(不図示)で電気的に接続されている。このように、センサ付き照明器具2a、2bは、同様の構成を成し、センサ部5a、5bのアンテナ51a、51bの偏波面が互いに略直角を成すようにしたものである。
【0011】
図2(a)(b)に示すように、センサ部3a、3bは、それぞれミリ波を送受信して人を検知するミリ波センサモジュール(以下、センサモジュールという)5a、5bと、センサモジュール5a、5bからの検知出力を基に、検知レベルを評価する同じ構成の評価回路6をそれぞれ有する。これらセンサ部3a、3bは、ミリ波を送受信し、ドップラ効果によって生じた送信信号と受信信号間の周波数差を検出して、移動物を検知するミリ波センサである。
【0012】
センサモジュール5a、5bは、互いに送信電波の偏波面が直角を成すアンテナ51a、51bと、それぞれの送信電波信号を発生するRF発振回路部52a、52bと、電波の送信信号と受信信号とを方向制御して入出力するサーキュレータ53と、サーキュレータ53からの送信信号と受信信号との周波数を比較して、それらの周波数差として検出されたドップラ信号を出力する信号処理部54とをそれぞれ有する。なお、センサモジュール5a、5bからの送信信号は、移動物体で反射されて周波数が変化した反射波となって受信される。
【0013】
評価回路6は、信号処理部54から出力されたドップラ信号を増幅する増幅回路部61と、この増幅されたドップラ信号を予め設定したしきい値と比較して、しきい値を超えたかどうかの判定を行う検波回路部62とを有する。検波回路部62は、検出されたドップラ信号がしきい値を超えた場合は、人感検知信号を発生し、この人感検知信号を照明部4a、4bに送出する。
【0014】
照明部4a、4bは、同じ構成を成し、人感検知信号に基いて光源8を調光するための調光部7と、調光部7により点灯制御される光源8とを備える。ここでは、調光部7は、検波回路部62からの人感検知信号が入力されると、検知領域に人が存在すると判断して、光源8を点灯する。
【0015】
ここで、図3(a)(b)を参照して、アンテナ51a、51bの偏波面の直交状態について説明する。図3(a)は、平面アンテナで形成された水平偏波のアンテナ51aの導体パターンを、図3(b)は、同垂直偏波のアンテナ51bの導体パターンをそれぞれ模式的に示している。アンテナ51a、51bは、誘電体基板55、56の表面上に導体パターンで形成されたマイクロ波ストリップライン型の平面アンテナからなる。これらのアンテナ51a、51bは、同じ導体パターン形状に基く直線偏波特性を有し、それらの一方を90度回転すると他方と同じパターン形状にすることができ、互いのパターン形状が略直交するように配置することにより、それらの偏波面を水平偏波、垂直偏波として互いに直交するようにできる。
【0016】
ここで、図4(a)(b)(c)を参照して、偏波面が直交するアンテナ51a、51bから送信された電波の送信電力Ptを同じアンテナ51aで受信した場合の受信電力Prについて説明する。図4(a)は、送受信側とも同じ偏波面をもつアンテナ51aとした場合を示し、このときの受信電力をPrとする。一般に、アンテナから距離Rにおける放射電磁波の電力密度Pdとして、次の式で表される。
(数1)
Pd=Pt・G/(4πR
(Pt:送信電力、G:アンテナ利得)
【0017】
このとき、受信のアンテナ51aにおける受信電力をPrは略Pdとなる。また、図4(b)は、送信側のアンテナ51bと受信側のアンテナ51aの偏波面が直交させた場合を示す。このとき、受信側と送信側の偏波面が直交する場合は、理論上、相互の干渉がなくなるため、その受信情報は感知されないが、実際には、偏波面が90°異なる信号の受信電力は、偏波面が同じ元の信号の受信電力と比較して−3dB程度となり、受信電力Prが約1/2倍(1/Pd)となる。
【0018】
電力密度Pdは、上記式で示されるように、Pt、Gは定数であるので、距離Rの2乗に反比例する。従って、図4(c)に示すように、偏波面を直交させることによって、隣接する他のアンテナからの電波の影響を受けなくなる距離は、同じ偏波面同士のアンテナを用いた場合に比較して約0.7倍(R/√2)にまで狭めることができる。これにより、隣接する電波センサのアンテナをより接近して配設することができる。
【0019】
ここで、図5を参照して、隣接して配設されたセンサ付き照明器具2a、2bにおけるセンサ部3a、3bで検知した人感検知信号による照明部4a、4bの点灯制御について説明する。なお、図5は、前記図1を断面的に見た状態を示す。照明部4a、4bは、天井100内の2つの取り付け穴21に、それらの照明光がそれぞれ反射される反射板22と共に、装着されている。センサ部3a、3bは、これら隣接する照明部4a、4bの周辺にそれぞれ対応して取り付けられている。照明部4a、4bの光源8は、それぞれの照射角に基く照射角範囲L1、L2の領域を照射し、これら照射角範囲L1、L2は、互いに部分的に重なるようになっている。また、アンテナ51a、51bは、各アンテナの指向性(例えば、放射パターンの半値幅)に基く指向角範囲θ1、θ2の領域に主として送信電波を放射する。また、各光源8の照射角範囲L1、L2は、アンテナ51a、51bの指向角範囲θ1、θ2と略同じか、またはそれ以上となっている。また、指向角範囲の領域A、Cは、アンテナ51a、51bのみでそれぞれカバーされる領域であり、指向角範囲の領域Bは、アンテナ51a、51bの両方でカバーされる領域である。また、センサ部3a、3bからは、それぞれ人を感知するためのミリ波の送信信号が常に送信されている。
【0020】
上記のように構成された本システム1の照明制御について説明する。人Mが矢印のX方向に移動して、領域Aの中に入ってくると、センサ部3aは、アンテナ51aを介して人Mの移動に基くドップラ信号を検知して、この検知出力に基く人感検知信号を照明部4aに出力する。照明部4aは、この人感検知信号に基き光源8を点灯する。また、人Mが領域Bに移動して来ると、センサ部3aに加え、センサ部3bのアンテナ51bが人Mを検知して、人感検知信号を発生し、照明部4bで光源8を点灯することにより、照明部4a、4bの両方の光源8が点灯状態となる。さらに、人Mが領域Bに移動して来ると、センサ部3aは、人Mを検出できなくなるので、照明部4bの光源8のみが点灯する。これにより、人Mの存在する付近のみを順次点灯することにより、照明部4a、4bの各光源8は、同時に点灯する検知領域を狭くして省エネルギーを図ることができる。
【0021】
このとき、アンテナ51a、51bは、それぞれから発射した送信電波が人Mや、他の周辺の障害物に当って反射された互いの送信電波の反射波(これを反射妨害波という)を受信した場合、アンテナ51a、51bから送信電波の偏波面が直交しているので、それら反射妨害波の受信レベルが低くなっている。従って、センサ部3a、3bの各RF発振回路52a、52bで発振されたRF発振周波数がずれていた場合に、その周波数差により擬似的なドップラ信号が発生したとしてもその検出レベルが十分低い。従って、各評価回路6は、反射妨害波の受信信号のレベルをしきい値以下と判定して、人Mの存在を検知しないようにできて、誤動作をなくすることができる。これにより、領域A、B、Cに人Mが存在しない場合に、誤って光源8が点灯することを防ぐことができ、照明の省エネルギーを高めることができる。従って、例えば、展示場などで、複数のスポットライト等の照明器具により、隣接する各展示品を個別に照明し、展示品に人が近付いたときのみ点灯する場合に、誤動作を少なくして照明器具を互いに近づけて配置でき、省エネルギーと共に、省スペース化を図ることができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、隣接して配設されたセンサ部3a、3bのそれぞれから送信される電波の偏波面が、互いに直交しているので、隣接する互いの電波の反射波を受信しても、それらの受信レベルを低くすることができる。これにより、人Mの検知誤差を低減することができるので、光源8の点灯誤りを防ぐことができ、省エネルギー効果を高めることができる。また、照明器具2a、2bを互いに隣接して設置することができるので、小型化、省スペース化を図ることができる。
【0023】
次に、本発明の上記第1の実施形態の変形例に係るセンサシステムについて、図6を参照して説明する。本変形例の本システム1は、2つのセンサ付き照明器具2a、2bを電柱に取り付け、それぞれのアンテナ51a、51bの指向性パターンの指向角を狭くすると共に、各指向性パターンの方向を分離し、それぞれの指向方向を個別に点灯して、防犯や工事などのために、必要な場所だけを点灯照射するものである。
【0024】
本システム1は、2つのセンサ付き照明器具2a、2bが1つの電柱10に隣接して、かつ、それらの光源8の照射方向が略直角をなすように取り付けられている。また、各アンテナ51a、51bは、それらのアンテナの指向性パターンの指向角領域を狭く絞るように形成され、それらのアンテナ51a、51bによる人の検知エリアR1、R2は、それぞれの光源8の照射領域内となるように形成されている。
【0025】
上記ように構成された本システム1においては、センサ部3a、3bが、検知エリアR1、R2の中で人を検出すると、これに対応して照明部4a、4bの光源8が検知エリアR1、R2付近を点灯する。この場合も、前記と同様に、アンテナ51a、51bの偏波面は、直交するように配設されているので、反射妨害波がアンテナ51a、51bで受信されても、受信レベルが低くなる。従って、人が検知エリアR1、R2内に不在のときに、点灯するという誤動作をなくすことができ、無駄な点灯を省くことができ、かつ、省スペース化できる。
【0026】
なお、本発明は上記各種の実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で適宜に種々の変形が可能である。上述した各種実施形態では、アクティブセンサは、隣接する2つの場合を示したが、2つ以上であってもよく、また点灯制御される照明器具も2つ以上あってもよい。また、アクティブセンサのアンテナを平面アンテナとしたが、パラボラアンテナや誘電体アンテナ等でもよい。また、アンテナの偏波面が直線偏波の場合を示したが、左右旋円偏波の直交する2つの円偏波アンテナを用いることもできる。また、電波の周波数は、ミリ波でなくてもマイクロ波やその他の周波数帯であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセンサシステムの構成図。
【図2】(a)は上記装置における第1のセンサ付き照明器具の電気ブロック構成図、(b)は同第2のセンサ付き照明器具の電気ブロック構成図。
【図3】(a)は上記装置における水平偏波面を形成するアンテナの構成図、(b)は同垂直偏波面を形成するアンテナの構成図。
【図4】(a)は送信、受信アンテナの各偏波面を同じとしたときの受信電波の強さを説明するための図、(b)は送信、受信アンテナの各偏波面を直交させたときの受信電波の強さを説明するための図、(c)は、偏波面を直交させたときの効果を説明するための図。
【図5】同装置の2つのセンサ付き照明器具を天上部内の取り付けた断面状態を示す図。
【図6】本発明の上記第1の実施形態の変形例に係るセンサシステムの使用状態を示す図。
【符号の説明】
【0028】
1 センサシステム
2a、2b センサ付き照明器具(照明器具)
4a、4b 照明部(照明器具)
3a、3b アクティブセンサ部(センサ部、アクティブセンサ)
5a、5b ミリ波センサモジュール
7 調光部(照明器具)
8 光源(照明器具)
51a、51b 送受信アンテナ(アンテナ、アクティブセンサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送受信して人の存在を検知するアクティブセンサと、該センサが設けられ、該センサの検知出力に基いて点灯制御される照明器具と、を備えたセンサシステムにおいて、
複数の前記照明器具を互いに隣接して設置する際に、各照明器具に設けられた隣接するアクティブセンサの偏波面が互いに非平行となるようにしたことを特徴とするセンサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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