説明

センサネットワークシステム

【課題】 管理者と使用者との双方向通信を実現するとともに、簡略化された安価なセンサネットワークシステムを提供できる
【解決手段】 人体情報を感知する感知部と信号を送受信する無線通信部を備えた人体情報感知手段と、人体情報感知手段からの情報と記憶部に記憶された人体情報を比較し、人体情報に関連付けされた照合情報を選択するデータ照合部を備えた収集分析手段とを備え、選択された選択照合情報を人体情報感知手段に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークシステムに関し、詳しくは、無線機能を有する人体情報感知手段を備えたセンサネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者の血圧や体温、体重などの健康状態に関するデータを検出する各種センサ、そのデータを取り込む在宅健康管理端末、およびその在宅健康管理端末とネットワークで接続されたサーバとを備えた在宅健康管理システムが提案されている。
【0003】
この在宅健康管理システムでは、各種センサで検出されたデータは、無線で在宅健康管理端末に送信され、その在宅健康管理端末に備えられたLCDモニタにおいて表示される。そして、在宅健康管理端末に送られた検出データは、公衆電話回線を介して病院などに設置されたサーバに送信される。サーバに送信された検出データを病院の医師が確認し、使用者の健康状態を把握している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−140748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような在宅健康管理システムでは、使用者の健康状態に関するデータを検出するための各種センサと、その検出データを収集する在宅健康管理端末とがそれぞれ単一の機器として用意されているため、在宅健康管理端末を構成するタッチパネルやカード型モデム、あるいはスキャナなどが必要であり、システムが複雑かつ高価になるという問題があった。また、この在宅健康管理システムでは、使用者から得られた検出データを在宅健康管理端末を介してサーバで収集し、医師が健康状態を確認しているが、その検出データを用いて使用者に対して適切なアドバイス等をするものではない。そのため、いわゆる双方向で情報のやりとりができず、使用者側で健康状態を維持するための医師からの情報を得ることができないという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を鑑みてなされたものであり、システムを簡単かつ安価にするとともに、使用者とシステム管理者との間で双方向通信ができるセンサネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るセンサネットワークシステムは、人体情報を感知する感知部、無線通信部、及び表示部とを有する人体情報感知手段と、前記人体情報を含む信号を受信する第1の信号中継手段と、複数の前記人体情報と前記人体情報に関連付けされた複数の照合情報とを記憶する記憶部と、前記感知部により感知された人体情報と前記記憶部に記憶された複数の前記人体情報とを比較し、前記複数の照合情報の中から関連付けされた選択照合情報を選択するデータ照合部とを有し、前記第1の信号中継手段からの前記信号を受信し、前記選択照合情報を前記第1の信号中継手段へ送信する収集分析手段と、を備え、前記選択照合情報は前記表示部を介して前記人体情報感知手段の使用者に伝達されることを特徴としている。
【0008】
このように、人体情報感知手段が人体情報を感知する感知部とその人体情報を信号として外部へ送信する無線通信部とを備えることにより、信号を使用者周囲の信号中継手段に直接送ることができ、ネットワークシステムを簡略化できるとともに、安価にネットワークシステムを構築することができる。また、人体情報感知手段で得られた人体情報を受信した収集分析手段において、その人体情報に関連付けされた選択照合情報をその人体情報感知手段の使用者に即座に送信することができ、使用者と収集分析手段を有する管理者との間で双方向通信を確立できるため、使用者は適切なアドバイス等を受けることができる。
【0009】
また、前記記憶部は前記複数の照合情報の経時変化情報を記憶しており、前記選択照合情報に相当する商品の在庫を前記経時変化情報に関連付けた指示情報を用いて管理することを特徴としている。収集分析手段の記憶部が、使用者に対して情報提供した照合情報の経時変化を記憶しておくことにより、管理者はその照合情報に対応する商品の使用履歴などを把握することができ、季節あるいは時間などに応じた詳細な在庫管理ができるようになる。
【0010】
また、前記人体情報は人体表面もしくは人体近傍の物理情報であることを特徴としている。季節や時間により大きく変化する人体表面もしくは人体近傍の物理情報を人体情報感知手段により取得し、その人体情報を収集分析手段の記憶部に蓄積しておくことで、使用者への適切なアドバイスを即座に行なうことができる。
【0011】
さらに、前記第1の信号中継手段と前記人体情報感知手段との信号経路とは異なる信号経路に接続され、前記人体情報感知手段と接続される第2の信号中継手段を備えることを特徴としている。人体情報感知手段からの信号を送信する経路を複数設けておくことにより、通信の冗長性を向上することができ、通信品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、管理者と使用者との双方向通信を実現するとともに、簡略化された安価なセンサネットワークシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すセンサネットワークシステムの概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係る人体情報感知手段のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る収集分析手段のブロック図である。
【図4】本発明の実施形態に係る動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る選択情報を示す表である。
【図6】本発明の実施形態に係る記憶情報を示す表である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示すセンサネットワークシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るセンサネットワークシステムの構成について図1、図2、図3に示す。
【0015】
図1は、センサネットワークシステム1の概略図である。
【0016】
図1に示すように、センサネットワークシステム1は、人体情報感知手段5と、第1の信号中継手段20と、収集分析手段30を含んで構成されている。人体情報感知手段5で得られた使用者3の人体情報は、無線通信信号13として第1の信号中継手段20に送信され、その第1の信号中継手段20からの通信信号15は無線あるいは有線の信号経路を介して収集分析手段30に送信される。また、収集分析手段30からの選択照合情報を含む通信信号17は、無線あるいは有線の信号経路を介して第1の信号中継手段20に送信され、その第1の信号中継手段20から無線通信信号19として人体情報感知手段5に送信される。なお、人体情報感知手段5から第1の信号中継手段20への無線通信としては、例えば無線LAN等を使用することができ、その場合、第1の信号中継手段20は無線LANのアクセスポイントである。
【0017】
図2は、人体情報感知手段5の構成を示すブロック図である。
【0018】
図2に示すように、人体情報感知手段5は、感知部6と、無線通信部8と、表示部10を含んで構成されている。また、感知部6は、情報取得部6Aと感知情報処理部6Bを含んで構成されている。情報取得部6Aは例えば人体表面あるいは人体近傍の物理情報を取得する機器を使用することができる。人体表面の物理情報を取得する機器としては、使用者3の顔表面の水分量などを測定する肌水分計、肌の表面温度を測定するサーモセンサや色温度計、肌表面の状態を詳細に観察するCCDカメラ、頭皮の油成分を測定する油分計などがある。また、人体近傍の物理情報を取得する機器としては、赤外線センサや紫外線センサなどがある。前記のような情報取得部6Aにより得られた人体情報に関する信号を感知情報処理部6Bにおいて所定の情報に処理し、その処理信号を信号経路9を介して無線通信部8に送信する。
【0019】
無線通信部8に送られた信号は、無線通信部8から第1の中継手段20に無線で送信される。無線通信部8は、感知部6からの信号を無線信号に変換するための高周波用IC、所定の周波数の信号のみを送受信するためのフィルタ、無線信号を送受信するためのアンテナなどを含んで構成されている。感知部6からの人体情報を含む信号は、無線通信部8に含まれる高周波用ICで所定の周波数、例えば無線LANを使用する場合は2.4GHzや5GHzなどの周波数の信号に変換されて、アンテナから送信される。この人体情報感知手段においては、感知部6と無線通信部8とは、一体のモジュールとして構成されてもよく、あるいはそれぞれ別体のモジュールとして構成し、マザー基板などに両者を実装することにより構成しても構わない。
【0020】
また、人体情報感知手段5は表示部10を備えている。表示部10としては、例えば情報を表示する液晶ディスプレイや、音声を出力するスピーカなどを使用することができる。感知部6で得られた肌の水分量などの人体情報を表示部10で表示することにより、使用者3が測定した時点での人体情報を知ることができる。また、表示部10では、後述する選択照合情報を表示することによりシステム管理者からの情報を表示することができる。例えば、収集分析手段に送信された肌の水分量のデータをもとに、システムの管理者がその水分量に最適な保湿剤や化粧品などの商品を選択し、その選択照合情報を表示部10を介して使用者3にアドバイスすることにより、使用者3は現在の肌の状態に最適な商品を選択して使用することができる。
【0021】
図3は、収集分析手段30の構成を示すブロック図である。収集分析手段30は、送受信部32と、データ照合部34と、記憶部36とを含んで構成されている。送受信部32は、第1の信号中継手段20から無線もしくは有線の信号経路を介して人体情報に関する信号を受信する。その受信した人体情報を、記憶部36において記憶している人体情報と比較し、その人体情報に関連付けされた照合情報の中から最適な選択照合情報を選択する。そして、その選択照合情報を送受信部32から第1の信号中継手段20へ送信する。なお、収集分析手段において信号を無線で送受信する場合は、人体情報感知手段5と同様な無線通信部を含んで構成される。
【0022】
図4は、第1の実施形態におけるセンサネットワークシステムの動作を示すフローチャートである。このフローチャートを用いて本発明におけるセンサネットワークシステムの動作の概略を説明する。なお、この実施形態の説明においては、人体情報を肌の水分量、照合情報を化粧品と例示して説明する。
【0023】
まず、S401では、人体情報感知手段である肌水分量計を用いて使用者が顔面の肌の水分量を測定し、肌水分量計でそのデータを取得する。
【0024】
S402では、そのデータを肌水分量計に搭載している無線LANなどの無線通信モジュールを用いて第1の信号中継手段である無線LANのアクセスポイントへ送信する。なお、無線LANを使用した場合、使用者が自宅あるいは自宅の外で肌水分量計を使用してもそのデータをネットワーク回線を使用して収集分析手段で取得することができる。
【0025】
S403では、アクセスポイントで得られらた肌水分量のデータを収集分析手段へ送信する。このS403での送信手段は無線、有線のどちらでも構わない。無線LANを使用した場合、管理者は複数の使用者から複数のデータを取得することができ、管理者は商品である複数の化粧品の使用頻度を知ることができる。なお、収集分析手段は管理者が所有するサーバであり、分析処理を行うコンピュータや、データを蓄積するメモリあるいはDVDなどの外部記憶装置を含んで構成されている。そして、そのサーバはアクセスポイントと送受信するために、インターネットなどの通信回線に接続されている。
【0026】
S404では、収集分析手段30の送受信部32で取得した肌水分量のデータを信号経路38を介してデータ照合部34へ伝達する。
【0027】
S405では、取得した肌水分量のデータと、記憶部36に記憶している肌水分量とをデータ照合部34で比較する。記憶部36には、図5に例示するような肌水分量と関連付けされた照合情報である化粧品の種類との対比表が記憶されている。
【0028】
そして、S406では、例えば使用者の肌水分量が60%の場合は、選択照合情報として化粧品Aを選択する。また、肌水分量が65%の場合は、選択照合情報として化粧品Bを選択する。図5に記載した対比表は、各使用者ごとに用意されており、管理者である化粧品メーカは特定の使用者の肌の状態に応じた最適な化粧品をアドバイスすることができる。
【0029】
S407では、選択照合情報である化粧品の情報をサーバの送受信部を介してアクセスポイントに送信する。
【0030】
S408では、サーバから送信される化粧品の情報を肌水分量計の液晶ディスプレイなどで表示し、使用者は最適な化粧品を選択して使用したり、注文することができる。以上のように、使用者は最適な化粧品を即座に選択、使用することができるとともに、管理者は顧客である使用者から直接かつ即座に商品の情報を得ることができ、在庫管理や生産管理に必要な労力やコストを低減することができる。
【0031】
なお、S406において選択照合情報を選択する場合、複数の照合情報から特定の照合情報を複数選択し、その複数の選択照合情報を使用者にアドバイスしても構わない。照合情報が化粧品の場合、種類の違う化粧品を複数組み合わせることにより、肌に最適な状態にすることもあるため、使用者にとってさらに有効なアドバイスを行うこともできる。
【0032】
また、図6に記載したように、使用者が肌水分量を測定した日と、そのときに選択された化粧品の情報を蓄積しておくことで、特定の使用者が季節ごとにどの化粧品を使用するかや、その使用量についても管理者は知ることができる。このような情報を管理者は複数の使用者について得ることができ、各月あるいは各季節ごとの化粧品の在庫を最適な量にすることができ、在庫管理あるいは生産におけるコストを低減することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るセンサネットワークシステムの概略図を図7に示す。なお、第2の実施形態におけるシステムの構成は、第1の実施形態の構成と類似の構成であるため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0034】
図7に示すように、第2の実施形態においては、人体情報感知手段5と信号を送受信する信号中継手段として新たに第2の信号中継手段40を設けている。第1の実施形態においては、通信方法として無線LANを使用したが、無線LANとは別の近距離無線通信方式であるBluetooth(登録商標)などを用いた第2の信号経路を用意している。このBluetoothを利用した場合、第2の信号中継手段40としては、Blutooth用の無線通信モジュールを搭載した携帯電話やPDAなどを使用する。なお、第2の実施形態においては、人体情報感知手段にも、Bluetoothなどの第2の無線通信方法に使用できる無線通信部を配置する必要がある。第2の実施形態のように、第1と第2の通信経路のような複数の通信経路と、それに対応した無線通信部を人体情報感知手段が備えておくことで通信の冗長性を向上することができる。例えば、無線LANのアクセスポイントが使用者の近傍になく、無線LANによる送受信ができない場合、Bluetooth機能を搭載した携帯電話で人体情報を含む信号を受信し、携帯電話回線を介して管理者側のサーバにデータを送信することができる。また、両方の通信経路を使用できる状況にある場合は、送受信される信号のデータ量などを考慮して最適な方式を選択することもでき、通信品質や通信速度を向上することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1、2 センサネットワークシステム
3 使用者
5 人体情報感知手段
6 感知部
8 無線通信部
10 表示部
20 第1の信号中継手段
30 収集分析手段
32 送受信部
34 データ照合部
36 記憶部
40 第2の信号中継手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体情報を感知する感知部、無線通信部、及び表示部とを有する人体情報感知手段と、
前記人体情報を含む信号を受信する第1の信号中継手段と、
複数の前記人体情報と前記人体情報に関連付けされた複数の照合情報とを記憶する記憶部と、前記感知部により感知された人体情報と前記記憶部に記憶された複数の前記人体情報とを比較し、前記複数の照合情報の中から関連付けされた選択照合情報を選択するデータ照合部とを有し、前記第1の信号中継手段からの前記信号を受信し、前記選択照合情報を前記第1の信号中継手段へ送信する収集分析手段と、
を備え、
前記選択照合情報は前記表示部を介して前記人体情報感知手段の使用者に伝達されることを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項2】
前記記憶部は前記複数の照合情報の経時変化情報を記憶しており、前記選択照合情報に相当する商品の在庫を前記経時変化情報に関連付けた指示情報を用いて管理することを特徴とする請求項1に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項3】
前記人体情報は人体表面もしくは人体近傍の物理情報であることを特徴とする請求項1または請求項2のうちいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。
【請求項4】
前記第1の信号中継手段と前記人体情報感知手段との信号経路とは異なる信号経路に接続され、前記人体情報感知手段と接続される第2の信号中継手段を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のセンサネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−248423(P2011−248423A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117953(P2010−117953)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】