説明

センサ付き真空断熱パネルとそれを利用した断熱容器

【課題】 断熱性に優れ、真空状態を検知でき、周辺温度や断熱空間内温度、パネル内湿度、パネルの加速度等をも検知でき、検知データを管理センタなどに送信可能なセンサ付き真空断熱パネルとそれらパネルを利用した断熱容器を提供する。
【解決手段】 断熱性の断熱材をガスバリア性のある外被材で被覆して、外被材の内側に少なくとも、真空センサと、バッテリと、真空センサで検知した真空データを外部に送信可能な通信部を設け、その外被材の内側を真空状態にした。外被材の内側に、真空センサの他に、温度センサ、湿度センサ、加速度センサのいずれか1以上を設けることも、検知データを記憶できる記憶部(素子)を設けることもできる。各種センサ、通信部及びバッテリは個別に収容することも、二以上の部品をユニット化して収容することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材を利用した真空断熱パネルと、そのパネルを利用した断熱容器に関するものであり、少なくとも真空センサを設け、更には温度センサ、加速度センサ、湿度センサといった各種センサ、通信部、前記センサで検知したデータを記憶できる記憶部、それらセンサや記憶に電源供給可能なバッテリをも備えたものである。
【背景技術】
【0002】
断熱材は発泡スチロールをはじめとして、内部に多くの空隙をもつ多孔質で、断熱性能の高い断熱材が各種知られている。近年は、断熱材を芯材とし、その外周をガスバリア性のある外被材で被覆し、外被材の内側を減圧して真空状態(真空度の高い状態)にし、外被材の開口部を熱溶着(ヒートシール)した真空断熱材もある。真空断熱材は真空状態とすることで断熱性能を高めたものである。真空断熱材の熱伝導率は0.002〜0.01w/mk程度であり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、断熱性能が顕著であることがわかる。
【0003】
近年は、食材や食品、化粧品や医薬品等をはじめとして、各種分野で、保冷を必要とする物品(要保冷品)を搬送する際に、発泡スチロールを初めとする各種断熱材製の保冷容器(断熱容器)や保冷室(断熱室)が使用されている。断熱容器や断熱室は断熱材で囲って形成するだけでなく、断熱容器の中に食材とともにドライアイスや蓄冷剤を入れて保冷しているのが現状である。昨今は断熱容器の内部空間(断熱空間)内の温度を管理するという需要もある。
【0004】
発泡スチロールの熱伝導率は空気と同じ0.02〜0.03w/mk程度でそれほど断熱性に優れるものではなく、また時間とともにドライアイスや蓄冷剤の冷却能力も衰えていくので、従来の断熱容器では長時間にわたって要保冷品を保冷することはできなかった。自動車で宅配する場合でも、交通事情によっては宅配完了までに予想よりも時間がかかることがある。このため、断熱材製の保冷容器だけでは確実に保冷できるとは限らなかった。
【0005】
そこで近年は、断熱室や断熱容器の壁材に真空断熱材が使用されている。真空断熱材は、真空状態が確保されないと断熱性が低減し、断熱空間内を低温に保持することが難しくなる。しかし、従来は、真空断熱材の真空状態を確認したり、断熱空間内の温度を管理したりする技術が提案されることはなく、むしろ、特許文献2のように、真空断熱材の断熱性能を高める技術について提案されることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−154966号公報
【特許文献2】特許第3885742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1によれば、保冷容器全体の体積が大きくなり、その結果、一度の配送で多くの需要者宅を回ることができなくなるので、食材の宅配事業者としては採用し難い。そのうえ、保冷容器の故障やドライアイス等の入れ忘れによって、保冷されない状態で食材を届けてしまう問題、つまり保冷容器内の温度管理ができないという問題を解消することもできない。
【0008】
特許文献2をはじめとする真空断熱材に関する従来の技術では、真空断熱材の真空状態を確認したり、断熱空間内の温度を管理したりすることはできなかった。
【0009】
本発明の課題は、断熱性に優れ、真空断熱材の真空状態を検知でき、必要に応じて周辺温度や断熱空間内温度、パネル内湿度、パネルの加速度等をも検知でき、検知した真空状態や検知温度をはじめとする各種検知データを管理センターなどに送信可能なセンサ付き真空断熱パネルと、それを利用した断熱容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、芯材(断熱材)にガスバリア性のある外被材を被せて外被材の内側を真空状態にした真空断熱パネルであって、外被材の内側に、少なくとも、真空センサと、バッテリと、真空センサで検知した真空データを外部に送信(伝送)可能な通信部を設けたものである。ここでいう真空状態とは、必ずしも絶対真空状態に限らず、真空度の高い状態を指す。
【0011】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、前記センサ付き真空断熱パネルの外被材の内側に、真空センサの他に、温度センサ、湿度センサ、加速度センサのいずれか1以上を設けることもできる。また、外被材の内側に、それらセンサでの検知データを記憶できる記憶部(記憶素子:例えば、データロガー)を設けることもできる。この場合の通信部は、真空センサで検知した真空データの他に、他のセンサで検知した検知データをも送信できるものにする。
【0012】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルでは、外被材の内側に収容する各種センサ、通信部、バッテリ及び記憶部は個別に収容することも、二以上の部品を一つにまとめて(ユニット化して)収容することもできる。温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、記憶部を設けた場合は、それらも含めてユニット化することができる。これらユニットは、断熱材に設けられた収容凹部内に収容することも、外被材の内側ではあるが断熱材の外部に設けることもできる。
【0013】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、外被材の全部又は一部を熱伝導材製又は/及び電波透過材製とするのこともできる。
【0014】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、外被材の外側に、外被材の内側の通信部と有線接続可能な接続具を設けることもできる。
【0015】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、バッテリを充電式のものとし、外被材の外側に充電電源を接続可能な充電端子を設けることもできる。バッテリは非接触の充電式とすることもできる。
【0016】
本発明のセンサ付き真空断熱容器は、容器本体と蓋を備え、容器本体が底板と側板を備えた断熱容器において、底板の外板、側板の外板、蓋の外板のいずれか一又は二以上の内側又は外側に本発明のセンサ付き真空断熱パネルを配置して形成することもできる。
【0017】
本発明のセンサ付き真空断熱容器は、容器本体と蓋を備え、容器本体が底板と側板を備えた断熱容器において、その底板、側板、蓋のいずれか一又は二以上を、前記したいずれか一つのセンサ付き真空断熱パネルで形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは次のような効果がある。
(1)外被材の内側が真空状態であるため断熱性の良好なパネルとなる。
(2)真空センサを備えているので、センサ付き真空断熱パネルの真空状態を監視することができる。
(3)通信部を備えているので、真空センサで検知した真空データを外部(例えば管理センタ)に送信することができ、受信した真空データに基づいてセンサ付き真空断熱パネルの保守管理を行うことができる。
(4)温度センサを設けた場合は、それで検知した温度データを外部に送信できるので、センサ付き真空断熱パネルで形成した断熱容器内の温度管理を行うこともできる。
(5)真空センサ、バッテリ、通信部及びバッテリの二以上をユニット化すれば、それらを外被材内へ収容し易くなる。
(6)バッテリを外被材の内側に設けたので、低温環境で使用してもバッテリが低温に曝されることがなく、バッテリが劣化し難い。バッテリを芯材(断熱材)内に設ければバッテリがより劣化し難くなる。
(7)外被材の全部又は一部を熱伝導材製又は/及び電波透過材製としたので、温度センサでの温度検知が確実にでき、通信部がシールドされることなく、通信も確実にできる。
(8)外被材の内側の通信部と有線接続可能な接続具を設けたので有線通信もできる。
(9)通信部を無線式にすれば、本発明のセンサ付き真空断熱パネルで形成した断熱容器が遠隔地にあっても、断熱容器の温度管理をタイムリーに行うことができる。
(10)バッテリを充電式にし、充電電源を接続可能な充電端子を外被材の外側に設けたので、バッテリを充電して繰り返し使用できる。バッテリを非接触の充電式にすれば充電も容易になる。
【0019】
本発明のセンサ付き真空断熱容器は次のような効果がある。
(1)本発明のセンサ付き真空断熱パネルを使用しているので断熱効率に優れ、同梱するドライアイスや蓄冷剤の量を従来よりも少量とすることができる。
(2)各種センサの検知データを、通信部を介して入手できるのでセンサ付き真空断熱容器の真空管理、温度管理等を行うことができる。また、センサ付き真空断熱容器内の要保冷品の品質管理を行うこともできる。
(3)バッテリがセンサ付き真空断熱材内に設置されているので、結露が生ずるような高湿環境で使用しても、低温環境で使用してもバッテリが劣化しにくく、長期使用が可能となるので、各種センサでの真空検知、温度検知等が長期間に亘って確実にでき、真空管理、温度管理が確実にできる。
(4)断熱容器の底板や側壁だけでなく、蓋(天板)の内面にもセンサ付き真空断熱パネルを貼り付けることができるので、この場合は断熱効果がさらに向上し、要保冷品の保冷が確実になる。
(5)現在使用されている断熱容器に本発明のセンサ付き真空断熱パネルを貼り付けることができるので、現状の断熱容器を有効活用でき、経済的にも自然環境的にも適する。
(6)センサ付き真空断熱パネルは、表面が外被材で覆われているため洗浄することができ、断熱容器内の衛生状態を維持することが容易である。
(7)断熱容器に、加速度センサを備えたセンサ付き真空断熱パネルを採用すると、例えば断熱容器で要保冷品を搬送している間に、要保冷品の周辺の振動状況を把握できるので、品質管理上さらに好適である
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)〜(d)は本発明のセンサ付き真空断熱パネルの各種例を示す断面図。
【図2】本発明のセンサ付き真空断熱パネルの真空検知説明図。
【図3】(a)は本発明のセンサ付き真空断熱パネルに使用されルユニットの一例を示す平面図、(b)は同ユニットの側面図。
【図4】本発明のセンサ付き真空断熱パネルを利用した断熱容器の一例を示す断面図。
【図5】本発明のセンサ付き真空断熱パネルを利用した断熱容器の他例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施形態1]
本発明のセンサ付き真空断熱パネルの実施形態の一例を、図面を参照して説明する。図1(a)〜(d)に示すセンサ付き真空断熱パネル1は、断熱材(芯材)2の外周を外被材3で被覆し、外被材3の内側に真空センサ4と、その他のセンサ、例えば、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ等5と、データロガー6と、通信部(送信部)7と、バッテリ8を設け、外被材3の内側を減圧して真空状態にしたものである。本発明では、真空センサ4と通信部7とバッテリ8があれば他のセンサ5やデータロガー6は必ずしも必要ではない。真空センサ4、他のセンサ5、データロガー6には既存のものでも新規に開発されるものでも使用可能である。以下の説明では、その他のセンサ5として温度センサを用いた場合を一例として説明する。
【0022】
(断熱材)
本発明で断熱材2として使用する断熱材には、例えば、ガラスウール、セラミックファイバ、ロックウールなどの繊維素材、粉末シリカなどの粉体、有機又は無機の発泡体などを用いることができる。発泡スチロールやFRP等を使用することもできるが、断熱材は多くの空気を排出できる方が減圧され、高い真空状態にすることができるため、内部に多くの空隙や孔等(以下「空隙」という。)をもついわゆる多孔質のものが望ましい。スタイロホームも利用できるが、割れやすいという面があるので使用状況によっては注意を要する。ガラスウールは割れ難いという特性を有する。断熱材の材質、形状、サイズ、厚さ等はセンサ付き真空断熱パネルの用途に合わせて設計される。
【0023】
(外被材)
外被材3は、フィルム状、シート状、板状のものを使用することができる。外被材3はその内部を真空状態に保つためガスバリア性に富む材質で形成される必要がある。ガスバリア性に富む材料としては、ステンレススチール、アルミニウム、鉄といった金属、プラスチック(樹脂)、金属箔とプラスチックフィルムとをラミネートした複合材、プラスチックに金属を蒸着した複合材、金属シートと樹脂シートを貼り合わせた積層構造の複合材、樹脂繊維製或いは天然繊維製の織布や不織布等の布とガスバリア性のある樹脂製、金属箔製等のフィルムやシート等とを積層した複合材等がある。これら外被材3の材質、厚さ、形状、サイズ、複合構造等は使用目的に応じて適宜採用することができる。外被材3は、フィルム状、シート状、板状のものを単独で使用することもできるが、断熱材2の片面をフィルム状の外被材3で被覆し反対側面をシート状の外被材3で被覆するとか、図1(d)のように断熱材2の片面(図1(d)では下面)に板状の外被材3を配置し、断熱材2の反対側面(図1(d)では上面)をフィルム状の外被材3を被せて断熱材2を被覆するといったように、フィルム状、シート状、板状のものを組み合わせて断熱材2を被覆することもできる。場合によっては断熱材2の両面に図1(d)に示すような板状の外被材3を配置し、その外側を外被材3で被覆して、その外被材3の内側を真空にすることもできる。外被材3の材質、形状、サイズ、厚さ、強度等もセンサ付き真空断熱パネルの用途に合わせて設計される。外被材11は同じ或いは異なる材質、構造のもの(いずれもガスバリア性のあるもの)を二重にして断熱材1を被覆することもでき、二重被覆することにより、万が一いずれか一方の外被材11が損傷しても外被材11の内側の真空状態は確保される。
【0024】
アルミニウムをはじめとする金属製の外被材3は、ガスバリア性、熱伝導性が高いという特性があるため外被材3の内側に設けた温度センサでの温度検知には適するが、シールド特性(電波遮蔽性)があるため、各種センサで検知した外被材3内のデータを外被材3の内部に収容した通信部7により外部に送信するのには適さない。その場合は、通信部7の外側部分だけをガスバリア性はあるが電波シールド性のない材質(電波透過材)の外被材で被覆するのが望ましい。
【0025】
外被材3には樹脂製のものを用いることもできる。樹脂はガスバリア性があるだけでなく、電波シールド性がないという特性があるため、金属とは逆に、通信面では適しているが、熱伝導性が低いため、外被材3内に設けた温度センサでの周辺温度の計測には適さない。これら全ての特性を生かすべく、金属製と樹脂製の外被材3を組み合わせて使用することもできる。一例として、温度センサに近接する(温度センサを覆う)範囲には熱伝導性の高い金属、例えばアルミニウムを使用し、通信部7に近接する(通信部を覆う)範囲に電波シールド性のない樹脂を用いるのが望ましい。
【0026】
外被材3は、その内部が減圧された状態で、外被材3の開口部がシール(例えば、ヒートシール)されることにより外被材3(断熱材2内を含む)の内部を真空状態に維持することができる。従って、外被材3は熱溶着可能な材料と組み合わされることが多い。例えば、アルミウムをはじめとする金属製の板、フィルム、シート等にPET素材を組み合わせたもの(貼り合わせ、蒸着等したもの)を用いることができる。
【0027】
断熱材2や外被材3は、ここで例示したものに限らず、従来から真空断熱材として用いられている他の材質の素材を使用することができ、特にサイズを大きめにし、更に折り曲げ可能な材質、厚さに設計すると、一枚のセンサ付き真空断熱パネル1を折り曲げて、底板と側板を、又は底板と側板と天板(蓋)を備えた断熱容器を製作することができる。
【0028】
(断熱性能)
真空断熱材は、外被材3の内部を真空状態(減圧状態)とすることで優れた断熱性能を有する。一例としては、真空断熱材の熱伝導率は0.002〜0.01w/mkであり、発泡スチロールの0.02〜0.03w/mk、空気の0.02w/mkに比べると、その断熱性能が顕著であることがわかる。
【0029】
(真空センサ)
真空センサ4にはピラニ真空計、隔膜真空計、静電容量型真空センサ、マイクロメカニカル真空センサ等々各種のものがある。本発明のセンサ付き真空断熱パネルで使用できる真空センサ4は外被材3の内側の真空状態を検知できるものであれば各種真空センサを使用可能である。真空センサ4は断熱材2内又は外被材3内に収容するためにはできるだけ小型、薄型のものが望ましい。真空状態は減圧状態を意味するので、例えば圧力センサを使用することができる。
【0030】
図2では、バッテリBから供給される電源で真空センサ4を作動させ、真空センサ4で外被材3の内側の圧力を検知し、検知した電流(電圧)を増幅器Aで増幅し、増幅器Aの出力電圧を、比較器Cにおいて本発明のセンサ付き真空断熱パネルが必要とする適正な真空状態(外被材3内の適正圧力:基準圧力)Paと比較することにより、外被材3の内部が適正な真空状態に維持されているか否かを判別することができる。図2では検知した圧力をデジタルメータ12に表示して、外被材3の内部の真空状態を確認できるようにしてある。比較器Cの出力が前記基準圧力Paよりも高い場合は、リレー13により真空ポンプPの電磁弁を開いて、真空ポンプPで外被材3内を減圧することもできる。真空センサ4は全部を外被材3内に設けてもよいが、部分的に外被材3の外部に突出して取付けてもよい。いずれの場合も外被材3内の真空状態が損なわれないように取付ける。図2の真空センサ4の検知データは、真空断熱パネル1内に設けた通信部を介してと増幅器Aに送信することもできる。
【0031】
真空センサ4で検知した真空データは外被材3の内側に設けた通信部(送信部)7から、例えば外部の管理センタや他の設備に無線送信し、管理センタや他の設備でデータ処理して真空状態の異常を確認し、管理することもできる。前記通信は有線で行うこともできる。無線式の場合は通信部7にアンテナを内蔵或いは外付けすることができる。有線式の場合は外被材3の外に外部機器と電気的に接続可能なコネクタとか他の接続機器(接続具)を設けておき、それに接続された外部機器との間で有線通信することができる。
【0032】
本発明では、真空センサ4で検知した真空データ(例えば、圧力データ)を、外被材3の内側に設けたデータロガー6に記憶させておき、記憶されたデータを例えば外部の管理センタやその他の箇所で処理して真空状態の異常を確認して真空状態を管理することもできる。データロガー6には真空データだけでなく、他のセンサで検知されたデータ、例えば、温度データ、湿度データ、加速度データ等をも記録することができる。湿度センサで検知された湿度データは、外被材3のガスバリア性が劣化或いは棄損して外部から外被材3の内側に侵入した湿気のデータである。
【0033】
温度センサ、湿度センサは、夫々温度、湿度を感知するものあり、加速度センサは振動を感知できるものである。加速度センサを設けることにより、本発明のセンサ付き真空断熱パネル1を例えば図4のように保冷容器(断熱容器)16に利用し、断熱容器16内に要保冷品を収容して搬送する際に、断熱容器16内の要保冷品の振動状況を把握することができるので、振動状況を要保冷材の品質管理に利用することができる。
【0034】
(バッテリ)
本発明では、真空センサ4、温度センサ5、データロガー6、通信部7を作動させるためのバッテリ8を設けてある。バッテリ8にはリチウム電池とか他の長寿命の電池を使用することができる。電池は充電式のものでも非充電式のものでも使用可能である。充電式の場合は外被材3の外に充電用電源接続器(例えば、コンセント)を設けておき、それに電源を接続することにより充電することができる。近年は、非接触式の充電、例えば、電磁波を充電に利用する充電方法も研究され、実用化の目途が立っているので、非接触式で充電が可能な電池を使用することもできる。
【0035】
リチウム電池をはじめとして各種電池は、一般に、低温環境や高湿環境では劣化が進みやすく、極端に寿命が短くなることが知られているが、本発明は真空断熱材であるため、電池を断熱材2や外被材3の内部に設けることにより、低温環境や高湿環境から隔離することができる。
【0036】
(センサ、バッテリ、通信部のユニット化)
本発明で使用する真空センサ4、温度センサ5、データロガー6、通信部7、バッテリ8は個別に断熱材2や外被材3の内部に設けることもできるが、一つにまとめてユニット化すると外被材3内に収容し易い。図3はそれらをユニット化した一例である。このユニット10は電気配線やアンテナ9が表示された基板11の片面に真空センサ4、温度センサ5、データロガー6、通信部(送信部)7を搭載し、基板11の反対側面にバッテリホルダ14を設け、そのバッテリホルダ14にバッテリ8を取付けてある。基板11にはガラスエポキシ製の硬質のものとか、樹脂フィルム製のフレキシブルなもの等を使用することができる。ユニット10は外被材3の内側に設ける。外被材3内へのユニット10の配置位置、配置構造は種々考えられるが、その主な例を図1(a)〜(d)に示す。
【0037】
図1(a)は、ユニット10を断熱材2に設けた凹部15内に収容固定した場合である。この場合、予め、断熱材2に設けた凹部15にユニット10を収容し、その後に断熱材2の外周を外被材3で被覆し、真空断熱パネル1にセットした真空ポンプP(図2)で外被材3の内部を減圧して所定の真空度(基準圧力)Paにする。その後に真空ポンプPを外被材3から取外してその取外し跡の開口部をヒートシールすることで、外被材3の内側を所定圧の真空度に保持できるようにする。ユニット10を収容した凹部15内の空間は外被材3を被せる前に熱伝導性の高い充填剤で注入しておくことも、そのまま空隙として残しておくこともできる。バッテリ8は断熱材2の肉厚方向略中心部に配置して、外部の低温・高湿度環境の影響を受けにくくするのが良い。
【0038】
図1(b)はユニット10を断熱材2の表面側に配置して、その外周を外被材3で被覆した場合を示す断面図である。この場合、基板11を上にして真空センサ4、データロガー6、通信部7、バッテリ8を断熱材2内に収容し、温度センサ5を断熱材2の表面に出して、真空センサ4、データロガー6、通信部7、バッテリ8を破損しにくくし、温度センサ5で外部温度を検知し易くしてある。
【0039】
図1(c)は、基板11を上にして真空センサ4、データロガー6、通信部7、バッテリ8を断熱材2内に収容し、基板11を断熱材2に設けた貫通孔や貫通溝の中を通して断熱材2の肉厚方向反対側に導出し、その導出部に取付けてある温度センサ5を断熱材2の裏面側に配置したものである。
【0040】
図1(d)は、基板11を下にして真空センサ4、データロガー6、通信部7、バッテリ8を断熱材2内に設けた凹部15に収容し、その断熱材2の裏面に板状の金属製外被材3を配置し、その断熱材2の上に樹脂シートの外被材3を被せ、そのシート状の外被材3を前記板状の金属製外被材3に密着し、板状の金属製外被材3とシート状の外被材3の内側を減圧して真空状態にしたものである。
【0041】
本発明のセンサ付き真空断熱パネル1は、図示しないが、図1(d)の断熱材2の上に被せた樹脂シートの外被材3を板状の金属製外被材に代えて、断熱材2を上下から板状の金属製外被材で挟み、両外被材の間を密封してから、その内側を減圧して真空状態にすることもできる。
【0042】
温度センサ5による温度検知、通信部7による通信を考えた場合、温度センサ5や通信部7付近に用いられる外被材3の素材の選択が重要になる。前記したように、金属材は熱伝導性が高いという特性がある半面、電波を吸収しやすいという特性があり、樹脂は熱伝導性が低く、電波を透過しやすいという特性があるため、図1(a)〜(c)に示すセンサ付き真空断熱パネル1の場合、アンテナ9が配置された部分は電波透過性の良好な樹脂を用い、温度センサ5が配置された部分は熱伝導性の高い金属材を用いるのが望ましい。
【0043】
本発明のセンサ付き真空断熱パネル1の場合、外被材3の全体を熱伝導性の高い金属製とし、アンテナ9を覆う範囲だけを部分的に電波透過性の良好な樹脂材とすることもできる。あるいは、全体を樹脂材とし、温度センサ部を覆う範囲だけを部分的に金属材とすることもできる。
【0044】
(製造方法)
本発明のセンサ付き真空断熱パネル1は、断熱材2の外周を外被材3で被覆した状態で、外被材3の内部を真空ポンプ等で減圧し、外被材3の開口部を密封して、外被材3の内部を真空状態に保持する。密封は熱溶着(ヒートシール)、接着剤による密着等、各種方法で行うことができる。断熱材2として使用する断熱材には、内部に多くの空隙があり、吸引機による抜気等により空隙内の空気を排出することができるものもある。このような断熱材は外被材3の内部を真空装置で減圧して真空状態にすることにより断熱材の内部も減圧される。断熱材が湿気を帯びているとその後の真空状態が保持され難いので、外被材3内の抜空作業(減圧作業)は乾燥空気を送りながら行うなど乾燥環境下で実施するのが望ましい。
【0045】
(断熱容器)
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、要保冷品を収容して配送する断熱容器の側板、底板、蓋等として使用することができる。図4は保冷容器16の断面図であり、この図に示す保冷容器16は容器本体17と蓋18から構成され、容器本体17は底板20、側板21で囲われて上方開口の箱状に形成されている。底板20、側板21、蓋18の夫々は、断熱材製の外板20a、21a、18aを備えた断熱外容器の内側に本発明のセンサ付き真空断熱パネル1が配置されている。真空断熱パネル1は外板20a、21a、18aに固定することもしないこともできる。蓋18の外板18aには固定すると蓋から外れず便利である。
【0046】
図4では、本発明のセンサ付き真空断熱パネル1に嵌合凹部30と嵌合凸部31を設けて、それらを互いに嵌合してある。本発明のセンサ付き真空断熱パネル1は底板20の外板20a、側板21の外板21a、蓋18の外板18aのいずれか一又は二以上の内側に設けることもできる。それら外板20a、21a、18aのいずれか一又は二以上の外側に設けることもできる。
【0047】
本発明のセンサ付き真空断熱パネル1は、図4の外板20a、21a、18aを使用せずに、図5のように本発明のセンサ付き真空断熱パネル1だけで構成することもできる。図5は図1(d)に示すセンサ付き真空断熱パネル1を底板20、側板21、蓋18に使用してある。この場合、肉厚の板状の外被材3を外側にして配置してあるが、板状の外被材3を内側にして配置することもできる。
【0048】
断熱容器16内の収容空間23内には要保冷品F(図4)を収容することができ、冷却用のドライアイスD(図4)も収容することもできる。
【0049】
断熱容器16を図4、図5のような構造とすることによって、その内部の収容空間23内を外部から断熱し、温度センサで検知した温度データを利用して収容空間23内の温度を管理することができる。この場合も、真空センサ4によって外被材3の内側の真空度を検知してセンサ付き真空断熱パネル1の真空度を監視し、真空センサ4で得られた真空データを使用して真空管理することができる。バッテリ8は外部から断熱されているため、低温環境・高湿環境に伴う劣化(短寿命化)の問題を解消できる。また、各種センサで得られた温度データ、真空データ、湿度データ、加速度データ等の各種データを通信部7によって外部に送信できるので、収容空間23内の温度、湿度等はじめとして、保冷容器16の移動状態等を監視し、管理することができる。
【0050】
容器本体17及び蓋18は新規に作成することもできるが、現在利用されている保冷容器を利用することもできる。既存の保冷容器の容器本体及び蓋には断熱性の材料が使用されており、その断熱材の代表的なものとしては発泡スチロールが挙げられるが、他にウレタン製のものとかその他のものを使用されていることがある。
【0051】
図4の蓋18は、容器本体17の上から被せて嵌合できるものであり、容器本体17に被せると容器本体17内の収容空間23が略密閉される。収容空間23内に収められる要保冷品F(図4)を外部の熱から遮断する(断熱する)ためには、容器本体17と蓋18は確実に嵌合されることが望ましい。そのため、図4に示すように容器本体17の上部を凹形状にして蓋18の下側を凸形状にしたり、逆に容器本体17側が凸形状で蓋18の下側が凹形状としたり、一方に突起を設けて他方に溝部(孔部)を設けるなど種々の手段によることができるが、ここで例示したように蓋18の着脱が容易である手段が望ましい。
【0052】
図4のように、外板20a、21a、18aの内面に本発明のセンサ付き真空断熱パネル1を配置する場合、温度センサ5が収容空間23に近い位置となるように配置すると、収容空間23内の温度を計測する上で好適であり、バッテリ8を逆側(収容空間23と反対側)に配置すると、バッテリ8が収容空間23内の低温・高湿環境から守られるという点において好適である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のセンサ付き真空断熱パネルは、床材や外壁材といった建材としても利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 センサ付き真空断熱パネル
2 断熱材(芯材)
3 外被材
4 真空センサ
5 その他のセンサ(温度センサ)
6 データロガー(記憶部)
7 通信部(送信部)
8 バッテリ
9 アンテナ
10 ユニット
11 基板
12 デジタルメータ
13 リレー
14 バッテリホルダ
15 凹部
16 保冷容器(断熱容器)
17 容器本体
18 蓋
18a 蓋の外板
20 底板
20a 底板の外板
21 側板
21a 側板の外板
23 断熱容器の収容空間
30 嵌合凹部
31 嵌合凸部
A 増幅器
B バッテリ
C 比較器
D ドライアイス
F 要保冷品
P 真空ポンプ
Pa 基準圧力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材をガスバリア性のある外被材で被覆し、外被材の内側を真空にした真空断熱パネルにおいて、外被材の内側に少なくとも、真空センサと、真空センサで検知した真空データを外部に送信可能な通信部と、バッテリを設けたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、外被材の内側に、温度センサ、湿度センサ、加速度センサのいずれか1以上を設けたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、外被材の内側に、外被材の内側に設けた真空センサ、その他のセンサで検知した検知データを記録できる記憶部を設けたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、真空センサ、その他のセンサ、通信部、バッテリ、記憶部が個別に又はユニット化されて、断熱材の収容凹部内に、又は断熱材の外部に設けられたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、外被材の全部又は一部を熱伝導材製又は/及び電波透過材製としたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、外被材の外側に、外被材の内側の通信部と有線接続可能な接続具を設けたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、バッテリが充電式であり、それに充電電源を接続可能な充電端子が外被材の外側に設けられたことを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルにおいて、バッテリが非接触の充電式であることを特徴とするセンサ付き真空断熱パネル。
【請求項9】
容器本体と蓋を備え、容器本体が底板と側板を備えた断熱容器において、底板の外板、側板の外板、蓋の外板のいずれか一又は二以上の内側又は外側に、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルを配置して形成されたことを特徴とするセンサ付き真空断熱容器。
【請求項10】
容器本体と蓋を備え、容器本体が底板と側板を備えた断熱容器において、底板、側板、蓋のいずれか一又は二以上が、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のセンサ付き真空断熱パネルで形成されたことを特徴とするセンサ付き真空断熱容器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−136254(P2012−136254A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289737(P2010−289737)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000155045)株式会社本宏製作所 (41)
【Fターム(参考)】