説明

センター入りグミキャンディおよびその製造方法

【課題】これまで以上に高いフレーバーリリースを有し、咀嚼した際の食感の変化も楽しめるようなセンター入りグミキャンディおよび該センター入りグミキャンディの製造方法を提供すること。
【解決手段】糖類、酸および該酸によって加水分解されたゲル化剤を含む液状のセンターならびに該センターを被覆するグミから構成され、前記センターの割合が3〜60重量%であることを特徴とするセンター入りグミキャンディ。該センター入りグミキャンディは、充填時に糖類、酸およびゲル化剤を含むセンターをグミで被覆してグミキャンディを得る工程、次いで、得られたグミキャンディを30〜90℃で加熱することで前記センター中のゲル化剤を酸加水分解させて前記センターを液状化させる工程を経て製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センター入りグミキャンディおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、菓子のなかでも幅広い人々に認知されており、弾力のある食感と味付けによって親しまれている。しかも近年、グミキャンディの市場は幅広い年齢層に拡大してきている。その理由として、以前まではグミキャンディの主な購買層は子供中心であったが、果汁感向上による風味の充実化、および食感の革新的な改良によって購買層が著しく拡大・上昇したものと考えられる。このような状況下で、消費者の関心はより一層の美味しさおよび新しさへ集中してきている。一例として、センター入りグミが近年までに盛んに開発されてきた。この要因はいくつかあるが、食感差を楽しめることおよびガムのような食感しか感じられなかったグミに対して、センター部に柔軟な物質を付与する技術に成功したことが考えられる。従って、センター部が柔らかいほど、即ち液状であるほど、革新的な技術となることはグミ商品の歴史から見ても明らかであるが、大きな課題として依然残っているのは、シェルグミの中に液体センターを直接封入することが極めて困難なことである。
【0003】
例えば、これまで美味しさ、食感のレベルアップを図るために、シェルとなるグミとは異なる物質を充填したセンター入りグミキャンディの製造方法の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。これは、センター・イン・グミとして複層構造にすることで、テクスチャーの変化を楽しめ、また香立ち(フレーバーリリース)が優れているという利点に着目し、製造時のテーリング(尾を引くこと/洩糸性)、センターシロップの分散・漏れを防ぎ、多量のセンターシロップを注入したセンター入りグミキャンディの製造方法である。しかし、センターシロップにキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガムのうち1種類または2種類以上の混合物を使用することを特徴としていることから、十分に液状化したセンターを実現することは出来なかった。
【0004】
また、液状化したセンターを有するグミキャンディでも、多様な食感差を楽しむことができるものが少ない。
例えば、液状食品を含むセンター部分をシェル膜で被覆したセンター・イン・シェル構造のグミを簡単な方法で製造する方法の提案もなされている(例えば、特許文献2参照)。この方法ではセンターとなる液状の材料濃厚液がシェル中に封入され、センター中に含まれる多価金属イオンがシェル膜中のアルギン酸などのゲル化剤をゲル化することでシェル膜が固化され、センター・イン・シェル構造のグミキャンディが成型されている。しかしながら、ゼラチンを主成分としたグミキャンディにペクチンやアルギン酸のようなゲル化剤を付加すると、ゲル化剤に依存して、ゼラチンとゲル化剤が干渉しあい、ゼラチン独特の食感が発揮できない状態になってしまう。つまり、食感を損なわないままセンター入りグミキャンディを作製する技術に関しては、依然として解決されていないままである。さらに、多価金属イオンに依存してゲル化するゲル化剤の使用に限定されてしまうことで、単様な食感を有するグミキャンディへの応用にとどまってしまっている。
【0005】
そこで、食感を従来と比較して変化させたグミキャンディの提案もなされてきた(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。これらはユニークな食感は得ることができるが、フレーバーリリース、咀嚼した際の経時的な食感の変化を楽しむことに関しては十分ではなかった。
【特許文献1】特公平6−6034号広報
【特許文献2】特開平5−304906号広報
【特許文献3】特開2002−281906号公報
【特許文献4】特開2002−315510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、これまで以上に高いフレーバーリリースを有し、咀嚼した際の食感の変化も楽しめるようなセンター入りグミキャンディおよび該センター入りグミキャンディの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、熱と酸によるゲル化剤の加水分解に着目し、センターが充填時には適切な粘性を有しながらも、その後の加熱処理を設けることによってセンターの粘性を著しく低下させる製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明の要旨は、
(1) 糖類、酸および該酸によって加水分解されたゲル化剤を含む液状のセンターならびに該センターを被覆するグミから構成され、前記センターの割合が3〜60重量%であることを特徴とするセンター入りグミキャンディ、
(2) 前記センターに配合される酸の割合が0.1〜30重量%の範囲である前記(1)記載のセンター入りグミキャンディ、
(3) 前記センターに酸100重量部に対してゲル化剤0.1〜30重量部を配合する前記(1)または(2)記載のセンター入りグミキャンディ、
(4) 前記センター中のゲル化剤が30〜90℃の範囲内で酸加水分解され得るゲル化剤である前記(1)〜(3)いずれか記載のグミキャンディ、
(5) 充填時に糖類、酸およびゲル化剤を含むセンターをグミで被覆してグミキャンディを得る工程、および
次いで、得られたグミキャンディを30〜90℃で加熱することで前記センター中のゲル化剤を酸加水分解させて前記センターを液状化させる工程
を有することを特徴とするセンター入りグミキャンディの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセンター入りグミキャンディは、成型時にセンターが適度な粘度を有しているためにグミ中におけるセンターの配置、形状のバリエーションが豊富に設定でき、しかも成型後にセンターが液化するため、得られたグミキャンディでは様々な食感の変化を実現することができる。また、従来品に比べて、センターからのフレーバーリリースが多いだけでなく、複数のセンターを組み合わせることで種々の芳香を楽しむこともできる。以上のように、本発明は、従来品に比べて、多様な食感・風味を愉しむことができるという優れた効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のセンター入りグミキャンディは、糖類、酸および該酸によって加水分解されたゲル化剤を含む液状のセンターならびに該センターを被覆するグミから構成され、前記センターの割合が3〜60重量%であることを特徴とする。かかる特徴を有することで、本発明のセンター入りグミキャンディが咀嚼された場合、液体ならではの高いフレーバーリリースが生じ、また咀嚼した際の食感の変化も楽しめるという優れた効果が奏される。
【0010】
中でも、本発明は、酸によって加水分解されたゲル化剤を含む液状のセンターを有する点に大きな特徴がある。従来のグミキャンディにおいて、ゲル化剤はグミキャンディの立体形状や基材強度を保持することを目的としてゲル化して使用されている。これに対して、本発明では、センターのゲル化剤を酸による加水分解で液状化させることで、ゲル化させていた従来品と比べて、咀嚼した際の食感の変化が大きくなるだけでなく、フレーバーリリースを強く感じることができるという利点がある。
【0011】
(1)センター
本発明で使用されるセンターの主な構成成分は、糖類、酸およびゲル化剤である。
【0012】
前記糖類は、センターの基材となる成分であり、例えば、ぶどう糖や果糖などの単糖類、ショ糖および乳糖のような二糖類からラフィノースやスタキオースのような少糖類、トレハロースのようにブドウ糖が還元末端同士で結合したもの、糖アルコール(マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖など)、タガトースなどのうち1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、水飴などの混合糖も使用できる。
【0013】
センター中における前記糖類の含有量は、60〜90重量%が好ましく、70〜80重量%がより好ましい。
【0014】
前記酸は、無機酸と有機酸に分類されるが、無機酸の例として塩酸、リン酸など、さらに有機酸の例としてクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、アジピン酸などが挙げられる。これらの酸は、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
前記センターに配合される前記酸の割合は、酸加水分解を促進させる観点から、0.1〜30重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。その後、乾燥の際に加熱処理をおこなうことで、酸加水分解を生じさせてセンターの粘性を低下させる。
【0016】
前記ゲル化剤としては、30〜90℃の範囲内で酸加水分解され得るものであればよく、例えば、寒天、ファーセレラン、ゼラチン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガムなどが挙げられる。これらのゲル化剤は、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、後述の加熱による酸加水分解によりセンターを液状にする観点から、前記センターにおいて酸100重量部に対して前記ゲル化剤0.1〜30重量部を配合することが好ましく、0.1〜10重量部がより好ましい。
【0018】
また、複数のセンターをグミキャンディに配置した場合、酸とゲル化剤の配合量および熱処理温度を調整することで、センターの粘度の調整も可能となるため、多様な食感の変化させることが可能になる。
【0019】
また、前記センターには、前記のような糖類、酸およびゲル化剤以外にも、センターの所望の物性を損なわない量であれば、必要に応じて、下記の任意成分を添加することができる。
【0020】
例えば、前記ゲル化剤に加えて、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸などのゲル化剤を併用してもよい。
【0021】
また、果汁、香料、着色料、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類などの機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)、酸加水分解で影響を受けにくい有効成分(例えば、コエンザイムQ10、リナロール、リモネン、各種ポリフェノール、ビタミン類、不溶性食物繊維)などを用いてもよい。
【0022】
前記のような組成を有するセンターは、本発明のグミキャンディではグミ(シェル)で被覆されたセンター・イン・シェル構造とされる。センターの配置場所および配置の形態については特に限定はない。例えば、グミキャンディの中央部でも辺縁部でもよい。また、液状化の程度が異なる複数のセンターを組み合わせてグミキャンディ内に配置されていてもよい。グミキャンディ中のセンターの形状としては、球形、楕円形、円錐形、略長方形などが挙げられるが、特に限定はない。
【0023】
なお、液状のセンターとは、B型粘度計により測定した場合の粘度が10Pa・s以下のものであればよい。
【0024】
前記センターは、グミキャンディの製造工程にセンター材料濃厚液として供される。センター材料濃厚液は以下のようにして得られる。
まず、前記糖類と前記ゲル化剤を攪拌混合後、加熱溶解させる。加熱溶解させる温度としては、特に限定はない。
次いで、加熱溶解した溶液がゲル化しない程度の温度まで冷却をおこない、該溶液に対し0.1〜30.0%の重量となるように酸を攪拌混合する。
前記冷却温度としては、原料の種類と組み合わせにより一概に限定できないが、80℃以下であればよく、40〜60℃が好ましい。
なお、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階でセンター材料として混合すればよい。
【0025】
前記センター材料濃厚液は、必要であれば、製造工程において取り扱いやすいように、水を添加するなどして、粘度を調整することが好ましい。
【0026】
前記センターのグミキャンディ中における重量比率は、3〜60重量%である。前記センターの比率が3重量%未満であると、センターとしての食感を十分に感じとり難く、また、60重量%を越えるとグミの被膜が薄くなりすぎてしまい、センターの漏れが生じる可能性がある。
【0027】
(2)グミ
前記センターを被覆するシェルとなるグミの主な構成成分は、ゼラチンと糖類である。
ゼラチンとしては、牛、豚、鶏、魚類などの皮、骨などから抽出したものを使用するのが一般的であるが、本発明はこれに限定するものではない。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理方法の仕方で食感が変わってくる。本発明では、これら処理の異なる各種のゼラチンも当然使用できる。
前記ゼラチンの配合量は、グミ中において3〜20重量%が好ましく、7〜15重量%がより好ましい。
【0028】
前記糖類としては、センターで使用されるものと同じであればよい。また、グミと、センターとで使用される糖類の種類は、同一であっても、相違していてもよい。
前記糖類の配合量は、グミ中において、80〜97重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましい。
【0029】
また、前記グミには、前記のようなゼラチンと糖類以外にも、グミの所望の物性を損なわない量であれば、必要に応じて、下記の任意成分を添加することができる。
【0030】
例えば、ゼラチン以外のゲル化剤を使用することが可能である。このようなゲル化剤としては、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、澱粉、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸などが挙げられる。
【0031】
また、酸味料、果汁、香料、着色料などが用いられる。
ただし、酸味料としてクエン酸などの酸および前記ゲル化剤がグミ中に配合される場合、ゲル化剤100重量部に対する酸の配合量は10重量部以下であることが好ましく、4重量部以下であることがより好ましい。
【0032】
また、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類やアミノ酸類等の機能性素材、油脂、乳化剤、乳製品、高甘味度甘味料(アスパルテーム、グリチルリチン、サッカリン、ステビオシド、レバウディオ、ズルチン、アリテーム、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロースなど)などが用いられる。
【0033】
また、グミの食感は残留水分により変化する。即ち、水分量が減少すると、より硬くなる。したがって、所望の水分量となるように調整することで食感を調製することができる。なお、水分量の調整方法は、公知の方法であればよい。
【0034】
前記グミは、前記センターを被覆するように配置されていればよい。また、センターを被覆したグミの形状(すなわち、グミキャンディの形状)としては、球形、楕円形、円錐形、略長方形などが挙げられるが、特に限定はない。
【0035】
前記グミは、グミキャンディの製造工程にグミ材料濃厚液として供される。グミ材料濃厚液は以下のようにして得られる。
例えば、適当な強度、例えば、ゼラチンを水に溶解し膨潤させて、適当な温度、例えば60℃付近で保温しておく。これとは別に、砂糖と水飴からなる糖液を作っておき、先の保温しておいたゼラチン溶液、必要であれば前記任意成分と攪拌混合することでグミ材料濃厚液とする。
なお、前記任意成分は、その種類により、上記の工程のうち適当な段階でセンター材料として混合すればよい。
【0036】
なお、前記グミ材料濃厚液は、製造工程において取り扱いやすいように粘度を調整することが好ましい。例えば、水を添加してグミ材料濃厚液の粘度を低減することが挙げられる。
【0037】
(3)センター入りグミキャンディの製造方法
本発明のセンター入りグミキャンディの製造方法は、
充填時に糖類、酸およびゲル化剤を含むセンターをグミで被覆してグミキャンディを得る工程、および
次いで、得られたグミキャンディを30〜90℃で加熱することで前記センター中のゲル化剤を酸加水分解させて前記センターを液状化させる工程
を有することを特徴とする。
【0038】
本発明のセンター入りグミキャンディの製造方法には、通常の装置を用いた成型手段を使用することができる点で、簡便性および経済性に優れる。また、センターは、成型時には液状化が促進されておらず、適当な粘度を有しているため、センターをグミ中の所望の位置に配置することが容易にできるという利点がある。
また、本発明ではグミキャンディを成型した後にセンターを液状化させることができるため、液状化したセンターをグミで被覆している公知の製造方法と異なり、センターが液状であることが原因で生じる製造時の取り扱う難さがなく、液状感のコントロールが可能であるという利点がある。
【0039】
以下に各工程について説明する。
本発明においては、充填時に糖類、酸およびゲル化剤を含むセンターをグミで被覆してグミキャンディを得る。
具体的には、前記センター材料濃厚液と、前記グミ材料濃厚液とを別々に調製し、それらを各種の成型方法に供してセンターをグミで被覆する。
【0040】
前記成型方法としては、例えば、予め多くの型を抜いておいたスターチモールドに、前記センター材料濃厚液が前記グミ材料濃厚液で被覆されるように流し込み(充填)、乾熱機に入れて加熱・乾燥させる。その後、付着したスターチを除去(デパウダー)し、グミ同士が互いに接着しないようにグミ表面に油を付着させて(オイリング)、グミキャンディを製造する。
【0041】
前記スターチモールドには、グミ材料濃厚液を充填し、次いでセンター材料濃厚液を所望の形状となるように充填し、次いでグミ材料濃厚液で前記センター材料濃厚液を被覆するように充填するが、所望により、上記の操作を複数行ってもよい。
また、前記充填時、スターチモールドにおいて、組成が同一または相違する複数のセンター材料濃厚液をグミ材料濃厚液で被覆した場合、少なくとも一つのセンター材料濃厚液がグミで被覆されていればよく、全てのセンター材料濃厚液がグミで完全に被覆されている必要はない。
また、センター材料濃厚液の充填方法、充填後のグミ中におけるセンター材料濃厚液の配置、形状について、特に限定はない。例えば、センター材料濃厚液の配置や充填量を均一にしてもよいが、偏在させることで噛み心地を変化させることが可能になる。また、複数のセンター材料濃厚液を用いる場合、各センター材料濃厚液中の酸の配合量を変えることで酸化加水分解の程度に違いが生じるため、噛み心地およびフレーバーリリースの変化を楽しむことができる。
【0042】
また、前記スターチモールドを使用せず、塩化ビニルなどのプラスチックを成型処理して作成したプラスチックモールド、シリコンを成型処理して作成したシリコンモールドなどに、グミを充填して成型することも可能である。
【0043】
また、前記モールドへの充填時に、同心円ノズルまたは複数のノズルを組み合わせて、各ノズルから前記に記載したセンター材料濃縮液と、グミ材料濃縮液を同時に吐出して、センター・イン・シェル構造としてもよい。この場合、ノズルの形状、ノズルからの吐出量などを調整することで、グミ中におけるセンターの配置や形状を変えることができる。
【0044】
モールドに充填されたグミキャンディ全体に対するセンターの重量比率は3〜60%程度の範囲であるが、好ましくは瑞々しさを感じ取り易い15〜60%の範囲である。
【0045】
なお、上記成型方法は一例であり、本発明を限定するものではない。
【0046】
次に、前記のように成型されたグミキャンディを30〜90℃で加熱することで前記センター中のゲル化剤を酸加水分解させて前記センターを液状化させる。
【0047】
その際の加熱温度はシェルが著しく変性することなく、センターの加水分解が促進する程度の温度30℃〜90℃であればよい。ただし、30℃では液状化まで長い時間を有するため、40℃以上で加熱を行うことが好ましい。
【0048】
前記センターの加水分解は、センターの程度により調整すればよく、特に限定はない。
【0049】
その後、一般的なグミの水分値10.0〜35.0重量%、より好ましくは14.0〜18.0重量%までグミキャンディを乾燥し、任意の水分値に到達した時点で冷却後に、デパウダー、オイリングをおこなう。また、デパウダー、オイリングの前後に所望の大きさになるようにグミキャンディをカットなどして形を整えてもよい。
【0050】
以上のようにしてセンター入りグミキャンディを製造することができる。上記の製造方法は一例であり、本発明のグミキャンディの製造方法を限定するものではない。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。また、「%」は重量%を示す。
【0052】
〔実施例1〕
<センター材料濃厚液の調製>
還元水飴200.0gおよび寒天3.0gを攪拌混合後、90℃で加熱溶解し60℃まで冷却後、クエン酸30.0gを添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0053】
<シェル材料濃厚液の調製>
砂糖200.0g、水飴200.0g、澱粉36.0gを攪拌混合後、110℃になるまで加熱濃縮する。これに、ゼラチン80.0gを水120.0gで膨潤し60℃保温にて溶解させた溶液を攪拌混合し、更にクエン酸10.0g、適量のグレープ香料を加えて攪拌混合した後、固形分として70%となるよう水にて調整し、これを70℃で保温しておく。
【0054】
<グミキャンディの製造>
前記センター材料濃厚液とシェル材料濃厚液とを同心円ノズルを用いて15:85の重量比率で型内に充填しセンター・イン・シェル構造を得る。その後60℃にて約24時間加熱乾燥をおこない、常温になるまで冷却後、デパウダー、オイリングをおこないセンター入りグミキャンディを得た。このようにして得られたグミキャンディは、外観も良くセンターが液体でありながら高いフレーバーリリースを有していた。また、このグミキャンディを咀嚼した際には、センター液が口中に広がり、その後にゼラチン特有の弾力とコシのある食感の変化を楽しめるという、経時的な食感の変化が良好なものであった。上記のセンター入りグミキャンディのセンターをB型粘度計(東機産業株式会社製「TVB−10型粘度計」)にて測定したところ、粘度は4.78Pa・sであった(回転数:20rpm、Spindle No.H6)。
【0055】
〔比較例1〕
<センター材料濃厚液の調製>
還元水飴200.0gおよび寒天3.0gを攪拌混合後、90℃で加熱溶解し60℃まで冷却後、クエン酸30.0gを添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0056】
<シェル材料濃厚液の調製>
砂糖200.0g、水飴200.0g、澱粉36.0gを攪拌混合後、110℃になるまで加熱濃縮する。これに、ゼラチン80.0gを水120.0gで膨潤し60℃保温にて溶解させた溶液を攪拌混合し、さらにクエン酸10.0g、適量のグレープ香料を加えて攪拌混合した後、固形分として70%となるよう水にて調整し、これを70℃で保温しておく。
【0057】
<グミキャンディの製造>
前記センター材料濃厚液とシェル材料濃厚液とを同心円ノズルを用いて15:85の重量比率で型内に充填しセンター・イン・シェル構造を得る。その後加熱せずに25℃にて約24時間間放置後、デパウダー、オイリングをおこないセンター入りグミキャンディを得た。このようにして得られたグミキャンディは、外観はよいがセンターの液体感が弱く、高いフレーバーリリース、咀嚼した際の食感の変化が乏しいものとなった。上記のセンター入りグミキャンディのセンターをB型粘度計(東機産業株式会社製TVB−10型粘度計)にて測定したところ、粘度は16.71Pa・sであった(回転数:20rpm、Spindle No.H6、以下、同じ)。
この数値から、得られた粘度は実施例1と比べて3倍以上もあることから、実施例1のグミキャンディのセンターは、顕著に液状化していることが分かった。また、比較例1で得られたグミキャンディを咀嚼してみたところ、実施例1で得られたグミキャンディと比べて、フレーバーリリースが少なく、経時的な食感の変化も少ないものであった。
【0058】
〔実施例2〕
<センター材料濃厚液の調製>
水飴200.0gおよびイオタカラギーナン0.5gを攪拌混合後、95℃で加熱溶解し60℃まで冷却後、クエン酸30.0g、コエンザイムQ10を0.5g、適量のグレープ香料、グレープ色着色料を添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0059】
<シェル材料濃厚液の調製>
砂糖200.0g、還元水飴200.0g、果糖ブドウ糖液糖100.0gを攪拌混合後、110℃になるまで加熱濃縮する。これに、ゼラチン70.0gを水98.0gで膨潤し60℃保温にて溶解させた溶液を攪拌混合し、さらにクエン酸15.0g、ブラックカーラント濃縮果汁15.0g、適量のカシス香料、黒色着色料を加えて攪拌混合した後、固形分として70%となるよう水にて調整し、これを70℃で保温しておく。
【0060】
<グミキャンディの製造>
前記センター材料濃厚液とシェル材料濃厚液とを同心円ノズルを用いて30:70の重量比率で型内に充填しセンター・イン・シェル構造を得る。その後40℃にてグミ水分値が18%になるまで加熱乾燥をおこない、常温になるまで冷却後、デパウダー、オイリングをおこないセンター入りグミを得た。このようにして得られたグミキャンディは、センターが液体(粘度:10Pa・s以下)であり、高いフレーバーリリースを有し、咀嚼した際の経時的な食感の変化も良好で液体センター入りソフトカプセルのように嚥下し易いものであった。また、シェルとなるグミ部分が黒色であり光を遮断することから、コエンザイムQ10の分解を緩和する効果も期待できるものとなった。
【0061】
〔実施例3〕
<センター材料濃厚液の調製>
砂糖80.0g、還元水飴85.0gおよび寒天3.0gを攪拌混合後、95℃で加熱溶解し60℃まで冷却後、クエン酸20.0g、適量のリナロール、赤色着色料を添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0062】
<シェル材料濃厚液の調製>
砂糖200.0g、還元水飴200.0g、果糖ブドウ糖液糖100.0gを攪拌混合後、110℃になるまで加熱濃縮する。これに、ゼラチン80.0gを水120.0gで膨潤し60℃保温にて溶解させた溶液を攪拌混合し、さらにクエン酸10.0g、適量のピーチ香料を加えて攪拌混合した後、固形分として70%となるよう水にて調整し、これを70℃で保温しておく。
【0063】
<グミキャンディの製造>
前記センター材料濃厚液とシェル材料濃厚液とを同心円ノズルを用いて20:80の重量比率で型内に充填しセンター・イン・シェル構造を得る。その後40℃にてグミ水分値が18%になるまで加熱乾燥をおこない、常温になるまで冷却後、デパウダー、オイリングをおこないセンター入りグミキャンディを得た。このようにして得られたグミキャンディは、センターが液体(粘度:10Pa・s以下)であることからリラクゼーション効果があるとされるリナロールの香りを十分感じることができると共に、咀嚼した際の経時的な食感の変化も良好なものであった。
【0064】
〔実施例4〕
<センター材料濃厚液Aの調製>
還元水飴200.0gおよび寒天0.5gを攪拌混合後、90℃で加熱溶解し60℃まで冷却後、クエン酸23.0gを添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0065】
<センター材料濃厚液Bの調製>
還元水飴200.0gおよびカラギーナン3.0gを攪拌混合後、90℃で加熱溶解し、クエン酸0.5gを添加し、固形分として70%になるよう水にて調整し、これを常温にて保持しておく。
【0066】
<シェル材料濃厚液の調製>
砂糖200.0g、還元水飴200.0g、澱粉36.0g、ペクチン3.0gを攪拌混合後、110℃になるまで加熱濃縮する。これに、ゼラチン80.0gを水120.0gで膨潤し60℃保温にて溶解させた溶液を攪拌混合し、さらにクエン酸10.0g、適量のグレープ香料を加えて攪拌混合した後、固形分として70%となるよう水にて調整し、これを70℃で保温しておく。
【0067】
<グミキャンディの製造>
前記センター材料濃厚液AおよびBとシェル材料濃厚液とを3重の同心円ノズルを用いてセンター材料濃厚液Aが中心部にくるように、10:15:75の重量比率で型内に充填しセンター・イン・シェル構造を得る。その後60℃にて約72時間加熱乾燥を行い、常温になるまで冷却後、デパウダー、オイリングをおこない2種類のセンターを有するグミキャンディを得た。このようにして得られたグミキャンディは、外観もよく、咀嚼した際の経時的な食感の変化が良好なだけでなく、2種類のセンターが液化しており(粘度:10Pa・s以下)、かつその液化の程度も異なるため、実施例1のものに比べて噛み心地がより複雑なものであり、また高いフレーバーバーリリースを有したものであった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のセンター入りグミキャンディは、これまで以上に多様な食感を供与し、液体ならではの高いフレーバーリリースを有し、咀嚼した際に極端な食感差をも楽しむことができるものである。場合により、センターにはリナロールやコエンザイムQ10のような機能性物質を加えることも可能であるため、センターグミを使用した機能性グミとしての汎用性も高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類、酸および該酸によって加水分解されたゲル化剤を含む液状のセンターならびに該センターを被覆するグミから構成され、前記センターの割合が3〜60重量%であることを特徴とするセンター入りグミキャンディ。
【請求項2】
前記センターに配合される酸の割合が0.1〜30重量%の範囲である請求項1記載のセンター入りグミキャンディ。
【請求項3】
前記センターに酸100重量部に対してゲル化剤0.1〜30重量部を配合する請求項1または2記載のセンター入りグミキャンディ。
【請求項4】
前記センター中のゲル化剤が30〜90℃の範囲内で酸加水分解され得るゲル化剤である請求項1〜3いずれか記載のグミキャンディ。
【請求項5】
充填時に糖類、酸およびゲル化剤を含むセンターをグミで被覆してグミキャンディを得る工程、および
次いで、得られたグミキャンディを30〜90℃で加熱することで前記センター中のゲル化剤を酸加水分解させて前記センターを液状化させる工程
を有することを特徴とするセンター入りグミキャンディの製造方法。

【公開番号】特開2009−118764(P2009−118764A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295208(P2007−295208)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】