ゼオライトに双極子型非線形光学分子を単一方向に整列して内包させた複合体及びこれの製造方法
【解決手段】本発明は、単一方向に整列されたゼオライト超結晶の製造方法及び単一方向に整列されたゼオライト超結晶に関するものであって、本発明の方法は、単一方向に整列された鋳型内にゼオライトまたは擬似分子ふるい結晶を成長させる段階を含み、これにより単一方向に整列された超結晶が製造されることを特徴とする、単一方向に整列されたゼオライト超結晶の製造方法に関するものである。本発明の単一方向に整列されたゼオライト超結晶は、無作為的な配向性を有するゼオライトの問題点を克服することにより、ゼオライトの応用性を極大化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学(DNLO)分子を単一方向に内包させる方法、及びDNLO分子が単一方向にゼオライト細孔内に内包されたDNLO−ゼオライト複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動数ωのレーザー光を2次非線形光学物質に入射させると、振動数2ωの調和波が発生するが、このような現象は、光学スイッチ、光センサー、新しい短波長のレーザー光を生成するデバイスなどに広く使用されている1~4。このような2次非線形光学物質として多用な無機物結晶が利用されているが、無機物結晶は、適当なサイズの結晶が得られ難く、且つ、レーザー損傷閾値(laser damage threshold)は高いが、誘電常数が高くて感応時間が遅いため、これらを2次非線形光学性質のある有機物質に代替しようとする努力が続けられてきた1~4。
【0003】
2次非線形光学性質を有する有機分子は、数種があるが、相対的に電子の豊かな電子供与部分(donor)と、相対的に電子の乏しい電子受容部分(acceptor)とがコンジュゲーション(conjugation)されて結合されたD−π−Aで表示できる双極子型(dipolar)非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子が主種をなしている1~4。このようなDNLO分子を、分子の一つだけをみると、微示的な2次非線形光学係数(second-order hyperpolarizability constant)が非常に大きい方であり、かつ分子設計によりその値が日に日に増加しているが、一つの分子だけでは、光スイッチなどの多様な光学素子として使用することができない。
【0004】
したがって、光学素子として使用するためには、これらを一定な方向に配向させた結晶体または集合体を生成せざるを得ない。ところが、このような分子を結晶化させると、ほぼ全てが、D−π−A分子が互いに双極子モーメントを相殺しようとする方向に整列する現象を示す。したがって、このようなDNLO分子を一定な方向に整列させた結晶を作ろうとする努力が続けられてきたが、あまり実効は得られなかった1。
【0005】
一つの代案として、DNLO分子を高分子媒質に均一に内包させた後、高分子のガラス転移温度(glass transition temperature)で強い電場を利用し、混入されたDNLO分子を一定方向に整列させる方法が研究されてきた2。このように、電場を利用し、高分子媒質に内包されたDNLO分子の配向を単一方向に整列させることを電界ポーリング(electric poling)という。
【0006】
DNLO分子を高分子媒質内に混入させる方法は、単純な物理的な混合方法と、高分子鎖に共有結合によりDNLO分子を結合させる化学的方法が使用されてきた。しかしながら、電界ポーリング化された非線形光学分子が混入された高分子の場合、その混入方法に関わらず、d33(a tensor component of the quadratic nonlinear susceptibility)で表記される単位体積当たりの2次非線形光学感度が低い方であり、しかも、時間が経過するにつれて、比較的低い温度でも、混入されたDNLO分子の配向が自発的に乱れる現象が起こり、これらを実用的に使用するには不適である3。
【0007】
また他の代案として、DNLO分子を透明性基質上に一定な方向に単層または多層膜として形成する方法が研究されてきた4~8。しかしながら、このように形成されたDNLO分子の薄膜は、単位体積に対する2次非線形光学感度は非常に高いが、膜の実質的な厚さが極めて薄いだけではなく、熱的、機械的強度が非常に弱いため、生成されたDNLO分子の薄膜が実用化されるには、まだ足りない状態である。
【0008】
このようなDNLO分子を単一方向に整列して実用可能な2次非線形光学物質を生成するための新しい接近方法として、ゼオライトナノ細孔内にDNLO分子を単一方向に整列して内包させ、2次非線形光学性質を有する有機−無機複合体を生成する研究が進行されてきた14~22。例えば、Stucky研究陣は、直径0.8nmの1次元のチャンネルを有するAlPO4−5粉末にパラ−ニトロアニリン(para-nitroaniline:PNA)、2−メチル−4−ニトロアニリン(MNA)、2−アミノ−4−ニトロピリジン、及び同系列のDNLO分子を内包させた有機−無機複合物が、水晶(quartz)粉末の2次調和波(second harmonic)の強度より著しく大きい2次調和波を生成するということを報告した14、15。
【0009】
次いで、MarlowとCaro研究陣は、PNA分子がAlPO4−5細孔内に入る時、常にニトロ(NO2)基が先に入るため、結果的に、PNA分子がAlPO4−5結晶内で一定な方向に整列するようになるということを明かした16。この際、PNA分子がNO2基から入る理由は、AlPO4−5細孔が、PNA分子のNH2基よりはNO2基を選好する性質を有するからであると推定されている。実際、PNA分子は、一直線状に貫通されたAlPO4−5結晶の両側の細孔の入口から中心に向かって入るようになるため、結果的に、内包されたPNA分子は、AlPO4−5中間で互いに配向が反対となったまま会うようになり、これにより、内包されたPNA分子は全て、NO2基が中間地点を向くように配向されている。しかしながら、AlPO4−5結晶のサイズ(130μm)が、入射されたレーザー光の波長(1.064μm)より遥かに大きい場合は、結晶中央から起こる配向変更による全体的な2次調和波強度の減少現象は起こらない。さらに、MarlowとCaro研究陣は、AlPO4−5内に、PNAと類似した分子である4−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン17、または(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル18を内包させた場合も、2次調和波が生成されることを報告した。
【0010】
ZSM−519とSb含有シリカライト−1(Sb-SL)20のようなMFI系構造[0.54×0.56nmストレートチャンネルと、このストレートチャンネルに対して垂直方向に位置する0.51×0.54nmサイン(sinusoidal)チャンネルとから構成された3次元チャンネルシステムを有する中心対称(Pnma)のゼオライト]にPNAを内包させると、2次調和波が生成されると報告されている。しかしながら、PNAを内包したSb−SLの場合、数回レーザー光を照射すると、2次非線形光学性質がなくなると報告されている。ZSM−5とSb−SLのように、AlとSbとを骨格に含んでいるゼオライトとは違って、純水シリカのZSM−12[0.56×0.59nmの1次元チャンネルを有する中心対称(C2/c)のシリカゼオライト]の場合は、PNAを内包させても、2次調和波を発生しないことが報告された21。
【0011】
面白いことに、メソポーラスシリカであるMCM−41は、細孔の直径がPNAより著しく大きいにもかかわらず(2〜8nm)、PNAを内包すると、2次調和波を生成することが報告された22。しかしながら、PNAを内包したMCM−41が2次調和波を生成するためには、上記複合体を数週間湿度の高い空気中に放置しなければならない。この事実から、PNAがMCM−41の大きい細孔内に入る時、自発的に一定な方向に整列をするのではなく、2次的に流入された水分子により配向が変わるとして考えられる。
【0012】
即ち、今まで発表された研究結果によると、ゼオライトは、DNLO分子を一定な方向に内包させて、全体的に2次調和波を発生する可能性が十分あることを示してきた。しかしながら、ゼオライトの内部に入って自ら整列する性質があると知られたDNLO型分子は、全て、500×10-30esu以下のPNA(PNA=34.5±4×10-30esu)23、24と同系列の分子に局限されて、より大きい値を有する数多い他の系列のDNLO分子は、ゼオライト細孔内に内包させる時、自発的な配向整列が起こらない。したがって、今までPNAと擬似DNLO分子がAlPO4−5、Sb−SL、またはZSM−5の内部に入る時示した自発的配向整列現象は、極めて例外的な現象であることが判明された。
【0013】
それだけではなく、今まで使用されたゼオライトの形態は、それ自体だけでは実用性のほとんどない粉末と微細結晶とに局限されてきた。したがって、高いβ値を有する一般のDNLO分子をゼオライト細孔内に一定な方向に整列して内包させる一般的な方法が要望される。また、実用性を高めるためには、ゼオライトホストの形態も、微細結晶が基質上に一定な方向に、単層または多層に整列された微細結晶の薄膜、基質上に一定な配向に直接成長させた連続的なゼオライトフィルム、そして基質無しに微細結晶を3次元的に整列させたゼオライト超結晶に拡大されなければならない。
【0014】
本明細書全体にかけて多数の論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、上記のような当業界の要求を解決するために鋭意研究した結果、双極子型非線形光学(DNLO)分子を適宜変形してゼオライトに適用する場合、DNLO分子がゼオライト細孔内に単一方向に内包されて、結局優れた非線形光学性質を有するゼオライト−非線形光学分子複合体が生成されることを確認した。
【0016】
したがって、本発明の目的は、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学(DNLO)分子を単一方向に内包させる方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、DNLO−ゼオライトフィルム複合体を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、DNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、DNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲、及び図面により、さらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様によると、本発明は、(a)双極子型非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子の母分子([D−π−A])の末端にR−基を付着させて、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rを製造する段階;及び(b)前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rをゼオライト細孔内に内包させる段階を含み、前記Rは、疎水性を有し、前記母分子([D−π−A]は、親水性を有して、前記母分子において、Dは、電子供与部分、Aは、電子受容部分を示し、前記Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組合せであり、前記ゼオライト細孔が疎水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、疎水性を示すR−基の方にゼオライト細孔に内包されて、前記ゼオライト細孔が親水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性を示す[D−π−A]の方にゼオライト細孔に内包されて、ゼオライト細孔内に内包されたDNLO分子が一定な配向を有することを特徴とする、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学分子を単一方向に内包させる方法を提供する。
【0022】
本発明の他の態様によると、ゼオライトフィルム内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライトフィルム複合体において、前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたものであって、前記内包されたDNLO分子は、一つの方向にのみ配向されて存在することを特徴とするDNLO−ゼオライトフィルム複合体を提供する。
【0023】
本発明のまた他の態様によると、本発明は、ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造して、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供する。
【0024】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供する。
【0025】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列して製造したゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供する。
【0026】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含む DNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであって、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対して反対方向に存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供する。
【0027】
一般に、ガス状態や溶液中において、D−π−A型2次非線形光学有機分子をゼオライト細孔内に内包させると、これらの分子は、無作為に入る。このように、非線形光学分子が無作為配向で内包されたゼオライトは、非線形光学性質を帯びない。本発明は、このような従来の技術の問題点を画期的に解決したものである。
【0028】
ゼオライトは、実生活、産業界及び学界において非常に広範囲に使用される重要な物質であって、分子サイズに該当する0.3〜1.3nmの均一な形とサイズのナノ細孔を有しているため、分子ふるいとも呼ばれる。ゼオライトは、通常、100nm〜10μmの微細な結晶として存在する。このような微細な結晶は、そのまま使用されることもあり、多様な基質上に単層または多層形態に整列及び組織化させて使用される。また、ゼオライトは、2次元または3次元的に整列及び組織化させた超結晶形態として使用されたりする。また、これらは、多様な基質上に成長させた連続的なフィルム形態で使用されたりもする。
【0029】
ゼオライトは、シリコンとアルミニウム原子とが規則的に酸素架橋原子により連結された多孔性結晶性アルミノシリケートを総称する。ゼオライトの骨格をなすアルミノシリケートは、アルミニウムがある座ごとに陰電荷を帯びているため、細孔(pore)内には、電荷相殺のためのカチオンが存在し、細孔内の残りの空間は、通常水分子で満たされている。
【0030】
もともと、ゼオライトは、多孔性結晶性アルミノシリケートを意味するが、当業界では、アルミニウムやシリコン原子の一部または全部を他の原子で置換した多様な擬似分子ふるい(zeotypes)を通常的にゼオライトと見なす。例えば、全てのアルミニウムがシリコン原子で代替されたメソポーラス(mesoporous)シリカ(MCM−系メソポーラスシリカ及びシリカライト)、シリコンを燐(P)に代替したアルポ(AlPO4)系分子ふるい、そして、このようなゼオライト及び擬似分子ふるいの骨格に、Ti、Mn、Co、Fe、Znなどの多様な金属元素を一部置換して得られた擬似分子ふるいもゼオライトと見なされる。したがって、本明細書で使用される用語“ゼオライト”は、上述の擬似分子ふるいを含む広い意味のゼオライトを意味する。
【0031】
ゼオライト細孔内の水分子を除去すると、細孔入口のサイズが許容する限り、多様な分子が水分子の代わりに内包されることができる。この際、ゼオライト骨格がアルミニウムとシリコン、架橋酸素からなっていると、細孔は、陰電荷を帯びて、且つ電荷相殺のためのカチオンが細孔内に存在するようになるため、ゼオライト細孔は、親水性を帯びるようになり、このような親水性は、アルミニウムの含量が高くなるほど高くなる。これとは逆に、ゼオライト骨格にアルミニウムの含量が少なくなるほど、細孔は、非極性を帯びて、これにより疎水性を帯びるようになる。したがって、アルミニウム原子が入っていないシリコンと架橋酸素原子とだけで構成されたシリカライトは、ゼオライトの中で、最も疎水性を帯びる。
【0032】
本発明に利用されるゼオライトまたは擬似分子ふるいの種類に制限はないが、本発明に適したゼオライトまたは擬似分子ふるいの例は、次のようである:
(i) 天然または合成ゼオライト;
(ii) ゼオライト骨格のシリコン元素の全部または一部を燐(P)などの他の元素で置換した分子ふるい(例えば、AlPO4、SAPO、MeAPO、MeAPSO系などの分子ふるい);
(iii) ゼオライト骨格のアルミニウム元素をボロン(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)などの他の元素で一部または全部置換した分子ふるい;
(iv) 前記(ii)と(iii)の変形を組み合せた分子ふるい;
(v) 多孔性金属またはシリコン酸化物(例えば、シリカライト、MCM系多孔性シリカ、多孔性二酸化チタン、二酸化ニオビウムなど)、またはこれらの複合酸化物;及び
(vi) 各種元素を単独または複合的に使用して製造した多孔性分子ふるい。
【0033】
本発明に利用されるゼオライトまたは擬似分子ふるいは、多様な形態(form)を有することができるが、好ましくは、(i)基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造したフィルム、(ii)基質上にある単層または多層のゼオライト微細結晶の薄膜、または(iii)ゼオライト微細結晶の2次元または3次元的集合体(aggregate)の超結晶の形態を有する。用語“超結晶”は、結晶が一定な方向に、2次元または3次元に整列されて接合された密集構造体を意味する。
【0034】
本明細書において、用語“基質”は、基質に共有結合または非共有結合されているフィルムまたは薄膜のような物質支持する支持体を意味する。好ましくは、基質は、支持される物質に共有結合されている。
【0035】
本発明に有用な例示的な基質は、以下を含む:
(i)表面にヒドロキシル基を有する物質:例えば、シリコン、アルミニウム、チタン、錫、及びインジウムのような金属または非金属元素が単独または複合的に含まれている酸化物であって、例えば、ガラス、石英、雲母、ITOガラス(インジウム錫酸化物が蒸着されたガラス)、錫酸化物(SnO2)と他の伝導性ガラス、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、多孔性アルミナ、二酸化チタン、多孔性二酸化チタン、及びシリコンウェハー;
(ii)チオール基またはアミノ基と結合できる金属、例えば、金、白金、銀、及び銅;
(iii)表面に多様な作用基を有する重合体、例えば、PVC及びメリフィルドペプチド樹脂(Merrifield peptide resin);
(iv)半導体、例えば、セレニウム化亜鉛(ZnSe)、砒素化ガリウム(GaAs)及びリン化インジウム(InP);
(v)表面にヒドロキシル基を有する天然高分子、例えば、セルロース、澱粉(例えば、アミロース及びアミロペクチン)、及びリグニン;及び
(vi)天然または合成ゼオライト、及び擬似分子ふるい。
【0036】
好ましくは、前記基質は、ガラス、石英、雲母、ITOガラスまたは電極、シリコンウェハー、金属酸化物(SiO2、GeO2、AgO、Al2O3、Fe2O3、CuOなど)、多孔性酸化物、多孔性アルミナ、及び多孔性ステンレススチールからなる群から選択される。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、本発明に利用されるゼオライトは、単一配向性を有する。本明細書において、用語“単一な配向性(uniform orientation)”は、対象となる物質が無作為に配向されていない状態を表すものであって、少なくとも1軸方向に規則的に整列されている状態を表現する用語である。したがって、本明細書において、用語“一定な方向に配向されたゼオライト”または“一定な方向に整列されたゼオライト”というのは、ゼオライトのa、b及びcの三つの軸の中で、少なくとも一つの軸の方向が一定な方向に調節されて製造されたゼオライトを意味する。したがって、このような単一配向性のゼオライトは、それらの構造内に単一配向性のチャンネル(細孔)を有するようになる。
【0038】
一方、本発明者らは、ゼオライト結晶が、生成と同時に単一な配向性を有するようにする画期的な方法を提示した(J.S. Lee, Y.-J. Lee, E.L. Tae, Y.S. Park, K.B. Yoon, Science, 2003, 301, 818-821)。
【0039】
本発明の方法によると、DNLO分子は、単一配向性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャネル)内に内包される。DNLO分子のゼオライトの細孔内への内包と関連して使用される用語“単一な配向”は、前記ゼオライト自体の配向性に関連した用語“単一な配向”とは異なる意味を有する。即ち、用語“単一な配向”は、二つの異なる整列方式でDNLO分子がゼオライト細孔内に内包される様相を表現するために使用された用語である。本発明の好ましい具現例によると、前記ゼオライトに内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、ゼオライト細孔内に一つの方向にのみ配向される。択一的に、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、前記ゼオライト細孔の反対の二つの方向(both sides)に内包されており、これにより内包されたR−[D−π−A] または[D−π−A] −R分子の一部は、内包されたR−[D−π−A] または[D−π−A]−R分子の残余部分に対して反対方向(opposite orientation)に存在する。前記反対方向は、ゼオライトの中間部分でよく観察される。
【0040】
より詳細には、ゼオライトにR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子を一定な配向で内包させるということは、次のような二つの意味がある:第一、基質上に生成した連続的なゼオライトフィルムのように、一側が完全に閉鎖されたフィルムにR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子を内包させると、ゼオライト細孔の親水性または疎水性により、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、一定な配向で一方向にのみ内包されることを意味する。第二、一側が閉鎖されたフィルムではなく、細孔が両側とも開いた薄膜であるか、ゼオライト結晶である場合は、両側の細孔を通じてR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子がお互い反対の配向で内包されて、内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子がお互い反対方向に配向している場合を意味する。このような反対方向の配向性は、ゼオライトの中間部分でよく観察される。
【0041】
前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が内包される方式は、次のような方式によっても説明できる:矢印のテイルを疎水性R−グループとし、矢印のヘッドを親水性[D−π−A]とする時、第一の内包方式は、[→ →]または[← ←](即ち、ヘッド−to−テイルまたはテイル−to−ヘッド配向)で表現できて、第二の内包方式は、[→ ←]または[← →](即ち、ヘッド−to−ヘッドまたはテイル−to−テイル配向)で表現できる。
【0042】
本発明の最も大きい特徴は、双極子型非線形光学分子を変形させることである。前記変形は、DNLO分子自体に二種類の異なる部分、即ち、疎水性部分と親水性部分とを形成させることである。本発明によると、DNLO分子と関連して使用される用語“疎水性”及び“親水性”は、絶対的な意味ではない。変形させたDNLO分子自体内の二つの部分を比較して、相対的に疎水性の強い部分を疎水性部分といい、相対的に親水性の強い部分を親水性部分というのである。
【0043】
一般に、DNLO分子の母分子(parent molecule)、[D−π−A]は、親水性を示す。したがって、DNLO分子を変形させることは、母分子に疎水性部分を結合させることを意味する。
【0044】
疎水性部分を付与するR−基は、疎水性を示すアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組み合せである。好ましくは、前記Rは、C3〜C30のアルキル、C4〜C30のアルケニル、C3〜C10のシクロアルキル、またはC5〜C10のシクロアルケニルである。もし、Rがアルキル基である場合は、C9〜C30がより好ましく、最も好ましくは、C15〜C30である。
【0045】
用語“アルキル”は、直鎖または分岐鎖飽和炭化水素基を意味し、用語“アルケニル”は、指定された炭素数を有する直鎖または分岐鎖不飽和炭化水素基を示す。用語“シクロアルキル”は、環状炭化水素ラジカルを意味し、用語“シクロアルケニル”は、指定された炭素数を有して、且つ少なくとも一つの二重結合を有する環状炭化水素基を意味する。
【0046】
用語“アリル”は、全体的にまたは部分的に不飽和された置換または非置換モノサイクリックまたはポリサイクリックグループを意味し、好ましくは、モノサイクリックまたはバイサイクリックグループ、即ち、フェニルまたはナフチルグループを意味して、これらは、非置換または置換されることができて、置換される場合は、一つ以上の置換体、特に1〜3個の置換体により置換される。用語“ヘテロアリル”は、ヘテロサイクリック芳香族基であって、ヘテロ原子としてN、OまたはSを含むものであり、“アリルアルキル(アラルキル)”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリル基を意味する。用語“アルキルアリル”は、一つまたはそれ以上のアリル基からなる構造に結合されたアルキル基を意味する。用語“アリルアルケニル”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリル基を意味する。
【0047】
DNLO分子の母分子を変形させて製造したR−[D−π−A]または[D−π−A]−Rにおいて、R−基の結合された末端部分の反対側の末端は、[D−π−A]の相対的親水性が維持される範囲内で、他の置換基(例えば、−CH3)が結合されることができる。したがって、このように両側末端が変形されたR1−[D−π−A]−R2形態の分子も、本発明の範囲に含まれるものである。
【0048】
DNLO分子は、一般に極性を帯びており、分子により、DまたはA側が他側より相対的にもっと極性を帯びる。したがって、DNLO分子の一側末端に、疎水性を付与できるR−基を付着させると、R−基は、相対的に疎水性になり、[D−π−A]母分子は、相対的に親水性となる。したがって、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性の[D−π−A]領域と疎水性のR部分とで構成される。
【0049】
このように製造されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、その疎水性R−基方向に、疎水性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に内包される傾向が強い。即ち、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が疎水性ゼオライト細孔内に入る時は、それらの疎水性テイルが優先的に入るようになる。反対に、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、その親水性[D−π−A]部位の方向に、親水性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に内包される傾向が強い。即ち、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が親水性ゼオライト細孔内に入る時は、それらの親水性ヘッド部分が優先的に入るようになる。結局、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、ゼオライト細孔内に一定な配向で内包される。
【0050】
本発明に用いられるR−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子の具体的な例は、次のようである:
(i)ヘミシアニン(hemicyanine: 4-[4-(dimethylamino)styryl]-1-docosyl- pyridinium bromide)系化合物
R1R2N−C6H4−(CH=CH)n−C6H4N−R3Br
【0051】
【化1】
【0052】
【化2】
【0053】
(ii)メロシアニン(merocyanine:1-docosyl-4-(4-hydroxystyryl)pyridinium bromide)系化合物
R1O−C6H4−(CH=CH)n−C6H4N−R2Br
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
(iii)ニトロスチルベン(4-heptadecylamido-4’-nitrostilbene)系化合物
O2N−C6H4−(CH=CH)n−C6H4−NHC−O(R)
【0057】
【化5】
【0058】
(iv)ディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3;4-(4-nitrophenylazo) aniline)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NR1R2
【0059】
【化6】
【0060】
(v)ディスパースオレンジ13(Disperse Orange 13;4-[4-(phenylazo)-1- naphthylazo]phenol)系化合物
R1C6H5−N=N−C10H6−N=N−C6H4−OR2
【0061】
【化7】
【0062】
【化8】
【0063】
(vi)ディスパースオレンジ25(Disperse Orange 25;3-[N-ethyl-4-(4- nitrophenylazo)phenylamino]propionitrile)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NRCH2CH2CN
【0064】
【化9】
【0065】
(vii)ディスパースレッド1(Disperse Red 1;2-[N-ethyl-4-(4- nitrophenylazo)-phenylamino]ethanol)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NRCH2CH2OH
【0066】
【化10】
【0067】
(vii)ディスパースレッド13(Disperse Red 13;2-[4-(2-chloro-4- nitrophenylazo)-N-ethylphenylamino]ethanol)系化合物
Cl−C6H3(NO2)−N=N−C6H4−NRCH2CH2OH
【0068】
【化11】
【0069】
(ix)ディスパースイエロー7(Disperse Yellow 7;4-[4-(phenylazo)phenylazo]-o-cresol)系化合物
C6H5−N=N−C6H4−N=N−C6H3(CH3)OR
【0070】
【化12】
【0071】
(x)メチルニトロアニリン(MNA)、N−(4−ニトロフェニル)−L−プロリノール(NPP)、(−)−2−α−メチルベンジルアミノ−5−ニトロピリジン(MBA-NP)、3−メチル−4−メトキシ−4’−ニトロスチルベン(MMONS)、2−(N−プロリノール)−5−ニトロピリジン(PNP)、及び3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド(POM)のような他の有機化合物。
【0072】
驚いたことに、本発明によりゼオライト細孔内に内包されるDNLO分子は、超分極率(hyperpolarizability constant, β値)に制限がない。本発明によると、β値が500以下のものだけではなく、500以上のDNLOもゼオライト細孔内に単一配向で内包されることができる。
【0073】
本発明の方法を、以下の実施例を参照して具体的に説明する。
【0074】
まず、ゼオライトを合成する。ゼオライト合成当時に使用された有機鋳型物質が残存する場合は、フィルム、微細結晶、または超結晶状態のゼオライトに適当な温度で酸素を供給して焼成するか、強い紫外線を照射して酸化させることにより除去する。次いで、R−[D−π−A]またはR−[D−π−A]分子を溶媒(例えば、メタノール)に溶解して、これに鋳型分子の除去された様々な形態のゼオライトを適当な時間以上浸しておく。その後、ゼオライトを取り出して、同様な溶媒で洗浄して乾燥し、R−[D−π−A]またはR−[D−π−A]分子が単一配向で内包されたゼオライトを得る。
【0075】
図11は、本発明の方法によりゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に単一配向で内包されたDNLO分子を模式的に示す。
【0076】
本発明の方法によると、超分極率(β値)に制限なく、多様なDNLO分子を実用化することができる。
【0077】
本発明は、多様な形態(例えば、フィルム、薄膜、及び超結晶)のDNLO−ゼオライト複合体を提供する。
【0078】
本発明のDNLO−ゼオライトフィルム複合体の好ましい具現例によると、ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に成長させて製造する。好ましくは、本発明のDNLO−ゼオライトフィルム複合体は、上述の本発明の方法により製造される。
【0079】
本発明のDNLO−ゼオライト薄膜複合体の好ましい具現例によると、ゼオライト薄膜は、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に整列して製造される。好ましくは、本発明のDNLO−ゼオライト薄膜複合体は、上述の本発明の方法により製造される。
【0080】
一般に、本発明のDNLO−ゼオライト複合体に内包されるDNLO分子は、超分極率(β値)に対して制限されない。好ましくは、内包されたDNLO分子は、100×10-30esu以上の超分極率(β値)、より好ましくは、300×10-30esu以上の超分極率(β値)、さらに好ましくは、400×10-30esu以上の超分極率(β値)、最も好ましくは、500×10-30esu以上の超分極率(β値)を有する。
【0081】
単一方向に内包されたDNLO分子を含む本発明のDNLO−ゼオライト複合体は、優れた非線形光学特性を示し、各種情報の貯蔵や伝達、光通信、光コンピューター、及びレーザー機器の部品など、光電子工学(opto-electronics)の多様な分野に応用可能である。
【発明の効果】
【0082】
本発明は、高いβ値を有する双極子型NLO分子を、純粋なシリカゼオライト(シリカライト−1)に高いDUAで内包させることができる新規な方法を提供する。ヘミシアニン分子の整列された内包のための無機ホストとしてのゼオライトフィルム(粉末ではない)を成功的に利用した本発明は、NLO分子を含むゼオライトがSHG物質として開発されることができるということを明確に示している。
【0083】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
[実験材料]
n−アルキルブロマイドのシリーズ(CnH2n+1Br)は、TCI(n=3,6,9,12,15,及び18)及びAldrich(n=22)から購入した。1−テトラコシルブロマイド(n-C24H49Br)は、該当するアルコール(Aldrich)から次のような過程を通じて製造した。トリフェニルホスフィン(95mg、0.36mmol)及びカーボンテトラブロマイド(120mg、0.36mmol)を順次ジクロロメタン溶液(50mL)に加え、1−テトラコサノール(60mg、0.17mmol)で溶解した後、混合物を室温で12時間攪拌した。真空処理により溶媒を除去した後、生成された1−テトラコシルブロマイドをカラムクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。4−4−(ジメチルアミノ)スチリルピリジン(Aldrich)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、Acros)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2、Kanto)、及びテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH、Aldrich)は、購入後、直に使用した。n−オクタデカン及びn−ヘプタデカンは、PolyScience Corporationから購入して使用した。4−ニトロアニリンは、Aldrichから購入して使用した。
【0085】
[実施例I]:4−4−(ジメチルアミノ)スチリル−1−n−アルキルピリジウムブロマイド(HC-n)の製造
HC−n非線形色素は、4−4−(ジメチルアミノ)スチリルピリジン(1mmol)及び該当する1−ブロモアルカン(1mmol)のアセトニトリル溶液(25mL)を、初期無色の溶液が黒赤色になるまで、様々な時間還流して製造した(例えば、HC-18は、六日が所要された)。それぞれの反応混合物から溶媒を真空下で除去した。エチルアセテート(100ml)を、初期生成物を含む反応フラスコに投入した後、シリカゲルカラムの上部に反応混合物を投入した。未反応出発化合物を除去するために、純粋なエチルアセテートが前記カラムから収集されるまで、多量のエチルアセテートを前記カラムに通過させた。多量のメタノールを前記カラムに通過させて赤色のメタノール溶液を収集することにより、残余赤色の塩をシリカゲルから分離した。メタノールを蒸発させて赤色の生成物を分離させた。生成物を微量のメタノールに再溶解した後、溶液が濁るまでエーテルを添加した。濁った溶液を−20℃で一晩中保管し、ガラス容器の下部に沈殿されたHC−n微細結晶を得て、これを濾過して収集した。収率は、一般的に60%以上であった。元素分析、マトリックス−補助レーザー着脱イオン化時間−of−フライト(MALDI-TOF)質量分析データ、1H and 13C NMRスペクトル、及びFT-IR(Fourier-Transform infrared)スペクトル結果は、生成物が所望のHC−n非線形色素であることを明確にした。
【0086】
[実施例II]:ハイパーレイリー散乱(Hyper Rayleigh Scattering, HRS)による超分極率(β)測定
βHC-nのn=6、12、及び22の超分極率は、PNA値(βPNA=34.5±4×10-30esu、in methanol at 1064nm)と比較して間接的に決定した23,24。HC−n(n=6, 12, 及び22)及びPNAの取り乱したSH信号強度[それぞれIout(HC-n)及びIout(PNA)で表示]をHC−n(0.1〜0.5mM)及びPNA(0.1〜30mM)の多様な濃度で測定した。実験装置は次のようである:メタノール溶液に溶いてある非線形色素が入っている石英セル(経路長1cm)を、50cmの焦点長を有する凸レンズから40cmの距離に、モード−ロックNd:YAGレーザービーム(1064nm, 10Hz repetition rate, 40-ps pulse width)のレーザー経路に沿って位置させた。HC−n非線形色素により生成されたSH波(532nm)の吸収が最少となるよう、レーザーがセル前面の最右末端を通過するようにセルを位置させた。広がって取り乱したSH信号を3cmレンズで収集し、収集されたビームをモノクロメーターに通過させて、それぞれの波長による信号を収集した後、光増倍管(PMT)を利用して大きさを測定した。
【0087】
図1Aは、PNAのHRS信号を示す。HC−n非線形色素は、〜600nmで最大値の光発光を強く示すが、これは、HC−n非線形色素による入射ビームのマルチ光子吸収のためであって、図1Bは、HC−18の場合を典型的に示す。結果的に、図1Cから分かるように、HC−nのHRS信号は、強い多光子吸収による光発光曲線の前部に重なって出る。したがって、デコンボリューション(deconvolution)により、HRS信号だけが抽出された。
【0088】
[実施例III:シリカライト−1フィルムの製造]
ポーラスステンレススチール、ポーラスアルミナ、及びポーラスバイコールガラスディスクのようなポーラス基質、そしてテフロン(登録商標)、銀、及びシリコンのようなノンポーラス基質上に、ZSM−5及びシリカライト−1フィルムを成長させることは、当業界に公知されている26。本発明者らは、文献に記載の方法及び合成ゲルの組成を変形して、平面ガラス上にZSM−5及びシリカライト−1フィルムを成長させた。比較のために、ガラス板上に、異なるSi/Al比率を有するZSM−5フィルムを成長させた。
【0089】
5個のガラス板(25×70×1mm3)を合成ゲルに含浸させた後、テフロン(登録商標)−ラインドオートクレーブで5時間140℃で加熱し、シリカライト−1フィルムをガラス板上に成長させた。前記合成ゲルは、シリコン源(source)であるテトラエチルオルトシリケート(TEOS、Aldrich)、ゼオライト合成の鋳型物質であるテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH、ACROS)、及び水が、モル比で0.8:0.1:50に存在する。前記合成ゲルは、TPAOH溶液(150mL、0.11M)を含むプラスチックフラスコに、TEOS(28.3g)を攪拌しながら添加して製造した。前記ゲルを12時間激しく攪拌しながら室温で熟成させた後、ガラス板の含浸前にテフロン(登録商標)−ラインドオートクレーブに移しておいた。収得したシリカライト−コーティングガラス板(SL/Gs)を多量の水で十分洗浄した後、室温及び大気中で乾燥した。得られたSL/Gsを〜25×18×1mm3サイズとして4片に切断した後、450℃で12時間焼成し、非線形色素を混入する前にTPA鋳型を除去した。それぞれのシリカライト−1フィルムの厚さは、その断面の走査電子顕微鏡(SEM)像を得てモニタリングした。また、厚いフィルム(≧〜1μm)は、合成ゲルでの含浸時間を増加させるか、またはゼオライトフィルムでコーティングされたガラス板に、新しいゲルで所望の時間再含浸させて得ることができる。
【0090】
また、異なるSi/Al比率(50、25、及び17)を有するZSM−5フィルムは、ゲル組成を変更してガラス板上で成長させた。ゲル組成は、それぞれ、TEOS:NaAlO2:TPAOH:H2O=7:0.14:1:300、7:0.28:1:300、及び7:0.42:1:300であった。熟成時間及び反応温度は、それぞれ5時間及び180℃に固定して、反応時間は、それぞれ4、4.3、及び5時間であった。ZSM−5フィルムのSi/Al比率は、EDX(energy dispersive X-ray analysis)で決定した。
【0091】
[実施例IV:SL/G及びZSM−5フィルム内へのHC−n混入]
相違なるHC−nのメタノール溶液(10mL、1mM)を含むそれぞれのバイアル(25mL capacity)に、二つのSL/Gsを添加し、バイアルを所望の時間(例えば、一日間、1週間、3週間)室温で保管した。平衡をなさせた後、SL−Gsを溶液から除去し、多量の新しいメタノールで洗浄した後、空気中で乾燥した。SHG活性の比較のために、同一浴のSL/Gsを利用して、フィルムの特徴的要素、例えば、厚さ、シリカライトフィルムによるガラスの塗布程度、フィルムの配向、及びフィルムの形状などを、できるだけ類似するようにした。また、それぞれのSL/Gから小さい部位を取った後、SEMでフィルムの特徴的要素を分析し、上記の特徴的要素が各試料間において実質的に類似していることを確認した。
【0092】
同様に、Si/Al比率が50及び25であるZSM−5フィルムにHC−18を含ませた。
【0093】
[実施例V:HC−n−SL/G内のSL/G及びHC−nの混入量の定量的分析]
SL/Gs内に混入されたHC−n非線形色素は、次のような過程により、定量的に分析された。フルオロ酸の希釈された水溶液(1mL、蒸留脱イオン水0.8mL及び49%HFの0.2mL混合物)を、HC−n−SL/Gを含む50−mLプラスチックビーカーに添加した。混合物を室温で5分間ていねいにスワーリングした後、NaOH水溶液(1mL、5M)を添加し、前記溶液を中性化した。前記中性溶液にメタノール(8mL)を順次添加し、溶液内の全ての非線形色素の溶解をしっかりとした。溶液からガラス基質を除去した後、溶液を遠心分離してシリカ粒子を沈澱させた。分光測定のために、石英セル対の一つに清い上清液を入れた。定量的分析の正確性を向上させるために、抽出された溶液の濃度とほぼ等しい濃度のそれぞれのHC−nのモル吸光係数を独立的に決定した。そして、(010)平面の単位セルの寸法が2.007×1.342nm2であり、各単位セルは、二つのストレートチャンネルを有しているという事実に基づき27、それぞれのSL/G(〜25×18mm2)の面積を2.007×1.342nm2に分けて、SL/Gが二つのフィルムを有することを考慮し、それぞれのSL/G内のストレートチャンネルの数を得た。
【0094】
[実施例VI:HC−n−SL/GのSH強度の測定]
屈折率が一致する流体として、DMSOの一滴をHC−n−SL/Gの各面に滴下して、HC−n−SL/Gの各面をガラス板(25×18×1mm3)で覆った。シリカライト−1フィルムの不規則な厚さによる入射レーザービームの散乱を抑えることが必須的である。ビームスプリッターと光ダイオードは、基本ビーム(1064nm)の揺動による強度変化を補償するために使用した。基本レーザービームの偏光は、試料に入射する前に半波長板を利用して調節した。入射ビームの電場ベクターは、入射面に対して水平(p-偏光)または垂直(s-偏光)であった。プリズム及びSH(532nm)パスフィルターを利用して、SHビームだけがPMTに入るようにした。発生したSH信号の偏光方向(p-偏光)を確認するために、PMTの前に検光板を利用した。HC−n−SL/Gを、ステップモーターに連結された回転器に載せて回転させながら、PMTを利用して入射角により測定した。3mm厚Yカット石英結晶(結晶性y-軸に対し垂直をなす平面を有して、平面の厚さが3mmであるもの)28を、試料から発生するSH信号の相対的強度を決定するための基準物質として利用した。HC−n−SL/GのSH信号は、サンプルの不均一による誤差を減らすために、3ヶ所の異なる位置に入射させて、平均強度を求めた。
【0095】
[実施例VII:装置を利用した測定]
ゼオライト及びゼオライト−コーティングガラス板のSEM像は、FE−SEM(Hitachi S-4300)20kVの加速電圧により得た。白金/パラジウム合金 (8:2)を試料上部に約15nm厚でコーティングした。試料のEDX分析は、前記FE−SEMに連結されたHoriba EX-220 Energy Dispersive X-ray Micro Analyzer (Model:6853-H)を利用して行った。ゼオライトフィルムの同定のためのX−線回折パターンは、Cu Kα X−線を使用するX−線回折器(Rigaku回折器 D/MAX-1C, Rigaku)を利用して得た。試料のUV−visスペクトルは、Shimadzu UV-3101PCを利用して得た。FT−IRスペクトルは、Jasco FT/IR 620を利用して得た。HC−n非線形色素の1H and 13C NMRスペクトルは、Varian Jemini 500 NMRスペクトロメーターを利用して得た。HC−n dyesの元素分析は、Carlo-Erba EA1108を利用して行った。質量分析データは、Applied Biosystem MALDI TOF mass spectrometer(Proteomics Solution I Voyager-DE STR)を利用して得た。シリカライト−1に内包されたn−オクタデカンの量に対する分析は、フレームイオン化検出器が装着されたHewlett Packard 6890 series gas chromatographを利用して行った。基本的なレーザーパルス(1064 nm, 40-ps pulse width, and 10-Hz repetition rate)は、Continuum PY61 mode-locked Nd-YAG laserを利用して生成させた。
【0096】
[実験結果]
[SL/G及びZSM−5フィルムの特性]
シリカライト−1フィルムは、ガラス板の両側面によく成長して、この際、配向は、b−軸(ストレートチャンネル)がガラス板に対して垂直をなした。したがって、図2Aから分かるように、回折線は、結晶の(0 2 0)、(0 4 0)、(0 6 0)、(0 8 0)、及び(0 10 0)面に該当する規則的な間隔に(2=8.85, 17.8, 26.85, 34.85, 及び45.55°)現れた。前記規則的な空間のX−線回折パターンが、未知のゼオライトフィルムの形成によらずに、ガラス板に対してb−軸垂直であるシリカライト−1フィルムの配向により招来されたものであることを確認するために、前記フィルムをガラス板から剥がし出して、微細粉末にした後、フィルムの特性を分析した。
【0097】
粉末のX−線回折パターンは、前記粉末が純粋なシリカライト−1からなったことを表す(参照:図2Aの内部図面)。図2B及びCのSEM像は、シリカライト−1フィルムが基質面に対してb−軸に配向されていることを追加的に示している。典型的な厚さは、400〜500nmであって、実験に利用されたSL/Gの厚さは、約400nmであった。
【0098】
フィルムの質は、合成ゲル内のAl量が増加するほど劣化した。したがって、b−配向されたMFI−型フィルムにより塗布されたガラス板の塗布程度は、Al量が増加するほど減少し、Si/Al比率が∞、50、及び25である場合、93、81、及び57%であった。上記実験条件下で、ZSM−5フィルム厚は、約400nmであった。
【0099】
[n=6、12、及び22に対するβHC-n]
SH強度(Iout)及び入射ビーム強度の二乗(Iw2)の比率を示すグラフを、PNA及びHC−n(n=6、12及び22)に対して、それぞれ作った(図4)。図4から確認できるように、βHC-n値は、nに関係なく同一である。βPNA(34.5±4×10-30esu)23,24の知られた値を適用すると、βHC-n値は、1064nmで765±89×10-30esuに決定された。前記βHC-n値は、Ashwellらにより発表されたもの4に類似している。
【0100】
[シリカライト−1及びZSM−5フィルムのチャンネル当たりHC−nの混入数(Nc)及びHC−nの長さ]
それぞれのHC−nの1mM溶液内にSL/Gを1週間含浸した後、測定されたNc、即ち、チャンネル当たり内包されたHC−n分子の数は、表1に記載されている。Ncは、nが3から6に増加するほど増加したが、追加的にnがさらに増加した場合は、速い速度で減少した。一方、Na−ZSM−5フィルム内へのHC−18のNcは、Al量が増加するほど増加した。例えば、SL/G内へのHC−18のNcは、3.5であったが(表1)、Na−ZSM−5フィルム(Si/Al=50及び25)内へのNcは、それぞれ3.9及び4.4であった。このような現象は、陰電荷チャンネル内への陽電荷HC−18非線形色素の混入が、Na+のイオン交換により促進されるからであると推定される。
【0101】
HC−nの光学特性、及びシリカライトフィルム内に内包された量に対するアルキル鎖長の影響
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1において、aは、シリカライト−1フィルムの各チャンネル内にあるHC−nの数、b及びcは、Yカット3mm厚の石英結晶に対する%、dとeは、pm V-1で表されて、fは、HC−nの一定な配向程度を示し、d33値の実験値/理論値の比率で定義される。
【0104】
[シリカライト−1チャンネル内へのHC−nの非可逆的内包]
無色のSL/Gsは、HC−nのメタノール溶液に含浸されて、徐々にピンク色に変わった。HC−nがSL/Gs内に容易に内包されることは、DMSO−コーティングされたHC−n−SL/GsのUV−visスペクトルにより確認されて、これは、メタノール内のHC−nのスペクトルと同様なものである(参考:図3B for HC-18)。最も大きいNCを有するHC−6の場合、時間による非線形色素の混入量を測定した(図5)。その結果、混入速度は、4時間前が高く、4時間以後は、非常に減少された。
【0105】
面白いのは、もし非線形色素がシリカライト−1チャンネルに入ると、チャンネルから抜け出て、溶液に再び入らないということである。例えば、479nmにおけるHC−3−SL/G及びHC−18−SL/Gsの可視バンドの強度は、三日間新しいメタノールに保管した後にも減少されなかった。このような結果は、シリカライト−1チャンネルがHC−n非線形色素に対して、非常に強い親和度を表すことを示し、これは、シリカライト−1チャンネルへのHC−nの混入は、非平衡過程で且つ非可逆的過程である。
【0106】
HC−n−SL/Gsの場合とは逆に、混入されたHC−18の29%は、NaClO4の1Mメタノール溶液に24時間含浸した場合、ZSM−5フィルム(Si/Al=50)から溶液に抽出された。このような結果は、HC−nカチオンの大部分は、イオン交換によりZSM−5チャンネルに混入されたことを示す。
【0107】
[HC−n−SL/GのI2w、d33、及びd31]
相対的I2w(Yカット3mm厚の石英に対する%で表示)は、入射ビームの偏光方向により、より細部的には、Ipp及びIspで表されて、前者及び後者は、それぞれp−偏光及びs−偏光された基本レーザービームから発生したp−偏光されたSHビームの強度を示す。入射ビームの角(表面垂直に対する)対Ipp及びIspの典型的なグラフは、図6Aに示されている。他の全てのHC−n−SL/Gsは、ほとんど同一なプロフィル(profiles)傾向を示した。プロフィル内の完全な相殺干渉(destructive interferences)は、ガラス板の二つの面上にある二つのシリカライト−1フィルムがほとんど同一であることを示す。Ipp及びIspが最大値を示す平均角は、それぞれ67.4°と55.9°である。
【0108】
Ipp値は、0.1〜7.9%の範囲であり、Ispは、0.4×10-4〜3.0×10-4%である(参照:表1)。 Ipp値がIspより約104倍程度大きいということは、非線形色素の大部分が、ガラス表面に垂直をなす長い軸に沿って位置していることを示すものであり、これは、ストレートチャンネルの大部分がガラス表面に対して垂直に配向されたという上述の事実と一致するものである(図2)。
【0109】
一般に、HC−n−SL/GsのIpp値は、n≧9の時よりn≦6の時、比較的小さかった。たとえ差は小さいが、nが3から6に増加すると、Ncは、約4倍ほど増加するにもかかわらず、Ippは、0.3から0.1に減少する傾向を示した。このような結果は、HC−6は、HC−3よりもっと無作為な配向性を有するシリカライト−1チャンネルに入ることを示す。しかしながら、nが6から18に増加すると、Ncが減少するにもかかわらず、Ippは、漸進的に0.1から7.9%に増加する。面白いことに、nが18から22及び24に増加すると、Ippは、急激に7.9から0.9及び1.9%に減少するが、これは、Ncの急激な減少と一致することである。たとえ変化される傾向は小さいが、Isp値もnが増加するにつれて、Ippと同様な傾向を示した。
【0110】
HC−n−SL/Gsの2次非線形感受率の二つのテンソル、d33及びd31は、Makers fringe方法25により、実験的に観察された相対的Ipp値及びIsp値を、3mm厚Yカットの石英(d11は、0.3pmV-1)の強度と比較して決定した。1.48は、シリカライト−1フィルムの屈折率として利用したが、これは、DMSOが良好な屈折率一致流体として作用できるという事実に基づいたものであって、DMSOの屈折率は、20℃で1.48である。値は、表1に記載されており、図6Bに図示されている。Ippと同様に、nが3から6に増加するにつれて、d33値は、初期には減少したが、nが6から18に増加するにつれて漸進的に増加し、追加的にnが増加すると、急激に減少した。しかしながら、d33/NCは、nが増加するにつれて漸進的に増加した(表1及び図6C)。前記結果は、SL/Gsの他の配置に対しても、非常に再現反復性がある。上記の現象は、HC−n分子が疎水性シリカライト−1チャンネルに入る時、疎水性テイルの長さが増加するほど疎水性テイルが優先的に入る傾向が増加するために発生するものであると、本発明者らは結論づけた。
【0111】
HC−18の内包されたZSM−5フィルムのIpp値は、それぞれ1.7及び0.5%であった。明らかにZSM−5フィルムのNc値がSL/G値より大きいにもかかわらず、Ipp値は、HC−18−SL/G(7.9%)の値より遥かに小さかった。Ipp値がHC−18−SL/Gより小さい明白な要因の一つは、b−配向されたフィルムによるガラス板の塗布がより劣悪であるからである。しかしながら、ZSM−5フィルム(Si/Al=50)のガラス板への低い塗布率(81%)を考慮しても、最終的なIpp値は、期待値よりあまりにも低い。このような現象は、骨格内にあるアニオン中心を相殺するためのカチオンによりチャンネルの疎水性が増加して、これにより、ZSM−5のチャンネル内に、HC−18が無作為に配向された混入が増加することにより発生したとして推測される。このような観察事実に基づいて、本発明者らは、SL/Gs内へのHC−nの整列された混入に、より集中をした。
【0112】
計算されたd33/d11は、85より大きく、平均値は、109である。これは、非線形色素をLBフィルムに形成したものより2〜5倍大きい値であり、高分子に内包されたNLO非線形色素をポリングさせたものより30〜50倍大きい値である。d33/d11の平均値から、シリカライトフィルムに内包されたHC−nの場合、HC−nのヘッド部分とシリカライトチャンネルに7.7°程度の傾斜を有して存在することを予測した。
【0113】
整列度sは、次の式により定義し、
s=[3<cos2θ>−1]/2
θ=7.7値を代入すると、平均値は、0.97である。ポリングさせた高分子の場合、その平均値は、0.3に過ぎない。この値は、有機DNLO物質を利用したいかなるデバイスより著しく高い値を示している。
d33=NβHC-n<cos3θ>l3/2 (1)
d31=NβHC-n[<cosθ>−<cos3θ>l3/4 (2)
【0114】
[nの増加によるHC−nの一定な整列程度(Degree of Uniform Alignment:DUA)の増加]
上記のようにして、シリカライトフィルムの厚さと内包されたDNLO分子数、DNLO分子のβ値、そして(1)に代入して理論的なd33値を得ることができた。理論的なd33値は、14.40(3)、70.71(6)、24.48(9)、18.13(12)、13.31(15)、8.03(18)、1.88(22)、そして2.71pm/V(24)を示している。実験的に得たd33値を理論的なd33値で除してDUAとして定義し、この値を表1に示した。このようにnが増加するほどDUAが増加されることを図6Dに示した。この結果は、HC−nの疎水性基であるテイル部分が、強い疎水性性質を有するチャンネル内部に選択的に入っていることの証拠となる。そしてd33/Nc値が、nが増加するにつれて大きくなっているということは、同様な原因によるものである。
【0115】
DUAの最小値(n=6の場合、0.01)と最大値(n=24の場合、1.34)とを比較してみると、約98倍もの差がある。DUA値の最大値が1より少し小さく出たが、これは、理論的な値と実験値とがほぼ一致していることを示唆している。
【0116】
一連の独立的な実験において、HC−18−SL/GのSHG強度は、HC−18の添加量が増加するほど増加することを確認した。Nc1.2、1.7、2.2、3.0、及び3.8に対して観察されたSHG強度は、それぞれ0.7、1.6、2.6、4.7、及び7.5%であった。この実験結果は、図7に示されている。
【0117】
上述のように、内包されたHC−18のNcが増加するほど、SHG強度が増加している。SHG強度は、DNLO分子の数密度の二乗に比例することを考慮すると、前記結果は、量に関わらず同一なDUA値を有してHC−18分子がシリカライト−1チャンネル内部に入ることを示すものである。HC−18のd33値(5.3pmV-1)は、石英(0.3pmV-1)、またはKDP(約3pmV-1)のd33値より約10倍大きい値を示すが、LB−フィルムのd33値よりは小さい値である。自己組立て分子フィルムのd33値よりHC−n−SL/Gsのd33値が小さい理由は明白であるが、その理由は、400nm厚のシリカライト−1フィルムにおいて、HC−n分子の密度が非常に小さいからである。高いDUA値を有する長鎖のHC−n分子の場合、特にそうである。即ち、HC−24−SL/Gの小さいd33値は、DNLO分子の非常に小さいNから由来するものである。
【0118】
また、本発明のDNLO分子−ゼオライト複合体は、長期間の高い熱的及び機械的安定性を示すが、このような特性は、LB及びポリング(poled)された重合体NLOフィルムでは欠如されている特性である。例えば、HC−n−SL/Gsは、1年間大気中に保管するか、または120℃のオーブンで24時間保管しても、さらには、爪先で表面を数回擦っても、初期のSHG値を維持する。
【0119】
例えば、HC−24−SL/Gの場合、Ncは、重要な要素である。HC−24−SL/GにおけるHC−24、そしてLBフィルムにおけるHC−18により占められる体積((1.35nm2×400nm)/(0.42nm2×3.5nm)=367、該当d33値の比率、2.6/750=1/300)を比較してみると、HC−24−SL/Gの低いd33値は、非常に低いN値から由来したことが分かる。しかしながら、それぞれのシリカライト−1チャンネルにたくさんのHC−24が含まれる場合も、それぞれのシリカライト−1チャンネルの体積は変わらないため、本発明の方法は、より多い数のHC−22及びHC−24をチャンネルに内包させることにより、非常に高いd33値を有する無機−有機複合体NLOフィルムを製造することができる。このような技術的達成は、より広いチャンネル及び単一配向性を有するシリカゼオライトを利用することにより達成することができる。また、本発明のHC−n−SL/Gsは、長期間の高い熱的及び機械的安定性を示すが、このような特性は、LB及びポリング(poled)された重合体NLOフィルムでは欠如されている特性である1,2。例えば、HC−n−SL/Gsは、1年間大気中に保管するか、または120℃のオーブンで24時間保管しても、さらには、爪先で表面を数回擦っても、初期のSHG値を維持する。
【0120】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、本発明の範囲がこれらに限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1A】PNA(para-nitroaniline)のメタノール溶液(0.9mM)のHRS(Hyper Rayleigh Scattering)信号を示す。
【図1B】HC(hemicyanine)−18のメタノール溶液の光発光スペクトルである。
【図1C】HC−22のメタノール溶液(0.3mM)のHRS信号を示し、この信号は、強い光発光エンベロープの前部に重なって現れて、1064nmレーザーパルスによるそれぞれの試料の照射により発生される。
【図2A】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のX−線回折パターンである。小さい図面は、SL/Gをスクラッピングして収集したフィルムを細かく擦って得たシリカライト−1粉末に対するX−線粉末回折パターンを示す。
【図2B】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のSEM写真(断面)である。
【図2C】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のSEM写真(平面)である。
【図3】0.02mM HC−18(パネルA)、反射角マッチング流体であって、DMSOでコーティングされたHC−18−SL/GP(パネルB)、及びHC−18−SL/GPから抽出されたHC−18のメタノール水溶液に対するUV−visスペクトルである。
【図4A】PNAの取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4B】HC−6取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4C】HC−12の取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4D】HC−22の取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図5】SL/Gの含浸後、HC−6の上清液(1mM)の、479nmにおける吸光度変化を示すグラフである。
【図6A】入射光の角度に対するHC−18−SL/GのIpp及びIsp(内部グラフ)のグラフ(Y-カット3mm石英の該当値に対し、%で示す)である。
【図6B】nに対するd33)のグラフである。
【図6C】nに対するd33/Ncのグラフである。
【図6D】nに対するd33(E)/d33(T)のグラフである。
【図7】HC−18−SL/GのSH強度とNcとの相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト結晶を示すSEM写真である。
【図9A】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9B】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9C】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9D】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図10】本発明者らにより製造された単一配向性を有する基質上のゼオライトフィルムを示すSEM写真である。
【図11】ゼオライト細孔内に単一方向に内包された双極子型非線形光学(DNLO)分子を示す模式図である。
【0122】
参考文献
【図1a】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学(DNLO)分子を単一方向に内包させる方法、及びDNLO分子が単一方向にゼオライト細孔内に内包されたDNLO−ゼオライト複合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動数ωのレーザー光を2次非線形光学物質に入射させると、振動数2ωの調和波が発生するが、このような現象は、光学スイッチ、光センサー、新しい短波長のレーザー光を生成するデバイスなどに広く使用されている1~4。このような2次非線形光学物質として多用な無機物結晶が利用されているが、無機物結晶は、適当なサイズの結晶が得られ難く、且つ、レーザー損傷閾値(laser damage threshold)は高いが、誘電常数が高くて感応時間が遅いため、これらを2次非線形光学性質のある有機物質に代替しようとする努力が続けられてきた1~4。
【0003】
2次非線形光学性質を有する有機分子は、数種があるが、相対的に電子の豊かな電子供与部分(donor)と、相対的に電子の乏しい電子受容部分(acceptor)とがコンジュゲーション(conjugation)されて結合されたD−π−Aで表示できる双極子型(dipolar)非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子が主種をなしている1~4。このようなDNLO分子を、分子の一つだけをみると、微示的な2次非線形光学係数(second-order hyperpolarizability constant)が非常に大きい方であり、かつ分子設計によりその値が日に日に増加しているが、一つの分子だけでは、光スイッチなどの多様な光学素子として使用することができない。
【0004】
したがって、光学素子として使用するためには、これらを一定な方向に配向させた結晶体または集合体を生成せざるを得ない。ところが、このような分子を結晶化させると、ほぼ全てが、D−π−A分子が互いに双極子モーメントを相殺しようとする方向に整列する現象を示す。したがって、このようなDNLO分子を一定な方向に整列させた結晶を作ろうとする努力が続けられてきたが、あまり実効は得られなかった1。
【0005】
一つの代案として、DNLO分子を高分子媒質に均一に内包させた後、高分子のガラス転移温度(glass transition temperature)で強い電場を利用し、混入されたDNLO分子を一定方向に整列させる方法が研究されてきた2。このように、電場を利用し、高分子媒質に内包されたDNLO分子の配向を単一方向に整列させることを電界ポーリング(electric poling)という。
【0006】
DNLO分子を高分子媒質内に混入させる方法は、単純な物理的な混合方法と、高分子鎖に共有結合によりDNLO分子を結合させる化学的方法が使用されてきた。しかしながら、電界ポーリング化された非線形光学分子が混入された高分子の場合、その混入方法に関わらず、d33(a tensor component of the quadratic nonlinear susceptibility)で表記される単位体積当たりの2次非線形光学感度が低い方であり、しかも、時間が経過するにつれて、比較的低い温度でも、混入されたDNLO分子の配向が自発的に乱れる現象が起こり、これらを実用的に使用するには不適である3。
【0007】
また他の代案として、DNLO分子を透明性基質上に一定な方向に単層または多層膜として形成する方法が研究されてきた4~8。しかしながら、このように形成されたDNLO分子の薄膜は、単位体積に対する2次非線形光学感度は非常に高いが、膜の実質的な厚さが極めて薄いだけではなく、熱的、機械的強度が非常に弱いため、生成されたDNLO分子の薄膜が実用化されるには、まだ足りない状態である。
【0008】
このようなDNLO分子を単一方向に整列して実用可能な2次非線形光学物質を生成するための新しい接近方法として、ゼオライトナノ細孔内にDNLO分子を単一方向に整列して内包させ、2次非線形光学性質を有する有機−無機複合体を生成する研究が進行されてきた14~22。例えば、Stucky研究陣は、直径0.8nmの1次元のチャンネルを有するAlPO4−5粉末にパラ−ニトロアニリン(para-nitroaniline:PNA)、2−メチル−4−ニトロアニリン(MNA)、2−アミノ−4−ニトロピリジン、及び同系列のDNLO分子を内包させた有機−無機複合物が、水晶(quartz)粉末の2次調和波(second harmonic)の強度より著しく大きい2次調和波を生成するということを報告した14、15。
【0009】
次いで、MarlowとCaro研究陣は、PNA分子がAlPO4−5細孔内に入る時、常にニトロ(NO2)基が先に入るため、結果的に、PNA分子がAlPO4−5結晶内で一定な方向に整列するようになるということを明かした16。この際、PNA分子がNO2基から入る理由は、AlPO4−5細孔が、PNA分子のNH2基よりはNO2基を選好する性質を有するからであると推定されている。実際、PNA分子は、一直線状に貫通されたAlPO4−5結晶の両側の細孔の入口から中心に向かって入るようになるため、結果的に、内包されたPNA分子は、AlPO4−5中間で互いに配向が反対となったまま会うようになり、これにより、内包されたPNA分子は全て、NO2基が中間地点を向くように配向されている。しかしながら、AlPO4−5結晶のサイズ(130μm)が、入射されたレーザー光の波長(1.064μm)より遥かに大きい場合は、結晶中央から起こる配向変更による全体的な2次調和波強度の減少現象は起こらない。さらに、MarlowとCaro研究陣は、AlPO4−5内に、PNAと類似した分子である4−ニトロ−N,N−ジメチルアニリン17、または(ジメチルアミノ)ベンゾニトリル18を内包させた場合も、2次調和波が生成されることを報告した。
【0010】
ZSM−519とSb含有シリカライト−1(Sb-SL)20のようなMFI系構造[0.54×0.56nmストレートチャンネルと、このストレートチャンネルに対して垂直方向に位置する0.51×0.54nmサイン(sinusoidal)チャンネルとから構成された3次元チャンネルシステムを有する中心対称(Pnma)のゼオライト]にPNAを内包させると、2次調和波が生成されると報告されている。しかしながら、PNAを内包したSb−SLの場合、数回レーザー光を照射すると、2次非線形光学性質がなくなると報告されている。ZSM−5とSb−SLのように、AlとSbとを骨格に含んでいるゼオライトとは違って、純水シリカのZSM−12[0.56×0.59nmの1次元チャンネルを有する中心対称(C2/c)のシリカゼオライト]の場合は、PNAを内包させても、2次調和波を発生しないことが報告された21。
【0011】
面白いことに、メソポーラスシリカであるMCM−41は、細孔の直径がPNAより著しく大きいにもかかわらず(2〜8nm)、PNAを内包すると、2次調和波を生成することが報告された22。しかしながら、PNAを内包したMCM−41が2次調和波を生成するためには、上記複合体を数週間湿度の高い空気中に放置しなければならない。この事実から、PNAがMCM−41の大きい細孔内に入る時、自発的に一定な方向に整列をするのではなく、2次的に流入された水分子により配向が変わるとして考えられる。
【0012】
即ち、今まで発表された研究結果によると、ゼオライトは、DNLO分子を一定な方向に内包させて、全体的に2次調和波を発生する可能性が十分あることを示してきた。しかしながら、ゼオライトの内部に入って自ら整列する性質があると知られたDNLO型分子は、全て、500×10-30esu以下のPNA(PNA=34.5±4×10-30esu)23、24と同系列の分子に局限されて、より大きい値を有する数多い他の系列のDNLO分子は、ゼオライト細孔内に内包させる時、自発的な配向整列が起こらない。したがって、今までPNAと擬似DNLO分子がAlPO4−5、Sb−SL、またはZSM−5の内部に入る時示した自発的配向整列現象は、極めて例外的な現象であることが判明された。
【0013】
それだけではなく、今まで使用されたゼオライトの形態は、それ自体だけでは実用性のほとんどない粉末と微細結晶とに局限されてきた。したがって、高いβ値を有する一般のDNLO分子をゼオライト細孔内に一定な方向に整列して内包させる一般的な方法が要望される。また、実用性を高めるためには、ゼオライトホストの形態も、微細結晶が基質上に一定な方向に、単層または多層に整列された微細結晶の薄膜、基質上に一定な配向に直接成長させた連続的なゼオライトフィルム、そして基質無しに微細結晶を3次元的に整列させたゼオライト超結晶に拡大されなければならない。
【0014】
本明細書全体にかけて多数の論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者らは、上記のような当業界の要求を解決するために鋭意研究した結果、双極子型非線形光学(DNLO)分子を適宜変形してゼオライトに適用する場合、DNLO分子がゼオライト細孔内に単一方向に内包されて、結局優れた非線形光学性質を有するゼオライト−非線形光学分子複合体が生成されることを確認した。
【0016】
したがって、本発明の目的は、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学(DNLO)分子を単一方向に内包させる方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、DNLO−ゼオライトフィルム複合体を提供することにある。
【0018】
本発明のまた他の目的は、DNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的は、DNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲、及び図面により、さらに明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様によると、本発明は、(a)双極子型非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子の母分子([D−π−A])の末端にR−基を付着させて、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rを製造する段階;及び(b)前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rをゼオライト細孔内に内包させる段階を含み、前記Rは、疎水性を有し、前記母分子([D−π−A]は、親水性を有して、前記母分子において、Dは、電子供与部分、Aは、電子受容部分を示し、前記Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組合せであり、前記ゼオライト細孔が疎水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、疎水性を示すR−基の方にゼオライト細孔に内包されて、前記ゼオライト細孔が親水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性を示す[D−π−A]の方にゼオライト細孔に内包されて、ゼオライト細孔内に内包されたDNLO分子が一定な配向を有することを特徴とする、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学分子を単一方向に内包させる方法を提供する。
【0022】
本発明の他の態様によると、ゼオライトフィルム内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライトフィルム複合体において、前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたものであって、前記内包されたDNLO分子は、一つの方向にのみ配向されて存在することを特徴とするDNLO−ゼオライトフィルム複合体を提供する。
【0023】
本発明のまた他の態様によると、本発明は、ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造して、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供する。
【0024】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト薄膜複合体を提供する。
【0025】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列して製造したゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供する。
【0026】
本発明の他の態様によると、本発明は、ゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含む DNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであって、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対して反対方向に存在することを特徴とするDNLO−ゼオライト超結晶複合体を提供する。
【0027】
一般に、ガス状態や溶液中において、D−π−A型2次非線形光学有機分子をゼオライト細孔内に内包させると、これらの分子は、無作為に入る。このように、非線形光学分子が無作為配向で内包されたゼオライトは、非線形光学性質を帯びない。本発明は、このような従来の技術の問題点を画期的に解決したものである。
【0028】
ゼオライトは、実生活、産業界及び学界において非常に広範囲に使用される重要な物質であって、分子サイズに該当する0.3〜1.3nmの均一な形とサイズのナノ細孔を有しているため、分子ふるいとも呼ばれる。ゼオライトは、通常、100nm〜10μmの微細な結晶として存在する。このような微細な結晶は、そのまま使用されることもあり、多様な基質上に単層または多層形態に整列及び組織化させて使用される。また、ゼオライトは、2次元または3次元的に整列及び組織化させた超結晶形態として使用されたりする。また、これらは、多様な基質上に成長させた連続的なフィルム形態で使用されたりもする。
【0029】
ゼオライトは、シリコンとアルミニウム原子とが規則的に酸素架橋原子により連結された多孔性結晶性アルミノシリケートを総称する。ゼオライトの骨格をなすアルミノシリケートは、アルミニウムがある座ごとに陰電荷を帯びているため、細孔(pore)内には、電荷相殺のためのカチオンが存在し、細孔内の残りの空間は、通常水分子で満たされている。
【0030】
もともと、ゼオライトは、多孔性結晶性アルミノシリケートを意味するが、当業界では、アルミニウムやシリコン原子の一部または全部を他の原子で置換した多様な擬似分子ふるい(zeotypes)を通常的にゼオライトと見なす。例えば、全てのアルミニウムがシリコン原子で代替されたメソポーラス(mesoporous)シリカ(MCM−系メソポーラスシリカ及びシリカライト)、シリコンを燐(P)に代替したアルポ(AlPO4)系分子ふるい、そして、このようなゼオライト及び擬似分子ふるいの骨格に、Ti、Mn、Co、Fe、Znなどの多様な金属元素を一部置換して得られた擬似分子ふるいもゼオライトと見なされる。したがって、本明細書で使用される用語“ゼオライト”は、上述の擬似分子ふるいを含む広い意味のゼオライトを意味する。
【0031】
ゼオライト細孔内の水分子を除去すると、細孔入口のサイズが許容する限り、多様な分子が水分子の代わりに内包されることができる。この際、ゼオライト骨格がアルミニウムとシリコン、架橋酸素からなっていると、細孔は、陰電荷を帯びて、且つ電荷相殺のためのカチオンが細孔内に存在するようになるため、ゼオライト細孔は、親水性を帯びるようになり、このような親水性は、アルミニウムの含量が高くなるほど高くなる。これとは逆に、ゼオライト骨格にアルミニウムの含量が少なくなるほど、細孔は、非極性を帯びて、これにより疎水性を帯びるようになる。したがって、アルミニウム原子が入っていないシリコンと架橋酸素原子とだけで構成されたシリカライトは、ゼオライトの中で、最も疎水性を帯びる。
【0032】
本発明に利用されるゼオライトまたは擬似分子ふるいの種類に制限はないが、本発明に適したゼオライトまたは擬似分子ふるいの例は、次のようである:
(i) 天然または合成ゼオライト;
(ii) ゼオライト骨格のシリコン元素の全部または一部を燐(P)などの他の元素で置換した分子ふるい(例えば、AlPO4、SAPO、MeAPO、MeAPSO系などの分子ふるい);
(iii) ゼオライト骨格のアルミニウム元素をボロン(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)などの他の元素で一部または全部置換した分子ふるい;
(iv) 前記(ii)と(iii)の変形を組み合せた分子ふるい;
(v) 多孔性金属またはシリコン酸化物(例えば、シリカライト、MCM系多孔性シリカ、多孔性二酸化チタン、二酸化ニオビウムなど)、またはこれらの複合酸化物;及び
(vi) 各種元素を単独または複合的に使用して製造した多孔性分子ふるい。
【0033】
本発明に利用されるゼオライトまたは擬似分子ふるいは、多様な形態(form)を有することができるが、好ましくは、(i)基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造したフィルム、(ii)基質上にある単層または多層のゼオライト微細結晶の薄膜、または(iii)ゼオライト微細結晶の2次元または3次元的集合体(aggregate)の超結晶の形態を有する。用語“超結晶”は、結晶が一定な方向に、2次元または3次元に整列されて接合された密集構造体を意味する。
【0034】
本明細書において、用語“基質”は、基質に共有結合または非共有結合されているフィルムまたは薄膜のような物質支持する支持体を意味する。好ましくは、基質は、支持される物質に共有結合されている。
【0035】
本発明に有用な例示的な基質は、以下を含む:
(i)表面にヒドロキシル基を有する物質:例えば、シリコン、アルミニウム、チタン、錫、及びインジウムのような金属または非金属元素が単独または複合的に含まれている酸化物であって、例えば、ガラス、石英、雲母、ITOガラス(インジウム錫酸化物が蒸着されたガラス)、錫酸化物(SnO2)と他の伝導性ガラス、シリカ、多孔性シリカ、アルミナ、多孔性アルミナ、二酸化チタン、多孔性二酸化チタン、及びシリコンウェハー;
(ii)チオール基またはアミノ基と結合できる金属、例えば、金、白金、銀、及び銅;
(iii)表面に多様な作用基を有する重合体、例えば、PVC及びメリフィルドペプチド樹脂(Merrifield peptide resin);
(iv)半導体、例えば、セレニウム化亜鉛(ZnSe)、砒素化ガリウム(GaAs)及びリン化インジウム(InP);
(v)表面にヒドロキシル基を有する天然高分子、例えば、セルロース、澱粉(例えば、アミロース及びアミロペクチン)、及びリグニン;及び
(vi)天然または合成ゼオライト、及び擬似分子ふるい。
【0036】
好ましくは、前記基質は、ガラス、石英、雲母、ITOガラスまたは電極、シリコンウェハー、金属酸化物(SiO2、GeO2、AgO、Al2O3、Fe2O3、CuOなど)、多孔性酸化物、多孔性アルミナ、及び多孔性ステンレススチールからなる群から選択される。
【0037】
本発明の好ましい具現例によると、本発明に利用されるゼオライトは、単一配向性を有する。本明細書において、用語“単一な配向性(uniform orientation)”は、対象となる物質が無作為に配向されていない状態を表すものであって、少なくとも1軸方向に規則的に整列されている状態を表現する用語である。したがって、本明細書において、用語“一定な方向に配向されたゼオライト”または“一定な方向に整列されたゼオライト”というのは、ゼオライトのa、b及びcの三つの軸の中で、少なくとも一つの軸の方向が一定な方向に調節されて製造されたゼオライトを意味する。したがって、このような単一配向性のゼオライトは、それらの構造内に単一配向性のチャンネル(細孔)を有するようになる。
【0038】
一方、本発明者らは、ゼオライト結晶が、生成と同時に単一な配向性を有するようにする画期的な方法を提示した(J.S. Lee, Y.-J. Lee, E.L. Tae, Y.S. Park, K.B. Yoon, Science, 2003, 301, 818-821)。
【0039】
本発明の方法によると、DNLO分子は、単一配向性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャネル)内に内包される。DNLO分子のゼオライトの細孔内への内包と関連して使用される用語“単一な配向”は、前記ゼオライト自体の配向性に関連した用語“単一な配向”とは異なる意味を有する。即ち、用語“単一な配向”は、二つの異なる整列方式でDNLO分子がゼオライト細孔内に内包される様相を表現するために使用された用語である。本発明の好ましい具現例によると、前記ゼオライトに内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、ゼオライト細孔内に一つの方向にのみ配向される。択一的に、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、前記ゼオライト細孔の反対の二つの方向(both sides)に内包されており、これにより内包されたR−[D−π−A] または[D−π−A] −R分子の一部は、内包されたR−[D−π−A] または[D−π−A]−R分子の残余部分に対して反対方向(opposite orientation)に存在する。前記反対方向は、ゼオライトの中間部分でよく観察される。
【0040】
より詳細には、ゼオライトにR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子を一定な配向で内包させるということは、次のような二つの意味がある:第一、基質上に生成した連続的なゼオライトフィルムのように、一側が完全に閉鎖されたフィルムにR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子を内包させると、ゼオライト細孔の親水性または疎水性により、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、一定な配向で一方向にのみ内包されることを意味する。第二、一側が閉鎖されたフィルムではなく、細孔が両側とも開いた薄膜であるか、ゼオライト結晶である場合は、両側の細孔を通じてR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子がお互い反対の配向で内包されて、内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子がお互い反対方向に配向している場合を意味する。このような反対方向の配向性は、ゼオライトの中間部分でよく観察される。
【0041】
前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が内包される方式は、次のような方式によっても説明できる:矢印のテイルを疎水性R−グループとし、矢印のヘッドを親水性[D−π−A]とする時、第一の内包方式は、[→ →]または[← ←](即ち、ヘッド−to−テイルまたはテイル−to−ヘッド配向)で表現できて、第二の内包方式は、[→ ←]または[← →](即ち、ヘッド−to−ヘッドまたはテイル−to−テイル配向)で表現できる。
【0042】
本発明の最も大きい特徴は、双極子型非線形光学分子を変形させることである。前記変形は、DNLO分子自体に二種類の異なる部分、即ち、疎水性部分と親水性部分とを形成させることである。本発明によると、DNLO分子と関連して使用される用語“疎水性”及び“親水性”は、絶対的な意味ではない。変形させたDNLO分子自体内の二つの部分を比較して、相対的に疎水性の強い部分を疎水性部分といい、相対的に親水性の強い部分を親水性部分というのである。
【0043】
一般に、DNLO分子の母分子(parent molecule)、[D−π−A]は、親水性を示す。したがって、DNLO分子を変形させることは、母分子に疎水性部分を結合させることを意味する。
【0044】
疎水性部分を付与するR−基は、疎水性を示すアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組み合せである。好ましくは、前記Rは、C3〜C30のアルキル、C4〜C30のアルケニル、C3〜C10のシクロアルキル、またはC5〜C10のシクロアルケニルである。もし、Rがアルキル基である場合は、C9〜C30がより好ましく、最も好ましくは、C15〜C30である。
【0045】
用語“アルキル”は、直鎖または分岐鎖飽和炭化水素基を意味し、用語“アルケニル”は、指定された炭素数を有する直鎖または分岐鎖不飽和炭化水素基を示す。用語“シクロアルキル”は、環状炭化水素ラジカルを意味し、用語“シクロアルケニル”は、指定された炭素数を有して、且つ少なくとも一つの二重結合を有する環状炭化水素基を意味する。
【0046】
用語“アリル”は、全体的にまたは部分的に不飽和された置換または非置換モノサイクリックまたはポリサイクリックグループを意味し、好ましくは、モノサイクリックまたはバイサイクリックグループ、即ち、フェニルまたはナフチルグループを意味して、これらは、非置換または置換されることができて、置換される場合は、一つ以上の置換体、特に1〜3個の置換体により置換される。用語“ヘテロアリル”は、ヘテロサイクリック芳香族基であって、ヘテロ原子としてN、OまたはSを含むものであり、“アリルアルキル(アラルキル)”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリル基を意味する。用語“アルキルアリル”は、一つまたはそれ以上のアリル基からなる構造に結合されたアルキル基を意味する。用語“アリルアルケニル”は、一つまたはそれ以上のアルキル基による構造に結合されたアリル基を意味する。
【0047】
DNLO分子の母分子を変形させて製造したR−[D−π−A]または[D−π−A]−Rにおいて、R−基の結合された末端部分の反対側の末端は、[D−π−A]の相対的親水性が維持される範囲内で、他の置換基(例えば、−CH3)が結合されることができる。したがって、このように両側末端が変形されたR1−[D−π−A]−R2形態の分子も、本発明の範囲に含まれるものである。
【0048】
DNLO分子は、一般に極性を帯びており、分子により、DまたはA側が他側より相対的にもっと極性を帯びる。したがって、DNLO分子の一側末端に、疎水性を付与できるR−基を付着させると、R−基は、相対的に疎水性になり、[D−π−A]母分子は、相対的に親水性となる。したがって、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性の[D−π−A]領域と疎水性のR部分とで構成される。
【0049】
このように製造されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、その疎水性R−基方向に、疎水性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に内包される傾向が強い。即ち、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が疎水性ゼオライト細孔内に入る時は、それらの疎水性テイルが優先的に入るようになる。反対に、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、その親水性[D−π−A]部位の方向に、親水性のゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に内包される傾向が強い。即ち、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子が親水性ゼオライト細孔内に入る時は、それらの親水性ヘッド部分が優先的に入るようになる。結局、R−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子は、ゼオライト細孔内に一定な配向で内包される。
【0050】
本発明に用いられるR−[D−π−A]または[D−π−A]−R型DNLO分子の具体的な例は、次のようである:
(i)ヘミシアニン(hemicyanine: 4-[4-(dimethylamino)styryl]-1-docosyl- pyridinium bromide)系化合物
R1R2N−C6H4−(CH=CH)n−C6H4N−R3Br
【0051】
【化1】
【0052】
【化2】
【0053】
(ii)メロシアニン(merocyanine:1-docosyl-4-(4-hydroxystyryl)pyridinium bromide)系化合物
R1O−C6H4−(CH=CH)n−C6H4N−R2Br
【0054】
【化3】
【0055】
【化4】
【0056】
(iii)ニトロスチルベン(4-heptadecylamido-4’-nitrostilbene)系化合物
O2N−C6H4−(CH=CH)n−C6H4−NHC−O(R)
【0057】
【化5】
【0058】
(iv)ディスパースオレンジ3(Disperse Orange 3;4-(4-nitrophenylazo) aniline)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NR1R2
【0059】
【化6】
【0060】
(v)ディスパースオレンジ13(Disperse Orange 13;4-[4-(phenylazo)-1- naphthylazo]phenol)系化合物
R1C6H5−N=N−C10H6−N=N−C6H4−OR2
【0061】
【化7】
【0062】
【化8】
【0063】
(vi)ディスパースオレンジ25(Disperse Orange 25;3-[N-ethyl-4-(4- nitrophenylazo)phenylamino]propionitrile)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NRCH2CH2CN
【0064】
【化9】
【0065】
(vii)ディスパースレッド1(Disperse Red 1;2-[N-ethyl-4-(4- nitrophenylazo)-phenylamino]ethanol)系化合物
O2N−C6H4−N=N−C6H4−NRCH2CH2OH
【0066】
【化10】
【0067】
(vii)ディスパースレッド13(Disperse Red 13;2-[4-(2-chloro-4- nitrophenylazo)-N-ethylphenylamino]ethanol)系化合物
Cl−C6H3(NO2)−N=N−C6H4−NRCH2CH2OH
【0068】
【化11】
【0069】
(ix)ディスパースイエロー7(Disperse Yellow 7;4-[4-(phenylazo)phenylazo]-o-cresol)系化合物
C6H5−N=N−C6H4−N=N−C6H3(CH3)OR
【0070】
【化12】
【0071】
(x)メチルニトロアニリン(MNA)、N−(4−ニトロフェニル)−L−プロリノール(NPP)、(−)−2−α−メチルベンジルアミノ−5−ニトロピリジン(MBA-NP)、3−メチル−4−メトキシ−4’−ニトロスチルベン(MMONS)、2−(N−プロリノール)−5−ニトロピリジン(PNP)、及び3−メチル−4−ニトロピリジン−1−オキシド(POM)のような他の有機化合物。
【0072】
驚いたことに、本発明によりゼオライト細孔内に内包されるDNLO分子は、超分極率(hyperpolarizability constant, β値)に制限がない。本発明によると、β値が500以下のものだけではなく、500以上のDNLOもゼオライト細孔内に単一配向で内包されることができる。
【0073】
本発明の方法を、以下の実施例を参照して具体的に説明する。
【0074】
まず、ゼオライトを合成する。ゼオライト合成当時に使用された有機鋳型物質が残存する場合は、フィルム、微細結晶、または超結晶状態のゼオライトに適当な温度で酸素を供給して焼成するか、強い紫外線を照射して酸化させることにより除去する。次いで、R−[D−π−A]またはR−[D−π−A]分子を溶媒(例えば、メタノール)に溶解して、これに鋳型分子の除去された様々な形態のゼオライトを適当な時間以上浸しておく。その後、ゼオライトを取り出して、同様な溶媒で洗浄して乾燥し、R−[D−π−A]またはR−[D−π−A]分子が単一配向で内包されたゼオライトを得る。
【0075】
図11は、本発明の方法によりゼオライト細孔(即ち、ゼオライトチャンネル)内に単一配向で内包されたDNLO分子を模式的に示す。
【0076】
本発明の方法によると、超分極率(β値)に制限なく、多様なDNLO分子を実用化することができる。
【0077】
本発明は、多様な形態(例えば、フィルム、薄膜、及び超結晶)のDNLO−ゼオライト複合体を提供する。
【0078】
本発明のDNLO−ゼオライトフィルム複合体の好ましい具現例によると、ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に成長させて製造する。好ましくは、本発明のDNLO−ゼオライトフィルム複合体は、上述の本発明の方法により製造される。
【0079】
本発明のDNLO−ゼオライト薄膜複合体の好ましい具現例によると、ゼオライト薄膜は、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に整列して製造される。好ましくは、本発明のDNLO−ゼオライト薄膜複合体は、上述の本発明の方法により製造される。
【0080】
一般に、本発明のDNLO−ゼオライト複合体に内包されるDNLO分子は、超分極率(β値)に対して制限されない。好ましくは、内包されたDNLO分子は、100×10-30esu以上の超分極率(β値)、より好ましくは、300×10-30esu以上の超分極率(β値)、さらに好ましくは、400×10-30esu以上の超分極率(β値)、最も好ましくは、500×10-30esu以上の超分極率(β値)を有する。
【0081】
単一方向に内包されたDNLO分子を含む本発明のDNLO−ゼオライト複合体は、優れた非線形光学特性を示し、各種情報の貯蔵や伝達、光通信、光コンピューター、及びレーザー機器の部品など、光電子工学(opto-electronics)の多様な分野に応用可能である。
【発明の効果】
【0082】
本発明は、高いβ値を有する双極子型NLO分子を、純粋なシリカゼオライト(シリカライト−1)に高いDUAで内包させることができる新規な方法を提供する。ヘミシアニン分子の整列された内包のための無機ホストとしてのゼオライトフィルム(粉末ではない)を成功的に利用した本発明は、NLO分子を含むゼオライトがSHG物質として開発されることができるということを明確に示している。
【0083】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明なことであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
[実験材料]
n−アルキルブロマイドのシリーズ(CnH2n+1Br)は、TCI(n=3,6,9,12,15,及び18)及びAldrich(n=22)から購入した。1−テトラコシルブロマイド(n-C24H49Br)は、該当するアルコール(Aldrich)から次のような過程を通じて製造した。トリフェニルホスフィン(95mg、0.36mmol)及びカーボンテトラブロマイド(120mg、0.36mmol)を順次ジクロロメタン溶液(50mL)に加え、1−テトラコサノール(60mg、0.17mmol)で溶解した後、混合物を室温で12時間攪拌した。真空処理により溶媒を除去した後、生成された1−テトラコシルブロマイドをカラムクロマトグラフィーにより反応混合物から分離した。4−4−(ジメチルアミノ)スチリルピリジン(Aldrich)、テトラエチルオルトシリケート(TEOS、Acros)、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2、Kanto)、及びテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH、Aldrich)は、購入後、直に使用した。n−オクタデカン及びn−ヘプタデカンは、PolyScience Corporationから購入して使用した。4−ニトロアニリンは、Aldrichから購入して使用した。
【0085】
[実施例I]:4−4−(ジメチルアミノ)スチリル−1−n−アルキルピリジウムブロマイド(HC-n)の製造
HC−n非線形色素は、4−4−(ジメチルアミノ)スチリルピリジン(1mmol)及び該当する1−ブロモアルカン(1mmol)のアセトニトリル溶液(25mL)を、初期無色の溶液が黒赤色になるまで、様々な時間還流して製造した(例えば、HC-18は、六日が所要された)。それぞれの反応混合物から溶媒を真空下で除去した。エチルアセテート(100ml)を、初期生成物を含む反応フラスコに投入した後、シリカゲルカラムの上部に反応混合物を投入した。未反応出発化合物を除去するために、純粋なエチルアセテートが前記カラムから収集されるまで、多量のエチルアセテートを前記カラムに通過させた。多量のメタノールを前記カラムに通過させて赤色のメタノール溶液を収集することにより、残余赤色の塩をシリカゲルから分離した。メタノールを蒸発させて赤色の生成物を分離させた。生成物を微量のメタノールに再溶解した後、溶液が濁るまでエーテルを添加した。濁った溶液を−20℃で一晩中保管し、ガラス容器の下部に沈殿されたHC−n微細結晶を得て、これを濾過して収集した。収率は、一般的に60%以上であった。元素分析、マトリックス−補助レーザー着脱イオン化時間−of−フライト(MALDI-TOF)質量分析データ、1H and 13C NMRスペクトル、及びFT-IR(Fourier-Transform infrared)スペクトル結果は、生成物が所望のHC−n非線形色素であることを明確にした。
【0086】
[実施例II]:ハイパーレイリー散乱(Hyper Rayleigh Scattering, HRS)による超分極率(β)測定
βHC-nのn=6、12、及び22の超分極率は、PNA値(βPNA=34.5±4×10-30esu、in methanol at 1064nm)と比較して間接的に決定した23,24。HC−n(n=6, 12, 及び22)及びPNAの取り乱したSH信号強度[それぞれIout(HC-n)及びIout(PNA)で表示]をHC−n(0.1〜0.5mM)及びPNA(0.1〜30mM)の多様な濃度で測定した。実験装置は次のようである:メタノール溶液に溶いてある非線形色素が入っている石英セル(経路長1cm)を、50cmの焦点長を有する凸レンズから40cmの距離に、モード−ロックNd:YAGレーザービーム(1064nm, 10Hz repetition rate, 40-ps pulse width)のレーザー経路に沿って位置させた。HC−n非線形色素により生成されたSH波(532nm)の吸収が最少となるよう、レーザーがセル前面の最右末端を通過するようにセルを位置させた。広がって取り乱したSH信号を3cmレンズで収集し、収集されたビームをモノクロメーターに通過させて、それぞれの波長による信号を収集した後、光増倍管(PMT)を利用して大きさを測定した。
【0087】
図1Aは、PNAのHRS信号を示す。HC−n非線形色素は、〜600nmで最大値の光発光を強く示すが、これは、HC−n非線形色素による入射ビームのマルチ光子吸収のためであって、図1Bは、HC−18の場合を典型的に示す。結果的に、図1Cから分かるように、HC−nのHRS信号は、強い多光子吸収による光発光曲線の前部に重なって出る。したがって、デコンボリューション(deconvolution)により、HRS信号だけが抽出された。
【0088】
[実施例III:シリカライト−1フィルムの製造]
ポーラスステンレススチール、ポーラスアルミナ、及びポーラスバイコールガラスディスクのようなポーラス基質、そしてテフロン(登録商標)、銀、及びシリコンのようなノンポーラス基質上に、ZSM−5及びシリカライト−1フィルムを成長させることは、当業界に公知されている26。本発明者らは、文献に記載の方法及び合成ゲルの組成を変形して、平面ガラス上にZSM−5及びシリカライト−1フィルムを成長させた。比較のために、ガラス板上に、異なるSi/Al比率を有するZSM−5フィルムを成長させた。
【0089】
5個のガラス板(25×70×1mm3)を合成ゲルに含浸させた後、テフロン(登録商標)−ラインドオートクレーブで5時間140℃で加熱し、シリカライト−1フィルムをガラス板上に成長させた。前記合成ゲルは、シリコン源(source)であるテトラエチルオルトシリケート(TEOS、Aldrich)、ゼオライト合成の鋳型物質であるテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH、ACROS)、及び水が、モル比で0.8:0.1:50に存在する。前記合成ゲルは、TPAOH溶液(150mL、0.11M)を含むプラスチックフラスコに、TEOS(28.3g)を攪拌しながら添加して製造した。前記ゲルを12時間激しく攪拌しながら室温で熟成させた後、ガラス板の含浸前にテフロン(登録商標)−ラインドオートクレーブに移しておいた。収得したシリカライト−コーティングガラス板(SL/Gs)を多量の水で十分洗浄した後、室温及び大気中で乾燥した。得られたSL/Gsを〜25×18×1mm3サイズとして4片に切断した後、450℃で12時間焼成し、非線形色素を混入する前にTPA鋳型を除去した。それぞれのシリカライト−1フィルムの厚さは、その断面の走査電子顕微鏡(SEM)像を得てモニタリングした。また、厚いフィルム(≧〜1μm)は、合成ゲルでの含浸時間を増加させるか、またはゼオライトフィルムでコーティングされたガラス板に、新しいゲルで所望の時間再含浸させて得ることができる。
【0090】
また、異なるSi/Al比率(50、25、及び17)を有するZSM−5フィルムは、ゲル組成を変更してガラス板上で成長させた。ゲル組成は、それぞれ、TEOS:NaAlO2:TPAOH:H2O=7:0.14:1:300、7:0.28:1:300、及び7:0.42:1:300であった。熟成時間及び反応温度は、それぞれ5時間及び180℃に固定して、反応時間は、それぞれ4、4.3、及び5時間であった。ZSM−5フィルムのSi/Al比率は、EDX(energy dispersive X-ray analysis)で決定した。
【0091】
[実施例IV:SL/G及びZSM−5フィルム内へのHC−n混入]
相違なるHC−nのメタノール溶液(10mL、1mM)を含むそれぞれのバイアル(25mL capacity)に、二つのSL/Gsを添加し、バイアルを所望の時間(例えば、一日間、1週間、3週間)室温で保管した。平衡をなさせた後、SL−Gsを溶液から除去し、多量の新しいメタノールで洗浄した後、空気中で乾燥した。SHG活性の比較のために、同一浴のSL/Gsを利用して、フィルムの特徴的要素、例えば、厚さ、シリカライトフィルムによるガラスの塗布程度、フィルムの配向、及びフィルムの形状などを、できるだけ類似するようにした。また、それぞれのSL/Gから小さい部位を取った後、SEMでフィルムの特徴的要素を分析し、上記の特徴的要素が各試料間において実質的に類似していることを確認した。
【0092】
同様に、Si/Al比率が50及び25であるZSM−5フィルムにHC−18を含ませた。
【0093】
[実施例V:HC−n−SL/G内のSL/G及びHC−nの混入量の定量的分析]
SL/Gs内に混入されたHC−n非線形色素は、次のような過程により、定量的に分析された。フルオロ酸の希釈された水溶液(1mL、蒸留脱イオン水0.8mL及び49%HFの0.2mL混合物)を、HC−n−SL/Gを含む50−mLプラスチックビーカーに添加した。混合物を室温で5分間ていねいにスワーリングした後、NaOH水溶液(1mL、5M)を添加し、前記溶液を中性化した。前記中性溶液にメタノール(8mL)を順次添加し、溶液内の全ての非線形色素の溶解をしっかりとした。溶液からガラス基質を除去した後、溶液を遠心分離してシリカ粒子を沈澱させた。分光測定のために、石英セル対の一つに清い上清液を入れた。定量的分析の正確性を向上させるために、抽出された溶液の濃度とほぼ等しい濃度のそれぞれのHC−nのモル吸光係数を独立的に決定した。そして、(010)平面の単位セルの寸法が2.007×1.342nm2であり、各単位セルは、二つのストレートチャンネルを有しているという事実に基づき27、それぞれのSL/G(〜25×18mm2)の面積を2.007×1.342nm2に分けて、SL/Gが二つのフィルムを有することを考慮し、それぞれのSL/G内のストレートチャンネルの数を得た。
【0094】
[実施例VI:HC−n−SL/GのSH強度の測定]
屈折率が一致する流体として、DMSOの一滴をHC−n−SL/Gの各面に滴下して、HC−n−SL/Gの各面をガラス板(25×18×1mm3)で覆った。シリカライト−1フィルムの不規則な厚さによる入射レーザービームの散乱を抑えることが必須的である。ビームスプリッターと光ダイオードは、基本ビーム(1064nm)の揺動による強度変化を補償するために使用した。基本レーザービームの偏光は、試料に入射する前に半波長板を利用して調節した。入射ビームの電場ベクターは、入射面に対して水平(p-偏光)または垂直(s-偏光)であった。プリズム及びSH(532nm)パスフィルターを利用して、SHビームだけがPMTに入るようにした。発生したSH信号の偏光方向(p-偏光)を確認するために、PMTの前に検光板を利用した。HC−n−SL/Gを、ステップモーターに連結された回転器に載せて回転させながら、PMTを利用して入射角により測定した。3mm厚Yカット石英結晶(結晶性y-軸に対し垂直をなす平面を有して、平面の厚さが3mmであるもの)28を、試料から発生するSH信号の相対的強度を決定するための基準物質として利用した。HC−n−SL/GのSH信号は、サンプルの不均一による誤差を減らすために、3ヶ所の異なる位置に入射させて、平均強度を求めた。
【0095】
[実施例VII:装置を利用した測定]
ゼオライト及びゼオライト−コーティングガラス板のSEM像は、FE−SEM(Hitachi S-4300)20kVの加速電圧により得た。白金/パラジウム合金 (8:2)を試料上部に約15nm厚でコーティングした。試料のEDX分析は、前記FE−SEMに連結されたHoriba EX-220 Energy Dispersive X-ray Micro Analyzer (Model:6853-H)を利用して行った。ゼオライトフィルムの同定のためのX−線回折パターンは、Cu Kα X−線を使用するX−線回折器(Rigaku回折器 D/MAX-1C, Rigaku)を利用して得た。試料のUV−visスペクトルは、Shimadzu UV-3101PCを利用して得た。FT−IRスペクトルは、Jasco FT/IR 620を利用して得た。HC−n非線形色素の1H and 13C NMRスペクトルは、Varian Jemini 500 NMRスペクトロメーターを利用して得た。HC−n dyesの元素分析は、Carlo-Erba EA1108を利用して行った。質量分析データは、Applied Biosystem MALDI TOF mass spectrometer(Proteomics Solution I Voyager-DE STR)を利用して得た。シリカライト−1に内包されたn−オクタデカンの量に対する分析は、フレームイオン化検出器が装着されたHewlett Packard 6890 series gas chromatographを利用して行った。基本的なレーザーパルス(1064 nm, 40-ps pulse width, and 10-Hz repetition rate)は、Continuum PY61 mode-locked Nd-YAG laserを利用して生成させた。
【0096】
[実験結果]
[SL/G及びZSM−5フィルムの特性]
シリカライト−1フィルムは、ガラス板の両側面によく成長して、この際、配向は、b−軸(ストレートチャンネル)がガラス板に対して垂直をなした。したがって、図2Aから分かるように、回折線は、結晶の(0 2 0)、(0 4 0)、(0 6 0)、(0 8 0)、及び(0 10 0)面に該当する規則的な間隔に(2=8.85, 17.8, 26.85, 34.85, 及び45.55°)現れた。前記規則的な空間のX−線回折パターンが、未知のゼオライトフィルムの形成によらずに、ガラス板に対してb−軸垂直であるシリカライト−1フィルムの配向により招来されたものであることを確認するために、前記フィルムをガラス板から剥がし出して、微細粉末にした後、フィルムの特性を分析した。
【0097】
粉末のX−線回折パターンは、前記粉末が純粋なシリカライト−1からなったことを表す(参照:図2Aの内部図面)。図2B及びCのSEM像は、シリカライト−1フィルムが基質面に対してb−軸に配向されていることを追加的に示している。典型的な厚さは、400〜500nmであって、実験に利用されたSL/Gの厚さは、約400nmであった。
【0098】
フィルムの質は、合成ゲル内のAl量が増加するほど劣化した。したがって、b−配向されたMFI−型フィルムにより塗布されたガラス板の塗布程度は、Al量が増加するほど減少し、Si/Al比率が∞、50、及び25である場合、93、81、及び57%であった。上記実験条件下で、ZSM−5フィルム厚は、約400nmであった。
【0099】
[n=6、12、及び22に対するβHC-n]
SH強度(Iout)及び入射ビーム強度の二乗(Iw2)の比率を示すグラフを、PNA及びHC−n(n=6、12及び22)に対して、それぞれ作った(図4)。図4から確認できるように、βHC-n値は、nに関係なく同一である。βPNA(34.5±4×10-30esu)23,24の知られた値を適用すると、βHC-n値は、1064nmで765±89×10-30esuに決定された。前記βHC-n値は、Ashwellらにより発表されたもの4に類似している。
【0100】
[シリカライト−1及びZSM−5フィルムのチャンネル当たりHC−nの混入数(Nc)及びHC−nの長さ]
それぞれのHC−nの1mM溶液内にSL/Gを1週間含浸した後、測定されたNc、即ち、チャンネル当たり内包されたHC−n分子の数は、表1に記載されている。Ncは、nが3から6に増加するほど増加したが、追加的にnがさらに増加した場合は、速い速度で減少した。一方、Na−ZSM−5フィルム内へのHC−18のNcは、Al量が増加するほど増加した。例えば、SL/G内へのHC−18のNcは、3.5であったが(表1)、Na−ZSM−5フィルム(Si/Al=50及び25)内へのNcは、それぞれ3.9及び4.4であった。このような現象は、陰電荷チャンネル内への陽電荷HC−18非線形色素の混入が、Na+のイオン交換により促進されるからであると推定される。
【0101】
HC−nの光学特性、及びシリカライトフィルム内に内包された量に対するアルキル鎖長の影響
【0102】
【表1】
【0103】
前記表1において、aは、シリカライト−1フィルムの各チャンネル内にあるHC−nの数、b及びcは、Yカット3mm厚の石英結晶に対する%、dとeは、pm V-1で表されて、fは、HC−nの一定な配向程度を示し、d33値の実験値/理論値の比率で定義される。
【0104】
[シリカライト−1チャンネル内へのHC−nの非可逆的内包]
無色のSL/Gsは、HC−nのメタノール溶液に含浸されて、徐々にピンク色に変わった。HC−nがSL/Gs内に容易に内包されることは、DMSO−コーティングされたHC−n−SL/GsのUV−visスペクトルにより確認されて、これは、メタノール内のHC−nのスペクトルと同様なものである(参考:図3B for HC-18)。最も大きいNCを有するHC−6の場合、時間による非線形色素の混入量を測定した(図5)。その結果、混入速度は、4時間前が高く、4時間以後は、非常に減少された。
【0105】
面白いのは、もし非線形色素がシリカライト−1チャンネルに入ると、チャンネルから抜け出て、溶液に再び入らないということである。例えば、479nmにおけるHC−3−SL/G及びHC−18−SL/Gsの可視バンドの強度は、三日間新しいメタノールに保管した後にも減少されなかった。このような結果は、シリカライト−1チャンネルがHC−n非線形色素に対して、非常に強い親和度を表すことを示し、これは、シリカライト−1チャンネルへのHC−nの混入は、非平衡過程で且つ非可逆的過程である。
【0106】
HC−n−SL/Gsの場合とは逆に、混入されたHC−18の29%は、NaClO4の1Mメタノール溶液に24時間含浸した場合、ZSM−5フィルム(Si/Al=50)から溶液に抽出された。このような結果は、HC−nカチオンの大部分は、イオン交換によりZSM−5チャンネルに混入されたことを示す。
【0107】
[HC−n−SL/GのI2w、d33、及びd31]
相対的I2w(Yカット3mm厚の石英に対する%で表示)は、入射ビームの偏光方向により、より細部的には、Ipp及びIspで表されて、前者及び後者は、それぞれp−偏光及びs−偏光された基本レーザービームから発生したp−偏光されたSHビームの強度を示す。入射ビームの角(表面垂直に対する)対Ipp及びIspの典型的なグラフは、図6Aに示されている。他の全てのHC−n−SL/Gsは、ほとんど同一なプロフィル(profiles)傾向を示した。プロフィル内の完全な相殺干渉(destructive interferences)は、ガラス板の二つの面上にある二つのシリカライト−1フィルムがほとんど同一であることを示す。Ipp及びIspが最大値を示す平均角は、それぞれ67.4°と55.9°である。
【0108】
Ipp値は、0.1〜7.9%の範囲であり、Ispは、0.4×10-4〜3.0×10-4%である(参照:表1)。 Ipp値がIspより約104倍程度大きいということは、非線形色素の大部分が、ガラス表面に垂直をなす長い軸に沿って位置していることを示すものであり、これは、ストレートチャンネルの大部分がガラス表面に対して垂直に配向されたという上述の事実と一致するものである(図2)。
【0109】
一般に、HC−n−SL/GsのIpp値は、n≧9の時よりn≦6の時、比較的小さかった。たとえ差は小さいが、nが3から6に増加すると、Ncは、約4倍ほど増加するにもかかわらず、Ippは、0.3から0.1に減少する傾向を示した。このような結果は、HC−6は、HC−3よりもっと無作為な配向性を有するシリカライト−1チャンネルに入ることを示す。しかしながら、nが6から18に増加すると、Ncが減少するにもかかわらず、Ippは、漸進的に0.1から7.9%に増加する。面白いことに、nが18から22及び24に増加すると、Ippは、急激に7.9から0.9及び1.9%に減少するが、これは、Ncの急激な減少と一致することである。たとえ変化される傾向は小さいが、Isp値もnが増加するにつれて、Ippと同様な傾向を示した。
【0110】
HC−n−SL/Gsの2次非線形感受率の二つのテンソル、d33及びd31は、Makers fringe方法25により、実験的に観察された相対的Ipp値及びIsp値を、3mm厚Yカットの石英(d11は、0.3pmV-1)の強度と比較して決定した。1.48は、シリカライト−1フィルムの屈折率として利用したが、これは、DMSOが良好な屈折率一致流体として作用できるという事実に基づいたものであって、DMSOの屈折率は、20℃で1.48である。値は、表1に記載されており、図6Bに図示されている。Ippと同様に、nが3から6に増加するにつれて、d33値は、初期には減少したが、nが6から18に増加するにつれて漸進的に増加し、追加的にnが増加すると、急激に減少した。しかしながら、d33/NCは、nが増加するにつれて漸進的に増加した(表1及び図6C)。前記結果は、SL/Gsの他の配置に対しても、非常に再現反復性がある。上記の現象は、HC−n分子が疎水性シリカライト−1チャンネルに入る時、疎水性テイルの長さが増加するほど疎水性テイルが優先的に入る傾向が増加するために発生するものであると、本発明者らは結論づけた。
【0111】
HC−18の内包されたZSM−5フィルムのIpp値は、それぞれ1.7及び0.5%であった。明らかにZSM−5フィルムのNc値がSL/G値より大きいにもかかわらず、Ipp値は、HC−18−SL/G(7.9%)の値より遥かに小さかった。Ipp値がHC−18−SL/Gより小さい明白な要因の一つは、b−配向されたフィルムによるガラス板の塗布がより劣悪であるからである。しかしながら、ZSM−5フィルム(Si/Al=50)のガラス板への低い塗布率(81%)を考慮しても、最終的なIpp値は、期待値よりあまりにも低い。このような現象は、骨格内にあるアニオン中心を相殺するためのカチオンによりチャンネルの疎水性が増加して、これにより、ZSM−5のチャンネル内に、HC−18が無作為に配向された混入が増加することにより発生したとして推測される。このような観察事実に基づいて、本発明者らは、SL/Gs内へのHC−nの整列された混入に、より集中をした。
【0112】
計算されたd33/d11は、85より大きく、平均値は、109である。これは、非線形色素をLBフィルムに形成したものより2〜5倍大きい値であり、高分子に内包されたNLO非線形色素をポリングさせたものより30〜50倍大きい値である。d33/d11の平均値から、シリカライトフィルムに内包されたHC−nの場合、HC−nのヘッド部分とシリカライトチャンネルに7.7°程度の傾斜を有して存在することを予測した。
【0113】
整列度sは、次の式により定義し、
s=[3<cos2θ>−1]/2
θ=7.7値を代入すると、平均値は、0.97である。ポリングさせた高分子の場合、その平均値は、0.3に過ぎない。この値は、有機DNLO物質を利用したいかなるデバイスより著しく高い値を示している。
d33=NβHC-n<cos3θ>l3/2 (1)
d31=NβHC-n[<cosθ>−<cos3θ>l3/4 (2)
【0114】
[nの増加によるHC−nの一定な整列程度(Degree of Uniform Alignment:DUA)の増加]
上記のようにして、シリカライトフィルムの厚さと内包されたDNLO分子数、DNLO分子のβ値、そして(1)に代入して理論的なd33値を得ることができた。理論的なd33値は、14.40(3)、70.71(6)、24.48(9)、18.13(12)、13.31(15)、8.03(18)、1.88(22)、そして2.71pm/V(24)を示している。実験的に得たd33値を理論的なd33値で除してDUAとして定義し、この値を表1に示した。このようにnが増加するほどDUAが増加されることを図6Dに示した。この結果は、HC−nの疎水性基であるテイル部分が、強い疎水性性質を有するチャンネル内部に選択的に入っていることの証拠となる。そしてd33/Nc値が、nが増加するにつれて大きくなっているということは、同様な原因によるものである。
【0115】
DUAの最小値(n=6の場合、0.01)と最大値(n=24の場合、1.34)とを比較してみると、約98倍もの差がある。DUA値の最大値が1より少し小さく出たが、これは、理論的な値と実験値とがほぼ一致していることを示唆している。
【0116】
一連の独立的な実験において、HC−18−SL/GのSHG強度は、HC−18の添加量が増加するほど増加することを確認した。Nc1.2、1.7、2.2、3.0、及び3.8に対して観察されたSHG強度は、それぞれ0.7、1.6、2.6、4.7、及び7.5%であった。この実験結果は、図7に示されている。
【0117】
上述のように、内包されたHC−18のNcが増加するほど、SHG強度が増加している。SHG強度は、DNLO分子の数密度の二乗に比例することを考慮すると、前記結果は、量に関わらず同一なDUA値を有してHC−18分子がシリカライト−1チャンネル内部に入ることを示すものである。HC−18のd33値(5.3pmV-1)は、石英(0.3pmV-1)、またはKDP(約3pmV-1)のd33値より約10倍大きい値を示すが、LB−フィルムのd33値よりは小さい値である。自己組立て分子フィルムのd33値よりHC−n−SL/Gsのd33値が小さい理由は明白であるが、その理由は、400nm厚のシリカライト−1フィルムにおいて、HC−n分子の密度が非常に小さいからである。高いDUA値を有する長鎖のHC−n分子の場合、特にそうである。即ち、HC−24−SL/Gの小さいd33値は、DNLO分子の非常に小さいNから由来するものである。
【0118】
また、本発明のDNLO分子−ゼオライト複合体は、長期間の高い熱的及び機械的安定性を示すが、このような特性は、LB及びポリング(poled)された重合体NLOフィルムでは欠如されている特性である。例えば、HC−n−SL/Gsは、1年間大気中に保管するか、または120℃のオーブンで24時間保管しても、さらには、爪先で表面を数回擦っても、初期のSHG値を維持する。
【0119】
例えば、HC−24−SL/Gの場合、Ncは、重要な要素である。HC−24−SL/GにおけるHC−24、そしてLBフィルムにおけるHC−18により占められる体積((1.35nm2×400nm)/(0.42nm2×3.5nm)=367、該当d33値の比率、2.6/750=1/300)を比較してみると、HC−24−SL/Gの低いd33値は、非常に低いN値から由来したことが分かる。しかしながら、それぞれのシリカライト−1チャンネルにたくさんのHC−24が含まれる場合も、それぞれのシリカライト−1チャンネルの体積は変わらないため、本発明の方法は、より多い数のHC−22及びHC−24をチャンネルに内包させることにより、非常に高いd33値を有する無機−有機複合体NLOフィルムを製造することができる。このような技術的達成は、より広いチャンネル及び単一配向性を有するシリカゼオライトを利用することにより達成することができる。また、本発明のHC−n−SL/Gsは、長期間の高い熱的及び機械的安定性を示すが、このような特性は、LB及びポリング(poled)された重合体NLOフィルムでは欠如されている特性である1,2。例えば、HC−n−SL/Gsは、1年間大気中に保管するか、または120℃のオーブンで24時間保管しても、さらには、爪先で表面を数回擦っても、初期のSHG値を維持する。
【0120】
以上、本発明の特定な部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、本発明の範囲がこれらに限定されないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1A】PNA(para-nitroaniline)のメタノール溶液(0.9mM)のHRS(Hyper Rayleigh Scattering)信号を示す。
【図1B】HC(hemicyanine)−18のメタノール溶液の光発光スペクトルである。
【図1C】HC−22のメタノール溶液(0.3mM)のHRS信号を示し、この信号は、強い光発光エンベロープの前部に重なって現れて、1064nmレーザーパルスによるそれぞれの試料の照射により発生される。
【図2A】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のX−線回折パターンである。小さい図面は、SL/Gをスクラッピングして収集したフィルムを細かく擦って得たシリカライト−1粉末に対するX−線粉末回折パターンを示す。
【図2B】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のSEM写真(断面)である。
【図2C】ガラス板上にb−軸に整列されたシリカライト−1フィルム(SL/G)のSEM写真(平面)である。
【図3】0.02mM HC−18(パネルA)、反射角マッチング流体であって、DMSOでコーティングされたHC−18−SL/GP(パネルB)、及びHC−18−SL/GPから抽出されたHC−18のメタノール水溶液に対するUV−visスペクトルである。
【図4A】PNAの取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4B】HC−6取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4C】HC−12の取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図4D】HC−22の取り乱したSH(2次調和波)放射の強度(Iout)を示すグラフである。
【図5】SL/Gの含浸後、HC−6の上清液(1mM)の、479nmにおける吸光度変化を示すグラフである。
【図6A】入射光の角度に対するHC−18−SL/GのIpp及びIsp(内部グラフ)のグラフ(Y-カット3mm石英の該当値に対し、%で示す)である。
【図6B】nに対するd33)のグラフである。
【図6C】nに対するd33/Ncのグラフである。
【図6D】nに対するd33(E)/d33(T)のグラフである。
【図7】HC−18−SL/GのSH強度とNcとの相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト結晶を示すSEM写真である。
【図9A】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9B】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9C】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図9D】本発明者らにより製造された単一配向性を有するゼオライト超結晶を示すSEM写真である。
【図10】本発明者らにより製造された単一配向性を有する基質上のゼオライトフィルムを示すSEM写真である。
【図11】ゼオライト細孔内に単一方向に内包された双極子型非線形光学(DNLO)分子を示す模式図である。
【0122】
参考文献
【図1a】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)双極子型非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子の母分子([D−π−A])の末端にR−基を付着させて、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rを製造する段階;及び(b)前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rをゼオライト細孔内に内包させる段階を含み、
前記Rは、疎水性を有し、前記母分子([D−π−A]は、親水性を有して、前記母分子において、Dは、電子供与部分、Aは、電子受容部分を示し、前記Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組合せであり、
前記ゼオライト細孔が疎水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、疎水性を示すR−基の方にゼオライト細孔に内包されて、前記ゼオライト細孔が親水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性を示す[D−π−A]の方にゼオライト細孔に内包されて、ゼオライト細孔内に内包されたDNLO分子が一定な配向を有することを特徴とする、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学分子を単一配向で内包させる方法。
【請求項2】
前記ゼオライトは、(i)天然及び合成ゼオライト;(ii)ゼオライト骨格のシリコン元素全部または一部を他の元素で置換した分子ふるい;(iii)ゼオライト骨格のアルミニウム元素を他の元素で一部または全部置換した分子ふるい;(iv)前記(ii)と(iii)の変形を組合わせた分子ふるい;(v)多孔性金属またはシリコン酸化物またはこれらの複合酸化物;及び(vi)種々の元素を単独または複合的に使用して製造した多孔性分子ふるいからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライトは、(i)基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたフィルム、(ii)基質上に存在する単層または多層のゼオライト微細結晶の薄膜、または(iii)ゼオライト微細結晶の2次元または3次元的集合体(aggregate)の超結晶の形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトは、単一の配向性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトに内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、ゼオライト細孔内に一つの方向にのみ配向されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、前記ゼオライト細孔の反対の二つの方向(both sides)に内包されており、これにより内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子の一部は、内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトフィルム内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライトフィルム複合体において、前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたものであって、前記内包されたDNLO分子は、一つの方向にのみ配向されて存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項8】
前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に成長させて製造したことを特徴とする、請求項7に記載のDNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項9】
前記複合体は、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項7に記載のDNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項10】
ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造して、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項11】
ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項12】
前記ゼオライト薄膜は、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に整列して製造されたことを特徴とする、請求項10または11に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項13】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項10に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項14】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項11に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項15】
ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列して製造したゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項16】
ゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含む DNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであって、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対して反対方向に存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項17】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項15に記載のDNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項18】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項16に記載のDNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項19】
前記内包されたDNLO分子は、100×10-30esu以上の超分極率(β値)を有することを特徴とする、請求項7、10、11、15、及び16のいずれかに記載の複合体。
【請求項20】
前記内包されたDNLO分子は、500×10-30esu以上の超分極率(β値)を有することを特徴とする、請求項19に記載の複合体。
【請求項1】
(a)双極子型非線形光学(dipolor nonlinear optical:DNLO)分子の母分子([D−π−A])の末端にR−基を付着させて、R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rを製造する段階;及び(b)前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rをゼオライト細孔内に内包させる段階を含み、
前記Rは、疎水性を有し、前記母分子([D−π−A]は、親水性を有して、前記母分子において、Dは、電子供与部分、Aは、電子受容部分を示し、前記Rは、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリル、ヘテロアリル、アリルアルキル、アリルアルケニル、アルキルアリル、または前記官能基の組合せであり、
前記ゼオライト細孔が疎水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、疎水性を示すR−基の方にゼオライト細孔に内包されて、前記ゼオライト細孔が親水性を示す場合は、前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−Rは、親水性を示す[D−π−A]の方にゼオライト細孔に内包されて、ゼオライト細孔内に内包されたDNLO分子が一定な配向を有することを特徴とする、ゼオライト細孔内に双極子型非線形光学分子を単一配向で内包させる方法。
【請求項2】
前記ゼオライトは、(i)天然及び合成ゼオライト;(ii)ゼオライト骨格のシリコン元素全部または一部を他の元素で置換した分子ふるい;(iii)ゼオライト骨格のアルミニウム元素を他の元素で一部または全部置換した分子ふるい;(iv)前記(ii)と(iii)の変形を組合わせた分子ふるい;(v)多孔性金属またはシリコン酸化物またはこれらの複合酸化物;及び(vi)種々の元素を単独または複合的に使用して製造した多孔性分子ふるいからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ゼオライトは、(i)基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたフィルム、(ii)基質上に存在する単層または多層のゼオライト微細結晶の薄膜、または(iii)ゼオライト微細結晶の2次元または3次元的集合体(aggregate)の超結晶の形態を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトは、単一の配向性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトに内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、ゼオライト細孔内に一つの方向にのみ配向されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記R−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子は、前記ゼオライト細孔の反対の二つの方向(both sides)に内包されており、これにより内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子の一部は、内包されたR−[D−π−A]または[D−π−A]−R分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ゼオライトフィルム内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライトフィルム複合体において、前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を成長させて製造されたものであって、前記内包されたDNLO分子は、一つの方向にのみ配向されて存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項8】
前記ゼオライトフィルムは、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に成長させて製造したことを特徴とする、請求項7に記載のDNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項9】
前記複合体は、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項7に記載のDNLO−ゼオライトフィルム複合体。
【請求項10】
ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造して、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項11】
ゼオライト薄膜内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト薄膜複合体において、前記ゼオライト薄膜は、ゼオライト微細結晶を整列させて基質上に単層または多層を形成させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対し、反対方向に存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項12】
前記ゼオライト薄膜は、基質上にゼオライト微細結晶を単一方向に整列して製造されたことを特徴とする、請求項10または11に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項13】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項10に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項14】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項11に記載のDNLO−ゼオライト薄膜複合体。
【請求項15】
ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列して製造したゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含むDNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであり、前記内包されたDNLO分子は、単一配向性を有して存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項16】
ゼオライト超結晶内に内包されたDNLO(双極子型非線形光学)分子を含む DNLO−ゼオライト超結晶複合体において、前記ゼオライト超結晶は、ゼオライト微細結晶を2次元または3次元的に一定な方向に整列させて製造したものであって、前記内包されたDNLO分子の一部は、前記内包されたDNLO分子の残余部分に対して反対方向に存在することを特徴とする、DNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項17】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項15に記載のDNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項18】
前記複合体は、前記請求項1乃至5のいずれかに記載の方法により製造されたことを特徴とする、請求項16に記載のDNLO−ゼオライト超結晶複合体。
【請求項19】
前記内包されたDNLO分子は、100×10-30esu以上の超分極率(β値)を有することを特徴とする、請求項7、10、11、15、及び16のいずれかに記載の複合体。
【請求項20】
前記内包されたDNLO分子は、500×10-30esu以上の超分極率(β値)を有することを特徴とする、請求項19に記載の複合体。
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図1C】
【図2A】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−514049(P2007−514049A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545235(P2006−545235)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003310
【国際公開番号】WO2005/056176
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505463456)インダストリー−ユニバーシティ コオペレーション ファウンデーション ソギャン ユニバーシティ (9)
【氏名又は名称原語表記】Industry−University Cooperation Foundation Sogang University
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003310
【国際公開番号】WO2005/056176
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505463456)インダストリー−ユニバーシティ コオペレーション ファウンデーション ソギャン ユニバーシティ (9)
【氏名又は名称原語表記】Industry−University Cooperation Foundation Sogang University
【Fターム(参考)】
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