説明

ゼオライトの製造方法

【課題】100℃未満の低温でゼオライトを成長させ、単一骨格を持ったゼオライトを生成することが可能なゼオライトの製造方法の提供。
【解決手段】粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合し(S10)、加熱して、発泡ガラスの溶解液(ガラス溶解液)を得る発泡ガラス溶解工程(S11)と、ガラス溶解液に対してアルミナ源を混合攪拌し(S12)、加熱してゼオライト化するゼオライト化工程(S13)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ガラスから合成するゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼオライトは、石炭灰などの焼却灰にアルカリ水溶液を加え、加熱処理することにより製造している。例えば、特許文献1には、主原料となる石炭灰にSiO2源またはAl23源となる副原料を添加し、アルカリ水溶液と攪拌混合し、温度調整しながら原料中のSiO2,Al23成分をアルカリ水溶液中に溶解させ、加熱処理する方法が記載されている。
【0003】
また、非特許文献1には、鋳物廃砂からケイ酸ナトリウムを、アルミスラッジからアルミン酸ナトリウムを調製し、これらの混合液を攪拌しながらオートクレーブで100℃、3時間反応させることにより、ゼオライトを合成する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4461322号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】〔電子的技術情報の場合〕吉野敦郎、島田紀元、杉山和夫、鈴木昌資,“鋳物廃砂からの高機能型ゼオライトによる酸素濃縮供給装置の開発”,埼玉県産業技術総合センター研究報告,[平成22年6月30日検索],[online],2005年,埼玉県産業技術総合センター,インターネット<URL:http://www.saitec.pref.saitama.lg.jp/research/h16/2004_502K.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来のゼオライトは石炭灰や鋳物廃砂のような粒状物に対してアルカリ源およびアルミナ源を混合攪拌し、加熱することにより製造しているが、早く反応させるために加熱温度を100℃以上に高くしている。しかしながら、このように高温で反応させた場合、ゼオライト結晶の成長が安定せず、単一骨格を持ったゼオライトが生成しにくい。
【0007】
そこで、本発明においては、100℃未満の低温でゼオライトを成長させ、単一骨格を持ったゼオライトを生成することが可能なゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゼオライトの製造方法は、粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合し、加熱して、発泡ガラスの溶解液(以下、「ガラス溶解液」と称す。)を得る発泡ガラス溶解工程と、ガラス溶解液に対してアルミナ源を混合攪拌し、加熱してゼオライト化するゼオライト化工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明のゼオライトの製造方法では、発泡ガラス溶解工程とゼオライト化工程とを別工程で行うようにし、発泡ガラス溶解工程では、粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合する。この粒径30〜100μmの発泡ガラスには内径1〜20μmの気孔が存在するため、アルカリ源を混合した際に、アルカリ源がこの気孔中に浸透する。そのため、アルカリ源と発泡ガラスとの接触面積が大きく、ケイ素の溶出反応が早く進行する。すなわち、本発明のゼオライトの製造方法では、従来の石炭灰や鋳物廃砂のような気孔が存在しない粒状物と比較して、より早く発泡ガラスの溶出反応が起こるため、ゼオライト化工程において100℃未満の低温でゆっくりと加熱反応させることができる。
【0010】
なお、ゼオライト化工程における加熱温度は85〜95℃であることが望ましい。ガラス溶解液中のケイ素イオンとアルミナ源とを85〜95℃の低温でゆっくりと加熱反応させることにより、ゼオライトを大きく結晶化させることができる。
【0011】
また、本発明のゼオライトの製造方法は、発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下の発泡ガラスを粉砕して、粒径30〜100μmの発泡ガラスを得る粉砕工程を含むことが望ましい。粒径2mm以下の発泡ガラスを粉砕して得られた粒径30〜100μmの発泡ガラスには内径1〜20μmの気孔が残存するため、発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下の発泡ガラスを再利用して前述のようにゼオライトを合成することができる。
【発明の効果】
【0012】
(1)粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合し、加熱して、ガラス溶解液を得て、ガラス溶解液に対してアルミナ源を混合攪拌し、加熱してゼオライト化することにより、100℃未満の低温でゼオライトを成長させ、単一骨格を持ったゼオライトを生成することが可能となる。
【0013】
(2)ガラス溶解液中のケイ素イオンとアルミナ源とを85〜95℃の低温でゆっくりと加熱反応させることにより、ゼオライトを大きく結晶化させることができる。
【0014】
(3)発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下の発泡ガラスを粉砕して、粒径30〜100μmの発泡ガラスを得ることにより、発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下の発泡ガラスを再利用してゼオライトを合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造工程の概要を示すフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造工程の詳細を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造方法の概要について説明する。図1は本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造工程の概要を示すフロー図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造方法は、粒径30〜100μmの発泡ガラスに対して、アルカリ源として水酸化ナトリウムを混合し(S10)、常圧85〜95℃で4〜12時間加熱する(S11)。このとき、水酸化ナトリウムは発泡ガラスに残存する内径1〜20μmの気孔中に浸透していき、ケイ素イオンの溶解反応が促進される。これにより、発泡ガラスが溶解されたケイ素イオンを含むガラス溶解液が得られる。
【0018】
次に、得られたガラス溶解液に対して、アルミナ源としてアルミン酸ソーダ溶液を混合し(S12)、攪拌しながら常圧85〜95℃で4〜12時間加熱する(S13)。これにより、ガラス溶解液中のケイ素イオンとアルミン酸ソーダ溶液とがゆっくりと加熱反応し、ゼオライトが大きく結晶化される。その後、得られたゼオライトは洗浄・脱水工程(S14)を経て、粉末状のゼオライトとなる。
【0019】
次に、本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造工程の詳細について説明する。図2は本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造工程の詳細を示すフロー図である。
【0020】
図2に示すように、本発明の実施の形態におけるゼオライトの製造に用いる粒径30〜100μmの発泡ガラスは、発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下のものを粉砕したものである。
【0021】
発泡ガラス製品の製造工程は以下の通りである。図2に示すように、まず、原料となる廃ガラスに前処理が施される(S100)。前処理においては廃ガラス中混入しているキャップ等の金属やラベルの除去が行われる。本実施形態では原料として廃ガラスを用いているが、これに限定するものではないので、一般のガラス材を原料として使用することができる。
【0022】
前処理工程を経た廃ガラスは、一次粉砕工程(S101)において粒径2〜5mm程度まで粉砕され、次に、二次粉砕工程(S102)において粒径30〜100μm程度のガラスパウダーとなるまで粉砕された後、ガラスパウダー原料ストックにおいてストックされる(S103)。そして、ガラスパウダー原料ストックから供給されたガラスパウダーに発泡剤混合が行われる(S104)。本実施形態では、発泡剤である炭酸カルシウムを0.5〜15質量%程度、ガラスパウダーに添加しているが、これに限定するものではない。
【0023】
発泡剤混合を経たガラスパウダーは、焼成装置のベルトコンベア装置に載って予熱帯、焼成炉および冷却帯を通過しながら焼成され、発泡ガラスとなる(S105)。本実施形態では焼成温度800〜900℃、焼成時間30分〜2時間としているがこれに限定するものではない。焼成工程を経て形成された発泡ガラスは、発泡ガラス荒割り工程(S106)において破砕され、粒径100mm程度の塊状体となった後、一次ストックにストックされる(S107)。
【0024】
一次ストックから供給された塊状発泡ガラスは、破砕装置における発泡ガラス粉砕工程(S108)において粒径2〜50mmの粒状体へと粉砕され、発泡ガラス分級・袋詰め工程(S109)において分級および袋詰めが行われ、発泡ガラス製品として出荷される(S110)。このとき、分級された粒径2mm以下の粒状発泡ガラスが本実施形態におけるゼオライトの原料として使用される。
【0025】
そして、ゼオライトの製造工程では、粒径2mm以下の粒状発泡ガラスをチューブミルにより粒径30〜100μmとなるまで粉砕される(S111)。この粉砕された発泡ガラス粉末には、内径1〜20μmの気孔が残存する。そして、反応槽で水酸化ナトリウムを水で希釈して、この発泡ガラス粉末と混合し(S112)、常圧85〜95℃で4〜12時間加熱し、ガラス溶解液を得る(S113)。
【0026】
次に、この得られたガラス溶解液に対し、アルミン酸ソーダ溶液を混合攪拌し(S114)、攪拌しながら常圧85〜95℃で4〜12時間加熱し、ゼオライト化する(S115)。そして、得られた生成物を水道水にて洗浄し(S116)、フィルタープレスにて脱水し(S117)、乾燥設備にて乾燥し(S118)、袋詰めする(S119)。
【0027】
以上のように、本実施形態におけるゼオライトの製造方法では、発泡ガラス溶解工程(S112,S113)とゼオライト化工程(S114,S115)とを別工程で行うようにし、発泡ガラス溶解工程(S112,S113)では、粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合している。この粒径30〜100μmの発泡ガラスには内径1〜20μmの気孔が存在するため、水酸化ナトリウム液を混合した際に、水酸化ナトリウム液がこの気孔中に浸透する。そのため、水酸化ナトリウム液と発泡ガラスとの接触面積が大きく、ケイ素の溶出反応が早く進行する。
【0028】
そして、ゼオライト化工程(S115)において100℃未満の低温でゆっくりと加熱反応させるため、ゼオライトを大きく結晶化することができ、粒径5〜20μm程度の単一骨格を持った(A型、X型、P型)ゼオライト粉末を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、農薬や重金属等の有害物質吸着および陽イオン等のイオン交換、水処理材、排ガス用の触媒、畜産やペット糞尿等の脱臭剤、酸素と窒素のガス体の分離に利用可能なゼオライトの製造方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径30〜100μmの発泡ガラスに対してアルカリ源を混合し、加熱して、前記発泡ガラスの溶解液(以下、「ガラス溶解液」と称す。)を得る発泡ガラス溶解工程と、
前記ガラス溶解液に対してアルミナ源を混合攪拌し、加熱してゼオライト化するゼオライト化工程と
を含むゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記発泡ガラスは内径1〜20μmの気孔を有するものである請求項1記載のゼオライトの製造方法。
【請求項3】
前記ゼオライト化工程における加熱温度は85〜95℃である請求項1または2に記載のゼオライトの製造方法。
【請求項4】
発泡ガラス製品の製造工程において発生した粒径2mm以下の発泡ガラスを粉砕して、前記粒径30〜100μmの発泡ガラスを得る粉砕工程を含む請求項1から3のいずれかに記載のゼオライトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41251(P2012−41251A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186468(P2010−186468)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(597104053)日本建設技術株式会社 (24)
【Fターム(参考)】