説明

ゼオライト吸着剤、それを得る方法およびガス流から炭酸塩を除去するための使用

【課題】COで汚染されたガス流から炭酸塩を除去できるゼオライト吸着剤を提供する。
【解決手段】ナトリウム、ストロンチウム、周期律表のIA、IIAおよびIIIA族から選択されるカチオン、または希土類、またはランタノイド系列の3価のイオンによってイオン交換されたSi/Al比が1.25であるX型ゼオライト、および同様にイオン交換されたSi/Al比が1であるLSX型ゼオライトを5〜95重量%、好ましくは50〜90重量%の比率で混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明の分野は、二酸化炭素によって汚染されたガス流を精製するための、詳細にはN/O分離ステップ前の空気を精製するためのゼオライト吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
大気からの純粋なガス、詳細にはNおよびOの製造は大規模に実施される工業的運転であり、圧力変化吸着(PSA)、温度変化吸着(TSA)またはこの2つの結合(PTSA)の原理に基づく低温プロセスかまたは吸着プロセスのいずれかを利用することができる。さらに、工業的なプロセスから生じる多くのガスは、かなりの量の二酸化炭素を含み、これはしばしば除去したほうが賢明である。
【0003】
空気からNあるいはOを製造するには、その分離ステップの前にしかるべき精製が必要である。これは、低温プロセスの実施においては、供給空気中に存在する水または二酸化炭素が、これらの運転がこれらの不純物の凍結点よりもはるかに低い温度で実施されるために、装置を閉塞する可能性があるからである。吸着プロセスにおいては、水および二酸化炭素は窒素よりも強く吸着され、長期運転では吸着剤を阻害してしまい、その結果予定した寿命を短くする。
【0004】
これらのプロセスにおいて、フォージャサイト(faujasite)型ゼオライト(13X、そのSi/Al比が1.2以上)が二酸化炭素の除去を提供するために非常に広く採用されており、水の捕捉は、ゼオライト吸着剤床の上流に配置されたアルミナ床で行われる。吸着剤の再生はPTSA型である。すなわち、圧力の低下と僅かな温度上昇(約150℃までの)が組み合わされている。このステップの間に、N、Oおよび約1容量%のアルゴンを含む、製造された精製ガスの一部は、COおよびHOの脱着によってそれを再生するために吸着剤床へ送られる。
【0005】
長い間、二酸化炭素を吸着するには、ゼオライトXがシリカゲルまたは活性炭よりも良い吸着剤であることが知られてきた(US 2 882 244)。この特許はまた、種々の吸着剤の選択性が温度と圧力で変化することを教示している。
【0006】
US 3 885 927は、COの吸着が、その90%以上をバリウムに交換したゼオライトXで実施することができ、これらの条件下、精製すべきガスのCO含有量が1000ppmを超えず、温度は−40〜50℃とすることができることを教示している。
【0007】
EP 294 588は、好ましくは70%までストロンチウムで交換したゼオライトXが、この精製の実施に使用できることを教示している。
【0008】
ゼオライトの交換可能なカチオン数のCO吸着に対する影響は、「Molecular Sieves」(Soc.Chim.Ind.、London、1968)、p.233の中でBarrerらによって、および「J.C.S.Faraday」、1,1975,71,1809の中でCoughlanらによって研究されてきた。これらの研究は、Si/Al比が減少するにつれて、ゼオライトのCO吸着容量が上限1.2まで増加することを示している。さらに低い範囲は調査されていない。
【0009】
Si/Al比が1.25に近い、普通に使われているゼオライトXは、COに対して非常に選択的で、この選択性は温度が下がると増加する。室温の領域では、はるかに大きなモル比で存在する窒素との競合の結果、効率が大きく低下する。大気(COはほぼ300/400vpm)中のN/CO比は3000程度である。
【0010】
US 5 531 808は、記述の中で継続的にLSX(低シリカX)と呼称する、Si/Al比が1.15以下、および好ましくは1に等しいかまたは非常に近い比のX型ゼオライトを使用することによって、COが非常に効率的に吸着されることを開示している。従来のゼオライトX(Si/Al>1.2)の利点は、ゼオライトの効率は窒素に対するCOの選択性が50℃まで高く保たれるようなものなので、脱炭酸ステップの温度を冷却ユニットによって下げる必要がないことである。
【0011】
出願会社は、ゼオライトNaLSXのCO吸着容量がナトリウムとの交換度の増加と共に増加すること、しかしまた、ナトリウムとの交換度が90%程度に達すると、比較的高いCOの分圧において、効率の上昇が頭打ちになリ始めることを見出した。他方、出願会社は、WO 99/46031において、2ミリバール程度の低いCO分圧下、少なくとも98%のナトリウムとの交換度(四面体の位置におけるアルミニウム原子に対するナトリウムイオンのモル比として定義される。残りはカリウムである)を有するゼオライトLSXで、極めて顕著な脱炭酸効率の増加を得ることができることを示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第2882244号明細書
【特許文献2】米国特許第3885927号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第294588明細書
【特許文献4】米国特許第5531808号明細書
【特許文献5】国際公開第99/46031号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】「Molecular Sieves」(Soc.Chim.Ind.、London、1968)、p.233、Barrerら
【非特許文献2】「J.C.S.Faraday」、1,1975,71,1809、Coughlanら
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明の対象は、5%〜95重量%、好ましくは50〜90重量%の、Si/Al比が1.25である少なくとも1つのゼオライトXと、および95〜5重量%、好ましくは50〜10重量%の、Si/Al比=1である少なくとも1つのゼオライトLSXとの混合物からなる、ゼオライト吸着剤の新規なグループであって、
混合物の全ゼオライトの交換可能なカチオンサイトの総計の少なくとも80%がナトリウムカチオンで占められているか、
または混合物の全ゼオライトの交換可能なカチオンサイトの総計の少なくとも70%がいずれも、ストロンチウムカチオンで占められており、
交換可能なサイトの残りは、周期律表のIA、IIAおよびIIIA族、または希土類またはランタノイド系列の3価のイオングループから選択されるカチオンによって占されることができる。
【0015】
好ましい吸着剤の中でも、ナトリウムとの全交換度が90%以上、有利には98%以上のものは特に言及の価値があるであろう。また、少なくとも70%をストロンチウムで交換し、その残るカチオンサイトの大部分がナトリウムイオンで占められている、上で定義したゼオライト吸着剤混合物も言及する価値があるであろう。
【0016】
これらの新規なゼオライト吸着剤は粉体状で提供することができるが、ゼオライトXおよびゼオライトLSXおよび結合剤の混合物100重量部当たり、5〜25重量部、好ましくは5〜20重量部の不活性凝塊結合剤(粘着性のある非晶質材料で、二酸化炭素を非常に僅かしか吸着しない性質を有する)で、ビーズまたは押し出し品形状に凝塊形成することもできる。
【0017】
工業ユニットにおける装填および取り出し作業の取り扱いにおいて、微紛状の吸着剤では圧力低下に限界がある限り、凝塊は特に工業的な用途に良く適している。
【0018】
本発明の他の対象は、上で定義した吸着剤を調製するプロセスである。
【0019】
吸着剤が微紛状で提供される場合は、ゼオライトXとゼオライトLSXの粉体を単に混合することによって得られる。
【0020】
合成ゼオライトXおよびゼオライトLSXの粉体は、通常ナトリウムの交換度がそれぞれ100%および77%を呈し、カチオン部位の残りは本質的にカリウムイオンである。
【0021】
これらの粉体は分割して(すなわち、それを完全に混合する前に)、または混合ステップに続けて、任意選択で1つ以上のカチオン交換を行わせることができる。
【0022】
これらのカチオン交換は、ゼオライト構造または複数の構造内の、交換可能なカチオンが既に存在する場所に部分的または完全に挿入することを所望するカチオン、または複数のカチオンの塩溶液に、前記粉体を接触させることからなる。
【0023】
交換の程度は、一般的に、従来のように前記塩溶液または複数のカチオン溶液で逐次的に行うことによって得られる。
【0024】
粉体がカチオンの混合物を含む場合は、カチオンを交互に挿入するために、いくつかのカチオン塩を含む溶液と混合するか、または個々の塩溶液を逐次的に交換するか、そのどちらかによって交換を行うことができる。
【0025】
吸着剤を凝塊状で提供する場合は、製造プロセスのステップは通常次の通りである。
A−XおよびLSXの粉体の混合物を結合剤で凝塊し、成形する。
B−A)で得られた製品を低温(80〜100℃程度)で乾燥し、300〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度で活性化する。
C−結合剤がゼオライトに変換できるならば、任意選択で結合剤をゼオライト化する。
D−C)で得られた製品またはB)の結果の製品をカチオン交換した後に得られた製品を、300〜700℃、好ましくは400〜600℃で洗い、乾燥し、活性化する。
【0026】
不活性結合剤の例として、シリカ、アルミナ、または粘度、およびゼオライトに変換可能な結合剤としてカオリン、メタカオリン、またはハロイサイトを挙げることが出来よう。
【0027】
これらの凝塊の構成成分は、1つ以上のカチオン交換を行わせることができる。続いて水で洗浄する。この交換は、
微粉混合物について上で述べたように、ステップA)の前(この場合、結合剤のゼオライト化を行うか否かによって、凝塊がステップB)の結果として、またはD)の結果として得られる)か、
またはステップB)の後か、
またはステップC)の結果から得られる予備乾燥した製品段階でゼオライト変換することができる結合剤を、任意選択でゼオライト化した後のいずれか、
およびステップD)の前に行うことができる。
【0028】
カチオン交換もゼオライト化もない場合、本発明による吸着剤はステップB)の結果として得られる。
【0029】
ステップA)の別法の形態は、結晶ゼオライトXおよびゼオライトLSXの粉体を水および結合剤(通常粉状で)に従来のように混合すること、次いでこの混合物を、凝塊の核として働く既に成形したゼオライトの凝塊上に噴霧することからなる。この噴霧の間に、凝塊は、例えば回転軸を備える反応器の中で「雪玉」式手法によって連続的に自らの周りを回転させることができる。このようにして得られた凝塊に次いでビーズ形状にされる。
【0030】
ゼオライト化ステップ(ステップC)は、ゼオライトに変換可能な結合剤を、予めゼオライトLSXとゼオライトXの粉体の混合物で凝塊形成し、例えば、特許出願WO 99/05063に開示されているプロセスに従い、アルカリ浴に浸漬することによって変換することから構成される。このようにして、この吸着剤を使用する際に無視できない利点がある、吸着に関しては不活性な少量の材料(典型的にはゼオライト化後約5重量%までの不活性結合剤)を含む凝塊を得ることができる。
【0031】
本発明の他の対象はガス流の脱炭酸プロセスである。本発明による脱炭酸プロセスは、脱炭酸すべきガスを、並行に結合した、または循環式に吸着ステップと脱着ステップ(吸着剤を再生する代わりに)を互いに連結できる、1つ以上の吸着剤床を通過させることによって実施できる。工業的な段階では、圧力変化による吸着プロセス(PSA)および圧力と温度変化による有利な吸着プロセス(PTSA)によって運転することが好ましい。PSAおよびPTSA型プロセスは圧力サイクルの使用を必要とする。第1段階では、吸着剤床がこの構成成分の吸着によって汚染物質を分離し、第2段階では圧力を下げることによって吸着剤が再生される。再生された吸着剤を、新サイクル時と同一またはほとんど同一の状態に回復させるために、新しいサイクル毎の汚染物質の脱着ができるだけ完全でまた効率のよいことが必須である。
【0032】
ガス流に存在するCOの分圧は、通常25ミリバールを超えず、10ミリバール以下であることが好ましい。
【0033】
空気などのガス流を連続的に精製するために、多数の吸着剤床を通常並行に配置し、圧縮による吸着と減圧による脱着のサイクルを交互に行わせる。PSAおよびPTSAプロセスにおいて、それぞれの床が受ける処理サイクルは以下のステップを含む。
a)汚染されたガス流を吸着剤床を含む吸着領域に通し、この吸着剤床が汚染物質または複数の汚染物質(この場合CO)を吸着によって分離する。
b)圧力勾配を確立することによって吸着したCOを脱着し、前記吸着領域の圧力を徐々に低下させて吸着領域への入り口を経由してCOを回収する。
c)吸着領域の出口から純粋なガス流を導入することによって前記吸着領域の圧力を上げる。
【0034】
したがって、各床は純粋なガスを導入するステップ、第2の減圧ステップおよび第3の再圧縮ステップからなる処理サイクルを受ける。
【0035】
ガス流から除去すべき汚染物質がCOだけであれば、主として上述した凝塊から構成される、ただ1つの吸着剤床が吸着領域に配置される。
【0036】
いくつかの除去すべき汚染物がある場合は、吸着領域は、好ましくない不純物または汚染物質を吸着できるいくつかの吸着剤床を備えることができる。したがって、空気中に存在する二酸化炭素および水を除去するために、アルミナまたはシリカゲルなどの水を吸着する乾燥剤が本発明のゼオライト吸着剤と併用される。
【0037】
PSAおよびPTSAプロセスを最適化するために、種々の吸着剤床の減圧および圧縮段階が同期化される。1つは減圧段階にあり他方は再圧縮段階にある、2つの吸着剤床間圧力の平衡化ステップを導入することが特に有益であることが証明されている。
【0038】
本発明によるプロセスを実施する間、吸着圧力は通常0.2〜20バール、好ましくは1〜10バールであり、一方、脱着圧力は通常0.02〜5バール、好ましくは0.1〜2バールである。
【0039】
現況技術の脱炭酸プロセスに関しては、吸着領域の温度は通常20〜80℃、有利には30〜60℃である。現況技術の脱炭酸プロセスにおいては、十分な吸着剤再生を得るために必要な再生温度は一般的に130〜170℃程度であり、これは吸着剤を加熱する必要があり、工業プラントのコストを増加させる。
【0040】
現況の技術に関して、本発明による、ゼオライト結合剤で凝塊形成したゼオライト吸着剤の再生では、吸着剤が再生された後、同等の性能を得るために採用される再生温度が100〜120℃であって、したがって今まで使用されてきた温度よりもはるかに低いという点で、本発明は大きな付加的な利点を提供するものである。
【0041】
実施例1:LSXと13Xの粉体の混合による吸着剤の調製、続いて凝塊形成およびNa交換
第1のステップは、
相対圧力0.5および25℃におけるそのトルエン吸着容量が、23.5〜24.5%である無水ゼオライトX粉体(Si/Al=1.25。ナトリウムとの交換度は100%の領域)65重量%と、および
相対圧力0.5および25℃におけるそのトルエン吸着容量が、22〜23%である無水ゼオライトLSX粉体(Si/Al=1。ナトリウムとの交換度は77%)35重量%とから構成される混合物を調製することからなる。
【0042】
この混合物は、85重量部のゼオライト混合物当たり15重量部の粘土を加えることによって引き続き凝塊形成され、ビーズに成形される。凝塊は引き続き80〜100℃程度の温度で乾燥し、500〜600℃で活性化される。後者を、ナトリウムとの交換度を上げるために、引き続き2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間、数回接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、固体はそこからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。
【0043】
1回の交換後、ナトリウムとの全交換度は94%(蛍光X線またはプラズマイオン化手法による従来の化学的攻撃(ICP、誘導結合プラズマ)により測定)で、4回の交換後、それは99%に達する。このようにして交換された凝塊は、引き続き低温で乾燥し、500〜600℃で活性化される。これらの吸着剤のゼオライト材料の全Si/Alの比率は1.17である。
【0044】
これらのCO吸着容量(25℃における種々のCOの圧力下、cm/gで表される)は、トルエンの吸着容量と同様に25℃、分圧0.5で測定して、20〜21%である。
【0045】
比較として、同一の方法で凝塊されたゼオライトNaLSXのビーズの吸着容量(ナトリウムとの交換度は94%)を測定し、同じように、15%の同じ結合剤で凝塊されたゼオライトXのビーズの吸着容量を測定した。結果を表1に合わせて示す。
凝塊の水含有量は、クーロメトリーで測定して、凝塊の総重量に対し0.1〜0.3%である。
表1はまた、ゼオライトNaX(ナトリウムとの交換度は100%の領域)が65%の混合物およびゼオライトLSX(ナトリウムとの交換度は94%の領域)が35%の混合物の理論的なナトリウムとの交換度、同じく、分圧法則に基づいて計算したその理論的な吸着容量を示す。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明による凝塊は、XおよびLSXの理論的な混合物のビーズに比べ、非常に低圧(2〜5ミリバール)で少なくとも24%よりも多くのCOを吸着することが見出されている。
【0048】
実施例2:LSXと13Xの粉体の混合による吸着剤の調製、続いてNa交換および凝塊形成
実施例1のゼオライトXとゼオライトLSXの粉体の混合物を、ナトリウムとの交換度を上げるために、引き続き2モルの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間、数回接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、粉体はそこからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。
【0049】
4回の交換後、この粉体混合物の、ナトリウムとの全交換度は99%である。この混合物は、85重量部のゼオライト粉体混合物当たり15重量部の粘土を加えることによって引き続き凝塊形成され、ビーズに成形される。次いで凝塊は80〜100℃で乾燥し、500〜600℃で活性化される。これらの凝塊のナトリウムとの全交換度は99%である。これらの吸着剤のゼオライト材料の全Si/Al比は1.17であり、水含有量は実施例1の凝塊における水含有量と同じ範囲にある。
【0050】
実施例1で述べた同じ条件で測定したCO吸着容量は、実施例1の吸着剤のそれと同一であり、このゼオライト材料のナトリウムとの全交換度は99%である。
【0051】
実施例3:LSX粉体へのナトリウム交換による吸着剤の調製、続いてナトリウムとの交換度が100%領域である13X粉体との混合、続いて凝塊化
第1のステップは、ナトリウムとの交換度を上げるために、ゼオライトLSXの粉体(Si/Al=1。ナトリウムとの交換度77%)を、2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、固体はそこからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。
4回の交換後、この粉体混合物の、ナトリウムとの全交換度は99%である。
第2のステップは、35重量%のステップ1で交換されたゼオライトNaLSX粉体に、65%のゼオライトX粉体(Si/Al=1.25。ナトリウムとの交換度は100%の領域)を混合すること、および次いで85重量部のこの微粉混合物を15重量部の粘土でビーズの形に凝塊形成することからなる。この凝塊は引き続き80〜100℃で乾燥し、500〜600℃でか焼される。この凝塊の水の含有量は実施例1の凝塊の水の含有量と同じ範囲にある。
【0052】
実施例1で述べた同じ条件で測定した吸着剤のCO吸着容量は、実施例1の吸着剤のそれと同一であり、このゼオライト材料のナトリウムとの全交換度もまた99%の領域にある。
【0053】
実施例4:ゼオライトXとゼオライトLSXの凝塊ビーズを混合することによる吸着剤の調製、続いてビーズの混合物のNa交換
本実施例における吸着剤は、
85重量部のゼオライトX当たり15重量部の粘土で凝塊形成したゼオライトX(Si/Al=1.25。ナトリウムとの交換度100%の領域)を65重量%、および
85重量部のゼオライトLSX当たり15重量部の粘土で凝塊形成したゼオライトLSX(Si/Al=1。ナトリウムとの交換度77%の領域)を35重量%で混合することによって得られる。
【0054】
ビーズの混合物は80〜100℃で乾燥され、次いで、ナトリウムとの交換度を上げるために80℃で4時間2Mの塩化ナトリウム溶液と接触させる前に、500〜600℃で活性化される。各ステップにおいて固体の質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、ビーズはそこからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。4回の交換の後、ビーズのナトリウムとの全交換度は99%である。ビーズは引き続き80〜100℃で乾燥され、次いで500〜600℃で活性化される。それらの水の含有量は、実施例1のビーズのそれと同じ範囲にある。COの吸着容量(25℃でのcm/gで表される)が種々のCO圧力下で測定される。その結果を表2に合わせて示す。
【0055】
【表2】

【0056】
実施例5:ゼオライトLSXの凝塊ビーズへのNa交換による吸着剤の調製、続いてゼオライトX凝塊ビーズとの混合
吸着剤は、
85重量部のゼオライトX当たり15重量部の粘土で凝塊形成した、65重量%のゼオライトXのビーズ(Si/Al=1.25)と、
35重量%のNaLSXのビーズ(Si/Al=1。ナトリウムとの交換度99%の領域)とを混合することによって得られる。
【0057】
この混合物は80〜100℃で乾燥され、次いで500〜600℃で活性化される。これらの水含有量は実施例1のビーズのそれと同じ範囲にある。
これらのビーズのCO吸着容量は実施例4のそれと同じである(表2を参照のこと)。
【0058】
実施例6:LSXと13X粉体の混合による吸着剤の調製、続いてゼオライトに変換できる結合剤での凝塊形成、結合剤のゼオライト化およびNa交換
実施例1のステップ1からできる粉体混合物85重量部が、ビーズ状のゼオライトに変換できる15重量部のカオリン粘土で凝塊形成される。引き続き凝塊は80〜100℃で乾燥され、次いで500〜600℃でか焼され、次いで220g/lの濃度の水酸化ナトリウム水溶液に3時間浸漬し、次いでWO 99/05063による手順に従って水で洗浄する。
【0059】
これらのトルエン吸着容量は、分圧0.5にて25℃で測定し、22.5〜23%である。これは凝塊の総重量の5%を超えない結合剤のレベルに相当する。ビーズを引き続き乾燥し、ナトリウムとの交換度を上げるために2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、ビーズはそれからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。4回の交換後、このビーズの、ナトリウムとの全交換度は99%である。ビーズは引き続き80〜100℃で乾燥され、500〜600℃で活性化される。これらの水含有量は実施例1のビーズのそれと同じ範囲にある。
これらのビーズについて得られた、種々のCO圧力下のCO吸着容量(25℃でcm/gで表される)の結果を表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例7:ゼオライト化された結合剤で凝塊形成したゼオライトLSXのビーズと、ゼオライト化された結合剤で凝塊形成したゼオライトXのビーズとの混合による吸着剤の調製、続いてこのビーズ混合物のNa交換
第1のステップは、65重量部のゼオライトXの無水ビーズ(Si/Al=1.25。交換度100%の領域)および35重量部のゼオライトLSXの無水ビーズ(Si/Al=1。Naとの交換度77%の領域)を混合することからなる。これらゼオライトXおよびゼオライトLSXのビーズは、それぞれ5%の結合剤を含み、特許出願WO 99/05063に開示されたプロセスに従って得られた。5%の結合剤を含むビーズの混合物は80〜100℃で乾燥され、次いで500〜600℃でか焼される。混合物を、ゼオライト材料のナトリウムとの交換度を上げるために、2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、ビーズはそれからの余剰の固体を除去するために数回洗浄される。4回の交換後、このビーズの、ナトリウムとの全交換度は99%である。ビーズは引き続き500〜600℃で活性化される。
これらのビーズのCO吸着容量および水含有量は実施例6のビーズのそれと同一である(表3参照のこと)。
【0062】
実施例8:ゼオライトに変換可能な結合剤で凝塊形成したゼオライトLSXのビーズと、ゼオライトに変換可能な結合剤で凝塊形成したゼオライトXのビーズとの混合による吸着剤の調製、続いて結合剤のゼオライト化およびビーズ混合物(実施例7の代替形状)のNa交換
この吸着剤は、第1のステップで、
85重量部のゼオライトLSX当たり、ゼオライトへ変換可能な15重量部のカオリン結合剤を含むゼオライトLSXのビーズ(Si/Al=1。ナトリウムとの交換度77%の領域)35重量%と、
85重量部のゼオライトX当たり、ゼオライトへ変換可能な15重量部のカオリン結合剤を含むゼオライトXのビーズ(Si/Al=1.25。ナトリウムとの交換度100%の領域)65重量%とを混合することによって調製される。
【0063】
低温(80〜100℃)で乾燥し次いで500〜600℃で活性化した後、混合物を、特許出願WO 99/05063に開示された手順に従い、水酸化ナトリウム水溶液(濃度220g/l)に3時間浸漬する。この混合物中の結合剤残渣を評価するためにこの混合物のトルエン吸着容量を測定し、その値はビーズ全重量の5%の領域にある。後者を次いで80〜100℃で乾燥し、500〜600℃で活性化し、次いでゼオライト材料のナトリウムとの交換度を上げるために2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、ビーズはそこからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。4回の交換後、このビーズの、ナトリウムとの全交換度は99%である。ビーズは引き続き80〜100℃で乾燥され、500〜600℃で活性化される。
これらのビーズのCO吸着容量および水含有量は、実施例6のビーズのそれと同一である(表3参照のこと)。
【0064】
実施例9:ゼオライト化された結合剤で凝塊形成したゼオライトLSXのビーズと混合することによる吸着剤の調製、続いてナトリウムとの交換、およびゼオライト化された結合剤で凝塊形成したゼオライトXのビーズ
第1のステップにおいて、85重量部のゼオライトLSX粉体(Si/Al=1。Naとの交換度77%の領域)を、モンモリロン石(montmorillonite)型粘土(15重量%)、カオリン型粘土(85%)、少量のカルボキシメチルセルロースおよび水からなる混合物15重量部で凝塊形成することによって、5%の結合剤を含むNaLSXのビーズが調製される。この凝塊を80〜100℃で乾燥し、水を含まない不活性雰囲気下、500℃で2時間か焼する。これらの凝塊は、引き続き特許出願WO 99/05063の教示に従って水酸化ナトリウム溶液に浸漬される。これらを次に水で数回洗浄する。トルエン容量の測定は、結合剤の残渣レベルが5%の領域にあることを示している。
【0065】
凝塊は、引き続き、ゼオライト材料のナトリウムとの交換度を上げるために、2Mの塩化ナトリウム溶液と80℃で4時間接触させる。それぞれのステップにおいて、固体質量に対する溶液の容量比は7ml/gである。各交換の間、ビーズはそれからの余剰の塩を除去するために数回洗浄される。4回の交換後、このビーズの、ナトリウムとの全交換度は99%である。ビーズは引き続き500〜600℃で活性化される。
【0066】
第2のステップにおいて、不活性材料の含有量がビーズの5重量%の領域となるように、第1のステップの結果得られたNaLSXビーズ35重量%を、実施例6に述べたプロセスによってゼオライト化した結合剤で凝塊形成したゼオライトXのビーズ65%と混合する。
【0067】
これらのビーズのゼオライト材料の、ナトリウムとの全体交換度は99%よりも大きい。これらは次いで80〜100℃で乾燥し、500〜600℃でか焼される。これらのビーズについて、25℃で種々のCO圧力下測定したCO吸着容量、およびこれらの水含有量は実施例6のそれと同一である(表3を参照のこと)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜95重量%、好ましくは50〜90重量%の、Si/Al比が1.25である少なくとも1つのゼオライトXと、95〜5重量%、好ましくは50〜10重量%の、Si/Al=1である少なくとも1つのゼオライトLSXとの混合物からなるゼオライト吸着剤であって、この混合物が、
混合物の全ゼオライトの交換可能なカチオンサイト総計の少なくとも80%がナトリウムカチオンで占められているか、
混合物の全ゼオライトの交換可能なカチオンサイト総計の少なくとも70%がストロンチウムカチオンで占められているか、のいずれかであり、
交換可能なサイトの残りを、周期律表のIA、IIAおよびIIIA族から
選択されるカチオン、または希土類またはランタノイド系列の3価のイオンによって占められることができる吸着剤。
【請求項2】
粉体の形状をしているゼオライトXおよびゼオライトLSXである請求項1に記載のゼオライト吸着剤。
【請求項3】
ゼオライト吸着剤中の不活性結合剤のレベルが、ゼオライトと結合剤の混合物100重量部当たり25重量部よりも少ないか等しい、好ましくは20重量部よりも少ないか等しい、および最も有利で好ましくは5重量部に等しいことを特徴とする、不活性結合剤で凝塊形成された請求項1に記載のゼオライト吸着剤。
【請求項4】
その水含有量が、吸着剤の総重量に対して最大1%、好ましくは最大0.5%、および最も好ましくは最大0.3%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のゼオライト吸着剤。
【請求項5】
ゼオライトXおよびゼオライトLSX粉体を混合することによって、および、それらの混合の前の、またはそれらの混合後の、Xおよび/またはLSX粉体の任意選択的な1つ以上のカチオン交換によって、粉体の形状に吸着剤を製造する、請求項2または請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載の凝塊形成した吸着剤を製造するプロセスであって、以下のステップ、
A−XおよびLSX粉体の混合物を結合剤で凝塊形成および成形すること、
B−A)で得た製品を低温で乾燥し、および300〜700℃の温度、好ましくは400〜600℃で活性化すること、
C−結合剤がゼオライトに変換できるならば、任意選択的に結合剤をゼオライト化すること、
D−C)で得た製品またはB)の結果出来た製品をカチオン交換した後に得た製品を、洗浄し、乾燥し、および300〜700℃、好ましくは400〜600℃の温度で活性化すること、および
XおよびLSX粉体のいずれかが、それらの混合前またはそれらの混合の直後(この場合、凝塊形成した吸着剤は、ステップB)の結果、または結合剤のゼオライト化に続くステップD)の結果、または結合剤のゼオライト化をしない後のステップD)の結果として得られる)、ステップA)の前に、
および/または、ステップB)の後に、
および/または、ステップC)の結果として得られる予備乾燥した製品を、ゼオライト化可能な結合剤を任意選択的にゼオライト化するステップの後に、およびステップD)の前に、
任意選択的に1つ以上カチオン交換されることを含み、続いて水で洗浄され、
カチオン交換またはゼオライト化のいずれも無い場合は、凝塊吸着剤はステップB)の結果として得られることが理解されるべきである、プロセス。
【請求項7】
精製すべきガス流が、吸着領域において、請求項1から4のいずれか一項に記載された、好ましくは結合剤で凝塊形成された少なくとも1つのゼオライト吸着剤と接触させられることを特徴とする、COで汚染されたガス流、好ましくは空気の脱炭酸プロセス。
【請求項8】
全交換度が90%以上、有利には98%以上である、ゼオライト吸着剤でガス流の脱炭酸を行う請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ストロンチウムとの全交換度が70%以上であり、および大部分の残りのカチオンサイトがナトリウムイオンで占められている、ゼオライト吸着剤でガス流の脱炭酸を行う請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
運転が圧力変化吸着(PSA)によって、および好ましくは圧力および温度変化吸着(PTSA)によって行われることを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載のガス流の脱炭酸プロセス。
【請求項11】
吸着圧力が1〜10バール、および脱着圧力が0.1〜2バールである請求項7から10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
プロセスが、
a)汚染されたガス流を吸着床を備える吸着領域に通し、この吸着床が吸着によって汚染物質または複数の汚染物質を分離するステップと、
b)吸着したCOを圧力勾配を確立することによって脱着し、前記吸着領域の圧力を徐々に低下させて吸着領域への入り口を経由してCOを回収するステップと、
c)純粋なガス流を吸着領域の出口を経由して導入することによって、前記吸着領域の圧力を上げるステップとからなる処理サイクルを用いることを特徴とする請求項7から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
ゼオライト吸着剤がゼオライト化した結合剤で凝塊形成され、その中で吸着剤が100〜120℃の温度で再生される(ステップb)請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
COおよびHOで汚染された空気を精製するプロセスであって、精製すべきガス流が、吸着領域において少なくとも1つの乾燥剤、好ましくはアルミナ、および、
本質的にゼオライトXおよびゼオライトLSXの混合物から構成され,そのナトリウムとの全交換度が98%と等しいかまたは大きく、
結合剤で凝塊形成され、吸着剤中の不活性結合剤の残渣のレベルが、ゼオライトおよび結合剤の混合物100重量部当たり25、好ましくは20、最も有利には5重量部よりも少ないか等しく、
および、水の含有量が、吸着剤の総重量の有利には最大1%、および好ましくは最大0.5%である、少なくとも1つの吸着剤と接触させられることを特徴とするプロセス。
【請求項15】
プロセスが、
a)汚染されたガス流を、請求項14に記載の乾燥剤床および吸着剤床を備える吸着領域に通すステップと、
b)吸着したCOを圧力勾配を確立することによって脱着し、前記吸着領域の圧力を徐々に低下させて吸着領域への入り口を経由してCOを回収するステップと、
c)純粋なガス流を吸着領域の出口を経由して導入することによって前記吸着領域の圧力を上げるステップからなる処理サイクルの使用を含むことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。

【公開番号】特開2012−148277(P2012−148277A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−40489(P2012−40489)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2001−527912(P2001−527912)の分割
【原出願日】平成12年10月3日(2000.10.3)
【出願人】(500092608)
【Fターム(参考)】