説明

ゼオライト成形体の製造方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、吸着分離剤,イオン交換剤、触媒等として用いられているゼオライト成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、工業的規模で安定的に製造可能な著しく高いガス吸着容量を有するゼオライト成形体の製造方法に関する。
(従来の技術)
ゼオライトは、数オングストロームという分子オーダーの細孔を有する結晶性アルミノシリケートであり、本来天然に産出するが、現在では天然に存在しない構造を有するものも含め、多種類のゼオライトが人工的に合成されている。天然ゼオライトは破砕品として、また、合成ゼオライトは粉末として通常得られる。工業的にはその特徴をいかし、イオン交換剤,吸着分離剤,触媒等としての用途があるが、いずれの場合に於ても破砕品あるいは粉末のままで使用されることは稀であり、カラムに充填する為に、ある一定強度を有する成形体として使用されるのが最も一般的である。
ゼオライト成形体の製造は、通常次の様にして行われる。ゼオライト粉末無水重量100部に対して20〜30部のバインダー、0.01〜5部の造粒助剤を添加し、さらに水を加え、これらを充分混練した後、造粒機を用いて成形し、乾燥し、次いで450〜700℃の温度で焼成を行なうことにより、一定強度を有するゼオライト成形体がつくられる。バインダーとしては、カオリン、アタパルジャイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン、セピオライト等の粘土、また、アルミナ、シリカ等が単独または2種以上の組合せで使用される。造粒助剤としては、各種の有機系、無機系が、具体例をあげれば、メチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、結晶性セルローズ、リグニン、ステアリン酸、澱粉、けい酸ソーダ等が用いられている。さらにゼオライトの造粒方法としては、たとえば、転動造粒、押出造粒、噴霧造粒、流動造粒、圧縮造粒等の方式があるが、本発明は押出造粒に関するものである。押出造粒によりゼオライト成形品を製造する場合、あらかじめゼオライト粉末とバインダー及び造粒助剤の粉末とをリボンブレンザー、コニカルブレンザー等の公知の混練機を用いて加水し,加水後混練した後、押出造粒するのが一般的である。造粒助剤はあらかじめ水溶液として添加することもある。
(発明が解決しようとする課題)
ゼオライト成形体が具備しなければならないいくつかの特性のなかで、その耐圧強度と耐摩耗強度及び形状の均一性があげられる。これらの特性に影響を及ぼす因子を把握することは重要であるが、この因子は非常に数多く、またそれらの支配因子が各々相乗的に影響をもたらすので、現在、造粒メカニズム等は体系的に解明されていない。なかでも、バインダーの種類とその添加量は重要な因子であり、それらは容易に変えられることから、前述した様に非常に多くの種類のバインダーが検討されているのが現状である。
一般的に言うと、耐圧強度と耐摩耗強度を高めるには、バインダーの種類に拘らず、その添加量が増加される。その結果、ゼオライト成形体に含有されるゼオライトの量は、バインダーの添加量増加とともに減少することになる。ゼオライト成形体に含まれるバインダーは不活性であることから、例えばガス吸着能を有せず、従ってガス吸着性能などのゼオライト成形体の性能は、ゼオライト成形体に含有されているゼオライト量に依存することになる。以上のことから、バインダー量を増加させると成形体の耐圧強度と耐摩耗強度は高くなるが、一方、その性能は低下し、逆にバインダー量を減少させるにつれ性能は向上するが、耐圧強度と耐摩耗強度は低下することがわかる。要求されるこれらの値はゼオライト成形体の用途と密接に絡んでいる。たとえば、圧力差変動(PSA)用吸着分離剤として使用される成形体と温度差変動(TSA)用吸着分離剤として使用される成形体を比べてみると、前者の耐圧強度と耐摩耗強度の値は後者のそれよりも一般的には低いもの、即ちバインダーの添加量が少なくゼオライト含量の多い成形体が用いられている。本発明は、主にPSA用吸着分離剤として使用される成形体の製造に関するものである。
バインダーの添加量を低減させて成形体中のゼオライト含量を増加させると、PSA用吸着分離剤としてのガス吸着能などの性能が向上するので、バインダー量をできるだけ減らした成形体が求められていたが、その成形体の製造上の問題点は、造粒性にあった。即ち、バインダーの添加量をかなり減らしていくと、その押出造粒性が極めて悪くなり、押出処理量が低下したり、あるいは押出動力がかかり安定的に押出せなくなることである。ときには押出造粒が不可能になる。また、たとえ押出造粒ができても得られる成形体がささくれだったり、ひびが入ったりする為、工業的には大量生産出来ないし、PSA用吸着分離剤としての必要な実用強度が得られなかった。以上の理由からバインダーの添加量はゼオライト無水重量100部に対して、工業的規模で安定的に生産する為には20部が最低必要とされているのである。
本発明の目的は、ゼオライト成形体を押出造粒により製造するに際してバインダーの添加量を従来のそれよりも著しく少なくして造粒性が低下することなく、安定的に著しく高いガス吸着容量を有するゼオライト成形体が製造される方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段および作用)
一般にゼオライト成形体の造粒性に影響する因子としては、バインダーの種類とその添加量,水の添加量,造粒助剤の種類とその添加量、混練時間と混練強度等種々考えられるが、本発明者はこれらの因子について鋭意検討を行なった結果、従来よりもバインダーの添加量が著しく少なくてもその造粒性が低下せずに押出造粒できる方法、即ち、極めて有効な造粒助剤を見出した。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるゼオライトは合成品あるいは天然品のいずれでもよい。特に合成ゼオライトを用いるとその効果が極めて顕著であることがわかる。合成ゼオライトとしては、たとえばA型,フォージャサイト型,モルデナイト型等のゼオライトが、また、天然ゼオライトとしては、モルデナイト、クリノプチロライト等が知られている。バインダーとしては、一般に用いられている粘土系などで良く、特に限定されない。本発明は、造粒助剤としてカルシウム型のカルボキシメチルセルロース及び/又は重合度800以上のナトリウム型のカルボキシメチルセルロースであるを用いる点に特徴があり、これらの添加量はゼオライト無水重量100部に対して、0.01部以上7部以下、好ましくは3〜5部である。これらの造粒助剤は、そのままあるいは水溶液にして添加すればよい。
カルポキシメチルセルロースは、セルロースの多価カルボキシメチルエーテルであって、水素型,ナトリウム型,カルシウム型,アンモニウム型などが知られている。これまで造粒助剤として用いられてきたのは、重合度約600以下のナトリウム型カルボキシメチルセルロースである。これは、ゼオライト無水重量100部あたり200部以上のバインダーを用いる場合には有効な造粒助剤となるが、バインダー添加量をそれより少なくすると押出しが非常に困難となることが分った。ところが、本発明者らは、ナトリウム型カルボキシメチルセルロースでも重合度が800以上になると、バインダー添加量が小さくても安定的に押し出せることが分った。市販のナトリウム型カルボキシメチルセルロースには、重合度が約1200までのものがあるが、重合度が800以上であれば市販のナトリウム型カルボキシメチルセルロースを発明に適用しうる。重合度をこのように上げることにより押出しが可能になる理由は明確でないが、カルボキシメチルセルロースの分散度が向上して造粒塊−押出造粒機間の摩擦抵抗を下げる作用があるものと考えられる。更に、本発明者らは、カルシウム型カルボキシメチルセルロースは、重合度が低くても十分押出しを可能にすることを見出した。市販のカルシウム型カルボキシメチルセルロースの重合度の下限は200〜300程度であり、上限は1200程度であるが、本発明にはいずれも適用可能である。これらの造粒助剤は、単独でも、混合して用いてもその有効性に変りはない。
(発明の効果)
上記造粒助剤を用いて通常の方法でゼオライト粉末をバインダーと混合混練し公知の造粒機を用いて押出すと、工業的規模でバインダーの添加量がわずかに5部でもその押出しがスムーズに行われる。さらに得られた成形体を乾燥し、焼成することにより、ガス吸着容量の極めて高いものがえられる。又、これは、PSA用吸着剤として十分使用できる強度を備えている。
(実施例)
以下実施例により本発明を具体的に説明する。なお本発明は、実施例に記載するゼオライト、バインダー及び使用装置を特定するものではない。
比較例1 Na−A型ゼオライト粉末有姿17kg(無水として10kg)、カオリナイト(国産のカオリン型粘土)1.0kg、重合度150程度のナトリウム型カルボキシメチルセルロース粉末(ダイセル工業製)を0.3kg秤量し更に水を2.0kg添加し、マーラーミキサー混練機(新東工業社製)を用いて10分間混練した。この混練粗造粒塊を二軸型押出造粒機(不二パウダル社製)で、直径1.5mmに押出した。押出しはかなり困難であり、得られた押出し成形体にはささくれが多く見られた。このペレットを120℃の温度で16時間乾燥した後、静置式電気焼成炉で550℃で2時間焼成した。焼成ペレットの機械的強度を木屋式硬度計で20個測定しその平均値は1.8kgであった。また18℃、700torrに於ける窒素の吸着容量を重量法で測定したところ7.7Ncc/gであった。
比較例2 比較例1において、カオリナイトを0.5kg、及び造粒助剤として重合度400〜600のナトリウム型カルボキシメチルセルロース0.3kgを用いた以外、比較例1と同じ方法で押出したところ、押出し不可能であった。
実施例1 比較例1において、造粒助剤として、重合度800〜900のナトリウム型カルボキシメチルセルロース0.3kgを用いた以外、比較例1と同じ方法で押出したところ、スムースに押出すことが出来た。焼成ぺレットの平均機械的強度は4kgであった。また窒素の吸着容量は7.7Ncc/gであった。
実施例2 比較例2において、造粒助剤として重合度200〜300のカルシウム型カルボキシメチルセルロース0.3kgを用いた以外、比較例2と同じ方法で押出したところ、ささくれのないペレットが得られた。焼成ペレットの平均機械的強度は2.5kgであった。また窒素の吸着容量は8.2Ncc/gであった。
実施例3 比較例2において、造粒助剤として重合度100〜1200のナトリウム型カルボキシメチルセルロース0.5kgを用いた以外、比較例2と同じ方法で押出した。焼成ペレットの平均機械的強度は2.3kgであった。また窒素の吸着容量は8.3Ncc/gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ゼオライト粉末を押出造粒によって成形するにあたり、造粒助剤としてカルシウム型のカルボキシメチルセルロース及び/又は重合度800以上のナトリウム型のカルボキシメチルセルロースを用いることを特徴とするゼオライト成形体の製造方法

【特許番号】第2756567号
【登録日】平成10年(1998)3月13日
【発行日】平成10年(1998)5月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−310124
【出願日】昭和63年(1988)12月9日
【公開番号】特開平2−157118
【公開日】平成2年(1990)6月15日
【審査請求日】平成7年(1995)12月8日
【出願人】(999999999)東ソー株式会社