説明

ゼリー状食品

【課題】高濃度の非重合体カテキン類とゲル化剤を含有するにも拘わらず、容器から出し易く、かつ食感の良いゼリー状食品を提供する。
【解決手段】(A)非重合体カテキン類:0.1〜0.5質量%、(B)下記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の少なくとも1種:0.005質量%以上、及び(C)ゲル化剤を含有する、ゼリー状食品。[式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子等を示し、Rはβ−グルコシル基等を示し、Rはα−ラムノシル基等を示し、Rはα−グルコシル基を示し、nは0〜10の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カテキン類に代表されるポリフェノールは、体脂肪低減作用をはじめ様々な生活習慣病予防に関連した生理機能を有することが明らかにされ注目を集めている。この生理機能を効率良く発現させるためにはその摂取量が重要であり、多量のポリフェノールを摂取するために、カテキン類を高濃度とした飲料やゼリー状食品、またサプリメント等が市販等されている。
【0003】
飲料にカテキン類を高濃度に配合する技術として、緑茶抽出物の濃縮物等の茶抽出物(特許文献1〜3)を利用し、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法が知られている。しかしながら、カテキン類を高濃度に配合する対象となる飲料の種類(例えば、茶系飲料や、炭酸飲料等の非茶系飲料)によっては、カフェイン及び緑茶由来の苦渋味が残存し、飲料の商品価値が大きく低下することがあった。その苦渋味を改善する方法として、例えば、カテキン類とキナ酸との含有質量比を一定に制御する方法(特許文献4)、苦味抑制効果のあるサイクロデキストリンをカテキン類に対して一定量配合する方法(特許文献5)、茶葉からカテキン類を抽出して得られた茶葉抽出液を更に溶媒抽出することにより、苦味等の少ない高濃度カテキン類含有抽出液とする方法(特許文献6)などが提案されている。
【0004】
また、物性により苦渋味を改善する技術として、茶ポリフェノール濃度(A)を50〜1000mg%、ゲル強度(B)を15000〜20000N/m2、B/A比を20〜1000に制御することにより、食した際に口腔内での苦渋味成分の拡散を抑制したゼリー状食品が知られている(特許文献7)。
【0005】
ところで、カテキン類以外のフラボノイド類についても飲食品に配合することで種々の効果を奏することが報告されている。例えば、フラボノール配糖体の一種であるイソクエルシトリンは、ペプチド含有飲料においてそのペプチド臭の発生を抑制するための酸化防止剤(特許文献8)、ビタミン含有飲料においてビタミンの分解を防止するためのビタミン安定剤(特許文献9)、又は血管内皮細胞の機能改善剤(特許文献10、非特許文献1及び2)、高甘味度甘味料の呈味改善剤(特許文献11)などとして機能し得ることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−142677号公報
【特許文献2】特開平8−298930号公報
【特許文献3】特開平8−109178号公報
【特許文献4】特開2003−169603号公報
【特許文献5】特開2006−180711号公報
【特許文献6】特開2007−159541号公報
【特許文献7】特開2006−115783号公報
【特許文献8】特開2006−67874号公報
【特許文献9】特開2007−125018号公報
【特許文献10】特開2008−255075号公報
【特許文献11】特開2008−99683号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】薬と治療、Vol.36 No.10 2008年、p.919-930
【非特許文献2】薬と治療、Vol.36 No.10 2008年、p.931-939
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1〜3においては飲料の形態であることに起因して、茶ポリフェノールに特有の苦渋味が口腔内で拡散、残留しやすいため、この風味が苦手である場合には飲用による茶ポリフェノールの摂取は非常に困難となる。また、錠剤やカプセル等の形態にすることで苦渋味を感じ難くなり、一度に多量の茶ポリフェノールを摂取することが可能であるが、濃度が高すぎるため胃腸への負担が大きく、また食品としての嗜好性に欠けるため、継続的に摂取し難い傾向がある。
【0009】
また、上記特許文献4〜6においては、カテキン類の苦渋味そのものを低減することを目的とするが、高濃度のカテキン類を含有する容器詰飲料においては苦渋味が口腔内で拡散、残留しやすいため、苦渋味を有する成分の低減や他の成分による抑制だけでは、その嗜好性を改善するには限界がある。
これに対し、上記特許文献7の方法によれば、苦渋味の口腔内での拡散、残留を効果的に抑制することができるが、そのゲル強度の高さから、容器からの出し易さを考えるとパウチ容器を採用することは困難なため、商品設計の自由度が制限されるという課題があった。また、パウチ容器用にゲル強度を一定範囲内に調整したとしても、非重合体カテキン類を増量すると口中で崩れ難くなり、食感が低下するという課題があることも判明した。
したがって、本発明は、高濃度の非重合体カテキン類とゲル化剤を含有し、容器から出し易く、かつ食感の良いゼリー状食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、ゲル化剤を含有するゼリー状食品において、非重合体カテキン類を増量した場合でも、非重合体カテキン類と同じフラボノイド類に属する物質のうち、特定構造を有するフラボノール配糖体を配合すると、容器からの出し易さの指標であるゲル強度への影響を抑制しつつ、食感が良好となることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(C);
(A)非重合体カテキン類:0.1〜0.5質量%、
(B)下記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の少なくとも1種:0.005質量%以上、及び
(C)ゲル化剤
を含有する、ゼリー状食品を提供するものである。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、R1〜R7はそれぞれ独立に水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、Raはβ−グルコシル基又はβ−ラムノシル基を示し、Rbはα−ラムノシル基又は水素原子を示し、Rcはα−グルコシル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ゲル化剤を含有するゼリー状食品において、高濃度の非重合体カテキン類を含有するにも拘わらず、容器からの出し易さに影響を与えず、かつ口中で崩れ易くて食感の良いゼリー状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先ず、本明細書で使用する用語について説明する。
本発明のゼリー状食品における「ゼリー状」とは、分散媒である液体中に分散質が分散した系の状態であって、常温下、外力が付加されない限り流動性を示さない系の状態をいう。すなわち、本発明に係る「ゼリー状」には、その保形性が保持されていれば、比較的軟らかい物性を有する半固形状のものに限定されず、ストロー等で飲めるような飲料状のものも包含される。
本発明において「(A)非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を併せての総称であり、非重合体カテキン類の含有量は、上記8種の合計量に基づいて定義される。
【0016】
次に、本発明のゼリー状食品について説明する。
本発明のゼリー状食品は、一定濃度の(A)非重合体カテキン類と、(C)ゲル化剤を含有するゼリー状食品に、(B)上記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の少なくとも1種を一定量含有せしめたものである。
【0017】
本発明のゼリー状食品中の(A)非重合体カテキン類の含有量は0.1〜0.5質量%であるが、風味及び生理効果の点から、その下限は0.15質量%、更に0.2質量%、特に0.25質量%であることが好ましく、他方上限は0.4質量%、特に0.35質量%であることが好ましい。
【0018】
本発明のゼリー状食品中の(A)非重合体カテキン類の含有量を上記範囲とするには、緑茶抽出物を使用することが好ましい。緑茶抽出物としては、例えば、緑茶葉から得られた緑茶抽出液が挙げられる。緑茶葉としては、より具体的には、Camellia属、例えばC.sinensis、C.assamica及びやぶきた種又はそれらの雑種等から得られる茶葉から製茶された緑茶葉が挙げられる。製茶された緑茶葉としては、煎茶、番茶、玉露、てん茶、釜炒り茶等が挙げられる。また、超臨界状態の二酸化炭素接触処理を施した緑茶葉を用いてもよい。抽出方法としては、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出など従来の方法を採用することができる。また、抽出時の水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。更に、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。このようにして得られた緑茶抽出物は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明のゼリー状食品の調製に使用できる。緑茶抽出物の形態としては、液体、スラリー、半固体、固体の状態が挙げられる。
【0019】
本発明のゼリー状食品に使用する緑茶抽出物として、緑茶葉から抽出した緑茶抽出液を使用する代わりに、緑茶抽出液の濃縮物を水又は有機溶媒に溶解又は希釈して用いても、緑茶抽出液と緑茶抽出液の濃縮物とを併用してもよい。ここで、緑茶抽出液の濃縮物とは、緑茶葉から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出液を濃縮したものであり、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載されている方法により調製したものをいう。緑茶抽出液の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林社製「ポリフェノン」、伊藤園社製「テアフラン」、太陽化学社製「サンフェノン」等の固体状の粗カテキン製剤を用いることもできる。
また、緑茶抽出物以外のカテキン含有植物抽出物を使用することもできる。
【0020】
本発明のゼリー状食品中の(B)フラボノール配糖体は、下記一般式(1)で表される化合物であり、アグリコンがフラボノールである配糖体である。本発明における「フラボノール配糖体」には、天然物であるフラボノール配糖体のみならず、これに酵素処理等により糖を付加させたもの(以下「糖付加物」という)も含まれるものとする。
本発明においては、成分(B)から選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R1〜R7はそれぞれ独立に水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、Raはβ−グルコシル基又はβ−ラムノシル基を示し、Rbはα−ラムノシル基又は水素原子を示し、Rcはα−グルコシル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【0023】
このようなフラボノール配糖体は、例えば、エンジュ、小豆等の豆類、ヤマモモ、ミカン等の柑橘類、ソバ、ドクダミ等の植物から抽出することにより得ることができるが、必要により当該抽出物を加水分解してもよい。
本発明における(B)フラボノール配糖体は、水への溶解性、風味の点から、イソクエルシトリン(上記式(1)において、R1、R2、R4及びR6が水酸基、R3、R5及びR7が水素原子、Raがβ−グルコシル基、Rbが水素原子、Rcが水素原子である化合物)に糖を付加したもの(上記式(1)において、nが0〜10のもの)が好ましい。その製造法は、イソクエルシトリンを澱粉の存在下に糖転移酵素を作用させて配糖化したものや、ルチン(上記式(1)において、R1、R2、R4及びR6が水酸基、R3、R5及びR7が水素原子、Raがβ−グルコシル基、Rbがα−ラムノシル基、Rcが水素原子である化合物)に部分加水分解酵素を作用させて糖鎖部に含まれるラムノシル基を除去した後、澱粉の存在下に糖転移酵素を作用させ配糖化したものが挙げられる。また、上記ルチンに部分加水分解酵素を作用させずにラムノシル基を残したまま、澱粉の存在下に糖転位酵素を作用させて配糖化したものを用いることもできる。これら酵素処理物は、一般式(1)におけるRaに、Rcとしてグルコース1〜10個がα−1,4結合した化合物又はそれらの混合物である。
上記酵素処理物は、例えば、酵素処理イソクエルシトリン、酵素処理ルチンとして商業的に入手することも可能である。中でも、水への溶解性、風味の点から、酵素処理イソクエルシトリンが好適に使用される。
【0024】
本発明においては、上記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体として下記のものが好適に使用される。
aとしてはβ−グルコシル基及びβ−ラムノシル基が挙げられるが、このうち、β−グルコシル基が好ましい。ここで、Raにおける「β−グルコシル基」とはβ−グルコースの1位及び6位、又は1位、4位及び6位の水酸基の水素原子を除いた残基をいい、「β−ラムノシル基」とはβ−ラムノースの1位及び4位の水酸基の水素原子を除いた残基をいう。
bがα−ラムノシル基であるとき、nは1〜4が好ましく、これらの混合物であることが特に好ましい。また、Rbが水素原子であるとき、nは0〜7が好ましく、これらの混合物であることが特に好ましい。ここで、Rbにおける「α−ラムノシル基」とはα−ラムノースの1位の水酸基の水素原子を除いた残基をいい、Rcにおける「α−グルコシル基」とはα−グルコースの1位及び4位の水酸基又は1位の水酸基の水素原子を除いた残基をいう。
1〜R7はそれぞれ独立に水素原子、水酸基又はメトキシ基を示すが、R1〜R7のうち、R1〜R3の少なくとも1つと、R4及びR6が水酸基であり、かつ残基が水素原子であることが好ましく、R1、R2、R4及びR6が水酸基であるか、又はR1〜R3、R4及びR6が水酸基であり、かつ残基が水素原子であることが特に好ましい。
【0025】
本発明のゼリー状食品中の(B)上記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の含有量は0.005質量%以上であるが、食感の点から、その下限は0.01質量%、更に0.02質量%、特に0.03質量%であることが好ましく、他方上限は0.5質量%、更に0.3質量%、特に0.1質量%であることが好ましい。
【0026】
本発明のゼリー状食品中の成分(A)と成分(B)との含有質量比は、成分(A)の質量%をWA、成分Bの質量%をWBとしたときに、下記数式(1);
(数1)
(WB)/(WA2≧0.06(/質量%) (1)
に示す関係を満たすことが好ましい。(WB)/(WA2は、食感の観点から、更に0.08(/質量%)以上、特に0.1(/質量%)以上であることが好ましく、他方上限は1(/質量%)、更に0.7(/質量%)、特に0.5(/質量%)であることが好ましい。
【0027】
本発明のゼリー状食品において、(C)ゲル化剤としては、グルコマンナン、カラギーナン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、タラガム、トラガントガム、カードラン、ナタデココ、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、寒天等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いが、異種のものを複数使用することが好ましい。これにより、所望の弾性及び粘性に調整することが容易になり、種々の食感及び食味のゼリー状食品とすることができる。特に、グルコマンナンは弾性を高めて保水力を向上させる性質があり、また、カラギーナンやキサンタンガム等の他のゲル化剤は粘性を付与する性質がある。そこで、グルコマンナンにカラギーナンやキサンタンガム等を組み合わせると、保水力がありかつ耐崩壊性に優れたゲルを形成することができ、カテキン類由来の苦渋味成分の口腔内拡散を効果的に抑制するため、風味の点から好ましい。
【0028】
本発明のゼリー状食品は、カテキン類由来の呈味を効果的に改善し、かつ容器から出し易くなる点から、ゲル強度を5,000〜30,000N/m2とすることが好ましく、更に6,000〜20,000N/m2、特に8,000〜18,000N/m2、殊更10,000〜15,000N/m2とすることが好ましい。ここで、「ゲル強度」とは、破断応力値、すなわち後掲の実施例に記載の方法にしたがって試料にプランジャーにより一定速度で圧力を加えた際に試料が破断される直前の瞬間応力値を指し、圧力を加えた部分の単位面積当たりの応力で表されるものである。ゲル強度は、その値が低いと、軟らかな食感を呈し、逆に数値が高いと、硬い食感を呈する。
【0029】
本発明のゼリー状食品において、(C)ゲル化剤の含有量はゲル化剤の種類により異なるが、ゼリー状食品中に合計0.1〜1質量%であることが、ゲル強度が上記範囲内となる点から好ましく、更に0.2〜0.6質量%、特に0.3〜0.45質量%であることが好ましい。また、グルコマンナンとカラギーナンとを組み合わせる場合には、カラギーナン/グルコマンナンの質量比を1〜3、更に1.2〜2.5、特に1.3〜2.3とすることが、保水力がありかつ耐崩壊性に優れたゲルを形成し、カテキン由来の苦渋を効果的に抑制することができる点から好ましい。
【0030】
本発明のゼリー状食品は、20℃におけるpHを2〜7、更に2.5〜6.5、特に3〜6とすることが、ゲル強度の点、風味、非重合体カテキン類の安定性の点から好ましい。pHを調整するには、有機酸類、無機酸類、酸味料、pH調整剤等を用いることができる。
【0031】
本発明のゼリー状食品は、(D)甘味料を含有することが、カテキン類由来の苦渋味を効果的に抑えて風味良好とする点から好ましい。(D)甘味料としては、天然から得られる炭水化物、グリセロール類、人工甘味料が例示され、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
炭水化物としては、例えば、単糖、オリゴ糖、複合多糖、糖アルコールが例示され、ブドウ糖、ショ糖、果糖、ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましい。グリセロール類としては、グリセロール等の多価アルコールが例示される。人工甘味料としては、例えば、アスパルテーム、スクラロース、サッカリンなどの高甘度甘味料が例示される。
中でも、スクラロースは、甘みの立ち上がりが速く、しかもその甘みが安定して持続するという味質を有するため、非重合体カテキン類由来の苦味が立ち上がる前にスクラロースの甘みにより食した際の初期の異味だけなく食した後の喉越しを効果的に改善することができる。
【0032】
なお、(D)甘味料の含有量は甘味料の種類に応じて適宜決定することが可能であるが、ショ糖の甘味度に換算して10〜30%、更に12〜28%、特に15〜25%となる量とすることが、カテキン類由来の呈味を効果的に改善して風味良好とする点から好ましい。
【0033】
本発明のゼリー状食品は、(E)酸味料を含有することが、カテキン類由来の呈味を効果的に改善して風味良好とする点から好ましい。(E)酸味料としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等から選ばれる1種又は2種以上を含有することが好ましく、中でもクエン酸を含有することが好ましい。
(E)酸味料の含有量は、酸味料の種類に応じて適宜決定することが可能であるが、本発明のゼリー状食品中に合計0.3〜1質量%、特に0.4〜0.8質量%であることが好ましい。
【0034】
本発明のゼリー状食品は、その他必要により、酸化防止剤、香料、有機酸塩類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、品質安定剤等の添加剤を単独で、あるいは複数含有してもよい。
【0035】
本発明のゼリー状食品は、ゲル強度にもよるが、種々の容器に詰めることができる。例えば、ゲル強度が8,000〜25,000N/m2であれば、ポリエチレンテレフタレート、アルミ、ナイロン、ポリエチレン等を主成分とする成形容器(いわゆるパウチ容器)に充填して提供することができる。また、ゲル強度が8,000N/m2未満であれば、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
【実施例】
【0036】
(1)緑茶抽出物の製造法
緑茶抽出物 (ポリフェノンHG、三井農林社製)200gを常温、250r/min攪拌条件下の95質量%エタノール水溶液800g中に分散させ、酸性白土ミズカエース#600(水澤化学社製)100gを投入後、約10分間攪拌を続けた。その後、2号ろ紙でろ過した。その後、活性炭16gを添加し再び2号ろ紙でろ過した。次に0.2μmメンブランフィルターによって再ろ過し、濁りの除去を行った。40℃、0.0272kg/cm2でエタノールを留去し、イオン交換水でカテキン類濃度を調整して緑茶精製物を得た。緑茶抽出物の水溶液中のカテキン濃度は14.8質量%であった。
【0037】
(2)非重合体カテキン類の測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により分析した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、移動相B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0038】
(3)フラボノール配糖体の測定
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式Waters2695、WATERS製)を用い、カラムはShimpach VP ODS(150×4.6mmI.D.)を装着し、カラム温度40℃でグラディエント法により行った。移動相C液はリン酸を0.05質量%含有する蒸留水溶液、移動相D液はメタノール溶液とし、流速は1mL/L、試料注入量は10μL、UV検出器波長は368nmの条件で行った。なお、グラディエントの条件は、以下のとおりである。
【0039】
時間(分) C液濃度(体積%) D液濃度(体積%)
0 95% 5%
20 80% 20%
40 30% 70%
41 0% 100%
46 0% 100%
47 95% 5%
60 95% 5%
【0040】
(4)ゲル強度の測定
ゲル強度は、EZ Test 小型卓上試験機(島津製作所)を用い、以下の条件で測定した。
・プランジャー :直径3mm
・プランジャー移動速度 :2.5mm/秒
・試料サイズ :内径約30mmの容器に25mmの高さに充填
・測定温度 :室温(25℃)
【0041】
(5)食感の評価
各ゼリー状食品について、専門パネル3名による食感評価を行った。食感の評価は、食した際の口の中でのゼリーの崩壊しやすさを下記の基準で評価し、各パネルの評点の平均値をもって評価値とした。
3:口の中で崩壊し易い
2:口の中でやや崩壊し易い
1:口の中で崩壊し難い
0:口の中で非常に崩壊し難い
【0042】
(6)容器からの出し易さの評価
各ゼリー状食品を、本体がポリエチレンテレフタレート、アルミ、ナイロン、ポリエチレンが積層された、容量200mLで、取り出し口が内径10mm、長さ40mmのパウチ容器に180g充填し、5℃にて48時間保存後、専門パネル3名により、上記食感評価の際の容器からの出し易さについて、下記の基準で評価した。各パネルの評点の平均値をもって評価値とした。
3:容器から出し易い
2:容器からやや出し難い
1:容器から出し難い
0:容器から非常に出し難い
【0043】
実施例1〜6及び比較例1〜4
表1の処方により各成分を次のように配合した。適量のイオン交換水に甘味料を加え、
クエン酸三ナトリウムによりpHを3.7に調整した後に、ゲル化剤を少量ずつ混合し攪拌後、緑茶抽出物の水溶液、酸味料及び酵素処理イソクエルシトリン(サンメリンAU−3000(P)、三栄源エフエフアイ(株)社製、純度9.4質量%)を添加した。この配合物をよく攪拌しながら95℃で30秒加熱してゲル化剤を溶解し、続いて、これを冷却することによりゼリー状食品を調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の結果から、ゲル化剤を配合したゼリー状食品において、非重合体カテキン類を高濃度で含有させても、一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の少なくとも1種を0.005質量%以上含有させることにより、容器から出し易く、かつ食感の良好なゼリー状食品とすることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(C);
(A)非重合体カテキン類:0.1〜0.5質量%、
(B)下記一般式(1)で表されるフラボノール配糖体の少なくとも1種:0.005質量%以上、及び
(C)ゲル化剤
を含有する、ゼリー状食品。
【化1】

(式中、R1〜R7はそれぞれ独立に水素原子、水酸基又はメトキシ基を示し、Raはβ−グルコシル基又はβ−ラムノシル基を示し、Rbはα−ラムノシル基又は水素原子を示し、Rcはα−グルコシル基を示し、nは0〜10の整数を示す。)
【請求項2】
ゲル強度が5,000〜30,000N/m2である、請求項1記載のゼリー状食品。
【請求項3】
前記成分(A)と前記成分(B)の質量比が下記数式(1)に示す関係を満たす、請求項1又は2記載のゼリー状食品。
(数1)
(WB)/(WA2≧0.06(/質量%) (1)
[式中、WAは前記成分(A)の質量%を示し、WBは前記成分(B)の質量%を示す。]
【請求項4】
ゼリー状食品がパウチ容器に充填してなるものである、請求項1〜3のいずれか1項記載のゼリー状食品。

【公開番号】特開2012−85568(P2012−85568A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233962(P2010−233962)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】