説明

ソケットユニット

【課題】レールと枕木の間に介在させる床板を枕木に固定するための、螺旋条付きネジ釘と該ネジ釘に螺合したナットを能率的に締め込む。
【解決手段】アウターソケット5内にインナーソケット8が一体回転可能に配備され、インナーソケットにネジ釘9の頭部93を係合し、該ネジ釘9に螺合したナット90にアウターソケット5を係合し、アウターソケットを回転させることにより、ネジ釘9及びナット90aを一体回転させて締め込むためのソケットユニット4であって、インナーソケット8がネジ釘9の頭部93に嵌った状態で、ナット90aの位相に拘わらずアウターソケット5をナット90aに係合可能な様に、アウターソケット5はインナーソケット8に対して回転方向に遊びがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールと枕木との間に設けられる床板を枕木に固定するための、螺旋条付きねじ釘等の締込み軸と該軸上の瘤部(90)を一緒に同方向に回転させて締め込むためのソケットユニット、該ソケットユニットを具えた締付機、及び締込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、図11、図12に示す如く、レールLと枕木(1)との間には、レールLによる枕木(1)の磨耗を抑えたり、レールLが枕木(1)に食い込むことを防ぐために床板(タイプレート)(2a)が敷設されている。
床板(2a)は金属製で四角形を呈し、その四隅にネジ釘挿通孔(21)を開設している。
【0003】
頭部側にフランジ(95)、フランジ(95)より先端側に螺旋条(92)を有する大型のネジ釘(9a)にバネ座金(94)を外嵌して前記床板(2a)の挿通孔(21)に挿通し、該ネジ釘(9a)を枕木(1)に開設したネジ穴(12)に締め込む。ネジ釘(9a)上のフランジ(95)がバネ座金(94)を押圧して、床板(2a)を枕木(1)に固定できる。
該床板(2a)上にレールLを敷設し、板バネ(23)をボルト(24)によって床板(2a)に締着すれば、床板(2)を介してレールLを枕木(1)に固定できる(特許文献1の図7、図8)。
【0004】
レールLの磨耗、列車通過時のレールLの横圧等によって軌間寸法が変化した場合やレールLの交換の際には、軌間調整が必要となる。軌間は、通常±2mm以内で調整及び管理がなされている。
軌間調整の方法は、まず、床板(2a)を固定しているネジ釘(9a)を抜き、ネジ穴(12)を詰栓によって埋め戻す。次に、床板(2a)を軌間方向に移動させ、所定の軌間寸法になるように配置する。次に、枕木(1)に床板(2a)の挿通孔(21)に合わせてネジ穴(12)を穿設する。次に、バネ座金(94)を外嵌したネジ釘(9a)を前記挿通孔(21)に挿通して、ネジ穴(12)に締め込むことによって行われている。
【0005】
ところが、上記従来の軌間調整作業では、ネジ穴(12)を埋め戻す作業及び、ネジ穴(12)の再形成作業が必要であり、軌間調整に多大の手間が掛かるという問題があった。又、埋め戻されたネジ穴の近傍に再度ネジ穴を形成するため、再形成されたネジ穴付近における枕木の強度が低下する。従って、再形成されたネジ穴にネジ釘を締め込むことによって、床板が枕木に固定される際、枕木のネジ釘支持力が低下するという問題があった。
【0006】
そこで、図8、図9、図10に示す床板(2)と偏芯座金(3)が提案されている(特許文献1の図1乃至図6)。該床板(2)のネジ釘挿通孔(21)の上端には、偏芯座金(3)を収容する凹段部(22)が形成されている。
偏芯座金(3)には偏芯位置にネジ釘挿通用の孔(31)が開設されている。偏芯座金(3)は、孔(31)の偏芯量が異なるものが複数種準備されており、偏芯量の異なる偏芯座金(3)と取り替えることにより、ネジ穴(12)の位置を変更することなく、床板(2)の位置をずらして軌間調整を行うことができる。従って、前述したネジ穴(12)を埋め戻したり、新たにネジ穴(12)を穿設する必要はないので、容易に軌間調整できるとともに、軌間調整作業の時間を短縮することができる。
【0007】
しかし、上記偏芯座金(3)を用いた場合でも、ネジ釘(9a)上のフランジ(95)が邪魔になって、ネジ釘(9a)を枕木(1)から抜き外さねば、偏芯座金(3)の交換ができない。軌間調整の都度、ネジ釘(9a)の抜き外しと、締付けを繰り返すと、ネジ穴(12)が傷み、枕木(1)のネジ釘支持力が低下する。又、大型のネジ釘(9a)の抜き外し、再締付けには、大きな労力を有し、又、手間が掛かる。
【0008】
出願人は、上記問題を解決するために、図4aに示す如く、頭部(93)と螺旋条(92)との間にネジ面(91)を形成し、該ネジ面(91)に前記フランジ(95)の代わりとなるナット(90a)を螺合したネジ釘(9)を案出した。 該ネジ釘(9)は、ナット(90a)によって偏芯座金(3)を押圧して、床板(2)を枕木(1)に固定できる。
ネジ釘(9)の頭部(93)は、引っ掛かり角部が周方向に12個ある多角形軸部であり、隣り合う角部の間は凹んでいる周知の多角形軸部となっている。
【0009】
頭部(93)をインパクトレンチの出力軸に係合してネジ釘(9)を枕木(1)に締め込み、次にネジ釘(9)のネジ面(91)にナット(90a)を螺合して偏芯座金(3)を押圧するのである。
上記締込みでは、ネジ釘(9)の締込みと、ナット(90a)の締込みを別個に行っており、手間がかかった。
【0010】
そこで出願人は、本発明に先立って、ネジ釘(9)のネジ面(91)に予め計算された所定の高さ位置にナット(90a)をセットし、ネジ釘(9)をインパクトレンチで締め込むことを試みた。ネジ釘(9)の締込み完了の時点で、ナット(90a)が適正な力で偏芯座金(3)を押圧する筈であった。
しかし、ナット(90a)が偏芯座金(3)に着座すると、インパクトレンチの振動等でナット(90a)がネジ釘(9)に対して緩み方向に空回りして、適正な力で偏芯座金(3)を押圧できず、ナット(90a)を追い締めする必要のあることが分かった。
【0011】
【特許文献1】特開2003−328303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記図4aに示すネジ釘(9)及びナット(90a)を、ナット(90a)がネジ釘(9)に対して空回りすることなく、一緒に、同方向に回転させることのできるソケットユニット、該ソケットユニットを具えた締付機、及び締込み方法を明らかにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1は、アウターソケット(5)内にインナーソケット(8)が、アウターソケット(5)と一体的に回転可能に同心に配備され、インナーソケット(8)に相手締込み軸の頭部(93)を一体回転可能に係合し、該締込み軸に螺合した瘤部(90)にアウターソケット(5)を係合し、アウターソケット(5)又はインナーソケット(8)に動力回転工具等の回転工具を連繋して回転させることにより、締込み軸及び瘤部(90)を同方向に一緒に回転させて締込み軸を締め込むためのソケットユニット(4)であって、インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、瘤部(90)の位相に拘わらずアウターソケット(5)を瘤部(90)に係合可能な様に、アウターソケット(5)はインナーソケット(8)に対して回転方向に遊びがある。
【0014】
請求項2は、請求項1のソケットユニットにおいて、瘤部(90)は締込み軸に対して回転可能に螺合されているナット(90a)である。
【0015】
請求項3は、請求項2のソケットユニットにおいて、締込み軸は、レールLと枕木(1)との間に設けられる床板(2)を枕木(1)に固定するためのネジ釘(9)であり、該ネジ釘は、頭部(93)側にナット(90a)を螺合するネジ面(91)を有し、該ネジ面(91)より先端側には螺旋条(92)が形成されている。
【0016】
請求項4は、請求項1乃至3の何れかに記載の締付け用ソケットユニットにおいて、インナーソケット(8)はアウターソケット(5)の奥方へスライド可能に配備され、アウターソケット(5)の先端からから飛び出し方向にバネ付勢されて、インナーソケット(8)の先端がアウターソケット(5)の先端近傍位置にある待機状態からバネに抗して後退可能である。
【0017】
請求項5の締付機は、請求項1乃至4の何れかに記載のソケットユニット(4)のアウターソケット(5)又はインナーソケット(8)にインパクトレンチ等の動力回転工具の出力軸を係合している。
【0018】
請求項6のネジ釘の締込み方法は、予め締込み軸に、該締込み軸の頭部(93)から所定長さ離れた位置にナット(90a)を螺合しておき、請求項1乃至4の何れかに記載のソケットユニット(4)に、締込み軸の頭部(93)とナット(90a)を係合し、ソケットユニット(4)のアウターソケット(5)又はインナーソケット(8)を回転駆動して締込み軸とナット(90a)を、一緒に同方向に回転させて、締込み軸を相手部材に締め込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1のソケットユニットは、インナーソケット(8)に相手締込み軸の頭部(93)を係合し、該締込み軸上の瘤部(90)にアウターソケット(5)を係合して、アウターソケット(5)又はインナーソケット(8)を回転させることにより、締込み軸及び瘤部(90)を回転させて締め込むことができる。
インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、瘤部(90)の位相に拘わらずアウターソケット(5)を瘤部(90)に係合可能な様に、アウターソケット(5)はインナーソケット(8)に対して回転方向に遊びがあるため、アウターソケット(5)を瘤部(90)に係合出来ない不都合は生じない。
締込み軸の頭部(93)が破損或いは損傷しても、アウターソケット(5)が瘤部(90)に係合している限り、締込み軸の締込みができる。
【0020】
請求項2のソケットユニットは、インナーソケット(8)に前記締込み軸の頭部(93)を係合し、インナーソケット(8)に該締込み軸上のナット(90a)を係合して、インナーソケット(8)又はアウターソケット(5)を回転駆動すれば、締込み軸とナット(90a)が一緒に回転するため、ナット(90a)が着座した際に、ナット(90a)が締込み軸上を空回りすることはあり得ない。
インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、ナット(90a)の位相に拘わらずアウターソケット(5)をナット(90a)に係合可能な様に、アウターソケット(5)はインナーソケット(8)に対して回転方向に遊びがあるため、アウターソケット(5)をナット(90a)に係合出来ない不都合は生じない。
【0021】
請求項3のソケットユニットの効果は、上記請求項2の効果において、締込み軸をネジ釘(9)と読み替えればよく、ネジ釘(9)で床板(2)を枕木(1)に固定できる。
【0022】
請求項4のソケットユニットは、相手締込み軸の頭部(93)にインナーソケット(8)を係合してから、ソケットユニット(4)を押し込んで、ナット(90)をアウターソケット(5)に係合できるから、両ソケットに締込み軸の頭部(93)及び瘤部(90)を係合させる作業性がよい。
【0023】
請求項5の締付機は、インパクトレンチ等の動力回転工具でソケットユニット(4)を回転駆動できるから、大型の締込み軸の締込みが可能となる。
【0024】
請求項6の締込み方法は、締込み軸を締め込み終えた状態で、締込み軸上のナット(90a)が着座する相手部材を適正な力で押圧する様に、締込み軸に対するナット(90a)の高さ位置を適正にしておくことにより、ナット(90a)に対する追い締めは不要であり、締め込み作業能率は向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施例のソケットユニット(4)、該ソケットユニット(4)を具えた締付機及び締付け方法において、締付けネジ軸は、図8、図9の床板(2)を枕木(1)に固定するための大型のネジ釘(9)、瘤部(90)は、該ネジ釘(9)に螺合したナット(90a)、具体的には六角ナットである。
枕木(1)、床板(2)、ネジ釘(9)、ナット(90a)及びナット(90a)が着座する偏芯座金(3)は公知であり、説明済みである。
【0026】
ソケットユニット(4)は、図1、図2に示す如く、アウターソケット(5)と該アウターソケット(5)内にアウターソケット(5)と同心に配備され、アウターソケット(5)と一体回転可能なインナーソケット(8)から成る。
インナーソケット(8)は、アウターソケット(5)に対して軸方向にスライド可能且つ回転方向に遊びがある。
【0027】
アウターソケット(5)は、アウターソケット本体(6)と、該アウターソケット本体(6)に脱着可能な保持筒(7)とからなる。
アウターソケット本体(6)は両端に開口する筒体であり、先端側はナット係合穴(61)、基端側はインナーソケット(8)をスライド案内するガイド孔(60)が形成されている。
ナット係合穴(61)に係合するナット(90a)は六角ナットであるが、ナット係合穴(61)は、30゜づつ位相がづれていても係合可能に、12条のV底の溝条(61a)が周方向に等間隔に並んでいる多角形穴である。
【0028】
アウターソケット本体(6)の外周面には、軸方向の略中央付部に鍔部(62)が形成され、鍔部(62)よりも基端側に周溝(64)が開設されている。
上記鍔部(62)には、等間隔に複数の切欠(63)が開設されている。
【0029】
保持筒(7)は両端に開口する筒体であり、先端部はアウターソケット本体(6)の基端部が緊密に嵌まる保持穴(71)、中央部は後記インナーソケット(8)をスライド案内するガイド穴(73)、基端部は動力回転工具(100)の出力軸(101)を係合する係合部(74)となっている。実施例では動力回転工具(100)はインパクトレンチ(100a)である。
アウターソケット本体(6)の先端面には前記アウターソケット本体(6)の鍔部(62)に開設した切欠(63)に嵌合可能な複数の爪片(72)が突設されている。
保持穴(71)の周壁には周壁を貫通してロックネジ(65)が螺合されている。
【0030】
アウターソケット本体(6)と保持筒(7)の連結は、アウターソケット本体(6)の鍔部(62)の切欠(63)に保持筒(7)の爪片(72)を嵌め、アウターソケット本体(6)の基端を保持筒(7)の保持穴(71)に嵌め、ロックネジ(65)をアウターソケット本体(6)の周溝(64)に押し当てて行われる。
保持筒(7)のガイド穴(73)は前記アウターソケット本体(6)のガイド穴(60)と同径であり、穴面に、軸方向に延びる突条(66)が周方向に等間隔に突設されている。
実施例では、突条(66)は120°間隔に位置している。
係合部(74)は、実施例では、軸心に開設した係合穴(74a)であり、具体的には断面略正方形の四角穴である。
【0031】
インナーソケット(8)は両端に開口する筒体であり、先端部は、前記ネジ釘(9)の頭部(93)が一体回転可能に係合する頭部係合穴(81)、中央部は後記するスライド部材(41)に対する案内穴(80)となっている。
インナーソケット(8)の外周面には、基端側に軸方向に延びる3つの凸条(88)が周方向に等間隔に突設されている。
上記凸条(88)は、図3に示す如く、前記アウターソケット本体(6)内面の隣り合う突条(66)(66)間の各溝条(67)(67)(67)に、周方向に遊び(余裕)のある状態に嵌まる。
インナーソケット(8)とアウターソケット本体(6)の回転方向の遊び量は、インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、ナット(90a)の位相に拘わらずアウターソケット(5)を空回しすることによってナット(90a)に係合可能な量である。
アウターソケット(5)は30°ピッチで六角ナット(90a)の角部が係合するV底溝(61a)が形成されているから、上記遊び量は30°以上であればよく、実施例では60°である。
【0032】
前記保持筒(7)のガイド穴(73)底部に座金(51)を嵌め込み、座金(51)とインナーソケット(8)との間にバネ(87)を配備してインナーソケット(8)を飛出し方向に付勢しており、インナーソケット(8)は凸条(88)の先端面を、アウターソケット本体(6)内面の内向きフランジ(68)に当てて待機している。
インナーソケット(8)の待機状態で、インナーソケット(8)の先端面は、アウターソケット本体(6)の先端面の近傍に位置し、実施例では、インナーソケット(8)の先端面はアウターソケット本体(6)の先端面より少し凹んだ位置にある。
【0033】
インナーソケット(8)には、なめり防止機構が設けられている。なめり防止機構は、インナーソケット(8)の頭部係合穴(81)にネジ釘(9)の頭部(93)が確実に嵌まり込まない状態で、アウターソケット(5)のナット係合穴(61)にナット(90a)が係合して締め込みを行って、頭部(93)を損傷してしまうことを防止する役割をなす。
【0034】
なめり防止機構は、前記インナーソケット(8)の筒壁に配備したストッパー片(83)と、インナーソケット(8)内に軸方向にスライド可能に設けたスライド部材(41)と、スライド部材(41)をインナーソケット(8)の先端側に付勢する第2バネ(86)とによって構成される。
ストッパー片(83)は、インナーソケット(8)の筒壁を貫通して凸条(88)の頂面に開口した小孔(82)にスライド可能に嵌まっている。
ストッパー片(83)は球体を引き伸ばした形状を呈し、小孔(82)から少しはみ出す大きさである。
【0035】
スライド部材(41)は短筒体であって、先端側にインナーソケット(8)の段部に当たる肩部(41a)が形成され、外周面に周溝(41b)が開設されている。
スライド部材(41)は、インナーソケット(8)の基端側内面に配備した座金(85)とスライド部材(41)との間に配備した第2バネ(86)によって、インナーソケット(8)の先端側に付勢されている。前記インナーソケット(8)を付勢するバネ(87)は第2バネ(86)よりもバネ力は大きい。
【0036】
図2に示す、インナーソケット(8)の待機位置で、ストッパー片(83)は、スライド部材(41)の基端側周面に押されて、インナーソケット(8)の凸条(88)から臨出し、アウターソケット本体(6)内面の周溝(69)に嵌まっている。従って、インナーソケット(8)だけ後退方向に押圧しても、アウターソケット(5)に対してインナーソケット(8)を後退させることはできない。
インナーソケット(8)にネジ釘(9)の頭部(93)が確実に係合すると、頭部(93)が第2バネ(86)に抗してスライド部材(41)を押して後退させる。このため、ストッパー片(83)は、スライド部材(41)の周溝(41b)に嵌まることが許され、ストッパー片(83)は、アウターソケット本体(6)の周溝(69)から脱して、インナーソケット(8)の後退を許す。
斯くして、インナーソケット(8)の頭部係合穴(81)にネジ釘(9)の頭部(93)が確実に嵌まり込まずに、アウターソケット(5)のナット係合穴(61)にナット(90a)が係合して締め込みが行われることはない。
【0037】
然して、図4aに示す如く、枕木(1)上で位置決めした床板(2)の挿通孔(21)の上端凹段部(22)に収容した偏芯座金(3)のネジ釘挿通用の孔(31)との対応位置に、ネジ釘(9)用の下穴(11)を開設しておく。
予めネジ面(91)の所定高さ位置にナット(90a)を螺合したネジ釘(9)を、偏芯座金(3)のネジ釘挿通用の孔(31)に位置させる。
ネジ釘(9)に対するナット(90a)の所定高さ位置とは、ネジ釘(9)を締め込み終えた状態で、締込み軸上のナット(90a)が着座する相手部材、ここでは偏芯座金(3)を適正な力で押圧できる位置のことである。
【0038】
図4b、図4cに示す如く、インパクトレンチ(100a)の出力軸(101)を、ソケットユニット(4)の係合穴(74a)に嵌め込み、インナーソケット(8)にネジ釘(9)の頭部(93)を、アウターソケット(5)のナット係合穴(61)にナット(90a)を係合する。ナット(90a)とナット係合穴(61)の位相がずれていても、インバクトレンチ(100a)全体を右或いは左に少し回転させて、アウターソケット(5)とナット(90a)の位相合わせをすれば、アウターソケット(5)をナット(90a)に係合できる。
【0039】
インパクトレンチ(100a)を作動させると、アウターソケット(5)が回転し、アウターソケット(5)内面の突条(66)がインナーソケット(8)の凸条(88)に当接して、インナーソケット(8)も一緒に回転する。これによって、ネジ釘(9)とナット(90a)を一緒にネジ釘(9)の締込み方向に回転させて枕木(1)の下穴(11)に締め込むことができる。
【0040】
ネジ釘(9)とナット(90a)が一体的に回転し始めてから、図5aに示す如く、ネジ釘(9)を締め込み終えるまでに、ネジ釘(9)に対してナット(90a)が空回りすることはないから、ネジ釘(9)に対してナット(90a)の高さ位置がずれることはない。従って、ネジ釘(9)を締込み終えた時点で、ナット(90a)は偏芯座金(3)を適正な力で押圧できる。
又、ネジ釘(9)とナット(90a)を別個に締め付けることに較べて、極めて作業性がよい。
【0041】
上記実施例では、動力回転工具(100)の出力軸(101)を、アウターソケット(5)基端の係合穴(74a)に係合したが、図6、図7に示す如く、インナーソケット(8)に出力軸(101)との係合部(74)を設けることもできる。
図6のソケットユニット(4)では、アウターソケット(5)は先端にナット係合穴(61)を具えた1つものである。
インナーソケット(8)は、先端に締込み軸頭部に対する頭部係合穴(81)有するインナーソケット本体(84a)と、該インナーソケット本体(84a)を軸心に沿ってスライド案内するガイド筒(84b)とによって構成される。
【0042】
インナーソケット本体(84a)には前記なめり防止機構が連繋されている。
なめり防止機構については、図2に基づいて説明済みであるから、図2で用いた符号を図6にも付すことによって、説明に代える。
【0043】
ガイド筒(84b)は、アウターソケット(5)内面に回転方向に遊びのある状態に嵌まり、アウターソケット(5)とスプライン係合(44)して遊び量が規制されている。該遊び量は、インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、ナット(90a)の位相に拘わらずアウターソケット(5)をナット(90a)に係合可能な量である。
【0044】
インナーソケット本体(84a)とガイド筒(84b)は、回転方向に遊びのないスプライン係合(89)している。
インナーソケット本体(84a)は、バネ(87)によって飛び出し方向に付勢されている。
ガイド筒(84b)の基端軸心に係合部(74)が設けられている。図6において、係合部(74)は断面略四角形の係合穴(74a)である。
【0045】
ガイド筒(84b)が動力回転工具(100)によって回転駆動されると、インナーソケット本体(84a)が回転し、又、ガイド筒(84b)とアウターソケット(5)のスプラインが当接するとアウターソケット(5)もガイド筒(84b)と一体に回転する。
【0046】
上記図6、図7のソケットユニット(4)の場合、インナーソケット(8)にネジ釘(9)の頭部(93)を係合してから、アウターソケット(5)をナット(90a)を係合させる位相合わせに際して、動力回転工具(100)をそのままの姿勢にして、アウターソケット(5)を手回して行うことができ、位相合わせ操作が楽である。
【0047】
又、上記2つの実施例では、ソケットユニット(4)の、動力回転工具(100)の出力軸(101)との係合部(74)は係合穴(74a)であるが、係合部(74)を多角形軸とし、締付機本体(100)の出力軸(101)を筒体とする、或いは軸体の出力軸(101)と多角形係合部との間に別のソケットを介在させて、出力軸(101)とアウターソケット(5)を一体回転可能に連繋することもできる。
【0048】
本発明が締込み対象とするのは、上記ネジ釘(9)及びナット(90a)に限らず、締込み軸と、該締込み軸に螺合したナットを、同時に同方向に回転して締め込むことが望ましい場合に締込み対象とすることができる。
【0049】
更に、締込み軸の頭部(93)側に、アウターソケット(5)に係合可能な瘤部(図示せず)を締込み軸と一体に形成した特殊な締込み軸(図示せず)に対して、本発明のソケットユニット(4)用いて締め込むことができる。 上記瘤部は、例えば、図4aのナット(90a)がネジ釘(9)と一体に形成されているものとすることができる。
ソケットユニット(4)のインナーソケット(8)に頭部(93)を係合し、アウターソケット(5)に瘤部(90)を係合して、ソケットユニット(4)を動力回転工具等の回転工具で回転駆動して特殊締込み軸を締め込む。
頭部の破損、損傷が生じても、アウターソケット(5)と瘤部の係合が維持されている限り、締込み可能であ。
特殊締込み軸の頭部(93)、瘤部(90)、インナーソケット(8)の頭部係合穴(81)、アウターソケット(5)の瘤部に対する係合穴(61)は、互いに一体回転可能に係合可能であれば、形状は問わない。
【0050】
上記実施例の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮する様に解すべきではない。又、本発明の各部構成は上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ソケットユニットの分解斜視図である。
【図2】ソケットユニットの断面である。
【図3】図1A−A線に沿う端面図である。
【図4】a図は枕木上にネジ釘をセットした状態の説明図、b図はネジ釘にインナーソケットを係合した状態の説明図、c図は締込み途上の説明図である。
【図5】a図は締付完了時の説明図、b図はソケットユニットを外した状態の説明図である。
【図6】他の実施例のソケットユニットの軸心を含む面での断面図である。
【図7】図6B−B線沿う端面図である。
【図8】偏芯座金をセットした床板の平面図である。
【図9】a図は偏芯座金の平面図、b図は偏芯座金をセットした床板の要部断面図である。
【図10】従来のネジ釘を用いた床板締結部の要部断面図である。
【図11】従来のネジ釘を用いて締結した床板の平面図である。
【図12】従来のネジ釘を用いたレール固定部の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 枕木
2 床板
3 偏芯座金
4 ソケットユニット
5 アウターソケット
6 アウターソケット本体
7 保持筒
8 インナーソケット
9 ネジ釘
90 瘤部
90a ナット
93 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターソケット(5)内にインナーソケット(8)が、アウターソケット(5)と一体的に回転可能に同心に配備され、インナーソケット(8)に相手締込み軸の頭部(93)を一体回転可能に係合し、該締込み軸上に設けられ該頭部(93)より外周輪郭の大きな瘤部(90)にアウターソケット(5)を一体回転可能に係合し、アウターソケット(5)又はインナーソケット(8)に動力回転工具等の回転工具を連繋して回転させることにより、締込み軸を締め込むためのソケットユニット(4)であって、インナーソケット(8)が締付軸の頭部(93)に係合した状態で、瘤部(90)の位相に拘わらずアウターソケット(5)を瘤部(90)に係合可能な様に、アウターソケット(5)はインナーソケット(8)に対して回転方向に遊びがある締付け用ソケットユニット。
【請求項2】
瘤部(90)は、締込み軸に対して回転可能に螺合されているナット(90a)である請求項1に記載の締付け用ソケットユニット。
【請求項3】
締込み軸は、レールLと枕木(1)との間に設けられる床板(2)を枕木(1)に固定するためのネジ釘(9)であり、該ネジ釘は、頭部(93)側にナット(90a)を螺合するネジ面(91)を有し、該ネジ面(91)より先端側には螺旋条(92)が形成されている、請求項2に記載の締付け用ソケットユニット。
【請求項4】
インナーソケット(8)はアウターソケット(5)の奥方へスライド可能に配備され、アウターソケット(5)の先端から飛び出し方向にバネ付勢されて、インナーソケット(8)の先端がアウターソケット(5)の先端近傍位置にある待機状態からバネ(87)に抗して後退可能である、請求項1乃至又3の何れかに記載の締付け用ソケットユニット。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載のソケットユニット(4)の、アウターソケット(5)又はインナーソケット(8)にインパクトレンチ等の動力回転工具の出力軸を係合した締付機。
【請求項6】
予め締込み軸に、該締込み軸の頭部(93)から所定長さ離れた位置にナット(90a)を螺合しておき、請求項1乃至4の何れかに記載のソケットユニット(4)に、締込み軸の頭部(93)とナット(90a)を係合し、ソケットユニット(4)のアウターソケット(5)又はインナーソケット(8)を回転駆動して締込み軸とナット(90a)を、一緒に同方向に回転させて、締込み軸を相手部材に締め込むことを特徴とする締込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−36727(P2008−36727A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−210526(P2006−210526)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(593206986)株式会社関ヶ原製作所 (18)
【出願人】(000201467)前田金属工業株式会社 (22)