説明

ソケットレンチ

【課題】 ソケット本体側に設けた組付け穴と、操作ハンドル側に備えたドライブとがガタつくことなく、安定した係合状態を得られ、これら両者の嵌め合わせ感も良好なソケットレンチを提供する。
【解決手段】 操作ハンドル1に備えたドライブ2に支持穴4を設け、該支持穴4にコイルスプリング5によって押圧された鋼球6を移動自在に係合する。そして、前記鋼球6が部分的に係合する凹入部9を、レンチ本体3の、前記ドライブ2を係合する組付け穴7の内壁に設け、しかも、前記レンチ本体3に前記ドライブ2と同軸上にして被操作用ボルトbの多角形頭部b´を係合する接続角穴8を設ける。そして、前記凹入部9は、互いに交差方向に配して、前記鋼球6が接する、一対の接触壁9a,9bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多角形のナットやボルトの頭部の外側にレンチ本体を嵌めて、該レンチ本体に操作ハンドルの操作によってドライブの駆動力を与えて前記ナット等を締付けたり、弛めたりするソケットレンチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ソケットレンチは、操作ハンドルに備えたドライブに支持穴を設け、該支持穴にスプリングによって押圧された鋼球を出入り自在に係合し、該鋼球が部分的に係合する凹入部を、レンチ本体の、前記ドライブを係合する組付け穴の内壁に設け、しかも、前記レンチ本体に前記ドライブと同軸上にして、例えば、被操作用ボルトの多角形頭部を係合する接続角穴を設けた構造のものとして知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
なお、特許文献1として示すものは、前記操作ハンドルに組付けた別体のアダプターに前記ドライブを設けた構造を採るものであるが、本発明は、該構造は勿論、実施例で示すように、前記アダプターを省略して、ドライブを操作ハンドル(の頭部)に直接設けた形式のソケットレンチにも適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−9876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献記載のソケットレンチは、図9で示すように、レンチ本体103の組付け穴107の内壁に設けた凹入部109の壁面を、鋼球106が成す円弧面より曲率半径の大きい円弧面で構成してある。
【0006】
従って、操作ハンドル101の先端に設けたドライブ102を組付け穴107に係合させて鋼球106をコイルスプリング105の付勢によって、凹入部109に係合させてその壁面に接触させたとき、鋼球106と凹入部109の壁面は互いに点接触し、球体である鋼球106は凹入部109の壁面に沿って移動しようとし、組付け穴107とドライブ102の安定した係合状態を得にくく、嵌め合わせ感も良好といえない。このことは、ドライブ102に組付けたレンチ本体103の、接続角穴108を利用した、被操作用ボルトの多角形頭部に対する係合操作の円滑さに影響を与えている。
【0007】
本発明は、レンチ本体側に設けた組付け穴と、操作ハンドル側に備えたドライブとがガタつくことなく安定した係合状態を得られ、すなわち、レンチ本体の、被操作用ボルトの多角形頭部に対する係合操作を円滑に行うことのできるソケットレンチを提供することを目的として創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
操作ハンドルに備えたドライブに支持穴を設け、該支持穴にスプリングによって押圧された鋼球を移動自在に係合し、該鋼球が部分的に係合する凹入部を、レンチ本体の、前記ドライブを係合する組付け穴の内壁に設け、しかも、前記レンチ本体に、前記ドライブと同軸上にして被操作用ボルトの多角形頭部を係合する接続角穴を設けると共に、前記凹入部は、互いに交差方向に配して、前記鋼球が接する、一対の接触壁を備えた構成としたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライブを組付け穴に係合させた際、ドライブに備えた鋼球が組付け穴にコイルスプリングの付勢によって確実に係合し、従って、ドライブを備えた操作ハンドルと、レンチ本体との組付けを確実に行うことができる。殊に、コイルスプリングに押圧された鋼球は、組付け穴の凹入部の、一対の接触壁に接するから、鋼球はコイルスプリングとの接触を含めた、いわば、3点で挟持されることになり、従って、レンチ本体とドライブ間に安定した状態で配され、レンチ本体とドライブはガタつくことなく安定した状態で組付けることのできるソケットレンチを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一部欠截正面図。
【図2】図1の一部拡大図。
【図3】図2の横断面図。
【図4】図2の一部拡大図。
【図5】レンチ本体の平面図。
【図6】図5のx−x線断面図。
【図7】図6のy−y線断面図。
【図8】レンチ本体の底面図。
【図9】従来例の鋼球と凹入部の関係を示す断面図。
【実施例】
【0011】
図面は本発明に係るソケットレンチの一実施例を示し、実施例のソケットレンチAは、操作ハンドル1と、該操作ハンドル1の先端に設けたドライブ2に取り外し自在に組付けたレンチ本体3とで構成する。
【0012】
操作ハンドル1は、先端側の頭部1a内に、図示省略したラチェット機構を備え、該ラチェット機構によって正転方向又は逆転方向(時計回り方向又は反時計回り方向)のいずれかの選択された方向にのみ回動が許される前記ドライブ2を具備している。
【0013】
ドライブ(実施例のドライブは断面ほぼ四角形体で成るが、要は、レンチ本体3の後記の組付け穴7に略一致させて係合し、レンチ本体3に駆動力を伝えられる形状であれば良い。)2は、軸線方向の中間部の周側に、ドライブ2の軸線に対して直交する方向に設けた支持穴4を備え、該支持穴4にコイルスプリング5の付勢によって一部が前記周側より突出する鋼球6を係合してある。
【0014】
すなわち、鋼球6は、ドライブ2の支持穴4に係合されており、該鋼球6は、前記支持穴4の、鋼球6の径より狭くした開口端部4aによってドライブ2からの脱落が防止され、また、該鋼球6と支持穴4の奥壁4bとの間に介在させた前記コイルスプリング5の付勢によって、一部が前記開口端4a(ドライブ2の前記周側)より常時突出するようにしてドライブ2に組込んである。
【0015】
レンチ本体3は、軸線方向の一方側の外径に対し、他方側の外径を狭くした短い円柱体の径の狭い側の端面3aに、断面方形状の組付け穴7を、広い側の端面3bに、断面六角形の接続角穴8をそれぞれ設け、組付け穴7に前記ドライブ2を挿入して嵌めると共に、前記接続角穴8に被装作用のボルトbの六角形頭部b´や六角形ナット(図示省略)を係合して用いるようにしてある。
【0016】
そして、組付け穴7の、ドライブ2に組込んだ前記鋼球6が接する内壁7aには、組付け穴7にドライブ2を嵌めたとき、前記鋼球6が係合する凹入部9を設け、凹入部9に対する前記鋼球6の係合関係により、組付け穴7とドライブ2の接続関係は維持され、操作ハンドル1とレンチ本体3は互いに組付けられ、ソケットレンチAを構成する。
【0017】
凹入部9は、前記狭い側の端面3a側の、小さな円弧の曲面状の接触壁9aと、前記広い側の端面3b側の、大きな円弧の曲面状の接触壁9bとが互いに交差方向に配され、これら接触壁9a,9bが、開口端側から、互いに連続する奥端に至るに従って次第に近接するように傾斜状に配されて構成され、開口形状を、レンチ本体3の前記軸線に交差する方向に長いやや楕円形としたもので、接触壁9a,9b間に前記鋼球6の一部が係合して該接触壁9a,9bに接触するようにしてある。
【0018】
実施例は、接触壁9a,9bを曲面状にしてあるが、これは、ドライブ2に対する凹入部9の加工をし易くするためで、曲面形状の必要はなく、少なくも、一方側が傾斜してて、鋼球6がその傾斜面に接触する形態のものであれば、本発明の実施に不都合はない。
【0019】
なお、凹入部9は、断面方形状の組付け穴7の四方の内壁7a,7a,7a,7aに設けて、ドライブ2を係合する際に方向性を選ぶ必要がないようにしてあるが、四方の各内壁7aに設ける必要はなく、一つの内壁7aのみに設ける場合であっても、本発明の実施には不都合はない。
【0020】
組付け穴7にドライブ2を挿し入れると、ドライブ2に備えた鋼球6は、組付け穴7の内壁7aに接して押圧されてコイルスプリング5の付勢に抗して支持穴4内の奥壁4b方向に後退する。この後退状態が保たれた状態で、ドライブ2が、組付け穴7内を移動して組付け穴内壁7aの凹入部9位置に至ると、コイルスプリング5によって支持穴4から突出する方向、すなわち、開口端部4a方向に付勢されていた鋼球6は、前記内壁7aによる、コイルスプリング5の付勢に対する規制が解かれ、支持穴4より突出して凹入部9に係合し、操作ハンドル1とレンチ本体3は互いに組付けられ、ソケットレンチAとして機能することになる。
【0021】
そして、レンチ本体3の接続角穴8を、被操作用ボルトbの頭部b´の外側に嵌め込んで、操作ハンドル1を、ラチェット機構(これを省略したソケットレンチでも本発明は実施できる)を利用して、正転方向又は逆転方向に回すと、前記頭部b´は選択した方向に回って、ボルトbは締付けられ、或いは、緩められるのである。
【符号の説明】
【0022】
1 操作ハンドル
2 ドライブ
3 レンチ本体
4 支持穴
5 コイルスプリング
6 鋼球
7 組付け穴
8 接続角穴
9 凹入部
9a,9b 接触壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ハンドルに備えたドライブに支持穴を設け、該支持穴にスプリングによって押圧された鋼球を移動自在に係合し、該鋼球が部分的に係合する凹入部を、レンチ本体の、前記ドライブを係合する組付け穴の内壁に設け、しかも、前記レンチ本体に、前記ドライブと同軸上にして被操作用ボルトの多角形頭部を係合する接続角穴を設けると共に、前記凹入部は、互いに交差方向に配して、前記鋼球が接する、一対の接触壁を備えた、ソケットレンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−125970(P2011−125970A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287463(P2009−287463)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(390003436)株式会社山下工業研究所 (9)