説明

ソケット交換型レンチ

【課題】ソケットレンチないしラチェットレンチと呼ばれる工具に関し、ソケットを工具箱に収めたり、工具箱から取り出したりする手間やソケットを探し回る手間をなくし、能率よく快適に作業を行うことができるようにする。
【解決手段】ソケットの両端に寸法の異なるボルト頭に嵌合するボックス4を設け、その両端のボックスの間にソケット取付部6に嵌合する取付孔5を設けると共に、レバー12の先端のソケット取付軸9aの突出長さを長くするか、あるいはソケット取付軸9を延長するための延長取付軸2を設ける。好ましくは、レバー12の端部にソケット保持部13を設ける。従来構造における4個のソケットをレバー12に取り付けて作業ができ、ソケットを工具箱に戻したり、床に置いたりすることなく、4種類のボルトやナットの締め緩め作業を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、手で操作されるレバーの先端にボルトやナットの六角頭に嵌合するソケットを取り付けてボルトやナットを締結するのに用いる手工具に関するもので、一般にソケットレンチないしラチェットレンチと呼ばれる工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手で揺動操作されるレバーの先端にスライドボタンなどで回転方向を切替えることができるラチェットを介して装着されたソケット取付軸に、締め又は緩めようとするボルトやナットの六角頭に対応する寸法のソケットを取り付けて、当該ボルトやナットの締結や締結解除を行うソケットレンチないしラチェットレンチと呼ばれる工具は、機械の組立場や修理場で広く用いられている。機械に使われているボルトやナットの大きさには種々のものがあるので、この種のレンチは、大きさの異なる多数のソケットが用意されており、その多数のソケットと1本のレバーとが一つの工具箱に収容できるようになっているのが普通である。
【0003】
従来のこの種のレンチのソケットは、図4に示すように、短円筒状の部材の一端にレバー1の先端に設けたソケット取付軸9に嵌合する取付孔5を備え、他端に六角形を30度ずらして重ね合せた断面形状のボックス4を備えている。ボックス4の寸法は、締結するボルトやナットの大きさによって異なるが、近似したソケット寸法のものに同じ寸法の取付孔5を設けて、異なる寸法のソケットを取付軸9に適宜交換して取り付けることができるようになっている。
【0004】
ソケット取付軸9は、通常は四角形断面で、レバー1の先端から側方に短く突出しており、ばね付勢されたボールとソケットの取付孔5に設けた凹所との嵌合等により、取り付けたソケットの脱落を防止する構造となっている。
【0005】
ソケットのボックス4は、ボルトやナットの六角頭に合せた寸法となっているので、例えば組立てあるいは修理する機械に寸法の異なる4種類のボルトやナットが使用されているときは、寸法の異なる4個のソケットを適時交換しながらそれらのボルトやナットの締結や取り外し作業を行う。
【特許文献1】実開平2−7967号公報
【特許文献2】実開平6−66960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
JISなどには非常に多くの寸法のボルトやナットが規定されているが、特定の機械部分に用いられているボルトやナットの寸法は、それほど多くはない。例えば自動車の内装の修理では、4種類程度のソケットでほとんどのボルトやナットの締結を行うことができる。従ってこの場合には、4個のソケットを頻繁に交換して機械の分解や組立を行うのであるが、交換のために取り外したソケットをすぐにまた取り付けなければならない状況が多いため、取り外したソケットを工具箱の所定の位置に収めながら作業を行うのは非常に煩雑であり、時間がかかる。そこで取り外したソケットを近くに置いておくこととなるが、置いたソケットが手足に触れて転がったり、置いた場所が分からなくなったりすることがあり、ソケットを探すのに手間取ることが往々にして起こる。
【0007】
この発明は、自動車の内装あるいは足回りやエンジンルームの修理場等における上記のような実情に鑑み、ソケットを工具箱に収めたり、工具箱から取り出したりする手間やソケットを探し回る手間をなくし、能率よく快適に作業を行うことが可能なソケット交換型レンチを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ソケットの軸方向長さを従来のものより長くして、その両端に寸法の異なるボルト頭に嵌合するボックス4を設け、その両端のボックスの間にソケット取付部6に嵌合する取付孔5を設けると共に、レバー12の先端のソケット取付軸9aの突出長さを長くするか、あるいはソケット取付軸9を延長するための延長取付軸2を設けることによって上記課題を解決したものである。
【0009】
更に好ましくは、レバー12の手で握る方の端部にレバー軸方向に突出するソケット保持軸14を設け、このソケット保持軸14にソケット取付軸9と同様なソケットの取付孔5に嵌合するソケット保持部13を設けることにより、上記課題をよりよく解決したものである。
【0010】
両端にボルト頭やナットとのボックス4を設けたソケット3は、両ボックスの間を貫通する取付孔5をレバー12のソケット取付軸9aに取り付けることによってレバー12に装着される。このような双頭のソケットを2個用いれば、ソケットの交換と反転とによって4種類のボルトやナットの締結を行うことができる。そして、取り外したソケットは、レバーに設けたソケット保持軸14に取り付けておけば、双頭の2個のソケット、すなわち従来構造における4個のソケットをレバー12に取り付けた状態で作業を行うことができ、ソケットを工具箱に戻したり、床に置いたりすることなく、4種類のボルトやナットの締め緩め作業を行うことができる。
【0011】
本願の請求項1の発明に係るソケット交換型レンチは、軸方向両端に異なる寸法のボルト頭に嵌合するボックス4を備えかつその両ボックスを連通するように軸方向中央に取付孔5を備えたソケット3の複数個と、上記ボックスの一方を通って上記取付孔に嵌合する長さのソケット取付軸9a又は延長取付軸2を装着したレバー1、12との組からなるソケット交換型レンチである。
【0012】
本願の請求項2の発明は、上記請求項1記載の手段を備えたソケット交換型レンチにおいて、レバー12の手で握る側の軸方向端部にソケット取付軸9aのソケット取付部6と同構造のソケット保持部13を備えたソケット保持軸14を備えていることを特徴とするソケット交換型レンチである。
【0013】
また、本願の請求項3の発明に係るソケット交換型レンチ用アタッチメントは、軸方向両端に異なる寸法のボルト頭に嵌合するボックス4を備えかつその両ボックスを連通するように軸方向中央に取付孔5を備えたソケット3の複数個と、基端に操作レバーのソケット取付軸9との連結孔10を有しかつ他端に上記ボックスの一方を通って上記取付孔に嵌合するソケット取付部6を有する延長取付軸2との組からなるソケット交換型レンチ用アタッチメントである。
【発明の効果】
【0014】
例えば組立てないし修理する機械に4種類の寸法のボルトやナットが使用されている場合、この発明のソケット交換型レンチでは、2個のソケットを用いれば足り、取り外したソケットを床などに置いておくとしても、置かれるソケットは1個のみなので、手足が触れて置かれたソケットが転がったり、ソケットの置き場所が分からなくなったりする危険が大幅に低減する。すなわち、従来構造のソケット交換型レンチでは、4種類の寸法のボルトやナットが使われている場合、3個のソケットが床などに置かれることとなり、置かれたソケットに手足が触れる機会が多くなると共に、交換しようとする寸法のソケットをどこに置いたか分からなくなることが多く発生したが、この発明により、そのような問題の発生を大幅に低減できる。
【0015】
更にレバー12の手で握る側の軸端にソケット保持軸14を設けた構造は、取り外した1個のソケットを当該保持部13に保持させておくことができるので、4種類の寸法のボルトやナットが用いられている場合であれば、それらに嵌合するソケットの総てをレバーに取り付けておくことができ、置いたソケットが転が
ったり、置き場所が分からなくなったりする事態を生ずることがなくなる。
【0016】
この発明のソケット交換型レンチは、例えば自動車の修理用であれば、内装の修理や足回りの修理などの作業別に、当該機械部分の修理に多く用いる寸法のものを組み合わせた双頭のソケットと既存のラチェットレバーの突出長さの短いソケット取付軸9を延長するための延長取付軸2を提供することによって、経済的にかつそれぞれの機械の組立てや修理により適合したものを得ることができる。
【0017】
すなわち、この発明によれば、複数種の寸法のボルトやナットを用いた機械の組立てや修理を行う際に、作業に使用するソケットの数が従来の2分の1となり、交換のために工具箱に戻されたり床に置かれたりするソケットの数が大幅に減少するので、ソケットレンチを用いたボルトやナットの締結や緩め作業の効率が大幅に向上し、快適に作業を行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1は自動車の内装修理に適したこの発明のソケット交換型レンチの一例を示した図で、従来構造のレバー1と、延長取付軸2と、2個のソケット3a、3bとの組からなっている。
【0019】
ソケット3a、3bは、軸方向両端にそれぞれ異なる寸法のボルトやナットとのボックス4を供えている2個のソケットのボックスの寸法は、例えば17mmと14mm及び12mmと10mmである。ソケット3a、3bの軸方向中央には、両端のボックス4を連通する取付孔5が設けられている。この取付孔5は、延長取付軸2のソケット取付部6に嵌合する一般的には四角形断面の孔である。この取付孔5には、延長取付軸のソケット取付部6に設けた係止ボール7が係合する凹所8が設けられている。
【0020】
延長取付軸2は、一端に従来構造のレバー1に設けられているソケット取付軸9に嵌合する連結孔10を備えている。この連結孔10を設けた部分は、外径が大きくなるので、ソケット3a、3bのボックスの一方を通過する長さの軸部11を設けて、その先端にソケットa、bと嵌合するソケット取付部が設けられている。このソケット取付部6は、既存のレバーのソケット取付部6と異なる形状であってもよいが、あえて異なる形状とすることもないので、同一形状としてやればよい。
【0021】
上記構造のソケット交換型レンチにおいて、レバー1に延長取付軸2を装着し、そのソケット取付部6にソケット3a、3bの一方を装着する。そして、装着したソケットの反転装着と、他方のソケットとの交換により、4種類の寸法のボルトやナットの締め緩め作業を行う。従来構造のソケットが必要なときは、延長取付軸2を取り外して必要とするソケットをレバーのソケット取付軸9に装着する。
【0022】
図2は、この発明のソケット交換型レンチに特に好適なレバーの一例を示した図である。図のレバー12は、従来のレバーと同様な構造のラチェットを介して装着されたソケット取付軸9aを備えているが、当該ソケット取付軸9aは、図1に示した従来構造のレバーにおけるソケット取付軸9より突出長さが長い。この突出長さは、ソケット3a、3bのボックス4の一方を通過して、その先端のソケット取付部6をソケットの取付孔5に差し込める長さである。従って、図2のレバー12を用いるときは、図1に示したような延長取付軸2を使用する必要はない。
【0023】
また、図2のレバー12の手で握る側の軸方向端部には、ソケット取付軸9aと同様な突出長さで、その先端にソケット取付部6と同じ構造のソケット保持部13を設けたソケット保持軸14が固定的に設けられている。
【0024】
図2の構造のレバーでは、ソケット3a、3bの一方をソケット取付軸9aに装着したとき、他方をソケット保持軸14に嵌装して保持する。レバー12の手で握る側の端部に軸方向に保持されたソケットは、レバー操作の邪魔にならないので、この状態でソケット取付軸9aに取り付けたソケットでボルトやナットの締め緩めを行うことができる。そして、ソケット取付軸に取り付けたソケットの反転と、ソケット保持軸に保持したソケットとの交換によって4種類の寸法のボルトやナットの締め緩め作業を行う。頻繁に使用する2個のソケットは、常にレバー12に取り付けられた状態となっているので、使用しないソケットが作業場の床を転がったり置き場所が分からなくなったりすることがなくなる。
【0025】
使用しないソケットを保持するソケット保持軸は、図1に示すような既存のレバー1に着脱自在なアタッチメントとして提供することもできる。すなわち図3に示すように、レバー1の手で握る部分に嵌着される嵌合孔15を有するグリップ部17に図2で説明したと同様なソケット保持部13を設けたアタッチメント16を、双頭のソケット3a、3b及び図1に示した延長取付軸2と共に提供することにより、従来構造のレバー1を用いて図2に示した専用レバー12と同様な利便性を得ることができる。アタッチメント16にレバー1を操作するときに握るグリップ部17を設けることにより、嵌合孔15を長くすることができるから、レバー1へのアタッチメント16の嵌合状態が安定になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の第1実施形態を示す一部断面側面図
【図2】第2実施形態のレバーのみを示す一部断面側面図
【図3】アタッチメント型のソケット保持軸を示す一部断面側面図
【図4】従来のソケットを示す断面図
【符号の説明】
【0027】
1 レバー
2 延長取付軸
3 ソケット
4 ボックス
5 取付孔
6 ソケット取付部
9a ソケット取付軸
10 連結孔
12 レバー
13 ソケット保持部
14 ソケット保持軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向両端に異なる寸法のボルト頭に嵌合するボックス(4)を備えかつその両ボックスを連通するように軸方向中央に取付孔(5)を備えたソケット(3)の複数個と、上記ボックスの一方を通って上記取付孔に嵌合する長さのソケット取付軸(9a)又は延長取付軸(2)を装着したレバー(1,12)との組からなる、ソケット交換型レンチ。
【請求項2】
レバー(12)の手で握る側の軸方向端部にソケット取付軸(9a)のソケット取付部(6)と同構造のソケット保持部(13)を備えたソケット保持軸(14)を備えている、請求項1記載のソケット交換型レンチ。
【請求項3】
軸方向両端に異なる寸法のボルト頭に嵌合するボックス(4)を備えかつその両ボックスを連通するように軸方向中央に取付孔(5)を備えたソケット(3)の複数個と、基端に操作レバーのソケット取付軸(9)との連結孔(10)を有しかつ他端に上記ボックスの一方を通って上記取付孔に嵌合するソケット取付部(6)を有する延長取付軸(2)との組からなる、ソケット交換型レンチ用アタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−289525(P2006−289525A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−110106(P2005−110106)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(505127695)