説明

ソケット及び該ソケットを用いたコンデンサ素子製造用治具

【課題】化成処理液や半導体層形成溶液が腐食性を有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できると共に、陽極体のリード線が種々の線径であっても該リード線を安定して保持できるソケットを提供する。
【解決手段】本発明に係るソケット1は、差込口37が設けられた導電性のソケット本体部2と、ソケット本体部2の一部を差込口37を塞がない態様で覆う樹脂製絶縁部5と、ソケット本体部2の少なくとも差込口37を被覆する樹脂製被覆部3と、を備え、差込口37を被覆した樹脂製被覆部3Aに陽極体のリード線を突き刺してソケット本体部2に電気的に接続した後、前記リード線を取り外すことが繰り返し行われて使用されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、固体電解コンデンサ等に使用されるコンデンサ素子を製造するコンデンサ素子製造用治具に好適に用いられるソケットに関する。
【0002】
なお、本明細書において、「樹脂」の語は、樹脂のみならずゴムをも含む意味で用いている。
【背景技術】
【0003】
パソコン等に使用されるCPU(中央演算処理装置)周りのコンデンサは、電圧変動を抑制し、高リップル(ripple)通過時の発熱を低く抑えるために、高容量かつ低ESR(等価直列抵抗)であることが求められている。このようなコンデンサとしては、アルミニウム固体電解コンデンサ、タンタル固体電解コンデンサ等が用いられている。これら固体電解コンデンサは、表面層に微細な細孔を有するアルミニウム箔または内部に微小な細孔を有するタンタル粉を焼結した焼結体からなる一方の電極(導電体)と、該電極の表面に形成された誘電体層と、該誘電体層上に形成された他方の電極(通常、半導体層)とから構成されたものが知られている。
【0004】
前記固体電解コンデンサは、電気回路が形成された回路基板の下端部に取り付けられたソケットの金属製接続端子に、導電体から延ばされたリード線の一端を電気的に接続すると共に、この導電体を化成処理液に浸漬し、該導電体側を陽極にして前記化成処理液中に配置せしめた陰極との間に電圧を印加して定電流を通電することにより、導電体の表面に誘電体層を形成し、次いで、表面に誘電体層が設けられた前記導電体を半導体層形成溶液に浸漬し、該導電体側を陽極にして前記半導体層形成溶液中に配置せしめた陰極との間に電圧を印加して定電流を通電することにより、前記導電体表面の誘電体層の表面にさらに半導体層を形成する方法が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−244154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記化成処理液として燐酸等の酸を含有する処理液を用いる場合には、ソケットの底面側に露出している金属製接続端子が、燐酸等の酸を含有する化成処理液のミスト等に晒されることによって、その一部が腐食等して落下して前記化成処理液中に混ざり、該化成処理液を汚染するという問題があった。このように化成処理液が汚染されると、良好な誘電体層を形成することが困難になり、十分な耐湿性能を備えたコンデンサを製造することができない。
【0007】
また、上記半導体層形成溶液として、酸を含有する溶液を用いる場合には、前記同様にソケットの底面側に露出している金属製接続端子が、酸を含有する半導体層形成溶液のミスト等に晒されることによって、その一部が腐食等して落下して前記半導体層形成溶液中に混ざり、この溶液を汚染するという問題があった。このように半導体層形成溶液が汚染されると、良好な半導体層を形成することが困難になる。
【0008】
また、導電体のリード線の線径は、導電体の大きさ等により、種々様々で多くの種類がある。しかし、特定のソケットに差し込まれて接続可能な導電体のリード線の線径は、特定の範囲に限定される。それより太いリード線ではソケットに挿入できず、それより細いリード線では、ソケットの奥での電気的な接触は可能であるものの、細過ぎてソケットとの間で電気的な接触状態を十分に維持することができなかったし、ソケットに十分に保持されるのも困難で落下しやすいという問題があった。取り扱う陽極体の大きさが様々な場合には、これに接続するリード線の線径の範囲は必然的に広くなる。このような場合にはそもそも特定の接続ソケットを用いることができないという問題があった。
【0009】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合など、腐食性を有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できると共に、陽極体のリード線の線径が細い場合であっても該リード線を安定して保持できるソケット及びコンデンサ素子製造用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0011】
[1]差込口が設けられた導電性のソケット本体部と、
前記ソケット本体部の一部を前記差込口を塞がない態様で覆う樹脂製絶縁部と、
前記ソケット本体部の少なくとも前記差込口を被覆する樹脂製被覆部と、を備えることを特徴とするソケット。
【0012】
[2]前記被覆部は、前記ソケット本体部の外面の全部を被覆する前項1に記載のソケット。
【0013】
[3]前記被覆部を構成する樹脂は、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である前項1または2に記載のソケット。
【0014】
[4]前記被覆部を構成する樹脂は、シリコーン樹脂である前項1または2に記載のソケット。
【0015】
[5]前記被覆部を構成する樹脂は透明である前項1〜4のいずれか1項に記載のソケット。
【0016】
[6]前記ソケット本体部と電気的に接続された導電性のリード線部を有する前項1〜5のいずれか1項に記載のソケット。
【0017】
[7]電流を制限する電気回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に取り付けられた前項1〜6のいずれか1項に記載のソケットと、を備え、
前記ソケット本体部は、電気的に前記電気回路に接続されていることを特徴とするコンデンサ素子製造用治具。
【0018】
[8]前記電流を制限する電気回路が定電流回路である前項7に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0019】
[9]前記電気回路が、さらに、電圧を制限する回路でもある前項7または8に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0020】
[10]前記ソケットは、前記回路基板の端部に取り付けられている前項7〜9のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【0021】
[11]前項7〜10のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットに導電体を接続すると共に、該導電体を化成処理液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記導電体を陽極にし、前記化成処理液中に配置した電極を陰極にして通電することによって、前記導電体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0022】
[12]前項7〜10のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットに、表面に誘電体層が設けられた導電体を接続すると共に、該導電体を半導体層形成用溶液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記導電体を陽極にし、前記半導体層形成用溶液中に配置した電極を陰極にして通電することによって、前記導電体表面の誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0023】
[13]前項7〜10のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具のソケットに導電体を接続すると共に、該導電体を化成処理液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記導電体を陽極にし、前記化成処理液中に配置した電極を陰極にして通電することによって、前記導電体の表面に誘電体層を形成する誘電体層形成工程と、
前記誘電体層形成工程を経て得られた、表面に誘電体層が設けられた導電体を、半導体層形成用溶液中に浸漬し、この浸漬状態で、前記導電体を陽極にし、前記半導体層形成用溶液中に配置した電極を陰極にして通電することによって、前記導電体表面の誘電体層の表面に半導体層を形成する半導体層形成工程と、を含むことを特徴とするコンデンサ素子の製造方法。
【0024】
[14]前項11〜13のいずれか1項に記載の製造方法で得たコンデンサ素子の導電体及び半導体層に、それぞれ電極端子を電気的に接続し、前記電極端子の一部を残して封止するコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0025】
[1]の発明では、導電性のソケット本体部の少なくとも差込口が樹脂製被覆部で被覆(保護)されているから、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合であっても、少なくとも差込口が、化成処理液や半導体層形成溶液のミスト(酸を含むミスト)等に晒されることがなく、差込口等の腐食を防止できると共に、たとえソケット本体部が腐食したとしてもその腐食物の落下を防止することができ、これにより化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造することができる。更に、ソケット本体部の差込口を被覆した被覆部の存在により導電体(陽極体)のリード線をしっかりと保持することができ、1種類のソケットで幅広い線径(例えば、0.05〜1mm)に対応できるので、たとえリード線の線径が細くても導電体(陽極体)のソケットへの接続状態を安定化させることができる。
【0026】
[2]の発明では、被覆部が、ソケット本体部の外面の全部を被覆しているから、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合であっても、ソケット本体部の全体が、化成処理液や半導体層形成溶液のミスト(酸を含むミスト)等に晒されることがなく、ソケット本体部の腐食を防止できると共に、たとえソケット本体部が腐食したとしてもその腐食物の落下を防止することができ、これにより化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造することができる。更に、ソケット本体部の差込口を被覆した被覆部の存在により導電体(陽極体)のリード線をしっかりと保持することができ、1種類のソケットで幅広い線径(例えば、0.05〜1mm)に対応できるので、たとえリード線の線径が細くても導電体(陽極体)のソケットへの接続状態を安定化させることができる。
【0027】
[3]の発明では、被覆部は、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する構成であるから、被覆部を介して導電体(陽極体)のリード線を差込口に挿通するのが容易なものとなる(陽極体のリード線を被覆部に突き刺して差込口に挿通する操作を容易に行うことができる)。
【0028】
[4]の発明では、被覆部は、シリコーン樹脂を含有する構成であるから、被覆部を介して導電体(陽極体)のリード線を差込口に挿通するのがより容易なものとなる(陽極体のリード線を被覆部に突き刺して差込口に挿通する操作をより容易に行うことができる)。
【0029】
[5]の発明では、被覆部は透明であるから、差込口の腐食の有無等の確認を行うことができる。
【0030】
[6]の発明では、リード線部を設けることにより後述する電気回路とソケットなどを介し接続できるので、該電気回路との接続や別の電気回路への交換が容易になる。
【0031】
[7]、[8]及び[9]の発明では、化成処理液が酸を含有する場合や半導体層形成溶液が酸を含有する場合であっても、化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することなくコンデンサ素子を製造できるコンデンサ素子製造用治具が提供される。従って、本発明に係るコンデンサ素子製造用治具を用いれば、十分な耐湿性能を備えたコンデンサ素子を製造することができる。
【0032】
[10]の発明では、ソケットは、回路基板の端部に取り付けられているから、導電体(陽極体)をソケットに接続する操作を容易化できる。
【0033】
[11]、[12]及び[13]の発明では、コンデンサ素子を製造する際に化成処理液や半導体層形成溶液を汚染することがないから、十分な耐湿性能を備えた高品質のコンデンサ素子を製造できる。
【0034】
[14]の発明では、十分な耐湿性能を備えた高品質のコンデンサを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るコンデンサ素子製造用治具の一実施形態を示す図であって、(A)は正面図、(B)は背面図である。
【図2】図1のコンデンサ素子製造用治具の左側面図である。
【図3】本発明の並列連結ソケットを拡大して示す図であって、(A)は正面図、(B)は底面図、(C)は(A)におけるX−X線の断面図である。
【図4】樹脂で被覆する前(被覆部で覆う前)の連結ソケット群を拡大して示す図であって、(A)は正面図、(B)は底面図、(C)は(A)におけるY−Y線の断面図である。
【図5】本発明のコンデンサ素子製造用治具を用いたコンデンサ素子の製造方法を示す概略図である。
【図6】図5におけるソケットと陽極体の接続態様を示す断面図である。
【図7】本発明のコンデンサ素子の製造方法を電気回路的に示す模式図である(コンデンサ素子製造用治具における回路は2回路のみ示した)。
【図8】コンデンサ素子製造用治具の回路基板における電気接続回路の他の例を示す回路図である。
【図9】本発明に係る製造方法で製造されるコンデンサ素子の一実施形態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明に係るソケット1の一実施形態を図3に示す。このソケット1は、導電性のソケット本体部2と、導電性のリード線部4と、樹脂製絶縁部5と、樹脂製被覆部3とを備える。本実施形態では、複数個のソケット1が並列に連結されて並列連結ソケット8が構成されている。即ち、複数個が並列に配置されて隣り合うソケット1の向き合う(隣り合う)側面同士が連接されることによって並列連結ソケット8が構成されている。
【0037】
前記ソケット本体部2は、導電体(陽極体)52等と電気接続する電気接続端子としての役割を担う部材であり、電気的導通を得るために、金属材等の導電性材料で構成される。前記ソケット本体部2を構成する金属としては、特に限定されるものではないが、銅、鉄、銀及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を主成分(50質量%以上含有する)とする金属(合金を含む)を用いるのが好ましい。前記ソケット本体部2の表面に、錫メッキ、半田メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、銀メッキ、銅メッキ等の従来公知のメッキが少なくとも一層施されていてもよい。
【0038】
本実施形態では、前記ソケット本体部2は、円柱部21と、該円柱部21の底面の周縁部から下方に向けて外側に拡がるように延ばされた傾斜面部22とからなり(図3、4参照)、これら円柱部21及び傾斜面部22は、金属材等の導電性材料で構成されている。前記傾斜面部22により取り囲まれることによってリード線差込口37が形成されている(図3、4参照)。前記円柱部21の内部には、その底面に開口を有した空洞部23が設けられている。この空洞部23は、前記リード線差込口37の空間と連通している。前記空洞部23の内周面には金属製ばね部材24が連接されており、該金属製ばね部材24で取り囲まれてリード線挿通孔38が形成されている。前記リード線挿通孔38は、前記リード線差込口37の空間と連通している。前記リード線挿通孔38に、導電体(陽極体)52のリード線53等が接触状態に挿通配置されることによって、前記ソケット本体部2と前記導電体(陽極体)52とが電気的に接続される。
【0039】
前記ソケット本体部2の上面(円柱部21の上面)の中央からリード線部4が延設されている(図3、4参照)。前記リード線部4は、金属材等の導電性材料で構成される。即ち、前記リード線部4は、前記ソケット本体部2と一体に形成されていて該ソケット本体部2と電気的に接続されている。前記リード線部4を構成する金属としては、前記ソケット本体部2を構成する金属として例示したものと同様のものが挙げられる。前記リード線部4は、通常は、前記ソケット本体部2を構成する金属と同一の金属で構成される。
【0040】
前記ソケット本体部2の一部が、前記リード線差込口37を塞がない態様で、前記樹脂製絶縁部5で被覆されている。本実施形態では、前記ソケット本体部2の周側面の一部が樹脂製絶縁部5で被覆されている(図3、4参照)。
【0041】
前記ソケット本体部2のリード線差込口37は、樹脂が充填されることによって閉塞されている、即ち樹脂製充填被覆部3Aで被覆されている。また、本実施形態では、前記ソケット本体部2の周側面の絶縁部5も樹脂製外周被覆部3Bで被覆されている。また、本実施形態では、前記ソケット本体部2の外面の全部が前記被覆部3(充填被覆部3A及び外周被覆部3B)で被覆されている(図3参照)。
【0042】
前記絶縁部5を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カーボネート樹脂、アミド樹脂、アミドイミド樹脂、エステル樹脂、フェニレンサルファイド樹脂等の硬質樹脂等が挙げられる。
【0043】
前記被覆部3(3A、3B)を構成する樹脂としては、通常、ゴム弾性を有するものが用いられ、中でも、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いるのが、充填被覆部3Aを介して導電体(陽極体)52のリード線53を差込口37に挿通するのが容易なものとなる(陽極体52のリード線53を充填被覆部3Aに突き刺して差込口37を介してリード線挿通孔38に挿通する操作を容易に行うことができる)点で、好ましい。これらの中でも、シリコーン樹脂が特に好適である。
【0044】
前記天然ゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えばイソプレンゴム等が挙げられる。前記合成ゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えばブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルゴム等が挙げられる。前記シリコーン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば未変性のシリコーン樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等が挙げられる。前記熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えばスチレンブタジエンブロック共重合体エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ニトリル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、塩素化ポリエチレンエラストマー、塩素化エチレンコポリマー系エラストマー、エステルハロゲン系エラストマー等が挙げられる。
【0045】
前記被覆部3(3A、3B)を構成する樹脂としては透明樹脂を用いるのが好ましく、この場合には、ソケット本体部2のリード線差込口37等の腐食の有無や腐食の程度の確認を容易に行うことができる利点がある。
【0046】
次に、本発明に係るコンデンサ素子製造用治具10の一実施形態を図1、2に示す。前記コンデンサ素子製造用治具10は、上述した本発明のソケット1(並列連結ソケット8)を用いて構成されたものである。前記コンデンサ素子製造用治具10は、回路基板11と、複数個のソケット1とを備える。
【0047】
前記回路基板11としては、絶縁性基板が用いられる。前記絶縁性基板の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガラスエポキシ樹脂、イミド樹脂、セラミックス等が挙げられる。
【0048】
前記回路基板11の表面には、図1に示すように、一対の電気接続端子14、15を有する電気回路30が形成されている。この電気回路30は、電流を制限する回路(例えば、図7、図8の回路等)を有し、本発明のソケット8及びそれに接続されたリード線53を介して、各導電体(陽極体)52ごとに独立して電流を供給する。
【0049】
したがって、各各導電体(陽極体)52に流れる最大の電流値は、前記回路の電流制限値になる。電流を制限する回路としては、得られるコンデンサの偏差をできるだけ少なくするために、定電流回路(例えば、図7)とすることが好ましい。前記電気回路30が、さらに、各導電体(陽極体)52に印加される電圧を制限する回路であるのがより好ましい。比較的大きな電流を流しても、導電体52に印加される最大の電圧値が制限されるので、化成や半導体層形成の処理時間を短縮できる。
【0050】
前記一対の電気接続端子14、15は、一方の端子14が前記回路基板11の長さ方向の一端部に設けられ、他方の端子15が前記回路基板11の長さ方向の他端部に設けられている。一方の電気接続端子は、電流制限端子14であり、この端子14に与える電圧により電流の制限値が設定される。例えば、図7の回路の場合、電流制限端子14と後述する電圧制限端子15との電位差により、図8の回路の場合、電流制限端子14と陰極板51との電位差により、それぞれ設定できる。
【0051】
前記他方の電気接続端子は、電圧制限端子15であり、この端子15に与える電圧により各導電体(陽極体)52に印加される最大の電圧値が制限される。例えば、図7及び図8の回路の場合、電圧制限端子15と陰極板51との電位差により設定できる。
【0052】
また、前記回路基板11の下端部に前記ソケット1が取り付けられている。即ち、図1、2に示すように、前記回路基板11の下端部に並列連結ソケット(被覆部3を有しない以外は本発明の並列連結ソケット8と同一構成である)88が固定され、各ソケット81の上方に延ばされたリード線部84が約90度湾曲状に折り曲げられ、該リード線部84の先端側が前記回路基板11の下部に設けられた貫通孔にそれぞれ挿通されて半田20で該回路基板11に固着されている(図2参照)。そして、前記回路基板11に固着された各ソケット81の底面の差込口に、本発明の並列連結ソケット8の各ソケット1のリード線部4が挿通接続されることによって、前記並列連結ソケット8が前記回路基板11の下端部に取り付けられている(図1、2、6参照)。前記回路基板11にこのような態様で前記並列連結ソケット8(複数個のソケット1)が取り付けられて本発明のコンデンサ素子製造用治具10が構成されている。図2に示す1段目の並列連結ソケット(被覆部3を有しない)88において、82はソケット本体部、85は絶縁部である。
【0053】
なお、本発明の並列連結ソケット8の各ソケット1のリード線部4を、前記並列連結ソケット88を介さずに直接に、前記回路基板11の下部の貫通孔にそれぞれ挿通して半田20で該回路基板11に固着することによって、前記回路基板11の下端部に並列連結ソケット8を直接に取り付けた構成を採用してもよい。
【0054】
また、本発明において、コンデンサ素子製造用治具10の回路基板11の電気接続回路は、図7に示す構成のものに特に限定されるものではなく、例えば図8に示すような回路構成であってもよい。
【0055】
次に、上記コンデンサ素子製造用治具10を用いたコンデンサ素子の製造方法について説明する。図5にコンデンサ素子の製造方法の一例を概略図で示す。図7は、このコンデンサ素子の製造方法を電気回路的に示した模式図である。
【0056】
まず、中に処理液59が投入された処理容器50を準備する。前記処理液59としては、誘電体層54形成のための化成処理液、半導体層55形成のための半導体層形成用溶液等が挙げられる。
【0057】
一方、前記コンデンサ素子製造用治具10のソケット1に、リード線53を有する導電体(陽極体)52を接続する。即ち、前記コンデンサ素子製造用治具10のソケット1の充填被覆部3Aに、陽極体52のリード線53を突き刺して該リード線53をリード線差込口37を介してリード線挿通孔38に挿通せしめることによって、ソケット1に導電体(陽極体)52を電気的に接続する(図6参照)。前記リード線53の先端側が、前記ソケット本体部2の空洞部23内の金属製ばね部材24と接触状態となるから、ソケット1と導電体(陽極体)52とが電気的に接続される。
【0058】
次いで、前記導電体(陽極体)52がセットされたコンデンサ素子製造用治具10を、前記処理容器50の上方位置に配置せしめ、前記導電体(陽極体)52の少なくとも一部(通常は全部)が前記処理液59に浸漬される状態まで治具10を下降せしめてその高さ位置で治具10を固定する(図5参照)。
【0059】
そして、前記導電体(陽極体)52の浸漬状態において、前記導電体52を陽極にし、前記処理液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電する(図5、7参照)。第1番目の処理液59として化成処理液を用いると、前記通電により導電体52の表面に誘電体層54(図9参照)を形成することができる(誘電体層形成工程)。
【0060】
次いで、前記処理容器50内から化成処理液59を取り出して除去し、必要に応じて前記誘電体層54を表面に備えた導電体(陽極体)52を水洗、乾燥させた後、前記処理容器50内に新たに半導体層形成用溶液59を投入して、前記同様に前記導電体(陽極体)52の少なくとも一部(通常は全部)が前記半導体層形成用溶液59に浸漬される状態まで治具10を下降せしめてその高さ位置で治具10を固定し、前記導電体52を陽極にし、前記半導体層形成用溶液59中に配置した陰極板51を陰極にして通電すると、即ち第2番目の処理液59として半導体層形成用溶液を用いて通電すると、導電体52表面の誘電体層54の表面に半導体層55を形成することができ(半導体層形成工程)、こうして導電体52の表面に誘電体層54が積層され、該誘電体層54の表面にさらに半導体層55が積層されてなるコンデンサ素子56を製造することができる(図9参照)。
【0061】
前記導電体52としては、特に限定されるものではないが、例えば、弁作用金属及び弁作用金属の導電性酸化物からなる群より選ばれる導電体の少なくとも1種を例示できる。これらの具体例としては、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム、一酸化ニオブ、一酸化ジルコニウム等が挙げられる。また、基体の表層に導電体が積層された積層体であってもよい。表層に導電体が積層された積層体の例としては、紙、絶縁性高分子、ガラス等の基体に前記導電体が積層された積層体等が挙げられる。
【0062】
前記導電体52の形状としては、特に限定されず、箔状、板状、棒状、直方体状等が挙げられる。
【0063】
前記化成処理液59としては、特に限定されるものではないが、例えば有機酸またはその塩(例えば、アジピン酸、酢酸、アジピン酸アンモニウム、安息香酸等)、無機酸またはその塩(例えば、燐酸、珪酸、燐酸アンモニウム、珪酸アンモニウム、硫酸、硫酸アンモニウム等)等の従来公知の電解質が溶解又は懸濁した液などが挙げられる。このような化成処理液を用いて前記通電を行うことによって導電体52の表面に、Ta25、Al23、Zr23、Nb25等の絶縁性金属酸化物を含む誘電体層54を形成することができる。
【0064】
なお、このような化成処理液を用いた誘電体層形成工程を省略して、既に表面に誘電体層54が設けられた導電体52を前記半導体層形成工程に供してもよい。このような表面の誘電体層54としては、絶縁性酸化物から選ばれる少なくとも1つを主成分とする誘電体層、セラミックコンデンサやフィルムコンデンサの分野で従来公知の誘電体層が挙げられる。
【0065】
前記半導体層形成用溶液59としては、通電により半導体が形成され得る溶液であれば特に限定されず、例えば、アニリン、チオフェン、ピロール、メチルピロール、これらの置換誘導体(例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン等)等を含有する溶液などが挙げられる。前記半導体層形成用溶液59にさらにドーパントを添加してもよい。前記ドーパントとしては、特に限定されるものではないが、例えば、アリールスルホン酸またはその塩、アルキルスルホン酸またはその塩、各種高分子スルホン酸またはその塩等の公知のドーパント等が挙げられる。このような半導体層形成用溶液59を用いて前記通電を行うことによって前記導電体52表面の誘電体層54の表面に、例えば導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリメチルピロール等)からなる半導体層55を形成することができる。
【0066】
本発明では、上記製造方法で得られたコンデンサ素子56の半導体層55の上に、コンデンサの外部引き出し用の電極端子(例えば、リードフレーム)との電気的接触を良くするために、電極層を設けてもよい。
【0067】
前記電極層は、例えば導電ペーストの固化、メッキ、金属蒸着、耐熱性の導電樹脂フィルムの形成等により形成することができる。導電ペーストとしては、銀ペースト、銅ペースト、アルミニウムペースト、カーボンペースト、ニッケルペースト等が好ましい。これらは1種を用いても2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合、混合してもよく、または別々の層として重ねてもよい。
【0068】
このようにして得たコンデンサ素子56の導電体52及び半導体層55に、それぞれ電極端子を電気的に接続し(例えば、リード線53を一方の電極端子に溶接し、電極層(半導体層)55を銀ペーストなどで他方の電極端子に接着する)、前記電極端子の一部を残して封止することによりコンデンサが得られる。
【0069】
封止方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂モールド外装、樹脂ケース外装、金属製ケース外装、樹脂のディッピングによる外装、ラミネートフィルムによる外装などがある。これらの中でも、小型化と低コスト化が簡単に行えることから、樹脂モールド外装が好ましい。
【実施例】
【0070】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
[陽極体(導電体)52の作製]
ニオブ(Nb)インゴットを水素脆性を利用して粉砕して得たニオブ一次粉(平均粒子径0.20μm)を造粒することによって、平均粒子径127μmのニオブ粉末を得た(このニオブ粉末は微粉であるため自然酸化されていて酸素を11質量%含有する。次に、得られたニオブ粉末を450℃の窒素雰囲気中に放置した後、さらに700℃のアルゴン雰囲気中に放置することにより、窒化量8000ppmの一部窒化されたニオブ粉末(CV値:280000μF・V/g)を得た。前記一部窒化ニオブ粉末を直径0.29mmのニオブ線(リード線)と共に成形した後、1270℃で焼結することにより、直方体形状で長さ2.3mm×幅1.7mm×厚さ1.0mmの焼結体(陽極体)52を作製した。なお、ニオブのリード線53は、焼結体52の1.7mm×1.0mmの面から内方に1.3mm入り込んだ位置まで埋め込まれる一方、該面の中央から外方に向けて10mm突出するように一体に成形されている。
【0072】
[本発明の並列連結ソケット8の作製]
1個の並列連結ソケット(プレシデップ社製「PCDレセプタクル311シリーズ丸ピンDIPソケット」、2.54mmピッチ、64ピン連結ソケット、リード線4は曲げられずに直線状に延ばされている)を準備し、この並列連結ソケットの底面に凹設された各リード線差込口37のそれぞれにシリコーン樹脂(GE東芝シリコーン社製「TSE392−C」)を注入充填して充填被覆部3Aを形成すると共に、ソケット本体部2の外面の全部に同一のシリコーン樹脂を被覆して外周被覆部3Bを形成する(リード線4を除く金属露出部を全てシリコーン樹脂で被覆する)ことによって、本発明の並列連結ソケット8を得た(図3参照)。
【0073】
[本発明の固体電解コンデンサ素子製造用治具の作製]
まず、長さ194.0mm×幅33.0mm×厚さ1.6mmの銅張ガラスエポキシ基板(回路基板)11を準備した(図1参照)。この銅張ガラスエポキシ基板11は、長さ方向(図面左右方向)の両端部における幅方向(図面上下方向)の一端側(図面下側)に切り欠き部12が設けられており、この左右の切り欠き部12、12の上側の領域にそれぞれ23mm×8mmの大きさの電気端子部14、15が設けられている。一方の切り欠き部12の上側の領域に電流制限端子14が設けられ、他方の切り欠き部12の上側の領域に電圧制限端子15が設けられている(図1参照)。
【0074】
前記銅張ガラスエポキシ基板11には、図7の回路、すなわち64個の20kΩの抵抗器(誤差1%)18及び64個のトランジスタ(2SA2154GR)19並びに片面(正面)のみに1個の並列連結ソケット(プレシデップ社製「PCDレセプタクル399シリーズ丸ピンDIPソケット」、2.54mmピッチ、64ピン連結ソケット)88が実装されている(図1、2参照)。
【0075】
各ソケット81のリード線84は、図2に示すように、ソケット本体部82の上面から上方に向けて延ばされたのち基板11に向けて約90度湾曲状に折り曲げられ、該基板11の下部に設けられた64個の穴にそれぞれ挿通されて半田20で回路基板11に固着されている。
【0076】
前記並列連結ソケット88の底面に凹設されたリード線差込口に、上記本発明の並列連結ソケット8(並列連結ソケットの底面のリード線差込口37にシリコーン樹脂を充填して充填被覆部3Aを形成すると共にソケット本体部2の外面の全部にもシリコーン樹脂を被覆して外周被覆部3Bを形成してなるもの)の各リード線4をそれぞれ差し込んで連結して、前記並列連結ソケット88の下に本発明の並列連結ソケット8を連結して2段に構成した。こうして銅張ガラスエポキシ基板(回路基板)11に並列連結ソケット8が取り付けられてなる固体電解コンデンサ素子製造用治具10を得た(図1、2参照)。なお、2段目の並列連結ソケット8を陽極体52接続端子として用いる。
【0077】
[コンデンサ素子の製造]
前記固体電解コンデンサ素子製造用治具10の並列連結ソケット8の各リード線差込孔38に、前記陽極体(導電性焼結体)52のニオブのリード線53を挿通して電気的に接続した(図5、6参照)。即ち、前記陽極体52のリード線53を前記ソケット1の充填被覆部3Aに突き刺して前記リード線差込孔38に挿通して該ソケット1に電気的に接続した。このように陽極体52が接続されたコンデンサ素子製造用治具10を4枚準備し、これらを、接続された陽極体52が下に吊るされる向きとなるように、平行に配列させる保持枠に取り付けた。この保持枠を、中に2質量%燐酸水溶液(処理液)59が入った金属(ステンレス)製の処理容器50の上方位置に配置せしめた(図5参照)。前記4枚のコンデンサ素子製造用治具10は、互いに8mmの間隔をあけて平行状に前記保持枠に取り付けられている。なお、前記金属製処理容器50は、陰極板51の役割も兼ねる。
【0078】
前記保持枠を操作して、前記陽極体52の全部及びリード線53の下端5mm分が前記処理液59に浸漬されるように前記治具10を下降せしめてその高さ位置で固定した。この浸漬状態で、電圧制限値(化成電圧)が10Vとなるように電圧制限端子15と陰極板(金属製処理容器50を含む)51との間に電圧を印加し、電流制限値が2mAとなるように電流制限端子14と電圧制限端子15との間に電圧を印加して、通電した。前記処理液59の温度を65℃に維持した状態で6時間陽極酸化を行うことによって、前記導電性焼結体52の細孔及び外表面並びにリード線の一部(5mm分)の表面に誘電体層54を形成した。
【0079】
<比較例1>
2段目のソケットにおいて被覆部3(充填被覆部3A及び外周被覆部3B)を設けない構成とした以外は、実施例1と同様にして化成処理を行って誘電体層を形成した(誘電体層形成工程を実施した)。
【0080】
<実施例2>
陽極体52として、次のような陽極体Xを用いた以外は、実施例1と同様にして化成処理を行って誘電体層54を形成した(誘電体層形成工程を実施した)。即ち、実施例1で得られた一部窒化ニオブ粉末を0.15mmφ(直径0.15mm)のニオブ線(リード線)と共に成形した後、1270℃で焼結することにより、直方体形状で長さ1.1mm×幅0.53mm×厚さ0.43mmの陽極体X(焼結体)52を作製し、これを用いた。なお、この陽極体Xでは、ニオブのリード線53は、焼結体の0.53mm×0.43mmの面から内方に0.74mm入り込んだ位置まで埋め込まれる一方、該面の中央から外方に向けて10mm突出するように一体に成形されている。
【0081】
<比較例2>
2段目のソケットにおいて被覆部3(充填被覆部3A及び外周被覆部3B)を設けない構成とした以外は、実施例2と同様にしたが、被覆部3を設けていないので、導電体52を2段目のソケットに接続固定することができなかった(導電体52が2段目のソケットから脱落した)。従って、この比較例2については、これ以後の化成処理を行うことがでなかった。
【0082】
上記のようにして化成処理を行った後、陽極体52を取り外し、また2段目のソケット1を取り外し、このソケット1の底面のリード線差込口37の腐食の有無、程度を目視により観察した。観察後、再度2段目のソケット1を1段目のソケット81に差し込んだ後該2段目のソケット1に新たな陽極体52を差し込んで接続して前記同様にして化成処理を行った。この第2回の化成処理を行った後、前記同様に、陽極体52を取り外し、また2段目のソケット1を取り外し、このソケット1の底面のリード線差込口37の腐食の有無、程度を目視により観察した。このような化成処理、腐食観察を繰り返し行うことにより、何回目の化成処理で腐食がどの程度進むかを比較例1と実施例1に関して調べた。
【0083】
その結果、比較例1では、8回目の化成処理で64連ソケットの数個のソケットで腐食が始まり、22回目の化成処理で64連ソケットの約半数のソケットが腐食することがわかった。また、14回目の化成処理後において処理容器50の内部の底面(化成処理液の底部)には銅色の粉状物質が薄く堆積されていた。
【0084】
これに対し、実施例1では、57回目の化成処理後においても全てのソケット1においてリード線差込口37を含めて全く腐食が認められなかった。また、115回目の化成処理後において処理容器50の内部の底面(化成処理液の底部)には何らの粉状物質も観察されることはなかった。
【0085】
また、実施例2では、74回目の化成処理後においても全てのソケット1においてリード線差込口37を含めて全く腐食が認められないことを確認した。
【0086】
次に、実施例1で22回目の化成処理で得られた、表面に誘電体層54が形成された導電体52の該誘電体層54の表面に、導電性高分子(アントラキノンスルホン酸がドープされたエチレンジオキシチオフェンポリマー)からなる半導体層55、カーボンペースト、銀ペーストを順次積層硬化し、リードフレーム付け、封止、エージング、フレーム切断折り曲げ加工、電気測定を順次行って、大きさ3.5mm×2.8mm×1.8mm、定格2.5V、容量330μFのチップ状固体電解コンデンサを作製した。また、比較例1で22回目の化成処理で得られた、表面に誘電体層54が形成された導電体52を用いて前記同様にして定格2.5V、容量330μFのチップ状固体電解コンデンサを作製した。
【0087】
<固体電解コンデンサの耐湿性試験>
上記実施例1系の固体電解コンデンサ20個および上記比較例1系の固体電解コンデンサ20個を、ピーク温度260℃5秒で230℃以上が30秒の温度パターンを有するリフロー炉中で基板に実装した後、該実装品を60℃90%RHの恒温恒湿槽に入れ、電圧無印加状態で2000時間放置した。この後室温に戻し、この実装品について室温で2.5V印加で30秒後のLC(漏れ電流)測定を行った。
【0088】
その結果、実施例1系の実装品では、コンデンサ20個全てにおいてLC(漏れ電流)値は0.1CVμA以下であり良好であった。これに対し、比較例1系の実装品は、9個のコンデンサがLC(漏れ電流)値が0.1CVμAを超えておりLC値不良であることがわかった。
【0089】
本願は、2009年12月15日付で出願された日本国特許出願の特願2009−284033号の優先権主張を伴うものであり、その開示内容は、そのまま本願の一部を構成するものである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係るソケットは、コンデンサ素子製造用治具の部材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、本発明のコンデンサ素子製造用治具は、電解コンデンサ素子製造用治具として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。また、本発明の製造方法により得られたコンデンサは、例えば、パソコン、サーバー、カメラ、ゲーム機、DVD、AV機器、携帯電話等のデジタル機器や、各種電源等の電子機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1…ソケット
2…ソケット本体部
3…被覆部
3A…充填被覆部
3B…外周被覆部
4…リード線部
5…絶縁部
8…並列連結ソケット
10…コンデンサ素子製造用治具
11…回路基板
14…電流制限素子(電気接続端子)
15…電圧制限素子(電気接続端子)
18…抵抗器
19…トランジスタ
30…電気回路
31…ダイオード
37…リード線差込口
51…陰極板
52…陽極体(導電体)
54…誘電体層
55…半導体層
56…コンデンサ素子
59…処理液(化成処理液、半導体層形成用溶液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込口が設けられた導電性のソケット本体部と、
前記ソケット本体部の一部を前記差込口を塞がない態様で覆う樹脂製絶縁部と、
前記ソケット本体部の少なくとも前記差込口を被覆する樹脂製被覆部と、を備え、
前記被覆部を構成する樹脂は、ゴム弾性を有する樹脂であり、
前記差込口を被覆した樹脂製被覆部に陽極体のリード線を突き刺して差込口に挿通してソケット本体部に電気的に接続した後、前記リード線を取り外すことが繰り返し行われて使用されるものであることを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記被覆部は、前記ソケット本体部の外面の全部を被覆する請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記被覆部を構成する樹脂は、天然ゴム、合成ゴム、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー及び尿素樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1または2に記載のソケット。
【請求項4】
前記被覆部を構成する樹脂は、シリコーン樹脂である請求項1または2に記載のソケット。
【請求項5】
前記被覆部を構成する樹脂は透明である請求項1〜4のいずれか1項に記載のソケット。
【請求項6】
前記ソケット本体部と電気的に接続された導電性のリード線部を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のソケット。
【請求項7】
電流を制限する電気回路が形成された回路基板と、
前記回路基板に取り付けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載のソケットと、を備え、
前記ソケット本体部は、電気的に前記電気回路に接続されていることを特徴とするコンデンサ素子製造用治具。
【請求項8】
前記電流を制限する電気回路が定電流回路である請求項7に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【請求項9】
前記電気回路が、さらに、電圧を制限する回路でもある請求項7または8に記載のコンデンサ素子製造用治具。
【請求項10】
前記ソケットは、前記回路基板の端部に取り付けられている請求項7〜9のいずれか1項に記載のコンデンサ素子製造用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−256949(P2012−256949A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219073(P2012−219073)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【分割の表示】特願2011−546100(P2011−546100)の分割
【原出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】