説明

ソケット継手

【課題】内部流体の残留による発錆を防止でき、配管同士を安定して強固に連結できるソケット継手を提供する。
【解決手段】2以上の配管2、3を互いに連結させるためにそれぞれの配管2、3の端部を内部に挿入させて保持するための配管挿入部5を有すると共に、これら挿入された配管2、3を互いに連結する流路4を有するソケット継手1において、配管挿入部5に、挿入される配管2、3の端面と突き合わされる突合せ部6を形成すると共に、突合せ部6の外周部に開先部7を形成し、開先部7の径方向外方に溶接用トーチ11を導入するための溶接作業用領域12を形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2以上の配管を互いに連結させるソケット継手に関する。
【背景技術】
【0002】
配管同士を接続する工法としては、突合せ溶接が一般に知られている。突合せ溶接は、それぞれの配管の端部外周に開先となる切欠を形成する必要があり、現地での加工が必要となる。このため、現地での加工が困難である場合、配管同士をソケット継手を介して接続することがある。
【0003】
一般的なソケット継手としては、差込み溶接式管継手が知られている。図7に示すように、差込み溶接式管継手30は、管状に形成される継手本体31の両端部に、配管2、3の端部を挿入させて保持するための配管挿入部32を形成してなるものである。この差込み溶接式管継手30を用いて配管2、3同士を接続する場合、差込み溶接式管継手30のそれぞれの配管挿入部32に配管2、3の端部を挿入し、差込み溶接式管継手30と配管2、3との段付き部33に隅肉溶接34を施す。この工法によれば、加工が困難な現地であっても容易に配管2、3同士を接続できる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−158778号公報
【特許文献2】特開平4−15384号公報
【特許文献3】特開平9−229248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隅肉溶接は簡単にできる反面、応力集中によって割れる虞があった。また、差込み溶接式管継手に配管を隅肉溶接するとき、配管の端面と差込み溶接式管継手との間に母材膨張の逃げ場として1〜2mm程度の隙間を形成しなければならないため、この隙間に内部流体が残留して発錆を助長するという課題があった。また、上述の差込み溶接式管継手は、施工の誤差によって溶接強度が左右されるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、内部流体の残留による発錆を防止でき、配管同士を安定して強固に連結できるソケット継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、2以上の配管を互いに連結させるためにそれぞれの配管の端部を内部に挿入させて保持するための配管挿入部を有すると共に、これら挿入された配管を互いに連結する流路を有するソケット継手において、上記配管挿入部に、挿入される配管の端面と突き合わされる突合せ部を形成すると共に、該突合せ部の外周部に開先部を形成し、該開先部の径方向外方に溶接用トーチを導入するための溶接作業用領域を形成したものである。
【0008】
上記溶接作業用領域は、ソケット継手本体の外周に開口された複数の窓穴部を有すると共に、ソケット継手本体に上記開先部に沿って環状に形成された溝穴部を有するとよい。
【0009】
上記溝穴部は、上記開先部側を窄めるように断面V字状に形成されるとよい。
【0010】
上記溝穴部は、上記配管挿入部に配管を挿入したとき配管の端部外周面を露出させるように配管挿入部の外周を一部切り欠いて形成されるとよい。
【0011】
上記開先部は、上記突合せ部の外周部に傾斜面を形成して構成されるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内部流体の残留による発錆を防止でき、配管同士を安定して強固に連結できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適実施の形態を添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1、図2及び図3に示すように、ソケット継手1は、接続すべき配管2、3より大きな外径の管状に形成されており、内部に流路4を有する。また、ソケット継手1の両端には、配管2、3の端部を挿入させて保持するための配管挿入部5がそれぞれ形成される。配管挿入部5は、挿入される配管2、3の外径と略同じ内径に形成されており、配管2、3の端部をソケット状に嵌め入れられるようになっている。
【0015】
配管挿入部5の奥部には、挿入される配管2、3の端面と突き合わされる突合せ部6が形成されると共に、開先部7が形成されている。突合せ部6は、径方向に所定長さを有するリング状に形成されており、配管挿入部5内に配管2、3を所定長さ挿入したとき配管2、3の内周側端部に面同士で当接されるようになっている。開先部7は、突合せ部6の外周部に形成される。具体的には、開先部7は、突合せ部6から径方向外方に向かうにつれて配管挿入部5の奥側に傾斜する傾斜面8を形成して構成され、配管2、3と突合せ部6が突き合わされたとき突合せ部6の外周側に溶接用の隙間9を形成するようになっている。
【0016】
また、開先部7の径方向外方のソケット継手本体10には、開先部7に溶接用トーチ11を導入するための溶接作業用領域12が形成される。溶接作業用領域12は、ソケット継手本体10に溝状の穴を形成してなるものであり、ソケット継手本体10の外周に開口された複数の窓穴部13を有すると共に、ソケット継手本体10に開先部7に沿って環状に形成された溝穴部14を有する。窓穴部13は、周方向に4つ並べて形成されており、軸方向の長さを溝穴部14と同じに形成されると共に周方向の長さを全周の1/4より若干短い長さに形成されている。それぞれの窓穴部13間には、溝穴部14を境として軸方向の端部側に形成される端部側ソケット継手本体15と軸方向の中央部側に形成される中央部側ソケット継手本体16とを接続するブリッジ部17が形成される。溝穴部14は、開先部7側を窄めるように断面V字状に形成される。特に、配管挿入部5の奥側の傾斜面18は、開先部7を構成する傾斜面8と一体に形成されており、開先部7と溝穴部14を簡単な形状で構成するようになっている。また、溝穴部14は、配管挿入部5に配管2、3を挿入したとき配管2、3の端部外周面20を露出させるように配管挿入部5の外周壁19を一部切り欠いて形成されており、配管2、3の端部と突合せ部6とを溶接するときの溶接面積を広くするようになっている。
【0017】
また、中央部側ソケット継手本体16内に形成された流路4は、配管挿入部5に挿入された2つの配管2、3を互いに連結するためのものであり、配管2、3の内径と同じ内径に形成される。
【0018】
次に本実施の形態の作用を述べる。
【0019】
配管2、3を継ぎ足す場合、図5(a)、(b)に示すように、ソケット継手1の一方の配管挿入部5内に配管2の端部を突合せ部6に当接するまで挿入するようにして配管2にソケット継手1を装着する。ソケット継手1は配管2の端部に嵌合されて支持される。配管挿入部5内に挿入された配管2は、突合せ部6に当接されると共に開先部7に近接される。また、配管2の端部外周面20が溶接作業用領域12内で露出される。
【0020】
この後、図5(b)、(c)に示すように、溶接用トーチ11を窓穴部13から開先部7に向けて挿入し、溶接用トーチ11を周方向に移動させつつ開先部7を順次溶接すると共に、溶接作業用領域12を溶接金属25で満たす。ソケット継手1は配管2に支持されているため、ソケット継手1を治具等で支持する必要はなく、容易に溶接できる。これにより、配管2とソケット継手1とは強固に突合せ溶接される。突合せ部6と配管2の端部内周側との間に隙間を形成する必要はないため、ソケット継手1と配管2を滑らかに接続できる。
【0021】
図5(c)及び図6(d)に示すように、ソケット継手1の他方の配管挿入部5内に、継ぎ足すべき配管3の端部を突合せ部6に当接するまで挿入する。配管3は、ソケット継手1に嵌合されて支持される。この後、図6(d)、(e)に示すように、上述と同様に、溶接用トーチ11を窓穴部13から開先部7に向けて挿入し、溶接用トーチ11を周方向に移動させつつ開先部7を順次溶接すると共に、溶接作業用領域12を溶接金属25で満たす。配管3とソケット継手1とは強固に突合せ溶接される。突合せ部6と配管3の端部内周側との間に隙間を形成する必要はないため、ソケット継手1と配管3を滑らかに接続できる。
【0022】
このように、配管挿入部5に、挿入される配管2、3の端面と突き合わされる突合せ部6を形成すると共に、突合せ部6の外周部に開先部7を形成し、開先部7の径方向外方に溶接用トーチ11を導入するための溶接作業用領域12を形成したため、内径に段付きが形成されるのを防ぐことができ、内部流体の残留による発錆を防止でき、配管2、3同士を安定して強固に連結できる。また、配管2、3に対する加工は、従来のソケットを用いる場合と同レベルの加工(例えば端面処理等)でよく、現地での作業を容易なものにできる。
【0023】
溶接作業用領域12は、ソケット継手本体10の外周に開口された複数の窓穴部13を有すると共に、ソケット継手本体10に開先部7に沿って環状に形成された溝穴部14を有するものとしたため、配管2、3とソケット継手1を容易かつ強固に溶接することができる。
【0024】
溝穴部14は、開先部7側を窄めるように断面V字状に形成されるものとしたため、溶接用トーチ11の入口である窓穴部13を大きくでき、溶接用トーチ11の移動の自由度を高めることができ、溶接作業を容易にできる。
【0025】
溝穴部14は、配管挿入部5に配管2、3を挿入したとき配管2、3の端部外周面20を露出させるように配管挿入部5の外周壁19を一部切り欠いて形成されるものとしたため、配管2、3の溶接面積を広くすることができ、配管2、3とソケット継手1を容易かつ強固に溶接することができる。
【0026】
開先部7は、突合せ部6の外周部に傾斜面8を形成して構成されるものとしたため、簡単な構造で容易に開先部7を形成できる。
【0027】
なお、ソケット継手1は直管状のものについて説明したが、これに限るものではない。例えばL字状に屈曲されたものであってもよく、T字状又は十字状に形成されていてもよく、ブロック状であってもよい。また、ソケット継手1は、2以上の複数の配管(図示せず)を互いに連結させるものであってもよい。この場合、ソケット継手本体10に複数の配管挿入部5を形成すると共に、それぞれの配管を互いに連結するための流路(図示せず)を形成するとよい。
【0028】
また、窓穴部13は周方向に4つ形成するものとしたが、これに限るものではない。ソケット継手本体10が変形しない程度に強固なブリッジ部17を形成できれば1つでもよく、2つ以上の複数であってもよい。また、溝穴部14は、配管挿入部5の外周壁19を一部切り欠いて形成されるものとしたが、図4に示すように、配管挿入部5の外周壁19に干渉しないようにV字の溝穴部21の配管挿入部5側の面22を軸方向に対して垂直に形成してもよい。溶接作業用領域23を小さくでき、溶接金属の使用量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好適実施の形態を示すソケット継手と配管の側断面図である。
【図2】ソケット継手の側断面図である。
【図3】ソケット継手の斜視図である。
【図4】他の実施の形態を示すソケット継手と配管の側断面図である。
【図5】2つの配管をソケット継手を介して連結する作業の手順を示す説明図であり、(a)は配管にソケット継手を装着する前の状態を示し、(b)は一方の配管にソケット継手を装着した状態を示し、(c)は一方の配管にソケット継手を溶接した状態を示す。
【図6】図5の続きの作業手順を示す説明図であり、(d)はソケット継手に他方の配管を装着した状態を示し、(e)はソケット継手に他方の配管を溶接した状態を示す。
【図7】従来のソケット継手の側断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ソケット継手
2 配管
3 配管
4 流路
5 配管挿入部
6 突合せ部
7 開先部
8 傾斜面
11 溶接用トーチ
12 溶接作業用領域
13 窓穴部
14 溝穴部
19 外周壁
20 端部外周面
21 溝穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の配管を互いに連結させるためにそれぞれの配管の端部を内部に挿入させて保持するための配管挿入部を有すると共に、これら挿入された配管を互いに連結する流路を有するソケット継手において、上記配管挿入部に、挿入される配管の端面と突き合わされる突合せ部を形成すると共に、該突合せ部の外周部に開先部を形成し、該開先部の径方向外方に溶接用トーチを導入するための溶接作業用領域を形成したことを特徴とするソケット継手。
【請求項2】
上記溶接作業用領域は、ソケット継手本体の外周に開口された複数の窓穴部を有すると共に、ソケット継手本体に上記開先部に沿って環状に形成された溝穴部を有する請求項1記載のソケット継手。
【請求項3】
上記溝穴部は、上記開先部側を窄めるように断面V字状に形成された請求項2記載のソケット継手。
【請求項4】
上記溝穴部は、上記配管挿入部に配管を挿入したとき配管の端部外周面を露出させるように配管挿入部の外周壁を一部切り欠いて形成された請求項2又は3記載のソケット継手。
【請求項5】
上記開先部は、上記突合せ部の外周部に傾斜面を形成して構成された請求項1〜5のいずれかに記載のソケット継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−228686(P2009−228686A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71156(P2008−71156)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】