ソーラシミュレータ用発光回路
【課題】 ソーラシミュレータとして応答性が遅い、つまり、定格出力に到達するのに時間がかかる太陽電池でもその特性の測定を可能とし、更に、測定の高精度化を実現できる画期的なソーラシミュレータ用発光回路を提供すること。
【解決手段】 電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプ4の発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源1と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源2と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ4内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源3とにより構成したこと。
【解決手段】 電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプ4の発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源1と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源2と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ4内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源3とにより構成したこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力特性を測定するために光源ランプを擬似太陽光として発光させるソーラシミュレータ用発光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池はクリーンなエネルギ源として増々その重要性が認められて需要が高まり、また、大型機器類のパワーエネルギ源から精密な電子機器分野での小型電源まで、様々な分野での需要も高まっている。
【0003】
太陽電池が様々な分野で広く利用されるには、当該電池の特性、とりわけ出力特性が正確に測定されていないと、太陽電池を使用する側においても様々な不都合が予測される。このため従来から太陽電池の出力特性を測定するための擬似太陽光照射装置(以下、ソーラシミュレータという)が提案され実用にも供されている。
【0004】
このようなソーラシミュレータにより太陽電池の出力特性を測定する場合、光源ランプの点灯光を照射してからその太陽電池が所定出力に達するまでに長い時間がかかるものがある。例えば、特殊な単結晶太陽電池や薄膜太陽電池では、多結晶シリコン太陽電池に比べ、所定出力に達するまでの時間が約10倍程度かかる。一方、太陽電池の出力特性の測定を更に高精度化したいという要求もある。このような状況からソーラシミュレータの光源ランプについては、数100m秒〜数秒程度の照度を安定化した連続発光が求められるようになってきている。
【0005】
ところで、従来のキセノンランプの発光回路には、一例として図9に示すようなものが使用されていた。即ち、この発光回路はキセノンランプXLの電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス発生回路を主体とする電源Bと、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する電源Aと、電源Aにより蓄電されるコンデンサC1により構成されている。
【0006】
しかし、前記電源Aには、最大出力可能電流が数百mAから数A程度の物を使用するのが一般的であり、主放電に伴う放電電流は、もっぱらコンデンサC1から供給される。
従って、ランプXLが発光する時間は、コンデンサC1の容量に依存するが、電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位は、例えば放電電極間の距離が1000mm程度のキセノンランプの場合には、2000V〜3000V程度の電位を必要とする。
【0007】
上記の事情に鑑みると、コンデンサC1の選定には、相応の耐圧性能を有することが必須条件になるが、このような耐圧条件を満たす市販のコンデンサは数μF〜数十μF程度の物が一般的で、これを使用した場合、約1m秒の時間しか発光を維持できない。また、コンデンサC1が放電する場合、そのコンデンサC1の放電カーブに伴う電圧変動に依存してランプの発光光量が変化するため(図8参照)、安定的な光量が得られない。このため、太陽電池の測定を実施する際には、1つの太陽電池に対して数10回〜130回程度の発光を行うことで試験を行っているのが現状である。
この結果、複数回の発光に対する発光光量の変動に伴う測定値の変動や、1つの太陽電池に対する測定時間が短縮できないといった問題がある。
【0008】
一方、光源のキセノンランプを長時間発光させるための発光回路も知られてはいる。図10,図11がその構成例である。即ち、図10,図11の発光回路では、長時間発光のために、主放電の電圧供給源を大型,大容量の電源Aとして構成しているが、光源ランプが、例えば、放電電極間の距離が1000mm程度のキセノンランプであると、2000V〜3000V程度の電位を必要とし、猶且つ主放電には30A程度の電流が流れる。このような高電位,大電流の仕様を満たす電源は60KW〜90KW程度の大型電源を不可欠とするため、ソーラシミュレータの大型化を招来して装置コストの増大を招くという問題がある。
【0009】
上記のようにソーラシミュレータにおける放電ランプの発光時間が短いため、太陽電池の出力測定が精度良くできないという問題を解決するための手段としてキセノンランプを長時間発光させる手法が、ソーラシミュレータの分野では特許文献1や特許文献3に、また写真撮影用照明装置の分野では特許文献2などとして提案されている。
【0010】
特許文献1では、定格電流以下の電流でランプを点灯し続けている状態から、高電流を流す時間を設定し、測定時に定格電流を超える電流を流して、1SUNを一定時間確保するソーラシミュレータが開示され、1つの電源とスタータ(高電圧発生装置)により構成される発光回路が提案されている。しかし、この提案の技術は、ランプを発光しない時でもランプ定格の半分の電流が常時流れ続けているので、常時電力を消費するだけでなく、光学部品は常時発熱状態にあるため寿命の面で問題がある。
【0011】
特許文献2では、写真撮影用の分野で連続点灯回路および瞬間発光させる回路が組み込まれた点灯回路を具備する発光回路が提案されている。この技術による連続発光は、用途が写真撮影用ということでモデリングランプ光の弱い光を対象にしたものである。しかし乍ら、ソーラシミュレータによって大型でしかも応答性の遅い太陽電池の出力特性の測定をおこなう場合、長時間高出力発光させる必要があるので、この要請に応えるには電源容量を大きくする必要があるので、電源が巨大化するという問題がある。
【0012】
一方、特許文献3では、特許文献1の回路構成に放電パルス電流や非照射時のパルス電流のピーク値制御回路を追加することにより送配電設備の簡便化とノイズ発生の抑制手段を提案している。しかしながら、特許文献1の技術と同じように、ランプを発光しない時でもランプ定格の半分の電流が常時流れ続けているので、常時電力を消費するだけでなく、光学部品は常時発熱状態にあるので、寿命の面での問題は解決されない。
【特許文献1】特公平6−105280号公報
【特許文献2】特許第2772803号公報
【特許文献3】特許第2886215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来のソーラシミュレータにおける発光回路における上述した種々の問題点に鑑み、これらの問題点をことごとく解消することができるのみならず、ソーラシミュレータとして応答性が遅い、つまり、定格出力に到達するのに時間がかかる太陽電池でもその特性の測定を可能とし、更に、測定の高精度化を実現できる画期的なソーラシミュレータ用発光回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明発光回路の構成は、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源とにより構成したことを特徴とするものである。
【0015】
上記課題を解決することができる本発明発光回路としては、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源機能と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源機能を兼ね備えたコンデンサとこれを充電する安定化電源を組み合わせた兼用電源により構成したことを特徴とするものもある。
【0016】
本発明発光回路の第3電源としては、安定化電源を用いることができる。そして、安定化電源には、電気二重層コンデンサ(キャパシター)等のコンデンサを用いることができる。
【0017】
本発明発光回路には、キセノンランプに対する電流制御回路、又は、電圧制御回路を備えることができる。
【0018】
また、上記の構成の発光回路において、キセノンランプに対してその光量センサーを配備し、該センサーによる検出信号を電流制御回路、又は、電圧制御回路にフィードバックさせて前記制御回路を制御することにより、前記ランプの光量を安定化させることができる。
本発明による構成では、主放電を開始してから所要の時間発光を維持しても、第3電源よりランプへ電流を供給できるだけの電荷があるので、これを遮断する機器(例えば、スイッチ)を設けている。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、太陽電池の出力特性の測定を行うためのソーラシミュレータの光源装置におけるキセノンランプの発光回路を、初期絶縁破壊を行うトリガパルス電圧を発生する第1電源と、前記ランプに主発光放電を開始させる電圧を印加する第2電源と、当該ランプにその主発光放電による目標光量を維持させる電圧を印加する第3電源とから構成することにより、連続発光させる電源装置をコンパクト化できる。この効果は、請求項4に記載した第2電源機能と第3電源機能を一つの電源にまとめた本発明発光回路の別の構成によっても得ることができる。
【0020】
また、本発明では、発光回路の第3電源に、安定化電源やキャパシターを使用することにより、更に電源装置を格段にコンパクト化し、光量を安定化した状態でキセノンランプを数100m秒〜数秒程度の連続発光をさせることができた。これにより応答性が遅いタイプの太陽電池の出力測定が可能になった。
【0021】
さらに、本発明では発光回路の第3電源にキャパシターを使用し、電流制御回路や電圧制御回路を用いると共に、キセノンランプに光量センサーを付加しそのセンサーによって検知された光量信号を前記電流制御回路や電圧制御回路に帰還させることにより、応答性よく光量を一定に制御することが可能になってソーラシミュレータの測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態例について、図に拠り説明する。図1は、本発明におけるキセノンランプの発光時におけるランプ電圧の変化を示した波形図、図2は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例1と同2を説明するためのブロック図、図3は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例3を説明するためのブロック図、図4は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例4を説明するためのブロック図、図5は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例5を説明するためのブロック図、図6は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例6を説明するためのブロック図、図7は本発明におけるキセノランプの発光回路の形態例7を説明するためのブロック図、図8は、従来のキセノンランプの発光回路におけるランプ電圧の変化を模式的に示した波形図、図9〜図11はそれぞれ従来のキセノンランプの発光回路を例示したブロック図である。
【0023】
まず、本発明発光回路の形態例1について図2に沿って説明する。1は、キセノンランプ4に対しトランス1bの二次側に初期の絶縁破壊を行う電圧を発生させるトリガパルス発生回路1aを備えた電源回路で、本発明発光回路の第1電源である。2は、キセノンランプ4に主発光のための放電を開始させる電圧を発生する直流電源Bによる第2電源である。3は、キセノンランプ4に目標光量の放電を維持させるための電圧を発生する直流電源Aによる第3電源である。ここで、図示したキセノンランプ4は、放電間距離が100mm以上あり電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加できる形状のもであれば良い。なお、図2において、d1,d2は逆流防止素子(ダイオード)である。
【0024】
次に、直流電源Bによる第2電源2と直流電源Aによる第3電源3について説明する。第2電源2は絶縁破壊状態から主放電を誘発するのに必要な電位を供給する。しかし、主放電は第3電源3で行う。第2電源2はコンデンサーを使用して、電荷を蓄めるようにすることにより小容量化できる。キセノンランプ4に主放電を持続させるための直流電源Aによる第3電源3は、当該ランプ4に絶縁破壊状態から主放電を誘発させる電位を出力する直流電源Bによる第2電源2と比べて出力が低電圧ですむ。従って、従来技術(図10,図11)に比べて電源容量が小さくて足りる。
例えば、放電電極間の距離が300mm程度のキセノンランプ4に公知のトリガパルス発生回路1aに接続したトランス1bの2次側をランプ4に対置した状態で、第2電源2である直流電源Bの電位は約500V程度、第3電源3である直流電源Aの電位は100V〜400V程度、主放電電流100A〜200A程度となる。この場合、第2電源2たる直流電源Bは、絶縁破壊状態から主放電を誘発するまでの時間が1m秒以下の短い時間であるため、耐圧500V以上の10μF程度のコンデンサに500Vまでの電位を供給できる能力の電源が必要になる。
【0025】
因みに、本発明回路を備えたソーラシミュレータは、キセノンランプ4の1回の点灯に対して、例えば、数秒以上の待ち時間を設定するため、コンデンサへの充電時間が、コンデンサの放電時間に比べ数十倍以上あり得ることから、出力電流は待ち時間と発光時間の対比から、例えば数A程度の電源でよく、一例として、出力電流を2Aとすれば1KW程度の小型の電源で足りる。一方、第3電源3の直流電源Aは、100Aの出力を要求された場合には、主放電を維持する電圧は100Vの場合、10KWの電源に相当する。
【0026】
一方、図9〜図11のような従来の回路構成であれば、図9〜図11における電源B(本発明の第2電源2に相当)は、絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する性能と、主放電の電流を出力する性能の両方を持ち合わせる必要があるため、500V×100A=50KWとなり、上述した本発明光源装置における第3電源3たる直流電源Aの5倍以上の容量が必要になる。
【0027】
本発明では、上記の形態例1のように、キセノンランプ4の発光回路を、トリガパルス発生回路(第1電源1)、主発光を行うための放電を開始する電圧を発生する電源回路(第2電源2)、及び、目標の光量を維持するための電圧を発生する電源回路(第3電源3)とに分けた構成とすることにより、各電源回路を格段に小型化して連続発光を可能とするのみならず、キセノンランプ4の電圧変動を無くし光量の安定化を実現することができる。また、本発明における発光回路は、キセノンランプ4を発光させる時のみ回路を起動させればよく、それ以外の状態では発光回路の起動はないので、ソーラシミュレータ内の光学部品の熱的な負荷を極力抑えることができることはいうまでもない。
【0028】
次に、上述した本発明におけるキセノンランプ4の発光回路の形態例1について、その動作を説明する。まず、トリガパルス発生回路1a(第1電源1)に点灯開始信号10が加えられる。この点灯開始信号10の入力は、ソーラシミュレータを操作する作業者が起動釦などを押す手動操作、或は、自動運転などの自動操作の場合はパソコンなどの制御装置から出力するスタート信号によりなされる。
【0029】
点灯開始信号10がトリガパルス発生回路1aに加えられると、出力トランス1bの二次側からキセノンランプ4のガラス管の外周に数KVのトリガパルスが印加される。このトリガパルスによりキセノンランプ4内で対向した電極4a,4b間の電気的な絶縁状態が破壊される。この後、直流電源B(第2電源2)が起動し450V程度の放電待機電圧をキセノンランプ4の電極4a,4b間に印加する。これにより内部での主放電が誘発され、キセノンランプ4の管内抵抗は、数MΩ以上の状態から急激に低下し数Ω以下(ランプによって異なる)になる。更に、この後、直流電源A(第3電源3)が起動し130V程度の放電維持電圧を当該キセノンランプ4の電極4a,4b間に印加する。これによりキセノンランプ4の内部で主放電が継続され、所定の光量で連続発光しそれが所要時間(数100m秒〜数秒)維持される。
【0030】
本発明における実施の形態例2は、図2の直流電源A(第3電源3)を安定化電源としたものである。その動作は先に述べた実施の形態例1の場合と同様である。安定化電源としては、電圧100V〜400Vに対して電流100A〜200Aの出力が可能なものを用いる。これにより連続発光を数100m秒〜数秒とすることが可能であるばかりでなく、定格出力が得られるまでに時間を要する応答性がかなり遅い太陽電池の出力測定も充分可能となる。
【0031】
本発明における実施の形態例3は、先の形態例における第3電源を、図3に例示するように充電用電源5とキャパシター6(電気二重層コンデンサ6ともいう)を主体に構成される直流電源Aを第3電源31としている。また、連続発光させたときの光量を安定化させるために電流制御回路7を付加している。電流制御回路7は、特に限定されたものではなく公知の回路を使用することができる。ここでキャパシター6は、数F程度の容量のものである。この構成により15秒程度の点灯サイクルで数100m秒〜数秒程度の連続発光をさせることが可能である。
【0032】
図3の例では直流電源A(第3電源31)にキャパシター6を用いたが、このキャパシター6はその内部抵抗が小さいことによりキセノンランプ4の発光時に必要な電流を取り出すことが可能であり、従って、電源装置を更に小型化することができる。また、キャパシター6の内部抵抗が小さいことからキセノンランプ発光時のキャパシター6の発熱も小さく、従って、電源冷却用の補機も不要となるので、これが電源装置の更なる小型化に寄与する。
【0033】
本発明における形態例4は、図4に示すように電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源2の機能と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源3の機能を兼ね備えたキャパシター6(電気二重層コンデンサ6)とこれを充電する安定化電源5を組み合わせて、兼用電源32にしたものである。
【0034】
先にも述べたように、放電電極間の距離が300mm程度のキセノンランプに公知のトリガパルス発生回路を接続した状態で、直流電源B(第2電源2)の電位は約400V〜500V、直流電源A(第3電源3)の電位は100V〜400V程度、主放電電流が100A〜200A程度となる。この場合、直流電源B(第2電源2)については、絶縁破壊状態から主放電を誘発するまでの時間が1m秒以下の短い時間であるため、耐圧500V以上の10μF程度のコンデンサに500Vまでの電位を供給できる能力の電源が必要になる。
従って、この形態例4の構成では、電気二重層コンデンサ6として25Fで100V程度の能力のもを6個直列に組み合わせることにより600Vで約4Fの電源とすることができる。これにより第2電源2と第3電源3の機能を1つの電源32で兼用できるので、電源装置の更に小型化が可能となる。なお、この形態例4においても、電流制御回路7を配置している。
【0035】
本発明における実施の形態例5は、図5のように第3電源31となる直流電源Aを、図3の例の場合と同様に、充電用電源5とキャパシター6を主体に構成しているが、この例では連続発光するため光量を安定化させるため、図3の例における電流制御回路7に代え、電圧制御回路8を付加している。電圧制御回路8は、電流制御回路7の場合と同じように特に限定されたものではなく公知の回路を使用することができる。この構成により先の実施の形態例3と同様の効果を実現することができる。
【0036】
本発明における実施の形態例6は、図6に例示するように、直流電源A(第3電源31)を、図4,図5の例と同様に、充電用電源5とキャパシター6から構成しているが、実施の形態例3に示した電流制御回路7を備えた回路に、キセノンランプ4の光量を検知する光量センサー9を付加したものである。ここで、光量センサー9からの検知信号は、電流制御回路7に帰還させることにより光量の安定化を更に高めることができる。光量センサー9は、キセノンランプ4からの光量を検知できる機能を有するものであれば足り、特に限定されたものではない。一例として太陽電池セルを使用することができる。なお、形態例3と同5における電流制御回路7は、キセノンランプ4の陽極側に配置してもよい。
【0037】
本発明における実施の形態例7は、図7に例示するように直流電源A(第3電源31)を充電用電源5とキャパシター6から構成する点は、図4〜図6の例と同様であるが、ここでは実施の形態例5の電圧制御回路8を備えた回路にキセノンランプ4の光量を検知する光量センサー9を付加したものである。光量センサー9からの検知信号は、電圧制御回路8に帰還させることにより実施の形態例6の場合と同様な効果を実現することができる。なお、図2〜図7において、33は回路を遮断する機器、例えば、開閉スイッチ、d1〜d3は逆流防止素子(ダイオード)、Rは抵抗,Cはコンデンサである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は以上の通りであって、ソーラシミュレータの光源となるキセノンランプの発光回路をトリガパルス発生回路を主体にした第1電源と、放電待機電圧の発生回路として作用する第2電源、及び、放電維持電圧の発生回路として作用する第3電源に分けて形成することを基本構成としたものであるから、以下に述べる効果が得られ、ソーラシミュレータ用発光回路としてきわめて有用である。
(1) キセノンランプを長時間の連続発光をさせる場合に必要な容量の電源を従来技術に比べ格段に小型のものとすることができる。
(2) キセノンランプを連続発光させる場合でもその光量を安定に維持することができる。従って、ソーラシミュレータによる太陽電池の出力特性の測定の高精度化が可能となる。
(3) キセノンランプを連続発光できるので、応答性が遅い太陽電池でも出力特性を充分高精度に測定することができる。
(4) 電源にキャパシター(電気二重層コンデンサ)を使用することにより必要な容量の電源を更に小型化することができる。また連続発光してもキャパシタの内部抵抗が小さいので電源内に熱発生が少なく、電源装置に冷却装置などの補機が不要となる。
(5) 応答性がかなり遅い太陽電池もキセノンランプを数100m秒〜数秒の時間、1回発光させるだけで確実に出力特性を測定できるのでキセノンランプ自体の寿命の向上につながる。
(6) 電源装置を格段に小型化できるのでソーラシミュレータ全体の省スペース化が可能となる。
(7) 測定する時のみ発光させるので、常時点灯させる必要がなく、光学部品の劣化が少なくてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明発光回路におけるキセノンランプの発光時におけるランプ電圧の変化を示した波形図。
【図2】本発明発光回路の形態例1と同2を説明するためのブロック図。
【図3】本発明発光回路の形態例3を説明するためのブロック図。
【図4】本発明発光回路の形態例4を説明するためのブロック図。
【図5】本発明発光回路の形態例5を説明するためのブロック図。
【図6】本発明発光回路の形態例6を説明するためのブロック図。
【図7】本発明発光回路の形態例7を説明するためのブロック図。
【図8】従来の発光回路におけるランプ電圧の変化模式的に示した波形図。
【図9】従来の発光回路の第一例のブロック図。
【図10】従来の発光回路の第二例のブロック図。
【図11】従来の発光回路の第三例のブロック図。
【符号の説明】
【0040】
1 第1電源
1a トリガパルス発生回路
1b トランス
2 第2電源(直流電源B)
3,31 第3電源(直流電源A)
32 兼用電源
4 キセノンランプ
5 充電用電源
6 キャパシター
7 電流制御回路
8 電圧制御回路
9 光量センサ
10 点灯開始信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力特性を測定するために光源ランプを擬似太陽光として発光させるソーラシミュレータ用発光回路に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池はクリーンなエネルギ源として増々その重要性が認められて需要が高まり、また、大型機器類のパワーエネルギ源から精密な電子機器分野での小型電源まで、様々な分野での需要も高まっている。
【0003】
太陽電池が様々な分野で広く利用されるには、当該電池の特性、とりわけ出力特性が正確に測定されていないと、太陽電池を使用する側においても様々な不都合が予測される。このため従来から太陽電池の出力特性を測定するための擬似太陽光照射装置(以下、ソーラシミュレータという)が提案され実用にも供されている。
【0004】
このようなソーラシミュレータにより太陽電池の出力特性を測定する場合、光源ランプの点灯光を照射してからその太陽電池が所定出力に達するまでに長い時間がかかるものがある。例えば、特殊な単結晶太陽電池や薄膜太陽電池では、多結晶シリコン太陽電池に比べ、所定出力に達するまでの時間が約10倍程度かかる。一方、太陽電池の出力特性の測定を更に高精度化したいという要求もある。このような状況からソーラシミュレータの光源ランプについては、数100m秒〜数秒程度の照度を安定化した連続発光が求められるようになってきている。
【0005】
ところで、従来のキセノンランプの発光回路には、一例として図9に示すようなものが使用されていた。即ち、この発光回路はキセノンランプXLの電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス発生回路を主体とする電源Bと、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する電源Aと、電源Aにより蓄電されるコンデンサC1により構成されている。
【0006】
しかし、前記電源Aには、最大出力可能電流が数百mAから数A程度の物を使用するのが一般的であり、主放電に伴う放電電流は、もっぱらコンデンサC1から供給される。
従って、ランプXLが発光する時間は、コンデンサC1の容量に依存するが、電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位は、例えば放電電極間の距離が1000mm程度のキセノンランプの場合には、2000V〜3000V程度の電位を必要とする。
【0007】
上記の事情に鑑みると、コンデンサC1の選定には、相応の耐圧性能を有することが必須条件になるが、このような耐圧条件を満たす市販のコンデンサは数μF〜数十μF程度の物が一般的で、これを使用した場合、約1m秒の時間しか発光を維持できない。また、コンデンサC1が放電する場合、そのコンデンサC1の放電カーブに伴う電圧変動に依存してランプの発光光量が変化するため(図8参照)、安定的な光量が得られない。このため、太陽電池の測定を実施する際には、1つの太陽電池に対して数10回〜130回程度の発光を行うことで試験を行っているのが現状である。
この結果、複数回の発光に対する発光光量の変動に伴う測定値の変動や、1つの太陽電池に対する測定時間が短縮できないといった問題がある。
【0008】
一方、光源のキセノンランプを長時間発光させるための発光回路も知られてはいる。図10,図11がその構成例である。即ち、図10,図11の発光回路では、長時間発光のために、主放電の電圧供給源を大型,大容量の電源Aとして構成しているが、光源ランプが、例えば、放電電極間の距離が1000mm程度のキセノンランプであると、2000V〜3000V程度の電位を必要とし、猶且つ主放電には30A程度の電流が流れる。このような高電位,大電流の仕様を満たす電源は60KW〜90KW程度の大型電源を不可欠とするため、ソーラシミュレータの大型化を招来して装置コストの増大を招くという問題がある。
【0009】
上記のようにソーラシミュレータにおける放電ランプの発光時間が短いため、太陽電池の出力測定が精度良くできないという問題を解決するための手段としてキセノンランプを長時間発光させる手法が、ソーラシミュレータの分野では特許文献1や特許文献3に、また写真撮影用照明装置の分野では特許文献2などとして提案されている。
【0010】
特許文献1では、定格電流以下の電流でランプを点灯し続けている状態から、高電流を流す時間を設定し、測定時に定格電流を超える電流を流して、1SUNを一定時間確保するソーラシミュレータが開示され、1つの電源とスタータ(高電圧発生装置)により構成される発光回路が提案されている。しかし、この提案の技術は、ランプを発光しない時でもランプ定格の半分の電流が常時流れ続けているので、常時電力を消費するだけでなく、光学部品は常時発熱状態にあるため寿命の面で問題がある。
【0011】
特許文献2では、写真撮影用の分野で連続点灯回路および瞬間発光させる回路が組み込まれた点灯回路を具備する発光回路が提案されている。この技術による連続発光は、用途が写真撮影用ということでモデリングランプ光の弱い光を対象にしたものである。しかし乍ら、ソーラシミュレータによって大型でしかも応答性の遅い太陽電池の出力特性の測定をおこなう場合、長時間高出力発光させる必要があるので、この要請に応えるには電源容量を大きくする必要があるので、電源が巨大化するという問題がある。
【0012】
一方、特許文献3では、特許文献1の回路構成に放電パルス電流や非照射時のパルス電流のピーク値制御回路を追加することにより送配電設備の簡便化とノイズ発生の抑制手段を提案している。しかしながら、特許文献1の技術と同じように、ランプを発光しない時でもランプ定格の半分の電流が常時流れ続けているので、常時電力を消費するだけでなく、光学部品は常時発熱状態にあるので、寿命の面での問題は解決されない。
【特許文献1】特公平6−105280号公報
【特許文献2】特許第2772803号公報
【特許文献3】特許第2886215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来のソーラシミュレータにおける発光回路における上述した種々の問題点に鑑み、これらの問題点をことごとく解消することができるのみならず、ソーラシミュレータとして応答性が遅い、つまり、定格出力に到達するのに時間がかかる太陽電池でもその特性の測定を可能とし、更に、測定の高精度化を実現できる画期的なソーラシミュレータ用発光回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明発光回路の構成は、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源とにより構成したことを特徴とするものである。
【0015】
上記課題を解決することができる本発明発光回路としては、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源機能と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源機能を兼ね備えたコンデンサとこれを充電する安定化電源を組み合わせた兼用電源により構成したことを特徴とするものもある。
【0016】
本発明発光回路の第3電源としては、安定化電源を用いることができる。そして、安定化電源には、電気二重層コンデンサ(キャパシター)等のコンデンサを用いることができる。
【0017】
本発明発光回路には、キセノンランプに対する電流制御回路、又は、電圧制御回路を備えることができる。
【0018】
また、上記の構成の発光回路において、キセノンランプに対してその光量センサーを配備し、該センサーによる検出信号を電流制御回路、又は、電圧制御回路にフィードバックさせて前記制御回路を制御することにより、前記ランプの光量を安定化させることができる。
本発明による構成では、主放電を開始してから所要の時間発光を維持しても、第3電源よりランプへ電流を供給できるだけの電荷があるので、これを遮断する機器(例えば、スイッチ)を設けている。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、太陽電池の出力特性の測定を行うためのソーラシミュレータの光源装置におけるキセノンランプの発光回路を、初期絶縁破壊を行うトリガパルス電圧を発生する第1電源と、前記ランプに主発光放電を開始させる電圧を印加する第2電源と、当該ランプにその主発光放電による目標光量を維持させる電圧を印加する第3電源とから構成することにより、連続発光させる電源装置をコンパクト化できる。この効果は、請求項4に記載した第2電源機能と第3電源機能を一つの電源にまとめた本発明発光回路の別の構成によっても得ることができる。
【0020】
また、本発明では、発光回路の第3電源に、安定化電源やキャパシターを使用することにより、更に電源装置を格段にコンパクト化し、光量を安定化した状態でキセノンランプを数100m秒〜数秒程度の連続発光をさせることができた。これにより応答性が遅いタイプの太陽電池の出力測定が可能になった。
【0021】
さらに、本発明では発光回路の第3電源にキャパシターを使用し、電流制御回路や電圧制御回路を用いると共に、キセノンランプに光量センサーを付加しそのセンサーによって検知された光量信号を前記電流制御回路や電圧制御回路に帰還させることにより、応答性よく光量を一定に制御することが可能になってソーラシミュレータの測定精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態例について、図に拠り説明する。図1は、本発明におけるキセノンランプの発光時におけるランプ電圧の変化を示した波形図、図2は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例1と同2を説明するためのブロック図、図3は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例3を説明するためのブロック図、図4は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例4を説明するためのブロック図、図5は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例5を説明するためのブロック図、図6は本発明におけるキセノンランプの発光回路の形態例6を説明するためのブロック図、図7は本発明におけるキセノランプの発光回路の形態例7を説明するためのブロック図、図8は、従来のキセノンランプの発光回路におけるランプ電圧の変化を模式的に示した波形図、図9〜図11はそれぞれ従来のキセノンランプの発光回路を例示したブロック図である。
【0023】
まず、本発明発光回路の形態例1について図2に沿って説明する。1は、キセノンランプ4に対しトランス1bの二次側に初期の絶縁破壊を行う電圧を発生させるトリガパルス発生回路1aを備えた電源回路で、本発明発光回路の第1電源である。2は、キセノンランプ4に主発光のための放電を開始させる電圧を発生する直流電源Bによる第2電源である。3は、キセノンランプ4に目標光量の放電を維持させるための電圧を発生する直流電源Aによる第3電源である。ここで、図示したキセノンランプ4は、放電間距離が100mm以上あり電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加できる形状のもであれば良い。なお、図2において、d1,d2は逆流防止素子(ダイオード)である。
【0024】
次に、直流電源Bによる第2電源2と直流電源Aによる第3電源3について説明する。第2電源2は絶縁破壊状態から主放電を誘発するのに必要な電位を供給する。しかし、主放電は第3電源3で行う。第2電源2はコンデンサーを使用して、電荷を蓄めるようにすることにより小容量化できる。キセノンランプ4に主放電を持続させるための直流電源Aによる第3電源3は、当該ランプ4に絶縁破壊状態から主放電を誘発させる電位を出力する直流電源Bによる第2電源2と比べて出力が低電圧ですむ。従って、従来技術(図10,図11)に比べて電源容量が小さくて足りる。
例えば、放電電極間の距離が300mm程度のキセノンランプ4に公知のトリガパルス発生回路1aに接続したトランス1bの2次側をランプ4に対置した状態で、第2電源2である直流電源Bの電位は約500V程度、第3電源3である直流電源Aの電位は100V〜400V程度、主放電電流100A〜200A程度となる。この場合、第2電源2たる直流電源Bは、絶縁破壊状態から主放電を誘発するまでの時間が1m秒以下の短い時間であるため、耐圧500V以上の10μF程度のコンデンサに500Vまでの電位を供給できる能力の電源が必要になる。
【0025】
因みに、本発明回路を備えたソーラシミュレータは、キセノンランプ4の1回の点灯に対して、例えば、数秒以上の待ち時間を設定するため、コンデンサへの充電時間が、コンデンサの放電時間に比べ数十倍以上あり得ることから、出力電流は待ち時間と発光時間の対比から、例えば数A程度の電源でよく、一例として、出力電流を2Aとすれば1KW程度の小型の電源で足りる。一方、第3電源3の直流電源Aは、100Aの出力を要求された場合には、主放電を維持する電圧は100Vの場合、10KWの電源に相当する。
【0026】
一方、図9〜図11のような従来の回路構成であれば、図9〜図11における電源B(本発明の第2電源2に相当)は、絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する性能と、主放電の電流を出力する性能の両方を持ち合わせる必要があるため、500V×100A=50KWとなり、上述した本発明光源装置における第3電源3たる直流電源Aの5倍以上の容量が必要になる。
【0027】
本発明では、上記の形態例1のように、キセノンランプ4の発光回路を、トリガパルス発生回路(第1電源1)、主発光を行うための放電を開始する電圧を発生する電源回路(第2電源2)、及び、目標の光量を維持するための電圧を発生する電源回路(第3電源3)とに分けた構成とすることにより、各電源回路を格段に小型化して連続発光を可能とするのみならず、キセノンランプ4の電圧変動を無くし光量の安定化を実現することができる。また、本発明における発光回路は、キセノンランプ4を発光させる時のみ回路を起動させればよく、それ以外の状態では発光回路の起動はないので、ソーラシミュレータ内の光学部品の熱的な負荷を極力抑えることができることはいうまでもない。
【0028】
次に、上述した本発明におけるキセノンランプ4の発光回路の形態例1について、その動作を説明する。まず、トリガパルス発生回路1a(第1電源1)に点灯開始信号10が加えられる。この点灯開始信号10の入力は、ソーラシミュレータを操作する作業者が起動釦などを押す手動操作、或は、自動運転などの自動操作の場合はパソコンなどの制御装置から出力するスタート信号によりなされる。
【0029】
点灯開始信号10がトリガパルス発生回路1aに加えられると、出力トランス1bの二次側からキセノンランプ4のガラス管の外周に数KVのトリガパルスが印加される。このトリガパルスによりキセノンランプ4内で対向した電極4a,4b間の電気的な絶縁状態が破壊される。この後、直流電源B(第2電源2)が起動し450V程度の放電待機電圧をキセノンランプ4の電極4a,4b間に印加する。これにより内部での主放電が誘発され、キセノンランプ4の管内抵抗は、数MΩ以上の状態から急激に低下し数Ω以下(ランプによって異なる)になる。更に、この後、直流電源A(第3電源3)が起動し130V程度の放電維持電圧を当該キセノンランプ4の電極4a,4b間に印加する。これによりキセノンランプ4の内部で主放電が継続され、所定の光量で連続発光しそれが所要時間(数100m秒〜数秒)維持される。
【0030】
本発明における実施の形態例2は、図2の直流電源A(第3電源3)を安定化電源としたものである。その動作は先に述べた実施の形態例1の場合と同様である。安定化電源としては、電圧100V〜400Vに対して電流100A〜200Aの出力が可能なものを用いる。これにより連続発光を数100m秒〜数秒とすることが可能であるばかりでなく、定格出力が得られるまでに時間を要する応答性がかなり遅い太陽電池の出力測定も充分可能となる。
【0031】
本発明における実施の形態例3は、先の形態例における第3電源を、図3に例示するように充電用電源5とキャパシター6(電気二重層コンデンサ6ともいう)を主体に構成される直流電源Aを第3電源31としている。また、連続発光させたときの光量を安定化させるために電流制御回路7を付加している。電流制御回路7は、特に限定されたものではなく公知の回路を使用することができる。ここでキャパシター6は、数F程度の容量のものである。この構成により15秒程度の点灯サイクルで数100m秒〜数秒程度の連続発光をさせることが可能である。
【0032】
図3の例では直流電源A(第3電源31)にキャパシター6を用いたが、このキャパシター6はその内部抵抗が小さいことによりキセノンランプ4の発光時に必要な電流を取り出すことが可能であり、従って、電源装置を更に小型化することができる。また、キャパシター6の内部抵抗が小さいことからキセノンランプ発光時のキャパシター6の発熱も小さく、従って、電源冷却用の補機も不要となるので、これが電源装置の更なる小型化に寄与する。
【0033】
本発明における形態例4は、図4に示すように電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源2の機能と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源3の機能を兼ね備えたキャパシター6(電気二重層コンデンサ6)とこれを充電する安定化電源5を組み合わせて、兼用電源32にしたものである。
【0034】
先にも述べたように、放電電極間の距離が300mm程度のキセノンランプに公知のトリガパルス発生回路を接続した状態で、直流電源B(第2電源2)の電位は約400V〜500V、直流電源A(第3電源3)の電位は100V〜400V程度、主放電電流が100A〜200A程度となる。この場合、直流電源B(第2電源2)については、絶縁破壊状態から主放電を誘発するまでの時間が1m秒以下の短い時間であるため、耐圧500V以上の10μF程度のコンデンサに500Vまでの電位を供給できる能力の電源が必要になる。
従って、この形態例4の構成では、電気二重層コンデンサ6として25Fで100V程度の能力のもを6個直列に組み合わせることにより600Vで約4Fの電源とすることができる。これにより第2電源2と第3電源3の機能を1つの電源32で兼用できるので、電源装置の更に小型化が可能となる。なお、この形態例4においても、電流制御回路7を配置している。
【0035】
本発明における実施の形態例5は、図5のように第3電源31となる直流電源Aを、図3の例の場合と同様に、充電用電源5とキャパシター6を主体に構成しているが、この例では連続発光するため光量を安定化させるため、図3の例における電流制御回路7に代え、電圧制御回路8を付加している。電圧制御回路8は、電流制御回路7の場合と同じように特に限定されたものではなく公知の回路を使用することができる。この構成により先の実施の形態例3と同様の効果を実現することができる。
【0036】
本発明における実施の形態例6は、図6に例示するように、直流電源A(第3電源31)を、図4,図5の例と同様に、充電用電源5とキャパシター6から構成しているが、実施の形態例3に示した電流制御回路7を備えた回路に、キセノンランプ4の光量を検知する光量センサー9を付加したものである。ここで、光量センサー9からの検知信号は、電流制御回路7に帰還させることにより光量の安定化を更に高めることができる。光量センサー9は、キセノンランプ4からの光量を検知できる機能を有するものであれば足り、特に限定されたものではない。一例として太陽電池セルを使用することができる。なお、形態例3と同5における電流制御回路7は、キセノンランプ4の陽極側に配置してもよい。
【0037】
本発明における実施の形態例7は、図7に例示するように直流電源A(第3電源31)を充電用電源5とキャパシター6から構成する点は、図4〜図6の例と同様であるが、ここでは実施の形態例5の電圧制御回路8を備えた回路にキセノンランプ4の光量を検知する光量センサー9を付加したものである。光量センサー9からの検知信号は、電圧制御回路8に帰還させることにより実施の形態例6の場合と同様な効果を実現することができる。なお、図2〜図7において、33は回路を遮断する機器、例えば、開閉スイッチ、d1〜d3は逆流防止素子(ダイオード)、Rは抵抗,Cはコンデンサである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は以上の通りであって、ソーラシミュレータの光源となるキセノンランプの発光回路をトリガパルス発生回路を主体にした第1電源と、放電待機電圧の発生回路として作用する第2電源、及び、放電維持電圧の発生回路として作用する第3電源に分けて形成することを基本構成としたものであるから、以下に述べる効果が得られ、ソーラシミュレータ用発光回路としてきわめて有用である。
(1) キセノンランプを長時間の連続発光をさせる場合に必要な容量の電源を従来技術に比べ格段に小型のものとすることができる。
(2) キセノンランプを連続発光させる場合でもその光量を安定に維持することができる。従って、ソーラシミュレータによる太陽電池の出力特性の測定の高精度化が可能となる。
(3) キセノンランプを連続発光できるので、応答性が遅い太陽電池でも出力特性を充分高精度に測定することができる。
(4) 電源にキャパシター(電気二重層コンデンサ)を使用することにより必要な容量の電源を更に小型化することができる。また連続発光してもキャパシタの内部抵抗が小さいので電源内に熱発生が少なく、電源装置に冷却装置などの補機が不要となる。
(5) 応答性がかなり遅い太陽電池もキセノンランプを数100m秒〜数秒の時間、1回発光させるだけで確実に出力特性を測定できるのでキセノンランプ自体の寿命の向上につながる。
(6) 電源装置を格段に小型化できるのでソーラシミュレータ全体の省スペース化が可能となる。
(7) 測定する時のみ発光させるので、常時点灯させる必要がなく、光学部品の劣化が少なくてすむ。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明発光回路におけるキセノンランプの発光時におけるランプ電圧の変化を示した波形図。
【図2】本発明発光回路の形態例1と同2を説明するためのブロック図。
【図3】本発明発光回路の形態例3を説明するためのブロック図。
【図4】本発明発光回路の形態例4を説明するためのブロック図。
【図5】本発明発光回路の形態例5を説明するためのブロック図。
【図6】本発明発光回路の形態例6を説明するためのブロック図。
【図7】本発明発光回路の形態例7を説明するためのブロック図。
【図8】従来の発光回路におけるランプ電圧の変化模式的に示した波形図。
【図9】従来の発光回路の第一例のブロック図。
【図10】従来の発光回路の第二例のブロック図。
【図11】従来の発光回路の第三例のブロック図。
【符号の説明】
【0040】
1 第1電源
1a トリガパルス発生回路
1b トランス
2 第2電源(直流電源B)
3,31 第3電源(直流電源A)
32 兼用電源
4 キセノンランプ
5 充電用電源
6 キャパシター
7 電流制御回路
8 電圧制御回路
9 光量センサ
10 点灯開始信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源とにより構成したことを特徴とするソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項2】
第3電源には安定化電源を用いた請求項1のソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項3】
第3電源には、コンデンサを用いた請求項1又は2のソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項4】
電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源機能と第3電源機能を兼ね備えたコンデンサとこれを充電する安定化電源を組み合わせた兼用電源により構成したことを特徴とするソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項5】
発光回路は、キセノンランプに対する電流制御回路、又は、電圧制御回路を備えた請求項1〜4のいずれかのソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項6】
キセノンランプに対してその光量センサーを配備し、該センサーによる検出信号を電流制御回路、又は、電圧制御回路にフィードバックさせて前記制御回路を制御することにより、前記ランプの光量を安定させるようにした請求項5のソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項1】
電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源と、主放電が開始されてから更にキセノンランプ内の管内の電気的抵抗と主放電の電流値から求められる電位を維持し、猶且つ主放電の電流を維持できる第3電源とにより構成したことを特徴とするソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項2】
第3電源には安定化電源を用いた請求項1のソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項3】
第3電源には、コンデンサを用いた請求項1又は2のソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項4】
電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位をガラス管の外から印加するソーラシミュレータの光源たるキセノンランプの発光回路を、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を出力するトリガパルス電圧を発生する第1電源と、電極間の電気的な絶縁状態を破壊する電位を印加した直後の電極間の絶縁破壊状態から主放電を誘発する電位を出力する第2電源機能と第3電源機能を兼ね備えたコンデンサとこれを充電する安定化電源を組み合わせた兼用電源により構成したことを特徴とするソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項5】
発光回路は、キセノンランプに対する電流制御回路、又は、電圧制御回路を備えた請求項1〜4のいずれかのソーラシミュレータ用発光回路。
【請求項6】
キセノンランプに対してその光量センサーを配備し、該センサーによる検出信号を電流制御回路、又は、電圧制御回路にフィードバックさせて前記制御回路を制御することにより、前記ランプの光量を安定させるようにした請求項5のソーラシミュレータ用発光回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−95928(P2007−95928A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282202(P2005−282202)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【Fターム(参考)】
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