説明

ソーラシミュレータ

【課題】長尺のフィルム状の被照射体を裁断することなく連続的に測定が行え、被照射体全体にわたって高精度の測定を行うことができ、被照射体に対して、照度むらが小さくかつ均一な直達光である擬似太陽光を照射することができ、さらに、装置全体の寸法を低減化できるソーラシミュレータを提供する。
【解決手段】ソーラシミュレータは、直線状に伸長した光軸を有する光源と、連続する長尺フィルム状の被照射体を供給する供給手段と、供給された被照射体が、光軸を中心として光源を囲むように被照射体を位置規定する位置規定手段とを備えており、位置規定された被照射体に光源からの光を照射して特性測定を行うように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然太陽光に近いスペクトル分布を有する擬似太陽光を発生させて被照射体に照射するソーラシミュレータに係り、特に、長尺の連続するフィルム状の被照射体に擬似太陽光を照射可能なソーラシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ソーラシミュレータは、一般に、平板状の太陽電池パネルに擬似太陽光を照射し、I/V特性等の光電変換特性の測定を行うように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、暗室内でパネル状の太陽電池を太陽電池側支持台に支持し、キセノンフラッシュランプからの光をこの太陽電池に照射することにより太陽電池の出力を測定する擬似太陽光照射装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、パネル状の基準太陽電池及び被測定対象であるパネル状の太陽電池をキセノンフラッシュランプに対面配置し、これら太陽電池から順次出力される電流及び電圧を測定するソーラシミュレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317870号公報
【特許文献2】特開2007−088419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、アモルファスシリコン系太陽電池として、軽量で可撓性を有するプラスチックフィルムを基板に用いた太陽電池が開発されている。この太陽電池は、ロールツーロール方式の連続する長尺基板上にアモルファスシリコン膜を積層した構成となっており、このような連続する大面積のフィルム状太陽電池について、特許文献1及び2に開示されているような従来のソーラシミュレータを用いて、I/V特性等の光電変換特性を測定しようとすると、次のような問題が生じる。
(1)長尺のフィルム状太陽電池を擬似太陽光照射部に連続的に搬送できないため、この太陽電池を裁断した状態で測定する必要がある、
(2)長尺のフィルム状太陽電池の各部を擬似太陽光照射部に同一条件で配置できないため、太陽電池全体について高精度の測定を行うことが難しい、
(3)長尺かつ大面積のフィルム状太陽電池に擬似太陽光を照射するために、擬似太陽光照射部の面積を大きくすると、照度むらや非平行光による散乱を引き起こす、
(4)長尺かつ大面積のフィルム状太陽電池に擬似太陽光を照射するためには、複数のランプを用いる必要があり、装置全体の寸法が大きくなる。
【0007】
従って本発明の目的は、長尺のフィルム状の被照射体を裁断することなく連続的に測定が行えるソーラシミュレータを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、長尺のフィルム状被照射体全体にわたって高精度の測定を行うことができるソーラシミュレータを提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、長尺のフィルム状被照射体に対して、照度むらが小さくかつ均一な直達光である擬似太陽光を照射し測定を行うことのできるソーラシミュレータを提供することにある。
【0010】
本発明のまたさらに他の目的は、長尺のフィルム状被照射体を対象とする場合にも装置全体の寸法を低減化できるソーラシミュレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ソーラシミュレータは、直線状に伸長した光軸を有する光源と、連続する長尺フィルム状の被照射体を供給する供給手段と、供給された被照射体が、光軸を中心として光源を囲むように被照射体を位置規定する位置規定手段とを備えており、位置規定された被照射体に光源からの光を照射して特性測定を行うように構成されている。
【0012】
供給手段から連続する長尺フィルム状の被照射体が供給され、位置規定手段はこの被照射体を直線状の光軸を有する光源をその光軸を中心として囲むように位置規定し、この被照射体に光源から光照射が行われる。直線状の光軸を中心として光源を囲むように位置規定された被照射体にこの光源から光照射されるので、長尺のフィルム状の被照射体であっても、裁断することなく連続的にその出力を測定することができ、被照射体全体にわたって高精度の測定を行うことができる。また、光源から放射状に放射された光が照射されるので、光源と被照射体までの距離が一定で、照度むらが小さくなり、しかも、均一な直達光を照射することができる。さらに、単一の光源で長尺のフィルム状被照射体を照射できるので、装置全体の寸法を低減化することができる。
【0013】
位置規定手段が、光源の周囲に光軸と同軸配置されており、少なくとも周壁が光透過性材料で形成されており、外周面上に被照射体を巻回するように構成された単一の筒体を含むことが好ましい。この場合、筒体の外周面を囲むように、低反射率の内表面を有する迷光遮蔽カバーが光軸と同軸に配置されていることがより好ましい。
【0014】
位置規定手段が、光源の周囲に光軸から等距離の位置に配置された複数の位置規定ローラを含んでおり、被照射体が複数の位置規定ローラの外向き面に位置規定されるように構成されていることも好ましい。
【0015】
被照射体に対して、その供給方向に沿った張力を印加する張力付与手段をさらに備えたことも好ましい。
【0016】
位置規定手段が、光源の周囲に光軸から等距離の位置に配置された複数の位置規定ローラを含んでおり、被照射体が複数の位置規定ローラの内向き面に位置規定されるように構成されていることも好ましい。
【0017】
光源と位置規定手段との間に同軸に配置されており、スペクトル分布特性を調整する筒型の特性調整用光学素子をさらに備えていることも好ましい。このような特性調整用光学素子を挿入することにより、国際規格に合致したスペクトル分布を得ることが容易となる。
【0018】
本発明によれば、さらに、ソーラシミュレータは、直線状に伸長した光軸を有する光源と、光源の周囲に光軸と同軸配置されており、少なくとも周壁が光透過性材料で形成された単一の筒体と、連続する長尺フィルム状の第1の被照射体を供給する第1の供給手段と、供給された第1の被照射体が筒体の外周面の上側部分に巻回されるように位置規定する第1の位置規定手段と、連続する長尺フィルム状の第2の被照射体を供給する第2の供給手段と、供給された第2の被照射体が筒体の外周面の下側部分に巻回されるように位置規定する第2の位置規定手段とを備えており、位置規定された第1及び第2の被照射体に光源からの光を照射して特性測定を行うように構成されている。
【0019】
第1及び第2の供給手段から連続する長尺フィルム状の第1及び第2の被照射体がそれぞれ供給され、第1及び第2の位置規定手段はこれら第1及び第2の被照射体を光源の周囲に光軸と同軸配置されており少なくとも周壁が光透過性材料で形成された単一の筒体の外周面の上側部分及び下側部分にそれぞれ巻回し、これら第1及び第2の被照射体に光源から光照射が行われる。直線状の光軸を有する光源の周囲に同軸配置された筒体の外周面の上側部分及び下側部分にそれぞれ巻回するように位置規定された被照射体にこの光源から光照射されるので、異なる特性の第1及び第2の被照射体について、同時に測定されるので、高精度の測定が可能となり、しかも短時間で測定を行うことができる。もちろん、長尺のフィルム状の被照射体であっても、裁断することなく連続的にその出力を測定することができ、被照射体全体にわたって高精度の測定を行うことができる。また、光源から放射状に放射された光が照射されるので、照度むらが小さくなり、しかも、均一な直達光を照射することができる。さらに、単一の光源で長尺のフィルム状被照射体を照射できるので、装置全体の寸法を低減化することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、直線状の光軸を中心として光源を囲むように位置規定された被照射体にこの光源から光照射されるので、長尺のフィルム状の被照射体であっても、裁断することなく連続的にその出力を測定することができ、被照射体全体にわたって高精度の測定を行うことができる。また、光源から放射状に放射された光が照射されるので、照度むらが小さくなり、しかも、均一な直達光を照射することができる。さらに、単一の光源で長尺のフィルム状被照射体を照射できるので、装置全体の寸法を低減化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のソーラシミュレータの第1の実施形態における一部構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明のソーラシミュレータの第2の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【図3】本発明のソーラシミュレータの第3の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【図4】本発明のソーラシミュレータの第4の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【図5】本発明のソーラシミュレータの第5の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【図6】本発明のソーラシミュレータの第6の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【図7】本発明のソーラシミュレータの第7の実施形態における一部構成を概略的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は本発明のソーラシミュレータの第1の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、被照射体がロールツーロール方式の長尺のフィルム状太陽電池であり、この太陽電池に擬似太陽光を照射して光電変換特性の測定を行うように構成されている。
【0023】
同図において、10は光軸が直線状に伸長している長尺の直管型キセノンフラッシュランプ(本発明の光源に対応する)、11はキセノンフラッシュランプ10の周囲に同軸配置された光学特性調整フィルタ付冷却管(本発明の特性調整用光学素子に対応する)、12はキセノンフラッシュランプ10及び光学特性調整フィルタ付冷却管11の周囲に同軸配置されたガラス管(本発明の筒体に対応する)をそれぞれ示している。
【0024】
ガラス管12は、少なくともその周壁が光透過性のガラス材料で形成されており、その外周面上に、位置規定された長尺のフィルム状太陽電池13が密着的に巻回されるように構成されている。さらに、ガラス管12は、矢印12a方向に自由に又はモータによって強制的に軸回転するように構成されている。
【0025】
フィルム状太陽電池13は、例えば、可撓性を有する連続するプラスチックフィルム長尺基板上に形成されたアモルファスシリコン系太陽電池であり、ロールツーロール方式で供給ロール14(本発明の供給手段に対応する)から供給され、巻取りロール17に巻取られる。即ち、矢印14a方向に軸回転する供給ロール14から供給され、案内ローラ15及び16によって案内されてガラス管12の外周面上に密着的に巻回され、擬似太陽光照射及び測定が終了した後に、矢印17a方向に軸回転する巻取りロール17に巻取られる。
【0026】
本実施形態におけるキセノンフラッシュランプ10は、例えば、5〜100msec程度の発光パルス幅を有する閃光を発生可能とする長尺の一般的な直管型キセノンランプである。
【0027】
光学特性調整フィルタ付冷却管11は、キセノンフラッシュランプ10を冷却するための気体又は液体が内部を流れ、その外周面に通過光のスペクトル分布を調整するためのエアマスフィルタが固着されたものである。このようなエアマスフィルタを挿入することにより、国際規格に合致したスペクトル分布を得ることが容易となる。
【0028】
次に本実施形態における擬似太陽光照射及びI/V特性測定動作について説明する。
【0029】
まず、供給ロール14からフィルム状太陽電池13を供給し、案内ローラ15及び16によって案内することにより、所定の長さである測定単位のフィルム状太陽電池13をガラス管12の外周面上に密着的に巻回する。次いで、その測定単位のフィルム状太陽電池13に対して図示しない測定用電極を電気的に接続し、キセノンフラッシュランプ10から光学特性調整フィルタ付冷却管11を介して擬似太陽光を照射する。この状態でフィルム状太陽電池13の出力を測定用電極を介して取り出し、I/V特性を測定する。その後、測定用電極を切り離し、巻取りロール17によって所定長さ分だけフィルム状太陽電池13を巻取ることによって、次の測定単位のフィルム状太陽電池13をガラス管12の外周面上に密着的に巻回する。以後、同様の処理を繰り返して実施し、フィルム状太陽電池13の全長にわたってI/V特性を測定する。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、供給ロール14から供給されたフィルム状太陽電池13をガラス管12の外周面上に巻回してキセノンフラッシュランプ10から擬似太陽光を照射するように構成されているので、長尺のフィルム状太陽電池であっても、裁断することなく連続的にその出力を測定することができ、フィルム状太陽電池全体にわたって高精度の測定を行うことができる。また、キセノンフラッシュランプ10から放射状に光が放射されるので、照度むらが小さくなり、均一な直達光を照射することができる。また、キセノンフラッシュランプ10からフィルム状太陽電池13までの距離がどの位置においても等距離となる。その結果、フィルム状太陽電池全体にわたって高精度の測定を行うことができる。さらに、単一のキセノンフラッシュランプ10で長尺のフィルム状太陽電池を照射できるので、装置全体の寸法を低減化することができる。
【0031】
図2は本発明のソーラシミュレータの第2の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、迷光遮蔽カバーが設けられていることを除いて図1の第1の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様の構成を有している。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0032】
図2において、18はガラス管12の外周面を囲むように、キセノンフラッシュランプ10、光学特性調整フィルタ付冷却管11及びガラス管12と同軸配置された低反射率の内表面を有する迷光遮蔽カバーを示している。
【0033】
フィルム状太陽電池13が半透明の場合、このような迷光遮蔽カバー18を付加的に設けることにより、フィルム状太陽電池13を透過した光が効果的に吸収され、その結果、迷光が周囲に発散照射されて測定結果に誤差が発生することを防止できる。
【0034】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態の場合と同様である。
【0035】
図3は本発明のソーラシミュレータの第3の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、ガラス管に代えて複数の位置規定ローラが設けられていることを除いて図1の第1の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様の構成を有している。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0036】
図3において、19はキセノンフラッシュランプ10及び光学特性調整フィルタ付冷却管11の周囲に光軸から等距離の位置に配置された複数(図示の例では7つ)の位置規定ローラを示している。
【0037】
供給ロール14から供給されたフィルム状太陽電池13は、案内ローラ15及び16によって案内され、複数の位置規定ローラ19の外向き面に位置規定されることにより、キセノンフラッシュランプ10をその光軸を中心として円筒形状に囲むように位置が規定される。
【0038】
本実施形態によれば、ガラス管が不要であるため、その分、製造コストが低下するが、複数の位置規定ローラ19によってキセノンフラッシュランプ10からの光の一部が遮られるため、多少の照射むらの生じる可能性がある。ただし、位置規定ローラ19の径を小さくしたり、光透過性の材料で位置規定ローラ19を構成すれば、改善可能である。なお、位置規定ローラ19の数は任意である。数が増えればフィルム状太陽電池13と光軸との距離をより均一化することが可能であるが、その反面、遮蔽される光量が多くなる。
【0039】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態の場合と同様である。
【0040】
図4は本発明のソーラシミュレータの第4の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータも、ガラス管に代えて複数の位置規定ローラが設けられていることを除いて図1の第1の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様の構成を有している。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0041】
図4において、19はキセノンフラッシュランプ10及び光学特性調整フィルタ付冷却管11の周囲に光軸から等距離の位置に配置された複数(図示の例では7つ)の位置規定ローラを示している。
【0042】
本実施形態では、供給ロール14及び巻取りロール17の回転速度及び回転トルクを制御することにより、フィルム状太陽電池13に対する供給方向に沿った張力がより高くなるように制御している。これにより、供給ロール14から供給されたフィルム状太陽電池13は、案内ローラ15及び16によって案内され、複数の位置規定ローラ19の外向き面に位置規定されるが、その際、キセノンフラッシュランプ10をその光軸を中心として多角筒形状に囲むように位置が規定される。
【0043】
第3の実施形態の場合と同様に、本実施形態によれば、ガラス管が不要であるため、その分、製造コストが低下するが、複数の位置規定ローラ19によってキセノンフラッシュランプ10からの光の一部が遮られるため、多少の照射むらの生じる可能性がある。ただし、位置規定ローラ19の径を小さくしたり、光透過性の材料で位置規定ローラ19を構成すれば、改善可能である。なお、位置規定ローラ19の数は任意である。数が増えればフィルム状太陽電池13と光軸との距離をより均一化することが可能であるが、その反面、遮蔽される光量が多くなる。
【0044】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態の場合と同様である。
【0045】
図5は本発明のソーラシミュレータの第5の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、フィルム状太陽電池が複数の位置規定ローラの内向き面によって位置規定されるように構成されていることを除いて図3の第3の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様の構成を有している。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態及び図3の第3の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0046】
図5において、20はキセノンフラッシュランプ10及び光学特性調整フィルタ付冷却管11の周囲に光軸から等距離の位置に配置された複数(図示の例では7つ)の位置規定ローラを示している。
【0047】
供給ロール14から供給されたフィルム状太陽電池13は、案内ローラ15及び16によって案内され、複数の位置規定ローラ20の内向き面に位置規定されることにより、キセノンフラッシュランプ10をその光軸を中心として円筒形状に囲むように位置規定される。
【0048】
本実施形態によれば、ガラス管が不要であるため、その分、製造コストが低下する。また、複数の位置規定ローラ20によってキセノンフラッシュランプ10からの光が遮られない。なお、位置規定ローラ20の数は任意である。数が増えればフィルム状太陽電池13と光軸との距離をより均一化することが可能である。
【0049】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態及び図3の第3の実施形態の場合と同様である。
【0050】
図6は本発明のソーラシミュレータの第6の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、ガラス管もそれに代わる位置規定ローラも設けられておらず、フィルム状太陽電池がその弾性により自立してキセノンフラッシュランプ10を囲むように位置規定している。本実施形態のソーラシミュレータのその他の構成は、図1の第1の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様である。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0051】
図6において、21及び22はフィルム状太陽電池13に制御された精密な駆動力を与えるためのピンチローラを示している。ピンチローラ21が案内ローラ15との間にフィルム状太陽電池13を押し付け、さらに、ピンチローラ22が案内ローラ16との間にフィルム状太陽電池13を押し付けることにより、このフィルム状太陽電池13に精密な駆動力を与えられる。その結果、ガラス管がなくとも、また、複数の位置規定ローラがなくとも、フィルム状太陽電池13をその弾性により自立させてキセノンフラッシュランプ10の回りに位置するように規定することができる。即ち、供給ロール14から供給されたフィルム状太陽電池13は、案内ローラ15及びピンチローラ21並びに案内ローラ16及びピンチローラ22によって所定の駆動力が与えられて案内され、キセノンフラッシュランプ10をその光軸を中心として円筒形状に囲むように自立して位置規定する。
【0052】
本実施形態によれば、ガラス管及び位置規定ローラが不要であるため、その分、製造コストが低下する。なお、本実施形態において、少数の位置規定ローラを設けてもよい。
【0053】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態の場合と同様である。
【0054】
図7は本発明のソーラシミュレータの第7の実施形態における疑似太陽光照射部分の構成を概略的に示している。本実施形態のソーラシミュレータは、2種類のフィルム状太陽電池の測定を同時に行えるように構成されていることを除いて図1の第1の実施形態におけるソーラシミュレータとほぼ同様の構成を有している。従って、本実施形態において、図1の第1の実施形態と同様の構成要素については同じ参照符号を使用する。
【0055】
図7において、131は連続する長尺の第1のフィルム状太陽電池、132は連続する長尺の第2のフィルム状太陽電池を示しており、これら第1のフィルム状太陽電池131と第2のフィルム状太陽電池132とは、特性が異なっていてもよいし同様であってもよいが、測定が同時に行えるように構成されている。
【0056】
第1のフィルム状太陽電池131は、例えば、可撓性を有する連続するプラスチックフィルム長尺基板上に形成されたアモルファスシリコン系太陽電池であり、ロールツーロール方式で第1の供給ロール141(本発明の第1の供給手段に対応する)から供給され、第1の巻取りロール171に巻取られる。即ち、矢印141a方向に軸回転する第1の供給ロール141から供給され、案内ローラ151及び161によって案内されてガラス管12の外周面上の上側部分に密着的に巻回され、擬似太陽光照射及び測定が終了した後に、矢印171a方向に軸回転する第1の巻取りロール171に巻取られる。
【0057】
第2のフィルム状太陽電池132は、例えば、可撓性を有する連続するプラスチックフィルム長尺基板上に形成されたアモルファスシリコン系太陽電池であり、ロールツーロール方式で第2の供給ロール142(本発明の第2の供給手段に対応する)から供給され、第2の巻取りロール172に巻取られる。即ち、矢印142a方向に軸回転する第2の供給ロール142から供給され、案内ローラ152及び162によって案内されてガラス管12の外周面上の下側部分に密着的に巻回され、擬似太陽光照射及び測定が終了した後に、矢印172a方向に軸回転する第2の巻取りロール172に巻取られる。
【0058】
ガラス管12は矢印12aの一方向に回動するように構成されており、第1のフィルム状太陽電池131及び第2のフィルム状太陽電池132は、互いに逆方向に移動するように構成されている。これらフィルム状太陽電池の繰り出し量を精密に制御するため、ピンチローラ231及び共通ピンチローラ233間に第1のフィルム状太陽電池131を押し付けて駆動し、ピンチローラ232及び共通ピンチローラ233間に第2のフィルム状太陽電池132を押し付けて駆動するように構成することも望ましい。
【0059】
次に本実施形態における擬似太陽光照射及びI/V特性測定動作について説明する。
【0060】
まず、第1の供給ロール141から第1のフィルム状太陽電池131を供給し、ピンチローラ231及び共通ピンチローラ233によって駆動しつつ案内ローラ151及び161によって案内することにより、所定の長さである測定単位の第1のフィルム状太陽電池131をガラス管12の外周面上の上側部分に密着的に巻回すると共に、第2の供給ロール142から第2のフィルム状太陽電池132を供給し、ピンチローラ232及び共通ピンチローラ233によって駆動しつつ案内ローラ152及び162によって案内することにより、所定の長さである測定単位の第2のフィルム状太陽電池132をガラス管12の外周面上の下側部分に密着的に巻回する。次いで、その測定単位の第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132に対して図示しない測定用電極をそれぞれ電気的に接続し、キセノンフラッシュランプ10から光学特性調整フィルタ付冷却管11を介して擬似太陽光をそれぞれ照射する。この状態で第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132の出力を測定用電極を介してそれぞれ取り出し、I/V特性をそれぞれ測定する。その後、測定用電極を切り離し、第1及び第2の巻取りロール171及び172によって所定長さ分だけ第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132をそれぞれ巻取ることによって、次の測定単位の第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132をガラス管12の外周面上の上側部分及び下側部分にそれぞれ密着的に巻回する。以後、同様の処理を繰り返して実施し、第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132の全長にわたってI/V特性をそれぞれ測定する。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、第1及び第2のフィルム状太陽電池131及び132のI/V特性を1つの装置で同じ測定条件で同時に測定することが可能となる。
【0062】
本実施形態におけるその他の構成、動作及び作用効果は、図1の第1の実施形態の場合と同様である。
【0063】
上述した各実施形態において、位置規定ローラや案内ローラに真空吸着機能を持たせてもよい。これにより、フィルム状太陽電池を指示したり、位置規定したり、案内する機能が向上し、より高精度の測定を行うことが可能となる。
【0064】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0065】
10 キセノンフラッシュランプ
11 光学特性調整フィルタ付冷却管
12 ガラス管
12a、14a、17a、141a、142a、171a、172a 軸回転方向
13、l31、132 フィルム状太陽電池
14、141、142 供給ロール
15、16、151、152、161、162 案内ローラ
17、171、172 巻取りロール
18 迷光遮蔽カバー
19、20 位置規定ローラ
21、22、231、232 ピンチローラ
233 共通ピンチローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に伸長した光軸を有する光源と、連続する長尺フィルム状の被照射体を供給する供給手段と、前記供給された被照射体が、前記光軸を中心として前記光源を囲むように該被照射体を位置規定する位置規定手段とを備えており、該位置規定された被照射体に前記光源からの光を照射して特性測定を行うように構成されていることを特徴とするソーラシミュレータ。
【請求項2】
前記位置規定手段が、前記光源の周囲に前記光軸と同軸配置されており、少なくとも周壁が光透過性材料で形成されており、外周面上に前記被照射体を巻回するように構成された単一の筒体を含むことを特徴とする請求項1に記載のソーラシミュレータ。
【請求項3】
前記筒体の外周面を囲むように、低反射率の内表面を有する迷光遮蔽カバーが前記光軸と同軸に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のソーラシミュレータ。
【請求項4】
前記位置規定手段が、前記光源の周囲に前記光軸から等距離の位置に配置された複数の位置規定ローラを含んでおり、前記被照射体が該複数の位置規定ローラの外向き面に位置規定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラシミュレータ。
【請求項5】
前記被照射体に対して、その供給方向に沿った張力を印加する張力付与手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のソーラシミュレータ。
【請求項6】
前記位置規定手段が、前記光源の周囲に前記光軸から等距離の位置に配置された複数の位置規定ローラを含んでおり、前記被照射体が該複数の位置規定ローラの内向き面に位置規定されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のソーラシミュレータ。
【請求項7】
前記光源と前記位置規定手段との間に同軸に配置されており、スペクトル分布特性を調整する筒型の特性調整用光学素子をさらに備えていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のソーラシミュレータ。
【請求項8】
直線状に伸長した光軸を有する光源と、該光源の周囲に前記光軸と同軸配置されており、少なくとも周壁が光透過性材料で形成された単一の筒体と、連続する長尺フィルム状の第1の被照射体を供給する第1の供給手段と、前記供給された第1の被照射体が前記筒体の外周面の上側部分に巻回されるように位置規定する第1の位置規定手段と、連続する長尺フィルム状の第2の被照射体を供給する第2の供給手段と、前記供給された第2の被照射体が前記筒体の外周面の下側部分に巻回されるように位置規定する第2の位置規定手段とを備えており、該位置規定された第1及び第2の被照射体に前記光源からの光を照射して特性測定を行うように構成されていることを特徴とするソーラシミュレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−4447(P2012−4447A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139744(P2010−139744)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(591107676)山下電装株式会社 (3)
【Fターム(参考)】