説明

タイヤの滑り止め装置

【課題】 滑り止め体はU形状部材の横断部の磨耗を防止する。
【解決手段】 U形状断面の滑り止め体を自動車のタイヤに嵌め込んで全周に配列して連結する構成にし、滑り止め体は、前側と後側のU形状部材の内側部を線状部材で連結し、外側部に前側と後側の連結部材を取り付け、外側部に外側の当て部材を、内側部に内側の当て部材を設けた滑り止め装置において、U形状部材2と線状部材4又は連結部材11は、軸部材6を貫通して結合し、軸部材の抜き取りで分離する構成にし、内側の軸部材に内側の当て部材7を、外側の軸部材に外側の当て部材16を固定し、U形状部材の横断部2aに自動車の走行路面に当る筒状弾性部材21を嵌合した。筒状弾性部材を交換するときには、U形状部材から線状部材又は連結部材を分離し、筒状弾性部材を抜き取り、次の筒状弾性部材をU形状部材の横断部に嵌合し、U形状部材に線状部材又は連結部材を結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤに装着する滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献に例示される滑り止め装置は、自動車のタイヤにその外周側からU形状断面の滑り止め体を嵌め込む。滑り止め体は、数個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、隣同士を連結する。数個の滑り止め体は、輪になってタイヤの外周に嵌合し、タイヤに装着される。滑り止め装置をタイヤから取り外すときには、滑り止め体の隣同士を分離し、滑り止め体をタイヤから抜き取る。
【0003】
U形状断面の滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備えている。前側と後側のU形状部材は、U形状に湾曲した棒にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの外側面に沿う外側部とタイヤの内側面に沿う内側部を有する。内側の線状部材は、鎖にし、前側のU形状部材と後側のU形状部材の内側部同士を連結している。
【0004】
滑り止め体の外側部は、タイヤの周方向の前端と後端にそれぞれ連結部材を取り付けている。連結部材は、鎖にし、連結具を取り付けている。タイヤの周方向に配列した滑り止め体を連結する際、滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結具で分離可能に連結する。
【0005】
滑り止め体は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3557464号公報
【特許文献2】特許第3718779号公報
【特許文献3】特開2008−308149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[課 題]
上記のようなタイヤの滑り止め装置は、数個の滑り止め体の前側と後側のU形状部材の横断部をタイヤの周方向に間隔を置いて配列する。U形状部材の横断部は、自動車の走行中に、タイヤの下部に達する毎に、自動車の走行路面に当って、走行路面を擦る。その結果、滑り止め体は、U形状部材の横断部のみが激しく磨耗する。横断部の磨耗量が許容量を超えると、使用不可能になる。
【0008】
また、U形状部材の横断部は、タイヤの接地面をタイヤの軸心方向に沿って横断する。その結果、タイヤの軸心方向の滑りに対しては滑り止め作用を奏し難い。
更に、これらの課題を解決する構成は、簡単であることが望まれる。複雑になると実用になり難い。
【0009】
[着 想]
1.滑り止め体は、U形状部材の横断部に筒状弾性部材を嵌合して取り付ける。すると、筒状弾性部材は、タイヤの下部に達する毎に、走行路面に当って押し付けられる。U形状部材の横断部に嵌合した状態でタイヤと走行路面の間に挟まれて圧縮される。U形状部材の横断部は、直接には走行路面に当らない。走行路面を擦らず、激しく磨耗しない。
【0010】
筒状弾性部材は、磨耗量が許容量を超えると、新品と取り替える。即ち、筒状弾性部材は、交換可能にする。
筒状弾性部材を交換するときには、U形状部材の内側部又は外側部から線状部材又は連結部材を分離する。磨耗した筒状弾性部材は、U形状部材の内側部又は外側部を経て抜き取る。新品の筒状弾性部材は、U形状部材の内側部又は外側部を経てU形状部材の横断部に嵌合する。U形状部材の内側部又は外側部には、線状部材又は連結部材を再び結合する。
U形状部材の内側部又は外側部と線状部材又は連結部材は、当て部材付きの軸部材で結合、分離する構成にする。軸部材がU形状部材と線状部材又は連結部材及び当て部材の3部材を結合する構成になる。構成が簡単になる。
【0011】
2.筒状弾性部材は、走行路面に押し付けられていないときには、U形状部材の横断部に対して回転可能にする。すると、筒状弾性部材は、タイヤの下部を通過すると、横断部に対して回転する。次に走行路面に当るときには、当る位置が変わる。磨耗部分が変わる。筒状弾性部材は、片減りせず、寿命が長くなる。
3.筒状弾性部材は、螺旋ばねにする。すると、螺旋ばねの軸心方向に沿って、即ち、U形状部材の横断部に沿って凹凸が形成される。タイヤの軸心方向の滑りに対して滑り止め作用を発揮する。
4.筒状弾性部材は、外径の異なる複数個にする。外径の異なる筒状弾性部材が隣接すると、それらの間に段差ができる。即ち、U形状部材の横断部に沿って段差が形成される。タイヤの軸心方向の滑りに対して滑り止め作用を発揮する。
5.筒状弾性部材は、ゴム筒にする。すると、走行路面に当るときに、緩衝する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.数個のU形状断面の滑り止め体を自動車のタイヤに嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にし、
滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備え、
前側のU形状部材と後側のU形状部材は、U形状に湾曲した棒にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの外側面に沿う外側部とタイヤの内側面に沿う内側部を有し、内側部同士を内側の線状部材で連結し、
滑り止め体の外側部は、タイヤの周方向の前端と後端にそれぞれ前側と後側の連結部材を取り付け、タイヤの周方向に配列した滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結する構成にし、
滑り止め体は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設けた滑り止め装置において、
前側又は後側のU形状部材の内側部と内側の線状部材は、内側の軸部材をタイヤの軸心方向に貫通して結合し、内側の軸部材の抜き取りで分離する構成にし、内側の軸部材に内側の当て部材を固定し、
前側又は後側のU形状部材の外側部と前側又は後側の連結部材は、外側の軸部材をタイヤの軸心方向に貫通して結合し、外側の軸部材の抜き取りで分離する構成にし、外側の軸部材に外側の当て部材を固定し、
前側又は後側のU形状部材は、横断部に筒状弾性部材を嵌合して取り付け、筒状弾性部材は、タイヤの下部に達する毎に、自動車の走行路面に当って押し付けられる構成にし、
筒状弾性部材を交換するときには、U形状部材の内側部又は外側部から線状部材又は連結部材を分離し、U形状部材の横断部に嵌合した筒状弾性部材をU形状部材の内側部又は外側部を経て抜き取り、次の筒状弾性部材をU形状部材の内側部又は外側部を経てU形状部材の横断部に嵌合し、U形状部材の内側部又は外側部に線状部材又は連結部材を結合する構成にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
2.上記のタイヤの滑り止め装置において、
筒状弾性部材は、走行路面に押し付けられていないときには、U形状部材の横断部に対して回転する構成にししたことを特徴とする。
3.上記のタイヤの滑り止め装置において、
筒状弾性部材は、螺旋ばねにし、U形状部材の横断部に沿って凹凸を形成したことを特徴とする。
4.上記のタイヤの滑り止め装置において、
筒状弾性部材は、外径の異なる複数個にし、外径の異なるものを隣接してそれらの間に段差を形成したことを特徴とする。
5.上記の1、2又は4のタイヤの滑り止め装置において、
筒状弾性部材は、ゴム筒にし、走行路面に当るときに緩衝する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
筒状弾性部材は、磨耗量が許容量を超えると、新品と取り替える。滑り止め体は、寿命が長くなる。筒状弾性部材を交換可能にする構成は、複雑にならない。
また、タイヤの軸心方向の滑りに対して滑り止め作用を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の第1例における滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図2】図1中の第1滑り止め体の拡大正面図。
【図3】同第1滑り止め体の拡大平面図。
【図4】図2のA−A線断面拡大図。
【図5】同第1滑り止め体の分離状態の正面図。
【図6】実施形態の第2例における滑り止め装置の図であり、図4と同様な断面図。
【図7】第3例における滑り止め装置の図であり、図4と同様な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1例(図1〜図5参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、自動車のタイヤTに装着した状態を自動車の外側から視た正面を図1に示す。この滑り止め装置は、第1、第2、第3滑り止め体1a、1b、1cをタイヤTの周方向に等間隔に連結している。3個の滑り止め体1a〜1c、1は、同一構造にしている。第1滑り止め体1aについて説明する。
【0016】
第1滑り止め体1、1aは、タイヤTの上部に装着した時の姿態で図2と図3に拡大して示す。図2は、自動車の外側から視た正面である。図3は、上側から視た平面である。図4は、図2のA−A線断面拡大図である。
【0017】
第1滑り止め体1、1aは、前側のU形状部材2と後側のU形状部材3及び自動車の内側の線状部材4を備えている。ここで、前側とは、図1に矢印で示す自動車前進時のタイヤTの正回転方向の前側、図1、図2と図3の左側である。後側とは、タイヤTの正回転方向の後側、図1、図2と図3の右側である。
【0018】
前側と後側のU形状部材2、3は、対称構造にし、鋼の丸棒をタイヤTの外周側に嵌合するU形状に湾曲している。U形状部材2、3は、タイヤTの接地面を横断する横断部2a、3a、タイヤTの外側面に沿う外側部2b、3bとタイヤTの内側面に沿う内側部2c、3cを有している。前側と後側のU形状部材2、3は、タイヤTに60度位の中心角をなして嵌合する。
【0019】
前側のU形状部材2は、外側部2bをタイヤTの径方向に配置し、外側部2bの端側の部分を前側に折り曲げてタイヤTの周方向に配置している。また、前側のU形状部材2は、内側部2cをタイヤTの径方向に配置し、内側部2cの端側の部分を後側に折り曲げてタイヤTの周方向に配置している。後側のU形状部材3は、外側部3bをタイヤTの径方向に配置し、外側部3bの端側の部分を後側に折り曲げてタイヤTの周方向に配置している。また、後側のU形状部材3は、内側部3cをタイヤTの径方向に配置し、内側部3cの端側の部分を前側に折り曲げてタイヤTの周方向に配置している。
【0020】
内側の線状部材4は、鎖にしている。この鎖4は、複数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にしている。リーフチェーンにしている。
【0021】
内側の線状部材4は、前端を前側のU形状部材2の内側部2cの端に内側の軸部材6で着脱可能に取り付けている。詳述すると、図3と図4に示すように、前側のU形状部材2の内側部2cは、端に溝を形成し、溝を横断する螺孔をタイヤTの軸心方向に貫通している。内側の線状部材4は、前端にばか孔をタイヤTの軸心方向に貫通している。内側の線状部材4の前端は、前側のU形状部材2の内側部2cの端の溝に挿入している。内側の軸部材6は、螺軸部を前側のU形状部材2の内側部2cの螺孔に螺合して貫通し、また、内側の線状部材4の前端のばか孔に貫通している。即ち、前側のU形状部材2の内側部2cの端と内側の線状部材4の前端は、内側の軸部材6をタイヤTの軸心方向に貫通して回転可能に結合している。
【0022】
内側の軸部材6は、内端の頭部に内側の当て部材7を固定し、螺軸部の外端にロックナット8を螺合して割ピンを取り付けている。割ピンでロックナット8の抜け止を施している。割ピンを取り外し、ロックナット8をねじ戻して抜き取り、内側の当て部材7付き軸部材6をねじ戻して抜き取ると、図5に示すように、前側のU形状部材2の内側部2cと内側の線状部材4は、分離する。
【0023】
また、内側の線状部材4は、前端と同様に、後端を後側のU形状部材3の内側部3cの端に内側の軸部材6で着脱可能に取り付けている。後側のU形状部材3の内側部3cの端と内側の線状部材4の後端は、内側の軸部材6をタイヤTの軸心方向に貫通して回転可能に結合している。割ピンを取り外し、ロックナット8をねじ戻して抜き取り、内側の当て部材7付き軸部材6をねじ戻して抜き取ると、図5に示すように、後側のU形状部材3の内側部3cと内側の線状部材4は、分離する。
【0024】
前側のU形状部材2の外側部2bは、前側の連結部材11を取り付けている。後側のU形状部材3の外側部3bは、後側の連結部材12を取り付けている。前側と後側の連結部材11、12は、鎖にしている。この鎖11、12は、複数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にしている。リーフチェーンにしている。前側の連結部材11は、前端に雄型の連結具を設けている。後側の連結部材12は、後端に雌型の連結具を設けている。雄型と雌型の連結具は、連結可能で分離可能にしている。
【0025】
前側の連結部材11は、後端を前側のU形状部材2の外側部2bの端に外側の軸部材6で着脱可能に取り付けている。この取り付け構造は、内側の線状部材4の軸部材6による取り付け構造と同様である。詳述すると、前側のU形状部材2の外側部2bは、端に溝を形成し、溝を横断する螺孔をタイヤTの軸心方向に貫通している。前側の連結部材11は、後端にばか孔をタイヤTの軸心方向に貫通している。前側の連結部材11の後端は、前側のU形状部材2の外側部2bの端の溝に挿入している。外側の軸部材6は、螺軸部を前側のU形状部材2の外側部2bの螺孔に螺合して貫通し、また、前側の連結部材11の後端のばか孔に貫通している。即ち、前側のU形状部材2の外側部2bの端と前側の連結部材11の後端は、外側の軸部材6をタイヤTの軸心方向に貫通して回転可能に結合している。
【0026】
外側の軸部材6は、内端の頭部に外側の当て部材16を固定し、螺軸部の外端にロックナット8を螺合して割ピンを取り付けている。割ピンでロックナット8の抜け止を施している。割ピンを取り外し、ロックナット8をねじ戻して抜き取り、外側の当て部材16付き軸部材6をねじ戻して抜き取ると、図5に示すように、前側のU形状部材2の外側部2bと前側の連結部材11は、分離する。
【0027】
後側の連結部材12は、前側の連結部材11と同様に、前端を後側のU形状部材3の外側部3bの端に外側の軸部材6で着脱可能に取り付けている。後側のU形状部材3の外側部3bの端と後側の連結部材12の前端は、外側の軸部材6をタイヤTの軸心方向に貫通して回転可能に結合している。割ピンを取り外し、ロックナット8をねじ戻して抜き取り、当て部材16付き軸部材6をねじ戻して抜き取ると、図5に示すように、後側のU形状部材3の外側部3bと後側の連結部材12は、分離する。
【0028】
内側の当て部材7と外側の当て部材16は、それぞれ、円盤状に形成し、タイヤTの外側面、内側面に当る位置に配置している。
【0029】
即ち、滑り止め体1は、タイヤTに嵌合するU形状断面の構造にしている。U形状断面の滑り止め体1は、前側と後側のU形状部材2、3の横断部2a、3aで、タイヤTの接地面を横断する横断部を構成している。前側と後側のU形状部材2、3の外側部2b、3bで、タイヤTの外側面に沿う外側部を構成している。前側と後側のU形状部材2、3の内側部2c、3cと内側の線状部材4で、タイヤTの内側面に沿う内側部を構成している。滑り止め体1の外側部は、タイヤTの周方向の前端と後端にそれぞれ前側の連結部材11と後側の連結部材12を取り付けている。
【0030】
前側のU形状部材2と後側のU形状部材3は、それぞれ、横断部2a、3aに筒状弾性部材21を嵌合して取り付けている。筒状弾性部材21は、軸心方向を湾曲可能にし、U形状部材2、3に沿って移動可能にしている。また、筒状弾性部材21は、円筒形状にし、丸棒の横断部2a、3aに対して回転可能にしている。具体的には、筒状弾性部材21は、鋼線の螺旋ばねにしている。この螺旋ばね21は、円筒形状にし、鋼線の断面を円形にし、軸心方向を湾曲可能にしている。
【0031】
また、外側部2b、3bと内側部2c、3cには、それぞれ、筒状のずれ止め部材22を嵌合して筒状弾性部材21と軸部材6の間に配置している。外側と内側のずれ止め部材22は、筒状弾性部材21が横断部2a、3aから外側部2b、3b又は内側部2c、3cに移動するのを防止している。ずれ止め部材22は、軸心方向を湾曲可能にし、U形状部材2、3に沿って移動可能にしている。具体的には、ずれ止め部材22は、鋼線の螺旋ばねにしている。この螺旋ばね22は、円筒形状にし、軸心方向を湾曲可能にしている。筒状弾性部材21の螺旋ばねに比べて、外径が小さく、鋼線が細く、螺旋のピッチが荒い。
【0032】
筒状弾性部材21は、タイヤTの下部に達する毎に、自動車の走行路面に当って押し付けられる。U形状部材2、3の横断部2a、3aに嵌合した状態でタイヤTと走行路面の間に挟まれて圧縮される。U形状部材2、3の横断部2a、3aは、走行路面に直接には当らない。走行路面を擦らない。筒状弾性部材21は、タイヤTの下部を通過すると、走行路面への押し付けがなくなり、横断部2a、3aに対して回転する。次に走行路面に当るときには、当る位置が変わる。磨耗部分が変わる。
【0033】
螺旋ばねの筒状弾性部材21は、横断部2a、3aに沿って凹凸が形成される。タイヤTの軸心方向の滑りに対して滑り止め作用を発揮する。
【0034】
筒状弾性部材21は、磨耗量が許容量を超えると、新品と交換する。
前側のU形状部材2の横断部2aに嵌合している筒状弾性部材21を交換するときは、前側のU形状部材2の外側部2bから外側の当て部材16付き軸部材6を抜き取って前側の連結部材11を分離する。前側のU形状部材2の外側部2bに嵌合しているずれ止め部材22は、外側部2bの端から抜き取る。筒状弾性部材21は、外側部2bに移動し、外側部2bの端から抜き取る。次に、新品の筒状弾性部材21は、外側部2bに嵌合して横断部2aに移動する。抜き取り中のずれ止め部材22は、外側部2bに嵌合する。分離中の前側の連結部材11は、抜き取り中の当て部材16付き軸部材6で外側部2bに結合する。
【0035】
又は、前側のU形状部材2の内側部2cから内側の当て部材7付き軸部材6を抜き取って内側の線状部材4を分離する。同様に、内側部2cのずれ止め部材22は、内側部2cの端から抜き取る。筒状弾性部材21は、内側部2cに移動し、内側部2cの端から抜き取る。次に、新品の筒状弾性部材21は、内側部2cに嵌合して横断部2aに移動する。抜き取り中のずれ止め部材22は、内側部2cに嵌合する。分離中の内側の線状部材4は、抜き取り中の当て部材7付き軸部材6で内側部2cに結合する。
後側のU形状部材3の横断部3aに嵌合している筒状弾性部材21を交換するときも、同様に行う。
【0036】
[第2例(図6参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、筒状弾性部材を外径の異なる複数個にし、外径の異なるものを隣接してそれらの間に段差を形成している。U形状部材2、3の横断部2a、3aに沿って段差を設けている。タイヤTの軸心方向の滑りに対する滑り止め作用を発揮する。
【0037】
筒状弾性部材は、図6に示すように、横断部2aの中央位置に小径の筒状弾性部材26を配置し、その両側位置に大径の筒状弾性部材27を配置している。小径の筒状弾性部材26と大径の筒状弾性部材27は、隣接し、それらの間に段差を形成している。
【0038】
小径の筒状弾性部材26と大径の筒状弾性部材27は、それぞれ、軸心方向を湾曲可能にし、U形状部材2、3に沿って移動可能にしている。U形状部材2、3から抜き取り可能にしている。また、小径と大径の筒状弾性部材26、27は、それぞれ、円筒形状にし、丸棒の横断部2a、3aに対して回転可能にしている。
【0039】
具体的には、両筒状弾性部材26、27は、それぞれ、鋼線の螺旋ばねにしている。これらの螺旋ばね26、27は、円筒形状にし、鋼線の断面を円形にし、軸心方向を湾曲可能にしている。大径の筒状弾性部材27は、小径の筒状弾性部材26に比べ、外径が大きく、内径が同じで、鋼線が太く、螺旋のピッチが荒い。
タイヤTの軸心方向の滑りに対する滑り止め作用が高くなる。
【0040】
その他の点は、第1例におけるのと同様である。第1例におけるのと同様な部分には、図中、第1例におけるのと同一の符号を付ける。
【0041】
[第3例(図7参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、第2例における両側位置の大径の筒状弾性部材27を、図7に示すように、ゴム筒28にしている。中央位置の小径の筒状弾性部材26は、第2例におけるのと同様な鋼線の螺旋ばねにしている。大径の筒状弾性部材のゴム筒28は、タイヤTの下部に達する毎に、自動車の走行路面に当る。その際、緩衝する。
【0042】
ゴム筒28は、軸心方向を湾曲可能にし、U形状部材2、3に沿って移動可能にしている。U形状部材2、3から抜き取り可能にしている。また、ゴム筒28は、円筒形状にし、丸棒の横断部2a、3aに対して回転可能にしている。両側位置の大径の筒状弾性部材28は、中央位置の小径の筒状弾性部材26に比べ、外径が大きく、内径が同じである。
【0043】
その他の点は、第1例におけるのと同様である。第1例におけるのと同様な部分には、図中、第1例におけるのと同一の符号を付ける。
【0044】
[変形例]
1.上記の実施形態の第1例において、筒状弾性部材21は、鋼線の螺旋ばねにしたが、ゴム筒にする。
2.上記の実施形態の第2例又は第3例において、中央位置の小径の筒状弾性部材26は、鋼線の螺旋ばねにしたが、ゴム筒にする。
3.上記の実施形態の第3例において、ゴム筒28は、補強用の芯を入れていないが、補強用の芯を入れる。補強用の芯には、鋼線の螺旋ばね、金属管、強度の高い織物が例示される。
4.上記の実施形態の第3例において、ゴム筒28は、円筒形状にしたが、角筒形状にする。
5.上記の実施形態の各例において、ずれ止め部材22は、螺旋ばねにしたが、ゴムや合成樹脂のチューブにする。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のタイヤの滑り止め装置は、小型、中型、大型の乗用自動車や貨物自動車などの各種の自動車に使用される。
【符号の説明】
【0046】
T 自動車のタイヤ
1、1a〜1c 滑り止め体
1a 第1滑り止め体
1b 第2滑り止め体
1c 第3滑り止め体
2 前側のU形状部材、丸棒
2a 横断部
2b 外側部
2c 内側部
3 後側のU形状部材、丸棒
3a 横断部
3b 外側部
3c 内側部
4 内側の線状部材、鎖
2a、3a 滑り止め体の横断部
2b、3b 滑り止め体の外側部
2c、3c、4 滑り止め体の内側部
6 軸部材、内側の軸部材、外側の軸部材
7 内側の当て部材
8 ロックナット
11 前側の連結部材
12 後側の連結部材
16 外側の当て部材
21 筒状弾性部材、螺旋ばね
22 ずれ止め部材、螺旋ばね
26 小径の筒状弾性部材、螺旋ばね
27 大径の筒状弾性部材、螺旋ばね
28 大径の筒状弾性部材、ゴム筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数個のU形状断面の滑り止め体を自動車のタイヤに嵌め込んでタイヤの全周にほぼ等間隔に配列し、各滑り止め体の外側部をそれぞれ隣の滑り止め体の外側部に連結する構成にし、
滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備え、
前側のU形状部材と後側のU形状部材は、U形状に湾曲した棒にし、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの外側面に沿う外側部とタイヤの内側面に沿う内側部を有し、内側部同士を内側の線状部材で連結し、
滑り止め体の外側部は、タイヤの周方向の前端と後端にそれぞれ前側と後側の連結部材を取り付け、タイヤの周方向に配列した滑り止め体の後側の連結部材を、後隣の滑り止め体の前側の連結部材に連結する構成にし、
滑り止め体は、外側部に、タイヤの外側面に当る外側の当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当る内側の当て部材を設けた滑り止め装置において、
前側又は後側のU形状部材の内側部と内側の線状部材は、内側の軸部材をタイヤの軸心方向に貫通して結合し、内側の軸部材の抜き取りで分離する構成にし、内側の軸部材に内側の当て部材を固定し、
前側又は後側のU形状部材の外側部と前側又は後側の連結部材は、外側の軸部材をタイヤの軸心方向に貫通して結合し、外側の軸部材の抜き取りで分離する構成にし、外側の軸部材に外側の当て部材を固定し、
前側又は後側のU形状部材は、横断部に筒状弾性部材を嵌合して取り付け、筒状弾性部材は、タイヤの下部に達する毎に、自動車の走行路面に当って押し付けられる構成にし、
筒状弾性部材を交換するときには、U形状部材の内側部又は外側部から線状部材又は連結部材を分離し、U形状部材の横断部に嵌合した筒状弾性部材をU形状部材の内側部又は外側部を経て抜き取り、次の筒状弾性部材をU形状部材の内側部又は外側部を経てU形状部材の横断部に嵌合し、U形状部材の内側部又は外側部に線状部材又は連結部材を結合する構成にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
【請求項2】
筒状弾性部材は、走行路面に押し付けられていないときには、U形状部材の横断部に対して回転する構成にししたことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項3】
筒状弾性部材は、螺旋ばねにし、U形状部材の横断部に沿って凹凸を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項4】
筒状弾性部材は、外径の異なる複数個にし、外径の異なるものを隣接してそれらの間に段差を形成したことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項5】
筒状弾性部材は、ゴム筒にし、走行路面に当るときに緩衝する構成にしたことを特徴とする請求項1、2又は4に記載のタイヤの滑り止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168233(P2011−168233A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35887(P2010−35887)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(599038433)
【出願人】(592209892)株式会社林スプリング製作所 (1)
【出願人】(597093894)旭ゴム化工株式会社 (11)