説明

タイヤの滑り止め装置

【課題】自動車のタイヤに嵌め込む滑り止め体の内幅の調整に多くの手間を掛けない。
【解決手段】U形状断面の滑り止め体は、タイヤに嵌め込んで数個をタイヤの全周に等間隔に配列して輪状に連結する構成にし、外側部にタイヤ外側面に当たる当て部材6を、内側部にタイヤ内側面に当たる当て部材6を設けた滑り止め装置において、滑り止め体の外側部2b又は内側部2cに軸7をタイヤTの軸心方向に沿って取り付け、軸はタイヤの軸心方向に前後動可能にし、軸の内端に当て部材6を設け、当て部材付きの軸に前進力を与える弾性部材9を設けた。当て部材を弾性部材の弾性力でタイヤの外側面又は内側面に押し当て、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材と反対側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力で前進し、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力に抗して後退する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のタイヤに装着する滑り止め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3に例示されるタイヤの滑り止め装置は、自動車のタイヤにU形状断面の滑り止め体を嵌め込む。滑り止め体の嵌め込み式である。滑り止め体は、数個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列して連結する。数個の滑り止め体は、輪になってタイヤに装着される。滑り止め装置をタイヤから取り外す時には、滑り止め体を分離し、滑り止め体をタイヤから抜き取る。
【0003】
滑り止め体は、自動車前進時のタイヤ回転方向の前側のU形状部材と後側のU形状部材、及び、タイヤの内側面に沿う内側の線状部材を備えている。前側と後側のU形状部材は、それぞれ、タイヤの接地面を横断する横断部、タイヤの外側面に沿う外側部と、タイヤの内側面に沿う内側部を有している。内側の線状部材は、前側のU形状部材と後側のU形状部材の内側部同士を連結している。
【0004】
滑り止め体の外側部は、タイヤの外側面に当たる当て部材を設けている。滑り止め体の内側部は、タイヤの内側面に当たる当て部材を設けている。当て部材は、滑り止め体の幅方向、タイヤの軸心方向の位置を変更可能にしている。滑り止め体は、外側の当て部材と内側の当て部材との間の滑り止め体幅方向の距離、内幅を増減可能にしている。滑り止め体の内幅は、タイヤの幅に応じて調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3557464号公報
【特許文献2】特許第3718779号公報
【特許文献3】特開2008−308149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1.課 題
上記のような嵌め込み式の滑り止め装置においては、使用前に、滑り止め体は、自動車のタイヤの幅に応じて内幅を調整する。滑り止め体の内幅は、滑り止め装置の使用中、自動車の走行中、一定に維持される。
ところが、自動車のタイヤは、充填空気量や車体の積載重量の増減、走行中の車体から受ける力の変動などによって変形し、軸心方向の幅が変動する。タイヤは、滑り止め装置を装着した後でも、自動車の走行中でも、幅が増減する。
滑り止め体は、内幅の調整に多くの手間が掛らないことが望まれる。
【0007】
2.着 想
嵌め込み式の滑り止め装置において、滑り止め体は、当て部材を弾性力でタイヤの側面に押し当てることにした。
タイヤの幅が減少し、当て部材が当たったタイヤの側面が当て部材と反対側に移動すると、当て部材が弾性力で前進する。逆に、タイヤの幅が増加し、当て部材が当たったタイヤの側面が当て部材側に移動すると、当て部材が弾性力に抗して後退する。当て部材は、タイヤの側面の移動に応じて移動する。当て部材とタイヤ側面との接触が維持される。
具体的には、滑り止め体の外側部又は内側部に軸を滑り止め体の幅方向に沿って取り付ける。その軸は、滑り止め体の幅方向、タイヤの軸心方向に前後動可能にする。滑り止め体内に突出した軸の内端は、当て部材を設ける。当て部材付きの軸に前進力を与える弾性部材を設ける。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.U形状断面の滑り止め体は、自動車のタイヤに嵌め込んで数個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列して輪状に連結する構成にし、外側部に、タイヤの外側面に当たる当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当たる当て部材を設けた滑り止め装置において、
滑り止め体の外側部又は内側部に軸をタイヤの軸心方向に沿って取り付け、軸はタイヤの軸心方向に前後動可能にし、滑り止め体内に突出した軸の内端に当て部材を設け、当て部材付きの軸に前進力を与える弾性部材を設け、
当て部材を弾性部材の弾性力でタイヤの外側面又は内側面に押し当て、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材と反対側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力で前進し、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力に抗して後退する構成にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
2.上記のタイヤの滑り止め装置において、
弾性部材は、螺旋ばねにし、軸の内端側部分に嵌合し、当て部材と滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする。
3.上記2のタイヤの滑り止め装置において、
螺旋ばねは、竹の子ばねにし、最大収縮時に渦巻き形状になる構成にしたことを特徴とする。
4.上記2又は3のタイヤの滑り止め装置において、
軸の内端側部分に内側の調整板を嵌合し、内側の調整板を螺旋ばねと滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする。
5.上記2、3又は4のタイヤの滑り止め装置において、
滑り止め体外に突出した軸の外端に抜け止めを施し、軸の外端側部分に外側の調整板を嵌合し、外側の調整板を抜け止めと滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
自動車のタイヤに嵌め込む滑り止め体は、内幅がタイヤの幅に応じて増減する。内幅の調整に多くの手間が掛らない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の第1例におけるタイヤの滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図2】図1中の第1滑り止め体の拡大正面図。
【図3】同第1滑り止め体の拡大平面図。
【図4】図2のA−A線断面拡大図。
【図5】図1中の第1滑り止め体と第2滑り止め体の連結部分の拡大正面図。
【図6】同連結部分の拡大平面図。
【図7】図6のB−B線断面図。
【図8】図6のC−C線断面拡大図。
【図9】同連結部分の連結具の操作部材を往動させて棒状連結具を筒状連結具から抜き出した状態を示す図であり、図7と同様な断面図。
【図10】実施形態の第2例におけるタイヤの滑り止め装置のタイヤ装着状態の正面図。
【図11】図10のD−D線断面拡大図。
【図12】実施形態の第3例における滑り止め装置の当て部材部分の拡大断面図。
【図13】同当て部材の後退状態を示す図であり、図12と同様な断面図。
【図14】実施形態の第4例における滑り止め装置の当て部材部分の拡大断面図。
【図15】同当て部材部分に調整板を追加した状態を示す図であり、図14と同様な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1例(図1〜図9参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、自動車のタイヤTに装着した状態を自動車の外側から視た正面図を図1に示す。自動車の外側になる部分は実線で、内側になる部分は破線で示す。滑り止め装置は、図1に矢印で示す自動車前進時のタイヤTの正回転方向の前側から順に、第1滑り止め体1a、第2滑り止め体1bと第3滑り止め体1cをタイヤTの周方向に等間隔に配置して連結している。
【0012】
3個の滑り止め体1a〜1cは、同一構造にしている。第1滑り止め体1aについて説明する。第1滑り止め体1、1aは、前側のU形状部材2と後側のU形状部材3及び内側の線状部材4を備えている。
【0013】
前側と後側のU形状部材2、3は、図1〜図3に示すように、対称構造にし、丸棒をタイヤTの外周側に嵌め込むU形状に湾曲している。U形状部材2、3は、タイヤTの接地面を横断する横断部2a、3a、タイヤTの外側面に沿う外側部2b、3bと、タイヤTの内側面に沿う内側部2c、3cを有している。前側と後側のU形状部材2、3は、タイヤTに60度位の中心角をなして嵌合する。
【0014】
前側のU形状部材2は、外側部2bをタイヤTの径方向に配置し、外側部2bの端側の部分を前側に折り曲げて突出している。外側部2bの前側突出部分は、タイヤTの周方向に沿って配置している。また、前側のU形状部材2は、内側部2cをタイヤTの径方向に配置し、内側部2cの端側の部分を後側に折り曲げて突出している。内側部2cの後側突出部分は、タイヤTの周方向に沿って配置している。
【0015】
後側のU形状部材3は、外側部3bをタイヤTの径方向に配置し、外側部3bの端側の部分を後側に折り曲げて突出している。外側部3bの後側突出部分は、タイヤTの周方向に沿って配置している。また、後側のU形状部材3は、内側部3cをタイヤTの径方向に配置し、内側部3cの端側の部分を前側に折り曲げて突出している。内側部3cの前側突出部分は、タイヤTの周方向に沿って配置している。
【0016】
内側の線状部材4は、鎖にしている。鎖4は、複数の板状リンクをピンで回転可能に繋いで紐状にしている。リーフチェーンにしている。内側の線状部材4は、図3と図4に示すように、前端を前側のU形状部材2の内側部2cの後端に軸7で取り付けている。軸7は、線状部材4の前端と前側のU形状部材2の内側部2cの後端をタイヤTの軸心方向に沿って貫通している。また、内側の線状部材4は、前端と同様に、後端を後側のU形状部材3の内側部3cの前端に軸7で取り付けている。軸7は、線状部材4の後端と後側のU形状部材3の内側部3cの前端をタイヤTの軸心方向に沿って貫通している。
【0017】
滑り止め体1は、タイヤTに嵌め込むU形状断面の構造にしている。U形状断面の滑り止め体1は、前側と後側のU形状部材2、3の横断部2a、3aで、タイヤTの接地面を横断する横断部を構成している。前側と後側のU形状部材2、3の外側部2b、3bで、タイヤTの外側面に沿う外側部を構成している。前側と後側のU形状部材2、3の内側部2c、3cと内側の線状部材4で、タイヤTの内側面に沿う内側部を構成している。
【0018】
滑り止め体1の内側部の前側と後側の軸7は、それぞれ、滑り止め体1の幅方向、タイヤTの軸心方向に前後動可能にしている。軸7の内端は、滑り止め体1内に突出し、円盤形状の当て部材6を同心状に固定している。当て部材6は、軸7より大径にしている。軸7の外端は、滑り止め体1外に突出し、割ピン8を取り付けて抜け止めを施している。軸7の内端側部分は、円筒形状の螺旋ばね9を嵌合している。螺旋ばね9は、当て部材6と滑り止め体1の内側部の間に嵌め込んでいる。この螺旋ばね9は、当て部材6付きの軸7に前進力を与える弾性部材を構成している。内側の当て部材6は、弾性部材9の弾性力でタイヤTの内側面に当る構成にしている。詳細には、タイヤTの内側面の内周側に当る構成にしている。
【0019】
タイヤTの幅が減少し、内側の当て部材6が当たったタイヤTの内側面が内側の当て部材6と反対側に移動すると、内側の当て部材6が弾性部材9の弾性力で前進する。逆に、タイヤTの幅が増加し、内側の当て部材6が当たったタイヤTの内側面が内側の当て部材6側に移動すると、内側の当て部材6が弾性部材9の弾性力に抗して後退する。
【0020】
前側のU形状部材2の外側部2bは、前端に前側の連結部材11を軸7で取り付けている。軸7は、前側のU形状部材2の外側部2bの前端と前側の連結部材11の後端をタイヤTの軸心方向に沿って貫通している。後側のU形状部材3の外側部3bは、後端に後側の連結部材12を軸7で取り付けている。軸7は、後側のU形状部材3の外側部3bの後端と後側の連結部材12の前端をタイヤTの軸心方向に沿って貫通している。前側と後側の連結部材11、12は、それぞれ、軸7の周りに回転可能にしている。また、鎖の板状リンクにしている。
【0021】
滑り止め体1の外側部の前側と後側の軸7は、それぞれ、滑り止め体1の幅方向、タイヤTの軸心方向に前後動可能にしている。軸7の内端は、滑り止め体1内に突出し、円盤形状の当て部材6を固定している。軸7の外端は、滑り止め体1外に突出し、割ピン8を取り付けて抜け止めを施している。軸7の内端側部分は、螺旋ばね9を嵌合している。螺旋ばね9は、当て部材6と滑り止め体1の外側部の間に嵌め込んでいる。この螺旋ばね9は、当て部材6付きの軸7に前進力を与える弾性部材を構成している。外側の当て部材6は、弾性部材9の弾性力でタイヤTの外側面に、詳細には、外側面の内周側に当る構成にしている。
【0022】
タイヤTの幅が減少し、外側の当て部材6が当たったタイヤTの外側面が外側の当て部材6と反対側に移動すると、外側の当て部材6が弾性部材9の弾性力で前進する。逆に、タイヤTの幅が増加し、外側の当て部材6が当たったタイヤTの外側面が外側の当て部材6側に移動すると、外側の当て部材6が弾性部材9の弾性力に抗して後退する。
【0023】
前側のU形状部材2は、外側部2bに設けた外側の当て部材6と内側部2cに設けた内側の当て部材6を、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材6の間の距離Lは、滑り止め体1の内幅Wよりも長くなっている。滑り止め体1の前部は、タイヤTに着脱し易い。後側のU形状部材3も、外側部3bに設けた外側の当て部材6と内側部3cに設けた内側の当て部材6を、滑り止め体1の幅方向から傾斜した方向に対面する斜め正面位置に配置している。外側と内側の当て部材6の間の距離Lは、滑り止め体1の内幅Wよりも長くなっている。滑り止め体1の後部も、タイヤTに着脱し易い。
【0024】
前側の連結部材11は、前端に棒状連結具21を取り付けている。後側の連結部材12は、後端に筒状連結具22を取り付けている。棒状連結具21と筒状連結具22は、連結可能で分離可能にしている。3個の滑り止め体1a〜1cを連結する3組の連結具21、22は、同一構造にしている。図5と図6は、図1中の第1滑り止め体1aと第2滑り止め体1bの連結部分を水平に配置して示す。
【0025】
棒状連結具21は、丸棒形状にし、取付端を前側の連結部材11の前端にピン26で取り付けている。棒状連結具21は、タイヤTの軸心方向に沿ったピン26の周りに回転可能にしている。丸棒形状の棒状連結具21は、複数の連結孔27をそれぞれ径方向に貫通している。複数の連結孔27は、棒状連結具21の長手方向に沿って等間隔に配置している。
【0026】
筒状連結具22は、円筒形状にし、取付端を後側の連結部材12の後端にピン31で取り付けている。筒状連結具22は、タイヤTの軸心方向に沿ったピン31の周りに回転可能にしている。筒状連結具22の中心孔には、先端の開口から棒状連結具21を差し込み可能にしている。
【0027】
筒状連結具22には、操作部材を取り付けている。操作部材は、取付棒32と連結棒33を並列して操作棒34で連結し、取付棒32を連結棒33より長くし、鉤型にしている。筒状連結具22は、取付孔35と連結孔36をそれぞれ横断方向に貫通している。取付孔35は筒状連結具22の取付端側に、連結孔36は筒状連結具22の先端側に配置している。
【0028】
操作部材は、取付棒32を筒状連結具22の取付孔35に挿入し、連結棒33を筒状連結具22の連結孔36に挿入し、操作棒34を筒状連結具22と並列してタイヤTの中心と反対側に配置している。操作部材32、33、34は、筒状連結具22の横断方向に移動可能にしている。操作棒34が筒状連結具22から遠ざかる往動時に、取付棒32が取付孔35に挿入している状態で、連結棒33が連結孔36から抜け出す。操作棒34が筒状連結具22に近づく復動時に、連結棒33が連結孔36に挿入して筒状連結具22の中心孔を横断する。
【0029】
取付棒32は、筒状連結具22から操作棒34側と反対側に突出した先端側部分に、螺旋ばね37を嵌合し、ばね受け38を取り付けている。螺旋ばね37は、筒状連結具22とばね受け38との間に嵌め込んでいる。螺旋ばね37は、操作部材32、33、34に復動力を与える弾性部材を構成している。
【0030】
棒状連結具21と筒状連結具22を連結する時には、操作部材32、33、34は、弾性部材の螺旋ばね37に抗して往動させる。連結棒33は、図9に示すように、筒状連結具22の中心孔から待避させる。連結棒33の待避状態で、筒状連結具22の中心孔に棒状連結具21を差し込む。次に、操作部材は、弾性部材37の弾性力で復動させる。連結棒33は、図7と図8に示すように、筒状連結具の連結孔36と棒状連結具の連結孔27に挿入する。連結棒33を棒状連結具の連結孔27に挿入する際、連結棒33を挿入する連結孔27を選択する。タイヤTの外径ないし外周長さに合わせて、棒状連結具21と筒状連結具22の連結長さを調整する。
【0031】
棒状連結具21と筒状連結具22を分離する時には、操作部材32、33、34は、弾性部材37に抗して往動させる。連結棒33は、筒状連結具の連結孔36と棒状連結具の連結孔27から抜き出す。次に、棒状連結具21は、図9に示すように、筒状連結具22から抜き出す。
【0032】
[第2例(図10と図11参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、図10と図11に示すように、滑り止め体1を第1滑り止め体1aと第2滑り止め体1bの2個にしている。2個の滑り止め体1a、1bは、帯状に連結している。滑り止め体1a、1bは、前側のU形状部材2と後側のU形状部材3の構成を変更している。当て部材6の取付構造を変更している。
【0033】
前側のU形状部材2と後側のU形状部材3は、それぞれ、帯状の角棒をU形状に湾曲して構成している。前側のU形状部材2は、外側部2bに第1例における前側突出部分に替えて前側突出部材16をピン15で取り付けている。内側部2cには、第1例における後側突出部分に替えて後側突出部材17をピン15で取り付けている。前側突出部材16と後側突出部材17は、それぞれ、タイヤTの軸心方向に沿うピン15の周りに回転可能にしている。
【0034】
後側のU形状部材3は、外側部3bに第1例における後側突出部分に替えて後側突出部材18をピン15で取り付けている。内側部3cには、第1例における前側突出部分に替えて前側突出部材19をピン15で取り付けている。後側突出部材18と前側突出部材19は、それぞれ、タイヤTの軸心方向に沿うピン15の周りに回転可能にしている。
【0035】
後側突出部材17と前側突出部材19の間には、内側の線状部材4を掛け渡して前端と後端をそれぞれピン20で取り付けている。ピン20は、内側の線状部材4の前端又は後端と後側突出部材17又は前側突出部材19をタイヤTの軸心方向に貫通している。第1滑り止め体1aの後側突出部材18と第2滑り止め体1bの前側突出部材16の間には、線状の連結部材5を掛け渡して前端と後端をそれぞれピン20で取り付けている。ピン20は、連結部材5の前端又は後端と第1滑り止め体1aの後側突出部材18又は第2滑り止め体1bの前側突出部材16をタイヤTの軸心方向に貫通している。連結部材5は、線状部材4と同様な鎖、リーフチェーンにしている。第1滑り止め体1aと第2滑り止め体1bは、線状の連結部材5で帯状に連結している。
【0036】
第1滑り止め体1aの前側突出部材16の前端には、前側の連結部材11をピン20で取り付けている。ピン20は、前側の連結部材11と第1滑り止め体1aの前側突出部材16をタイヤTの軸心方向に貫通している。前側の連結部材11には、第1例におけるのと同様に筒状連結具22を取り付けている。第2滑り止め体1bの後側突出部材18の後端には、後側の連結部材12をピン20で取り付けている。ピン20は、後側の連結部材12と第2滑り止め体1bの後側突出部材18をタイヤTの軸心方向に貫通している。後側の連結部材12には、第1例におけるのと同様に棒状連結具21を取り付けている。
【0037】
前側突出部材16と後側突出部材18は、それぞれ、タイヤTの外側面に当る外側の当て部材6を設けている。後側突出部材17と前側突出部材19は、それぞれ、タイヤTの内側面に当る内側の当て部材6を設けている。外側と内側の当て部材6の取付構造は同一にしている。前側突出部材16又は後側突出部材17に外側又は内側の当て部材6を取り付ける構造を図11を参照して説明する。
【0038】
当て部材取付部材の前側突出部材16又は後側突出部材17は、軸7を滑り止め体1の幅方向、タイヤTの軸心方向に沿って貫通している。軸7は、タイヤTの軸心方向に前後動可能にしている。軸7の内端は、滑り止め体1内に突出し、円盤形状の当て部材6を固定している。軸7の外端は、滑り止め体1外に突出し、割ピン8を取り付けて抜け止めを施している。軸7の内端側部分は、螺旋ばね9を嵌合している。螺旋ばね9は、当て部材6と当て部材取付部材16又は17の間に嵌め込んでいる。この螺旋ばね9は、当て部材6付きの軸7に前進力を与える弾性部材を構成している。外側又は内側の当て部材6は、弾性部材9の弾性力でタイヤTの外側面又は内側面に当る構成にしている。軸7は、当て部材6の専用にしている。
【0039】
本例のタイヤの滑り止め装置をタイヤTに装着する時は、帯状の第1滑り止め体1aと第2滑り止め体1bは、タイヤTの上部に掛けて載せる。第1滑り止め体1aは、後部をタイヤTの左側上部に嵌め込み、前部をタイヤTの左下側に垂れ下げる。第2滑り止め体1bは、前部をタイヤTの右側上部に嵌め込み、後部をタイヤTの右下側に垂れ下げる。第1滑り止め体1aの前側の筒状連結具22と第2滑り止め体1bの後側の棒状連結具21を連結する。タイヤTから取り外す時は、棒状連結具21と筒状連結具22を分離する。
その他の点は、第1例におけるのと同様である。第1例におけるのと同様な部分には、図中、第1例におけるのと同一の符号を付ける。
【0040】
[第3例(図12と図13参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、図12に示すように、第1例又は第2例における当て部材6付き軸7に前進力を与える弾性部材を、円筒形状の螺旋ばね9に替えて、円錐台筒形状の竹の子ばね42にしている。
【0041】
滑り止め体の当て部材取付部材41は、軸7を滑り止め体の幅方向、タイヤTの軸心方向に沿って貫通している。軸7は、タイヤTの軸心方向に前後動可能にしている。軸7の内端は、大径の円盤形状の当て部材6を同心状に固定している。軸7の外端は、割ピン8を取り付けて抜け止めを施している。軸7の内端側部分は、円錐台筒形状の螺旋ばね、竹の子ばね42を嵌合している。竹の子ばね42は、当て部材6と当て部材取付部材41の間に嵌め込んでいる。
【0042】
竹の子ばね42は、図13に示すように、最大収縮時に渦巻き形状になり、最小長さが短くなる。当て部材6は、前後動距離が長くなる。滑り止め体は、内幅の調整範囲が広くなる。
その他の点は、第1例又は第2例におけるのと同様である。
【0043】
[第4例(図14と図15参照)]
本例のタイヤの滑り止め装置は、図14と図15に示すように、第3例における当て部材6の取付構造に調整板43、44を追加している。
【0044】
第3例と同様な当て部材6の取付構造は、軸7の抜け止めの割ピン8が着脱可能である。軸7は、図14に示すように、外端側部分に円輪板形状の調整板43を嵌合している。調整板43は、当て部材取付部材41と割ピン8の間に嵌め込んでいる。調整板43は、実施例では座金にしている。
【0045】
外側の調整板43を取り付けると、当て部材6は、滑り止め体内への突出長さが短くなる。また、弾性部材42の弾性力が強くなる。逆に、外側の調整板43を取り外すと、滑り止め体内への突出長さが長くなる。また、弾性部材42の弾性力が弱くなる。
【0046】
更に、図15に示す例では、軸7の内端側部分に円輪板形状の調整板44を嵌合している。調整板44は、当て部材取付部材41と弾性部材42の間に嵌め込んでいる。調整板44は、実施例では座金にしている。
【0047】
内側の調整板44を取り付けると、当て部材6は、滑り止め体内への突出長さが不変のまま、弾性部材42の弾性力が強くなる。逆に、内側の調整板44を取り外すと、滑り止め体内への突出長さが不変のまま、弾性部材42の弾性力が弱くなる。
【0048】
外側と内側の調整板43、44は、着脱又は枚数の増減で、弾性部材42の弾性力、当て部材6の突出長さを調整することができる。
その他の点は、第3例におけるのと同様である。第3例におけるのと同様な部分には、図中、第3例におけるのと同一の符号を付ける。
【0049】
[変形例]
1.上記の実施形態において、外側と内側の両側の当て部材6は、タイヤTの外側面又は内側面の移動に応じて移動可能にしているが、外側又は内側の片側のみの当て部材6を移動可能にする。
2.上記の実施形態において、当て部材6の取付構造は、当て部材6付き軸7に前進力を与える弾性部材に、円筒形状や円錐台筒形状の螺旋ばね9、42を用いているが、その他の弾性部材を用いる。
3.上記の実施形態の第4例において、当て部材6の取付構造に取り付ける外側と内側の調整板43、44は、円輪板形状にしているが、馬蹄形状やその他の形状にする。
4.上記の実施形態において、当て部材6の取付構造は、軸7の抜け止めに割ピン8を用いているが、ロックナットや止め輪などのその他の抜け止め手段を用いる。
5.上記の実施形態において、当て部材取付部材は、第1例においてはU形状部材2、3にし、第2例においてはU形状部材2、3に取り付けた部材16〜19、41にしているが、内側の線状部材4、前側の連結部材11、後側の連結部材12や線状の連結部材5にする。
6.上記の実施形態において、滑り止め体1は、内側の線状部材4と線状の連結部材5を鎖にしているが、ワイヤロープ又は鋼線にする。
7.上記の実施形態において、滑り止め体1は、3個又は2個にしているが、4個にする。又は、それ以上の個数にする。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のタイヤの滑り止め装置は、小型、中型、大型の乗用自動車や貨物自動車などの各種の自動車に使用される。
【符号の説明】
【0051】
T 自動車のタイヤ
1、1a〜1c 滑り止め体
1a 第1滑り止め体
1b 第2滑り止め体
1c 第3滑り止め体
2 前側のU形状部材
2a 横断部
2b 外側部
2c 内側部
3 後側のU形状部材
3a 横断部
3b 外側部
3c 内側部
4 内側の線状部材
2a、3a 滑り止め体の横断部
2b、3b 滑り止め体の外側部
2c、3c、4 滑り止め体の内側部
5 線状の連結部材
6 当て部材、外側の当て部材、内側の当て部材
7 軸
8 割ピン、抜け止め
9 円筒形状の螺旋ばね、弾性部材
W 外側と内側の当て部材の間の滑り止め体幅方向の距離、滑り止め体の内幅
L 外側と内側の当て部材の間の距離
11 前側の連結部材
12 後側の連結部材
15 ピン
16 前側突出部材
17 後側突出部材
18 後側突出部材
19 前側突出部材
20 ピン
21、22 連結具
21 棒状連結具
22 筒状連結具
26 ピン
27 連結孔
31 ピン
32、33、34 操作部材
32 取付棒
33 連結棒
34 操作棒
35 取付孔
36 連結孔
37 螺旋ばね、弾性部材
38 ばね受け
41 滑り止め体の当て部材取付部材
42 円錐台筒形状の竹の子ばね、弾性部材
43、44 調整板
43 外側の調整板
44 内側の調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U形状断面の滑り止め体は、自動車のタイヤに嵌め込んで数個をタイヤの全周にほぼ等間隔に配列して輪状に連結する構成にし、外側部に、タイヤの外側面に当たる当て部材を設け、内側部に、タイヤの内側面に当たる当て部材を設けた滑り止め装置において、
滑り止め体の外側部又は内側部に軸をタイヤの軸心方向に沿って取り付け、軸はタイヤの軸心方向に前後動可能にし、滑り止め体内に突出した軸の内端に当て部材を設け、当て部材付きの軸に前進力を与える弾性部材を設け、
当て部材を弾性部材の弾性力でタイヤの外側面又は内側面に押し当て、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材と反対側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力で前進し、当て部材が当たったタイヤの外側面又は内側面が当て部材側に移動すると、当て部材が弾性部材の弾性力に抗して後退する構成にしたことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
【請求項2】
弾性部材は、螺旋ばねにし、軸の内端側部分に嵌合し、当て部材と滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項3】
螺旋ばねは、竹の子ばねにし、最大収縮時に渦巻き形状になる構成にしたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項4】
軸の内端側部分に内側の調整板を嵌合し、内側の調整板を螺旋ばねと滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする請求項2又は3に記載のタイヤの滑り止め装置。
【請求項5】
滑り止め体外に突出した軸の外端に抜け止めを施し、軸の外端側部分に外側の調整板を嵌合し、外側の調整板を抜け止めと滑り止め体の外側部又は内側部の間に嵌め込んだことを特徴とする請求項2、3又は4に記載のタイヤの滑り止め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−228951(P2012−228951A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98295(P2011−98295)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(599038433)