説明

タイヤの除電装置

【課題】タイヤの濡れを低減すると共に高効率でタイヤの除電を行えるタイヤの除電装置を提供する。
【解決手段】水圧縮機11からノズル14A〜14Dに圧縮された水を供給して、ノズル14A〜14Dから平均直径が50μm以下のマイクロミストを生成して、タイヤ2に吹き付ける。水を霧状にした場合、水の粒子の直径が大きいと、水の粒子がタイヤに衝突した際に粒子が破裂して水がタイヤ2に付着するが、マイクロミストにすると、粒子がタイヤ2に衝突した際に粒子がタイヤ表面で跳ね返され、マイクロミストが跳ね返されるときタイヤ2の静電気がマイクロミストを帯電させ、帯電したマイクロミストによってタイヤ2の静電気が路面に放電されるので、タイヤ2の帯電量が減少され、タイヤ2が除電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの除電装置に関し、さらに詳しくは、簡単な構成でタイヤの静電気を効率よく除去するタイヤの除電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤに帯電した静電気の放電により、ラジオにノイズが発生する現象が報告されている。アーストレッドなどタイヤの導電性を良好にし、タイヤの静電気を逃がす方法が提案されている。
【0003】
例えば、一般的なタイヤの電気抵抗値は105〜1010Ω程度であり、タイヤ自体は電気を通しにくいものであるといえる。静電気は、2つの物質の接触、摩擦、剥離などによって発生するため、低湿度時に走行中のタイヤは、路面との接触、摩擦、剥離によって常に静電気が帯電している。この帯電した静電気を放電させるために、ゴム中に帯電防止剤を配合する、或いは、タイヤの表面に帯電格子材料を塗布したり、貼り付けたりすることが行われていた。しかし、このような方法ではタイヤ性能の低下を引き起こす可能性がある。また、タイヤ接地面で発生した静電気を瞬時に除電することは困難であった。
【0004】
本願出願人は、この問題を解決するために、タイヤの除電装置として、ウィンドウ洗浄水を貯留するタンクにポンプを介してウィンドウ洗浄用ノズルを連結した車両のウィンドウ洗浄装置に対し、ポンプの吐出側の配管を分岐して、この分岐した配管にウィンドウ洗浄水をタイヤに霧状に吹きつける噴霧ノズルを連結し、タイヤに吹き付けたウィンドウ洗浄水を介してタイヤの静電気を路面に放出する装置を提案した(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−25953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では、ウィンドウ洗浄水を噴霧したときにタイヤが濡れてしまうため、タイヤと路面との間の摩擦が減少してスリップを引き起こす可能性があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤの濡れを低減すると共に高効率でタイヤの除電を行えるタイヤの除電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、車両に設置されてタイヤの静電気を除去するタイヤの除電装置であって、水を貯留するタンクと、前記タンクに配管を介して連結され、前記タンクから供給される水を用いて平均直径が50μm以下のマイクロミストを生成してノズルから車両の各タイヤに吹き付けるマイクロミスト生成手段と、前記マイクロミスト生成手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えているタイヤの除電装置を提案する。
【0008】
本発明のタイヤの除電装置によれば、マイクロミスト生成手段によって平均直径が50μm以下のマイクロミストが生成され、このマイクロミストが各タイヤに吹き付けられる。水を霧状にした場合、水の粒子の直径が大きいと、水の粒子がタイヤに衝突した際に粒子が破裂して水がタイヤに付着する。しかし、水の粒子の直径が小さいと、すなわちマイクロミストにすると、水の粒子がタイヤに衝突した際に粒子がタイヤ表面で跳ね返される。このようにタイヤ表面で跳ね返される割合の高い水の粒子の直径は実験結果から判断すると平均して50μm以下であることが好ましい。また、このようにタイヤ表面で水の粒子(マイクロミスト)が跳ね返されるときタイヤの静電気がマイクロミストを帯電させ、帯電したマイクロミストによってタイヤの静電気が路面に放電されるため、タイヤの帯電量が減少され、タイヤが除電される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤの除電装置によれば、タイヤに噴霧された水のマイクロミストがタイヤ表面で跳ね返されて、このマイクロミストを介してタイヤの静電気が路面に放電されるので、タイヤを殆ど濡らすことなく、高効率でタイヤの除電を行うことができる。さらに、マイクロミストによってタイヤと路面との間の摩擦を低下させることがないので、タイヤがスリップすることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0011】
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は本発明の第1実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図、図2は本発明の第1実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図である。
【0012】
図において、1はタイヤの除電装置を搭載した車両で、前後左右に合計4つのタイヤ2を装備している。また、車両1の内部にはタイヤの除電装置が搭載されている。このタイヤの除電装置は、水圧縮機11と、駆動制御部12、貯水タンク13、ノズル14A,14B,14C,14D、給水配管15、供給配管16A,16B,16C,16Dから構成されている。
【0013】
水圧縮機11は、貯水タンク13から給水配管15を介して水の供給を受け、駆動制御部12から駆動信号を入力している間に、水を圧縮して各供給配管16A〜16Dを介して各ノズル14A〜14Dに圧縮した水を供給する。
【0014】
駆動制御部12は、運転席の近傍に配置され、車両のバッテリーから電力の供給を受けて動作し、この電力を水圧縮機11に供給すると共に、モーメンタリスイッチからなる駆動スイッチ(図示せず)が運転者によってONされている間のみ、駆動信号を水圧縮機11に出力する。
【0015】
貯水タンク13は、本実施形態では車両1の後部に設けられ、マイクロミスト生成用の水が満たされている。
【0016】
ノズル14A〜14Dのそれぞれは、水圧縮機11から供給配管16A〜16Dを介して圧縮水の供給を受け、この圧縮水を直径50μm以下のマイクロミスト3にして噴出する。ノズル14Aは、水圧縮機11から供給配管16Aを介して圧縮水の供給を受け、前部左側のタイヤ2(FL)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。ノズル14Bは、水圧縮機11から供給配管16Bを介して圧縮水の供給を受け、後部左側のタイヤ2(RL)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。また、ノズル14Cは、水圧縮機11から供給配管16Cを介して圧縮水の供給を受け、前部右側のタイヤ2(FR)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。ノズル14Dは、水圧縮機11から供給配管16Dを介して圧縮水の供給を受け、後部右側のタイヤ2(RR)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。尚、上記構成においては、水圧縮機11とノズル14A〜14Dを主体としてマイクロミスト生成手段が構成されている。
【0017】
前述の構成よりなる除電装置は、運転者によって駆動スイッチがONされている間のみ各ノズル14A〜14Dからタイヤ2に向けてマイクロミスト3が噴出される。これにより、タイヤ2に帯電した静電気がマイクロミストを介して路面に放電され、タイヤ2が除電される。また、マイクロミスト3の平均直径が50μm以下であるので、マイクロミスト3によってタイヤ2が濡れることが無く、このため、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。
【0018】
すなわち、図3に示すように、水の粒を大まかに分類してみると、雨(平均直径が1.0mm以上)、しとしと雨(平均直径が0.3〜1.0mm)、霧雨(平均直径が100μm〜300μm)、きり(平均直径が10μm〜100μm)、もや(平均直径が10μm以下)に分類され、また、平均直径が1000μm以上の水の粒を粗霧と称し、平均直径が200μm〜1000μmの水の粒を中霧、平均直径が100μm〜200μmの水の粒を細霧、平均直径が10μm〜100μmの水の粒を微霧、平均直径が10μm以下の水の粒を超微霧と称している。ノズル14A〜14Dからタイヤ2に噴出する水の粒が大きいと、図4に示すように、水の粒31がタイヤ2の表面に衝突したときに粒が破裂してしまってタイヤ2の表面に水が付着する。この付着した水によって路面との間の電気抵抗が減少し、タイヤ2の静電気が路面に放出されるが、タイヤ2に付着した水によってタイヤ2と路面との間の摩擦抵抗が減少するため、車両走行中のスリップを引き起こすおそれがある。これに対して、ノズル14A〜14Dからタイヤ2に噴出する水の粒が小さいと、図5に示すように、水の粒32はタイヤ2の表面に衝突したときに跳ね返り、跳ね返されるときタイヤ2の静電気が水の粒32を帯電させ、帯電した水の粒32によってタイヤの静電気が路面に放電されるため、タイヤの帯電量が減少され、タイヤが除電される。さらに、水の粒32によってタイヤ2と路面との間の摩擦抵抗を低下させることがないので、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。このように、タイヤ2の表面で跳ね返される割合が高い水の粒の平均直径としては、実験結果から50μm以下が好ましいといえる。さらに好ましくはマイクロミスト3の平均直径を20μm以下にすることが望ましい。
【0019】
尚、図6及び図7に示すように、走行中の車両1のタイヤ2はそのトレッド21が路面4と接するので、トレッド21が最も帯電する部位となる。従って、効率よくタイヤ2の除電を行うには、各ノズル14A〜14Dからタイヤトレッド面に向けてマイクロミスト3を噴出するように各ノズル14A〜14Dを配置することが好ましい。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
【0021】
図8乃至図10は第2実施形態を示す図で、図8は本発明の第2実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図、図9は本発明の第2実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図、図10は第2実施形態におけるウィンドウォッシャー水タンクの配管構成を示す図である。図において、第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0022】
第2実施形態では、第1実施形態における貯水タンク13を除去して、ウィンドウォッシャー水タンク51から給水配管52を介して水圧縮機11に給水できるようにした。これにより、貯水タンク13の設置スペースおよび給水配管15の設置スペースが必要なくなくなると共に、構成が簡単になり、これらの設置による重量の増加を低減することができる。また、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0023】
尚、ウィンドウォッシャー液を優先的に残すため、すなわち、ウィンドウォッシャー水の量が減少してマイクロミスト生成用水が取水できなくなってもウィンドウォッシャー用水を取水可能とするため、ウィンドウォッシャー水タンク51における給水配管52の吸水口52aは、ウインドウォッシャー配管53の吸水口53aよりも高い位置に配置することが好ましい。
【0024】
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
【0025】
図11及び図12は本発明の第3実施形態を示すもので、図11は本発明の第3実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図、図12は本発明の第3実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図である。図において、第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0026】
第3実施形態では、駆動制御部12に代えて駆動制御部62を設け、またノズル14A〜14Dに代えてノズル64A〜64Dを設けた。さらに、配管65A〜65Dを介して各ノズル64A〜64Dに連結された空気圧縮機63を設けた。
【0027】
水圧縮機11は、貯水タンク13から給水配管15を介して水の供給を受け、駆動制御部62から駆動信号を入力している間に、水を圧縮して各供給配管16A〜16Dを介して各ノズル64A〜64Dに圧縮した水を供給する。
【0028】
駆動装置62は、運転席の近傍に配置され、車両のバッテリーから電力の供給を受けて動作し、この電力を水圧縮機11と空気圧縮機63に供給すると共に、モーメンタリスイッチからなる駆動スイッチ(図示せず)が運転者によってONされている間のみ、駆動信号を水圧縮機11と空気圧縮機63に出力する。
【0029】
空気圧縮機63は、駆動制御部62から駆動信号を入力している間に,空気を圧縮して各供給配管65A〜65Dを介して各ノズル64A〜64Dに圧縮した空気を供給する。
【0030】
ノズル64A〜64Dのそれぞれは、水圧縮機11から供給配管16A〜16Dを介して圧縮水の供給を受けると共に空気圧縮機63から配管65A〜65Dを介して圧縮空気の供給を受け、この圧縮水に圧縮空気を当てることによって直径50μm以下のマイクロミスト3にして噴出する。ノズル64Aは、水圧縮機11から供給配管16Aを介して圧縮水の供給を受けると共に空気圧縮機63から配管65Aを介して圧縮空気の供給を受け、前部左側のタイヤ2(FL)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。ノズル64Bは、水圧縮機11から供給配管16Bを介して圧縮水の供給を受けると共に空気圧縮機63から配管65Bを介して圧縮空気の供給を受け、後部左側のタイヤ2(RL)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。また、ノズル64Cは、水圧縮機11から供給配管16Cを介して圧縮水の供給を受けると共に空気圧縮機63から配管65Cを介して圧縮空気の供給を受け、前部右側のタイヤ2(FR)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。ノズル64Dは、水圧縮機11から供給配管16Dを介して圧縮水の供給を受けると共に空気圧縮機63から配管65Dを介して圧縮空気の供給を受け、後部右側のタイヤ2(RR)に向けてマイクロミストを噴出できるように設けられている。尚、上記構成においては、水圧縮機11と空気圧縮機63、ノズル64A〜64Dを主体としてマイクロミスト生成手段が構成されている。
【0031】
前述の構成よりなる第3実施形態のタイヤの除電装置によっても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。すなわち、運転者によって駆動スイッチがONされている間のみ各ノズル64A〜64Dからタイヤ2に向けてマイクロミスト3が噴出される。これにより、タイヤ2に帯電した静電気がマイクロミスト3を介して路面に放電され、タイヤ2が除電される。また、マイクロミスト3の平均直径が50μm以下であるので、マイクロミスト3によってタイヤ2が濡れることが無く、このため、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。
【0032】
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
【0033】
図13乃至図15は本発明の第4実施形態を示すもので、図13は本発明の第4実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図、図14は本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図、図15は本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図、図16は本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャートである。図において、第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0034】
また、第4実施形態と第1実施形態との相違点は、第4実施形態では各タイヤ2の帯電量を検出する静電センサ71A〜71Dを設けると共に、駆動制御部12に代えて駆動制御部72を設け、タイヤ2の帯電量が所定の閾値以上のときのみに、自動的にタイヤ2に向けて所定時間マイクロミスト3を噴出するようにしたことである。
【0035】
静電センサ71A〜71Dのそれぞれは、各タイヤ2の上部に配置され、タイヤ2の帯電量を検出して、その検出値を電気信号として駆動制御部72に出力する。静電センサ71A〜71Dとしては、例えばキーエンス社の高精度静電気センサなどを使用することができる。静電センサ71Aは前部左側のタイヤ2(FL)の上部に配置され、静電センサ71Bは後部左側のタイヤ2(FL)の上部に配置されている。また、静電センサ71Cは前部右側のタイヤ2(FR)の上部に配置され、静電センサ71Dは後部右側のタイヤ2(FR)の上部に配置されている。
【0036】
また、駆動制御部72は、水圧縮機駆動インタフェース721と、制御部722、センサインタフェース723から構成されている。
【0037】
水圧縮機駆動インタフェース721は、制御部722からの指示信号を入力して、この指示信号に基づいて水圧縮機11を駆動する。
【0038】
制御部722は、周知のCPUなどからなり、予め設定されているコンピュータプログラムによって動作し、センサインタフェース723を介して各静電センサ71A〜71Dから入力した何れかの帯電量の値が所定のしきい値以上となったときに水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間駆動する。
【0039】
センサインタフェース723は、各静電センサ71A〜71Dに接続され、これらの静電センサ71A〜71Dから出力された検出値をディジタル値に変換して制御部722に出力する。
【0040】
尚、上記構成においては、水圧縮機11とノズル14A〜14Dを主体としてマイクロミスト生成手段が構成されている。
【0041】
次に、前述の構成よりなる本実施形態の動作を図16に示すフローチャートを参照して説明する。
【0042】
駆動制御部72の制御部722は動作を開始すると、各静電センサ71A〜71Dの検出値V1を取り込み(SA1)、各静電センサ71A〜71Dの検出値V1が所定のしきい値Vth以上であるか否かを判定する(SA2)。本実施形態ではしきい値Vthを一例として3kVに設定している。
【0043】
上記SA2の判定の結果、何れの各静電センサ71A〜71Dの検出値V1もしきい値Vthより小さいときは、後述するSA4の処理に移行し、何れかの各静電センサ71A〜71Dの検出値V1がしきい値Vth以上であったときは、制御部722は水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間、例えば10秒間、駆動して各タイヤ2にマイクロミスト3を噴霧し、タイヤ2の除電を行う(SA3)。
【0044】
この後、制御部722は、内蔵されているタイマをリセットし(SA4)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至った否かを判定し(SA5)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至ったときに前記SA1の処理に移行して上記処理を繰り返す。
【0045】
前述の構成よりなる本実施形態の除電装置によれば、タイヤ2の帯電量が予め設定してあるしきい値Vth以上となったときだけ、自動的にマイクロミスト3をタイヤ2に噴霧するので、運転者はマイクロミスト3を噴霧する時期を気にしてスイッチ操作を行う必要がない。また、タイヤ2の帯電量が所定のしきい値Vth以上となったときには、自動的に各ノズル14A〜14Dからタイヤ2に向けてマイクロミスト3が噴出されるので、タイヤ2に帯電した静電気がマイクロミスト3を介して路面に放電され、タイヤ2が除電される。また、マイクロミスト3の平均直径が50μm以下であるので、マイクロミスト3によってタイヤ2が濡れることが無く、このため、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。
【0046】
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
【0047】
図17乃至図19は本発明の第5実施形態を示すもので、図17は本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図、図18は本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図、図19は本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャートである。図において、第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0048】
また、第5実施形態と第1実施形態との相違点は、第5実施形態では駆動制御部12に代えて駆動制御部82を設け、車両駆動制御装置81が検出した車両の走行速度が所定のしきい値以下となったときのみに、自動的にタイヤ2に向けて所定時間マイクロミスト3を噴出するようにしたことである。
【0049】
車両駆動制御装置81は、通常車両に備わっている装置で、本実施形態ではこの装置から車両の走行速度の情報のみを駆動制御部82に取り込んで使用している。
【0050】
駆動制御部82は、図18に示すように、水圧縮機駆動インタフェース721と制御部821とから構成されている。
【0051】
水圧縮機駆動インタフェース721は、制御部821からの指示信号を入力して、この指示信号に基づいて水圧縮機11を駆動する。
【0052】
制御部821は、周知のCPUなどからなり、予め設定されているコンピュータプログラムによって動作し、車両駆動制御装置81から入力した車両走行速度v1の値が所定のしきい値vth以下となったときに水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間駆動する。
【0053】
尚、上記構成においては、水圧縮機11とノズル14A〜14Dを主体としてマイクロミスト生成手段が構成されている。
【0054】
次に、前述の構成よりなる本実施形態の動作を図19に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
駆動制御部82の制御部821は動作を開始すると、車両駆動制御装置81から車両走行速度の検出値v1を取り込み(SB1)、車両走行速度の検出値v1が所定のしきい値vth以下であるか否かを判定する(SB2)。本実施形態ではしきい値vthを一例として時速10kmに設定している。
【0056】
上記SB2の判定の結果、車両走行速度の検出値v1がしきい値Vthより大きいときは、後述するSB4の処理に移行し、車両走行速度の検出値v1がしきい値vth以下であったときは、制御部821は水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間、例えば10秒間、駆動して各タイヤ2にマイクロミスト3を噴霧し、タイヤ2の除電を行う(SB3)。
【0057】
この後、制御部821は、内蔵されているタイマをリセットし(SB4)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至った否かを判定し(SB5)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至ったときに前記SB1の処理に移行して上記処理を繰り返す。
【0058】
前述の構成よりなる本実施形態の除電装置によれば、車両走行速度v1が予め設定してあるしきい値vth以下となったときだけ、自動的にマイクロミスト3をタイヤ2に噴霧するので、運転者はマイクロミスト3を噴霧する時期を気にしてスイッチ操作を行う必要がない。また、車両走行速度の検出値v1が所定のしきい値vth以下となったときには、自動的に各ノズル14A〜14Dからタイヤ2に向けてマイクロミスト3が噴出されるので、タイヤ2に帯電した静電気がマイクロミスト3を介して路面に放電され、タイヤ2が除電される。また、マイクロミスト3の平均直径が50μm以下であるので、マイクロミスト3によってタイヤ2が濡れることが無く、このため、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。さらに、車両走行速度の検出値v1が所定のしきい値vth以下となったときにマイクロミスト3をタイヤ2に噴霧しているので、高速走行中にマイクロミスト3を噴霧するよりも除電効果を高めることができる。すなわち、高速走行中にマイクロミスト3をタイヤ2に向けて噴霧した場合、タイヤ2によって帯電されないまま飛ばされてしまうマイクロミストの量が多くなり、タイヤ2の除電効果が低減されてしまう。これに比べて車両走行速度が時速10km以下のときにマイクロミスト3をタイヤ2に向けて噴霧した場合、タイヤ2によって帯電されないまま飛ばされてしまうマイクロミストの量は大幅に低減し、タイヤ2の除電効果が高まる。
【0059】
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
【0060】
図20乃至図22は本発明の第6実施形態を示すもので、図20は本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図、図21は本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図、図22は本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャートである。図において、第1実施形態、第4実施形態および第5実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0061】
また、第6実施形態と第1、第4,第5実施形態との相違点は、第6実施形態では駆動制御部12に代えて駆動制御部92を設け、車両駆動制御装置81が検出した車両の走行速度が所定のしきい値以下となり且つタイヤ2の耐電量が所定のしきい値以上になったときのみに、自動的にタイヤ2に向けて所定時間マイクロミスト3を噴出するようにしたことである。
【0062】
車両駆動制御装置81は、通常車両に備わっている装置で、本実施形態ではこの装置から車両の走行速度の情報のみを駆動制御部92に取り込んで使用している。
【0063】
駆動制御部92は、図21に示すように、水圧縮機駆動インタフェース721と制御部921、センサインタフェース723とから構成されている。
【0064】
水圧縮機駆動インタフェース721は、制御部921からの指示信号を入力して、この指示信号に基づいて水圧縮機11を駆動する。
【0065】
制御部921は、周知のCPUなどからなり、予め設定されているコンピュータプログラムによって動作し、車両駆動制御装置81から入力した車両走行速度v1の値が所定のしきい値vth以下となり且つセンサインタフェース723を介して各静電センサ71A〜71Dから入力した何れかの帯電量の値が所定のしきい値Vth以上となったときに水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間駆動する。
【0066】
尚、上記構成においては、水圧縮機11とノズル14A〜14Dを主体としてマイクロミスト生成手段が構成されている。
【0067】
次に、前述の構成よりなる本実施形態の動作を図22に示すフローチャートを参照して説明する。
【0068】
駆動制御部92の制御部921は動作を開始すると、各静電センサ71A〜71Dの検出値V1を取り込み(SC1)、各静電センサ71A〜71Dの検出値V1が所定のしきい値Vth以上であるか否かを判定する(SC2)。本実施形態ではしきい値Vthを一例として3kVに設定している。
【0069】
上記SA2の判定の結果、何れの各静電センサ71A〜71Dの検出値V1もしきい値Vthより小さいときは、後述するSC6の処理に移行し、何れかの各静電センサ71A〜71Dの検出値V1がしきい値Vth以上であったときは、制御部921は車両駆動制御装置81から車両走行速度の検出値v1を取り込み(SC3)、車両走行速度の検出値v1が所定のしきい値vth以下であるか否かを判定する(SC4)。本実施形態ではしきい値vthを一例として時速10kmに設定している。
【0070】
上記SC4の判定の結果、車両走行速度の検出値v1がしきい値Vthより大きいときは、後述するSC6の処理に移行し、車両走行速度の検出値v1がしきい値vth以下であったときは、制御部921は水圧縮機駆動インタフェース721を介して水圧縮機11を所定時間、例えば10秒間、駆動して各タイヤ2にマイクロミスト3を噴霧し、タイヤ2の除電を行う(SC5)。
【0071】
この後、制御部921は、内蔵されているタイマをリセットし(SC6)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至った否かを判定し(SC7)、タイマの計時時間T1が検出間隔時間Tthに至ったときに前記SC1の処理に移行して上記処理を繰り返す。
【0072】
前述の構成よりなる本実施形態の除電装置によれば、タイヤ2の帯電量が予め設定してあるしきい値Vth以上となり且つ車両走行速度v1が予め設定してあるしきい値vth以下となったときだけ、自動的にマイクロミスト3をタイヤ2に噴霧するので、運転者はマイクロミスト3を噴霧する時期を気にしてスイッチ操作を行う必要がない。また、タイヤ2の帯電量が所定のしきい値Vth以上となり且つ車両走行速度v1が予め設定してあるしきい値vth以下となったときには、自動的に各ノズル14A〜14Dからタイヤ2に向けてマイクロミスト3が噴出されるので、タイヤ2に帯電した静電気がマイクロミスト3を介して路面に放電され、タイヤ2が除電される。また、マイクロミスト3の平均直径が50μm以下であるので、マイクロミスト3によってタイヤ2が濡れることが無く、このため、車両走行中にタイヤ2がスリップすることがない。
【0073】
さらに、車両走行速度の検出値v1が所定のしきい値vth以下となったときにマイクロミスト3をタイヤ2に噴霧しているので、高速走行中にマイクロミスト3を噴霧するよりも除電効果を高めることができる。すなわち、高速走行中にマイクロミスト3をタイヤ2に向けて噴霧した場合、タイヤ2によって帯電されないまま飛ばされてしまうマイクロミストの量が多くなり、タイヤ2の除電効果が低減されてしまう。これに比べて車両走行速度が時速10km以下のときにマイクロミスト3をタイヤ2に向けて噴霧した場合、タイヤ2によって帯電されないまま飛ばされてしまうマイクロミストの量は大幅に低減するので、タイヤ2の除電効果を高めることができる。
【0074】
尚、前記実施形態では、本発明の一具体例であって、本発明が上記具体例の構成のみに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図
【図2】本発明の第1実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図3】水の粒の分類を説明する図
【図4】水の粒のタイヤ表面への衝突を説明する図
【図5】水の粒のタイヤ表面への衝突を説明する図
【図6】タイヤトレッドの帯電状態を説明する図
【図7】タイヤトレッドの帯電状態を説明する図
【図8】本発明の第2実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図
【図9】本発明の第2実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図10】本発明の第2実施形態におけるウィンドウォッシャー水タンクの配管構成を示す図
【図11】本発明の第3実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図
【図12】本発明の第3実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図13】本発明の第4実施形態のタイヤの除電装置を搭載した車両を示す概略側面図
【図14】本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図15】本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図
【図16】本発明の第4実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャート
【図17】本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図18】本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図
【図19】本発明の第5実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャート
【図20】本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置を車両に搭載したときの構成を示す図
【図21】本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置の電気系回路を示すブロック図
【図22】本発明の第6実施形態におけるタイヤの除電装置の動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0076】
1…車両、2…タイヤ、3…マイクロミスト、4…路面、11…水圧縮機、12…駆動制御部、13…貯水タンク、14A〜14D…ノズル、15…給水配管、16A〜16D…供給配管、51…ウインドウォッシャー水タンク、52…給水配管、52a…吸水口、53…ウインドウォッシャー配管、53a…吸水口、62…駆動制御部、63…空気圧縮機、64A〜64D…ノズル、65A〜65D…配管、71A〜71D…静電センサ、72…駆動制御部、721…水圧縮機駆動インタフェース、722…制御部、723…センサインタフェース、81…車両駆動制御装置、82…駆動制御部、821…制御部、92…駆動制御部、921…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置されてタイヤの静電気を除去するタイヤの除電装置であって、
水を貯留するタンクと、
前記タンクに配管を介して連結され、前記タンクから供給される水を用いて平均直径が50μm以下のマイクロミストを生成してノズルから車両の各タイヤに吹き付けるマイクロミスト生成手段と、
前記マイクロミスト生成手段を駆動制御する駆動制御手段とを備えている
ことを特徴とするタイヤの除電装置。
【請求項2】
前記ノズルは、タイヤのトレッド面に前記マイクロミストを吹き付けるように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤの除電装置。
【請求項3】
ウィンドウォッシャー液のタンクが前記タンクとして共用されていることを特徴する請求項1又は請求項2に記載のタイヤの除電装置。
【請求項4】
各タイヤ毎に設けられ、タイヤ表面の帯電量を検出して、検出結果を前記駆動制御手段に出力する複数の静電気センサを備え、
前記駆動制御手段に、各静電気センサの検出結果に基づいて、何れかの検出結果が所定の閾値以上の帯電量を示しているときに前記マイクロミスト生成手段を駆動してタイヤに前記マイクロミストを噴霧する手段を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のタイヤの除電装置。
【請求項5】
車両の走行速度を検出して、検出結果を出力する速度検出手段を設けると共に、
前記駆動制御手段に、前記速度検出手段によって検出した走行速度を入力し、走行速度が所定の閾値以下となったときに前記マイクロミスト生成手段を駆動してタイヤに前記マイクロミストを噴霧する手段を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のタイヤの除電装置。
【請求項6】
各タイヤ毎に設けられ、タイヤ表面の帯電量を検出して、検出結果を前記駆動制御手段に出力する複数の静電気センサと、
車両の走行速度を検出して、検出結果を出力する速度検出手段とを備え、
前記駆動制御手段に、各静電気センサの検出結果及び前記走行速度の検出結果に基づいて、各静電気センサの何れかの検出結果が所定の閾値以上の帯電量を示しており且つ走行速度が所定の閾値以下となったときに前記マイクロミスト生成手段を駆動してタイヤに前記マイクロミストを噴霧する手段を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のタイヤの除電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−296627(P2008−296627A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142086(P2007−142086)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)