タイヤチェーン収納装置
【課題】汎用のタイヤチェーンを車体下部に収納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを収容することができる簡易又は簡素な構造のタイヤチェーン収納装置を提供する。
【解決手段】タイヤチェーン収納装置10は、車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシング11と、ケーシング内のタイヤチェーン保持機構30とを有する。タイヤチェーン保持機構は、タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板33と、サイドチェーン部分の端部を係止可能な牽引部材と、支持板を周回するように牽引部材を移動させる牽引部材作動装置34とを有する。支持板を周回したタイヤチェーンのサイドチェーン部分は、その両端部が相互連結され、タイヤチェーンは、ケーシング内に格納される。
【解決手段】タイヤチェーン収納装置10は、車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシング11と、ケーシング内のタイヤチェーン保持機構30とを有する。タイヤチェーン保持機構は、タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板33と、サイドチェーン部分の端部を係止可能な牽引部材と、支持板を周回するように牽引部材を移動させる牽引部材作動装置34とを有する。支持板を周回したタイヤチェーンのサイドチェーン部分は、その両端部が相互連結され、タイヤチェーンは、ケーシング内に格納される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤチェーン収納装置に関するものであり、より詳細には、タイヤチェーンを車体下部に繰り出し可能に格納するためのタイヤチェーン収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪時又は路面凍結時に車両のタイヤに装着可能なタイヤチェーンが広く実用に供されている。タイヤチェーンとして、全体的に帯状の鋼製又は合金製チェーン、或いは、合成樹脂製チェーンが一般に使用される。この種のタイヤチェーンは、タイヤの幅及び外周長に相応する幅及び長さ寸法を有する。運転者等は、積雪地域又は路面凍結地域を走行する直前にタイヤチェーンをタイヤに装着しなければならない。タイヤチェーンの捲装作業は、一般に手作業で行われるが、タイヤチェーン自体の構造及び用法や、ジャッキ等の工具の使用等に関する経験及び知識を要するので、一般車両の運転者等にとっては、かなり煩わしい作業である。
【0003】
殊に、大型車両用タイヤチェーンは、かなりの重量を有し、しかも、チェーン捲装作業は、寒冷地域又は積雪地域の過酷な環境の下で実施せざるを得ず、このため、チェーン捲装作業は、作業に精通した業務用大型車両の運手者等にとっても、必ずしも容易ではない。このため、チェーン捲装作業の負担軽減を意図した各種の対策又は改良が、従来より検討されてきた。
【0004】
例えば、タイヤの回転を利用したチェーン捲装作業を可能にする各種構成のタイヤチェーンが従来より提案されてきた(特開2002−18741号公報、特開平10−146774号公報、特開平7−232523号公報等)。この種のタイヤチェーンは、タイヤチェーンの先端部をタイヤに係止した後、車両を若干前進又は後退させ、タイヤの回転により、タイヤチェーンをタイヤの外周部に捲装するように構成したものである。また、タイヤチェーンを比較的容易にタイヤに捲装することを意図した各種構成のチェーン装着具が、従来より提案されている(例えば、特許第2914910号公報等)。この種のチェーン装着具は、運転者等が手指で握持可能な把手部と、タイヤチェーンの先端部を係止可能な係止部とから概ね構成される。運転者等は、タイヤチェーン先端部をチェーン装着具の係止部に係止した後、係止部をタイヤの全周に沿って案内することにより、タイヤチェーンをタイヤに捲装する。
【0005】
この他、タイヤチェーンをタイヤに装着する作業を容易にする装着補助台が特開2005−22526号公報等に記載されている。
【0006】
更には、タイヤの外周部にタイヤチェーン収納ケースを設け、運転席からの遠隔操作によりタイヤチェーンをタイヤに装着するように構成されたタイヤチェーン着脱装置が、特開平9−150614号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−18741号公報
【特許文献2】特開平10−146774号公報
【特許文献3】特開平7−232523号公報
【特許文献4】特許第2914910号公報
【特許文献5】特開2005−22526号公報
【特許文献6】特開平9−150614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タイヤチェーン装着作業を容易にするように改良された前述のタイヤチェーン、チェーン装着具、装着補助台等の使用は、運転者等の負担を軽減する上で、ある程度は、有効であるかもしれない。しかし、タイヤチェーンはかなりの重量を有し、しかも、チェーン捲装作業は、寒冷地域又は積雪地域の過酷な環境の下で実施せざるを得ない。このため、チェーン捲装作業を容易にするだけではなく、タイヤチェーンを車内から移動し、装着可能な位置に配置する作業や、タイヤチェーンをタイヤから取り外し、車内に収納する作業を簡素化することも重要である。
【0009】
上記特許文献6には、タイヤチェーンの収納を考慮したタイヤチェーン着脱装置の構成が記載されている。このタイヤチェーン着脱装置は、特殊なタイヤチェーンをタイヤ外周部の収納ケース内に格納し、車内からの遠隔装置により、タイヤチェーンをタイヤに装着しようとする構成のものである。しかしながら、このようなタイヤチェーン着脱装置においては、汎用のタイヤチェーンを使用することができず、しかも、極めて複雑な作動装置及び作動機構をタイヤ外周部に配設しなければならず、このため、このような装置を現実に車載することは、極めて困難である。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汎用のタイヤチェーンを車体下部に収納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを収容することができる簡易又は簡素な構造のタイヤチェーン収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成すべく、車体下部にタイヤチェーンを収納するタイヤチェーン収納装置において、
車体下部に支持され且つ車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシングと、
該ケーシング内に配設されたタイヤチェーン保持機構とを有し、
前記タイヤチェーン保持機構は、車長方向に延び且つ前記タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板と、前記タイヤチェーンのサイドチェーン部分の端部が係止され、該支持板の上方域及び下方域を周回する左右の軌道に沿って前記サイドチェーン部分の端部を牽引する牽引部材と、前記支持板を周回するように前記牽引部材を移動させる牽引部材作動装置とを備えており、
前記サイドチェーン部分が前記支持板を周回した状態で前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記タイヤチェーンを前記ケーシング内に格納するようにしたことを特徴とするタイヤチェーン収納装置を提供する。
【0012】
本発明の上記構成によれば、運転者等は、タイヤチェーンの収納時にサイドチェーン部分の端部を牽引部材に係止し、牽引部材作動装置により牽引部材を移動させてタイヤチェーンを支持板の周囲に周回した後、サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、これにより、タイヤチェーンを支持板廻りに保持し、ケーシング内に格納することができる。サイドチェーン部分を牽引する間、タイヤチェーンのクロスチェーン部分は、支持板の上面に支持された状態で牽引方向に移動する。他方、タイヤチェーンの装着時には、運転者等は、サイドチェーン部分の両端部の連結を解放し、サイドチェーン部分の解放端部をタイヤに係留した後、タイヤをゆっくりと回転駆動させ、これにより、タイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置から繰り出しながらタイヤに捲装することができる。
【0013】
他の観点より、本発明は、上記構成のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン収納方法において、
弾力的に伸縮可能な弾性部材によって前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記弾性部材の張力下に前記タイヤチェーンを支持板廻りに保持して前記ケーシング内に格納することを特徴とするタイヤチェーン収納方法を提供する。
【0014】
このようなタイヤチェーン収納方法によれば、サイドチェーン部分の収納位置は、サイドチェーン部分に作用する弾性部材の張力下に安定する。従って、タイヤチェーンは、車両の走行時に振動して暴れることなく、長期間の保管中により捩れ、偏在し、或いは、緩むこともなく、安定した状態でケーシング内に格納される。
【0015】
本発明は又、上記構成のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン装着方法において、
前記サイドチェーン部分の両端部の連結を解放して前記タイヤチェーンの端部を前記ケーシング外に引き出し、前記サイドチェーン部分の端部をタイヤに係留し、前記タイヤの回転駆動により、前記ケーシングから前記タイヤチェーンを繰り出しながら該タイヤチェーンを前記タイヤに捲装することを特徴とするタイヤチェーン装着方法を提供する。
【0016】
このようなタイヤチェーン装着方法によれば、タイヤの回転駆動を利用して、ケーシングからタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに装着することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、汎用のタイヤチェーンを車体下部に収納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを収容することができる簡易又は簡素な構造のタイヤチェーン収納装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、安定した状態でタイヤチェーンを収納し、或いは、タイヤの回転駆動により、ケーシングからタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに捲装するタイヤチェーン収納方法及びタイヤチェーン装着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のタイヤチェーン収納装置を備えた大型車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は、タイヤチェーン収納装置と後輪との位置関係を示す側面図である。
【図3】図3は、タイヤチェーンを後輪に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、タイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置内に格納した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4のI−I線における断面図である。
【図6】図6は、図4のII−II線における断面図であり、図6(A)には、タイヤチェーン収納装置の非使用位置が示され、図6(B)には、タイヤチェーン収納装置の使用位置が示されている。
【図7】図7は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時の初期操作が示されている。
【図8】図8は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時のチェーン牽引操作が示されている。
【図9】図9は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時のチェーン端部連結操作が示されている。
【図10】図10は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の初期操作が示されている。
【図11】図11は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の車輪駆動操作が示されている。
【図12】図12は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の最終工程が示されている。
【図13】図13は、タイヤチェーン装着時の初期操作を示す写真であり、タイヤチェーンをタイヤに係止した状態が示されている。
【図14】図14は、タイヤチェーン装着時の初期操作を示す写真であり、車両の後退動作によりタイヤチェーンをタイヤに捲装する状態が示されている。
【図15】図15は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、車両の後退動作によりタイヤチェーンをタイヤに捲装する状態が示されている。
【図16】図16は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーンをタイヤに捲装した状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、上記支持板は、上記サイドチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように車長方向に延びる左右の溝部分と、タイヤチェーンのクロスチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように左右の溝部分の間に車幅方向に延在する平面部分とを有する。好ましくは、支持板の平面部分の幅は、タイヤの幅に相当し又は実質的に一致する寸法に設定される。更に好ましくは、タイヤチェーン収納装置のケーシングは、ケーシングを車幅方向に移動可能に支持する支持具によって車体下部に懸吊される。好適には、支持板とタイヤとは、使用位置において車長方向に整列するように位置決めされる。例えば、ケーシング、支持板又はその平面部分の幅方向中心線(β)は、タイヤチェーン収納装置の使用位置においてタイヤの垂直中心線(η)と交差する。また、ケーシングの高さ中心(β)のレベル(地盤上の高さ位置(H))、或いは、支持板の平面部分の上面レベル(地盤上の高さ位置)は、タイヤチェーン収納装置の使用位置においてタイヤの回転中心(α)のレベル(地盤上の高さ位置(h))と実質的に一致する。
【0021】
本発明の更に好適な実施形態によれば、上記牽引部材作動装置は、上記支持板の両側に配置された無端ローラチェーン等の無端軌道装置又は周回駆動装置を有し、上記牽引部材は、支持板の上方域又は下方域を車幅方向に横断する横架材からなる。横架材は、左右の無端ローラチェーンに支持される。
【0022】
好ましくは、タイヤチェーン装置は、上記支持板の両端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材を更に有する。ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、縮径部分は、サイドチェーン部分を周方向に案内する周溝を形成する。
【0023】
更に好ましくは、上記無端ローラチェーンを巻き掛けた前後のスプロケットが、上記ローラ部材を貫通する支軸に軸支される。前側又は後側のスプロケットは支軸に一体的に連結される。回転工具を係合可能な係合手段が支軸の端部に形成される。無端ローラチェーンは、回転工具によるスプロケットの回転に従って、タイヤチェーン繰り出し方向又はタイヤチェーン収納方向に走行する。
【0024】
好適には、タイヤチェーン収納装置は、前輪及び後輪の間の領域に配置され、タイヤチェーンは、車両の後退駆動により後輪の外周に捲装される。所望により、タイヤチェーン収納装置の上面全体をタイヤ方向に向けた状態にタイヤチェーン収納装置を傾斜させ、タイヤチェーン収納装置を前後輪間の領域にコンパクトに配置するようにしても良く、また、このようにタイヤチェーン収納装置を傾斜させた場合、タイヤチェーン収納装置から繰り出されるタイヤチェーンの繰り出し経路を上方に転向する補助的な転向ローラをタイヤチェーン収納装置に設け、或いは、タイヤチェーン収納装置とタイヤとの間に配設しても良い。
【実施例1】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るタイヤチェーン収納装置の実施例について詳細に説明する。
【0026】
図1(A)は、本発明のタイヤチェーン収納装置を備えた大型車両の全体構成を示す側面図である。
【0027】
図1(A)に示す車両1は、キャブオーバ型のキャブ2と、バン型のリアボディ(荷台)3とから構成される後輪駆動の大型トラックである。前輪4と後輪5との間には、タイヤチェーン収納装置10が配設される。複数の垂直支持具6が、車体フレームのサイドメンバ7に固定される。車幅方向に水平移動可能にタイヤチェーン収納装置10を支持する水平支持具8が、垂直支持具6の下部に水平に固定される。タイヤチェーン収納装置10は、垂直支持具6によって車体フレームの下方域に水平に懸吊される。
【0028】
図2(A)及び図2(B)は、タイヤチェーン収納装置10と後輪5との位置関係を示す側面図であり、図3及び図4は、タイヤチェーン収納装置10の構成を示す斜視図である。また、図5及び図6は、図4のI−I線及びII−II線における断面図である。図6(A)には、タイヤチェーン収納装置10の非使用位置が示されており、図6(B)には、タイヤチェーン収納装置10の使用位置が示されている。図7〜図12は、タイヤチェーン保持機構30の構成及び作動形態を示す斜視図であり、各図において、ケーシング11の図示は省略されている。
【0029】
図2(A)及び図3には、タイヤチェーンCを後輪5に装着した状態が示されている。タイヤチェーン収納装置10はケーシング11を有し、ケーシング11は、偏平した概ね直方体形状の金属製又は樹脂製筐体からなる。タイヤチェーン収納装置10は、ケーシング11の後方カバー20を下方に回動し、ケーシング11の後端部分を開放した状態で図2(A)及び図3に示されており、タイヤチェーンCは、ケーシング11の後部開口11aからケーシング11内に収納し、或いは、ケーシング11内に収納したタイヤチェーンCを後部開口11aから後方に繰り出すことができる。
【0030】
図6に示すように、水平支持具8は、垂直支持具6の下端部に固定され、車幅方向外方に水平に延びる。水平支持具8は、入れ子式伸縮部材からなる。ケーシング11の下面に固定された支持枠9が、ボルト・ナット等の緊締具又は係止具(図示せず)、或いは、溶接によって水平支持具8の可動部に水平に固定される。水平支持具8は、図6(A)に示す非使用位置において全長を縮小し、ケーシング11を車幅方向内方に後退させる。水平支持具8は、図6(B)に示す使用位置において全長を拡大し、ケーシング11を車幅方向外方に移動させる。
【0031】
図2(B)に示すとおり、タイヤチェーン収納装置10の中心線βは、後輪5の回転中心αと交差し、中心線βの地盤上の高さHは、回転中心αの高さhと一致する。タイヤチェーン収納装置10の後端面20aは、後輪5から距離Lを隔てて配置される。距離Lは、例えば、200〜350mm、好ましくは、250〜300mmの範囲内に設定される。図6(B)に示すとおり、タイヤチェーン収納装置10の中心線βは、タイヤチェーン収納装置10の使用位置において後輪5の幅方向中心線ηと交差し、タイヤチェーン収納装置10は、タイヤ5と車長方向に整列する。
【0032】
図4〜図6に示すように、ケーシング11は、上記後方カバー20を備えるとともに、左右の側板12、底板13、頂板14、頂部カバー15及び前方カバー16を備える。側板12、底板13及び頂板14は係止具、溶接等によって一体化される。頂部カバー15は、前板15a及び後板15bに分割されており、前板15aの前縁部は、ヒンジ18によって頂板14の後縁部に回動可能に連結され、前板15aの後縁部は、ヒンジ19によって後板15bの前縁部に回動可能に連結される。上部カバー15は、ケーシング11の後部上面を図3に示す如く大きく開放する。
【0033】
図4に示すように、後板15bの後縁は、パッチン錠等の手動解放可能な錠21によって後方カバー20の上縁部に係止される。後方カバー20は、図2(A)及び図3に示す後部開口11aを閉塞するように形成される。図5に示す如く、後方カバー20の下縁部は、ヒンジ21によって底板13の後縁部に回動可能に連結される。底板13の前縁部には、後方カバー20と対称な形状及び構造を有するメンテナンス用の前方カバー16が、ヒンジ22によって回動可能に連結される。前方カバー16の上縁部は、パッチン錠等の手動解放可能な錠23によって頂板14の前縁部に係止される。図3に示す如く、タイヤチェーン保持機構30がケーシング11内に配設される。
【0034】
図5〜図7を参照してタイヤチェーン保持機構30の構造について説明する。
【0035】
タイヤチェーン保持機構30は、左右一対の金属製水平枠材31と、前後一対の金属製又は樹脂製ローラ32と、前後のローラ32の間において長手方向(車長方向)に延びる水平な金属製又は樹脂製支持板33と、水平枠材31の内側に配置された左右一対の無端ローラチェーン34と、左右の無端ローラチェーン34を架橋する水平横架材35とから構成される。横架材35の両端部は、無端ローラチェーン34に固定されており、横架材35は、支持板33の上方域を車幅方向に横断する。水平枠材31の外側面には、複数の金属製又は樹脂製垂直支柱39が固定される。図5に示す如く、左右の水平部材31は、水平な金属製又は樹脂製補強材31bによって相互連結される。
【0036】
水平枠材31は、支柱39を介してケーシング11の側板12に支持される。図7に示すように、水平枠材31の前端部には、前側のローラ32を支持する支持部材37が固定される。同様に、水平枠材31の後端部にも又、後側のローラ32を支持する支持部材(図示せず)が固定される。ローラ32は、中空の大径部32aと、拡径部32aの両側に配置された中空の縮径部32bと、拡径部32a及び縮径部32bの中心部を貫通する支軸32cとから構成され、ローラ32の直径は、中央部において最大直径を有し、両端に向かって段階的に縮小する。好ましくは、拡径部32aの直径は、50mm以上の寸法に設定され、縮径部32bの直径は、30mm以上の寸法に設定される。拡径部32a及び縮径部32bは、一体的な金属成形品又は樹脂成形品からなり、支軸32cによって回転自在に支承される。前側の支軸32cは、支持部材37に一体的に支持され、後側の支軸32cは、同様の支持部材(図示せず)に回転可能に支持される。後側の支軸32cの先端部(外端部)は、六角ナット形状を有し、ボックススパナGのソケット部Ga(図8)に挿入され且つソケット部Gaに係合する。
【0037】
各支軸32cには、スプロケット36が軸支される。前側のスプロケット36は、支軸32cに遊動回転自在に支持され、後側のスプロケット36は、支軸32cに一体的に支持される。前後のスプロケット36には、無端ローラチェーン34が巻き掛けられる。無端ローラチェーン34は、後側の支軸32c及びスプロケット36の回転に従って前後のスプロケット36の間を走行し、無端ローラチェーン34に係止された水平横架材35をタイヤチェーン保持機構30の長手方向(車長方向)に移動させる。図6に示す如く、水平枠材31は、矩形断面の内方突出部分31aを有し、無端ローラチェーン34の上部走行帯は、内方突出部分31aの上面に支持された状態で走行する。
【0038】
図5に示す如く、支持板33の前端縁及び後端縁は、ローラ32の拡径部32の外周面に近接した位置に配置される。隆起部33aの幅W1(図6)は、拡径部32aの幅と実質的に一致し、溝部33bの幅W2(図6)は、縮径部32bの幅と実質的に一致する。隆起部33aの幅W2は、後輪5のタイヤ幅W’(図6)と実質的に一致する寸法に設定される。隆起部33aの水平上面は、拡径部32aの頂端レベルにおいて前後の拡径部32aの間に延在する水平な平面を形成し、溝部33bの水平上面(溝底面)は、縮径部32bの頂端レベルにおいて前後の縮径部32bの間に延在する水平な平面を形成する。
【0039】
図7に示す如く、タイヤチェーン収納時には、運転者等は、タイヤチェーンCの両側のエンドリング部分DをフックFによって横架材35の両端部に係止する。タイヤチェーンCのサイドチェーン部分Caは、縮径部32b及び溝部33bの帯域に配置される。
【0040】
次に、図8〜図12を参照して、タイヤチェーン収納時及びタイヤチェーン装着時におけるタイヤチェーン保持機構30の作動について説明する。
【0041】
図8に示すように、運転者等は、タイヤチェーン収納時にボックススパナGのソケット部Gaを後側の支軸32cに係合し、ボックススパナGによって支軸32cを矢印方向に手作業で回転させる。これにより、後側のスプロケット36は回転し、無端ローラチェーン34は、スプロケット36の回転に従って走行し、この結果、横架材35は矢印方向(車体前方)に移動する。横架材35は、サイドチェーン部分Caを矢印方向に牽引し、サイドチェーン部分Caは、溝部33bによって車長方向に案内され、溝部33b内の軌道を移動する。タイヤチェーンCのクロスチェーン部分Cbは、左右のサイドチェーン部分Caによって牽引され、隆起部33aの水平上面を矢印方向に移動する。なお、遊動状態の前側スプロケット36は、後側スプロケット36の回転に従って従動回転する。
【0042】
運転者等がボックススパナGを更に回転させると、横架材35は、前側のスプロケット36の外周領域を周回して方向転換し、支持板33の下方域を逆方向に移動する。運転者等がボックススパナGを更に回転させると、横架材35は、後側のスプロケット36の外周領域を周回して方向転換し、図9に示すように支持板33の上方域に移動する。かくして、横架材35によって牽引されたサイドチェーン部分Caは、溝部33b及び縮径部32bによって形成されるタイヤチェーン保持機構30の周回軌道を完全に周回する。
【0043】
運転者等は更に、図9に示すようにタイヤチェーンCのエンドフック部分Eを引張コイルスプリングSによって横架材35又はエンドリング部分Dに連結する。左右のサイドチェーン部分Caは、左右のスプリングSの弾性復元力により、スプリングSの張力下に保持され、両側の溝部33b及び縮径部32bの周回軌道上に沿って静止する。サイドチェーン部分Caに作用する張力は、サイドチェーンCaの格納位置を安定させるので、タイヤチェーンCは、車両の走行時に振動して暴れることなく、長期間の保管により捩れ、外れ又は緩むこともなく、タイヤチェーン収納装置10内に格納される。なお、サイドチェーン部分Caの張力が不足する場合には、サイドチェーン部分Caの適当なリング部分にスプリングSを係止し、サイドチェーン部分Caの張力を強めに設定すれば良い。
【0044】
かくしてタイヤチェーンCをタイヤチェーン保持機構30に巻回した後、図4に示すように後方カバー20によってケーシング11の後部開口11aを閉鎖し且つ錠21の施錠により後方カバー20を固定することにより、タイヤチェーンCは、タイヤチェーン収納装置10内に格納される。
【0045】
図10〜図12には、タイヤチェーン装着時におけるタイヤチェーン保持機構30の作動が示されている。また、図13〜図16には、実際のタイヤチーン装着過程が示されている。なお、図13〜図16は、タイヤチェーン収納装置10の試作機を実車に取付けた状態を示す写真である。
【0046】
タイヤチェーン装着時には、運転者等は、錠21(図4)を解錠し、後方カバー20を開放した後、左右のスプリングS(図9)を図3に示す如く取り外し、タイヤチェーンCのエンドフック部分Eをタイヤチェーン装着装置10の後部開口11aから手作業でケーシング11外に引き出し、図10及び図13に示すように、左右のエンドフック部分EをコイルスプリングTによってタイヤホイルの内側部分で相互連結する。運転者等がタイヤチェーンCを手作業で牽引する際、運転者等の牽引力は、横架材35(図9)を介して無端ローラチェーン34に作用し、無端ローラチェーン34は、タイヤチェーンCを繰り出す方向(矢印方向)に走行する。ボックススパナGによって支軸32c及びスプロケット36をタイヤチェーン繰り出し方向に回転させても良い。
【0047】
次いで、運転者が車両をゆっくりと後退させ、図11、図14及び図15に示すように後輪5を低速回転させると、タイヤチェーンCは、後輪5の回転に伴って後輪5の外周に巻き付けられる。後輪5が回転する間、タイヤチェーンCは、タイヤの回転力により車体後方に牽引され、横架材35は、図11に矢印で示す方向に無端ローラチェーン34を走行させる。
【0048】
運転者は、図12及び図16に示す如くタイヤチェーンCが後輪5の外周にほぼ完全に巻き付けられた時点で車両を停止し、エンドフック部分Eをエンドリング部分D又はサイドチェーン部分Caの任意のリングに係止し、かくして、タイヤチェーンCは、後輪5の外周に捲装される。最後に、運転者等は、図4に示す如く後方カバー20によってタイヤチェーン収納装置10の後部開口11aを閉鎖し且つ錠21を施錠するとともに、スプリングS、コイルスプリングT及びボックススパナG等の工具・備品を車体の適所に収納する。所望により、これらの工具備品をタイヤチェーン収納装置10内に収納するようにしても良い。
【0049】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施例においては、牽引部材として架橋ロッド形の横架材を使用し、牽引部材作動装置として、無端ローラチェーン及びスプロケットを用いているが、牽引部材として、タイヤチェーンの端部を係止可能な索条、ボルト、ピン等の機械要素を使用し、牽引部材作動装置として、無端ベルト、プーリー、歯車等を備えた構成の作動装置を使用しても良い。
【0051】
また、上記実施例では、タイヤチェーン収納装置は、偏平した矩形輪郭のケーシングを備えた構造のものであるが、ケーシングの形状及び構造は、車体構造に適した任意の形状及び構造に設計することができる。所望により、タイヤチェーン収納装置を全体的に傾斜させ、或いは、支持板及び無端ローラチェーン等を全体的に傾斜させても良い。所望により、タイヤチェーンを上方に向けて転向する転向ローラをタイヤチェーン収納装置に設け、或いは、このような転向ローラをタイヤとタイヤチェーン収納装置との間に配設しても良い。
【0052】
更には、上記実施例では、タイヤチェーン端部の相互連結にスプリングを使用しているが、弾力的に変形可能な任意の弾性部材によってタイヤチェーン端部を相互連結しても良い。
【0053】
また、上記実施例では、車両の後輪に装着されるタイヤチェーンについて説明したが、本発明は、車両の前輪等に装着されるタイヤチェーンに対しても同様に適用し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、積雪時又は路面凍結時に車両のタイヤに装着されるタイヤチェーンを車体下部に常時格納するタイヤチェーン収納装置に適用される。本発明は又、安定した状態でタイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置内に収納し、或いは、タイヤの回転駆動により、タイヤチェーン収納装置からタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに装着するタイヤチェーン収納方法及びタイヤチェーン装着方法に適用される。
【0055】
本発明によれば、簡易又は簡素な構造の装置により、汎用のタイヤチェーンを車体下部に格納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを格納することができるので、本発明の実用的効果は顕著である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
5 後輪
6 垂直支持具
8 水平支持具
9 支持枠
10 タイヤチェーン収納装置
11 ケーシング
20 後方カバー
21 錠
30 タイヤチェーン保持機構
31 水平枠材
32 ローラ
32a 拡径部
32b 縮径部
32c 支軸
33 支持板
33a 隆起部
33b 溝部
34 無端ローラチェーン
35 水平横架材
36 スプロケット
C タイヤチェーン
Ca サイドチェーン部分
Cb クロスチェーン部分
D エンドリング部分
E エンドフック部分
G ボックススパナ
F フック
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤチェーン収納装置に関するものであり、より詳細には、タイヤチェーンを車体下部に繰り出し可能に格納するためのタイヤチェーン収納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪時又は路面凍結時に車両のタイヤに装着可能なタイヤチェーンが広く実用に供されている。タイヤチェーンとして、全体的に帯状の鋼製又は合金製チェーン、或いは、合成樹脂製チェーンが一般に使用される。この種のタイヤチェーンは、タイヤの幅及び外周長に相応する幅及び長さ寸法を有する。運転者等は、積雪地域又は路面凍結地域を走行する直前にタイヤチェーンをタイヤに装着しなければならない。タイヤチェーンの捲装作業は、一般に手作業で行われるが、タイヤチェーン自体の構造及び用法や、ジャッキ等の工具の使用等に関する経験及び知識を要するので、一般車両の運転者等にとっては、かなり煩わしい作業である。
【0003】
殊に、大型車両用タイヤチェーンは、かなりの重量を有し、しかも、チェーン捲装作業は、寒冷地域又は積雪地域の過酷な環境の下で実施せざるを得ず、このため、チェーン捲装作業は、作業に精通した業務用大型車両の運手者等にとっても、必ずしも容易ではない。このため、チェーン捲装作業の負担軽減を意図した各種の対策又は改良が、従来より検討されてきた。
【0004】
例えば、タイヤの回転を利用したチェーン捲装作業を可能にする各種構成のタイヤチェーンが従来より提案されてきた(特開2002−18741号公報、特開平10−146774号公報、特開平7−232523号公報等)。この種のタイヤチェーンは、タイヤチェーンの先端部をタイヤに係止した後、車両を若干前進又は後退させ、タイヤの回転により、タイヤチェーンをタイヤの外周部に捲装するように構成したものである。また、タイヤチェーンを比較的容易にタイヤに捲装することを意図した各種構成のチェーン装着具が、従来より提案されている(例えば、特許第2914910号公報等)。この種のチェーン装着具は、運転者等が手指で握持可能な把手部と、タイヤチェーンの先端部を係止可能な係止部とから概ね構成される。運転者等は、タイヤチェーン先端部をチェーン装着具の係止部に係止した後、係止部をタイヤの全周に沿って案内することにより、タイヤチェーンをタイヤに捲装する。
【0005】
この他、タイヤチェーンをタイヤに装着する作業を容易にする装着補助台が特開2005−22526号公報等に記載されている。
【0006】
更には、タイヤの外周部にタイヤチェーン収納ケースを設け、運転席からの遠隔操作によりタイヤチェーンをタイヤに装着するように構成されたタイヤチェーン着脱装置が、特開平9−150614号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−18741号公報
【特許文献2】特開平10−146774号公報
【特許文献3】特開平7−232523号公報
【特許文献4】特許第2914910号公報
【特許文献5】特開2005−22526号公報
【特許文献6】特開平9−150614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
タイヤチェーン装着作業を容易にするように改良された前述のタイヤチェーン、チェーン装着具、装着補助台等の使用は、運転者等の負担を軽減する上で、ある程度は、有効であるかもしれない。しかし、タイヤチェーンはかなりの重量を有し、しかも、チェーン捲装作業は、寒冷地域又は積雪地域の過酷な環境の下で実施せざるを得ない。このため、チェーン捲装作業を容易にするだけではなく、タイヤチェーンを車内から移動し、装着可能な位置に配置する作業や、タイヤチェーンをタイヤから取り外し、車内に収納する作業を簡素化することも重要である。
【0009】
上記特許文献6には、タイヤチェーンの収納を考慮したタイヤチェーン着脱装置の構成が記載されている。このタイヤチェーン着脱装置は、特殊なタイヤチェーンをタイヤ外周部の収納ケース内に格納し、車内からの遠隔装置により、タイヤチェーンをタイヤに装着しようとする構成のものである。しかしながら、このようなタイヤチェーン着脱装置においては、汎用のタイヤチェーンを使用することができず、しかも、極めて複雑な作動装置及び作動機構をタイヤ外周部に配設しなければならず、このため、このような装置を現実に車載することは、極めて困難である。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、汎用のタイヤチェーンを車体下部に収納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを収容することができる簡易又は簡素な構造のタイヤチェーン収納装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成すべく、車体下部にタイヤチェーンを収納するタイヤチェーン収納装置において、
車体下部に支持され且つ車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシングと、
該ケーシング内に配設されたタイヤチェーン保持機構とを有し、
前記タイヤチェーン保持機構は、車長方向に延び且つ前記タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板と、前記タイヤチェーンのサイドチェーン部分の端部が係止され、該支持板の上方域及び下方域を周回する左右の軌道に沿って前記サイドチェーン部分の端部を牽引する牽引部材と、前記支持板を周回するように前記牽引部材を移動させる牽引部材作動装置とを備えており、
前記サイドチェーン部分が前記支持板を周回した状態で前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記タイヤチェーンを前記ケーシング内に格納するようにしたことを特徴とするタイヤチェーン収納装置を提供する。
【0012】
本発明の上記構成によれば、運転者等は、タイヤチェーンの収納時にサイドチェーン部分の端部を牽引部材に係止し、牽引部材作動装置により牽引部材を移動させてタイヤチェーンを支持板の周囲に周回した後、サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、これにより、タイヤチェーンを支持板廻りに保持し、ケーシング内に格納することができる。サイドチェーン部分を牽引する間、タイヤチェーンのクロスチェーン部分は、支持板の上面に支持された状態で牽引方向に移動する。他方、タイヤチェーンの装着時には、運転者等は、サイドチェーン部分の両端部の連結を解放し、サイドチェーン部分の解放端部をタイヤに係留した後、タイヤをゆっくりと回転駆動させ、これにより、タイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置から繰り出しながらタイヤに捲装することができる。
【0013】
他の観点より、本発明は、上記構成のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン収納方法において、
弾力的に伸縮可能な弾性部材によって前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記弾性部材の張力下に前記タイヤチェーンを支持板廻りに保持して前記ケーシング内に格納することを特徴とするタイヤチェーン収納方法を提供する。
【0014】
このようなタイヤチェーン収納方法によれば、サイドチェーン部分の収納位置は、サイドチェーン部分に作用する弾性部材の張力下に安定する。従って、タイヤチェーンは、車両の走行時に振動して暴れることなく、長期間の保管中により捩れ、偏在し、或いは、緩むこともなく、安定した状態でケーシング内に格納される。
【0015】
本発明は又、上記構成のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン装着方法において、
前記サイドチェーン部分の両端部の連結を解放して前記タイヤチェーンの端部を前記ケーシング外に引き出し、前記サイドチェーン部分の端部をタイヤに係留し、前記タイヤの回転駆動により、前記ケーシングから前記タイヤチェーンを繰り出しながら該タイヤチェーンを前記タイヤに捲装することを特徴とするタイヤチェーン装着方法を提供する。
【0016】
このようなタイヤチェーン装着方法によれば、タイヤの回転駆動を利用して、ケーシングからタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに装着することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、汎用のタイヤチェーンを車体下部に収納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを収容することができる簡易又は簡素な構造のタイヤチェーン収納装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明によれば、安定した状態でタイヤチェーンを収納し、或いは、タイヤの回転駆動により、ケーシングからタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに捲装するタイヤチェーン収納方法及びタイヤチェーン装着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明のタイヤチェーン収納装置を備えた大型車両の全体構成を示す側面図である。
【図2】図2(A)及び図2(B)は、タイヤチェーン収納装置と後輪との位置関係を示す側面図である。
【図3】図3は、タイヤチェーンを後輪に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】図4は、タイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置内に格納した状態を示す斜視図である。
【図5】図5は、図4のI−I線における断面図である。
【図6】図6は、図4のII−II線における断面図であり、図6(A)には、タイヤチェーン収納装置の非使用位置が示され、図6(B)には、タイヤチェーン収納装置の使用位置が示されている。
【図7】図7は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時の初期操作が示されている。
【図8】図8は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時のチェーン牽引操作が示されている。
【図9】図9は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン収納時のチェーン端部連結操作が示されている。
【図10】図10は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の初期操作が示されている。
【図11】図11は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の車輪駆動操作が示されている。
【図12】図12は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーン装着時の最終工程が示されている。
【図13】図13は、タイヤチェーン装着時の初期操作を示す写真であり、タイヤチェーンをタイヤに係止した状態が示されている。
【図14】図14は、タイヤチェーン装着時の初期操作を示す写真であり、車両の後退動作によりタイヤチェーンをタイヤに捲装する状態が示されている。
【図15】図15は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、車両の後退動作によりタイヤチェーンをタイヤに捲装する状態が示されている。
【図16】図16は、タイヤチェーン保持機構の構成及び作動形態を示す斜視図であり、タイヤチェーンをタイヤに捲装した状態が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態によれば、上記支持板は、上記サイドチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように車長方向に延びる左右の溝部分と、タイヤチェーンのクロスチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように左右の溝部分の間に車幅方向に延在する平面部分とを有する。好ましくは、支持板の平面部分の幅は、タイヤの幅に相当し又は実質的に一致する寸法に設定される。更に好ましくは、タイヤチェーン収納装置のケーシングは、ケーシングを車幅方向に移動可能に支持する支持具によって車体下部に懸吊される。好適には、支持板とタイヤとは、使用位置において車長方向に整列するように位置決めされる。例えば、ケーシング、支持板又はその平面部分の幅方向中心線(β)は、タイヤチェーン収納装置の使用位置においてタイヤの垂直中心線(η)と交差する。また、ケーシングの高さ中心(β)のレベル(地盤上の高さ位置(H))、或いは、支持板の平面部分の上面レベル(地盤上の高さ位置)は、タイヤチェーン収納装置の使用位置においてタイヤの回転中心(α)のレベル(地盤上の高さ位置(h))と実質的に一致する。
【0021】
本発明の更に好適な実施形態によれば、上記牽引部材作動装置は、上記支持板の両側に配置された無端ローラチェーン等の無端軌道装置又は周回駆動装置を有し、上記牽引部材は、支持板の上方域又は下方域を車幅方向に横断する横架材からなる。横架材は、左右の無端ローラチェーンに支持される。
【0022】
好ましくは、タイヤチェーン装置は、上記支持板の両端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材を更に有する。ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、縮径部分は、サイドチェーン部分を周方向に案内する周溝を形成する。
【0023】
更に好ましくは、上記無端ローラチェーンを巻き掛けた前後のスプロケットが、上記ローラ部材を貫通する支軸に軸支される。前側又は後側のスプロケットは支軸に一体的に連結される。回転工具を係合可能な係合手段が支軸の端部に形成される。無端ローラチェーンは、回転工具によるスプロケットの回転に従って、タイヤチェーン繰り出し方向又はタイヤチェーン収納方向に走行する。
【0024】
好適には、タイヤチェーン収納装置は、前輪及び後輪の間の領域に配置され、タイヤチェーンは、車両の後退駆動により後輪の外周に捲装される。所望により、タイヤチェーン収納装置の上面全体をタイヤ方向に向けた状態にタイヤチェーン収納装置を傾斜させ、タイヤチェーン収納装置を前後輪間の領域にコンパクトに配置するようにしても良く、また、このようにタイヤチェーン収納装置を傾斜させた場合、タイヤチェーン収納装置から繰り出されるタイヤチェーンの繰り出し経路を上方に転向する補助的な転向ローラをタイヤチェーン収納装置に設け、或いは、タイヤチェーン収納装置とタイヤとの間に配設しても良い。
【実施例1】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るタイヤチェーン収納装置の実施例について詳細に説明する。
【0026】
図1(A)は、本発明のタイヤチェーン収納装置を備えた大型車両の全体構成を示す側面図である。
【0027】
図1(A)に示す車両1は、キャブオーバ型のキャブ2と、バン型のリアボディ(荷台)3とから構成される後輪駆動の大型トラックである。前輪4と後輪5との間には、タイヤチェーン収納装置10が配設される。複数の垂直支持具6が、車体フレームのサイドメンバ7に固定される。車幅方向に水平移動可能にタイヤチェーン収納装置10を支持する水平支持具8が、垂直支持具6の下部に水平に固定される。タイヤチェーン収納装置10は、垂直支持具6によって車体フレームの下方域に水平に懸吊される。
【0028】
図2(A)及び図2(B)は、タイヤチェーン収納装置10と後輪5との位置関係を示す側面図であり、図3及び図4は、タイヤチェーン収納装置10の構成を示す斜視図である。また、図5及び図6は、図4のI−I線及びII−II線における断面図である。図6(A)には、タイヤチェーン収納装置10の非使用位置が示されており、図6(B)には、タイヤチェーン収納装置10の使用位置が示されている。図7〜図12は、タイヤチェーン保持機構30の構成及び作動形態を示す斜視図であり、各図において、ケーシング11の図示は省略されている。
【0029】
図2(A)及び図3には、タイヤチェーンCを後輪5に装着した状態が示されている。タイヤチェーン収納装置10はケーシング11を有し、ケーシング11は、偏平した概ね直方体形状の金属製又は樹脂製筐体からなる。タイヤチェーン収納装置10は、ケーシング11の後方カバー20を下方に回動し、ケーシング11の後端部分を開放した状態で図2(A)及び図3に示されており、タイヤチェーンCは、ケーシング11の後部開口11aからケーシング11内に収納し、或いは、ケーシング11内に収納したタイヤチェーンCを後部開口11aから後方に繰り出すことができる。
【0030】
図6に示すように、水平支持具8は、垂直支持具6の下端部に固定され、車幅方向外方に水平に延びる。水平支持具8は、入れ子式伸縮部材からなる。ケーシング11の下面に固定された支持枠9が、ボルト・ナット等の緊締具又は係止具(図示せず)、或いは、溶接によって水平支持具8の可動部に水平に固定される。水平支持具8は、図6(A)に示す非使用位置において全長を縮小し、ケーシング11を車幅方向内方に後退させる。水平支持具8は、図6(B)に示す使用位置において全長を拡大し、ケーシング11を車幅方向外方に移動させる。
【0031】
図2(B)に示すとおり、タイヤチェーン収納装置10の中心線βは、後輪5の回転中心αと交差し、中心線βの地盤上の高さHは、回転中心αの高さhと一致する。タイヤチェーン収納装置10の後端面20aは、後輪5から距離Lを隔てて配置される。距離Lは、例えば、200〜350mm、好ましくは、250〜300mmの範囲内に設定される。図6(B)に示すとおり、タイヤチェーン収納装置10の中心線βは、タイヤチェーン収納装置10の使用位置において後輪5の幅方向中心線ηと交差し、タイヤチェーン収納装置10は、タイヤ5と車長方向に整列する。
【0032】
図4〜図6に示すように、ケーシング11は、上記後方カバー20を備えるとともに、左右の側板12、底板13、頂板14、頂部カバー15及び前方カバー16を備える。側板12、底板13及び頂板14は係止具、溶接等によって一体化される。頂部カバー15は、前板15a及び後板15bに分割されており、前板15aの前縁部は、ヒンジ18によって頂板14の後縁部に回動可能に連結され、前板15aの後縁部は、ヒンジ19によって後板15bの前縁部に回動可能に連結される。上部カバー15は、ケーシング11の後部上面を図3に示す如く大きく開放する。
【0033】
図4に示すように、後板15bの後縁は、パッチン錠等の手動解放可能な錠21によって後方カバー20の上縁部に係止される。後方カバー20は、図2(A)及び図3に示す後部開口11aを閉塞するように形成される。図5に示す如く、後方カバー20の下縁部は、ヒンジ21によって底板13の後縁部に回動可能に連結される。底板13の前縁部には、後方カバー20と対称な形状及び構造を有するメンテナンス用の前方カバー16が、ヒンジ22によって回動可能に連結される。前方カバー16の上縁部は、パッチン錠等の手動解放可能な錠23によって頂板14の前縁部に係止される。図3に示す如く、タイヤチェーン保持機構30がケーシング11内に配設される。
【0034】
図5〜図7を参照してタイヤチェーン保持機構30の構造について説明する。
【0035】
タイヤチェーン保持機構30は、左右一対の金属製水平枠材31と、前後一対の金属製又は樹脂製ローラ32と、前後のローラ32の間において長手方向(車長方向)に延びる水平な金属製又は樹脂製支持板33と、水平枠材31の内側に配置された左右一対の無端ローラチェーン34と、左右の無端ローラチェーン34を架橋する水平横架材35とから構成される。横架材35の両端部は、無端ローラチェーン34に固定されており、横架材35は、支持板33の上方域を車幅方向に横断する。水平枠材31の外側面には、複数の金属製又は樹脂製垂直支柱39が固定される。図5に示す如く、左右の水平部材31は、水平な金属製又は樹脂製補強材31bによって相互連結される。
【0036】
水平枠材31は、支柱39を介してケーシング11の側板12に支持される。図7に示すように、水平枠材31の前端部には、前側のローラ32を支持する支持部材37が固定される。同様に、水平枠材31の後端部にも又、後側のローラ32を支持する支持部材(図示せず)が固定される。ローラ32は、中空の大径部32aと、拡径部32aの両側に配置された中空の縮径部32bと、拡径部32a及び縮径部32bの中心部を貫通する支軸32cとから構成され、ローラ32の直径は、中央部において最大直径を有し、両端に向かって段階的に縮小する。好ましくは、拡径部32aの直径は、50mm以上の寸法に設定され、縮径部32bの直径は、30mm以上の寸法に設定される。拡径部32a及び縮径部32bは、一体的な金属成形品又は樹脂成形品からなり、支軸32cによって回転自在に支承される。前側の支軸32cは、支持部材37に一体的に支持され、後側の支軸32cは、同様の支持部材(図示せず)に回転可能に支持される。後側の支軸32cの先端部(外端部)は、六角ナット形状を有し、ボックススパナGのソケット部Ga(図8)に挿入され且つソケット部Gaに係合する。
【0037】
各支軸32cには、スプロケット36が軸支される。前側のスプロケット36は、支軸32cに遊動回転自在に支持され、後側のスプロケット36は、支軸32cに一体的に支持される。前後のスプロケット36には、無端ローラチェーン34が巻き掛けられる。無端ローラチェーン34は、後側の支軸32c及びスプロケット36の回転に従って前後のスプロケット36の間を走行し、無端ローラチェーン34に係止された水平横架材35をタイヤチェーン保持機構30の長手方向(車長方向)に移動させる。図6に示す如く、水平枠材31は、矩形断面の内方突出部分31aを有し、無端ローラチェーン34の上部走行帯は、内方突出部分31aの上面に支持された状態で走行する。
【0038】
図5に示す如く、支持板33の前端縁及び後端縁は、ローラ32の拡径部32の外周面に近接した位置に配置される。隆起部33aの幅W1(図6)は、拡径部32aの幅と実質的に一致し、溝部33bの幅W2(図6)は、縮径部32bの幅と実質的に一致する。隆起部33aの幅W2は、後輪5のタイヤ幅W’(図6)と実質的に一致する寸法に設定される。隆起部33aの水平上面は、拡径部32aの頂端レベルにおいて前後の拡径部32aの間に延在する水平な平面を形成し、溝部33bの水平上面(溝底面)は、縮径部32bの頂端レベルにおいて前後の縮径部32bの間に延在する水平な平面を形成する。
【0039】
図7に示す如く、タイヤチェーン収納時には、運転者等は、タイヤチェーンCの両側のエンドリング部分DをフックFによって横架材35の両端部に係止する。タイヤチェーンCのサイドチェーン部分Caは、縮径部32b及び溝部33bの帯域に配置される。
【0040】
次に、図8〜図12を参照して、タイヤチェーン収納時及びタイヤチェーン装着時におけるタイヤチェーン保持機構30の作動について説明する。
【0041】
図8に示すように、運転者等は、タイヤチェーン収納時にボックススパナGのソケット部Gaを後側の支軸32cに係合し、ボックススパナGによって支軸32cを矢印方向に手作業で回転させる。これにより、後側のスプロケット36は回転し、無端ローラチェーン34は、スプロケット36の回転に従って走行し、この結果、横架材35は矢印方向(車体前方)に移動する。横架材35は、サイドチェーン部分Caを矢印方向に牽引し、サイドチェーン部分Caは、溝部33bによって車長方向に案内され、溝部33b内の軌道を移動する。タイヤチェーンCのクロスチェーン部分Cbは、左右のサイドチェーン部分Caによって牽引され、隆起部33aの水平上面を矢印方向に移動する。なお、遊動状態の前側スプロケット36は、後側スプロケット36の回転に従って従動回転する。
【0042】
運転者等がボックススパナGを更に回転させると、横架材35は、前側のスプロケット36の外周領域を周回して方向転換し、支持板33の下方域を逆方向に移動する。運転者等がボックススパナGを更に回転させると、横架材35は、後側のスプロケット36の外周領域を周回して方向転換し、図9に示すように支持板33の上方域に移動する。かくして、横架材35によって牽引されたサイドチェーン部分Caは、溝部33b及び縮径部32bによって形成されるタイヤチェーン保持機構30の周回軌道を完全に周回する。
【0043】
運転者等は更に、図9に示すようにタイヤチェーンCのエンドフック部分Eを引張コイルスプリングSによって横架材35又はエンドリング部分Dに連結する。左右のサイドチェーン部分Caは、左右のスプリングSの弾性復元力により、スプリングSの張力下に保持され、両側の溝部33b及び縮径部32bの周回軌道上に沿って静止する。サイドチェーン部分Caに作用する張力は、サイドチェーンCaの格納位置を安定させるので、タイヤチェーンCは、車両の走行時に振動して暴れることなく、長期間の保管により捩れ、外れ又は緩むこともなく、タイヤチェーン収納装置10内に格納される。なお、サイドチェーン部分Caの張力が不足する場合には、サイドチェーン部分Caの適当なリング部分にスプリングSを係止し、サイドチェーン部分Caの張力を強めに設定すれば良い。
【0044】
かくしてタイヤチェーンCをタイヤチェーン保持機構30に巻回した後、図4に示すように後方カバー20によってケーシング11の後部開口11aを閉鎖し且つ錠21の施錠により後方カバー20を固定することにより、タイヤチェーンCは、タイヤチェーン収納装置10内に格納される。
【0045】
図10〜図12には、タイヤチェーン装着時におけるタイヤチェーン保持機構30の作動が示されている。また、図13〜図16には、実際のタイヤチーン装着過程が示されている。なお、図13〜図16は、タイヤチェーン収納装置10の試作機を実車に取付けた状態を示す写真である。
【0046】
タイヤチェーン装着時には、運転者等は、錠21(図4)を解錠し、後方カバー20を開放した後、左右のスプリングS(図9)を図3に示す如く取り外し、タイヤチェーンCのエンドフック部分Eをタイヤチェーン装着装置10の後部開口11aから手作業でケーシング11外に引き出し、図10及び図13に示すように、左右のエンドフック部分EをコイルスプリングTによってタイヤホイルの内側部分で相互連結する。運転者等がタイヤチェーンCを手作業で牽引する際、運転者等の牽引力は、横架材35(図9)を介して無端ローラチェーン34に作用し、無端ローラチェーン34は、タイヤチェーンCを繰り出す方向(矢印方向)に走行する。ボックススパナGによって支軸32c及びスプロケット36をタイヤチェーン繰り出し方向に回転させても良い。
【0047】
次いで、運転者が車両をゆっくりと後退させ、図11、図14及び図15に示すように後輪5を低速回転させると、タイヤチェーンCは、後輪5の回転に伴って後輪5の外周に巻き付けられる。後輪5が回転する間、タイヤチェーンCは、タイヤの回転力により車体後方に牽引され、横架材35は、図11に矢印で示す方向に無端ローラチェーン34を走行させる。
【0048】
運転者は、図12及び図16に示す如くタイヤチェーンCが後輪5の外周にほぼ完全に巻き付けられた時点で車両を停止し、エンドフック部分Eをエンドリング部分D又はサイドチェーン部分Caの任意のリングに係止し、かくして、タイヤチェーンCは、後輪5の外周に捲装される。最後に、運転者等は、図4に示す如く後方カバー20によってタイヤチェーン収納装置10の後部開口11aを閉鎖し且つ錠21を施錠するとともに、スプリングS、コイルスプリングT及びボックススパナG等の工具・備品を車体の適所に収納する。所望により、これらの工具備品をタイヤチェーン収納装置10内に収納するようにしても良い。
【0049】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能である。
【0050】
例えば、上記実施例においては、牽引部材として架橋ロッド形の横架材を使用し、牽引部材作動装置として、無端ローラチェーン及びスプロケットを用いているが、牽引部材として、タイヤチェーンの端部を係止可能な索条、ボルト、ピン等の機械要素を使用し、牽引部材作動装置として、無端ベルト、プーリー、歯車等を備えた構成の作動装置を使用しても良い。
【0051】
また、上記実施例では、タイヤチェーン収納装置は、偏平した矩形輪郭のケーシングを備えた構造のものであるが、ケーシングの形状及び構造は、車体構造に適した任意の形状及び構造に設計することができる。所望により、タイヤチェーン収納装置を全体的に傾斜させ、或いは、支持板及び無端ローラチェーン等を全体的に傾斜させても良い。所望により、タイヤチェーンを上方に向けて転向する転向ローラをタイヤチェーン収納装置に設け、或いは、このような転向ローラをタイヤとタイヤチェーン収納装置との間に配設しても良い。
【0052】
更には、上記実施例では、タイヤチェーン端部の相互連結にスプリングを使用しているが、弾力的に変形可能な任意の弾性部材によってタイヤチェーン端部を相互連結しても良い。
【0053】
また、上記実施例では、車両の後輪に装着されるタイヤチェーンについて説明したが、本発明は、車両の前輪等に装着されるタイヤチェーンに対しても同様に適用し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、積雪時又は路面凍結時に車両のタイヤに装着されるタイヤチェーンを車体下部に常時格納するタイヤチェーン収納装置に適用される。本発明は又、安定した状態でタイヤチェーンをタイヤチェーン収納装置内に収納し、或いは、タイヤの回転駆動により、タイヤチェーン収納装置からタイヤチェーンを繰り出しながらタイヤチェーンをタイヤに装着するタイヤチェーン収納方法及びタイヤチェーン装着方法に適用される。
【0055】
本発明によれば、簡易又は簡素な構造の装置により、汎用のタイヤチェーンを車体下部に格納するとともに、タイヤチェーン装着時に比較的容易にタイヤチェーンを繰り出し、タイヤチェーンの収納時に比較的容易にタイヤチェーンを格納することができるので、本発明の実用的効果は顕著である。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
5 後輪
6 垂直支持具
8 水平支持具
9 支持枠
10 タイヤチェーン収納装置
11 ケーシング
20 後方カバー
21 錠
30 タイヤチェーン保持機構
31 水平枠材
32 ローラ
32a 拡径部
32b 縮径部
32c 支軸
33 支持板
33a 隆起部
33b 溝部
34 無端ローラチェーン
35 水平横架材
36 スプロケット
C タイヤチェーン
Ca サイドチェーン部分
Cb クロスチェーン部分
D エンドリング部分
E エンドフック部分
G ボックススパナ
F フック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部にタイヤチェーンを収納するタイヤチェーン収納装置において、
車体下部に支持され且つ車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシングと、
該ケーシング内に配設されたタイヤチェーン保持機構とを有し、
前記タイヤチェーン保持機構は、車長方向に延び且つ前記タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板と、前記タイヤチェーンのサイドチェーン部分の端部が係止され、該支持板の上方域及び下方域を周回する左右の軌道に沿って前記サイドチェーン部分の端部を牽引する牽引部材と、前記支持板を周回するように前記牽引部材を移動させる牽引部材作動装置とを備えており、
前記サイドチェーン部分が前記支持板を周回した状態で前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記タイヤチェーンを前記ケーシング内に格納するようにしたことを特徴とするタイヤチェーン収納装置。
【請求項2】
前記支持板は、前記サイドチェーン部分を移動可能に支持するように車長方向に延びる左右の溝部分と、前記タイヤチェーンのクロスチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように左右の溝部分の間に車幅方向に延在する平面部分とを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項3】
前記牽引部材作動装置は、前記支持板の両側に配置された無端ローラチェーンを有し、前記牽引部材は、左右の前記無端ローラチェーンに支持され且つ前記支持板の上方域又は下方域を車幅方向に横断する横架材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項4】
前記支持板の端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材を更に有し、該ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、該縮径部分は、前記サイドチェーン部分の端部を周方向に案内する周溝を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項5】
前記牽引部材作動装置は、前記支持板の両側に配置された無端ローラチェーンを有し、前記牽引部材は、左右の前記無端ローラチェーンに支持され且つ前記支持板を車幅方向に横断する横架材からなり、
前記支持板の端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材が設けられ、該ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、該縮径部分は、前記サイドチェーン部分の端部を周方向に案内する周溝を形成し、
前記無端ローラチェーンが巻き掛けられる前後のスプロケットが、前記ローラ部材を貫通する支軸に軸支されることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項6】
前側又は後側の前記スプロケットを前記支軸に一体的に連結するとともに、回転工具を係合可能な係合手段を前記支軸の端部に形成し、前記スプロケットの回転により、前記無端ローラチェーンをタイヤチェーン繰り出し方向又はタイヤチェーン収納方向に走行させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン収納方法において、
弾力的に伸縮可能な弾性部材によって前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記弾性部材の張力下に前記タイヤチェーンを支持板廻りに保持して前記ケーシング内に格納することを特徴とするタイヤチェーン収納方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン装着方法において、
前記サイドチェーン部分の両端部の連結を解放して前記タイヤチェーンの端部を前記ケーシング外に引き出し、前記サイドチェーン部分の端部をタイヤに係留し、前記タイヤの回転駆動により、前記ケーシングから前記タイヤチェーンを繰り出しながら該タイヤチェーンを前記タイヤに捲装することを特徴とするタイヤチェーン装着方法。
【請求項1】
車体下部にタイヤチェーンを収納するタイヤチェーン収納装置において、
車体下部に支持され且つ車輪に向かって開放可能な開口部を備えたケーシングと、
該ケーシング内に配設されたタイヤチェーン保持機構とを有し、
前記タイヤチェーン保持機構は、車長方向に延び且つ前記タイヤチェーンを移動可能に支持する上面を備えた支持板と、前記タイヤチェーンのサイドチェーン部分の端部が係止され、該支持板の上方域及び下方域を周回する左右の軌道に沿って前記サイドチェーン部分の端部を牽引する牽引部材と、前記支持板を周回するように前記牽引部材を移動させる牽引部材作動装置とを備えており、
前記サイドチェーン部分が前記支持板を周回した状態で前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記タイヤチェーンを前記ケーシング内に格納するようにしたことを特徴とするタイヤチェーン収納装置。
【請求項2】
前記支持板は、前記サイドチェーン部分を移動可能に支持するように車長方向に延びる左右の溝部分と、前記タイヤチェーンのクロスチェーン部分を車長方向に移動可能に支持するように左右の溝部分の間に車幅方向に延在する平面部分とを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項3】
前記牽引部材作動装置は、前記支持板の両側に配置された無端ローラチェーンを有し、前記牽引部材は、左右の前記無端ローラチェーンに支持され且つ前記支持板の上方域又は下方域を車幅方向に横断する横架材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項4】
前記支持板の端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材を更に有し、該ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、該縮径部分は、前記サイドチェーン部分の端部を周方向に案内する周溝を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項5】
前記牽引部材作動装置は、前記支持板の両側に配置された無端ローラチェーンを有し、前記牽引部材は、左右の前記無端ローラチェーンに支持され且つ前記支持板を車幅方向に横断する横架材からなり、
前記支持板の端部に隣接して配置され且つ車幅方向に延びるローラ部材が設けられ、該ローラ部材は、直径を縮小した縮径部分を両端部に有し、該縮径部分は、前記サイドチェーン部分の端部を周方向に案内する周溝を形成し、
前記無端ローラチェーンが巻き掛けられる前後のスプロケットが、前記ローラ部材を貫通する支軸に軸支されることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項6】
前側又は後側の前記スプロケットを前記支軸に一体的に連結するとともに、回転工具を係合可能な係合手段を前記支軸の端部に形成し、前記スプロケットの回転により、前記無端ローラチェーンをタイヤチェーン繰り出し方向又はタイヤチェーン収納方向に走行させるようにしたことを特徴とする請求項5に記載のタイヤチェーン収納装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン収納方法において、
弾力的に伸縮可能な弾性部材によって前記サイドチェーン部分の両端部を相互連結し、前記弾性部材の張力下に前記タイヤチェーンを支持板廻りに保持して前記ケーシング内に格納することを特徴とするタイヤチェーン収納方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のタイヤチェーン収納装置を用いたタイヤチェーン装着方法において、
前記サイドチェーン部分の両端部の連結を解放して前記タイヤチェーンの端部を前記ケーシング外に引き出し、前記サイドチェーン部分の端部をタイヤに係留し、前記タイヤの回転駆動により、前記ケーシングから前記タイヤチェーンを繰り出しながら該タイヤチェーンを前記タイヤに捲装することを特徴とするタイヤチェーン装着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−81890(P2012−81890A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230407(P2010−230407)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(500391844)有限会社佐藤商事 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(500391844)有限会社佐藤商事 (1)
【Fターム(参考)】
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