説明

タイヤ側面の照射方法

【課題】車両の走行時に、車両の外部からタイヤ側面を目視することで、その車両の走行速度を把握することができるタイヤ側面の照射方法を提供し、また、タイヤ側面に施した表示を、車両の走行時に動画のように認識させることができるタイヤ側面の照射方法を提供する。
【解決手段】車両の走行に際し、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に光を照射して、タイヤ側面に施した表示、例えば、会社名、ブランド名その他の標章や、装飾的な模様、図形等を、視覚により認識させる方法であって、タイヤ側面を、タイヤ半径方向内外に隣接する複数列の環状領域に区分けし、環状領域に、互いに同一の表示を、周方向に間隔をおいて複数個設けるとともに、それぞれの環状領域で、前記複数個の表示の、周方向の配置パターンを相互に異なるものとし、走行する車両に装着した前記タイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源により、前記タイヤ側面を、一定の周期で断続的に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空気入りタイヤもしくはソリッドタイヤとすることができるタイヤの側面を照射する方法に関するものであり、特に、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に施した表示を、車両の走行時に、視覚によって認識させる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
夜間であっても、車両に装着したタイヤに広告宣伝機能を発揮させ、また、装飾的な美観を付与すること等を目的として、特許文献1には、「タイヤーの側面に蓄光塗料で模様や文字を表示し、明るい場所と暗い場所では色が変わることを特徴とするタイヤー」が提案されており、この「タイヤー」によれば、「蓄光塗料で表示されたタイヤーは明らかな光を発して模様や製品名、会社名などを表示するから人目を引き注目を集めるから広告効果は極めて高い。また、薄暗いところや夜間の走行においては蓄光部分が円を描いて見えるので、タイヤー部分が光る円となって疾走し、装飾効果が極めて高い。」とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−96272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来技術では、車両の走行時に、回転するタイヤの側面に付した模様、文字等もまた、タイヤとともに回転することから、車両の走行速度のいかんによっては、タイヤ側面の模様や文字等を、車両の外部から視覚によって十分明確に認識することができなかった。
【0005】
このように、上記の従来技術では、車両の走行時に、車両外部から、タイヤ側面に施した表示を認識できないので、例えば、レーシングコースを走行する各車両のタイヤ側面に施した表示から、当該車両の走行速度を目視で把握することもできず、また、タイヤ側面の表示を、車両の走行時に動画のように認識させることもできなかった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を、車両の外部に設置した光源による、タイヤ側面の断続的な照射をもって解決するものであり、それの主たる目的は、車両の走行時に、車両の外部からタイヤ側面を目視することで、その車両の走行速度を把握することができるタイヤ側面の照射方法を提供することにあり、そして他の目的は、タイヤ側面に施した表示を、車両の走行時に動画のように認識させることができるタイヤ側面の照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のタイヤ側面の照射方法は、車両の走行に際し、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に光を照射して、タイヤ側面に施した表示、例えば、会社名、ブランド名その他の標章や、装飾的な模様、図形等を、視覚により認識させる方法であって、タイヤ側面を、タイヤ半径方向内外に隣接する複数列の環状領域に区分けし、環状領域に、互いに同一の表示を、周方向に間隔をおいて複数個設けるとともに、それぞれの環状領域で、前記複数個の表示の、周方向の配置パターンを相互に異なるものとし、走行する車両に装着した前記タイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源により、前記タイヤ側面を、一定の周期で断続的に照射するにある。
【0008】
また、この発明の他のタイヤ側面の照射方法は、車両の走行に際し、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に光を照射して、タイヤ側面に施した表示を、視覚により認識させる方法であって、タイヤ側面に、複数個の表示を、周方向に間隔をおいて設けるとともに、前記複数個の表示を、周方向の少なくとも一部で周方向の一方側に向かうに従って形態を変化させて配置し、走行する車両に装着した前記タイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源により、前記タイヤ側面を、タイヤの回転に同期させて断続的に照射するにある。
【発明の効果】
【0009】
この発明のタイヤ側面の照射方法によれば、タイヤ側面の、複数列の環状領域のそれぞれに、複数個の、互いに同一の表示を、周方向に間隔をおいて設けるとともに、それぞれの環状領域で、前記複数個の表示の、周方向の配置パターンを相互に異なるものとし、例えば夜間のように周囲が暗い状況下で走行する車両のタイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源によって、タイヤ側面を一定の周期で断続的に照射することにより、車両の走行速度に応じて、タイヤ側面の特定の環状領域のみで、その環状領域に設けた複数個の表示が周方向の同じ位置に静止しているように見えることになり、そして、走行速度が変化すると、他の環状領域のみで表示が静止しているように見えることになるので、表示が静止して見える環状領域の、タイヤ側面での位置や、例えば、環状領域の相互で相違させた、表示の色彩、大きさ等に基づき、車両の走行速度を目視で把握することが可能となる。
【0010】
また、この発明の他のタイヤ側面の照射方法によれば、タイヤ側面に、周方向に間隔をおいて設けた複数個の表示を、周方向の一方側に向かうに従って形態を変化させて配置し、例えば周囲が暗い状況下で走行する車両のタイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源によって、タイヤ側面を、タイヤの回転に同期させて断続的に照射することにより、タイヤ側面の、周方向の一方側に向かうに従って形態を変化させた複数個の表示のそれぞれが、周方向の同一位置で動いているように見えるので、タイヤ側面に施した表示を、車両の走行時に動画のように認識させることができる。
【0011】
そして、上記二つのいずれの照射方法によっても、タイヤ側面に施した表示を、車両の走行に際し、視覚によって認識させることができるので、タイヤ側面の表示を、会社名、ブランド名その他の標章や、装飾的な模様、図形等とすることで、タイヤによる広告宣伝機能、タイヤの装飾的美観等を向上させることもできる。
【0012】
なお、上記の照射方法では、車両の外部、例えば、サーキットのグランドスタンド等に光源を設置することから、車両側に光源を取り付けた場合の、車両の重量増加を防止することができる。また、車両の外部に設置した光源により、例えば、レースの際に、コースを走行する複数の車両のそれぞれのタイヤ側面を、同時に照射することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一の照射方法に用いることができるタイヤの側面図である。
【図2】図1のタイヤが所定の速度で回転した際の、タイヤ側面の見え方を示す図である。
【図3】図1のタイヤが所定の速度で回転した際の、タイヤ側面の見え方を示す図である。
【図4】図1のタイヤを装着した車両を走行させるサーキットを示すコース図である。
【図5】この発明の他の照射方法に用いることができるタイヤの側面図である。
【図6】図5のタイヤの側面に施した表示の、視覚によって認識される変化の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に示すところにおいて、図中1は、この発明の一の照射方法に用いることができるタイヤを、また、2は、文字、図面、記号等からなる標章、模様その他の表示を施す、タイヤ1の側面をそれぞれ示す。
【0015】
図1に示すところでは、タイヤ側面2を、タイヤ半径方向内外に隣接する、図に仮想線で示す三列の環状領域3a、3b、3cに区分けするとともに、それぞれの環状領域3a、3b、3cに、例えば、複数の文字を配列してなる標章4を、タイヤ周方向に相互に等しい間隔で複数個設ける。
ここで、それぞれの環状領域3a、3b、3cの相互で、標章4の配置パターンを相違させるため、例えば、図1に示すように、タイヤ半径方向の最内側に位置する内側環状領域3aには、六個の標章4を周方向に並べて設けるとともに、内側環状領域3aの半径方向外側に隣接する中央環状領域3bには、内側環状領域3aの標章4よりも文字サイズの小さい八個の標章4を設け、また、タイヤ半径方向の最外側に位置する外側環状領域3cには、さらに文字サイズの小さい標章4を十個設けることができる。
なお、このような標章は、例えば、印刷によるベタ塗り、彩色ゴム、塗料の塗布になる塗装もしくは、貼着されたシール等によって、タイヤ側面2に設けることができる。
【0016】
そして、図1に示すタイヤ1を用いて、この発明の一の照射方法を実施するに当たっては、例えば、リムに組付けたタイヤ1を、図示しない車両に装着するとともに、車両を夜間に走行させ、車両の走行時に、回転するタイヤ1の側面2を、車両の外部に設置した、これも図示しない照明装置によって一定間隔で断続的に照射する。
【0017】
このとき、車両の外部からタイヤ1の側面2を目視した場合、車両の特定の走行速度の下では、一定の周期で照射されるタイヤ側面2の内側環状領域3aに設けた各標章4が、図2(a)に示すように、周方向の配設位置を変えずに静止しているように見えるので、内側環状領域3aの標章4を明確に認識できる一方で、他の環状領域3b、3cに設けた標章4は、内側環状領域3aとは配置パターンが異なることから明確には認識できない。
そして、車両が加減速して、他の特定の走行速度になると、図2(b)や図3(a)に示すように、標章4を明確に認識できる環状領域が、中央環状領域3bや外側環状領域3cに変わることになり、また、車両の走行速度によっては、図3(b)に示すように、全ての環状領域3a、3b、3cの標章4が明確に認識できる場合もある。
【0018】
従って、この方法によれば、タイヤ側面2のそれぞれの環状領域3a、3b、3cで、標章4の配置パターンを相互に異なるものとしたことにより、タイヤ側面2を照射する周期を予め設定しておくことで、車両の外部からタイヤ側面2を目視した際に、視覚によって認識可能な環状領域が存在する、タイヤ側面2の位置等から、車両の走行速度を認識することができる。
【0019】
上述した照射方法をより詳細に説明すれば、例えば、外径955mmのタイヤ1を装着した車両が時速144km/hで走行していると仮定した場合、タイヤ1の外周長は3mで、車両の走行速度は秒速40m/secであるから、タイヤ1は1秒当たり13.3回転していることになる。
この速度で回転するタイヤ1の側面2を、夜間のように周囲が暗い状況下で、ストロボスコープ等の照明装置によって、40回/secの周期で断続的に照射した場合は、タイヤとともに回転する内側環状領域3aに等間隔に設けた六個の標章4が、照射の度に、タイヤの回転軸線の周りに120°回転して、内側環状領域3aの各標章4の、周方向の位置が、照射の度に一致することになるので、車両の外部からは、タイヤ側面2の、内側環状領域3aの標章4が、図2(a)に示すように、タイヤ周方向の同じ位置に静止しているように見える。
この一方で、内側環状領域3aとは配置パターンが異なる中央及び外側の環状領域3b、3cでは、照射の度に、標章4の周方向の位置がずれるので、車両外部から、それらの環状領域3b、3cの標章4を明確に認識することができない。
【0020】
そして、タイヤ側面2への照射の周期を維持しつつ、車両を加速させて、走行速度が162km/hに達した場合は、中央環状領域3bの、等間隔に八個設けた標章だけが、図2(b)に示すように、周方向の同じ位置に静止しているように見える。さらに、車両を172.8km/hに加速させた場合は、外側環状領域3cの十個の標章4だけが、図3(a)に示すように、周方向の同じ位置に静止して見えるようになる。なお、車両を216km/hに加速させると、三列すべての環状領域3a、3b、3cの標章4が、図3(b)に示すように、周方向の同じ位置に静止して見えるようになる。
【0021】
以上に述べた照射方法においては、タイヤ側面2の環状領域3a、3b、3cの相互で、標章4を構成する文字の色彩、濃淡、字体等を異なるものとすることができ、これにより、タイヤ側面2を目視することによる、車両の走行速度の把握が容易となる。
なお、図示は省略するが、環状領域3a、3b、3cに設ける表示の少なくとも一部を図形、記号等とすることもできる。
【0022】
ところで、上記の照射方法で、タイヤ側面2の照射に用いる照明装置を、図4に例示するようなサーキットのグランドスタンド5に設置したときは、この照明装置によって、コースを走行する複数の車両のタイヤ側面を同時に照射することが可能になり、それぞれの車両が、図1に示すような同一仕様のタイヤ1を装着している場合は、車両の外部からタイヤ側面2を目視した際に、走行速度の高い車両と低い車両とで、静止して見える環状領域3a、3b、3cの位置が異なるため、各車両の走行速度を目視で認識できる。
【0023】
図5に、この発明の他の照射方法に用いることができるタイヤ11を示す。
ここで、図示のタイヤ11では、それの側面12に、人体をデフォルメして手足を棒のように表現した16個の図形13を、タイヤ周方向に相互に等しい間隔をおいて設けるとともに、それらの図形13を、タイヤ周方向に、タイヤ回転軸線の周りに22.5°のピッチで配置する。そしてここでは、タイヤ周方向に並べた4個の図形ごとに、それぞれの形態を、タイヤ回転方向の一方側に向かうに従って次第に変化させている。
なお、図示は省略するが、タイヤ11の側面12に設ける表示の少なくとも一部を文字、記号等とすることもできる。
【0024】
ここにおいて、図5に示すタイヤ11を用いる、この発明の他の照射方法は、例えば、リム組み姿勢のタイヤ11を車両に装着した、図示しない車両を、夜間に走行させて、車両の走行時に、回転するタイヤ11の側面12を、車両の外部に設置した、図示しない照明装置によって、タイヤ11の回転に同期させて断続的に照射することにより行うことができる。
照明装置による照射の周期を調整して、例えば、タイヤ11が、回転軸線周りに22.5°回転する度に1回照射することにより、車両の外部からは、タイヤ側面12の、図形13を設けたそれぞれの位置で、図形13が、図6に白抜き矢印で示す順に変化しているように見えるので、人体を表現した図形13の、「手」に相当する部分が動いている動画を認識することができる。
【符号の説明】
【0025】
1、11 タイヤ
2、12 タイヤ側面
3a、3b、3c 環状領域
4 標章
5 グランドスタンド
13 図形


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に際し、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に光を照射して、タイヤ側面に施した表示を、視覚により認識させる方法であって、
タイヤ側面を、タイヤ半径方向内外に隣接する複数列の環状領域に区分けし、環状領域に、互いに同一の表示を、周方向に間隔をおいて複数個設けるとともに、それぞれの環状領域で、前記複数個の表示の、周方向の配置パターンを相互に異なるものとし、
走行する車両に装着した前記タイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源により、前記タイヤ側面を、一定の周期で断続的に照射するタイヤ側面の照射方法。
【請求項2】
車両の走行に際し、車両に装着されて回転駆動されるタイヤの側面に光を照射して、タイヤ側面に施した表示を、視覚により認識させる方法であって、
タイヤ側面に、複数個の表示を、周方向に間隔をおいて設けるとともに、前記複数個の表示を、周方向の少なくとも一部で周方向の一方側に向かうに従って形態を変化させて配置し、
走行する車両に装着した前記タイヤの回転時に、車両の外部に設置した光源により、前記タイヤ側面を、タイヤの回転に同期させて断続的に照射するタイヤ側面の照射方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−254706(P2012−254706A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128664(P2011−128664)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)