説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカと、下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーや省資源といった環境問題への取り組みに関心が高まっている。自動車用タイヤにおいても、タイヤの転がり抵抗を低減して、発熱を抑えたタイヤの開発が進められており、ゴム組成物にシリカを配合することにより、転がり抵抗の低減やウェットグリップ性能の向上が達成できる。
【0003】
しかし、シリカは、従来からタイヤ用ゴム組成物の補強用充填剤として使用されているカーボンブラックと比較して、補強性や耐摩耗性という点で劣る。窒素吸着比表面積の大きなシリカを用いることにより、補強性や耐摩耗性を改善できるが、窒素吸着比表面積の小さなシリカよりもシリカ粒子間の相互作用が強く凝集しやすいため、加工性が悪化してしまうという問題がある。
【0004】
通常、ゴム組成物にシリカを配合する場合には、シランカップリング剤をシリカと共に配合し、ムーニー粘度を低下させ、モジュラスの向上を図ることが行われる。しかし、窒素吸着比表面積が大きなシリカでは、シランカップリング剤を増量しても充分なシリカの分散性やムーニー粘度の低下が得られず、耐摩耗性の悪化を招くという問題がある。さらに、シランカップリング剤の増量に伴い、早期加硫を招くため、シランカップリング剤の増量によるシリカの分散性の向上には限度があった。
【0005】
このように、良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できるゴム組成物は、現在まで知られていなかった。
【0006】
特許文献1には、脂肪酸及び/又はその誘導体と、層状ケイ酸塩を配合することにより、硬度やモジュラスを向上できることが開示されている。しかし、良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上する点については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−112847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決し、良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できるタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカと、下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0010】
上記シリカのアグリゲートサイズが30nm以上であることが好ましい。
【0011】
上記タイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、シリカと相互作用を持つ官能基を有するジエン系ゴムの含有量が10〜90質量%であることが好ましい。
【0012】
上記タイヤ用ゴム組成物は、シリカ100質量部に対して、上記式(1)で表される化合物を0.1〜20質量部含むことが好ましい。
【0013】
上記タイヤ用ゴム組成物は、シリカ100質量部に対して、スルフィド系のシランカップリング剤を0.5〜20質量部含むことが好ましい。
【0014】
上記タイヤ用ゴム組成物は、トレッド用ゴム組成物として用いられることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカ(以下、微粒子シリカともいう)と、上記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物であるので、良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をバランス良く(特に、加工性、耐摩耗性を)向上できる。該ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に使用することにより、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能のバランス(特に、耐摩耗性)に優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】細孔分布曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカ(以下、微粒子シリカともいう)と、上記式(1)で表される化合物とを含む。
【0019】
微粒子シリカを使用すると、加工性が悪化する傾向がある。しかし、本発明では、微粒子シリカと、上記式(1)で表される化合物とを併用することにより、微粒子シリカを使用した場合であっても良好な加工性が得られ、更に、優れた転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能(特に、耐摩耗性)が得られる。これは、上記式(1)で表される化合物が、シリカ表面に選択的に吸着し、シリカ粒子同士の凝集力を弱めてシリカの分散を促進できるためと考えられる。
【0020】
本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、BR、SBRが好ましい。
【0021】
BRとしては特に限定されず、例えば、高シス含有量のBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBRなどを使用できる。なかでも、シス含有量が95質量%以上のBRが好ましい。
【0022】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性や破壊性能が得られないおそれがある。該BRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。70質量%を超えると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。
【0023】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。なかでも、S−SBRが好ましい。
【0024】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。該SBRの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、充分な耐摩耗性や破壊性能が得られないおそれがある。
【0025】
また、本発明の効果(特に、加工性の改善効果)がより好適に得られることから、上記ジエン系ゴムがシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムであることが好ましい。
【0026】
変性ジエン系ゴムとしては、例えば、上記ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。なお、上記変性剤としては、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。
【0027】
上記官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能の向上効果が高いという理由から、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基)、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1〜6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1〜6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0028】
上記官能基が導入されるジエン系ゴム(変性ジエン系ゴムの骨格を構成するポリマー)としては、IR、BR、SBRが好ましく、SBRがより好ましい。
【0029】
変性剤による重合体の変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、重合体と変性剤とを接触させればよく、調製した重合体溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0030】
また、主鎖変性ジエン系ゴムは、従来公知の手法を用いて重合できる。例えば、重合に使用するモノマーの一部として、上記官能基を有するモノマー(例えば、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン等)を使用して重合することにより得られる。また、主鎖末端変性ジエン系ゴムは、例えば、主鎖変性ジエン系ゴムと変性剤とを接触させることにより得られる。
【0031】
ゴム成分100質量%中の変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。10質量%未満であると、充分な転がり抵抗特性が得られないおそれがある。該変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。90質量%を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0032】
本発明では、CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカ(以下、微粒子シリカともいう)が使用される。このような微粒子シリカをゴム中に良好に分散させることによって、優れた耐摩耗性、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能が得られ、また、転がり抵抗を低くできる。
【0033】
微粒子シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積は、好ましくは190m/g以上、より好ましくは195m/g以上、更に好ましくは197m/g以上である。CTAB比表面積が180m/g未満であると、機械的強度、耐摩耗性の充分な向上が得られにくくなる傾向がある。該CTAB比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは250m/g以下である。CTAB比表面積が600m/gを超えると、分散性に劣り、凝集してしまうため、加工性や物性が低下する傾向がある。
なお、CTAB比表面積は、ASTM D3765−92に準拠して測定される。
【0034】
微粒子シリカのBET比表面積は、好ましくは190m/g以上、より好ましくは195m/g以上、更に好ましくは210m/g以上である。BET比表面積が185m/g未満であると、機械的強度、耐摩耗性の充分な向上が得られにくくなる傾向がある。該BET比表面積は、好ましくは600m/g以下、より好ましくは300m/g以下、更に好ましくは260m/g以下である。BET比表面積が600m/gを超えると、分散性に劣り、凝集してしまうため、加工性や物性が低下する傾向がある。
なお、シリカのBET比表面積は、ASTM D3037−81に準じて測定される。
【0035】
微粒子シリカのアグリゲートサイズは、30nm以上、好ましくは35nm以上、より好ましくは40nm以上、更に好ましくは45nm以上、特に好ましくは50nm以上、最も好ましくは55nm以上、より最も好ましくは60nm以上である。また、該アグリゲートサイズは、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは70nm以下、特に好ましくは65nm以下である。このようなアグリゲートサイズを有することにより、良好な分散性を有しながら、優れた補強性、耐摩耗性を与えることができる。
【0036】
アグリゲートサイズは、凝集体径又は最大頻度ストークス相当径とも呼ばれているものであり、複数の一次粒子が連なって構成されるシリカの凝集体を一つの粒子と見なした場合の粒子径に相当するものである。アグリゲートサイズは、例えば、BI−XDC(Brookhaven Instruments Corporation製)等のディスク遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて測定できる。
【0037】
具体的には、BI−XDCを用いて以下の方法にて測定できる。
3.2gのシリカ及び40mLの脱イオン水を50mLのトールビーカーに添加し、シリカ懸濁液を含有するビーカーを氷充填晶析装置内に置く。ビーカーを超音波プローブ(1500ワットの1.9cmVIBRACELL超音波プローブ(バイオブロック社製、最大出力の60%で使用))を使用して懸濁液を8分間砕解し、サンプルを調製する。サンプル15mLをディスクに導入し、撹拌するとともに、固定モード、分析時間120分、密度2.1の条件下で測定する。
装置の記録器において、16質量%、50質量%(又は中央値)及び84質量%の通過直径の値、及びモードの値を記録する。(累積粒度曲線の導関数は、分布曲線にモードと呼ばれるその最大の横座標を与える。)
【0038】
このディスク遠心沈降式粒度分析法を使用して、シリカを水中に超音波砕解によって分散させた後に、Dとして表される粒子(凝集体)の重量平均径(アグリゲートサイズ)を測定できる。分析(120分間の沈降)後に、粒度の重量分布を粒度分布測定装置によって算出する。Dとして表される粒度の重量平均径は、以下の式によって算出される。
【数1】

(式中、mは、Dのクラスにおける粒子の全質量である。)
【0039】
微粒子シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは22nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは14nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。このような小さい平均一次粒子径を有しているものの、上記のアグリゲートサイズを有するカーボンブラックのような構造により、シリカの分散性をより改善でき、補強性、耐摩耗性を更に改善できる。
なお、微粒子シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0040】
微粒子シリカのD50は、好ましくは7.0μm以下、より好ましくは5.5μm以下、更に好ましくは4.5μm以下である。7.0μmを超えると、シリカの分散性がかえって悪くなっていることを示す。該微粒子シリカのD50は、好ましくは2.0μm以上、より好ましくは2.5μm以上、更に好ましくは3.0μm以上である。2.0μm未満であると、アグリゲートサイズも小さくなり、微粒子シリカとしては充分な分散性を得にくくなる傾向がある。
ここで、D50は、微粒子シリカの中央直径であって粒子の50質量%がその中央直径よりも小さい。
【0041】
また、微粒子シリカは、粒子径が18μmより大きいものの割合が6質量%以下が好ましく、4質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下が更に好ましい。これにより、シリカの良好な分散性が得られ、所望の性能が得られる。
なお、微粒子シリカのD50、所定の粒子径を有するシリカの割合は、以下の方法により測定される。
【0042】
凝集体の凝集を予め超音波砕解されたシリカの懸濁液について、粒度測定(レーザー回折を使用)を実施することによって評価する。この方法では、シリカの砕解性(0.1〜数10ミクロンのシリカの砕解)が測定される。超音波砕解を、19mmの直径のプローブを装備したバイオブロック社製VIBRACELL音波発生器(600W)(最大出力の80%で使用)を使用して行う。粒度測定は、モールバーンマスターサイザー2000粒度分析器でのレーザー回折によって行う。
【0043】
具体的には、以下の方法により測定される。
1グラムのシリカをピルボックス(高さ6cm及び直径4cm)中で秤量し、脱イオン水を添加して質量を50グラムにし、2%のシリカを含有する水性懸濁液(これは2分間の磁気撹拌によって均質化される)を調製する。次いで、超音波砕解を420秒間実施し、更に、均質化された懸濁液の全てが粒度分析器の容器に導入された後に、粒度測定を行う。
【0044】
微粒子シリカの細孔容積の細孔分布幅Wは、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.3以上、最も好ましくは1.5以上である。また、該細孔分布幅Wは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.0以下である。このようなブロードなポーラスの分布により、シリカの分散性を改善でき、所望の性能が得られる。
なお、シリカの細孔容積の細孔分布幅Wは、以下の方法により測定できる。
【0045】
微粒子シリカの細孔容積は、水銀ポロシメトリーによって測定される。シリカのサンプルをオーブン中で200℃で2時間予備乾燥させ、次いでオーブンから取り出した後、5分以内に試験容器内に置き、真空にする。細孔直径(AUTOPORE III 9420 粉体工学用ポロシメーター)は、ウォッシュバーンの式によって140°の接触角及び484ダイン/cm(又はN/m)の表面張力γで算出される。
【0046】
細孔分布幅Wは、細孔直径(nm)及び細孔容量(mL/g)の関数で示される図1のような細孔分布曲線によって求めることができる。即ち、細孔容量のピーク値Ys(mL/g)を与える直径Xs(nm)の値を記録し、次いで、Y=Ys/2の直線をプロットし、この直線が細孔分布曲線と交差する点a及びbを求める。そして、点a及びbの横座標(nm)をそれぞれXa及びXbとしたとき(Xa>Xb)、細孔分布幅Wは、(Xa−Xb)/Xsに相当する。
【0047】
微粒子シリカの細孔分布曲線中の細孔容量のピーク値Ysを与える直径Xs(nm)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、更に好ましくは18nm以上、特に好ましくは20nm以上であり、また、好ましくは60nm以下、より好ましくは35nm以下、更に好ましくは28nm以下、特に好ましくは25nm以下である。上記範囲内であれば、分散性と補強性に優れた微粒子シリカを得ることができる。
【0048】
上記微粒子シリカの配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは50質量部以上である。5質量部未満であると、充分な補強性、機械的強度、耐摩耗性が得られないおそれがある。該微粒子シリカの配合量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪化するとともに、良好な分散性を確保するのが困難となるおそれがある。
【0049】
本発明のゴム組成物では、上記微粒子シリカ以外のシリカを含んでもよい。この場合、シリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。また、該合計含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。下限未満の場合や上限を超える場合は、前述の微粒子シリカの配合量と同様の傾向がある。
【0050】
本発明では、下記式(1)で表される化合物が使用される。
【化3】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基(−OH)又はカルボキシル基(−COOH)で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化4】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基(−OH)を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【0051】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0052】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20、更に好ましくは炭素数15〜20)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0053】
の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0054】
としては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基(−OH)が好ましく、上記アルキル基がより好ましい。
【0055】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜25、より好ましくは炭素数1〜20、更に好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0056】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0057】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜25、より好ましくは炭素数2〜20、更に好ましくは炭素数2〜10、特に好ましくは炭素数2〜5)のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。
【0058】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0059】
及びRとしては、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、上記式(2)で表される基が好ましく、上記アルキル基、水酸基若しくはカルボキシル基で置換された上記アルキル基がより好ましい。
【0060】
nは、0〜8の整数を表すが、より好適に加工性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、nは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0061】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
【0062】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルキル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0063】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜20)のアルケニル基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0064】
の分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜10)のアリール基としては、例えば、上記Rの分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0065】
としては、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0066】
pは、0〜10の整数を表すが、より好適に加工性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、グリップ性能をバランス良く向上できるという理由から、pは0〜3であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0067】
上記式(1)で表される化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、オクタデカンアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)オクタデカンアミド、ε−カプロラクタム、サルコシン、N−ラウロイルサルコシン、N−オクタデシルサルコシン、N,N’−エチレンビスオクタデカンアミド、N−(1−オキソオクタデシル)サルコシンなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
上記式(1)で表される化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは2質量部以上である。0.1質量部未満であると、上記式(1)で表される化合物を配合したことにより得られる効果を充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは6質量部以下である。20質量部を超えると、シリカ表面を覆う上記式(1)で表される化合物の量が多くなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、「シリカ100質量部に対して」とは、上記微粒子シリカ以外のシリカを含む場合には、「シリカの合計(シリカの合計含有量)100質量部に対して」という意味である。
【0069】
本発明では、上記式(1)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合することが好ましい。これにより、より好適にシリカの分散性を向上できる。
【0070】
上記式(1)で表される化合物に加えて、更にアミノ酸誘導体を配合する場合には、上記式(1)で表される化合物とアミノ酸誘導体との混合物として市販されているSchill+Seilacher社製のHT254等を使用してもよい。
【0071】
上記式(1)で表される化合物とアミノ酸誘導体の合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.7質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上である。0.7質量部未満であると、充分なシリカの分散性を確保できないおそれがある。また、該合計含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは25質量部以下、より好ましくは11質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。25質量部を超えると、シリカ表面を覆う上記式(1)で表される化合物の量が多くなり、低燃費性が悪化するおそれがある。
【0072】
本発明では、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、ゴム工業において、従来からシリカと併用される任意のシランカップリング剤を使用することができ、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシランなどのクロロ系等が挙げられる。なかでも、スルフィド系のシランカップリング剤が好ましく、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
【0073】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは7質量部以上である。0.5質量部未満では、充分なシリカの分散性を確保できないおそれがある。また、該シランカップリング剤の含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、混合時のミキサーのせん断力が低下し、充分なシリカの分散性が確保できず、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
本発明では、微粒子シリカと共に、上記式(1)で表される化合物を配合しているため、シランカップリング剤を増量することなく、シリカの良好な分散性や、低いムーニー粘度を確保でき、シランカップリング剤の含有量を上記量とすることができるので、耐摩耗性の低下を抑制でき、良好な加工性を有し、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をよりバランス良く(特に、加工性、耐摩耗性を)向上できる。
【0074】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック等の補強用充填剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合することができる。
【0075】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0076】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、TBBSが好ましく、TBBSとN,N’−ジフェニルグアニジンを併用することがより好ましい。
【0077】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサー、密閉式混練機などのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0078】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド、サイドウォール)に好適に使用できる。
【0079】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド、サイドウォール)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0080】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、バス用タイヤ、トラック用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例】
【0081】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0082】
以下、製造例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0083】
(製造例)(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムの調製)
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、変性剤を0.15mmol加えて、0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により変性共重合体(主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム)を得た。得られた変性共重合体の重量平均分子量は500000、アルコキシスチレン成分含有量は1.2質量%、スチレン成分含有量は19質量%であった。
【0084】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含有量:97質量%)
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS116(S−SBR、ビニル含有量:60質量%、スチレン含有量:20質量%)
変性SBR:上記製造例で調製した主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム
シリカA:Rhodia社製のZeosil Z1165MP(CTAB比表面積155m/g、BET比表面積:160m/g、平均一次粒子径:17nm、アグリゲートサイズ:50nm、D50:2.5μm、細孔分布幅W:0.50)
シリカB:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(CTAB比表面積200m/g、BET比表面積:220m/g、平均一次粒子径:10nm、アグリゲートサイズ:65nm、D50:4.2μm、18μmを超える粒子の割合:1.0質量%、細孔分布幅W:1.57、細孔分布曲線中の細孔容量ピーク値を与える直径Xs:21.9nm)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
化合物A:東京化成工業(株)製のN,N−ジメチルホルムアミド(上記式(1)で表される化合物)
化合物B:東京化成工業(株)製のN,N’−エチレンビスオクタデカンアミド(上記式(1)で表される化合物)
化合物C:東京化成工業(株)製のN−オクタデシルサルコシン(上記式(1)で表される化合物)
化合物D:東京化成工業(株)製のN−ラウロイルサルコシン(上記式(1)で表される化合物)
化合物E:Schill+Seilacher社製のHT254(脂肪酸アミド(上記式(1)で表される化合物(N−(1−オキソオクタデシル)サルコシン))とアミノ酸誘導体の混合物、脂肪酸アミドの含有率:25〜50質量%)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤A:大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤B:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0085】
実施例1〜10及び比較例1〜4
表1,2に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、170℃で10分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
【0086】
得られた未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物、試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1,2に示す。
【0087】
(ムーニー粘度の測定)
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。比較例1または比較例3のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性(混練加工性)に優れる。
(ムー二粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(実施例1〜6、比較例2のML1+4)×100
(ムー二粘度指数)=(比較例3のML1+4)/(実施例7〜10、比較例4のML1+4)×100
【0088】
(ゴム肌)
得られた未加硫ゴム組成物を押出し成形した直後のシート性状を目視により以下の基準で評価した。シート性状が良好なほど、加工性(押出し加工性)に優れることを示す。
◎:シート形状が非常に良好
○:シート形状が良好
×:シート形状がボロボロ
【0089】
(転がり抵抗)
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(各加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1または比較例3の損失正接tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、転がり抵抗特性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(実施例1〜6、比較例2のtanδ)×100
(転がり抵抗指数)=(比較例3のtanδ)/(実施例7〜10、比較例4のtanδ)×100
【0090】
(摩耗試験)
得られた加硫ゴム組成物について、ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1または比較例3のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合(加硫物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)/(実施例1〜6、比較例2の容積損失量)×100
(ランボーン摩耗指数)=(比較例3の容積損失量)/(実施例7〜10、比較例4の容積損失量)×100
【0091】
(ウェットグリップ性能(1))
得られた加硫ゴム組成物について、(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片(加硫ゴム組成物)を用い、速度20km/h、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。結果は比較例1、3の結果を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0092】
(ウェットグリップ性能(2))
水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1、3の結果を100として、それぞれ指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1の結果より、微粒子シリカを配合した比較例2は、比較例1と比べて加工性が大幅に悪化した。また、耐摩耗性も同等であった。一方、微粒子シリカに上記式(1)で表される化合物を配合した実施例1〜6は、比較例1に比べて、加工性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能(特に、加工性、耐摩耗性)が向上した。
【0096】
表2の結果より、ゴム成分として、変性ジエン系ゴム(変性SBR)を使用した場合においても、微粒子シリカを配合した比較例4は、比較例3と比べて加工性が大幅に悪化した。一方、微粒子シリカに上記式(1)で表される化合物を配合した実施例7〜10は、比較例3に比べて、加工性、転がり抵抗特性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能(特に、加工性、耐摩耗性)が向上した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTAB比表面積が180m/g以上、BET比表面積が185m/g以上のシリカと、
下記式(1)で表される化合物とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は下記式(2)で表される基を表し、該アルキル基、該アルケニル基、該アルキニル基、該アリール基が有する水素原子が水酸基又はカルボキシル基で置換されていてもよい。RとR、RとR、又はRとRとで環構造を形成してもよい。nは、0〜8の整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。Rは、水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数6〜30のアリール基、又は水酸基を表す。pは、0〜10の整数を表す。)
【請求項2】
前記シリカのアグリゲートサイズが30nm以上である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分100質量%中、シリカと相互作用を持つ官能基を有するジエン系ゴムの含有量が10〜90質量%である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
シリカ100質量部に対して、前記式(1)で表される化合物を0.1〜20質量部含む請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
シリカ100質量部に対して、スルフィド系のシランカップリング剤を0.5〜20質量部含む請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−121966(P2012−121966A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272753(P2010−272753)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】