説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】ウエットグリップ性能および耐摩耗性に優れたタイヤ用ゴム組成物。
【解決手段】補強用充填剤として25℃、相対湿度20%において、15重量%以上の吸湿量となる充填剤をゴム成分100部に対して、1〜30部配合したゴム組成物である。特に、近年開発された低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体を充填剤として使用するとウエットグリップ性能に優れ、耐摩耗性の良いゴム組成物が得られる。さらに、含硫黄シランカップリング剤及びマレイン酸モノエステルを加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用として好適なゴム組成物に関し、さらに詳しくは、補強用の充填剤として吸湿性能の高い充填剤を使用したウエットグリップ性能および耐摩耗性に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性への関心の高まりに伴い、低燃費性のみならず、操縦安定性についても要求が高まってきた。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗を減らした低発熱性ならびに湿潤路面及び乾燥路面での操縦安定性、耐摩耗性を高度に満足するタイヤが求められてきている。このような要求に対応するため、補強用充填剤を改良すること及びゴム成分を改良することが行われている。
従来から、ゴム補強用充填剤としては、カーボンブラックが使用されている。これは、カーボンブラックがゴム組成物に高い耐摩耗性を付与し得るからであるが、カーボンブラックの単独使用でウエットグリップ性能、耐摩耗性、低燃費が高いレベルでバランスしたゴム組成物を得ることは困難であり、その改良法としてカーボンブラックの代わりにシリカを配合することが行われている。しかしながら、シリカを充填剤として用いた場合、カーボンブラックの配合量が相対的に減少するため、ゴム組成物の破壊強度、耐摩耗性が低下することは免れないことが分かっている。また、シリカはゴムへの分散性が悪く、混練りを行う際のゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、押出しなどの加工性に劣るという問題がある。
【0003】
特許文献1〜3には、耐摩耗性を低下させることなく低燃費性およびウエットグリップ性能に優れるゴム組成物を得る目的で、ゴム成分、kM1・xSiOy・zH2O(式中、M1はAl、Mg、TiおよびCaからなる群より選ばれた少なくとも1つの金属、または、該金属の酸化物もしくは水酸化物であり、kは1〜5の整数、xは0〜10の整数、yは2〜5の整数、およびzは0〜10の整数である)で表される無機化合物粉体、カーボンブラック、シリカ、シランカップリング剤を含むタイヤトレッド用ゴム組成物が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されるゴム組成物は、ウエットグリップ性能および燃費の改善効果を十分得るためには無機化合物粉体を比較的多く配合する必要があり、その場合、耐摩耗性が低下し易い傾向があるため、ウエットグリップ性能、耐摩耗性および低燃費性のバランスにさらに優れたタイヤ用ゴム組成物は得られていない。
【0005】
さらに、低燃費性と湿潤路面でのグリップ性及び耐摩耗性を向上させるため、微細構造を有するアロフェン及び/又はイモゴライトを含有するアルミニウム珪酸塩をカーボンブラック及び/又はシリカとともにゴム組成物中に含有させることが提案されている。アロフェンは平均直径2〜20nmの中空球状の、イモゴライトは平均外径1〜5nm、内径0.5〜2.0nm、長さ30nm〜5μmの中空管状の粘土鉱物であり、ゴム組成物中でナノコンポジットを形成し、湿潤性能はよくなるものの、耐摩耗性に問題がある(特許文献4)。特許文献5では、平均粒径0.1〜500μm、平均孔径2nm未満という細孔を有する結晶性ゼオライトを配合して氷上で水分子を吸着して氷上摩擦性能を向上させているが、耐摩耗性との両立ということでは十分でない。
【0006】
また、特許文献6、7では、吸湿性の多孔質無機充填剤を配合することによりスチールコードとゴムとの接着性を向上させること、特許文献8には吸湿性の多孔質無機充填剤を配合したゴム組成物をベルト層に使用して外部からの水分の浸入を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−338750号公報
【特許文献2】特開2003−55503号公報
【特許文献3】特開2005−213353号公報
【特許文献4】特開2007−182520号公報
【特許文献5】特開2000−44732号公報
【特許文献6】特開2000−7838号公報
【特許文献7】特開2002−13083号公報
【特許文献8】特開2000−79807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、補強用充填剤としてとして吸湿性能の高い充填剤を使用したウエットグリップ性能および耐摩耗性に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、補強用充填剤として25℃、相対湿度20%において、15質量%以上の吸湿量となる吸着剤をゴム成分100部に対して、1〜30部配合したゴム組成物である。特に、近年開発された低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体を充填剤として使用するとウエットグリップ性能に優れ、耐摩耗性の良いタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウエットグリップ性能および耐摩耗性に優れたタイヤ用ゴム組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分と吸湿性能の高い充填剤を少なくとも含有する。具体的には充填剤の吸湿性能は、25℃、相対湿度20%において、15質量%以上の吸湿量、さらに相対湿度60%において、40質量%以上であることが好ましい。相対湿度20%において、吸湿量15質量%未満では、十分なウエットグリップ性能が得られない。
【0012】
本発明のゴム組成物に使用する補強用充填剤は、25℃、相対湿度20%において、15質量%以上の吸湿量を有するものであればよく、特に制限はないが、例えば、合成チューブ状アルミニウムケイ酸塩および低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体などを好ましく挙げることができる。これらは単独でもよく、2種以上組合せて用いてもよい。
ここで、合成チューブ状アルミニウムケイ酸塩は、無機ケイ素化合物溶液と無機アルミニウム溶液を所定のケイ素/アルミニウム比率になるよう混合した溶液中でシリカ・アルミナ系前駆体を形成した後、共存イオンを取り除いて、加熱熟成後生成、析出する固形分を回収、洗浄して得られるチューブ状アルミニウムケイ酸塩で、例えば特開2001−64010に製造方法が開示されている。
【0013】
次に、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体の非晶質アルミニウムケイ酸塩は水和ケイ酸アルミニウムであり、低結晶性層状粘土鉱物は、水酸化アルミニウムからなる単層または数層程度のギブサイトあるいは層方向の積層をほとんど示さない低結晶性の層状粘土鉱物である。この複合体は、無機ケイ素化合物溶液と無機アルミニウム溶液を所定のケイ素/アルミニウム比率になるよう混合し、pH調整したあと脱塩処理したものを10℃以上で加熱することにより得られ、相対湿度20%で15質量%以上、60%で40質量%以上の水分を吸着する性能を有する高吸着性物質で、例えばWO2009/084632に開示されている。市販品を購入することもできる。
【0014】
シリカゲルにはA型とB型があるが、このうち、B型シリカゲルは相対湿度80%以上では低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体と同等の水分吸着能を有するが、相対湿度20%では5%程度である。
本発明は、この低湿度での水分吸着量の違いにより、ゴムに配合した場合、低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体ではシリカゲルに比べ、ウエットグリップ性に優れたタイヤ性能が現されることを見出したものである。
【0015】
これらの吸湿性充填剤の配合量は、ゴム成分100質部に対して、1〜30質量部であり、好ましくは、ゴム成分100質量部に対して、5〜20質量部である。充填剤の配合量がこの範囲であれば、未加硫粘度が上昇することにより加工性が悪くなることなく、十分なウエットグリップ性能を有するゴム組成物が得られる。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、充填剤として上記吸湿性充填剤の外、カーボンブラック(C/B)、シリカを含み、さらに、その他ゴム組成物に使用される充填剤を併せて使用することができる。
充填剤として用いられるカーボンブラックとしては特に制限はなく、例えばSRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが用いられ、窒素吸着比表面積(NSA)が30m/g以上、かつジブチルフタレート吸油量(DBP)が90ml/100g以上のカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを用いることにより、グリップ性能および耐破壊特性の改良効果は大きくなるが、耐摩耗性に優れるHAF、ISAF、SAFが特に好ましい。
カーボンブラックは、1種用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
シリカは、窒素吸着比表面積(NSA)が100〜270m/gの範囲にあるものが好ましく、特に好ましくは170〜270m/gであるものが用いられる。この比表面積が100m/g未満では耐摩耗性が不十分になる虞があり、一方、270m/gを超えると分散不良を起こし、低発熱性、耐摩耗性及び作業性が著しく下がる原因となる。上記の窒素吸着比表面積(NSA)は、300℃で1時間乾燥後、ASTM D4820−93に準拠して測定した値である。
このようなシリカとして、沈降非晶質シリカ、湿潤シリカ(水和した珪酸)、乾燥シリカ(無水珪酸)、ヒュームド・シリカ、珪酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらのうち、沈降、非晶質、湿潤処理(wet−process)の水和したシリカが好ましい。C/Bとシリカとを併用する場合の配合比は、配合目的に応じて任意に変化させることができる。
本発明で用いるシリカの使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して、30〜120質量部、より好ましくは30〜100質量部である。また、シリカは、吸湿性充填剤との比率が、吸湿性充填剤/シリカで0.12〜0.18の範囲で配合する。
【0018】
カーボンブラックの使用量は、好ましくはゴム成分100質量部に対して80質量部以下で、カーボンブラックとシリカを合わせた総配合量が120質量部以下であることが好ましい。総配合量をゴム成分100質量部に対して120質量部以下とすることで、耐摩耗性を十分に向上させることができる。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、シリカと共にシランカップリング剤を使用する。シランカップリング剤は、シリカに残存するシラノール基とゴム成分ポリマーと反応して、シリカとゴムとの結合橋として作用し補強相を形成するとともに、分散性を向上させる。
該シランカップリング剤としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらの中でも、補強性改善効果の観点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドが好ましく、市販品としてMomentive Performance Materials社製、商標「NXT Low−V Silane」、「NXT Ultra Low−V Silane」、「NXT-Z」(3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン)やデクッサ社製Si69、Si75等が使用できる。
【0020】
本発明においては、シランカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、ゴム成分100質量部に対して、シランカップリング剤総量で1〜25質量部の範囲で選定される。当該シランカップリング剤の配合量が上記範囲にあれば、前記本発明の効果が充分に発揮される。好ましい配合量は2〜15質量部の範囲である。
【0021】
本発明に使用されるゴム成分は、スチレン−ブタジエンゴム、シス−1,4−ポリイソプレン、低シス−1,4−ポリブタジエン、高シス−1,4−ポリブタジエン、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、天然ゴム等が挙げられ、なかでもジエン系ゴム、特にスチレン−ブタジエンゴムが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。これらのゴム成分は、1種類又は2種類以上組合わせてもよい。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、作業性をよくするため、マレイン酸モノエステルまたはアミン化合物を添加する。
マレイン酸モノエステルまたはアミン化合物の添加量は、ゴム成分100質量部に対して1〜8質量部、好ましくは3〜5質量部である。1質量部未満では、低粘度効果が得られず、8質量部を超えると耐摩耗性が悪化する。
マレイン酸モノエステルは、無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン、特にポリオキシプロピレン誘導体とのモノエステルが望ましい。ポリオキシアルキレン基を有することによってゴムとの相溶性が良好となる。
【0023】
無水マレイン酸と(ポリ)オキシアルキレン誘導体とのモノエステルは、無水マレイン酸と、(ポリ)オキシアルキレン誘導体とを反応させることで得られる。(ポリ)オキシアルキレン誘導体としては、例えばポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンミリスチルエーテル、ポリオキシプロピレンデシルエーテル、ポリオキシプロピレンオクチルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル等のポリオキシプロピレン脂肪族エーテル;ポリオキシプロピレンベンジルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンベンジル化フェニルエーテル等のポリオキシプロピレン芳香族エーテル等が挙げられ、これらの中でも、ポリオキシプロピレン脂肪族エーテルが好ましく、ポリオキシプロピレンラウリルエ−テルが特に好ましい。
【0024】
また、オキシアルキレン単位の重合度が3〜7、特に5で、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が8〜18であるのが更に好ましい。具体的には、ポリオキシアルキレンをPOA(r)と略し、rを各々平均重合度とすれば、POA(3)オクチルエーテル、POA(4)2-エチルヘキシルエーテル、POA(3)デシルエーテル、POA(5)デシルエーテル、POA(3)ラウリルエーテル、POA(5)ラウリルエーテル、POA(8)ラウリルエーテル、POA(1)ステアリルエーテル、POA(5)ミリスチルエーテル等が挙げられる。
マレイン酸モノエステルは、単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のゴム組成物に添加するアミン化合物としては、特に制限はなく、例えばN,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン重合体、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンとの反応物等のアミン−ケトン系化合物、フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α、α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p−(p−トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェレンジアミン、N−フェニル−N’−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−p−フェレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミンが好ましい。これらのアミン化合物は1種単独で用いても良く、2種以上併用してもよい。
【0026】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる配合剤、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を含有させることができる。
【0027】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、通常行なわれる方法により、吸湿性充填剤を単独でゴム成分に添加し、他の配合成分と共にバンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、タイヤ用ゴムとして用いられる。
【0028】
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、通常の方法によって製造される。すなわち、各種配合剤を含有させたゴム組成物が未加硫の段階でタイヤに加工され、タイヤ成型機上で通常の方法により貼り付け成型され、生タイヤが成型される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0029】
上記のゴム組成物をトレッド部材に用いた空気入りタイヤは、耐摩耗性が高く、湿潤面での制御性、操縦安定性に優れている。このタイヤに充填する気体としては、空気の外、窒素等の不活性ガスが使用できる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例、比較例において、未加硫ゴム組成物の粘度及びタイヤのウエット性能、耐摩耗性を下記の方法により測定、評価した。
【0031】
(1)未加硫粘度
JIS K6300−1994に従い、Lローターを使用して、予熱1分、ローター作動時間4分、温度130℃の条件でムーニー粘度(ML1+4、130℃)を測定し、比較例1を100として指数で表示した。この数値が大きい程、未加硫粘度が低く作業性が良好である。
(2)ウエット性能
各ゴム組成物をトレッドゴムとして使用し、タイヤサイズ195/60R15の空気入りタイヤを試作した。試作したタイヤを排気量2000ccの乗用車の四輪に装着し、テストコースのウエット評価路にてブレーキ停止距離を測定した。測定値を比較例1を100として指数で表示した。この数値が大きい程、ウエット性能が良好である。
(3)耐摩耗性
各ゴム組成物をトレッドゴムとして使用し、タイヤサイズ195/60R15の空気入りタイヤを試作した。試作したタイヤを排気量2000ccの乗用車の四輪に装着し、路面を1万キロメートル走行後、残溝量を測定した。測定値を比較例1を100として指数表示した。指数が大きい程、耐摩耗性が良好であることを示す。
【0032】
実施例1〜4及び比較例1〜9
表1に従う配合処方のゴム組成物をバンバリーミキサーにて混練して調製した。
得られたゴム組成物を上記の方法で測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
注*1 JSR社製、E−SBR、#1723
*2 N134(NSA:146m/g)
*3 日本シリカ工業(株)製、ニップシールAQ,BET表面積=210m/g
*4 デグッサ製Si75((CHCHO)Si−(CH−S2.2−
(CH−Si(OCHCH
*5 吸湿性充填剤1:シリカゲル(B型)
*6 吸湿性充填剤2:低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体
戸田工業(株)製、ハスクレイHC500
*7 作業性改良剤1:マレイン酸モノ(ポリオキシプロピレンラウリルエーテル)エス
テル
*8 作業性改良剤2:N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン
*9 N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン
*10 ジベンゾチアジルジスルフィド
*11 N−シクロヘキシル−2−ベンゾジアゾールスルフェンアミド
【0035】
表1の示す結果から、吸湿性充填剤を配合した本発明のゴム組成物は、本発明の範囲外のゴム組成物に比較して、作業性及びウエット性能、耐摩耗性がバランス良く向上していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のゴム組成物は、タイヤ部材、特にタイヤトレッドに好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及びジエン系合成ゴムの少なくとも1種からなるゴム成分、シリカを含むゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対して、充填剤として25℃、相対湿度20%において、15質量%以上の吸湿量の吸着剤をゴム成分100部に対して、1〜30部を配合したことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
吸着剤が低結晶性層状粘土鉱物と非晶質アルミニウムケイ酸塩複合体である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
ゴム成分として、少なくともスチレン−ブタジエンゴムを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
シリカの配合量がゴム成分100質量部に対して、30〜120質量部配合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
シリカの配合量がゴム成分100質量部に対して、30〜100質量部であることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
シリカの配合量が請求項1記載の吸着剤に対して、質量比で0.12以上である請求項1〜5に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
シリカの配合量が請求項1記載の吸着剤に対して、質量比で0.12−0.18である請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
シランカップリング剤として、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランを配合したことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対して、マレイン酸モノ(ポリオキシプロピレンラウリルエーテル)エステルを1〜8質量部配合したことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。

【公開番号】特開2013−18837(P2013−18837A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152008(P2011−152008)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】