説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】低転がり抵抗性及びウェット性能を従来レベルよりも更に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ビニル単位含有量が60重量%以上の変性S−SBRを5〜50重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂を2〜50重量部、2種類のシリカX及びYを合計で60〜130重量部配合してなり、変性S−SBRの官能基がシラノール基と反応性があり、シリカ及びカーボンブラックを含む補強性充填剤の総量に対するシリカ比率が85重量%以上、シリカXの窒素吸着比表面積が140m2/g以上、シリカYの窒素吸着比表面積が100m2/g以上140m2/g未満であり、ジエン系ゴム100重量部に対するシリカX,Yの配合量をそれぞれx重量部、y重量部とするとき、x/7<y≦xの関係を満たすことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能を従来レベルよりも向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乗用車用空気入りタイヤには、JATMAによるラベリング(表示方法)制度が開始され、低転がり抵抗性とウェットグリップ性能をより高次元で両立させることが求められている。特にウェットグリップ性能に対する要求レベルは極めて高く、ラベリング制度に基づくウェットグリップ性能の等級aを満たす空気入りタイヤは未だ開発されていなかった。
【0003】
従来、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを改善するため、空気入りタイヤのトレッド部を構成するゴム組成物にシリカを配合することが知られている。しかしシリカはその表面にシラノール基を有し凝集しやすく、またジエン系ゴムとの親和性が乏しいため分散性が不十分になることがあり、その場合ゴム組成物の損失正接(tanδ)等の動的粘弾性特性を改質する効果が十分に得られないという問題があった。
【0004】
このため特許文献1は、末端をポリオルガノシロキサン等で変性した末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムにシリカを配合したゴム組成物によりシリカの分散性を改良して、転がり抵抗(60℃のtanδ)を低減することを提案している。このゴム組成物は転がり抵抗を低減する効果が認められるものの、需要者が低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能の向上に期待する要求レベルはより高く、両性能のバランスを一層改善することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−91498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ビニル単位含有量が60重量%以上の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S−SBR)を5〜50重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂を2〜50重量部、2種類のシリカX及びシリカYを合計で60〜130重量部配合してなり、前記変性S−SBRの官能基がシリカ表面のシラノール基と反応性があり、前記シリカ及びカーボンブラックを含む補強性充填剤の総量に対するシリカの比率が85重量%以上であり、前記シリカXの窒素吸着比表面積が140m2/g以上、前記シリカYの窒素吸着比表面積が100m2/g以上140m2/g未満であり、かつ前記ジエン系ゴム100重量部に対するシリカXの配合量をx重量部、シリカYの配合量をy重量部とするとき、x/7<y≦xの関係を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ビニル単位含有量が60重量%以上でシラノール基と反応性がある官能基を有する変性S−SBRを5〜50重量%含むジエン系ゴムに、軟化点100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂を2〜50重量部、上述した特定の粒子性状を有する2種類のシリカX及びYの配合量を限定し、かつ補強性充填剤の総量に対するシリカ比率を85重量%以上になるように配合したので、シリカの分散性を改良し低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能を従来レベル以上に向上することができる。
【0009】
前記変性S−SBRの官能基としては、ヒドロキシル基又はアミノ基が好ましく、シリカ表面のシラノール基と反応性が優れ、シリカの分散性を改良することができる。
【0010】
本発明のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能を従来レベルよりも向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分はジエン系ゴムからなる。ジエン系ゴム100重量%中、5〜50重量%が末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(以下、「変性S−SBR」という。)であるようにする。この変性S−SBRは、ビニル単位含有量が60重量%以上、好ましくは60〜80重量%である。変性S−SBRのビニル単位含有量が60重量%未満であると、シリカとの親和性が不足し低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能を十分に改良することができない。なお変性S−SBRのビニル単位含有量は赤外分光分析(ハンプトン法)により測定するものとする。
【0012】
本発明において、変性S−SBRは、その分子末端の両方又は片方をシリカ表面のシラノール基と反応性を有する官能基で変性した溶液重合スチレンブタジエンゴムである。シラノール基と反応する官能基としては、好ましくはヒドロキシル基含有ポリオルガノシロキサン構造、アルコキシシリル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、アミド基、チオール基、エーテル基から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。なかでもヒドロキシル基、アミノ基がより好ましい。
【0013】
変性S−SBRの含有量は、ジエン系ゴム100重量%中5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%にする。変性S−SBRの含有量が5重量%未満であるとシリカの分散性が不足しウェットグリップ性能を十分に改良することができない。また変性S−SBRの含有量が50重量%を超えると転がり抵抗が却って悪化する。
【0014】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ジエン系ゴムは変性S−SBRを除く他のジエン系ゴムを50〜95重量%、好ましくは70〜90重量%含有する。他のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、変性されていない溶液重合又は乳化重合スチレンブタジエンゴム、上述した変性S−SBR以外の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソブチレン/p−メチルスチレン共重合体ゴムの臭素化物、エチレン−プロピレン−ジエンゴム等を例示することができる。なかでも天然ゴム、ブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、未変性の溶液重合スチレンブタジエンゴム、上述した変性S−SBR以外の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム、イソブチレン/p−メチルスチレン共重合体ゴムの臭素化物が好ましい。なお変性S−SBR以外の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムとは、ビニル単位含有量が60重量%未満及び/又はシラノール基と反応性を有しない官能基を有する末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムをいう。
【0015】
本発明において、芳香族変性テルペン樹脂を配合することにより、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを向上すること、とりわけ転がり抵抗を一層小さくすることができる。芳香族変性テルペン樹脂としては、軟化点が100℃以上、好ましくは100〜130℃であるものを配合する。芳香族変性テルペン樹脂の軟化点が100℃未満であると、ウェットグリップ性能を改良する効果が得られなくなる。なお芳香族変性テルペン樹脂の軟化点はJIS K6220−1に基づき測定するものとする。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に配合する芳香族変性テルペン樹脂としては、例えばα−ピネン、βピネン、ジペンテン、リモネン、カンフェンなどのテルペン類とスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、フェノール、インデンなどの芳香族ビニル化合物とを共重合させて得られる芳香族変性テルペン樹脂を例示することができる。芳香族変性テルペン樹脂としては、例えばヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125,同TO−115,同TO−105,同TR−105などの市販品を用いることができる。
【0017】
芳香族変性テルペン樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し2〜50重量部、好ましくは5〜50重量部にする。芳香族変性テルペン樹脂の配合量が2重量部未満では、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを十分に高くすることができない。また、芳香族変性テルペン樹脂の配合量が50重量部を超えると、硬度が柔らかくなりすぎるなど所定の性能が得られなくなる。
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、窒素吸着比表面積が140m2/g以上であるシリカX、及び窒素吸着比表面積が100m2/g以上140m2/g未満であるシリカYという2種類のシリカX,Yを配合する。シリカX,Yを配合することによりゴム組成物の発熱性を抑制し、タイヤにしたときの転がり抵抗を低減すると共にウェットグリップ性能を向上可能にする。
【0019】
本発明で使用するシリカXは、窒素吸着比表面積が140m2/g以上、好ましくは150〜230m2/g、より好ましくは150m2/g以上185m2/g未満である。シリカXを配合することにより、ウェットグリップ性能を高いレベルで確保することができる。シリカXの窒素吸着比表面積が140m2/g未満であると、ウェットグリップ性が不足する。
【0020】
またシリカYは、窒素吸着比表面積が100m2/g以上140m2/g未満、好ましくは100m2/gを超え130m2/g以下、より好ましくは105〜130m2/gである。シリカYを配合することにより、特に、発熱性を小さくしタイヤにしたときの転がり抵抗を低減することができる。なお、シリカX及びYの窒素吸着比表面積はASTM D3037−81のBET法に準拠して求めるものとする。シリカYの窒素吸着比表面積が100m2/g未満であると、ウェットグリップ性を改良することができない。またシリカYの窒素吸着比表面積が140m2/g以上であると、転がり抵抗を低減する作用が十分に得られない。
【0021】
本発明において、ジエン系ゴム100重量部に対するシリカXの配合量をx重量部、シリカYの配合量をy重量部にするとき、シリカX及びYの合計量(x+y)を60〜130重量部、好ましくは80〜130重量部にする。シリカのX及びYの合計量(x+y)が60重量部未満であると、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを十分に高くすることができない。シリカのX及びYの合計量(x+y)が130重量部を超えるとゴム粘度が増大し加工性が悪化する。
【0022】
また、シリカXの配合量x及びシリカYの配合量yは、x/7<y≦xの関係を満たすことが必要である。シリカYの配合量y(重量部)がシリカXの配合量x(重量部)の7分の1以下(x/7以下)であると低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを改良することができない。またシリカYの配合量y(重量部)がシリカXの配合量x(重量部)を超えると、ウェットグリップ性能が悪化する。
【0023】
本発明のゴム組成物は、シリカ以外の他の補強性充填剤を配合することができる。他の補強性充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、水酸化アルミニウム等を例示することができる。なかでもカーボンブラックを必ず配合することにより、ゴムを補強しドライグリップ性能及び耐摩耗性を確保することができる。
【0024】
シリカ及びカーボンブラック等を含む補強性充填剤の総量100重量%中のシリカの比率は85重量%以上、好ましくは90〜100重量%にする。シリカの比率が85重量%未満であると、低転がり抵抗性及びウェットグリップ性能のバランスを改良することができない。ここでシリカ以外の他の補強性充填剤の配合量は、補強性充填剤の総量100重量%中のシリカ比率が85重量%以上であること、及びジエン系ゴム100重量部に対するシリカ配合量が60〜130重量部であることから決められる。
【0025】
本発明で使用するシリカX及びYは、上述した特性を有するシリカであればよく、製品化されたもののなかから適宜選択することができる。また通常の方法で上述した特性を有するように製造してもよい。シリカの種類としては、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
【0026】
本発明のゴム組成物において、シリカX,Yと共にシランカップリング剤を配合することが好ましく、シリカの分散性を向上しスチレンブタジエンゴムに対する補強性をより高くすることができる。シランカップリング剤は、シリカ配合量に対して好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜12重量%配合するとよい。シランカップリング剤がシリカ重量の3重量%未満の場合、シリカの分散性を向上する効果が十分に得られないことがある。また、シランカップリング剤が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が縮合してしまい、所望の効果が得られないことがある。
【0027】
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン及びこれらの誘導体等を例示することができる。誘導体としては、例えばNXT−Z(モメンティブパフォーマンス社製)が挙げられる。
【0028】
タイヤ用ゴム組成物には、上述した充填剤以外にも、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。このようなゴム組成物は、公知のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0029】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤ、特にタイヤトレッド部に好適に使用することができる。このゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることに加え、ウェットグリップ性能が優れ、JATMAのラベリング制度に基づくウェットグリップ性能の等級aに相当する性能を有する。
【0030】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
表4に示す配合剤を共通配合とし、表1〜3に示す配合からなる26種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜11、比較例1〜15)を、硫黄、加硫促進剤を除く成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出したマスターバッチに、硫黄、加硫促進剤を加えてオープンロールで混練することにより調製した。なお、表1〜3中、変性S−SBR4、未変性SBRは37.5重量部の油展オイルを含むため、配合量の欄に実際の配合量と共に、括弧内に油展オイルを除いたそれぞれのSBR正味の配合量を示した。またアロマオイルの配合量は、ゴム組成物中の総オイル量及び/又はゴム硬度が対比可能なレベルになるように適宜調節した。シリカとカーボンブラックの総量に対するシリカの比率を「シリカ比率」の欄に示した。なお表4に記載した配合剤の量は、表1〜3に記載したジエン系ゴム100重量部(正味のゴム量)に対する重量部で示した。
【0032】
得られた26種類のタイヤ用ゴム組成物について、下記に示す方法でtanδ(60℃)を測定し転がり抵抗の指標とした。
【0033】
tanδ(60℃)
得られた18種類のタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型中で、160℃、25分間プレス加硫して加硫ゴムサンプルを作製した。得られた加硫ゴムサンプルのtanδ(60℃)を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、温度60℃の条件で測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数として、表1〜3の「転がり抵抗」の欄に示した。転がり抵抗の指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく低発熱で、タイヤにしたときの転がり抵抗が低く、燃費性能が優れることを意味する。
【0034】
次に、タイヤサイズが205/55R16の空気入りタイヤを、上述した26種類のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に使用して4本ずつ製作した。得られた26種類の空気入りタイヤのウェットグリップ性能を下記に示す方法により評価した。
【0035】
ウェットグリップ性能
得られた空気入りタイヤをリムサイズ6.5×Jのホイールに組付け、2.0リットルクラスの試験車両に装着し、EU規則 ウェットグリップ グレーディング試験法(TEST METHOD FOR TYRE WET GRIP GRADING (C1 TYPES))に基づき測定した。得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として、表1〜3の「ウェット性能」の欄に示した。ウェット性能の指数が大きいほどウェットグリップ性能が優れていることを意味する。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・変性S−SBR1:末端にN−メチルピロリドン基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS116、ビニル単位含有量が70重量%、非油展品
・変性S−SBR2:末端にヒドロキシル基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol NS616、ビニル単位含有量が70重量%、非油展品
・変性S−SBR3:末端にアミノ基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR社製T5560、ビニル単位含有量が61重量%、非油展品
・変性S−SBR4:末端にヒドロキシル基を有する溶液重合スチレンブタジエンゴム、旭化成ケミカルズ社製タフデン E581、ビニル単位含有量が43重量%、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
・未変性SBR:旭化成ケミカルズ社製タフデン1834、ビニル単位含有量が10重量%、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品
・NR:天然ゴム、SIR−20
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220
・シリカX1:ローディア社製Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積が160m2/g
・シリカX2:ローディア社製Zeosil 195GR、窒素吸着比表面積が180m2/g
・シリカX3:ローディア社製Zeosil 200MP、窒素吸着比表面積が220m2/g
・シリカY1:ローディア社製Zeosil 115GR、窒素吸着比表面積が110m2/g
・シリカY2:デグサ社製Ultrasil 5000GR、窒素吸着比表面積が125m2/g
・シリカZ:デグサ社製Ultrasil 360、窒素吸着比表面積が50m2/g
・カーボンブラック:キャボットジャパン社製ショウブラックN234
・シランカップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤、エボニクデグサ社製Si69
・変性テルペン樹脂1:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125、軟化点125℃
・変性テルペン樹脂2:芳香族変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−85、軟化点85℃
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
【0040】
【表4】

【0041】
表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:千葉脂肪酸社製工業用ステアリン酸N
・老化防止剤:精工化学社製オゾノン6C
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:フレキシス社製PERKACIT DPG
【0042】
表1〜3から明らかなように実施例1〜11のタイヤ用ゴム組成物は、低転がり抵抗性(60℃のtanδ)、及びウェットグリップ性能が維持・向上することが確認された。
【0043】
比較例2のゴム組成物は、シリカYを配合していないので転がり抵抗を改良することができない。
【0044】
比較例3のゴム組成物は、変性S−SBR2の配合量が5重量%未満であるので、ウェットグリップ性能を改良することができない。比較例4のゴム組成物は、変性S−SBR2の配合量が50重量%を超えるので転がり抵抗が悪化する。
【0045】
表2から明らかなように、比較例5のゴム組成物は、シリカYを配合せず、かつシリカ比率が85重量%未満であるので、転がり抵抗及びウェットグリップ性能を改良することができない。比較例6のゴム組成物は、変性S−SBRの代わりに天然ゴムを配合したのでウェットグリップ性能が劣る。
【0046】
比較例7のゴム組成物は、シリカYの配合量yがシリカXの配合量xの1/7以下であるので、転がり抵抗を改良することができない。比較例8のゴム組成物は、シリカYの配合量yがシリカXの配合量xを超えるのでウェットグリップ性能が劣る。
【0047】
比較例9のゴム組成物は、シリカXを配合しないので、ウェットグリップ性能が劣る。比較例10のゴム組成物は、シリカX及びYの合計量(x+y)が60重量部未満であるので、ウェット性能が改善できないばかりか、転がり抵抗が大きく悪化する。比較例11のゴム組成物は、シリカX及びYの合計量(x+y)が130重量部を超えるので、ウェット性能は改善できるが、転がり抵抗が悪化する。
【0048】
表3から明らかなように、比較例12のゴム組成物は、シリカYの代わりに、窒素吸着比表面積が100m2/g未満のシリカZを配合したので、ウェットグリップ性能が悪化する。
【0049】
比較例13のゴム組成物は、シリカXを使用せずに、窒素吸着比表面積が140m2/g未満の2種類のシリカ(シリカY2及びシリカZ)を配合したので、ウェットグリップ性能が悪化する。
【0050】
比較例14のゴム組成物は、シリカYを使用せずに、窒素吸着比表面積が140m2/g以上の2種類のシリカ(シリカX1及びシリカX3)を配合したので、転がり抵抗が悪化する。
【0051】
比較例15のゴム組成物は、芳香族変性テルペン樹脂2の軟化点が100℃未満であるのでウェットグリップ性能が悪化する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル単位含有量が60重量%以上の末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(変性S−SBR)を5〜50重量%含むジエン系ゴム100重量部に対し、軟化点が100℃以上の芳香族変性テルペン樹脂を2〜50重量部、2種類のシリカX及びシリカYを合計で60〜130重量部配合してなり、前記変性S−SBRの官能基がシリカ表面のシラノール基と反応性があり、前記シリカ及びカーボンブラックを含む補強性充填剤の総量に対するシリカの比率が85重量%以上であり、前記シリカXの窒素吸着比表面積が140m2/g以上、前記シリカYの窒素吸着比表面積が100m2/g以上140m2/g未満であり、かつ前記ジエン系ゴム100重量部に対するシリカXの配合量をx重量部、シリカYの配合量をy重量部とするとき、x/7<y≦xの関係を満たすことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記変性S−SBRの官能基がヒドロキシル基であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性S−SBRの官能基がアミノ基であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2013−36025(P2013−36025A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92844(P2012−92844)
【出願日】平成24年4月16日(2012.4.16)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】