説明

タイヤ用マーキング装置

【課題】マーキング不良が発生することなくタイヤの側面部にマーキングを行うことができるタイヤ用マーキング装置を提供する。
【解決手段】タイヤTの表面にかざされたマーキングテープ13を該表面に押し付けることでマーキングを行うマークスタンプ21を備えたタイヤ用マーキング装置7であって、マークスタンプ21は、先端部がタイヤTの表面に押し付けられるスタンプ本体25と、該スタンプ本体25の先端部を覆う弾性部材27とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの表面にマーキングを行うタイヤ用マーキング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤなどのタイヤの製造においては、検査工程にてタイヤのアンバランス測定やユニフォミティ測定が行われている。各タイヤには、アンバランスの上限が定められており、この上限以内にあるものは合格とし、タイヤの表面に所定色のマークが押される。また、ユニフォミティ測定では、ユニフォミティ測定後に必要に応じてRFV一次成分のピーク位置に所定色のマークを押すことがある。このようなマークをタイヤの表面に捺印する装置としては、例えば、特許文献1に記載されるように、タイヤの表面にマーキングテープをかざすとともに、このマーキングテープをマークスタンプによってタイヤの表面に押し付けることで該表面にマーキングを行うものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−337847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、マーキング装置は、タイヤの表面が曲面であることに鑑み、マークスタンプを揺動可能に保持してその押付け面がタイヤの表面の傾斜に合致するようにしていたが、タイヤの表面には、文字やローレット、フィンなどの凹凸が形成されるとともに、マークスタンプが金属製(鉄製や真鍮製)であってその先端部が硬いため、マークスタンプを揺動可能に構成したとしてもマークスタンプの押付け面を上記凹凸に十分合致させることができず、マーキング不良が発生し、その都度、人手で押し直しを行っており、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
それゆえ、本発明は、マーキング不良が発生することなくタイヤの表面にマーキングを行うことができるタイヤ用マーキング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明のタイヤ用マーキング装置は、タイヤの表面にかざされたマーキングテープを該表面に押し付けることでマーキングを行うマークスタンプを備えたタイヤ用マーキング装置であって、前記マークスタンプは、先端部が前記タイヤの表面に押し付けられるスタンプ本体と、該スタンプ本体の前記先端部を覆う弾性部材とを有することを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明のタイヤ用マーキング装置にあっては、前記弾性部材の、タイヤの表面に押し付けられる部分の厚みは、0.5mm以上であることが好ましい。
【0008】
また、本発明のタイヤ用マーキング装置にあっては、前記弾性部材の硬度は、20〜40度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ用マーキング装置によれば、マークスタンプのスタンプ本体の先端部は、弾性部材に覆われていることから、タイヤの表面の所定位置に文字やローレット、クーリングフィン、スピュー等の凹凸が形成されていたとしても、マークスタンプの押付け面を該凹凸に追従させることができるため、マーキング不良の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明にしたがう一実施形態のタイヤ用マーキング装置の概略図である。
【図2】図1のタイヤ用マーキング装置の打点部を示す概略図である。
【図3】図2の打点部におけるマークスタンプを一部を断面で示した外観図である。
【図4】(a)は、従来例のマーキング装置を用いてマークが打点されたタイヤの側面図の図面代用写真であり、(b)は、実施例1,2のマーキング装置を用いてマークが打点されたタイヤの側面図の図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1において、符号3,5は、空気入りタイヤTを支持する支持リムであり、この支持リム3,5には、空気入りタイヤTが横置きの状態で支持されている。空気入りタイヤTは、支持リム3,5ともに軸周りに回転することができる。符号7は、空気入りタイヤTの表面(ここでは側面部)の所定位置に例えばユニフォミティマシンの測定結果に基づいて打点を行う本実施形態のタイヤ用マーキング装置(単にマーキング装置ともいう。)であり、このマーキング装置7は、タイヤTの後方にて上記ユニフォミティマシンに支持されている。なお、空気入りタイヤTの表面への打点は、タイヤ側面部に限らずトレッド部やタイヤ内面に行ってもよい。
【0012】
マーキング装置7は、タイヤTの側面部にマーキングを行う打点部9と、この打点部9を揺動可能に支持する支持部11とを備えている。
【0013】
先ず、打点部9は、図2に示すように、マーキングテープ(デカルコ式)13が巻き取られた供給リール15と、該供給リール15から巻き出されたマーキングテープ13を巻き取る回収リール17とを有する。また、打点部9の、供給リール15および回収リール17間にはガイドケース19が固定され、このガイドケース19内にはマークスタンプ21が摺動可能に挿入されている。マークスタンプ21の上端部は、ガイドケース19に固定されたシリンダ23に連結されており、この結果、上記シリンダ23が作動するとマークスタンプ21が下方または上方に移動し、タイヤTに対して近接または離隔する。そしてマークスタンプ21をタイヤTの側面部に向かって移動させると、供給リール15および回収リール17間に張り渡されたマーキングテープ13は、マークスタンプ21の先端面(押付け面)によってタイヤTの側面部の所定位置に押し付けられ打点が行われる。
【0014】
ここで、マークスタンプ21は、図3に示すように、先端部がタイヤTの側面部に押し付けられる金属性(例えば鉄製または真鍮製)のスタンプ本体25と、該スタンプ本体25の先端部を覆う弾性部材27とを有する。弾性部材27の材質としては、耐熱性を考慮し、シリコンゴムやフッ素ゴムとすることができるが、材質にとくに制限はない。また、弾性部材27の硬度(JIS A硬度)(室温)は、タイヤTの表面に形成された文字やローレット、クーリングフィン、スピュー等の凹凸に十分に追従できるように、タイヤTの表面のゴム硬度(約65度)よりも小さくすることが好ましく、例えば20〜40度とすることが好ましい。また、弾性部材27の、タイヤTの側面部に押し付けられる部分(底面)の厚みは、0.5mm以上とすることが好ましい。弾性部材27の底面の厚みが0.5mm未満の場合には、マークスタンプ21の押付け面を上記凹凸に十分に追従させることができないおそれがあるからである。なお、弾性部分27の底面の厚みの上限は3mm程度とすることができる。また、弾性部材27は、スタンプ本体25に着脱自在に被せるものとすることが好ましく、このようにすれば、製造するタイヤTの変更に応じて弾性部材27の底面の厚みを変更することができる。弾性部材の側面の厚みは、マーキング性能にとくに影響はないが、0.5〜1.0mm程度とすることができる。
【0015】
支持部11は、図1に示すように、該支持部11をタイヤTの径方向に移動させる軸部30に固定された垂直プレート32と、該垂直プレート32に上下方向に移動可能に支持され、打点部9をタイヤTのサイズ変更等に応じて上下方向に移動させる昇降プレート34と、該昇降プレート34に固定され打点部9に向けて延びる支持ブラケット36と、支持ブラケット36の先端に設けられた回動軸38と、支持ブラケット36に沿って延び前端が上記回動軸38に固定された連結アーム40と、この連結アーム40の後端に接続され、上下方向に延びるシリンダ42と、を有する。シリンダ42のピストンロッド42aの先端(上端)は、連結アーム40の上記後端に連結されており、この結果、シリンダ42が作動してピストンロッド42aが突出したり引っ込んだりすると、打点部9は回動軸38を中心として揺動し、タイヤTの側面部に対する傾斜角度が変化する。
【0016】
次に、本実施形態のマーキング装置7の作用について説明する。今、支持リム3,5に空気入りタイヤTが横置きの状態で支持されているとともに、ユニフォミティマシンが該タイヤTのユニフォミティを測定しているとする。そして、このような測定が終了し、タイヤTの、例えば上側の側面部の所定位置にマークを打点することになった場合には、先ず、シリンダ42のピストンロッド42aを突出させることにより、連結アーム40を揺動させ、これにより、打点部9を所定位置の近傍まで接近させることができるとともに、マークスタンプ21の押付け面を該所定位置におけるタイヤTの側面部表面に略平行に設定することができる。次に、打点部9のシリンダ23を作動してマークスタンプ21をガイドケース19内においてタイヤTに接近するよう移動させる。これにより、供給リール15および回収リール17間に張り渡されたマーキングテープ13は、所定のヒーターにて約160〜200度に加熱されたマークスタンプ21の先端の押付け面によってタイヤTの側面部の所定位置に押し付けられ打点が行われる。このとき、マークスタンプ21のスタンプ本体25の先端部は、弾性部材27に覆われていることから、タイヤTの側面部の所定位置に文字やローレット、クーリングフィン、スピュー等の凹凸が形成されていたとしても、マークスタンプ21の押付け面(弾性部材27の底面)を該凹凸に追従させることができるため、マーキング不良の発生を防止することができる。また、従来は、マーキング不良をマーキング装置とは別に設置したマークリーダー装置で判定していたが、その装置が不要となるため、設備コストおよび設置スペースを削減することができる。
【0017】
また、本実施形態では、弾性部材27の底面の厚みを0.5mm以上としたことから、マークスタンプ21の押付け面を上記凹凸に確実に追従させることができて、マーキング不良の発生をより一層抑えることができる。
【0018】
さらに、本実施形態では、弾性部材27の硬度を20〜40度としたことから、マークスタンプ21の押付け面を上記凹凸に確実に追従させることができて、マーキング不良の発生をより一層抑えることができる。
【実施例】
【0019】
本発明の原理を採用した2種のマーキング装置(以下、それぞれ、実施例1のマーキングおよび実施例2のマーキング装置とする。)および従来技術のマーキング装置(以下、従来例のマーキング装置とする。)をそれぞれ用い、実際にタイヤの側面部に打点を行い、マーキング不良の発生の有無について検証を行ったので以下説明する。
【0020】
実施例1のマーキング装置は、基本的な構造は図1に示すとおりであり、マークスタンプとして、真鍮製または銅製のスタンプ本体の先端部をシリコンゴム製の弾性部材で覆ったものである。弾性部材の底面の厚みは、0.5mmまたは1.0mmであり、また、弾性部材の硬度(JIS A硬度)は、40度である。実施例2のマーキング装置は、弾性部材の底面の厚みを1.5mm、2.0mmまたは2.5mmとしたものであり、その他の点において実施例1のマーキング装置と同じ構成を有する。
【0021】
従来例のマーキング装置は、マークスタンプのスタンプ本体の先端部を覆う弾性部材を有していない点を除いて、実施例1,2のマーキング装置と同じ構成を有する。
【0022】
これらのマーキング装置を用いて、タイヤの側面部の適当な箇所に複数回にわたってマーキングを行った結果を表1および図4に示す。評価は4段階で行い、表1中の記号「×」は、マークの大半が欠落しマーキング不良がひどいもの、記号「△」は、マークの欠落は半分より少ないが人手による押し直しを必要とするもの、記号「○」は、多少のマークの欠落はあるが、人手による押し直しを必要としない程度であるもの、記号「◎」は、マークの欠落が全くないもの、をそれぞれ示している。また、図4(a)は、従来例のマーキング装置を用いてマーキングが行われたタイヤの側面部の写真であり、図4(b)は、実施例1,2のマーキング装置を用いてマーキングが行われたタイヤの側面部の写真である。
【0023】
【表1】

【0024】
この結果から分かるように、スタンプ本体の先端を弾性部材で覆った実施例1,2のマーキング装置では、マーキング不良がほとんど発生せず、とくに、弾性部材の底面の厚みを1.5mmとした実施例2のマーキング装置にあっては、1.5mmのクーリングフィンに打点を行った場合でもマーキング不良の発生を抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
かくして本発明により、マーキング不良が発生することなくタイヤの側面部にマーキングを行うことができるタイヤ用マーキング装置を提供するが可能となった。
【符号の説明】
【0026】
3,5 支持リム
7 タイヤ用マーキング装置
9 打点部
11 支持部
13 マーキングテープ
21 マークスタンプ
25 スタンプ本体
27 弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの表面にかざされたマーキングテープを該表面に押し付けることでマーキングを行うマークスタンプを備えたタイヤ用マーキング装置であって、
前記マークスタンプは、先端部が前記タイヤの表面に押し付けられるスタンプ本体と、該スタンプ本体の前記先端部を覆う弾性部材とを有することを特徴とするタイヤ用マーキング装置。
【請求項2】
前記弾性部材の、タイヤの表面に押し付けられる部分の厚みは、0.5mm以上である、請求項1に記載のタイヤ用マーキング装置。
【請求項3】
前記弾性部材の硬度は、20〜40度である、請求項1または2に記載のタイヤ用マーキング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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